COUNTDOWN JAPAN 22/23 day1 @幕張メッセ 12/28
- 2023/01/01
- 12:06
年末最大のフェス、COUNTDOWN JAPANが今年も幕張メッセで開催。去年はEARTH STAGEだけの1ステージ開催だったが、今年は3年ぶりにGALAXY STAGEとCOSMO STAGEが復活しての3ステージ制という規模にまで戻ってきた。自分が初めてこのフェスに来た時から、位置を変えながらもずっと存在してきたGALAXY STAGEと、こちらも実は設営初年度は今と位置が違っていたという試行錯誤の歴史を見てきたCOSMO STAGEがあるというだけでなんだか泣きそうになってしまう。
そうしてステージが去年よりも増えたことによって収容人数も増えたからか、去年よりも開演前に飲食ブースにもたくさんの人がいる。そもそもチケットが全日ソールドアウトしているというのもあるが、あのCDJの雰囲気が去年よりも確かに戻ってきているのが嬉しくなる。
開演前にはロッキンオンのフェスではおなじみの社長・渋谷陽一の前説が。今のライブシーンでは一時的に声を出すのが容認されているというルールになっているのだが、
「一時的な声出しってなんだ?って思うだろうということで、サンプルを持ってきました」
と言って、ヤクルトスワローズの村上宗隆がシーズン56号ホームランを打った時の映像が映し出され、この瞬間のように思わず出てしまう声は良いということを実にわかりやすく説明してくれるのであるが、今年数え切れないくらいに見たこの村上のガッツポーズをこのフェスでも見ることになるとは。ちなみにこの日はチケットに10万を超える応募があり、しかも観客の平均年齢が4日間で1番若いらしいが、7割が初めてこのフェスに来る人というのはさすがに驚きである。
11:10〜 Creepy Nuts [EARTH STAGE]
そんな渋谷陽一の前説の締めは
「結婚おめでとう!」
というものだったのだが、それはR-指定が先日結婚を発表したからである。今やロッキンオンのフェスのメインステージの火付け役であるCreepy Nutsがこの4日間のEARTH STAGEのトップバッター。
生活が夜型であるだけに今年は某フェスで遅刻したこともあるR-指定は
「この景色を見て目が覚めたわ!」
と言うといきなりの「合法的トビ方ノススメ」で観客を飛び跳ねさせまくる。もうその超満員のEARTH STAGEが飛び跳ねまくる様は酔いそうなくらいに幕張メッセが揺れているし、DJ松永は自身のスマホでその客席の様子を撮影しているのが面白い。今やあらゆるフェスでメインステージに立つような存在になったが、それでもこの景色は映像に収めておきたいということだろう。
「まだ朝やけど!」
と言ってから松永が曲をプレイした「よふかしのうた」ではR-指定のキレキレのラップも披露しながら「幕張のトップバッター」などのこの日ならではの歌詞も加えつつ、R-指定は「Oh Yeah」のコーラスパートで観客に
「一時的に!」
と声をかけて一時的な合唱を促す。この辺りのライブのルールに応じた反射神経も実に巧みであるが、そのR-指定がラップだけではなくて歌唱そのものも実に上手いことがよくわかる「2way nice guy」ではホーンの音なども華やかに鳴る中で松永のスクラッチなどのターンテーブルソロにも一時的な歓声が起こる。本人たちもそのスタイルへの矜持を口にしていたが、マイクとターンテーブルの2人だけでこのEARTH STAGEをこれだけ満員にし、これだけ盛り上げられるグループは今や他にいないだろうなと思う。
そんなトップバッターとしてこのフェスを盛り上げる役割を担うからこそ、このフェスの4日間がここからさらに盛り上がっていく、それがそのままこのフェスののびしろになっていくというR-指定の曲の繋ぎもやはり素晴らしいものがあるが、その「のびしろ」での客席一面の手拍子はスタンディング、フルキャパのこの会場、このフェスの景色がどれだけ凄いものだったのかということを思い出させてくれる。
ライブやりまくり、メディアにも出演しまくっている中で一体いつ作ったんだと思ってしまう今年リリースの最新アルバム「アンサンブル・プレイ」からリード曲「堕天」の華やかなサウンドとそれに呼応して挙がる腕がもうこのグループの曲はどれもがアンセムと言っていいくらいに受け入れられていることを示している。というかもうこのグループを見たくてこの日このフェスに来た人もたくさんいるんじゃないか?と思ってしまうくらいだ。
R-指定がタイトルを口にするときに噛みながらもラップと歌唱は全く噛まない「かつて天才だった俺たちへ」では機材がターンテーブルしかないだけにより広く感じるこのステージ上をR-指定が広く動き回りながら歌うと、そのR-指定に
「天才!」
と指差された松永のスクラッチには自然と歓声が湧き上がる。これこそ村上のホームランのように「出てしまう歓声」だと言っていいものだろう。
そんなこの2人のラップとDJのテクニックがあるだけではなくて、ただひたすらに曲が良いグループでもあり、だからこそこうしてたくさんの人に受け入れられているということを示すような「Bad Orangez」では照明がタイトルに合わせて淡い夕暮れを思わせるような色に変わり、観客がその照明に照らされながらリズムに合わせて手拍子をする。ヒップホップでここまで何万人もの人が一つになれるグループもそうそういないよなぁと思う。ちゃんと曲が聴き手それぞれの大事な曲になっているのがわかるというか。
そして
「今こうして集まってくれた人たちはこの状況を一緒に生き抜いてきた仲間だと思っております。そんな人たちと一つになるような曲をたくさんお届けしましたが、今日はこの後にもヒップホップの凄い人がたくさん出てきます。その日に最後に我々がラッパーでありDJであることを示す曲を最後にやりたいと思います」
と言って鳴らされたのはR-指定のセルフボースト的なラップがどんどん高速化していく「生業」だったというのが、ただ大衆的な方向へ向かうというのではなくて、あくまでヒップホップアーティストであり続けながらその音楽のカッコよさを広めようと戦い続けてきたこの2人の生き様のように響いていた。それはまさに「生業」という言葉の意味であるかのように。
1.合法的トビ方ノススメ
2.よふかしのうた
3.2way nice guy
4.のびしろ
5.堕天
6.かつて天才だった俺たちへ
7.Bad Orangez
8.生業
12:15〜 MONGOL800 [EARTH STAGE]
夏のロッキンも出演予定だったが、その出演日が台風で中止になってしまったことによって実に久しぶりのロッキンオンのフェス出演となるMONGOL800。このフェスにおいてはおなじみの存在でもあるが、個人的にもコロナ禍になって以降に見るのは初めてである。
賑やかな琉球サウンドのSEでキヨサク(ボーカル&ベース)、髙里悟(ドラム)に加えてサポートギターのKuboty(ex.TOTALFAT)が登場すると、さらに体が大きくなり、顎髭も白くなって年齢を経たことを感じさせるキヨサクが挨拶をしてから演奏が始まったのはもちろん「あなたに」であり、脱退した儀間崇が歌っていたパートは悟とKubotyが2人で歌うのであるが、かつてコロナ禍になる前は観客の大合唱が響いていた曲でもあるだけに、一時的にと言わずに曲まるまる大合唱したくなってしまう。それはそうした景色を何度も見てきたからである。
「COUNTDOWN JAPANー!今日は宴じゃー!パーティーじゃー!」
とキヨサクが言うとおなじみのホーン隊とダンサーの粒マスタード安次嶺が登場するのであるが、かつてはとりあえず目一杯体を動かしている人というイメージもあった安次嶺がバンドに参加する期間が長くなって曲を完璧に覚えてきたことによって観客を煽り、観客が動きを真似して踊るダンサーとしての役目を果たすようになっている。もはやその出で立ちも含めてメンバーと言っていいくらいというかメンバー以上のインパクトすら放っているが。
その安次嶺とホーン隊がそのまま参加する形でスッと始まったのはなんと盟友サンボマスターの「青春狂騒曲」のカバーであるのだが、そのままカバーするのでも、シンプルなパンクにカバーするのでもなく、沖縄出身のバンドとして琉球音楽的なアレンジを施してカバーしている。それだけに最初は何の曲を演奏しているのかわからなかった人も結構いたんじゃないかとすら思う。
さらには安次嶺の本領発揮とばかりにステージを左右に動きながら踊りまくり煽りまくるのは「OKINAWA CALLING」であり、ホーン隊のサウンドも含めて忘年会的な楽しいパーティーという感覚になっていくのであるが、安次嶺のダンスのキレが凄すぎて笑ってしまうし、Kuboty、ホーン隊と一緒にツーステ的なステップを踊っているのがより笑ってしまうのである。
その安次嶺を
「年明けて、仕事初めくらいになったら夢に出てくるよ(笑)」
とキヨサクがバンド側からもいじると、その安次嶺とホーン隊はいなくなり、最近CMでよく流れているキヨサクボーカルの「想うた」をモンパチのバンドアレンジで演奏する。タイトルだけ聴いてもなかなかピンと来なかった人もたくさんいただろうけれど、サビのメロディを聴けば間違いなく「あの曲だ!」となるくらいに耳馴染みのある曲。こうしてバンドで演奏するということはこれからもこうしてライブで披露されていく、さらにはバンドとしても音源化するんじゃないかとも思うが、キヨサクのボーカルは本当に優しさと慈悲深さに満ちていると思うし、控えめなバンドのサウンドがそのボーカルを引き立てている。
そんなキヨサクの、モンパチの優しさが昔からずっと変わらないものであるということを示してくれるのは大ヒットアルバム「MESSAGE」収録の「琉球愛歌」という沖縄のバンドだからこそ歌える曲であり、リリースから20年経っても全く色褪せることがないどころか、
「忘れるな琉球の心
武力使わず
自然を愛する」
というこの曲のフレーズは今だからこそより強く響く。それは武力による支配をしようとする人がいるからこそ。この曲のこのフレーズにリアリティを感じないままの方が良かったなとも思ってしまうけれど。
そしてキヨサクが大晦日、年越し、年明けまでこのフェスが最高なままで続いていくようにと口にした後で演奏されたのはもちろん「小さな恋のうた」であり、おそらくはモンパチを初めて見たであろう若い年齢の観客までも腕を上げているあたりにこの曲が世代や時代を超えて日本のスタンダードな名曲になっていることを感じていると、キヨサクはコロナ禍になる前までと同じように
「夢ならば覚めないで」
のフレーズ部分でマイクスタンドを客席に向ける。声を思いっきり出して歌うことができないということを観客たちは理解しているからこそ、かつてのように大合唱というわけにはいかずにささやかな、ギリギリ聞こえるくらいの合唱が起こる。そんな微かなものであってもその声がかつてのこの曲で響いていた大合唱に何度も心を震わせてきたことを思い出させてくれる。そしてそれをまた体感できる日がすぐそこまで来ているということも。だからこそかつてとは違った形でのこの曲での感動がこの日に確かにあった。
そして最後には再びホーン隊と安次嶺がステージに現れての「DON'T WORRY BE HAPPY」。この曲のどこまでもポジティブなメッセージとサウンド、メロディ、さらには安次嶺のダンスまでもが、まさに心配しなくてもいつか今よりも幸せになれると思わせてくれる。この曲もまたこの何万人もの人がいるような会場で大合唱したいと思えるものであるし、何曲もそんな誰もが歌えるような曲を持っているモンパチの凄さを改めて実感させられた。
何よりもモンパチの音楽やライブは20年以上ずっと、互いにどんな状況であっても我々を最高にハッピーに、楽しくしてくれる。それはこれから先もずっと変わることはない。つまりはまたこうしたたくさんの人がいる場所で一緒にモンパチの曲を歌うことができる日が必ず来るということだ。
1.あなたに
2.PARTY
3.青春狂騒曲 (サンボマスターのカバー)
4.OKINAWA CALLING
