SAKAI MEETING 2022 day1 @国際障害者交流センター ビッグ・アイ 12/3
- 2022/12/05
- 18:41
大阪・堺出身のGOOD4NOTHINGとTHE→CHINA WIFE MOTORSが共同で開催するアーティスト主催フェス、SAKAI MEETING。これまでは夏と言える時期に野外で開催されたりしてきたが、今年はこの年末に堺駅から少し離れた泉ヶ丘という駅の近くにある国際障害者交流センタービッグ・アイという施設での屋内開催。それだけに果たしてどんな形のフェスになっているのだろうか。
ステージは堺ステージと利休ステージ(2日目は仁徳ステージと鉄砲ステージと、どちらも堺の歴史を感じさせる名前になっているあたりはさすがである)の2つで、中に入るとマジでその辺の文化センターというか多目的ホールみたいな感じの会場であることに驚く。
この日のメインステージの堺ステージはその会場のホール部分であり、前半分はスタンディング、後ろ半分はホール備え付けの椅子になっているという特殊な構造になっている。セカンドステージの利休ステージはそのホールの裏側の通路に作られた小さなステージで、とにかくメロディックパンクバンドたち主催のフェスらしからぬ会場なのだが、ということはGOOD4NOTHINGとTHE→CHINA WIFE MOTORSがこれまでにこのフェスで築いてきたものがあるからこそこうした会場を使わせてもらうことができているということである。
10時50分くらいになると主催者2バンドが登場し、THE→CHINA WIFE MOTORSは
「7人が6人になり、6人が5人になり…」
とGOOD4NOTHINGの人数が減っていることを口にするのもこのフェスが3年ぶりの開催であり、その期間中にメンバー脱退という激動の活動をしてきたからである。最後にはお馴染みだというけれど関東の人間からしたら全くなじみのない「堺っ子体操」をみんなで踊るというラジオ体操的な準備運動から最初のバンドへ。
11:00〜 Hawaiian6 [堺ステージ]
トップバッターとして3年ぶりに開催のこのフェスの口火を切るのはHawaiian6。個人的にもかなり久しぶりにライブを見る存在である。
おなじみABBA「ダンシング・クイーン」のSEで手拍子が起きる中メンバー3人がステージに登場すると、安野勇太(ボーカル&ギター)は髪が緑色になっており、完全にベテランになっても変わっていないどころかより若々しくなっているようにすら見えるが、逆にかつて加入した当初は1人だけめちゃ若く見えていたGURE(ベース)がメガネをかけて少し体型が丸くなってきているあたりに年齢を重ねたことを感じてしまう。畑野行広(ドラム)は全く変わることがない威圧感を発している。
その畑野が
「SAKAI MEETING、いつも通りにやらせてもらいます!」
と宣誓すると、「THE LIGHTNING」から漆黒のメロディックパンクが鳴らされ、観客もいつも通りとばかりにモッシュとダイブでバンドのいつも通りの演奏に応える。安野のタッピングも含めてメロディックパンクバンドの中でもマイナーキーを軸にしたバンドであり、メタルなどの音楽の要素を自分たちの音楽に取り入れたバンドであること、それは高い演奏技術ができるからこそこれだけ飛び抜けた存在のバンドになっていることを示している。
そうしてダークに疾走してモッシュやダイブが繰り広げられる中で畑野は
「今日は久しぶりに朝5時に起きてライブしに来ました(笑)
でもいいんだよ、そういうことは。俺たちも楽しむし、お前たちも楽しむ。今日お前たちは楽しんだ後に居酒屋に行って酒を飲むだろ?もうアホほど飲むだろ?
