COUNTDOWN JAPAN 22/23 day2 @幕張メッセ 12/29
- 2023/01/01
- 22:13
2日目。初日はやはり学生的な若い人が本当に多かったが、この日は少し年齢層が上がったイメージだ。というより初日はまだ社会人は仕事をしている日であるからかもしれないけれど。
11:00〜 ハンブレッダーズ [GALAXY STAGE]
このフェスがこうした規模で開催出来なかった期間に一気に規模を拡大してきたバンドである。今やホールクラスでもチケットが即完するようになったハンブレッダーズがこの日のGALAXY STAGEのトップバッターを担う。3年前のASTRO ARENAから一気にジャンプアップである。
おなじみのSEでメンバー4人がステージに現れると、ukicaster(ギター)が軽やかかつ力強くリフを鳴らす「BGMになるなよ」からスタートし、早くも超満員になっている客席からはたくさんの腕が上がる。それは「ワールドイズマイン」でもそうなのであるが、広いステージ上を動き回りながらベースを弾くでらしはもちろん、こんなに大きなステージを超満員にしていても全く変わらないムツムロアキラ(ボーカル&ギター)の平熱っぷりとポーカーフェイスっぷりは凄いなと思う。もちろん気合いは入っているだろうし、テンションも上がっているのだろうが、この男がそれを目に見える形で見せる日は来るのだろうか。
そのムツムロが
「俺たちはぼっち・ざ・ろっくには携わってないですけど、ぼっちのためのロックなら俺たちに任せてください」
と、やはりあのアニメを見ていたんだなと思わせるような言葉から、そのアニメのテーマソングになっていてもいいくらいにそうした学生時代を描いた「DAY DREAM BEAT」がそうした学生時代を経験した人のために鳴らされる。今その状況にいる人ももちろん、かつてそうだった人にも響くからこその「ネバーエンディング思春期」バンドである。
「朝からこうしてたくさん集まってくれてるみんなのその感じ、いいね」
と言って最新アルバム「ヤバすぎるスピード」収録の「いいね」に繋げるというあたりはやはり実に見事であるし、アニメ主題歌でありながらもやはりひたすらに音楽への愛を歌っている歌詞による「光」と続くあたりはバンドが早くも完全に新作モードに突入していることがわかる。2年連続でこうしてフルアルバムをリリースしているのも凄いが、そのブックレットにメンバーによるライナーノーツが掲載されていて、それが曲への理解度をさらに深めてくれるだけにこのバンドのCDを買おうと思うのだ。
さらにはタイトル曲の「ヤバすぎるスピード」がまさにヤバすぎるスピードで持って鳴らされる。リズムもギターも含めて。それはそのまま今のこのバンドの生き様を示しているとも言えるのであるが、やはりこの曲も歌詞の内容は音楽への愛そのものである。ハンブレッダーズの曲は全てラブソングであるが、その対象はひとりぼっちの自分を救ってくれた音楽でありロックだ。それをあらゆる曲と歌詞で歌い続けている。
「このバンドは俺とドラムの木島が高校生の時に始めたバンドなんだけど、来年も、これからもあなたにとってのフェイバリットソングを作り続けていきます」
と言って最後に演奏された「フェイバリットソング」ではムツムロがかなり歌詞を飛ばしていたのだが、それは久しぶりに歌うから普通に飛んだのか、あるいはukicasterとでらしがそれぞれ木島のシンバルをステージ前まで持ってきて叩きまくるという自由っぷりを見せていただけに集中できなかったところもあるのか。それは年明けに続いていくツアーで明らかになるはずだ。
個人的なステージ予想でもこのバンドをGALAXYにしていたが、まさかこんなに超満員になるなんて思っていなかった。もしかしたら「スクールカーストの最底辺」から始まったバンドは日本で1番大きなフェスのメインステージに立つ日が来るかもしれない。それは一つのムツムロの学生時代に抱えていたものの完遂になるかもしれないだけに、いつかそんな瞬間を見てみたい。曲を聴くたび、ライブを見るたびにこのバンドの音楽が、自分の歌だとはっきりわかっていく。
1.BGMになるなよ
2.ワールドイズマイン
3.DAY DREAM BEAT
4.いいね
5.光
6.ヤバすぎるスピード
7.フェイバリットソング
12:05〜 indigo la End [GALAXY STAGE]
直前に後鳥亮介がコロナ感染したことにより(川谷絵音のバンドは今年はことごとくロッキンオンのフェスの直前にメンバーが感染したりしている)、なんとゲスの極み乙女の休日課長が代役として参加しての出演となる、indigo la End。逆に実にレアなライブであるとも言える。
ささみおとえつこというおなじみのコーラスサポートメンバーも加えた6人編成で登場すると、川谷絵音(ボーカル&ギター)、長田カーティス(ギター)、佐藤栄太郎(ドラム)がスーツ姿であるだけに柄シャツを着ている休日課長の姿が異彩を放っているのであるが、ギターロックなサウンドの「夜明けの街でサヨナラを」の演奏が始まると、確かに弾き方やスタイルは後鳥と全く違うけれどサウンドとしては全く違和感がないのは休日課長のベーシストとしての凄さを思い知らされるし、そもそも昔はこのバンドのメンバーでもあったという要因もあるのだろうか。
ささみおとえつこの重ねるコーラスが切なさを醸し出し、バンドの演奏がそれを加速させていく「想いきり」では佐藤のドラムのビートがまるでリズムマシンのように正確でありながらも人間としての力強さを感じさせる。やはりこのバンドは演奏力がとんでもないバンドだとライブを見るたびに実感する。
さらにそんなバンドのギターロックさを最大限に感じさせるようにカーティスのギターが唸りまくる「名もなきハッピーエンド」から、まさにタイトル通りの実験性を感じさせるような「実験前」では休日課長が前に出てきてベースを弾きまくるだけではなく、川谷も前に出てきてスーツ姿であることを厭わずにステージ上で寝転がるようにしてギターを弾きまくる。サウンド自体もカオスの極み的な曲であるが、その空気をさらに引き出しているのはこうしたメンバーのパフォーマンスであるし、メロウなラブソング的な代表曲だけを知っていてライブに来た人からしたらこのバンドの姿には驚くんじゃないだろうか。
そんなアッパーなロックサウンドから一気にメロウな雰囲気へと変わるのは「チューリップ」であるが、やはりそうした曲でもバンドの演奏(特にリズム)は実に力強いし、続く「邦画」では曲の最も大きなインパクトを持つ
「泣いたり 笑ったり」
のフレーズをコーラス2人が歌うというあたりはメンバーとしては4人ではあるけれども、このバンドがメンバー以外の人(もちろん休日課長含む)がいてくれるから成り立っているということがよくわかるのである。
そんな休日課長は久しぶりにこうしてindigo la Endでベースを弾いた感想を
「やっぱり後鳥さんは偉大だなって思いましたね」
と口にする。後鳥が作ったベースラインを弾いているだけにその凄さがよくわかるのだろうし、川谷も
「課長は昔、indigoのメンバーでもあったんで、こうして1年の終わりに大きなステージで一緒に演奏できるっていうのが本当に感慨深いです」
と口にした。自分が初めてライブを見た時はもう課長はバンドにはいなかったけれど、渋谷の小さなライブハウスでほとんど客もいないような状態だった。(「さようなら、素晴らしい世界」がリリースされたばかりの時)
それよりさらに前だったら、課長とindigoでこんなに大きなステージに立って演奏しているなんて想像できないことだっただろうなと思う。
そして最後に
「季節外れの曲だけど」
と言って川谷がステージを左右に歩き回りながら歌うのがスーツ姿だからこそいつもとはまた違うカッコよさを感じさせる「夏夜のマジック」では客席一面にたくさんの腕が上がる。その光景はこんなに人がいたのかと思うものでもあるし、ゲスと違ってメディアで一気にバズったり、笑えるようなことをしなくても自分たちが信じる良い音楽を追求してきたこのバンドだからこそ見れた景色なんだよなと思っていた。
1.夜明けの街でサヨナラを
2.想いきり
3.名もなきハッピーエンド
4.実験前
5.チューリップ
6.邦画
7.夏夜のマジック
13:10〜 ハルカミライ [GALAXY STAGE]
しょっちゅうライブを見ているハルカミライであるが、この日にライブを見る心構えが少し違うのは今年最後のライブを観る機会でもあり、My Hair is Badが椎木知仁の喉の不調でキャンセルとなり、代役としてこのバンドがこの後にEARTH STAGEにも出演するから。そんなあまりにもスペシャルなハルカミライの3年ぶりのCDJである。
先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、金髪の小松謙太(ドラム)の3人がステージに現れてサウンドチェックでショートチューンを連発すると、本番では橋本学(ボーカル)がおなじみの巨大フラッグを持って登場し、関がイントロのギターを鳴らしてのおなじみ「君にしか」からスタートするのだが、そのまま「カントリーロード」へ…という鉄板の流れを止めていきなり「ファイト!!」を挟み、橋本も関もステージを転がり回るというのはセトリの予定などあるようでないと言えるハルカミライだからこそである。
そうして「ファイト!!」を挟んだ後の「カントリーロード」では間奏で関がアンプの上に立ってギターソロを弾きまくると、橋本はブレイク部分で
「この後EARTHにも出るけど、これが準備運動とか全く思ってないから!CDJ台風の目!事件起こしにきた!ハルカミライだー!」
と叫ぶ。もうこの段階でこの日のこのバンドのライブが伝説になるということは確定したものと言えるのだが、須藤は
「みんな「今日何回「ファイト!!」やるんだろう?って思ってるだろうけど、そんな安売りしないから」
と言いながら早くもここでも「ファイト!!」を挟み、そのままツービートに疾走する「俺達が呼んでいる」とパンクに駆け抜けていくだけに、それぞれの立ち位置が決まっている前方抽選エリアもスタンディングのライブハウスかと思うような熱気で飛び跳ねまくっている。
そんな中で意外な選曲だったのは、先日リリースされたばかりの新作EP「Symbol 2」で再録された「革命前夜」。初期のハルカミライがとにかく歌心を前面に出していたバンドであったことを思い出させてくれる曲でもあるが、それはEARTH STAGEにこのバンドが立つ直前のこのライブこそが革命前夜と言えるものなのかもしれないとも思う。
するとまたしても(リハも含めるとすでに4回目)「ファイト!!」を演奏すると、このバンドの武器であるショートチューンをひたすらに連発していく。そこにはペース配分という言葉なんて全くないのだろうし、フェスではそこまで聴ける機会のない「エース」が聴けるのも嬉しいところだ。
そうしてアゲにアゲまくった後には
「自己紹介します!」
と言って「QUATTRO YOUTH」が演奏され、それぞれのことを歌ったフレーズで橋本はそのメンバーのことを指さす。体調不良になろうが、アキレス腱を断裂しようが、この4人じゃないとハルカミライじゃないから、この4人でしかステージには立たない。今年の最後に聴くこの曲はそんなことを感じさせてくれる。
もう完全にその場の思いつきで須藤が橋本に耳打ちして挟まれたショートチューン「To Bring BACK MEMORIES」がやはりバンドだけならず観客のテンションすらもさらに押し上げると、そこからは
「1番綺麗な君を見てた」
のフレーズで観客が拳ではなくて人差し指を掲げ、それが
「2人だけ」
のフレーズで2本指になるのがロマンチックな「ウルトラマリン」から、「Predawn」というこのバンドのメロディの美しさ、キャッチーさを感じさせてくれる曲が続く。フェスとなると初めて観る人もたくさんいるだろうし、そうした人たちが暴れまくるパンクな曲だけではなくてこうした名曲と呼べる曲までも聴いてくれるのは実に喜ばしいことだ。それは短い時間の中でこれだけ曲数を連発するこのバンドだから見せられる幅の広さと言えるかもしれないが。
そして最後に演奏されたのは「僕らは街を光らせた」であり、その爆音、轟音サウンドに乗せて歌われる
「地獄の果てを
音楽の果てを
この歌の果てを
歓声の果てを」
というフレーズにコロナ禍になってから何回救われてきただろうか。それは歓声をあげることができないこの状況下に図らずもこの歌詞がシンクロしてしまったから。このバンドがこうしてライブをやりまくってくれていれば、その地獄のような日々から少しだけでも前を向けるような気がするのだ。
しかしながらまだ時間が残っているということで、「ファイト!!」を倍速バージョンで演奏すると、須藤が小松に「もっともっと速く!」とジェスチャーする超倍速バージョンまでも演奏されるのであるが、もうその速さの演奏と歌唱は笑ってしまうくらいのレベルだ。しかもこの35分間に17曲と可能な限りに曲を詰め込みながらも、バンドはこの後にもう1回ライブを控えている。
「ここにいる人たちは後でEARTHの方にも絶対来いよ〜」
と須藤は言っていたが、そこでこのライブを超えるくらいの伝説を見せてくれるなんて…結構予想していた。だってこれまでにも何回もそういうライブを見せてきてくれたバンドなのだから。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
リハ.To Bring BACK MEMORIES
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.革命前夜
7.ファイト!!