5.想うた
6.琉球愛歌
7.小さな恋のうた
8.DON'T WORRY BE HAPPY
13:00〜 WurtS [COSMO STAGE]
ステージ数が減ったことによってコンコース側からも入退場できるようになり、それによって少しキャパが大きくなった感のあるCOSMO STAGEだが、それでもライブが始まる前から入場規制でたくさんの人が入れるのを待っている状態という凄まじい状況を初出演にして作り上げていたのがWurtSである。先月に見たZepp DiverCityのワンマンも即完だったが、まさかフェスでここまでになるとは。
なので客席の中に入ったのはすでにメンバーとうさぎDJがステージに現れて「Talking Box」を演奏し始めてから。今年リリースされたリミックスバージョンとしてよりドープなダンスミュージックになっているが、本人曰くこの形が元の曲の形であるとインタビューで言っていただけに手拍子も実にスムーズに客席に広がっていくのだが、それはうさぎDJが手拍子をしてそれを観客に煽っているからというのもあるだろう。
WurtSのライブを支える強力サポートメンバー陣によるサウンドが一気に激しく力強くなるのは今年リリースの「ふたり計画」であり、イントロから吉岡紘希(ex.plenty)のドラムと是永亮祐のベース(ex.雨のパレード)はこのWurtSのライブがバンドのものであるということを示してくれるし、新井弘毅(THE KEBABS)のギターも含めてバンドをやっていたメンバーで固めているのもそういう理由によるものだろう。
それはWurtS自身も弾くシャープなギターサウンドで攻めまくる「僕の個人主義」もそうであるが、相変わらずWurtSは顔がハッキリとは見えないように帽子を被っているのだが、ノンストップで曲を演奏しまくるというスタイルも含めてさらにライブが逞しくなっている感もある。それはやはりツアーを回ってきた1年という経験によるものだろう。
そのWurtSがギターを置くと本人のラップ的な歌唱とともにサウンドもダンスミュージック的になる「BOY MEETS GIRL」で一瞬にしてガラッとサウンドを変えて観客の体を揺らすと、ラッパを吹くような仕草を見せていたうさぎDJがDJ卓からステージ前に出てきて踊りまくるのはカウントから始まる「SWAM」と、先程までのギターロックなライブハウスからクラブへと会場の雰囲気も変えてしまう。それでもライブ感、バンド感がそのまま残っているのはこのメンバーだからこそだ。
「今年のとっておきの曲を」
とWurtSが言ってから演奏されたのはホーンなどのゴージャスな音が同期として流れる、WurtSの新たなポップミュージックの形にして先日リリースした新作ミニアルバムのタイトル曲になっている「MOONRAKER」であるが、かつてこのステージの位置はMOON STAGEだっただけにそのままのステージ名だったらその場所のテーマソング的な曲だったのにな、とも思う。
すると一気に再びバンドのサウンドがノイジーなギターロックへと変わるのは今年リリースの「コズミック」と、「MOONRAKER」に収録された曲たちのサウンドの幅の広さと、ダンスミュージック色が濃くなってもこうしたギターロックの曲を作り続けてくれるんだろうなと思わせてくれる選曲だ。短い持ち時間の中にどれだけ曲を詰め込めるか、それはフェスという場でどれだけWurtSの魅力を伝えられるかという戦いでもある。
そしてWurtSが再びハンドマイクになってステージを左右に歩き回りながら歌うのはうさぎDJも前に出てきて踊る「リトルダンサー」なのであるが、そのうさぎDJのダンスが見るたびにキレとリズムが増しており、もしかしたらツアーなどのライブを経てきて1番進化したのはこのうさぎDJのダンスパフォーマンスなんじゃないかと思うほどに。いやもちろんWurtSのボーカルもしっかり進化してるのはこの規模のステージにもその歌声がしっかり響いていることからもわかるのだが。
そんなWurtSは
「1年間の最後にこのフェスに出ることができて本当に嬉しいです」
とだけ口にして、最後にギターを持って「分かってないよ」を演奏した。その際の歌唱がそれまで以上に少し揺らいだような気がしたのは、超満員の観客がみんな腕を上げているという光景を目にしたからだろうか。表情が見えないアーティストであるだけにそれはわからないけれど、ドラムセットの方まで走っていってギターを弾きまくる新井、サビに入る前に思いっきりジャンプする是永と、やっぱりWurtSはWurtSというバンドだ。この4人で鳴らすからこうしたライブを作ることができている。来年もまたいろんな場所で見れたらいいなと思っていたら、この日の途中で来年のツアーのチケットの落選通知が来た。自身のライブのキャパを、分かってないよ。
1.Talking Box
2.ふたり計画
3.僕の個人主義
4.BOY MEETS GIRL
5.SWAM
6.MOONRAKER
7.コズミック
8.リトルダンサー
9.分かってないよ
・SKY-HI [GALAXY STAGE]
WurtSが終わってGALAXY STAGEに移動するとすでにSKY-HIのライブは中盤と言っていいくらいのタイミングであり、ちょうどSKY-HIが「何様」の超高速ラップを展開している真っ最中。それを見るとやっぱりこの男は凄いと思わざるを得ないし、今年はいろんな活動をしてきたけれど、1番凄いのはやはり本人のラップだと思う。
「Double Down」ではダンサーたちも引き連れてSKY-HI自身も体を動かしながら歌うのであるが、バンド編成であるだけにこうしたロックな曲をフェスで演奏するのが映えるし、それは爽やかなサウンドによる「Seaside Bound」もそうなのだが、もう今年のどころではなくて今のSKY-HIの全てをこの持ち時間に詰め込もうというようなスピードと熱量だ。今やロックフェスでも当たり前のように大きいステージに出る存在になったが、今でもこの男にとってフェスは戦いの場なんだろうなとも思う。
そんな今年の締めにリリースした最新アルバム「The Debut」のタイトル曲を前にしてここでようやくSKY-HIは口を開くのであるが、
「曲をやりまくったから最後の曲の前にようやく喋るっていう(笑)
来年アリーナツアーやるんだけど、35歳を過ぎてから自己最高のキャパを更新するのなんて俺とAwichくらいだぞ!(笑)」
とこの日に居並ぶヒップホップアーティストへのリスペクトを見せながら、
「最後の曲、「Fuck」って言いまくる曲だからなかなかオンエアしづらくてロッキンオンには申し訳ない(笑)でも俺はこれからも君たちのモヤモヤしたものを発散するような曲も作り続けていくから!挙げたい人は中指挙げて、それが嫌な人は人差し指を挙げてくれていいから!」
とこの曲を生み出した意味を口にすると、曲中ではたくさんの中指が客席で掲げられる中、スクリーンには今年にSKY-HIが行ってきたライブやBMSG所属アーティストの面々と一緒にダンスなどを練習している姿が映し出される。その映像に感動してしまったのは、社長と所属アーティストという関係ではなくて同じアーティストとして一緒にライブに臨み、活動してきたというSKY-HIの、 BMSGのこの1年間だったということがそこから伝わってきたからだ。そして最後には
「その中指に人差し指を足して、ピース!」
と客席にピースサインが溢れる。この人間力があるからこそ、この男の活動ややっていることを信用できる。今年は見れなかった仲間たちのライブを来年は見ることができたらいいなと思うくらいに。
14:15〜 flumpool [GALAXY STAGE]
かつてデビュー時にフェスに出ていた時、つまり10年以上前にライブを見たことがあるが、その時期以来にライブを見ることになった、flumpool。そもそもがそんなに積極的にフェスに出るバンドではないし、そうしてフェスに出て曲を聴いてもらう、ライブを見てもらうということを必要としていなかったくらいの位置にまですぐに行ったバンドであるとも言える。
ギターとキーボードを兼ねるサポートメンバーも含めた5人編成で登場すると、やはりイメージ通りにどこか出で立ちもフォーマルな感じの中で「星に願いを」の壮大な演奏が始まる。山村隆太(ボーカル&ギター)の歌唱もさすがの上手さとオーラを放っているが、スクリーンに歌詞が映し出されるだけに曲に込められたメッセージをしっかり噛み締めながら聴くことができる。
それはオーケストレーション的なサウンドを取り入れた「Reboot 〜あきらめない詩〜」もそうであるが、あまりフェスには出ないバンドであるだけにこうしてみんなが知っているヒット曲を演奏してくれるバンドなんだなということがわかるのであるが、やはりかつて見た時よりも圧倒的に演奏が上手い。上手いというか、バンドとしての力強さをしっかり感じさせてくれるというか。小倉誠司(ドラム)は元からバンドを引っ張るリズムを鳴らしていたが、今はその役をガンガン前に出てきてベースを弾く尼川元気が担っているようにも感じる。
しかしながら
「始まる15分前くらいまで全然人いなくて、オワタ…って思ってたのに急にいっぱいいてくれてるやん!フェス慣れしてないから不安でさ〜(笑)
でもこんなにたくさんいてもちゃんと見えてるから。そっちの端の人は46さん観に行こうとしてるでしょ?(笑)
でも「サイレントマジョリティー」はもう終わってるだろうけど、flumpoolの「君に届け」はこれからやりますから!(笑)」
という阪井一生(ギター)のMCには笑わされてしまうが、
「flumpool、もっとシュッとしてる感じだと思ってた人もいるやろ?(笑)こんな感じやから(笑)」
と山村が初めて見る人の驚きを代弁してくれる。
それはさわやかかつポップなバンドというイメージを心地良く裏切ってくれるかのようにダークなサウンドによるロックな「夜は眠れるかい?」を演奏することもそうであるが、初めてライブを見た、曲を聴いたという人からしたらflumpoolがこんなにロックなサウンドの曲を鳴らしているのは驚きなんじゃないだろうか。山村のハンドマイクボーカルでのエフェクトかかった声も含めて。
それはデジタルサウンドを取り入れたロックサウンドの「World beats」もそうであるのだが、ステージ前に出てきてベースを弾く尼川を筆頭にそのロックサウンドがメンバーの鳴らしている音によって成り立っているということがよくわかる。さすが10年以上紆余曲折ありながらも続いてきたバンドだ。その音による説得力を確かに感じさせてくれる。
そして集まってくれたたくさんの人への感謝を口にしてから、MCで予告していた通りに「君に届け」を演奏する。やはりこの曲を待っていたという人がたくさんいたことがよくわかるくらいにたくさんの腕が上がるのであるが、やはり山村のボーカルはこうした爽やかな曲を歌うのが実によく似合う。それは見た目の爽やかさも含めてであるが、鳴らしているバンドのサウンドはやはり爽やかというよりは逞しさを感じる。1曲が割と長めとはいえ、持ち時間間違えてたんだろうか?と思ってしまうくらいに曲数は少なかったけれど、flumpoolが確かにロックバンドであることを感じさせるには充分な時間だった。
自分はflumpoolのメンバーたちと同世代である。flumpoolは割と年齢を重ねてからデビューしたバンドであるだけに、他の同世代バンドたちに比べたらデビューしてからの年数はめちゃくちゃ長いというわけではないけれど、ずっと同じメンバーで活動していることがどれだけ凄いことであるのかということが今は実によくわかる。それは同世代でメンバーが抜けたり活動休止したりしたバンドを数え切れないくらいに見てきたから。
このバンドが今に至るまでそうはならなかったのは、メンバー一人一人がこのバンドであり続けたいと思い続けてきたからだろう。10年以上前に見た時に全くライブの印象が残っていないバンドは、同じ4人でずっと続いてきたことによって本当にたくましいロックバンドになっていた。
1.星に願いを
2.reboot 〜あきらめない詩〜
3.夜は眠れるかい?