でもその向こうにいる人たちのことも忘れないでくれ。子供たちは今でも黙食してるって。遠足も修学旅行も行っちゃダメだって大人に言われてるって。俺たちも子供がいる年になったけど、子供にも自由でいて欲しいと思うし、自分たちで考えて自分たちでどうするか決めれるようになって欲しい。それをライブハウスから始めていこうぜ」
という畑野の言葉にはいつも強い説得力が宿っている。それはただ好き勝手にやるパンクバンドとしてではなくて、この国で我々と同じように生きている生活者の先輩としての言葉であるからだ。その言葉がどんな場所のどんなライブでもその日を特別なものにしてくれる。
そんな畑野が
「堺のデッカい輪っかを見せてくれー!」
と言って演奏されたのはもちろん「RAINBOW, RAINBOW」で、客席ど真ん中には巨大なサークルピットが出現するというのもこのバンドがずっと生み出してきたものであり、それがダークなサウンドが続いたからこそそこから光に向かっていくように感じられるのだ。
さらには「Promise」と、激しいだけでもダークに疾走するだけでもなく、メロディーがキャッチーだからこそパンクシーンの中で巨大な存在になり、主催フェスがいろんなところから注目されるようになった、それくらいの力を楽曲が持っていることを感じさせると、ラストの「Light and Shadow」までこのバンドのいつも通りに駆け抜けまくる。それは同時に観客も駆け抜けまくるように楽しんでいたということである。久しぶりに見たHawaiian6のライブはやっぱり生き様そのものが鳴っていたし、パンクバンドがこれだけ集まっている中で一聴するだけでこのバンドのものだとわかるくらいにパンクの中でも1つの大きな柱を打ち立てている。
12:00〜 locofrank [堺ステージ]
こちらもライブを見るのは実に久しぶりなlocofrank。コロナ禍になって以降に見るのは初めてかもしれない。かつてはフェスにもしょっちゅう出ていて見れる機会があったが、このフェス自体が3年ぶりだしそうしたフェスがなかったということでもある。
こちらもおなじみのSEで登場すると、木下正行(ベース&ボーカル)も森勇介(ギター&コーラス)もこちらは本当に変わらない。コロナ禍になってからライブを見るのが初めてということは横川慎太郎(ドラム。元PAN)が加入してから見るのが初めてということであり、どこか新鮮な感じがする。
その新鮮な感覚を切り裂くようにして木下がタイトルをコールしたのは、今まで何回ライブで、音源で聴いたかわからないバンドの大名曲「start」。もちろんこの曲でスタートということはいきなりモッシュやダイブの嵐になるということであるが、2サビで木下はマイクスタンドから離れると観客の合唱が響く。長くライブを見ていなかっただけにこの曲を観客が歌えないライブは見ていなかったわけだが、それでもやっぱりこうして今にしてこの曲を歌っていると(自分はいつも森のハイトーンな方で歌っている)、またこうしてこの曲で歌っているようにスタートすることができているんだなと思うことができる。それはバンドがずっと一緒にやってきたメンバーが脱退しても新たなスタートを切って走り続けているからだ。
さらにはハードなパンクの「Tabacco Smoke」、ストレートな「Mountain range」と初期の曲を連発することによって観客の熱狂はさらに増していく。それはずっと聴いていた曲をこうしてライブで聴けているという喜びも間違いなくあるだろうけれど、何よりも頭を振りながら演奏する木下と森の衝動がそうして我々を熱狂させてくれるのだ。
しかし客席からはヤジが飛び交いまくり、
「お前らHawaiian6の時にそんな感じちゃうかったやんけ!扱いが違いすぎるやろ!(笑)」
と言いながらもそこに愛があることをわかっている木下は実に嬉しそうである。
もう完全にベテランの域に達しているバンドであるだけに持ち曲もリリース枚数も増えた。その中から割と近年の曲と言っていい「Hate to lose」を織り交ぜながらも、「Grab Again」とかつての熱狂を観客の盛り上がりっぷりも含めて思い出さざるを得ない初期曲が鳴らされる。それこそCOUNTDOWN JAPANのGALAXY STAGEが深夜でも満員になってモッシュやダイブが繰り広げられていた2000年代中盤頃にもよく演奏されていた曲であるだけに。