8.フュージョン
9.Tough to be a Hugh
10.エース
11.QUATTRO YOUTH
12.To Bring BACK MEMORIES
13.ウルトラマリン
14.Predawn
15.僕らは街を光らせた
16.ファイト!! 倍速
17.ファイト!! 超倍速
14:00〜 ZAZEN BOYS [COSMO STAGE]
このフェスの黎明期から出演し続け、当時はEARTH STAGEをも満員にしていたバンドである、ZAZEN BOYS。ステージは小さくなってもやはりこうしてこのフェスに戻って来てくれるくらいにこのフェスの守護神と言っていいバンドである。向井秀徳(ボーカル&ギター)は昨年はNUMBER GIRLとして出演しているが。
メンバーがステージに現れると向井が
「幕張、時には女とまぐわり」
というこのフェスでのおなじみの口上を述べて「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」からスタートするのであるが、「MABOROSHI IN MY BLOOD」も含めて柔道2段・松下敦のドラムと、必死の形相でその松下のドラムに向かい合うようにしてベースを弾くMIYAのリズムは体を乗らせることすらも許さないくらいに複雑極まりない変拍子の連打に次ぐ連打っぷり。間違いなくZAZEN BOYSでしかできない音楽とライブであるが、初開催時からリズム隊がメンバーチェンジをしてもその感覚が失われないというか、さらに濃くなっているあたりは向井のメンバーのチョイスの審美眼っぷりを感じさせる。
カシオマンこと吉兼聡のギターがサイケデリックな雰囲気を醸し出す「IKASAMA LOVE」では吉兼が変わらないように見えてよく観ると年齢を重ねたことを感じるのだけれど、その良い意味での変態性が強いギタープレイは全く変わることはない。それは向井が人力ディレイを駆使する姿がめちゃくちゃ凄まじい演奏をしているのに何故か笑えてきてしまう、レイドバックしたサウンドの「Delayed Brain」もそうである。
今もMATSURI STUDIOでMATSURI SESSIONを日々練り上げているバンドの最新曲が「永遠少女」であり、まぁZAZEN BOYSでしかないような曲であるのだが、NUMBER GIRLが再解散したことによってこれからはこのバンドでこうして新曲や新作も生み出されていくんだろうなという期待を抱かせてくれる。
そんな中で向井がギターを置くと、何やら袋を持ち出して、そこから取り出したのは手足が伸びるゴム製の人形「ビロリンマン」で、NUMBER GIRLの再解散ライブの時にも登場したらしいが、「はあとぶれいく」を向井が歌いながらその手足を引きちぎれるんじゃないかと思うくらいに伸ばす姿に爆笑してしまう。これまでにも何度も笑わされてきた曲だけれど、一言も発することなく、曲を演奏しているだけでこんなに笑わせてくれるバンドはこのバンド以外に間違いなくいないだろう。
そんなライブの最後には吉兼と向井のギターが絡み合う「RIFF MAN」でそのグルーヴの凄まじさに圧倒されながら、やはり向井によるこの曲の
「飛び出る昇り龍」
のフレーズはライブが終わった後もどうしてもクセになってしまう。
「MATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを伸び伸び伸ばしてやってきました、ZAZEN BOYSでした。幕張、時には女とまぐわり」
と言って向井がステージから去ると、メガネをかけたMIYAが最後まで笑顔で観客に手を振っていたのが印象的だった。それはちゃんとこの客席が埋まっていたからこそ。
このフェス立ち上げ時に「冬に屋内でフェスやるなんて無理だよ」と周りに言われまくった中で、最も尽力してくれた、やろうと言ってくれたのは当時は2日連続出演をしていたくるりであり、このバンドとソロでも出演していた向井だったとかつて社長の渋谷陽一は語っていた。もう当時からずっと出続けているバンドは今年はこのバンドくらいしかいない。そうしてずっと出演し続けてきたからこそ、いつまでたってもやめられないのね。
1.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
2.MABOROSHI IN MY BLOOD
3.IKASAMA LOVE
4.Delayed Brain
5.永遠少女
6.はあとぶれいく
7.RIFF MAN
15:20〜 Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
06/07の元旦開催日に獅子舞や巫女さんなどのコスプレで出演して以来、19/20までは毎年出演し続けてきた、このフェスの番人的なバンドの1組である、Base Ball Bear。しかしながら今年は本人が出演を辞退した秋山黄色の代打での出演となった。毎年ここで見てきただけに、そこには少し寂しさも感じてしまう。
その代役出演が決まったタイミングもかなり直前、完全にチケットが売り切れた後であるだけに、元からこの日のチケットを持っていてベボベを好きな人しか集まりようがないというこのフェス初めてと言えるくらいにアウェーな状況下でメンバーがおなじみのXTCのSEでステージに現れると、堀之内大介(ドラム)がビートを刻み始める名曲「short hair」からスタート。そのメロディとサウンドはいつだって我々をキュンと切なくさせてくれるのであるが、曲終わりで小出祐介(ボーカル&ギター)による
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
という挨拶の後には昨年リリースの最新アルバムからタイトル曲の「DIARY KEY」が演奏される。「short hair」の後に演奏されても全く遜色ない爽やかなギターロックサウンドはこの3人になってからのベボベが変わることなく、でも進化してきたことを示している。個人的にもこのバンドが最後に出演した2019年にこのステージで最後に「風来」を演奏してから全くライブができない状況の世の中になってしまっただけに、こうして今のベボベの新しい曲をこのフェスで聴けるのが実に嬉しい。
「運営と秋山黄色君から、代役として出てくれないかって言われて、年末は休みの予定だったんで若干渋ったんですけど(笑)、僕らも4人から3人になった時に先輩や同期、後輩といろんな人に助けてもらった。その時の感謝をこれから返していきたい。
これを貸し1として、先輩風を吹かせるならば秋山君は必ずこの恩を返しに来い。運営は来年からは普通に呼べ(笑)」
とこの出演に至るまでの流れを小出が口にし、最後には堀之内も「それな!」と返すのだが、こうして代わりに出演したことによっていつか秋山黄色が対バンにベボベを呼んでくれたりしたらどちらも好きな身としては本当に嬉しいし、ベボベは秋山黄色が必ず戻ってくると信じている。ベボベと自分は同世代として一緒に歳を重ねてきたけれど、だからこそ自分たちが大人になった、ベテランになったという感覚が希薄だったりする。それでもこの小出の言葉を聞いて、ベボベが頼れる先輩的な立ち位置のバンドになったんだなと思った。そういえば、中止になってしまった20/21では小出は赤い公園のサポートギターでも出演するはずだったんだよな。
そんな感傷に浸りながらも、11月に開催された3回目の日本武道館ワンマン時に販売された新曲「海になりたい part.3」が爽やかなギターロックとしてのベボベを再定義するように鳴らされると、関根史織(ベース)も激しくステップを踏むようにして演奏する「LOVE MATHEMATICS」では前方エリアに集まった観客たちが歌詞に合わせて指を1本、2本、3本…と掲げていく。スリーピースバンドとして生まれ変わったベボベのギターロックサウンドのタイトさを感じさせてくれる。
それが最も現れているのは小出が関根と向かい合いながらラップし、リズムだけでグルーヴを生み出す「The Cut」だろう。これは経験と技術を重ねてきたバンドだからこそできる芸当であると言えるし、観客もサビでは飛び跳ねまくっている。
そして最後に演奏されたのは「Stairway Generation」であり、それを今の3人での形で演奏する姿からも、これからもこのバンドが上がるしかないようだ、ということを感じさせてくれる。つまりは小出も言っていたように、これからもずっとこのバンドにこのフェスに出演し続けて欲しいということ。それこそ2023年にロッキンに出演したら17年ぶりくらいに浴衣でライブをやることも宣言しているだけに。そう思うのはロッキンオンのフェスで一緒に歳を重ねてきて、デカいステージまで連れて行ってくれたバンドだからだ。
リハ.17才
1.short hair
2.DIARY KEY
3.海になりたい part.3
4.LOVE MATHEMATICS
5.The Cut
6.Stairway Generation
16:35〜 ハルカミライ [EARTH STAGE]
この日2回目のライブにして、今回はMy Hair is Badの代役としてメインステージに立つ、ハルカミライ。GALAXY STAGEも完全に超満員だっただけに、EARTHも始まる前からしっかり埋まっている。
サウンドチェックでは須藤が
「この曲だけ覚えて帰ってください〜」
「違う曲やりまーす」
と言って「ファイト!!」を3連発すると、本編では先程と同じように橋本学がフラッグを持って登場するのであるが、小松は黒いマイヘアTシャツをタンクトップに加工して着ているというあたりからもマイヘアへの愛情を感じさせる。
そんなライブはやはり先程同様に「君にしか」から始まり、「カントリーロード」に行くと見せかけて…という流れも先程同様に「ファイト!!」が挟まれるのかと思いきや、なんとマイヘアのショートチューン「クリサンセマム」が演奏される。代役出演が決まったのが前日だっただけに、そこから曲を覚えたのか、あるいは元から演奏していたのか。
「君がなんか悲しそうで」
のフレーズでは関と須藤もコーラスを重ねるあたりはかなりというかめちゃくちゃ慣れている感じすらあるが。
そんなサプライズカバーからの「カントリーロード」ではやはり関がアンプの上に立ってギターを弾きまくり、橋本は
「今日2ステージ目!伝説起こしに来ました、ハルカミライです!」