4.World beats
5.君に届け
15:20〜 KREVA [GALAXY STAGE]
紛れもなくロッキンオンのフェスの番人と言える存在のKREVA。かつてはEARTH STAGEで年越しの瞬間を担ったことがあるくらいの存在でもこのフェスは2019年以来、3年ぶり。ついにこのフェス、この地へ帰還したのである。
先にステージ上手側からベース、ドラム、ギター、キーボード、コーラスというフル編成のバンドメンバーがステージに登場。コーラスはおなじみのSONOMIであるが、そのメンバーの後にサングラスをかけたKREVAが登場すると、
「やっと会えたな!2年前のこのフェスに俺は出演するはずで、めちゃくちゃ良い準備が出来てた。でも直前で中止になって。あれから、あれまでにもいくつのライブやイベントがなくなった?今日はそんな2年前からの思いを全部込めてやるから!」
とこのフェスへの思いを口にすると、その「やっと会えたな」という言葉によって始まる「Finally」からスタートするのであるが、その曲がそのまま今この瞬間のテーマと言ってもいいように響くのはKREVAがソロでデビューしてからずっと出演し続けてきた、間違いなく思い入れが強いであろうフェスのステージに立っているからである。
バンドの演奏によってさらにゴージャスになった「基準」ではスクリーンに歌詞が次々に映し出されるのであるが、R-指定、SKY-HIという凄腕ラッパーたちの後にライブを見てもやはりこの曲でのKREVAの高速ラップはとてつもないものであることがよくわかる。何というか、速いのはもちろんのこと、フロウのリズムへの乗せ方が絶妙なリズミカルさであるというか。それは醸し出すオーラによる部分もあるかもしれないが。
「いつも来てくれる俺のファンも、とりあえず見てみるって人も、ご飯食べるのを楽しみにして来たっていう人も、そういうのもう全部ひっくるめて最高の1日になったらいいなと思ってる。そのために、俺の曲はコール&レスポンスをする曲が多くて、みんなが声を出せないうちは封印しようとしていた曲もあるんだけど、みんなに腕の動きで歌って欲しいから、夏くらいからライブで解禁してきた曲があります」
と言って演奏された「パーティーはIZUKO?」では「ここだ」のフレーズで観客が腕で歌うように手を挙げるのであるが、曲中でブレイクを入れるようにするとKREVAが
「両手で思いっきり、俺はここにいる!っていうことを示してくれ!」
と言うとそこからは観客が両手で思いっきり「ここだ!」と地面を指すようになる。それはそのまま我々が今このフェスのこのステージにいるということを自分自身に刻み込むかのように。
さらにはメロウなサウンドもお手の物とばかりにレイドバックしたバンドサウンドに実はラップだけではなくて歌唱力自体もめちゃくちゃ高いKREVAのボーカルが乗り、スクリーンには歌詞などの映像が流れる「人生」と、なかなかコロナ禍になってからはこうしてライブを見る機会も減ってしまっていたが、KREVAがライブでのセトリを更新しながらこうしてフェスに出演し続けていることがよくわかる。
するとKREVAがサポートコーラスのSONOMIを紹介すると、そのSONOMIがステージ前まで出てきて歌い始めたのは「ひとりじゃないのよ」。SONOMIのボーカルをフィーチャーした、SONOMIバージョンで披露するというあたりがKREVAがどれだけSONOMIの才能を信じているかということがわかるが、今になって聴くこの曲のメッセージが実に強く響く。コロナ禍を経てもKREVAもSONOMIもこうして一緒に音楽を鳴らしてくれる人たちや、自分たちのことを観に来てくれる人がいるということがその姿から伝わってくるからである。
そんなKREVAのメロディメーカーとしての力を存分に感じさせてくれる曲が続くと、「100%を出す」という曲中のフレーズを口にして、KREVAのラップによるキメにバンドが阿吽の呼吸を合わせてキメを打ちまくるという、バンドでのライブだからこそできるパフォーマンスでヒップホップのライブの可能性をさらに広げてくれる「C'mon, Let's Go」へ。演奏しているメンバーたちも実に楽しそうであるが、やはり
「一体誰がなんの この場のキャプテン」
というフレーズはKREVAこそがその存在であることがはっきりとわかるし、
「一人一人 てんでバラバラでいいんだ 同じとこ目指す仲間だから」
というフレーズは今でもというか今だからこそより強く響く。そのフレーズでバンドが演奏を止めてラップだけが響くというのはそこを強調したい思いも間違いなくあったのだろうと思われる。
そして最後に演奏されたのはやはり思いっきりメロウなサウンドとメロディによる「音色」。それはそのままKREVAの音楽への愛情を歌っているとも言えるが、この曲を聴いているとやはり深い世界でハイになれる。つまりは今でもKREVAは最高にカッコいいラッパーであるということだ。バンドメンバーに拍手を送ってから去っていくまでの姿も含めて、やはりさすがとしか言いようがなかった。
この日はCreepy NutsやSKY-HIも口にしていたように、ヒップホップアーティストが多く出演している。でも一時期はこのフェスはほとんどヒップホップアーティストがいなかった。KREVAが唯一と言えるような年すらあった。そうした逆境の中でもこの男がいてくれたからこそ、このフェスにおけるヒップホップの火は消えなかった。その凄さが今はかつてよりもはるかによくわかるだけに、これからもこのフェスに出演し続けて欲しい。
1.Finally
2.基準
3.パーティーはIZUKO?
4.人生
5.ひとりじゃないのよ feat.SONOMI
6.C'mon, Let's Go
7.音色
16:25〜 フジファブリック [GALAXY STAGE]
こちらもフェス黎明期から出演し続けるこのフェスの番人的なバンド、フジファブリック。かつてはEARTH STAGEに出演していた時期もあったが、近年はこのGALAXY STAGEの番人と言えるような存在になってきている。
おなじみの「I Love You」のSEでメンバーが登場すると、この日も最近おなじみの伊藤大地がドラムという編成で、じっとりとしたサウンドのアニメ主題歌として若い世代にも今のフジファブリックの姿を知らしめた「楽園」からスタートする。山内総一郎(ボーカル&ギター)の歌声も絶好調と言っていいくらいにこの広いGALAXY STAGEに響くし、
「ジャパーン!」
と叫ぶのは志村正彦がボーカルだった時代からずっとこのフェスで行われてきたものであり、奥田民生から受け継いだものでもある。
その「楽園」の作詞作曲を手がけた金澤ダイスケのキーボードがキャッチーさを感じさせてくれるのは今にしてフェスでこの曲をやるかと思ってしまう「フラッシュダンス」であるのだが、なかなか持ち時間が短い中ではセトリに変化をつけづらい中でこうして夏のロッキンの時には演奏する想像すらしていなかった曲を聴けるのは嬉しいことであるし、これからもフェスでのフジファブリックのライブが楽しみになる。
「リリースこそしなかったですけど、ライブをやりまくって駆け抜けてきた2020年でした。いや、2022年だ。2年前の話をしてどうするんや(笑)」
と山内が天然っぷりを発揮すると、
「来年も対バンツアーとかもやりますし、駆け抜けていきます。お年玉ってわけではないですけど、まだリリースもタイトルも決まってない新曲を」
と言って演奏された新曲は伊藤のドラムと金澤のキーボードが揃ってキメを打つという複雑な、言ってしまえば「Surfer King」などに連なるようなフジファブリックの変態性を発揮したサイドの曲である。今にしてこうしたタイプの曲を出してくるあたりがフジファブリックの攻めっぷりの姿勢を感じさせるが、すでにこの曲を他のライブで聴いた人の話によると歌詞がその時から変わっているらしいだけにまだブラッシュアップ中なのかもしれない。
そんな新曲の後にはこちらもシュールさ全開の「Feverman」が久しぶりにフェスで演奏される。加藤慎一(ベース)がサビでの振り付けをレクチャーするとそれが客席にも広がっていくのだが、時によっては山内と加藤がバラバラだった振り付けもこの日はバッチリ揃っていたのはバンドとしての呼吸がしっかり合っているということだろう。
さらには山内がジャラーンとギターを鳴らして始まった「星降る夜になったら」はまさかこうしたフェスで聴けるとは思わなかった、フジファブリックのメロディの素晴らしさを感じさせてくれるような曲だ。志村ボーカル時代の曲とは思えないくらいに山内のボーカルがこの曲に違和感なく乗っているあたりに、山内が我々の見えないところでボーカリストとして本当に努力してきたんだろうなということがわかる。ただ歌が上手くなったんじゃなくて、フジファブリックのボーカリストとして歌が上手くなったというような。
その山内が来年以降の気合いを口にすると、そんなライブの最後、つまり今年の最後はやはり金澤の美しいピアノの音から始まる「若者のすべて」。この曲を聴くと志村が亡くなった直後に開催されたこのフェスでライブ映像が流れた時のこと、それよりも前に志村がEARTH STAGEに立って歌っていた時のことを、何年経っても思い出してしまう。
でも思い出してしまうということは忘れることがないということだ。これからもそんなこのフェスでの記憶を何回でも思い出したいから、これからもフジファブリックにこのフェスのステージに立ち続けて欲しいと思っている。
リハ.Green Bird
リハ.夜明けのBEAT
1.楽園
2.フラッシュダンス
3.新曲
4.Feverman
5.星降る夜になったら
6.若者のすべて
17:40〜 マカロニえんぴつ [EARTH STAGE]
1ステージのみだった昨年に続いてのEARTH STAGE出演となる、マカロニえんぴつ。今年はこのフェスが年内最後のライブとなる。
サウンドチェックの段階ではっとり(ボーカル&ギター)がMONGOL800の「小さな恋のうた」を口ずさみ、サウンドチェックとは思えないくらいに本気の「ワンドリンク別」では観客のささやかなタイトルフレーズの合唱が響くという本番前からの気合いの入りっぷりだったのであるが、おなじみのビートルズのSEで登場した本番ではどこかいつもよりも演奏を始めるまでに時間を使っていた感じがしたのはやはり今年最後のライブという感慨によるものでもあり、この景色をしっかり見たいという思いによるものでもあったのだろうか。
そんな今年最後のライブはメンバーがじっくりと音を重ねていく「hope」から始まるのであるが、はっとりによるサビの
「手を繋いでいたい 手を繋いでいたいのだ」
の歌唱がいつにも増して力強い。実際に声量もいつもよりも込めているのだろうけれど、その歌声からしてこの日に並々ならぬ気合いが入っていることが伝わってくる。
長谷川大喜(キーボード)が高野賢也(ベース)の元へ向かってエアベースをするのもデカいステージだからこそより映える「洗濯機と君とラヂオ」はライブだからこそのテンポの速さとなり、現在絶賛CMで松たか子とのコラボバージョンがオンエアされている「たましいの居場所」がそうした状況とこの規模にふさわしいスケールのサウンドで鳴らされていく。そのメロディは実にポップかつキャッチーなものであるが、ハードロックを愛する田辺由明のフライングVによるギターサウンドがそうしたメロディであってもこのバンドがロックバンドであるということを示してくれる。
「もう今日は全部ここに置いていこうと思ってます!今年最後だからね!おちんちん出してもいいくらいの感じでやります!(笑)」
と下ネタを交えたことによって長谷川に笑われていたあたりは本当に舞い上がってるくらいにテンションが上がっていたからだろうが、そんなMCの後にメンバーのカウントで始まる名曲「恋人ごっこ」が演奏されるというギャップの凄さたるや。はっとりの最後のバースの歌唱の伸びやかさも本当に見事で、曲が素晴らしいのはもちろんとして、それをこの規模で隅から隅まで届けられるようなメンバーの力量があるからこそこうしてフェスのメインステージに立つのが当たり前になったんだなということがよくわかる。アリーナくらいの規模でのライブを重ねるようになったということも。
するとスクリーンにはデジタル的な映像が映し出されるのであるが、その映像に合わせるようにして演奏されたのはシュールな歌詞とメロディによる「カーペット夜想曲」という、今年最後のライブにこの曲を選ぶのか!?と思ってしまうくらいに意外な曲。これだからフェスのマカロニえんぴつは油断ならないというか、毎回毎回が見逃せないものになるのだ。そんな曲であるだけに演奏しているメンバーの表情も実に楽しそうだ。どこか悪戯っ子的と言っていいくらいに。
かと思えば、こうして大きなステージで鳴らされるからこそ、手を引っ張られる側から引っ張る側にバンドの立場が変わったという感慨を感じさせてくれる「愛の手」という染み入る曲を演奏するのだからやはり油断ならないし、はっとりと田辺のシャープかつ重厚なギターのサウンドはこのバンドのロックバンドさを確かに感じさせてくれる。
そしてスクリーンには壮大な星空の映像が映し出され、田辺のボトルネック奏法によるギターが宇宙空間にいるような心地にさせてくれる「星が泳ぐ」のスケールの大きさは今やこのバンドの大きなステージでのライブに欠かせないものだ。最後にははっとりもステージ前に出てきて屈むと、ステージ下から自身を映すカメラに目線を合わせながらギターを弾く。それは自分たちがカッコいいロックバンドであることを示そうとしているようにも感じられるが、こうして見ている人には間違いなくそれが伝わっているはずだ。
するとはっとりはこの1年を振り返るようにして、
「世間的に見たらサボってるように見えたかもしれないけれど、今年はツアー3本、ライブ80本やりました。それをやって思ったことがあります。一生これをやっていたいと思いました」