そして森がイントロのギターを情感たっぷりに鳴らす「share」はそのギターのサウンドも木下のメロディも今も全く色褪せることがない大名曲。locofrankが「start」だけのバンドで終わらなかったのはその後にこの曲がリリースされたからだと思っているし、ただ衝動を炸裂させるメロディックパンクバンドなだけではなくてこのバンドがロマンチックな感性を持った歌詞を書くバンドであることが今でもよくわかる。このフェスが来年以降にまた野外に戻った時にはこの曲を月の下で聴くことができるだろうかと思うくらいに。
Hawaiian6と同様にこのバンドもまた
「自由でいようぜ」
というメッセージを観客に投げかけるのであるが、そのメッセージを投げる木下にもやはりヤジが飛び交いまくるというのはハワイアンとこのバンドのキャラの違いを示している。しかしそれも
「愛しかあるやん(笑)」
と受け止めるあたりがこのバンドの器量の大きさであるし、そんな観客たちとまたライブハウスで再会するために「See You」を演奏すると、イントロで森が掻き鳴らすエモーショナルなギターサウンドの時点で観客が「オイ!オイ!」と声を上げる珠玉の名曲「reason」。あの頃と変わらないような熱狂が、いや、あの頃よりもはるかに増したような熱狂がここにはあった。それはこのフェスでのlocofrankのライブを待っていた人がたくさんいて、その人たちの力がそこに確かに加わっていたということである。
そんなライブの最後に演奏されたのは今も変わることないバンドの衝動を思いっきりキャッチーかつパンクなサウンドに乗せた「Returning」。この曲を聴くとここからまたライブが始まっていくかのような感じすらあるのだか、それはこの後にまたすぐこのバンドのライブを観たくなるし、観る機会が必ずまたすぐに来るということだ。それくらいにこのバンドは今もライブハウスで日々生き続けている。
久しぶりに見たlocofrankのライブはかつて見ていた時よりもはるかに沁みた。それはバンドが乗り越えてきたものがあるからだろうし、我々もバンドと同じようにいろんなことを乗り越えてこの日に至った。それが音から伝わってくるし、かつての名曲たちを聴くとその当時のことを今でも思い出すことができる。そうして積み重なったものがより一層この音楽が今こそ響くものにしてくれている。それは期間は空いたかもしれないけれど、続けてくれている限りはこのバンドとこれからも一緒に生きていくということだ。
1.start
2.Tabacco Smoke
3.Mountain range
4.Hate to lose
5.Grab Again
6.share
7.See You
8.reason
9.Returning
13:00〜 dustbox [堺ステージ]
Hawaiian6、locofrank、dustboxというのはかつて「THE ANTHEMS」というスプリットアルバムをともに作った3組である。その3組がこうして並んでいるというのはこのフェスがそのバンドたちのストーリーをわかっているということである。そんなTHE ANTHEMSのトリとして登場するのがdustboxである。
おなじみの「New Cosmos」のSEでメンバー3人が登場すると、このバンドもlocofrank同様に全く変わらないような感じがするのは見た目が若々しいからか、あるいは前の2組よりも頻繁にコロナ禍になってからもライブを見ているからだろうか。
そんなバンドが1曲目に鳴らすのはSUGA(ボーカル&ギター)がギターを掻き鳴らしながらハイトーンボーカルを響かせる「Right Now」であるのだが、普段からそこまでフェスでセトリが変わるバンドではないとはいえ、この曲を1曲目に演奏するというのは同じタイトルの曲を持つ盟友GOOD4NOTHINGへ向けてのものでもあったのだろうか。前の2組と同じように観客は当然のようにモッシュ・ダイブでそのサウンドに応戦していくのであるが、JOJI(ベース)が観客を煽る姿はやはりそうした光景を早く見たかった、みんなの声が聞きたかったというような喜びに溢れているように見える。