と高らかに宣言し、再び「クリサンセマム」を演奏するのだが、今回は関と須藤が1つのマイクで2人で歌ったりとその光景や演奏の仕方はガラッと変わっている。てっきり「ファイト!!」の代わりに「クリサンセマム」を演奏しているのかと思ったら「ファイト!!」も普通に演奏されるだけにこの後がどうなることか全くわからなくなるのだが。
今回は「俺達が呼んでいる」からショートチューン「フルアイビール」にすぐに繋がるというライブではおなじみのアレンジが披露されると、もうこの曲やりたくて仕方ないとばかりに「クリサンセマム」が再び演奏され、観客全員を鼓舞するような「PEAK'D YELLOW」がこのEARTH STAGEのスケールにふさわしいパンクアンセムとして鳴らされていく。「へいへいほー」などのこの曲のコーラスは早くまた観客みんなで大合唱したいなとたくさんの人がいる場でのライブだからこそ思う。
するとライブでは定番の曲であるが先程は演奏されていなかった「世界を終わらせて」を演奏すると、すぐに曲中に
「音楽でもいい 映画でもいい
YouTubeでも お笑いでもいい
アニメやゲーム 読書でもいい
なんでもいい 好きならいい」
とマイヘアの「歓声をさがして」のフレーズを差し込み、曲の最後にも
「DJ放送室 僕の曲をかけて
みんなが帰っちゃう前に」
と加える。それはハルカミライが本当にマイヘアの曲が好きで、こうしてすぐに出てくるくらいに体の中に染み込んでいるからこそだ。そこには間違いなくマイヘアへのリスペクトがあるのだが、小松もステージ前まで出てくると
「CDJ、EARTH STAGE。ここが世界の真ん中!」
と言って演奏された「春のテーマ」の中で橋本は
「昨日LINEしたよ。学、ごめんなって返ってきた。俺からしたらあんまりにも強いバンドだからもう帰って来なくていいですよ、って思ってるんだけど(笑)それくらいに言える関係性ってことですわ」
と前日の夜に椎木にLINEをしたことを語る。それはそのままマイヘアがこのステージを後輩にして盟友のハルカミライに託したということでもある。
その想いを汲むかのように橋本は
「誰かに愛されて 誰かを愛している」
とマイヘア「ドラマみたいだ」のフレーズを歌ってから「アストロビスタ」へと突入していき、当然その歌詞は
「眠れない夜に私 My Hair is Badを聴くのさ」
と変えられ、さらに曲中には
「春恋に落ちて
耳を澄まして」
と「真赤」のフレーズを歌い、曲最後には
「君がいれば 僕は負けない」
と「味方」のフレーズまでも歌う。今でもたまーに対バンすることもあるけれど、同じレーベルに所属する兄弟的な存在のバンド同士という間柄としてマイヘアのことが本当に好きで、普段からずっと曲を聴いたりしているんだろうなということがよくわかる。そんなマイヘアへの思いがハルカミライにさらなる力を与えていると言っていいだろう。
そしてそんな思いが全て音として鳴らされるのはそれまでの暴れっぷりから一転してそれぞれがその場で轟音を鳴らし、真っ白な照明がそのメンバーを照らす「ヨーロービル、朝」。その迫力っぷりとスケールはまさにこのEARTH STAGEにピッタリのものだ。自分はステージ予想の時点からハルカミライはEARTH STAGEに立つべきだと思っていたが、代役として立ったこのライブでこのステージに立つべきバンドであることをこれ以上ないくらいに証明した。きっと翌年からはこのEARTH STAGEに普通に立つこのバンドの姿を見ることができるはずだ。
しかしそんなライブの締めにふさわしい曲を演奏してもなお残り時間と残り体力をフルに使おうとするバンドはショートチューンを連発していくのだが、ここに「クリサンセマム」が入っているというのはマイヘアの代役としてのライブだからこそだろうが、結果的に2ステージで10回以上の「ファイト!!」を演奏することにもなったのであった。
マイヘアの代役として出演して、こんなにもマイヘアへの愛を入れながらも自分たちらしいライブができるバンドは間違いなくハルカミライしかいないだろう。ハルカミライのライブは1回1回全てが事件であり伝説であり、その瞬間にしか見れないものであるが、この日のライブはその最たるものだった。それは17年間通い続けてきて、数え切れないくらいのライブを見てきたこのフェスの中でもトップクラスだったと言っていいくらいのものだった。こんなライブを見せてくれるんだから、2023年もチケットが当たる限りはハルカミライのライブに行きたいと思う。
リハ.ファイト!!
リハ.ファイト!!
リハ.ファイト!! (途中まで)
1.君にしか
2.クリサンセマム
3.カントリーロード
4.クリサンセマム
5.ファイト!!
6.俺達が呼んでいる
7.フルアイビール
8.クリサンセマム
9.PEAK'D YELLOW
10.世界を終わらせて 〜 歓声をさがして
11.春のテーマ
12.ドラマみたいだ 〜 アストロビスタ 〜 真赤 〜 味方
13.ヨーロービル、朝
14.To Bring BACK MEMORIES
15.クリサンセマム
16.ファイト!!
17.クリサンセマム
18.ファイト!!
17:40〜 UNISON SQUARE GARDEN [EARTH STAGE]
そんなハルカミライの余韻が強く残り続けるEARTH STAGEに登場するのはUNISON SQUARE GARDEN。かつてはこのフェスではGALAXY STAGEのトリで大物の裏を任される的な位置だったこともあったが、今や完全にこのEARTHに立つべくして立つバンドになった。
おなじみの「絵の具」のSEでメンバーがステージに登場すると、暗闇の中でも不審に動く田淵智也(ベース)の靴が発光しているのも、鈴木貴雄(ドラム)がドラムセットから立ち上がって観客を煽るようにしているのもよくわかるのであるが、斎藤宏介(ボーカル&ギター)が
「君をストップモーション」
と歌い始めると観客がリズムに合わせて手拍子をするのは「instant EGOIST」という、誰がこの年末のフェスのメインステージの1曲目で演奏すると予想しただろうかという選曲。田淵はいきなり軽やかなステップでステージ上を歩き回りながらベースを弾くのであるが、イヤモニを気にしながらでも斎藤の歌声は実にクリアにこの巨大な空間に響き渡っていく。それは声量やサウンドのバランスもあるだろうが声質によってそう感じる部分もあるはずだ。
そんな曲のアウトロでスタッフが鈴木にヘッドホンを装着すると、
「かくしてまたストーリーは始まる」
と斎藤が歌い始めるとともに華やかな同期のサウンドが鳴らされる「kaleido proud fiesta」で鈴木はサビで早くも立ち上がるようにしながらドラムを連打しまくり、田淵もコーラスを叫ぶように歌うというあたりはやはりこの3人のバランスじゃないと生まれ得ない、演奏できない曲だなと改めて思う。
「祝祭の鐘よ鳴れ
かくして快進撃は始まった」
のフレーズが2023年からの全てのライブ、音楽シーンにとってリアルなものとして響きますように、と思うのも年末にこの曲を聴くからこそだろう。
さらにはイントロで田淵と鈴木がポーズを取るようにして始まった「シュガーソングとビターステップ」は良い意味でファンの期待を裏切るバンド(というか田淵)であるユニゾンが大ヒットしたこともあってか、今ではほとんどの機会で演奏するようになっている曲であるが、この曲のサビでたくさんの人が飛び跳ねている光景こそが、最高だ、幸せだって思えるものになっている。
そんなヒットシングル2連発の後には季節外れでありながらもどこか過ぎ去った今年の夏を振り返って感傷的な思いにさせる「夏影テールライト」から、ユニゾンならではのなんだこの曲の構成はと思ってしまうくらいに激しく展開していく「フィクションフリーククライシス」でバンドの鳴らす音とグルーヴの強さをフルに感じさせてくれる。というかこの辺りの選曲は本当にユニゾンはフェスだとなんの曲を演奏するのか全く予想がつかないと改めて実感させてくれるし、だからこそフェスのライブ1本1本も見逃せないバンドだと思う。
再び鈴木にヘッドホンが装着されると、ピアノとホーンによる華々しい同期のサウンドが否が応でもライブのクライマックスが来たと思ってしまう「君の瞳に恋してない」で、田淵はベースを左右にブンブン振りながら足を高く上げて演奏し、鈴木も原曲以上の手数のドラムで曲をアップデートする。それもまたライブならでのユニゾンの形であり、それは田淵が袖の方に消えてしまうんじゃないかと思うくらいにこの広いステージを走り回るようにして演奏し、斎藤の歌唱もさらに極まっていく「桜のあと (all quartet lead to the?)」もそうである。鈴木のポップな曲でありながらもぶっ放すようなドラムは鈴木がこのステージで音を鳴らすことによって解放されているんだなということが伝わってくる。
そしてアニメタイアップである最新シングル「カオスが極まる」でのスピード感あふれるサウンドとデジタルコーラスがまさにカオスが極まっていることを感じさせるのであるが、決して合唱などを煽ったりすることがなかったユニゾンでも声が出せるようになったらこのコーラス部分では合唱が起きたりするようになるのだろうか。そんなことを思ったりしていたら、
「UNISON SQUARE GARDENでした!」
とだけ口にしてメンバーはステージを去って行った。鈴木が胸に手を当ててから去って行くのもいつも通りでもあるが、それでもやはりいつもよりもさらに堂々とした、解放されたかのような雰囲気を確かに感じていた。
ひたすらにライブをやりまくってきた2022年。それは田淵がインタビューで
「ライブでしか楽しめないやつも絶対いるから」
と、自分のようなやつのために活動してきたことでもあることを語っていたが、その中でもシングルは定期的にリリースされてきた。その既発シングルが増えてきたことによって期待するのはやはりアルバム。果たして2023年には新作が聴けて、そのツアーを見ることができるのだろうか。そろそろこのバンドもそこまで時計の針を進めようとしているはずだ。
1.instant EGOIST
2.kaleido proud fiesta
3.シュガーソングとビターステップ
4.夏影テールライト
5.フィクションフリーククライシス
6.君の瞳に恋してない
7.桜のあと (all quartet lead to the?)