と口にする。今でこそテレビの音楽番組などでも観れるようになったりしてきたけれど、それでもやはりマカロニえんぴつは目の前にいるあなたのために歌い、鳴らすバンドであるということだ。それを示すように最後には長谷川が美しい旋律を響かせるイントロによる「なんでもないよ、」が演奏された。この曲をこのライブで聞いて思うのは、
「君といる時の僕が好きだ」
ということ。つまりはこうしてマカロニえんぴつが目の前で演奏している時の自分が好きだということであり、マカロニえんぴつの音楽とライブを必要としているということ。
来年もあらゆる場所でそう思わせてくれるのだろうし、年明けにはさいたまスーパーアリーナでのワンマンも控えている。それが終わってもきっとライブをやりまくって生きていくんだろうなと思う、マカロニえんぴつの2022年最後のライブだった。
リハ.小さな恋のうた
リハ.ハートロッカー
リハ.ワンドリンク別
1.hope
2.洗濯機と君とラヂオ
3.たましいの居場所
4.恋人ごっこ
5.カーペット夜想曲
6.愛の手
7.星が泳ぐ
8.なんでもないよ、
18:45〜 [Alexandros] [EARTH STAGE]
何度もこのフェスでトリを務めてきた[Alexandros]が今年はトリ前という位置で出演。つい先日アリーナツアーを終えたばかりであり、そのファイナルの代々木体育館では声出しアリのライブだっただけに今もその光景や感動は強く残っている中での今年の最後のライブを見る機会である。
時間になるとおなじみの「Burger Queen」のイントロが流れてスクリーンには「Where's My Potato?」のジャケ写が映し出されるのだが、その映像が乱れるとステージ袖でスタンバイしているメンバーたちがステージに向かうリアルタイムなものへと切り替わる。ツアーと同様にこの日もステージにはアンプなどがなく、サポートメンバーもステージ上には見えないが、この時期ならではの「SNOW SOUND」のイントロは紛れもなくROSEが奏でているものであろう。
しかしながら川上洋平(ボーカル&ギター)は軽やかに頭の上で手拍子をしながら登場するという一瞬でわかるテンションの高さ。またオールスタンディングで何万人もの人で埋め尽くされたこのステージに戻ってくることができたのが本当に嬉しそうであり、ファルセットギリギリのハイトーンボイスも実に伸びやかである。
曲間ではリアド(ドラム)がリズムで繋げる中で同期のデジタル音が流れ始め、白井眞輝(ギター)と磯部寛之(ベース)がフライングVに持ち替えてステージ左右の通路へと展開していき、その先に設置されたマイクスタンドでコーラスをするのは「Kick & Spin」。川上もハンドマイクでその両サイドの通路を歩き、時にはカメラ目線で歌ってからそのカメラを客席に向けさせるというのはこれまでにもロッキンオンのフェスで何度も披露してきたロックスター的なパフォーマンスである。間奏では白井のギターソロに合わせて川上も観客も頭を振りまくるという激しさに場内の温度がどんどん上昇していくのがわかる。
「日本代表に捧げます!」
と言って演奏されたのはサッカーアニメのタイアップになった「無心拍数」であるが、爽やかかつストレートなギターロックのサビに差し込まれるコーラスフレーズはワンマンでは我々も一緒に歌うことができたが、まだこのフェスではそれを大々的に行うことはできないだけに、来年のロッキンオンのフェスではそれができるようになっていたらと心から願う。
そして曲間の繋ぎからイントロに至るまでにダンサブルなアレンジが施されたことによって人によっては何の曲かわからないんじゃないかというくらいの進化を果たした「Girl A」はこれまでにもそうして何度となく形を変えながら演奏されてきた曲であるが、それは今の4人での[Alexandros]であるからにして、次の最新作からのダンスチューン「we are still kids & stray cats」に繋がることを想定してのものだろう。白井はワンマンの時のようにサングラスをかけたりすることはないものの、再びハンドマイクになった川上はやはりステージ左右の通路へ歩き出して頭を振りながら歌うと、その場に寝転んで駄々をこねる子供のようにもなる。まさにstill kidsとはこの川上のことであるかのように。
そんな川上がギターを持って弾き語り的に歌い始めたのはこのフェスでおなじみの「12/26以降の年末ソング」。まさにこの時期だからこその選曲であり、このフェスでこの曲を聴いているとこの1年間に想いを馳せざるを得ないのであるが、
「あと2曲で今年も終わるけど」
と川上が歌詞を変えて歌うことによって、こうしてフェスで観たり、アルバムリリースやそのツアー、そのうちの地元公演が年明けに延期されたり…というこのバンドと一緒に歩いてきた1年ももう終わってしまうんだなという感慨に浸らざるを得ない。
そんなラスト2曲を担うのが最新アルバムからの「Baby's Alright」であり、駆け抜けていくかのようなスピード感溢れる演奏がさらに速く激しくなっていくこの曲はすでにライブにおいて欠かせない曲になっているとも言える。そんな曲の後には川上が
「いつもこのフェスは一年を締め括る忘年会みたいだと思ってたんですけど、こうしてこのステージに立ったら来年への希望の光だと思った。ちょっとクサいこと言ってるけど(笑)
来年こそは皆さんが声を出して、邪魔なマスクを外した状態で会えることを信じております!」
と来年への強い希望を込めて演奏されたのはこのコロナ禍に入ってからリリースされた最大のキラーチューンである「閃光」。加速するリアドのビートに合わせて観客は腕を振り上げ、Aメロでは手拍子をする。サビで極まる演奏の迫力はやはり音楽が、このバンドの存在こそが一筋の希望の光であることを示してくれている。
来年はロッキンオンのフェスでもこの曲の間奏でのコーラスパートを合唱できるように、とも思うのであるが、この直後に弾き語りでもう1回この曲を聴けるとは、この日の前日までは全く想像していなかった。
1.SNOW SOUND
2.Kick & Spin
3.無心拍数
4.Girl A
5.we are still kids & stray cats
6.12/26以降の年末ソング
7.Baby's Alright
8.閃光
・川上洋平 [GALAXY STAGE]
本来この日のGALAXY STAGEのトリは初出演にしてその位置を務めることになったUruのはずだったのだが、当日に急性声帯炎を発症してしまったことによってキャンセルとなり、このバンドでのライブを終えたばかりの川上洋平が急遽弾き語りでこのステージのトリを務めることになった。
「前の時間帯にフルでライブをやった人が次のスロットの時間帯にもフルでライブをやる」というのは間違いなくこのフェス始まって以来初めてのことであり、本来のタイムテーブルでは絶対に間に合わないだけに20時くらいに川上洋平はステージに登場したのであるが、先ほどまでEARTH STAGEの前方でバンドのライブを見ていた人たちがそのままGALAXY STAGEの前方に移動してくるという構図もおそらくこのフェス始まって以来初めてのことである。
その川上洋平はバンドでのライブが終わった後とは思えないくらいに実に落ち着いた、穏やかな表情でアコギを持つと、
「弾き語りって言ってもしっぽりみたいな感じにはできないんで(笑)」
と言って「Waitress, Waitress!」をバンドの時と全く変わらないくらいにジャカジャカと弾きまくる。本当にいわゆる弾き語りでのバンドの曲のアコースティックアレンジというわけではなくて、テンポもそのままであるだけに弾き語りでもロックだなと感じさせてくれるようなオープニングである。
「何やろうかなと思って。やる曲決めてないんですよ。バンドと全く同じ曲にしたら多分みんな帰っちゃうから(笑)バンドでやってない曲を」
と言ってギターをかき鳴らし始めたのは「Starrrrrrr」であり、弾き語りであってもこの曲のスケールを感じさせるのであるが、やはりこの曲は弾き語りであってもコーラス部分を一緒に歌いたくなってしまう。それくらいにかつての、そして代々木での合唱が脳内にも体内にも染み付いているからだ。
さらにはやはりアコギをかき鳴らしまくる「city」と、これは先ほどのバンドでのライブとどちらがどちらのセトリなのかわからなくなるくらいにロックな曲かつアンセムの連発となるのだが、間奏からの最後のサビ前にはまるでリアドがドラムロールを叩いているかのように川上は自身の背後を指差す。弾き語りという形態であってもバンドで鳴らしているかのような、そんな感覚をその姿から感じさせるのは川上の弾き語りならではだろう。
「今日は月がキレイらしいから」
という選曲理由を口にしてから歌い始めたのはもちろん「ムーンソング」であるのだが、原曲のまさに月を背負っているかのようなスケールの大きさが弾き語りでも全く変わらないのは川上のファルセットボーカルの美しさも全く変わることがないからであろう。
そんな中でもアコギを取り替えると、
「弾き語りでもイメージ一つで踊らせられる、そういう景色を作ることができるんですよ」
と言ってバンドでも演奏していた曲の中から選ばれたのは「Girl A」。その掻き鳴らすギブソンのアコギの音が観客を揺らし、飛び跳ねさせるというのは言葉通りに弾き語りでもダンサブルなライブができるということを示しているが、そのまま「we are still kids & stray cats」へと繋がるという流れもバンドでのライブと同様で、やはりギブソンのアコギ弾き語りだけで我々を踊らせてくれる。それは川上のアコギの弾き語りがメロディだけではなくてリズムも表現しているというものであり、曲のメロディにもそれが備わっているからだろう。まさか弾き語りでこんなに体が動くとは全く思わなかった。
そんなアコギを取り替えるローディー役を担うのはバンドの相棒の磯部なのだが、ここでその磯部がローディーではなくゲストとしてステージに現れると、
「明日誕生日なんだよね」
と言って大きな拍手を受ける。あまりバンドのライブでのMCではそれをアピールするような空気ではないだけにそれを口にできるのも弾き語りだからこそであるが、これからも毎年このフェスで磯部の誕生日を祝えたらと思う。
その磯部が川上とラップの応酬を見せるのは「Kaiju」であり、アコギと声だけとは思えないようなそのミクスチャー感は先日のワンマンで演奏されていた時のような怪獣が街を破壊しまくる映像すらも想起させる。それもまた2人のラップのリズムとメロディによって感じられるものであろう。
そしてすでに観客からリクエストが上がっていたものの、
「これはやるとしたら最後でしょう〜」
と言ってその時は演奏しなかった「ワタリドリ」がこの日1日を締めるように演奏されるのだが、そもそもこの曲はバンドでのライブでは演奏されていないだけに、この曲をやらなくても成立するくらいに今のこのバンドはキラーチューンが揃っているということだ。やはり弾き語りであっても飛び跳ねまくってしまうのもこの曲が持っている力だろう。
そんな「ワタリドリ」で最後かと思ったらまだ川上は歌おうとしており、
「ボーカリストって急に喉に来るものなんですよ。俺も前に急に声が出なくなったこともあるしね。Uruさん、めちゃくちゃ悔しいと思う。でもきっとまたみんなの前で歌うのが見れる日が来ると思う。少しでも早く良くなりますように」
というUruを気遣った言葉からは川上の人間性を感じさせる。割と人によっては尊大なイメージがあるかもしれないがそんなことはない、人のことを考え、思いやることができる人だ。だからコロナ禍でのライブでも我々が早く声を出せるようにということを言い続けてきた。それは我々の声を聞きたいというのはもちろん、その方が我々も楽しめるということをわかっているからだろう。
そんな弾き語りの最後に演奏されたのはバンドでのライブ同様に「閃光」。そのチョイスは今このバンドにとって1番大事な曲がこの曲であり、歌いたい曲がこの曲だからだろう。弾き語りであってもこの曲は来年への一筋の光となる。クリスマスの弾き語りワンマンライブがどうやっても毎年チケットが取れないだけに、本当にこうして弾き語りで出てくれたことに感謝。
でも普通ならライブが終わった直後の人をすぐに違うステージで弾き語りでオファーなんてしない。もうちょっと早く出番が終わってる人に出てもらった方が準備に時間がかかることもなくすんなりライブができる。
でもこうして川上洋平がバンドのライブ後にすぐに弾き語りをやったのはフェス側からのオファーというよりは自分からやると言い出した可能性が高いと自分は思ってる。なんなら当日キャンセルならその時間は空いても仕方ないからこそ。
それは川上洋平が、[Alexandros]がロッキンオンの主催フェスを心から愛してきたからそう思うのだ。開催にあたって批判されまくった2021年のJAPAN JAMで川上はスタッフジャンパーを着てライブをして、一緒に戦っていることを示し、その年のひたちなかでのロッキンが中止を発表した時にはいつもインタビューを担当している人に「Rock the World」のデモを送った。そうしたエピソードは川上がどれだけこのフェスを愛してきたかを示している。
[Alexandros]はデカい会場でこそ真価や本領を発揮するバンドであるだけに、日本最大級の規模のロッキンオンのフェスは自分たちの力を最大限に発揮できる場所。実際に忘れられないこのフェスでのライブばかりだし、それとそこに集まった観客の存在がそう思わせてくれているはず。こんなにカッコいいバンドとボーカリストが自分がずっと通い続けているフェスを愛してくれているのが本当に嬉しい。
1.Waitress,Waitress!