そんなdustboxは今年最新アルバム「Intergalactic」をリリースしており、その中からリード曲であるハードなサウンドの「Emotions」が披露される。リリースペースが速いわけではないというか、むしろずっと自分たちのペースを貫き続けているバンドであるが、そのタイトルとサウンドからは今も失われることがないパンクバンドとしての衝動を確かに感じさせる。
近年は野外で開催されていたこのフェスがかつてもこの会場で開催されていたことを口にするあたりはさすがGOOD4NOTHINGの盟友と呼べるバンドであるが、locofrankと同様にヤジが飛びまくるというのはHawaiian6とはやはりメンバーとの距離感が全く違うことを感じさせるし、JOJIには「佐藤ー!」という本名のヤジすら飛ぶというのはこのバンドのライブを楽しみに来た人が多いということである。
なので「Try My Luck」以降のライブでおなじみのキラーチューンたちではイントロから観客が歓喜してモッシュ・ダイブが発生するという流れになっており、このバンドのメロディックパンクバンドの「メロディック」という部分を実感させてくれるくらいにキャッチーな「Spacewalk」から「Bitter Sweet」ではメンバーに合わせて観客が両腕を上げて左右に振るというおなじみのノリ方がこのフェスをさらに楽しいものにさせてくれる。
さらには「Riot」では曲最後のタイトルフレーズを我々が叫ぶことができるという喜びを噛み締められると思っていたら、袖からDizzy Sunfistのあやぺたが出てきてそのフレーズを叫ぶ。ずっと袖でライブを見てはYU-KI(ドラム)のキメに合わせて体を動かしたりしていただけに、あやぺたは本当にdustboxが大好きなんだろうなと思うし、自分たちが同じようなスタイル・ジャンルのバンドをやるようになったきっかけの一つでもあるんだろうと思う。
それもまた一つのミラクルであり、何よりも3年ぶりにこのフェスが開催されたことが最大のミラクルとばかりに「Here Comes A Miracle」が鳴らされてその展開同様に客席はさらに激しさを増すと、SUGAのギターのイントロでJOJIが指で合図するようにすると観客がサークルを作る。それはもちろん「Hurdle Race」のものであるが、夏前にライブを見た時はまだ立ち位置指定的なものがあったりしてこうした楽しみ方は出来なかった。でも今はそれができるようになっている。それはバンドが、我々が一つの高いハードルを超えて進むことができたということだ。それがどれだけ楽しいことであるかということを本当に久しぶりに思い知ったし、メンバーもその光景を見れていることが本当に嬉しそうだった。
そんなライブはSUGAのサビのハイトーンボーカルがよりメロディを輝かせるような「Jupiter」でこれ以上ないくらいにキレイに終わりかと思いきや、JOJIが
「まだ4分も残ってる。何かやる?」
と言い慌てて曲を決めようとすると
「MAKKINいる?ベース弾いて!」
と言ってJOJIがGOOD4NOTHINGのMAKKINにベースを弾いてもらおうとするのだがMAKKINは袖におらず、代わりに袖にいたDizzy Sunfistのメイ子にベースを渡して演奏されたのはもちろんJOJIがハンドマイクでステージを闊歩しながら、愛車のバイクが盗まれた怒りを魂の咆哮に乗せる「Neo Chavez 400」。
「間違えても全然大丈夫だから」
とメンバーに声をかけられていたメイ子が普通にこの曲を弾きこなしていることにDizzyのdustboxに対する愛情とリスペクトを感じさせたし、そうした光景がもはやこれはdustboxのフェスだったんじゃないかと思うくらいの大団円感を醸し出していた。
Hawaiian6→locofrank→dustboxというTHE ANTHEMSの流れ。その3組がこの順番だったというのは闇の中からスタートして最終的には光にたどり着くということを感じさせるものだった。それはライブシーンがこの数年で味わった暗闇からこの日という光に向かっていったかのようだった。つまり、確かにこのフェスのラインナップと流れには意味と意志が存在している。3年開催できなくてもやめなかった主催者たちの意志が。
リハ.Tomorrow
リハ.Bird of Passage
1.Right Now
2.Emotions
3.Try My Luck
4.Spacewalk
5.Bitter Sweet
6.Riot
7.Here Comes A Miracle