8.カオスが極まる
18:45〜 SUPER BEAVER [EARTH STAGE]
日割り発表時には現在の規模感からしてもトリもあり得るかなとも思ったが、トリ前での出演となったSUPER BEAVER。クリスマスまでアリーナツアーをやりながらも、12月の年末のフェスもフル稼働という現場至上主義を掲げるバンドのスタンスは変わることはない。
おなじみのインストのSEでメンバー4人が登場すると、柳沢亮太がギターを鳴らして始まったのはこのバンドの存在を広く世の中に知らしめた「名前を呼ぶよ」であるのだが、
「ねぇ 今楽しいな」
というフレーズを渋谷龍太(ボーカル)が感情を思いっきり込めるようにして歌うのも、上杉研太(ベース)が柳沢とともにタイトルフレーズで声を重ねるのにも並々ならぬ気合いを感じさせる。
特効が炸裂して観客を驚かせるとステージ上では炎も燃え盛る中で藤原広明のドラムのビートが一気に加速して行くことによってライブそのものにスピード感を与えながら、
「正々堂々」「威風堂々」
とこのバンドの生き様をそのまま歌うような「突破口」から、タイトルからしてバンドの生き様というかもはやこのバンドそのものを表した言葉と言えるような最新シングル「ひたむき」とキラーチューンの連打に次ぐ連打に観客も手拍子などで応えていく。
そこには説得力しか感じないのは
「ここまでに「今年の悲しいこととか苦しかったことを全部置いていけ」っていろんなアーティストが言ってきたでしょ?でも俺はそうは言いません。そういう悲しさや苦しさはあなただから抱くことができた感情です。ならばその感情も全て抱えて来年まで持っていく。俺達の音楽は現実逃避のためのものではありません。あなたがしっかり現実と対峙して乗り越えて行くためのものです」
という渋谷の言葉がまさにひたむきでしかないものであるからだ。こうした言葉がきっとまた2023年に新たな曲になっていくのだろう。だからこそビーバーの曲や言葉がそのままバンドそのものになっていくのだ。
そんな言葉の後に観客が思いっきり両手を高く掲げ、その両手で手拍子をするのはもちろん「青い春」。ビーバーはよく「手は頭の上でお願いします」と口にするが、それが言わずとも実践されているこの規模の光景はやはり圧巻である。
そんな中で背面のスクリーンに星空を思わせるような映像が映し出される中で演奏されたのは「東京流星群」であり、
「ダサいからあんまり言いたくないんだけど、俺達今日が今年最後のライブです!」
と言っていたように2022年の、これまでのバンドの全てをここに刻み込もうとするかのような選曲であり、我々がまだ一緒には歌えないからこそ柳沢も上杉もタイトルフレーズ部分で思いっきり声を張り上げる。間違いなくコロナ期間でのライブはそのメンバーのコーラスワークをさらに強靭なものに進化させたと思う。
そして渋谷は最後に
「色んなルールがある状況ですけど、今が1番それが曖昧かもしれない。ライブによってやっていいこととそうでないことが違う。でもあの頃のライブハウスにルールがなかったように、それぞれがそれぞれの楽しみ方を尊重することができたら。
演者でも主催でもなくて今日はあなたが主役。主役は何やってもいいんじゃなくて、隣の人を尊重できる人。それがこの人数連鎖していくのはロマンだ」
という言葉を残して、まさにその言葉がそのまま歌詞に、曲になったかのような「人として」が演奏された。こんなライブを見せられたら、2023年もこのバンドのように人としてカッコよく生きていたいし、このバンドを愛し続けるしかないじゃないかと思う。それは演奏後に
「この後に我々のレーベルメイトのsumikaがこのステージのトリを務めます。人気者だから言わなくても見てくれると思うけど、最高のライブをやってくれるはずだから見て行ってください!」
と仲間のsumikaへバトンを繋げる言葉も含めて。2022年、いろんな場所でライブを見ては力を貰ってきたこのバンドの1年の最後のライブを見ることができて本当に良かったと思っている。
1.名前を呼ぶよ
2.突破口
3.ひたむき
4.青い春
5.東京流星群
6.人として
19:50〜 sumika [EARTH STAGE]
そうしてSUPER BEAVERからバトンを渡されたsumikaがこの日のEARTH STAGEのトリ。JAPAN JAMでもそうだったが、もはや完全にロッキンオンのフェスのトリを担うべきバンドになった。
最近お馴染みの須藤優(ベース)、George(キーボード)、Nona(コーラス)というゲストメンバーを加えた7人編成で登場すると、そのゲストメンバーである金髪になったGeorgeと髪色から服まで黒で統一されたNonaの存在が爽やかなサウンドにより鮮やかな彩を加える「フィクション」でスタートし、黒田隼之介(ギター)のリフが癖になる、ハンドマイクになった片岡健太(ボーカル&ギター)がステージ左右のスクリーンの下の通路まで歩いて行って歌い、カメラ目線パフォーマンスも見せてくれる「Flower」と、序盤からsumikaならではのハッピーな空気の音楽を存分に感じさせてくれる。
「最後だからみんなもう疲れてるんじゃないかなぁ」
と片岡が言ってから演奏されたおなじみの「ふっかつのじゅもん」ではイントロから片岡と黒田が左右に展開してギターを弾き、小川貴之(キーボード)が「ヘイ!」というコーラスフレーズ部分で腕を上げるように煽ると観客もそれに呼応するかのように腕を上げる。
さらには片岡がいきなりギターを弾きながら
「ああ 夜を越えて 闇を抜けて
迎えに行こう」
というフレーズを歌い始める「ファンファーレ」は自分もそうだがこのコロナ禍になってからのライブでこの曲を聴いて救われてきたという人もたくさんいるだろう。荒井智之が笑顔でドラムを連打する傍らで須藤がベースを掲げるようにする姿はメンバーとかゲストメンバーとかじゃなくて、今ステージにいる人全員がsumikaとしてこのライブを作っているということを感じさせてくれる。
するとジャジーなサウンドの「Strawberry Fields」では間奏でメンバー紹介も兼ねたソロ回しも行われるのであるが、Nonaの張り上げるようなボーカルから始まって、誰がどんなサウンドを鳴らしているのかということをしっかり把握させてくれるようなアレンジだ。黒田の音階が上がっていくようなギターフレーズとそもそもこうしたサウンドの素養を持っているかのような荒井がいるからこそ成り立つ曲とも言えるだろう。
再び片岡がハンドマイクになってステージを歩き回りながら歌うのは「Traveling」であるが、「Flower」よりもゆったりとしたリズムとサウンドの曲(でも歌詞はちゃんと聞くと結構えげつない)であるだけにより一層カメラ目線をして歌ったりという姿が映える。もうロッキンオンのフェスでは[Alexandros]の川上洋平とこの片岡がカメラ目線歌唱パフォーマンスをする最たる存在と言っていいだろう。どちらも何度もフェスのトリを担ってきたバンドであるし、今年は[Alexandros]主催のライブで対バンも果たしたが、こうした部分からも共通する部分を感じさせる。
そんな片岡がアコギを弾きながら歌うのは、この冬の季節がピッタリのバラード曲「願い」で、片岡の歌唱の見事さ、スケールの大きさを最も感じさせてくれる曲だと言えるだろう。トリであるだけに持ち時間が他のアーティストよりも長いとはいえ、ここまでの選曲はsumikaの持つあらゆる要素や音楽性を初めて見る人もたくさんいるであろうフェスという場でもしっかり示すものである。
そして片岡は
「専門学校2年の時に夏のひたちなかで開催されていたロッキンに行った。行く前は就活前最後の思い出作りと思ってたのに、ライブを全部見て帰る時には俺は俺の人生を生きたい、俺の物語の主人公でありたいと思った。何となく就職して、何となく家族ができて、何となく幸せになるんじゃなくて、バンドで生きようと思った。ロッキンオンは俺の人生を捻じ曲げてくれたフェスを作ってくれた」
とこのフェスへの想いを口にした。それは今年の夏のロッキンの時にもその時にBUMP OF CHICKENを見たということを話していたのだが、自分がsumikaのことが大好きなのはそうしたエピソードが演者と観客という立場は違っても自分が経験したこと、思っていることを口にしてくれているからだ。自分も10代の時にひたちなかのロッキンに行くようになって人生が変わった。ずっとこうしてこのフェスに行き続ける人生でありたいと思った。そうして自分の人生をより楽しいものに変えてくれたことも、片岡にバンドとして生きていこうと思わせてくれたことも、ロッキンオンには本当に感謝してもしきれない。ロッキンオンがフェスを作ってくれていたから、こんなに素敵なバンドの音楽を聴き、ライブを見ることができているのだ。
そんな言葉の後に最後に演奏されたのは、前身バンドのbanbi時代の曲を今のsumikaでアレンジした「言葉と心」で、ストレートなギターロックサウンドに乗せてスクリーンには歌詞が次々に映し出されていく。その中の
「心の言葉で大事な君と向き合いたいのです」
というフレーズがまさに片岡の言葉が心の言葉であり、我々と向き合うためのものであるということを感じさせる。この曲が収録されたアルバム「For.」を自分は年間ベストディスクの2位に選出した。その理由として最も大きいのはこの曲が入っているからでもある。だからこそ1年の最後にこの曲を聴くことができたのが本当に嬉しいのだ。
時間がないからかすぐに再登場したアンコールではもちろん
「とっておきの曲」
として「Shake & Shake」が演奏される。片岡は軽やかにステージを駆け回りながら時には黒田や小川と肩を組むような姿を見せるのだが、2コーラス目の打ち込みになるような部分で今までは手拍子をしたりしていた荒井が思いっきりドラムを叩くようになっていた。そうしてライブの形をアップデートしながら片岡は
「マイヘアに届いてるといいな」
と口にした。優しすぎる優等生的に見られることも多々あるけれど、やっぱりsumikaが優しいことは変わりない。その優しさがそのまま音楽になっているからこそ、sumikaが好きなのだ。
こうして日本最大級のフェスのメインステージのトリを務めるような存在になったsumikaは5月についに横浜スタジアムでのワンマンに挑む。その時には「Lovers」も、「「伝言歌」」も我々観客が一緒に歌えるようになっていたら。その光景を目に、心に焼き付けたいと思っている。
リハ.Lovers
リハ.1.2.3..4.5.6
1.フィクション
2.Flower
3.ふっかつのじゅもん
4.ファンファーレ
5.Strawberry Feilds
6.Traveling
7.願い
8.言葉と心
encore
9.Shake & Shake
11:00〜 ハンブレッダーズ [GALAXY STAGE]
このフェスがこうした規模で開催出来なかった期間に一気に規模を拡大してきたバンドである。今やホールクラスでもチケットが即完するようになったハンブレッダーズがこの日のGALAXY STAGEのトップバッターを担う。3年前のASTRO ARENAから一気にジャンプアップである。
おなじみのSEでメンバー4人がステージに現れると、ukicaster(ギター)が軽やかかつ力強くリフを鳴らす「BGMになるなよ」からスタートし、早くも超満員になっている客席からはたくさんの腕が上がる。それは「ワールドイズマイン」でもそうなのであるが、広いステージ上を動き回りながらベースを弾くでらしはもちろん、こんなに大きなステージを超満員にしていても全く変わらないムツムロアキラ(ボーカル&ギター)の平熱っぷりとポーカーフェイスっぷりは凄いなと思う。もちろん気合いは入っているだろうし、テンションも上がっているのだろうが、この男がそれを目に見える形で見せる日は来るのだろうか。
そのムツムロが
「俺たちはぼっち・ざ・ろっくには携わってないですけど、ぼっちのためのロックなら俺たちに任せてください」