2.Starrrrrrr
3.city
4.ムーンソング
5.Girl A
6.we are still kids & stray cats
7.Kaiju w/ 磯部寛之
8.ワタリドリ
9.閃光
そうしてステージが去年よりも増えたことによって収容人数も増えたからか、去年よりも開演前に飲食ブースにもたくさんの人がいる。そもそもチケットが全日ソールドアウトしているというのもあるが、あのCDJの雰囲気が去年よりも確かに戻ってきているのが嬉しくなる。
開演前にはロッキンオンのフェスではおなじみの社長・渋谷陽一の前説が。今のライブシーンでは一時的に声を出すのが容認されているというルールになっているのだが、
「一時的な声出しってなんだ?って思うだろうということで、サンプルを持ってきました」
と言って、ヤクルトスワローズの村上宗隆がシーズン56号ホームランを打った時の映像が映し出され、この瞬間のように思わず出てしまう声は良いということを実にわかりやすく説明してくれるのであるが、今年数え切れないくらいに見たこの村上のガッツポーズをこのフェスでも見ることになるとは。ちなみにこの日はチケットに10万を超える応募があり、しかも観客の平均年齢が4日間で1番若いらしいが、7割が初めてこのフェスに来る人というのはさすがに驚きである。
11:10〜 Creepy Nuts [EARTH STAGE]
そんな渋谷陽一の前説の締めは
「結婚おめでとう!」
というものだったのだが、それはR-指定が先日結婚を発表したからである。今やロッキンオンのフェスのメインステージの火付け役であるCreepy Nutsがこの4日間のEARTH STAGEのトップバッター。
生活が夜型であるだけに今年は某フェスで遅刻したこともあるR-指定は
「この景色を見て目が覚めたわ!」
と言うといきなりの「合法的トビ方ノススメ」で観客を飛び跳ねさせまくる。もうその超満員のEARTH STAGEが飛び跳ねまくる様は酔いそうなくらいに幕張メッセが揺れているし、DJ松永は自身のスマホでその客席の様子を撮影しているのが面白い。今やあらゆるフェスでメインステージに立つような存在になったが、それでもこの景色は映像に収めておきたいということだろう。
「まだ朝やけど!」
と言ってから松永が曲をプレイした「よふかしのうた」ではR-指定のキレキレのラップも披露しながら「幕張のトップバッター」などのこの日ならではの歌詞も加えつつ、R-指定は「Oh Yeah」のコーラスパートで観客に
「一時的に!」
と声をかけて一時的な合唱を促す。この辺りのライブのルールに応じた反射神経も実に巧みであるが、そのR-指定がラップだけではなくて歌唱そのものも実に上手いことがよくわかる「2way nice guy」ではホーンの音なども華やかに鳴る中で松永のスクラッチなどのターンテーブルソロにも一時的な歓声が起こる。本人たちもそのスタイルへの矜持を口にしていたが、マイクとターンテーブルの2人だけでこのEARTH STAGEをこれだけ満員にし、これだけ盛り上げられるグループは今や他にいないだろうなと思う。
そんなトップバッターとしてこのフェスを盛り上げる役割を担うからこそ、このフェスの4日間がここからさらに盛り上がっていく、それがそのままこのフェスののびしろになっていくというR-指定の曲の繋ぎもやはり素晴らしいものがあるが、その「のびしろ」での客席一面の手拍子はスタンディング、フルキャパのこの会場、このフェスの景色がどれだけ凄いものだったのかということを思い出させてくれる。
ライブやりまくり、メディアにも出演しまくっている中で一体いつ作ったんだと思ってしまう今年リリースの最新アルバム「アンサンブル・プレイ」からリード曲「堕天」の華やかなサウンドとそれに呼応して挙がる腕がもうこのグループの曲はどれもがアンセムと言っていいくらいに受け入れられていることを示している。というかもうこのグループを見たくてこの日このフェスに来た人もたくさんいるんじゃないか?と思ってしまうくらいだ。
R-指定がタイトルを口にするときに噛みながらもラップと歌唱は全く噛まない「かつて天才だった俺たちへ」では機材がターンテーブルしかないだけにより広く感じるこのステージ上をR-指定が広く動き回りながら歌うと、そのR-指定に
「天才!」
と指差された松永のスクラッチには自然と歓声が湧き上がる。これこそ村上のホームランのように「出てしまう歓声」だと言っていいものだろう。
そんなこの2人のラップとDJのテクニックがあるだけではなくて、ただひたすらに曲が良いグループでもあり、だからこそこうしてたくさんの人に受け入れられているということを示すような「Bad Orangez」では照明がタイトルに合わせて淡い夕暮れを思わせるような色に変わり、観客がその照明に照らされながらリズムに合わせて手拍子をする。ヒップホップでここまで何万人もの人が一つになれるグループもそうそういないよなぁと思う。ちゃんと曲が聴き手それぞれの大事な曲になっているのがわかるというか。
そして
「今こうして集まってくれた人たちはこの状況を一緒に生き抜いてきた仲間だと思っております。そんな人たちと一つになるような曲をたくさんお届けしましたが、今日はこの後にもヒップホップの凄い人がたくさん出てきます。その日に最後に我々がラッパーでありDJであることを示す曲を最後にやりたいと思います」
と言って鳴らされたのはR-指定のセルフボースト的なラップがどんどん高速化していく「生業」だったというのが、ただ大衆的な方向へ向かうというのではなくて、あくまでヒップホップアーティストであり続けながらその音楽のカッコよさを広めようと戦い続けてきたこの2人の生き様のように響いていた。それはまさに「生業」という言葉の意味であるかのように。
1.合法的トビ方ノススメ
2.よふかしのうた
3.2way nice guy
4.のびしろ
5.堕天
6.かつて天才だった俺たちへ
7.Bad Orangez
8.生業
12:15〜 MONGOL800 [EARTH STAGE]
夏のロッキンも出演予定だったが、その出演日が台風で中止になってしまったことによって実に久しぶりのロッキンオンのフェス出演となるMONGOL800。このフェスにおいてはおなじみの存在でもあるが、個人的にもコロナ禍になって以降に見るのは初めてである。
賑やかな琉球サウンドのSEでキヨサク(ボーカル&ベース)、髙里悟(ドラム)に加えてサポートギターのKuboty(ex.TOTALFAT)が登場すると、さらに体が大きくなり、顎髭も白くなって年齢を経たことを感じさせるキヨサクが挨拶をしてから演奏が始まったのはもちろん「あなたに」であり、脱退した儀間崇が歌っていたパートは悟とKubotyが2人で歌うのであるが、かつてコロナ禍になる前は観客の大合唱が響いていた曲でもあるだけに、一時的にと言わずに曲まるまる大合唱したくなってしまう。それはそうした景色を何度も見てきたからである。
「COUNTDOWN JAPANー!今日は宴じゃー!パーティーじゃー!」
とキヨサクが言うとおなじみのホーン隊とダンサーの粒マスタード安次嶺が登場するのであるが、かつてはとりあえず目一杯体を動かしている人というイメージもあった安次嶺がバンドに参加する期間が長くなって曲を完璧に覚えてきたことによって観客を煽り、観客が動きを真似して踊るダンサーとしての役目を果たすようになっている。もはやその出で立ちも含めてメンバーと言っていいくらいというかメンバー以上のインパクトすら放っているが。
その安次嶺とホーン隊がそのまま参加する形でスッと始まったのはなんと盟友サンボマスターの「青春狂騒曲」のカバーであるのだが、そのままカバーするのでも、シンプルなパンクにカバーするのでもなく、沖縄出身のバンドとして琉球音楽的なアレンジを施してカバーしている。それだけに最初は何の曲を演奏しているのかわからなかった人も結構いたんじゃないかとすら思う。
さらには安次嶺の本領発揮とばかりにステージを左右に動きながら踊りまくり煽りまくるのは「OKINAWA CALLING」であり、ホーン隊のサウンドも含めて忘年会的な楽しいパーティーという感覚になっていくのであるが、安次嶺のダンスのキレが凄すぎて笑ってしまうし、Kuboty、ホーン隊と一緒にツーステ的なステップを踊っているのがより笑ってしまうのである。
その安次嶺を
「年明けて、仕事初めくらいになったら夢に出てくるよ(笑)」
とキヨサクがバンド側からもいじると、その安次嶺とホーン隊はいなくなり、最近CMでよく流れているキヨサクボーカルの「想うた」をモンパチのバンドアレンジで演奏する。タイトルだけ聴いてもなかなかピンと来なかった人もたくさんいただろうけれど、サビのメロディを聴けば間違いなく「あの曲だ!」となるくらいに耳馴染みのある曲。こうしてバンドで演奏するということはこれからもこうしてライブで披露されていく、さらにはバンドとしても音源化するんじゃないかとも思うが、キヨサクのボーカルは本当に優しさと慈悲深さに満ちていると思うし、控えめなバンドのサウンドがそのボーカルを引き立てている。
そんなキヨサクの、モンパチの優しさが昔からずっと変わらないものであるということを示してくれるのは大ヒットアルバム「MESSAGE」収録の「琉球愛歌」という沖縄のバンドだからこそ歌える曲であり、リリースから20年経っても全く色褪せることがないどころか、
「忘れるな琉球の心
武力使わず
自然を愛する」
というこの曲のフレーズは今だからこそより強く響く。それは武力による支配をしようとする人がいるからこそ。この曲のこのフレーズにリアリティを感じないままの方が良かったなとも思ってしまうけれど。
そしてキヨサクが大晦日、年越し、年明けまでこのフェスが最高なままで続いていくようにと口にした後で演奏されたのはもちろん「小さな恋のうた」であり、おそらくはモンパチを初めて見たであろう若い年齢の観客までも腕を上げているあたりにこの曲が世代や時代を超えて日本のスタンダードな名曲になっていることを感じていると、キヨサクはコロナ禍になる前までと同じように
「夢ならば覚めないで」
のフレーズ部分でマイクスタンドを客席に向ける。声を思いっきり出して歌うことができないということを観客たちは理解しているからこそ、かつてのように大合唱というわけにはいかずにささやかな、ギリギリ聞こえるくらいの合唱が起こる。そんな微かなものであってもその声がかつてのこの曲で響いていた大合唱に何度も心を震わせてきたことを思い出させてくれる。そしてそれをまた体感できる日がすぐそこまで来ているということも。だからこそかつてとは違った形でのこの曲での感動がこの日に確かにあった。
そして最後には再びホーン隊と安次嶺がステージに現れての「DON'T WORRY BE HAPPY」。この曲のどこまでもポジティブなメッセージとサウンド、メロディ、さらには安次嶺のダンスまでもが、まさに心配しなくてもいつか今よりも幸せになれると思わせてくれる。この曲もまたこの何万人もの人がいるような会場で大合唱したいと思えるものであるし、何曲もそんな誰もが歌えるような曲を持っているモンパチの凄さを改めて実感させられた。
何よりもモンパチの音楽やライブは20年以上ずっと、互いにどんな状況であっても我々を最高にハッピーに、楽しくしてくれる。それはこれから先もずっと変わることはない。つまりはまたこうしたたくさんの人がいる場所で一緒にモンパチの曲を歌うことができる日が必ず来るということだ。
1.あなたに
2.PARTY
3.青春狂騒曲 (サンボマスターのカバー)
4.OKINAWA CALLING
5.想うた
6.琉球愛歌
7.小さな恋のうた
8.DON'T WORRY BE HAPPY
13:00〜 WurtS [COSMO STAGE]