8.Hurdle Race
9.Jupiter
10.Neo Chavez 400 w/ メイ子 (Dizzy Sunfist)
14:00〜 SIX LOUNGE [堺ステージ]
客席の観客の出で立ちもガラッと変わる。それはパンクからロックンロールへの転換を意味しているのであるが、実際にこのバンドにオファーした本人であろう主催者のTHE→CHINA WIFE MOTORSのTSUNEHIKO KAJITAがライブ前には
「SAKAI MEETINGにはカッコいいロックンロールバンドが必要だ!」
と紹介していたように、自身からの流れを汲むロックンロールバンドが出るフェスでもあるということだ。
なので基本的にTシャツに短パンみたいな出で立ちだったステージ上も客席もそれがガラッと変わり、ヤマグチユウモリ(ボーカル&ギター)はお馴染みの革ジャン姿である。金髪&メガネのイワオリク(ベース)、グラマラスな魅力を振りまくナガマツシンタロウ(ドラム)の3人の出で立ちからしてここまでのバンドたちとは異なる中、爆音でロックンロールサウンドが鳴らされて「僕を撃て」からスタート。ユウモリの歌唱も実に伸びやかであり、それはさらに増してきているだけに曲そのもののメロディの美しさをさらに際立たせるものになっている。
イワオリクとナガマツのリズムが一気に力強く熱くなっていく「ナイトタイマー」からそのタイトル通りに突っ走るロックンロール「スピード」と続く中で演奏されたリリースされたばかりの新作EP「ジュネス」収録の「New Age Blues」は四つ打ちのリズムがこのバンドのキャッチーさを全開にさせる新境地の曲だ。そこはメジャーからのリリースということで振り切ったところもあるとインタビューで言っていたが、まさかSIX LOUNGEからこうした曲が生まれるとはと思うくらいにロックンロールの枠をはみ出している。それはこのバンドのさらなる可能性を感じさせるものになっている。
そんなSIX LOUNGEはかつて野外で開催された時のこのフェスにも出演しており、その時には小さいステージの出演で、その時に次は大きいステージに出演したいと言ったことがこの日叶ったことの喜びを口にすると、「天使のスーツケース」でそのメロディの伸びやかさとロックンロールのカッコよさを両方感じさせるのだが、Cメロの
「来世もきっと一緒だよ」
のフレーズがさらに伸びやかに響き渡り、客席からもたくさんの腕が上がる。
さらには「トラッシュ」でユウモリは
「ロックンロールは大好きかい?」
と観客に語りかけるというか呼びかけるようにして歌う。もちろんここにいた人たちはロックンロールが大好きだからここにいるはずだ。
それを証明するようにショートチューンのロックンロール「ピアシング」が鳴らされるとさらに客席が盛り上がりを増していく。わかりやすくモッシュやダイブが起こるようなバンドではないけれど、それでも曲がこうして演奏されるにつれてどんどん客席がそれまでのパンクからロックンロールに染まってきているのがよくわかる。
そんなSIX LOUNGEのメロディの美しさ、キャッチーさによってこうして大きなステージに立つような存在になったことを感じさせてくれるのが「ふたりでこのまま」であるのだが、それに続けて「メリールー」を連発するというのが激しいだけのロックンロールではない、歌謡曲などの要素を自分たちのロックンロールに昇華し、それをライブのクライマックスに持ってくるバンドであることがわかるのであるが、
「ねぇ、わたし大人になりたくない」
のユウモリの歌唱は本当に震える。毎回そう感じられるということは毎回ライブでの「メリールー」は過去を更新しているということだ。そのライブの強さを持っているロックンロールバンドということである。
そんな「メリールー」で終わりかと思いきや、時間があと1分あるということで(1分で残ってると言えるのか)この日2回目の「ピアシング」をさらなるスピードをもって演奏した。その加速度的な生き様こそがロックンロールなのだと思えるし、それはこの日のライブをずっと袖で見ては歌詞を口ずさんでいるくらいにこのバンドのことを愛してくれている橋本学のハルカミライに通じるところがあると思った。それはつまり、このSIX LOUNGEはやっぱりこのSAKAI MEETINGに必要なバンドだということだ。
リハ.トゥ!トゥ!トゥ!