と、やはりあのアニメを見ていたんだなと思わせるような言葉から、そのアニメのテーマソングになっていてもいいくらいにそうした学生時代を描いた「DAY DREAM BEAT」がそうした学生時代を経験した人のために鳴らされる。今その状況にいる人ももちろん、かつてそうだった人にも響くからこその「ネバーエンディング思春期」バンドである。
「朝からこうしてたくさん集まってくれてるみんなのその感じ、いいね」
と言って最新アルバム「ヤバすぎるスピード」収録の「いいね」に繋げるというあたりはやはり実に見事であるし、アニメ主題歌でありながらもやはりひたすらに音楽への愛を歌っている歌詞による「光」と続くあたりはバンドが早くも完全に新作モードに突入していることがわかる。2年連続でこうしてフルアルバムをリリースしているのも凄いが、そのブックレットにメンバーによるライナーノーツが掲載されていて、それが曲への理解度をさらに深めてくれるだけにこのバンドのCDを買おうと思うのだ。
さらにはタイトル曲の「ヤバすぎるスピード」がまさにヤバすぎるスピードで持って鳴らされる。リズムもギターも含めて。それはそのまま今のこのバンドの生き様を示しているとも言えるのであるが、やはりこの曲も歌詞の内容は音楽への愛そのものである。ハンブレッダーズの曲は全てラブソングであるが、その対象はひとりぼっちの自分を救ってくれた音楽でありロックだ。それをあらゆる曲と歌詞で歌い続けている。
「このバンドは俺とドラムの木島が高校生の時に始めたバンドなんだけど、来年も、これからもあなたにとってのフェイバリットソングを作り続けていきます」
と言って最後に演奏された「フェイバリットソング」ではムツムロがかなり歌詞を飛ばしていたのだが、それは久しぶりに歌うから普通に飛んだのか、あるいはukicasterとでらしがそれぞれ木島のシンバルをステージ前まで持ってきて叩きまくるという自由っぷりを見せていただけに集中できなかったところもあるのか。それは年明けに続いていくツアーで明らかになるはずだ。
個人的なステージ予想でもこのバンドをGALAXYにしていたが、まさかこんなに超満員になるなんて思っていなかった。もしかしたら「スクールカーストの最底辺」から始まったバンドは日本で1番大きなフェスのメインステージに立つ日が来るかもしれない。それは一つのムツムロの学生時代に抱えていたものの完遂になるかもしれないだけに、いつかそんな瞬間を見てみたい。曲を聴くたび、ライブを見るたびにこのバンドの音楽が、自分の歌だとはっきりわかっていく。
1.BGMになるなよ
2.ワールドイズマイン
3.DAY DREAM BEAT
4.いいね
5.光
6.ヤバすぎるスピード
7.フェイバリットソング
12:05〜 indigo la End [GALAXY STAGE]
直前に後鳥亮介がコロナ感染したことにより(川谷絵音のバンドは今年はことごとくロッキンオンのフェスの直前にメンバーが感染したりしている)、なんとゲスの極み乙女の休日課長が代役として参加しての出演となる、indigo la End。逆に実にレアなライブであるとも言える。
ささみおとえつこというおなじみのコーラスサポートメンバーも加えた6人編成で登場すると、川谷絵音(ボーカル&ギター)、長田カーティス(ギター)、佐藤栄太郎(ドラム)がスーツ姿であるだけに柄シャツを着ている休日課長の姿が異彩を放っているのであるが、ギターロックなサウンドの「夜明けの街でサヨナラを」の演奏が始まると、確かに弾き方やスタイルは後鳥と全く違うけれどサウンドとしては全く違和感がないのは休日課長のベーシストとしての凄さを思い知らされるし、そもそも昔はこのバンドのメンバーでもあったという要因もあるのだろうか。
ささみおとえつこの重ねるコーラスが切なさを醸し出し、バンドの演奏がそれを加速させていく「想いきり」では佐藤のドラムのビートがまるでリズムマシンのように正確でありながらも人間としての力強さを感じさせる。やはりこのバンドは演奏力がとんでもないバンドだとライブを見るたびに実感する。
さらにそんなバンドのギターロックさを最大限に感じさせるようにカーティスのギターが唸りまくる「名もなきハッピーエンド」から、まさにタイトル通りの実験性を感じさせるような「実験前」では休日課長が前に出てきてベースを弾きまくるだけではなく、川谷も前に出てきてスーツ姿であることを厭わずにステージ上で寝転がるようにしてギターを弾きまくる。サウンド自体もカオスの極み的な曲であるが、その空気をさらに引き出しているのはこうしたメンバーのパフォーマンスであるし、メロウなラブソング的な代表曲だけを知っていてライブに来た人からしたらこのバンドの姿には驚くんじゃないだろうか。
そんなアッパーなロックサウンドから一気にメロウな雰囲気へと変わるのは「チューリップ」であるが、やはりそうした曲でもバンドの演奏(特にリズム)は実に力強いし、続く「邦画」では曲の最も大きなインパクトを持つ
「泣いたり 笑ったり」
のフレーズをコーラス2人が歌うというあたりはメンバーとしては4人ではあるけれども、このバンドがメンバー以外の人(もちろん休日課長含む)がいてくれるから成り立っているということがよくわかるのである。
そんな休日課長は久しぶりにこうしてindigo la Endでベースを弾いた感想を
「やっぱり後鳥さんは偉大だなって思いましたね」
と口にする。後鳥が作ったベースラインを弾いているだけにその凄さがよくわかるのだろうし、川谷も
「課長は昔、indigoのメンバーでもあったんで、こうして1年の終わりに大きなステージで一緒に演奏できるっていうのが本当に感慨深いです」
と口にした。自分が初めてライブを見た時はもう課長はバンドにはいなかったけれど、渋谷の小さなライブハウスでほとんど客もいないような状態だった。(「さようなら、素晴らしい世界」がリリースされたばかりの時)
それよりさらに前だったら、課長とindigoでこんなに大きなステージに立って演奏しているなんて想像できないことだっただろうなと思う。
そして最後に
「季節外れの曲だけど」
と言って川谷がステージを左右に歩き回りながら歌うのがスーツ姿だからこそいつもとはまた違うカッコよさを感じさせる「夏夜のマジック」では客席一面にたくさんの腕が上がる。その光景はこんなに人がいたのかと思うものでもあるし、ゲスと違ってメディアで一気にバズったり、笑えるようなことをしなくても自分たちが信じる良い音楽を追求してきたこのバンドだからこそ見れた景色なんだよなと思っていた。
1.夜明けの街でサヨナラを
2.想いきり
3.名もなきハッピーエンド
4.実験前
5.チューリップ
6.邦画
7.夏夜のマジック
13:10〜 ハルカミライ [GALAXY STAGE]
しょっちゅうライブを見ているハルカミライであるが、この日にライブを見る心構えが少し違うのは今年最後のライブを観る機会でもあり、My Hair is Badが椎木知仁の喉の不調でキャンセルとなり、代役としてこのバンドがこの後にEARTH STAGEにも出演するから。そんなあまりにもスペシャルなハルカミライの3年ぶりのCDJである。
先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、金髪の小松謙太(ドラム)の3人がステージに現れてサウンドチェックでショートチューンを連発すると、本番では橋本学(ボーカル)がおなじみの巨大フラッグを持って登場し、関がイントロのギターを鳴らしてのおなじみ「君にしか」からスタートするのだが、そのまま「カントリーロード」へ…という鉄板の流れを止めていきなり「ファイト!!」を挟み、橋本も関もステージを転がり回るというのはセトリの予定などあるようでないと言えるハルカミライだからこそである。
そうして「ファイト!!」を挟んだ後の「カントリーロード」では間奏で関がアンプの上に立ってギターソロを弾きまくると、橋本はブレイク部分で
「この後EARTHにも出るけど、これが準備運動とか全く思ってないから!CDJ台風の目!事件起こしにきた!ハルカミライだー!」
と叫ぶ。もうこの段階でこの日のこのバンドのライブが伝説になるということは確定したものと言えるのだが、須藤は
「みんな「今日何回「ファイト!!」やるんだろう?って思ってるだろうけど、そんな安売りしないから」
と言いながら早くもここでも「ファイト!!」を挟み、そのままツービートに疾走する「俺達が呼んでいる」とパンクに駆け抜けていくだけに、それぞれの立ち位置が決まっている前方抽選エリアもスタンディングのライブハウスかと思うような熱気で飛び跳ねまくっている。
そんな中で意外な選曲だったのは、先日リリースされたばかりの新作EP「Symbol 2」で再録された「革命前夜」。初期のハルカミライがとにかく歌心を前面に出していたバンドであったことを思い出させてくれる曲でもあるが、それはEARTH STAGEにこのバンドが立つ直前のこのライブこそが革命前夜と言えるものなのかもしれないとも思う。
するとまたしても(リハも含めるとすでに4回目)「ファイト!!」を演奏すると、このバンドの武器であるショートチューンをひたすらに連発していく。そこにはペース配分という言葉なんて全くないのだろうし、フェスではそこまで聴ける機会のない「エース」が聴けるのも嬉しいところだ。
そうしてアゲにアゲまくった後には
「自己紹介します!」
と言って「QUATTRO YOUTH」が演奏され、それぞれのことを歌ったフレーズで橋本はそのメンバーのことを指さす。体調不良になろうが、アキレス腱を断裂しようが、この4人じゃないとハルカミライじゃないから、この4人でしかステージには立たない。今年の最後に聴くこの曲はそんなことを感じさせてくれる。
もう完全にその場の思いつきで須藤が橋本に耳打ちして挟まれたショートチューン「To Bring BACK MEMORIES」がやはりバンドだけならず観客のテンションすらもさらに押し上げると、そこからは
「1番綺麗な君を見てた」
のフレーズで観客が拳ではなくて人差し指を掲げ、それが
「2人だけ」
のフレーズで2本指になるのがロマンチックな「ウルトラマリン」から、「Predawn」というこのバンドのメロディの美しさ、キャッチーさを感じさせてくれる曲が続く。フェスとなると初めて観る人もたくさんいるだろうし、そうした人たちが暴れまくるパンクな曲だけではなくてこうした名曲と呼べる曲までも聴いてくれるのは実に喜ばしいことだ。それは短い時間の中でこれだけ曲数を連発するこのバンドだから見せられる幅の広さと言えるかもしれないが。
そして最後に演奏されたのは「僕らは街を光らせた」であり、その爆音、轟音サウンドに乗せて歌われる
「地獄の果てを
音楽の果てを
この歌の果てを
歓声の果てを」
というフレーズにコロナ禍になってから何回救われてきただろうか。それは歓声をあげることができないこの状況下に図らずもこの歌詞がシンクロしてしまったから。このバンドがこうしてライブをやりまくってくれていれば、その地獄のような日々から少しだけでも前を向けるような気がするのだ。
しかしながらまだ時間が残っているということで、「ファイト!!」を倍速バージョンで演奏すると、須藤が小松に「もっともっと速く!」とジェスチャーする超倍速バージョンまでも演奏されるのであるが、もうその速さの演奏と歌唱は笑ってしまうくらいのレベルだ。しかもこの35分間に17曲と可能な限りに曲を詰め込みながらも、バンドはこの後にもう1回ライブを控えている。
「ここにいる人たちは後でEARTHの方にも絶対来いよ〜」
と須藤は言っていたが、そこでこのライブを超えるくらいの伝説を見せてくれるなんて…結構予想していた。だってこれまでにも何回もそういうライブを見せてきてくれたバンドなのだから。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
リハ.To Bring BACK MEMORIES
1.君にしか
2.ファイト!!