ステージ数が減ったことによってコンコース側からも入退場できるようになり、それによって少しキャパが大きくなった感のあるCOSMO STAGEだが、それでもライブが始まる前から入場規制でたくさんの人が入れるのを待っている状態という凄まじい状況を初出演にして作り上げていたのがWurtSである。先月に見たZepp DiverCityのワンマンも即完だったが、まさかフェスでここまでになるとは。
なので客席の中に入ったのはすでにメンバーとうさぎDJがステージに現れて「Talking Box」を演奏し始めてから。今年リリースされたリミックスバージョンとしてよりドープなダンスミュージックになっているが、本人曰くこの形が元の曲の形であるとインタビューで言っていただけに手拍子も実にスムーズに客席に広がっていくのだが、それはうさぎDJが手拍子をしてそれを観客に煽っているからというのもあるだろう。
WurtSのライブを支える強力サポートメンバー陣によるサウンドが一気に激しく力強くなるのは今年リリースの「ふたり計画」であり、イントロから吉岡紘希(ex.plenty)のドラムと是永亮祐のベース(ex.雨のパレード)はこのWurtSのライブがバンドのものであるということを示してくれるし、新井弘毅(THE KEBABS)のギターも含めてバンドをやっていたメンバーで固めているのもそういう理由によるものだろう。
それはWurtS自身も弾くシャープなギターサウンドで攻めまくる「僕の個人主義」もそうであるが、相変わらずWurtSは顔がハッキリとは見えないように帽子を被っているのだが、ノンストップで曲を演奏しまくるというスタイルも含めてさらにライブが逞しくなっている感もある。それはやはりツアーを回ってきた1年という経験によるものだろう。
そのWurtSがギターを置くと本人のラップ的な歌唱とともにサウンドもダンスミュージック的になる「BOY MEETS GIRL」で一瞬にしてガラッとサウンドを変えて観客の体を揺らすと、ラッパを吹くような仕草を見せていたうさぎDJがDJ卓からステージ前に出てきて踊りまくるのはカウントから始まる「SWAM」と、先程までのギターロックなライブハウスからクラブへと会場の雰囲気も変えてしまう。それでもライブ感、バンド感がそのまま残っているのはこのメンバーだからこそだ。
「今年のとっておきの曲を」
とWurtSが言ってから演奏されたのはホーンなどのゴージャスな音が同期として流れる、WurtSの新たなポップミュージックの形にして先日リリースした新作ミニアルバムのタイトル曲になっている「MOONRAKER」であるが、かつてこのステージの位置はMOON STAGEだっただけにそのままのステージ名だったらその場所のテーマソング的な曲だったのにな、とも思う。
すると一気に再びバンドのサウンドがノイジーなギターロックへと変わるのは今年リリースの「コズミック」と、「MOONRAKER」に収録された曲たちのサウンドの幅の広さと、ダンスミュージック色が濃くなってもこうしたギターロックの曲を作り続けてくれるんだろうなと思わせてくれる選曲だ。短い持ち時間の中にどれだけ曲を詰め込めるか、それはフェスという場でどれだけWurtSの魅力を伝えられるかという戦いでもある。
そしてWurtSが再びハンドマイクになってステージを左右に歩き回りながら歌うのはうさぎDJも前に出てきて踊る「リトルダンサー」なのであるが、そのうさぎDJのダンスが見るたびにキレとリズムが増しており、もしかしたらツアーなどのライブを経てきて1番進化したのはこのうさぎDJのダンスパフォーマンスなんじゃないかと思うほどに。いやもちろんWurtSのボーカルもしっかり進化してるのはこの規模のステージにもその歌声がしっかり響いていることからもわかるのだが。
そんなWurtSは
「1年間の最後にこのフェスに出ることができて本当に嬉しいです」
とだけ口にして、最後にギターを持って「分かってないよ」を演奏した。その際の歌唱がそれまで以上に少し揺らいだような気がしたのは、超満員の観客がみんな腕を上げているという光景を目にしたからだろうか。表情が見えないアーティストであるだけにそれはわからないけれど、ドラムセットの方まで走っていってギターを弾きまくる新井、サビに入る前に思いっきりジャンプする是永と、やっぱりWurtSはWurtSというバンドだ。この4人で鳴らすからこうしたライブを作ることができている。来年もまたいろんな場所で見れたらいいなと思っていたら、この日の途中で来年のツアーのチケットの落選通知が来た。自身のライブのキャパを、分かってないよ。
1.Talking Box
2.ふたり計画
3.僕の個人主義
4.BOY MEETS GIRL
5.SWAM
6.MOONRAKER
7.コズミック
8.リトルダンサー
9.分かってないよ
・SKY-HI [GALAXY STAGE]
WurtSが終わってGALAXY STAGEに移動するとすでにSKY-HIのライブは中盤と言っていいくらいのタイミングであり、ちょうどSKY-HIが「何様」の超高速ラップを展開している真っ最中。それを見るとやっぱりこの男は凄いと思わざるを得ないし、今年はいろんな活動をしてきたけれど、1番凄いのはやはり本人のラップだと思う。
「Double Down」ではダンサーたちも引き連れてSKY-HI自身も体を動かしながら歌うのであるが、バンド編成であるだけにこうしたロックな曲をフェスで演奏するのが映えるし、それは爽やかなサウンドによる「Seaside Bound」もそうなのだが、もう今年のどころではなくて今のSKY-HIの全てをこの持ち時間に詰め込もうというようなスピードと熱量だ。今やロックフェスでも当たり前のように大きいステージに出る存在になったが、今でもこの男にとってフェスは戦いの場なんだろうなとも思う。
そんな今年の締めにリリースした最新アルバム「The Debut」のタイトル曲を前にしてここでようやくSKY-HIは口を開くのであるが、
「曲をやりまくったから最後の曲の前にようやく喋るっていう(笑)
来年アリーナツアーやるんだけど、35歳を過ぎてから自己最高のキャパを更新するのなんて俺とAwichくらいだぞ!(笑)」
とこの日に居並ぶヒップホップアーティストへのリスペクトを見せながら、
「最後の曲、「Fuck」って言いまくる曲だからなかなかオンエアしづらくてロッキンオンには申し訳ない(笑)でも俺はこれからも君たちのモヤモヤしたものを発散するような曲も作り続けていくから!挙げたい人は中指挙げて、それが嫌な人は人差し指を挙げてくれていいから!」
とこの曲を生み出した意味を口にすると、曲中ではたくさんの中指が客席で掲げられる中、スクリーンには今年にSKY-HIが行ってきたライブやBMSG所属アーティストの面々と一緒にダンスなどを練習している姿が映し出される。その映像に感動してしまったのは、社長と所属アーティストという関係ではなくて同じアーティストとして一緒にライブに臨み、活動してきたというSKY-HIの、 BMSGのこの1年間だったということがそこから伝わってきたからだ。そして最後には
「その中指に人差し指を足して、ピース!」
と客席にピースサインが溢れる。この人間力があるからこそ、この男の活動ややっていることを信用できる。今年は見れなかった仲間たちのライブを来年は見ることができたらいいなと思うくらいに。
14:15〜 flumpool [GALAXY STAGE]
かつてデビュー時にフェスに出ていた時、つまり10年以上前にライブを見たことがあるが、その時期以来にライブを見ることになった、flumpool。そもそもがそんなに積極的にフェスに出るバンドではないし、そうしてフェスに出て曲を聴いてもらう、ライブを見てもらうということを必要としていなかったくらいの位置にまですぐに行ったバンドであるとも言える。
ギターとキーボードを兼ねるサポートメンバーも含めた5人編成で登場すると、やはりイメージ通りにどこか出で立ちもフォーマルな感じの中で「星に願いを」の壮大な演奏が始まる。山村隆太(ボーカル&ギター)の歌唱もさすがの上手さとオーラを放っているが、スクリーンに歌詞が映し出されるだけに曲に込められたメッセージをしっかり噛み締めながら聴くことができる。
それはオーケストレーション的なサウンドを取り入れた「Reboot 〜あきらめない詩〜」もそうであるが、あまりフェスには出ないバンドであるだけにこうしてみんなが知っているヒット曲を演奏してくれるバンドなんだなということがわかるのであるが、やはりかつて見た時よりも圧倒的に演奏が上手い。上手いというか、バンドとしての力強さをしっかり感じさせてくれるというか。小倉誠司(ドラム)は元からバンドを引っ張るリズムを鳴らしていたが、今はその役をガンガン前に出てきてベースを弾く尼川元気が担っているようにも感じる。
しかしながら
「始まる15分前くらいまで全然人いなくて、オワタ…って思ってたのに急にいっぱいいてくれてるやん!フェス慣れしてないから不安でさ〜(笑)
でもこんなにたくさんいてもちゃんと見えてるから。そっちの端の人は46さん観に行こうとしてるでしょ?(笑)
でも「サイレントマジョリティー」はもう終わってるだろうけど、flumpoolの「君に届け」はこれからやりますから!(笑)」
という阪井一生(ギター)のMCには笑わされてしまうが、
「flumpool、もっとシュッとしてる感じだと思ってた人もいるやろ?(笑)こんな感じやから(笑)」
と山村が初めて見る人の驚きを代弁してくれる。
それはさわやかかつポップなバンドというイメージを心地良く裏切ってくれるかのようにダークなサウンドによるロックな「夜は眠れるかい?」を演奏することもそうであるが、初めてライブを見た、曲を聴いたという人からしたらflumpoolがこんなにロックなサウンドの曲を鳴らしているのは驚きなんじゃないだろうか。山村のハンドマイクボーカルでのエフェクトかかった声も含めて。
それはデジタルサウンドを取り入れたロックサウンドの「World beats」もそうであるのだが、ステージ前に出てきてベースを弾く尼川を筆頭にそのロックサウンドがメンバーの鳴らしている音によって成り立っているということがよくわかる。さすが10年以上紆余曲折ありながらも続いてきたバンドだ。その音による説得力を確かに感じさせてくれる。
そして集まってくれたたくさんの人への感謝を口にしてから、MCで予告していた通りに「君に届け」を演奏する。やはりこの曲を待っていたという人がたくさんいたことがよくわかるくらいにたくさんの腕が上がるのであるが、やはり山村のボーカルはこうした爽やかな曲を歌うのが実によく似合う。それは見た目の爽やかさも含めてであるが、鳴らしているバンドのサウンドはやはり爽やかというよりは逞しさを感じる。1曲が割と長めとはいえ、持ち時間間違えてたんだろうか?と思ってしまうくらいに曲数は少なかったけれど、flumpoolが確かにロックバンドであることを感じさせるには充分な時間だった。
自分はflumpoolのメンバーたちと同世代である。flumpoolは割と年齢を重ねてからデビューしたバンドであるだけに、他の同世代バンドたちに比べたらデビューしてからの年数はめちゃくちゃ長いというわけではないけれど、ずっと同じメンバーで活動していることがどれだけ凄いことであるのかということが今は実によくわかる。それは同世代でメンバーが抜けたり活動休止したりしたバンドを数え切れないくらいに見てきたから。
このバンドが今に至るまでそうはならなかったのは、メンバー一人一人がこのバンドであり続けたいと思い続けてきたからだろう。10年以上前に見た時に全くライブの印象が残っていないバンドは、同じ4人でずっと続いてきたことによって本当にたくましいロックバンドになっていた。
1.星に願いを
2.reboot 〜あきらめない詩〜
3.夜は眠れるかい?
4.World beats
5.君に届け
15:20〜 KREVA [GALAXY STAGE]
紛れもなくロッキンオンのフェスの番人と言える存在のKREVA。かつてはEARTH STAGEで年越しの瞬間を担ったことがあるくらいの存在でもこのフェスは2019年以来、3年ぶり。ついにこのフェス、この地へ帰還したのである。
先にステージ上手側からベース、ドラム、ギター、キーボード、コーラスというフル編成のバンドメンバーがステージに登場。コーラスはおなじみのSONOMIであるが、そのメンバーの後にサングラスをかけたKREVAが登場すると、
「やっと会えたな!2年前のこのフェスに俺は出演するはずで、めちゃくちゃ良い準備が出来てた。でも直前で中止になって。あれから、あれまでにもいくつのライブやイベントがなくなった?今日はそんな2年前からの思いを全部込めてやるから!」
とこのフェスへの思いを口にすると、その「やっと会えたな」という言葉によって始まる「Finally」からスタートするのであるが、その曲がそのまま今この瞬間のテーマと言ってもいいように響くのはKREVAがソロでデビューしてからずっと出演し続けてきた、間違いなく思い入れが強いであろうフェスのステージに立っているからである。
バンドの演奏によってさらにゴージャスになった「基準」ではスクリーンに歌詞が次々に映し出されるのであるが、R-指定、SKY-HIという凄腕ラッパーたちの後にライブを見てもやはりこの曲でのKREVAの高速ラップはとてつもないものであることがよくわかる。何というか、速いのはもちろんのこと、フロウのリズムへの乗せ方が絶妙なリズミカルさであるというか。それは醸し出すオーラによる部分もあるかもしれないが。
「いつも来てくれる俺のファンも、とりあえず見てみるって人も、ご飯食べるのを楽しみにして来たっていう人も、そういうのもう全部ひっくるめて最高の1日になったらいいなと思ってる。そのために、俺の曲はコール&レスポンスをする曲が多くて、みんなが声を出せないうちは封印しようとしていた曲もあるんだけど、みんなに腕の動きで歌って欲しいから、夏くらいからライブで解禁してきた曲があります」
と言って演奏された「パーティーはIZUKO?」では「ここだ」のフレーズで観客が腕で歌うように手を挙げるのであるが、曲中でブレイクを入れるようにするとKREVAが
「両手で思いっきり、俺はここにいる!っていうことを示してくれ!」
と言うとそこからは観客が両手で思いっきり「ここだ!」と地面を指すようになる。それはそのまま我々が今このフェスのこのステージにいるということを自分自身に刻み込むかのように。
さらにはメロウなサウンドもお手の物とばかりにレイドバックしたバンドサウンドに実はラップだけではなくて歌唱力自体もめちゃくちゃ高いKREVAのボーカルが乗り、スクリーンには歌詞などの映像が流れる「人生」と、なかなかコロナ禍になってからはこうしてライブを見る機会も減ってしまっていたが、KREVAがライブでのセトリを更新しながらこうしてフェスに出演し続けていることがよくわかる。
するとKREVAがサポートコーラスのSONOMIを紹介すると、そのSONOMIがステージ前まで出てきて歌い始めたのは「ひとりじゃないのよ」。SONOMIのボーカルをフィーチャーした、SONOMIバージョンで披露するというあたりがKREVAがどれだけSONOMIの才能を信じているかということがわかるが、今になって聴くこの曲のメッセージが実に強く響く。コロナ禍を経てもKREVAもSONOMIもこうして一緒に音楽を鳴らしてくれる人たちや、自分たちのことを観に来てくれる人がいるということがその姿から伝わってくるからである。
そんなKREVAのメロディメーカーとしての力を存分に感じさせてくれる曲が続くと、「100%を出す」という曲中のフレーズを口にして、KREVAのラップによるキメにバンドが阿吽の呼吸を合わせてキメを打ちまくるという、バンドでのライブだからこそできるパフォーマンスでヒップホップのライブの可能性をさらに広げてくれる「C'mon, Let's Go」へ。演奏しているメンバーたちも実に楽しそうであるが、やはり
「一体誰がなんの この場のキャプテン」
というフレーズはKREVAこそがその存在であることがはっきりとわかるし、
「一人一人 てんでバラバラでいいんだ 同じとこ目指す仲間だから」
というフレーズは今でもというか今だからこそより強く響く。そのフレーズでバンドが演奏を止めてラップだけが響くというのはそこを強調したい思いも間違いなくあったのだろうと思われる。
そして最後に演奏されたのはやはり思いっきりメロウなサウンドとメロディによる「音色」。それはそのままKREVAの音楽への愛情を歌っているとも言えるが、この曲を聴いているとやはり深い世界でハイになれる。つまりは今でもKREVAは最高にカッコいいラッパーであるということだ。バンドメンバーに拍手を送ってから去っていくまでの姿も含めて、やはりさすがとしか言いようがなかった。
この日はCreepy NutsやSKY-HIも口にしていたように、ヒップホップアーティストが多く出演している。でも一時期はこのフェスはほとんどヒップホップアーティストがいなかった。KREVAが唯一と言えるような年すらあった。そうした逆境の中でもこの男がいてくれたからこそ、このフェスにおけるヒップホップの火は消えなかった。その凄さが今はかつてよりもはるかによくわかるだけに、これからもこのフェスに出演し続けて欲しい。
1.Finally
2.基準
3.パーティーはIZUKO?
4.人生
5.ひとりじゃないのよ feat.SONOMI
6.C'mon, Let's Go
7.音色
16:25〜 フジファブリック [GALAXY STAGE]
こちらもフェス黎明期から出演し続けるこのフェスの番人的なバンド、フジファブリック。かつてはEARTH STAGEに出演していた時期もあったが、近年はこのGALAXY STAGEの番人と言えるような存在になってきている。
おなじみの「I Love You」のSEでメンバーが登場すると、この日も最近おなじみの伊藤大地がドラムという編成で、じっとりとしたサウンドのアニメ主題歌として若い世代にも今のフジファブリックの姿を知らしめた「楽園」からスタートする。山内総一郎(ボーカル&ギター)の歌声も絶好調と言っていいくらいにこの広いGALAXY STAGEに響くし、
「ジャパーン!」
と叫ぶのは志村正彦がボーカルだった時代からずっとこのフェスで行われてきたものであり、奥田民生から受け継いだものでもある。
その「楽園」の作詞作曲を手がけた金澤ダイスケのキーボードがキャッチーさを感じさせてくれるのは今にしてフェスでこの曲をやるかと思ってしまう「フラッシュダンス」であるのだが、なかなか持ち時間が短い中ではセトリに変化をつけづらい中でこうして夏のロッキンの時には演奏する想像すらしていなかった曲を聴けるのは嬉しいことであるし、これからもフェスでのフジファブリックのライブが楽しみになる。
「リリースこそしなかったですけど、ライブをやりまくって駆け抜けてきた2020年でした。いや、2022年だ。2年前の話をしてどうするんや(笑)」
と山内が天然っぷりを発揮すると、
「来年も対バンツアーとかもやりますし、駆け抜けていきます。お年玉ってわけではないですけど、まだリリースもタイトルも決まってない新曲を」
と言って演奏された新曲は伊藤のドラムと金澤のキーボードが揃ってキメを打つという複雑な、言ってしまえば「Surfer King」などに連なるようなフジファブリックの変態性を発揮したサイドの曲である。今にしてこうしたタイプの曲を出してくるあたりがフジファブリックの攻めっぷりの姿勢を感じさせるが、すでにこの曲を他のライブで聴いた人の話によると歌詞がその時から変わっているらしいだけにまだブラッシュアップ中なのかもしれない。
そんな新曲の後にはこちらもシュールさ全開の「Feverman」が久しぶりにフェスで演奏される。加藤慎一(ベース)がサビでの振り付けをレクチャーするとそれが客席にも広がっていくのだが、時によっては山内と加藤がバラバラだった振り付けもこの日はバッチリ揃っていたのはバンドとしての呼吸がしっかり合っているということだろう。
さらには山内がジャラーンとギターを鳴らして始まった「星降る夜になったら」はまさかこうしたフェスで聴けるとは思わなかった、フジファブリックのメロディの素晴らしさを感じさせてくれるような曲だ。志村ボーカル時代の曲とは思えないくらいに山内のボーカルがこの曲に違和感なく乗っているあたりに、山内が我々の見えないところでボーカリストとして本当に努力してきたんだろうなということがわかる。ただ歌が上手くなったんじゃなくて、フジファブリックのボーカリストとして歌が上手くなったというような。
その山内が来年以降の気合いを口にすると、そんなライブの最後、つまり今年の最後はやはり金澤の美しいピアノの音から始まる「若者のすべて」。この曲を聴くと志村が亡くなった直後に開催されたこのフェスでライブ映像が流れた時のこと、それよりも前に志村がEARTH STAGEに立って歌っていた時のことを、何年経っても思い出してしまう。
でも思い出してしまうということは忘れることがないということだ。これからもそんなこのフェスでの記憶を何回でも思い出したいから、これからもフジファブリックにこのフェスのステージに立ち続けて欲しいと思っている。
リハ.Green Bird
リハ.夜明けのBEAT
1.楽園
2.フラッシュダンス
3.新曲
4.Feverman
5.星降る夜になったら
6.若者のすべて
17:40〜 マカロニえんぴつ [EARTH STAGE]
1ステージのみだった昨年に続いてのEARTH STAGE出演となる、マカロニえんぴつ。今年はこのフェスが年内最後のライブとなる。
サウンドチェックの段階ではっとり(ボーカル&ギター)がMONGOL800の「小さな恋のうた」を口ずさみ、サウンドチェックとは思えないくらいに本気の「ワンドリンク別」では観客のささやかなタイトルフレーズの合唱が響くという本番前からの気合いの入りっぷりだったのであるが、おなじみのビートルズのSEで登場した本番ではどこかいつもよりも演奏を始めるまでに時間を使っていた感じがしたのはやはり今年最後のライブという感慨によるものでもあり、この景色をしっかり見たいという思いによるものでもあったのだろうか。
そんな今年最後のライブはメンバーがじっくりと音を重ねていく「hope」から始まるのであるが、はっとりによるサビの
「手を繋いでいたい 手を繋いでいたいのだ」
の歌唱がいつにも増して力強い。実際に声量もいつもよりも込めているのだろうけれど、その歌声からしてこの日に並々ならぬ気合いが入っていることが伝わってくる。
長谷川大喜(キーボード)が高野賢也(ベース)の元へ向かってエアベースをするのもデカいステージだからこそより映える「洗濯機と君とラヂオ」はライブだからこそのテンポの速さとなり、現在絶賛CMで松たか子とのコラボバージョンがオンエアされている「たましいの居場所」がそうした状況とこの規模にふさわしいスケールのサウンドで鳴らされていく。そのメロディは実にポップかつキャッチーなものであるが、ハードロックを愛する田辺由明のフライングVによるギターサウンドがそうしたメロディであってもこのバンドがロックバンドであるということを示してくれる。
「もう今日は全部ここに置いていこうと思ってます!今年最後だからね!おちんちん出してもいいくらいの感じでやります!(笑)」
と下ネタを交えたことによって長谷川に笑われていたあたりは本当に舞い上がってるくらいにテンションが上がっていたからだろうが、そんなMCの後にメンバーのカウントで始まる名曲「恋人ごっこ」が演奏されるというギャップの凄さたるや。はっとりの最後のバースの歌唱の伸びやかさも本当に見事で、曲が素晴らしいのはもちろんとして、それをこの規模で隅から隅まで届けられるようなメンバーの力量があるからこそこうしてフェスのメインステージに立つのが当たり前になったんだなということがよくわかる。アリーナくらいの規模でのライブを重ねるようになったということも。
するとスクリーンにはデジタル的な映像が映し出されるのであるが、その映像に合わせるようにして演奏されたのはシュールな歌詞とメロディによる「カーペット夜想曲」という、今年最後のライブにこの曲を選ぶのか!?と思ってしまうくらいに意外な曲。これだからフェスのマカロニえんぴつは油断ならないというか、毎回毎回が見逃せないものになるのだ。そんな曲であるだけに演奏しているメンバーの表情も実に楽しそうだ。どこか悪戯っ子的と言っていいくらいに。
かと思えば、こうして大きなステージで鳴らされるからこそ、手を引っ張られる側から引っ張る側にバンドの立場が変わったという感慨を感じさせてくれる「愛の手」という染み入る曲を演奏するのだからやはり油断ならないし、はっとりと田辺のシャープかつ重厚なギターのサウンドはこのバンドのロックバンドさを確かに感じさせてくれる。
そしてスクリーンには壮大な星空の映像が映し出され、田辺のボトルネック奏法によるギターが宇宙空間にいるような心地にさせてくれる「星が泳ぐ」のスケールの大きさは今やこのバンドの大きなステージでのライブに欠かせないものだ。最後にははっとりもステージ前に出てきて屈むと、ステージ下から自身を映すカメラに目線を合わせながらギターを弾く。それは自分たちがカッコいいロックバンドであることを示そうとしているようにも感じられるが、こうして見ている人には間違いなくそれが伝わっているはずだ。
するとはっとりはこの1年を振り返るようにして、
「世間的に見たらサボってるように見えたかもしれないけれど、今年はツアー3本、ライブ80本やりました。それをやって思ったことがあります。一生これをやっていたいと思いました」