3.カントリーロード
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.革命前夜
7.ファイト!!
8.フュージョン
9.Tough to be a Hugh
10.エース
11.QUATTRO YOUTH
12.To Bring BACK MEMORIES
13.ウルトラマリン
14.Predawn
15.僕らは街を光らせた
16.ファイト!! 倍速
17.ファイト!! 超倍速
14:00〜 ZAZEN BOYS [COSMO STAGE]
このフェスの黎明期から出演し続け、当時はEARTH STAGEをも満員にしていたバンドである、ZAZEN BOYS。ステージは小さくなってもやはりこうしてこのフェスに戻って来てくれるくらいにこのフェスの守護神と言っていいバンドである。向井秀徳(ボーカル&ギター)は昨年はNUMBER GIRLとして出演しているが。
メンバーがステージに現れると向井が
「幕張、時には女とまぐわり」
というこのフェスでのおなじみの口上を述べて「HIMITSU GIRL'S TOP SECRET」からスタートするのであるが、「MABOROSHI IN MY BLOOD」も含めて柔道2段・松下敦のドラムと、必死の形相でその松下のドラムに向かい合うようにしてベースを弾くMIYAのリズムは体を乗らせることすらも許さないくらいに複雑極まりない変拍子の連打に次ぐ連打っぷり。間違いなくZAZEN BOYSでしかできない音楽とライブであるが、初開催時からリズム隊がメンバーチェンジをしてもその感覚が失われないというか、さらに濃くなっているあたりは向井のメンバーのチョイスの審美眼っぷりを感じさせる。
カシオマンこと吉兼聡のギターがサイケデリックな雰囲気を醸し出す「IKASAMA LOVE」では吉兼が変わらないように見えてよく観ると年齢を重ねたことを感じるのだけれど、その良い意味での変態性が強いギタープレイは全く変わることはない。それは向井が人力ディレイを駆使する姿がめちゃくちゃ凄まじい演奏をしているのに何故か笑えてきてしまう、レイドバックしたサウンドの「Delayed Brain」もそうである。
今もMATSURI STUDIOでMATSURI SESSIONを日々練り上げているバンドの最新曲が「永遠少女」であり、まぁZAZEN BOYSでしかないような曲であるのだが、NUMBER GIRLが再解散したことによってこれからはこのバンドでこうして新曲や新作も生み出されていくんだろうなという期待を抱かせてくれる。
そんな中で向井がギターを置くと、何やら袋を持ち出して、そこから取り出したのは手足が伸びるゴム製の人形「ビロリンマン」で、NUMBER GIRLの再解散ライブの時にも登場したらしいが、「はあとぶれいく」を向井が歌いながらその手足を引きちぎれるんじゃないかと思うくらいに伸ばす姿に爆笑してしまう。これまでにも何度も笑わされてきた曲だけれど、一言も発することなく、曲を演奏しているだけでこんなに笑わせてくれるバンドはこのバンド以外に間違いなくいないだろう。
そんなライブの最後には吉兼と向井のギターが絡み合う「RIFF MAN」でそのグルーヴの凄まじさに圧倒されながら、やはり向井によるこの曲の
「飛び出る昇り龍」
のフレーズはライブが終わった後もどうしてもクセになってしまう。
「MATSURI STUDIOからMATSURI SESSIONを伸び伸び伸ばしてやってきました、ZAZEN BOYSでした。幕張、時には女とまぐわり」
と言って向井がステージから去ると、メガネをかけたMIYAが最後まで笑顔で観客に手を振っていたのが印象的だった。それはちゃんとこの客席が埋まっていたからこそ。
このフェス立ち上げ時に「冬に屋内でフェスやるなんて無理だよ」と周りに言われまくった中で、最も尽力してくれた、やろうと言ってくれたのは当時は2日連続出演をしていたくるりであり、このバンドとソロでも出演していた向井だったとかつて社長の渋谷陽一は語っていた。もう当時からずっと出続けているバンドは今年はこのバンドくらいしかいない。そうしてずっと出演し続けてきたからこそ、いつまでたってもやめられないのね。
1.HIMITSU GIRL'S TOP SECRET
2.MABOROSHI IN MY BLOOD
3.IKASAMA LOVE
4.Delayed Brain
5.永遠少女
6.はあとぶれいく
7.RIFF MAN
15:20〜 Base Ball Bear [GALAXY STAGE]
06/07の元旦開催日に獅子舞や巫女さんなどのコスプレで出演して以来、19/20までは毎年出演し続けてきた、このフェスの番人的なバンドの1組である、Base Ball Bear。しかしながら今年は本人が出演を辞退した秋山黄色の代打での出演となった。毎年ここで見てきただけに、そこには少し寂しさも感じてしまう。
その代役出演が決まったタイミングもかなり直前、完全にチケットが売り切れた後であるだけに、元からこの日のチケットを持っていてベボベを好きな人しか集まりようがないというこのフェス初めてと言えるくらいにアウェーな状況下でメンバーがおなじみのXTCのSEでステージに現れると、堀之内大介(ドラム)がビートを刻み始める名曲「short hair」からスタート。そのメロディとサウンドはいつだって我々をキュンと切なくさせてくれるのであるが、曲終わりで小出祐介(ボーカル&ギター)による
「どうもこんばんは、Base Ball Bearです」
という挨拶の後には昨年リリースの最新アルバムからタイトル曲の「DIARY KEY」が演奏される。「short hair」の後に演奏されても全く遜色ない爽やかなギターロックサウンドはこの3人になってからのベボベが変わることなく、でも進化してきたことを示している。個人的にもこのバンドが最後に出演した2019年にこのステージで最後に「風来」を演奏してから全くライブができない状況の世の中になってしまっただけに、こうして今のベボベの新しい曲をこのフェスで聴けるのが実に嬉しい。
「運営と秋山黄色君から、代役として出てくれないかって言われて、年末は休みの予定だったんで若干渋ったんですけど(笑)、僕らも4人から3人になった時に先輩や同期、後輩といろんな人に助けてもらった。その時の感謝をこれから返していきたい。
これを貸し1として、先輩風を吹かせるならば秋山君は必ずこの恩を返しに来い。運営は来年からは普通に呼べ(笑)」
とこの出演に至るまでの流れを小出が口にし、最後には堀之内も「それな!」と返すのだが、こうして代わりに出演したことによっていつか秋山黄色が対バンにベボベを呼んでくれたりしたらどちらも好きな身としては本当に嬉しいし、ベボベは秋山黄色が必ず戻ってくると信じている。ベボベと自分は同世代として一緒に歳を重ねてきたけれど、だからこそ自分たちが大人になった、ベテランになったという感覚が希薄だったりする。それでもこの小出の言葉を聞いて、ベボベが頼れる先輩的な立ち位置のバンドになったんだなと思った。そういえば、中止になってしまった20/21では小出は赤い公園のサポートギターでも出演するはずだったんだよな。
そんな感傷に浸りながらも、11月に開催された3回目の日本武道館ワンマン時に販売された新曲「海になりたい part.3」が爽やかなギターロックとしてのベボベを再定義するように鳴らされると、関根史織(ベース)も激しくステップを踏むようにして演奏する「LOVE MATHEMATICS」では前方エリアに集まった観客たちが歌詞に合わせて指を1本、2本、3本…と掲げていく。スリーピースバンドとして生まれ変わったベボベのギターロックサウンドのタイトさを感じさせてくれる。
それが最も現れているのは小出が関根と向かい合いながらラップし、リズムだけでグルーヴを生み出す「The Cut」だろう。これは経験と技術を重ねてきたバンドだからこそできる芸当であると言えるし、観客もサビでは飛び跳ねまくっている。
そして最後に演奏されたのは「Stairway Generation」であり、それを今の3人での形で演奏する姿からも、これからもこのバンドが上がるしかないようだ、ということを感じさせてくれる。つまりは小出も言っていたように、これからもずっとこのバンドにこのフェスに出演し続けて欲しいということ。それこそ2023年にロッキンに出演したら17年ぶりくらいに浴衣でライブをやることも宣言しているだけに。そう思うのはロッキンオンのフェスで一緒に歳を重ねてきて、デカいステージまで連れて行ってくれたバンドだからだ。
リハ.17才
1.short hair
2.DIARY KEY
3.海になりたい part.3
4.LOVE MATHEMATICS
5.The Cut
6.Stairway Generation
16:35〜 ハルカミライ [EARTH STAGE]
この日2回目のライブにして、今回はMy Hair is Badの代役としてメインステージに立つ、ハルカミライ。GALAXY STAGEも完全に超満員だっただけに、EARTHも始まる前からしっかり埋まっている。
サウンドチェックでは須藤が
「この曲だけ覚えて帰ってください〜」
「違う曲やりまーす」
と言って「ファイト!!」を3連発すると、本編では先程と同じように橋本学がフラッグを持って登場するのであるが、小松は黒いマイヘアTシャツをタンクトップに加工して着ているというあたりからもマイヘアへの愛情を感じさせる。
そんなライブはやはり先程同様に「君にしか」から始まり、「カントリーロード」に行くと見せかけて…という流れも先程同様に「ファイト!!」が挟まれるのかと思いきや、なんとマイヘアのショートチューン「クリサンセマム」が演奏される。代役出演が決まったのが前日だっただけに、そこから曲を覚えたのか、あるいは元から演奏していたのか。
「君がなんか悲しそうで」
のフレーズでは関と須藤もコーラスを重ねるあたりはかなりというかめちゃくちゃ慣れている感じすらあるが。
そんなサプライズカバーからの「カントリーロード」ではやはり関がアンプの上に立ってギターを弾きまくり、橋本は
「今日2ステージ目!伝説起こしに来ました、ハルカミライです!」