と口にする。今でこそテレビの音楽番組などでも観れるようになったりしてきたけれど、それでもやはりマカロニえんぴつは目の前にいるあなたのために歌い、鳴らすバンドであるということだ。それを示すように最後には長谷川が美しい旋律を響かせるイントロによる「なんでもないよ、」が演奏された。この曲をこのライブで聞いて思うのは、
「君といる時の僕が好きだ」
ということ。つまりはこうしてマカロニえんぴつが目の前で演奏している時の自分が好きだということであり、マカロニえんぴつの音楽とライブを必要としているということ。
来年もあらゆる場所でそう思わせてくれるのだろうし、年明けにはさいたまスーパーアリーナでのワンマンも控えている。それが終わってもきっとライブをやりまくって生きていくんだろうなと思う、マカロニえんぴつの2022年最後のライブだった。
リハ.小さな恋のうた
リハ.ハートロッカー
リハ.ワンドリンク別
1.hope
2.洗濯機と君とラヂオ
3.たましいの居場所
4.恋人ごっこ
5.カーペット夜想曲
6.愛の手
7.星が泳ぐ
8.なんでもないよ、
18:45〜 [Alexandros] [EARTH STAGE]
何度もこのフェスでトリを務めてきた[Alexandros]が今年はトリ前という位置で出演。つい先日アリーナツアーを終えたばかりであり、そのファイナルの代々木体育館では声出しアリのライブだっただけに今もその光景や感動は強く残っている中での今年の最後のライブを見る機会である。
時間になるとおなじみの「Burger Queen」のイントロが流れてスクリーンには「Where's My Potato?」のジャケ写が映し出されるのだが、その映像が乱れるとステージ袖でスタンバイしているメンバーたちがステージに向かうリアルタイムなものへと切り替わる。ツアーと同様にこの日もステージにはアンプなどがなく、サポートメンバーもステージ上には見えないが、この時期ならではの「SNOW SOUND」のイントロは紛れもなくROSEが奏でているものであろう。
しかしながら川上洋平(ボーカル&ギター)は軽やかに頭の上で手拍子をしながら登場するという一瞬でわかるテンションの高さ。またオールスタンディングで何万人もの人で埋め尽くされたこのステージに戻ってくることができたのが本当に嬉しそうであり、ファルセットギリギリのハイトーンボイスも実に伸びやかである。
曲間ではリアド(ドラム)がリズムで繋げる中で同期のデジタル音が流れ始め、白井眞輝(ギター)と磯部寛之(ベース)がフライングVに持ち替えてステージ左右の通路へと展開していき、その先に設置されたマイクスタンドでコーラスをするのは「Kick & Spin」。川上もハンドマイクでその両サイドの通路を歩き、時にはカメラ目線で歌ってからそのカメラを客席に向けさせるというのはこれまでにもロッキンオンのフェスで何度も披露してきたロックスター的なパフォーマンスである。間奏では白井のギターソロに合わせて川上も観客も頭を振りまくるという激しさに場内の温度がどんどん上昇していくのがわかる。
「日本代表に捧げます!」
と言って演奏されたのはサッカーアニメのタイアップになった「無心拍数」であるが、爽やかかつストレートなギターロックのサビに差し込まれるコーラスフレーズはワンマンでは我々も一緒に歌うことができたが、まだこのフェスではそれを大々的に行うことはできないだけに、来年のロッキンオンのフェスではそれができるようになっていたらと心から願う。
そして曲間の繋ぎからイントロに至るまでにダンサブルなアレンジが施されたことによって人によっては何の曲かわからないんじゃないかというくらいの進化を果たした「Girl A」はこれまでにもそうして何度となく形を変えながら演奏されてきた曲であるが、それは今の4人での[Alexandros]であるからにして、次の最新作からのダンスチューン「we are still kids & stray cats」に繋がることを想定してのものだろう。白井はワンマンの時のようにサングラスをかけたりすることはないものの、再びハンドマイクになった川上はやはりステージ左右の通路へ歩き出して頭を振りながら歌うと、その場に寝転んで駄々をこねる子供のようにもなる。まさにstill kidsとはこの川上のことであるかのように。
そんな川上がギターを持って弾き語り的に歌い始めたのはこのフェスでおなじみの「12/26以降の年末ソング」。まさにこの時期だからこその選曲であり、このフェスでこの曲を聴いているとこの1年間に想いを馳せざるを得ないのであるが、
「あと2曲で今年も終わるけど」
と川上が歌詞を変えて歌うことによって、こうしてフェスで観たり、アルバムリリースやそのツアー、そのうちの地元公演が年明けに延期されたり…というこのバンドと一緒に歩いてきた1年ももう終わってしまうんだなという感慨に浸らざるを得ない。
そんなラスト2曲を担うのが最新アルバムからの「Baby's Alright」であり、駆け抜けていくかのようなスピード感溢れる演奏がさらに速く激しくなっていくこの曲はすでにライブにおいて欠かせない曲になっているとも言える。そんな曲の後には川上が
「いつもこのフェスは一年を締め括る忘年会みたいだと思ってたんですけど、こうしてこのステージに立ったら来年への希望の光だと思った。ちょっとクサいこと言ってるけど(笑)
来年こそは皆さんが声を出して、邪魔なマスクを外した状態で会えることを信じております!」
と来年への強い希望を込めて演奏されたのはこのコロナ禍に入ってからリリースされた最大のキラーチューンである「閃光」。加速するリアドのビートに合わせて観客は腕を振り上げ、Aメロでは手拍子をする。サビで極まる演奏の迫力はやはり音楽が、このバンドの存在こそが一筋の希望の光であることを示してくれている。
来年はロッキンオンのフェスでもこの曲の間奏でのコーラスパートを合唱できるように、とも思うのであるが、この直後に弾き語りでもう1回この曲を聴けるとは、この日の前日までは全く想像していなかった。
1.SNOW SOUND
2.Kick & Spin
3.無心拍数
4.Girl A
5.we are still kids & stray cats
6.12/26以降の年末ソング
7.Baby's Alright
8.閃光
・川上洋平 [GALAXY STAGE]
本来この日のGALAXY STAGEのトリは初出演にしてその位置を務めることになったUruのはずだったのだが、当日に急性声帯炎を発症してしまったことによってキャンセルとなり、このバンドでのライブを終えたばかりの川上洋平が急遽弾き語りでこのステージのトリを務めることになった。
「前の時間帯にフルでライブをやった人が次のスロットの時間帯にもフルでライブをやる」というのは間違いなくこのフェス始まって以来初めてのことであり、本来のタイムテーブルでは絶対に間に合わないだけに20時くらいに川上洋平はステージに登場したのであるが、先ほどまでEARTH STAGEの前方でバンドのライブを見ていた人たちがそのままGALAXY STAGEの前方に移動してくるという構図もおそらくこのフェス始まって以来初めてのことである。
その川上洋平はバンドでのライブが終わった後とは思えないくらいに実に落ち着いた、穏やかな表情でアコギを持つと、
「弾き語りって言ってもしっぽりみたいな感じにはできないんで(笑)」
と言って「Waitress, Waitress!」をバンドの時と全く変わらないくらいにジャカジャカと弾きまくる。本当にいわゆる弾き語りでのバンドの曲のアコースティックアレンジというわけではなくて、テンポもそのままであるだけに弾き語りでもロックだなと感じさせてくれるようなオープニングである。
「何やろうかなと思って。やる曲決めてないんですよ。バンドと全く同じ曲にしたら多分みんな帰っちゃうから(笑)バンドでやってない曲を」
と言ってギターをかき鳴らし始めたのは「Starrrrrrr」であり、弾き語りであってもこの曲のスケールを感じさせるのであるが、やはりこの曲は弾き語りであってもコーラス部分を一緒に歌いたくなってしまう。それくらいにかつての、そして代々木での合唱が脳内にも体内にも染み付いているからだ。
さらにはやはりアコギをかき鳴らしまくる「city」と、これは先ほどのバンドでのライブとどちらがどちらのセトリなのかわからなくなるくらいにロックな曲かつアンセムの連発となるのだが、間奏からの最後のサビ前にはまるでリアドがドラムロールを叩いているかのように川上は自身の背後を指差す。弾き語りという形態であってもバンドで鳴らしているかのような、そんな感覚をその姿から感じさせるのは川上の弾き語りならではだろう。
「今日は月がキレイらしいから」
という選曲理由を口にしてから歌い始めたのはもちろん「ムーンソング」であるのだが、原曲のまさに月を背負っているかのようなスケールの大きさが弾き語りでも全く変わらないのは川上のファルセットボーカルの美しさも全く変わることがないからであろう。
そんな中でもアコギを取り替えると、
「弾き語りでもイメージ一つで踊らせられる、そういう景色を作ることができるんですよ」
と言ってバンドでも演奏していた曲の中から選ばれたのは「Girl A」。その掻き鳴らすギブソンのアコギの音が観客を揺らし、飛び跳ねさせるというのは言葉通りに弾き語りでもダンサブルなライブができるということを示しているが、そのまま「we are still kids & stray cats」へと繋がるという流れもバンドでのライブと同様で、やはりギブソンのアコギ弾き語りだけで我々を踊らせてくれる。それは川上のアコギの弾き語りがメロディだけではなくてリズムも表現しているというものであり、曲のメロディにもそれが備わっているからだろう。まさか弾き語りでこんなに体が動くとは全く思わなかった。
そんなアコギを取り替えるローディー役を担うのはバンドの相棒の磯部なのだが、ここでその磯部がローディーではなくゲストとしてステージに現れると、
「明日誕生日なんだよね」
と言って大きな拍手を受ける。あまりバンドのライブでのMCではそれをアピールするような空気ではないだけにそれを口にできるのも弾き語りだからこそであるが、これからも毎年このフェスで磯部の誕生日を祝えたらと思う。
その磯部が川上とラップの応酬を見せるのは「Kaiju」であり、アコギと声だけとは思えないようなそのミクスチャー感は先日のワンマンで演奏されていた時のような怪獣が街を破壊しまくる映像すらも想起させる。それもまた2人のラップのリズムとメロディによって感じられるものであろう。
そしてすでに観客からリクエストが上がっていたものの、
「これはやるとしたら最後でしょう〜」
と言ってその時は演奏しなかった「ワタリドリ」がこの日1日を締めるように演奏されるのだが、そもそもこの曲はバンドでのライブでは演奏されていないだけに、この曲をやらなくても成立するくらいに今のこのバンドはキラーチューンが揃っているということだ。やはり弾き語りであっても飛び跳ねまくってしまうのもこの曲が持っている力だろう。
そんな「ワタリドリ」で最後かと思ったらまだ川上は歌おうとしており、
「ボーカリストって急に喉に来るものなんですよ。俺も前に急に声が出なくなったこともあるしね。Uruさん、めちゃくちゃ悔しいと思う。でもきっとまたみんなの前で歌うのが見れる日が来ると思う。少しでも早く良くなりますように」
というUruを気遣った言葉からは川上の人間性を感じさせる。割と人によっては尊大なイメージがあるかもしれないがそんなことはない、人のことを考え、思いやることができる人だ。だからコロナ禍でのライブでも我々が早く声を出せるようにということを言い続けてきた。それは我々の声を聞きたいというのはもちろん、その方が我々も楽しめるということをわかっているからだろう。
そんな弾き語りの最後に演奏されたのはバンドでのライブ同様に「閃光」。そのチョイスは今このバンドにとって1番大事な曲がこの曲であり、歌いたい曲がこの曲だからだろう。弾き語りであってもこの曲は来年への一筋の光となる。クリスマスの弾き語りワンマンライブがどうやっても毎年チケットが取れないだけに、本当にこうして弾き語りで出てくれたことに感謝。
でも普通ならライブが終わった直後の人をすぐに違うステージで弾き語りでオファーなんてしない。もうちょっと早く出番が終わってる人に出てもらった方が準備に時間がかかることもなくすんなりライブができる。
でもこうして川上洋平がバンドのライブ後にすぐに弾き語りをやったのはフェス側からのオファーというよりは自分からやると言い出した可能性が高いと自分は思ってる。なんなら当日キャンセルならその時間は空いても仕方ないからこそ。
それは川上洋平が、[Alexandros]がロッキンオンの主催フェスを心から愛してきたからそう思うのだ。開催にあたって批判されまくった2021年のJAPAN JAMで川上はスタッフジャンパーを着てライブをして、一緒に戦っていることを示し、その年のひたちなかでのロッキンが中止を発表した時にはいつもインタビューを担当している人に「Rock the World」のデモを送った。そうしたエピソードは川上がどれだけこのフェスを愛してきたかを示している。
[Alexandros]はデカい会場でこそ真価や本領を発揮するバンドであるだけに、日本最大級の規模のロッキンオンのフェスは自分たちの力を最大限に発揮できる場所。実際に忘れられないこのフェスでのライブばかりだし、それとそこに集まった観客の存在がそう思わせてくれているはず。こんなにカッコいいバンドとボーカリストが自分がずっと通い続けているフェスを愛してくれているのが本当に嬉しい。
1.Waitress,Waitress!
2.Starrrrrrr
3.city
4.ムーンソング
5.Girl A
6.we are still kids & stray cats
7.Kaiju w/ 磯部寛之
8.ワタリドリ
9.閃光