と高らかに宣言し、再び「クリサンセマム」を演奏するのだが、今回は関と須藤が1つのマイクで2人で歌ったりとその光景や演奏の仕方はガラッと変わっている。てっきり「ファイト!!」の代わりに「クリサンセマム」を演奏しているのかと思ったら「ファイト!!」も普通に演奏されるだけにこの後がどうなることか全くわからなくなるのだが。
今回は「俺達が呼んでいる」からショートチューン「フルアイビール」にすぐに繋がるというライブではおなじみのアレンジが披露されると、もうこの曲やりたくて仕方ないとばかりに「クリサンセマム」が再び演奏され、観客全員を鼓舞するような「PEAK'D YELLOW」がこのEARTH STAGEのスケールにふさわしいパンクアンセムとして鳴らされていく。「へいへいほー」などのこの曲のコーラスは早くまた観客みんなで大合唱したいなとたくさんの人がいる場でのライブだからこそ思う。
するとライブでは定番の曲であるが先程は演奏されていなかった「世界を終わらせて」を演奏すると、すぐに曲中に
「音楽でもいい 映画でもいい
YouTubeでも お笑いでもいい
アニメやゲーム 読書でもいい
なんでもいい 好きならいい」
とマイヘアの「歓声をさがして」のフレーズを差し込み、曲の最後にも
「DJ放送室 僕の曲をかけて
みんなが帰っちゃう前に」
と加える。それはハルカミライが本当にマイヘアの曲が好きで、こうしてすぐに出てくるくらいに体の中に染み込んでいるからこそだ。そこには間違いなくマイヘアへのリスペクトがあるのだが、小松もステージ前まで出てくると
「CDJ、EARTH STAGE。ここが世界の真ん中!」
と言って演奏された「春のテーマ」の中で橋本は
「昨日LINEしたよ。学、ごめんなって返ってきた。俺からしたらあんまりにも強いバンドだからもう帰って来なくていいですよ、って思ってるんだけど(笑)それくらいに言える関係性ってことですわ」
と前日の夜に椎木にLINEをしたことを語る。それはそのままマイヘアがこのステージを後輩にして盟友のハルカミライに託したということでもある。
その想いを汲むかのように橋本は
「誰かに愛されて 誰かを愛している」
とマイヘア「ドラマみたいだ」のフレーズを歌ってから「アストロビスタ」へと突入していき、当然その歌詞は
「眠れない夜に私 My Hair is Badを聴くのさ」
と変えられ、さらに曲中には
「春恋に落ちて
耳を澄まして」
と「真赤」のフレーズを歌い、曲最後には
「君がいれば 僕は負けない」
と「味方」のフレーズまでも歌う。今でもたまーに対バンすることもあるけれど、同じレーベルに所属する兄弟的な存在のバンド同士という間柄としてマイヘアのことが本当に好きで、普段からずっと曲を聴いたりしているんだろうなということがよくわかる。そんなマイヘアへの思いがハルカミライにさらなる力を与えていると言っていいだろう。
そしてそんな思いが全て音として鳴らされるのはそれまでの暴れっぷりから一転してそれぞれがその場で轟音を鳴らし、真っ白な照明がそのメンバーを照らす「ヨーロービル、朝」。その迫力っぷりとスケールはまさにこのEARTH STAGEにピッタリのものだ。自分はステージ予想の時点からハルカミライはEARTH STAGEに立つべきだと思っていたが、代役として立ったこのライブでこのステージに立つべきバンドであることをこれ以上ないくらいに証明した。きっと翌年からはこのEARTH STAGEに普通に立つこのバンドの姿を見ることができるはずだ。
しかしそんなライブの締めにふさわしい曲を演奏してもなお残り時間と残り体力をフルに使おうとするバンドはショートチューンを連発していくのだが、ここに「クリサンセマム」が入っているというのはマイヘアの代役としてのライブだからこそだろうが、結果的に2ステージで10回以上の「ファイト!!」を演奏することにもなったのであった。
マイヘアの代役として出演して、こんなにもマイヘアへの愛を入れながらも自分たちらしいライブができるバンドは間違いなくハルカミライしかいないだろう。ハルカミライのライブは1回1回全てが事件であり伝説であり、その瞬間にしか見れないものであるが、この日のライブはその最たるものだった。それは17年間通い続けてきて、数え切れないくらいのライブを見てきたこのフェスの中でもトップクラスだったと言っていいくらいのものだった。こんなライブを見せてくれるんだから、2023年もチケットが当たる限りはハルカミライのライブに行きたいと思う。
リハ.ファイト!!
リハ.ファイト!!
リハ.ファイト!! (途中まで)
1.君にしか
2.クリサンセマム
3.カントリーロード
4.クリサンセマム
5.ファイト!!
6.俺達が呼んでいる
7.フルアイビール
8.クリサンセマム
9.PEAK'D YELLOW
10.世界を終わらせて 〜 歓声をさがして
11.春のテーマ
12.ドラマみたいだ 〜 アストロビスタ 〜 真赤 〜 味方
13.ヨーロービル、朝
14.To Bring BACK MEMORIES
15.クリサンセマム
16.ファイト!!
17.クリサンセマム
18.ファイト!!
17:40〜 UNISON SQUARE GARDEN [EARTH STAGE]
そんなハルカミライの余韻が強く残り続けるEARTH STAGEに登場するのはUNISON SQUARE GARDEN。かつてはこのフェスではGALAXY STAGEのトリで大物の裏を任される的な位置だったこともあったが、今や完全にこのEARTHに立つべくして立つバンドになった。
おなじみの「絵の具」のSEでメンバーがステージに登場すると、暗闇の中でも不審に動く田淵智也(ベース)の靴が発光しているのも、鈴木貴雄(ドラム)がドラムセットから立ち上がって観客を煽るようにしているのもよくわかるのであるが、斎藤宏介(ボーカル&ギター)が
「君をストップモーション」
と歌い始めると観客がリズムに合わせて手拍子をするのは「instant EGOIST」という、誰がこの年末のフェスのメインステージの1曲目で演奏すると予想しただろうかという選曲。田淵はいきなり軽やかなステップでステージ上を歩き回りながらベースを弾くのであるが、イヤモニを気にしながらでも斎藤の歌声は実にクリアにこの巨大な空間に響き渡っていく。それは声量やサウンドのバランスもあるだろうが声質によってそう感じる部分もあるはずだ。
そんな曲のアウトロでスタッフが鈴木にヘッドホンを装着すると、
「かくしてまたストーリーは始まる」
と斎藤が歌い始めるとともに華やかな同期のサウンドが鳴らされる「kaleido proud fiesta」で鈴木はサビで早くも立ち上がるようにしながらドラムを連打しまくり、田淵もコーラスを叫ぶように歌うというあたりはやはりこの3人のバランスじゃないと生まれ得ない、演奏できない曲だなと改めて思う。
「祝祭の鐘よ鳴れ
かくして快進撃は始まった」
のフレーズが2023年からの全てのライブ、音楽シーンにとってリアルなものとして響きますように、と思うのも年末にこの曲を聴くからこそだろう。
さらにはイントロで田淵と鈴木がポーズを取るようにして始まった「シュガーソングとビターステップ」は良い意味でファンの期待を裏切るバンド(というか田淵)であるユニゾンが大ヒットしたこともあってか、今ではほとんどの機会で演奏するようになっている曲であるが、この曲のサビでたくさんの人が飛び跳ねている光景こそが、最高だ、幸せだって思えるものになっている。
そんなヒットシングル2連発の後には季節外れでありながらもどこか過ぎ去った今年の夏を振り返って感傷的な思いにさせる「夏影テールライト」から、ユニゾンならではのなんだこの曲の構成はと思ってしまうくらいに激しく展開していく「フィクションフリーククライシス」でバンドの鳴らす音とグルーヴの強さをフルに感じさせてくれる。というかこの辺りの選曲は本当にユニゾンはフェスだとなんの曲を演奏するのか全く予想がつかないと改めて実感させてくれるし、だからこそフェスのライブ1本1本も見逃せないバンドだと思う。
再び鈴木にヘッドホンが装着されると、ピアノとホーンによる華々しい同期のサウンドが否が応でもライブのクライマックスが来たと思ってしまう「君の瞳に恋してない」で、田淵はベースを左右にブンブン振りながら足を高く上げて演奏し、鈴木も原曲以上の手数のドラムで曲をアップデートする。それもまたライブならでのユニゾンの形であり、それは田淵が袖の方に消えてしまうんじゃないかと思うくらいにこの広いステージを走り回るようにして演奏し、斎藤の歌唱もさらに極まっていく「桜のあと (all quartet lead to the?)」もそうである。鈴木のポップな曲でありながらもぶっ放すようなドラムは鈴木がこのステージで音を鳴らすことによって解放されているんだなということが伝わってくる。
そしてアニメタイアップである最新シングル「カオスが極まる」でのスピード感あふれるサウンドとデジタルコーラスがまさにカオスが極まっていることを感じさせるのであるが、決して合唱などを煽ったりすることがなかったユニゾンでも声が出せるようになったらこのコーラス部分では合唱が起きたりするようになるのだろうか。そんなことを思ったりしていたら、
「UNISON SQUARE GARDENでした!」
とだけ口にしてメンバーはステージを去って行った。鈴木が胸に手を当ててから去って行くのもいつも通りでもあるが、それでもやはりいつもよりもさらに堂々とした、解放されたかのような雰囲気を確かに感じていた。
ひたすらにライブをやりまくってきた2022年。それは田淵がインタビューで
「ライブでしか楽しめないやつも絶対いるから」
と、自分のようなやつのために活動してきたことでもあることを語っていたが、その中でもシングルは定期的にリリースされてきた。その既発シングルが増えてきたことによって期待するのはやはりアルバム。果たして2023年には新作が聴けて、そのツアーを見ることができるのだろうか。そろそろこのバンドもそこまで時計の針を進めようとしているはずだ。
1.instant EGOIST
2.kaleido proud fiesta
3.シュガーソングとビターステップ
4.夏影テールライト
5.フィクションフリーククライシス
6.君の瞳に恋してない
7.桜のあと (all quartet lead to the?)
8.カオスが極まる
18:45〜 SUPER BEAVER [EARTH STAGE]
日割り発表時には現在の規模感からしてもトリもあり得るかなとも思ったが、トリ前での出演となったSUPER BEAVER。クリスマスまでアリーナツアーをやりながらも、12月の年末のフェスもフル稼働という現場至上主義を掲げるバンドのスタンスは変わることはない。
おなじみのインストのSEでメンバー4人が登場すると、柳沢亮太がギターを鳴らして始まったのはこのバンドの存在を広く世の中に知らしめた「名前を呼ぶよ」であるのだが、
「ねぇ 今楽しいな」
というフレーズを渋谷龍太(ボーカル)が感情を思いっきり込めるようにして歌うのも、上杉研太(ベース)が柳沢とともにタイトルフレーズで声を重ねるのにも並々ならぬ気合いを感じさせる。
特効が炸裂して観客を驚かせるとステージ上では炎も燃え盛る中で藤原広明のドラムのビートが一気に加速して行くことによってライブそのものにスピード感を与えながら、
「正々堂々」「威風堂々」
とこのバンドの生き様をそのまま歌うような「突破口」から、タイトルからしてバンドの生き様というかもはやこのバンドそのものを表した言葉と言えるような最新シングル「ひたむき」とキラーチューンの連打に次ぐ連打に観客も手拍子などで応えていく。
そこには説得力しか感じないのは
「ここまでに「今年の悲しいこととか苦しかったことを全部置いていけ」っていろんなアーティストが言ってきたでしょ?でも俺はそうは言いません。そういう悲しさや苦しさはあなただから抱くことができた感情です。ならばその感情も全て抱えて来年まで持っていく。俺達の音楽は現実逃避のためのものではありません。あなたがしっかり現実と対峙して乗り越えて行くためのものです」
という渋谷の言葉がまさにひたむきでしかないものであるからだ。こうした言葉がきっとまた2023年に新たな曲になっていくのだろう。だからこそビーバーの曲や言葉がそのままバンドそのものになっていくのだ。
そんな言葉の後に観客が思いっきり両手を高く掲げ、その両手で手拍子をするのはもちろん「青い春」。ビーバーはよく「手は頭の上でお願いします」と口にするが、それが言わずとも実践されているこの規模の光景はやはり圧巻である。
そんな中で背面のスクリーンに星空を思わせるような映像が映し出される中で演奏されたのは「東京流星群」であり、
「ダサいからあんまり言いたくないんだけど、俺達今日が今年最後のライブです!」
と言っていたように2022年の、これまでのバンドの全てをここに刻み込もうとするかのような選曲であり、我々がまだ一緒には歌えないからこそ柳沢も上杉もタイトルフレーズ部分で思いっきり声を張り上げる。間違いなくコロナ期間でのライブはそのメンバーのコーラスワークをさらに強靭なものに進化させたと思う。
そして渋谷は最後に
「色んなルールがある状況ですけど、今が1番それが曖昧かもしれない。ライブによってやっていいこととそうでないことが違う。でもあの頃のライブハウスにルールがなかったように、それぞれがそれぞれの楽しみ方を尊重することができたら。
演者でも主催でもなくて今日はあなたが主役。主役は何やってもいいんじゃなくて、隣の人を尊重できる人。それがこの人数連鎖していくのはロマンだ」
という言葉を残して、まさにその言葉がそのまま歌詞に、曲になったかのような「人として」が演奏された。こんなライブを見せられたら、2023年もこのバンドのように人としてカッコよく生きていたいし、このバンドを愛し続けるしかないじゃないかと思う。それは演奏後に
「この後に我々のレーベルメイトのsumikaがこのステージのトリを務めます。人気者だから言わなくても見てくれると思うけど、最高のライブをやってくれるはずだから見て行ってください!」
と仲間のsumikaへバトンを繋げる言葉も含めて。2022年、いろんな場所でライブを見ては力を貰ってきたこのバンドの1年の最後のライブを見ることができて本当に良かったと思っている。
1.名前を呼ぶよ
2.突破口
3.ひたむき
4.青い春
5.東京流星群
6.人として
19:50〜 sumika [EARTH STAGE]
そうしてSUPER BEAVERからバトンを渡されたsumikaがこの日のEARTH STAGEのトリ。JAPAN JAMでもそうだったが、もはや完全にロッキンオンのフェスのトリを担うべきバンドになった。
最近お馴染みの須藤優(ベース)、George(キーボード)、Nona(コーラス)というゲストメンバーを加えた7人編成で登場すると、そのゲストメンバーである金髪になったGeorgeと髪色から服まで黒で統一されたNonaの存在が爽やかなサウンドにより鮮やかな彩を加える「フィクション」でスタートし、黒田隼之介(ギター)のリフが癖になる、ハンドマイクになった片岡健太(ボーカル&ギター)がステージ左右のスクリーンの下の通路まで歩いて行って歌い、カメラ目線パフォーマンスも見せてくれる「Flower」と、序盤からsumikaならではのハッピーな空気の音楽を存分に感じさせてくれる。
「最後だからみんなもう疲れてるんじゃないかなぁ」
と片岡が言ってから演奏されたおなじみの「ふっかつのじゅもん」ではイントロから片岡と黒田が左右に展開してギターを弾き、小川貴之(キーボード)が「ヘイ!」というコーラスフレーズ部分で腕を上げるように煽ると観客もそれに呼応するかのように腕を上げる。
さらには片岡がいきなりギターを弾きながら
「ああ 夜を越えて 闇を抜けて
迎えに行こう」
というフレーズを歌い始める「ファンファーレ」は自分もそうだがこのコロナ禍になってからのライブでこの曲を聴いて救われてきたという人もたくさんいるだろう。荒井智之が笑顔でドラムを連打する傍らで須藤がベースを掲げるようにする姿はメンバーとかゲストメンバーとかじゃなくて、今ステージにいる人全員がsumikaとしてこのライブを作っているということを感じさせてくれる。
するとジャジーなサウンドの「Strawberry Fields」では間奏でメンバー紹介も兼ねたソロ回しも行われるのであるが、Nonaの張り上げるようなボーカルから始まって、誰がどんなサウンドを鳴らしているのかということをしっかり把握させてくれるようなアレンジだ。黒田の音階が上がっていくようなギターフレーズとそもそもこうしたサウンドの素養を持っているかのような荒井がいるからこそ成り立つ曲とも言えるだろう。
再び片岡がハンドマイクになってステージを歩き回りながら歌うのは「Traveling」であるが、「Flower」よりもゆったりとしたリズムとサウンドの曲(でも歌詞はちゃんと聞くと結構えげつない)であるだけにより一層カメラ目線をして歌ったりという姿が映える。もうロッキンオンのフェスでは[Alexandros]の川上洋平とこの片岡がカメラ目線歌唱パフォーマンスをする最たる存在と言っていいだろう。どちらも何度もフェスのトリを担ってきたバンドであるし、今年は[Alexandros]主催のライブで対バンも果たしたが、こうした部分からも共通する部分を感じさせる。
そんな片岡がアコギを弾きながら歌うのは、この冬の季節がピッタリのバラード曲「願い」で、片岡の歌唱の見事さ、スケールの大きさを最も感じさせてくれる曲だと言えるだろう。トリであるだけに持ち時間が他のアーティストよりも長いとはいえ、ここまでの選曲はsumikaの持つあらゆる要素や音楽性を初めて見る人もたくさんいるであろうフェスという場でもしっかり示すものである。
そして片岡は
「専門学校2年の時に夏のひたちなかで開催されていたロッキンに行った。行く前は就活前最後の思い出作りと思ってたのに、ライブを全部見て帰る時には俺は俺の人生を生きたい、俺の物語の主人公でありたいと思った。何となく就職して、何となく家族ができて、何となく幸せになるんじゃなくて、バンドで生きようと思った。ロッキンオンは俺の人生を捻じ曲げてくれたフェスを作ってくれた」
とこのフェスへの想いを口にした。それは今年の夏のロッキンの時にもその時にBUMP OF CHICKENを見たということを話していたのだが、自分がsumikaのことが大好きなのはそうしたエピソードが演者と観客という立場は違っても自分が経験したこと、思っていることを口にしてくれているからだ。自分も10代の時にひたちなかのロッキンに行くようになって人生が変わった。ずっとこうしてこのフェスに行き続ける人生でありたいと思った。そうして自分の人生をより楽しいものに変えてくれたことも、片岡にバンドとして生きていこうと思わせてくれたことも、ロッキンオンには本当に感謝してもしきれない。ロッキンオンがフェスを作ってくれていたから、こんなに素敵なバンドの音楽を聴き、ライブを見ることができているのだ。
そんな言葉の後に最後に演奏されたのは、前身バンドのbanbi時代の曲を今のsumikaでアレンジした「言葉と心」で、ストレートなギターロックサウンドに乗せてスクリーンには歌詞が次々に映し出されていく。その中の
「心の言葉で大事な君と向き合いたいのです」
というフレーズがまさに片岡の言葉が心の言葉であり、我々と向き合うためのものであるということを感じさせる。この曲が収録されたアルバム「For.」を自分は年間ベストディスクの2位に選出した。その理由として最も大きいのはこの曲が入っているからでもある。だからこそ1年の最後にこの曲を聴くことができたのが本当に嬉しいのだ。
時間がないからかすぐに再登場したアンコールではもちろん
「とっておきの曲」
として「Shake & Shake」が演奏される。片岡は軽やかにステージを駆け回りながら時には黒田や小川と肩を組むような姿を見せるのだが、2コーラス目の打ち込みになるような部分で今までは手拍子をしたりしていた荒井が思いっきりドラムを叩くようになっていた。そうしてライブの形をアップデートしながら片岡は
「マイヘアに届いてるといいな」
と口にした。優しすぎる優等生的に見られることも多々あるけれど、やっぱりsumikaが優しいことは変わりない。その優しさがそのまま音楽になっているからこそ、sumikaが好きなのだ。
こうして日本最大級のフェスのメインステージのトリを務めるような存在になったsumikaは5月についに横浜スタジアムでのワンマンに挑む。その時には「Lovers」も、「「伝言歌」」も我々観客が一緒に歌えるようになっていたら。その光景を目に、心に焼き付けたいと思っている。
リハ.Lovers
リハ.1.2.3..4.5.6
1.フィクション
2.Flower
3.ふっかつのじゅもん
4.ファンファーレ
5.Strawberry Feilds
6.Traveling
7.願い
8.言葉と心
encore
9.Shake & Shake