1.僕を撃て
2.ナイトタイマー
3.スピード
4.New Age Blues
5.天使のスーツケース
6.トラッシュ
7.ピアシング
8.ふたりでこのまま
9.メリールー
10.ピアシング
15:00〜 Dizzy Sunfist [堺ステージ]
リハであやぺた(ボーカル&ギター)はこの後出演する後輩バンドのHump Backの「星丘公園」を口ずさんでいたのだが、そのあまりの自然っぷりというか似合いっぷりに驚くDizzy Sunfist。あやぺたとメイ子は朝から他のバンドのステージに出演してきたが、自分のバンドでの出番である。
3人がステージに登場すると、テンション高く「Someday」からスタートし、やはり観客はこうしたメロディックパンクサウンドにダイレクトに反応してモッシュとダイブが繰り広げられるパンクな光景に再び変貌すると、あやぺたは曲中に
「堺に来てくれてありがとうー!」
と叫ぶ。このバンドも主催バンドの後輩としてこの堺出身なのである。そんな地元のフェスに出演している喜びを確かに感じさせる。
moAi(ドラム)の疾走するツービートによる「SHOOTING STAR」から「No Answer」と続くのであるが、曲中で明らかにmoAiのバスドラが鳴らなくなり、それによってメイ子のリズムと合わなくなるという瞬間もあったのだが、こうしてなくなることによってバスドラが我々の聴覚とノリにどれだけ大きな影響を与えているかということがよくわかる。
それはペダルが壊れたりしたのかもしれないが、曲中にすぐに復旧してあやぺたが
「バスドラ大丈夫!?」
と確認してmoAiがそれに返事をするとすぐにポップなサウンドの「Andy」へ。あやぺたの声量はこのライブハウスより広いホールにもしっかりと、でもうるさく感じないくらいに響き渡る。その自分たちの持つキャッチーなメロディーを遠くへ飛ばす力があるからこそ、こうしてメインステージに出れるバンドになったのだろうと思う。
「堺に来てくれてありがとう!先輩たちが作ってくれた、続けてくれたフェスが堺で開催されていて、みんなが堺に来てくれたことが本当に嬉しい!」
というあやぺたの言葉は地元の堺への愛情に満ちていたが、
「やばたにえん!」「ポゥポゥポゥー!」
というギャル語みたいなものを交えるあたりはさすがあやぺたである。
そんなDizzyはこの3人になってから初めて作った曲「Hey! Stay By My Side!」を演奏するのであるが、モータウン的なメイ子のベースのリズムは今の3人でのDizzyだからこそということを感じさせ、あやぺたの振り付け的な動きとそれに合わせる観客の動きもライブの楽しさを増幅させてくれる「Life Is A Suspense」、さらには両腕を上げて飛び跳ねまくる「Tonight, Tonight,Tonight」とライブ定番のキラーチューンが続いていくと、
「先輩たちが守ってくれてきたこのフェスをバンド人生をかけて守っていきます!」
と宣言して、その言葉もまた「夢は死なへん」というこのバンドのテーマであり、それを音楽として示すために「The Dream Is Not Dead」が演奏される。それはこの場で聴くとこのフェスに出演し続け、このフェスを守り続けていくことである。
そんなこのフェスとこのバンドにまつわる全てが美しいと思えるような「So Beautiful」でこのバンドのメロディそのものも美しいと思わせてくれると、トドメとばかりにショートチューン「Fist Bump」を演奏して最後の最後にこの日最大のダイブの嵐を生み出した。それはやはりこのバンドの生き様が堺発のパンクであることを示していたのだが、ステージから去っていく時の終演SEがパリピ的なEDMなのがやっぱりこのバンドらしさでもあった。
この日あやぺたは
「堺で生まれて、堺で育って本当に良かった!」
とも言っていた。それは堺で生まれ育ったからこそ今のようなバンド人生になったということだろうし、そこには間違いなく堺のパンクの先輩でもあるGOOD4NOTHINGの存在がある。もしかしたらグッフォがいなかったらこのフェスがなかったかもしれないし、Dizzyはいなかったかもしれない。このフェスでこのバンドのライブが見れたからこそ、堺とグッフォがどれだけ凄い場所やバンドなのかがよくわかった。
リハ.星丘公園 (歌い出しのみ)
リハ.The Magic Word
リハ.Wonderful Song
1.Someday
2.SHOOTING STAR
3.No Answer
4.Andy
5.Hey! Stay By My Side!
6.Life Is A Suspense
7.Tonight,Tonight,Tonight
8.The Dream Is Not Dead
9.So Beautiful
10.Fist Bump
16:00〜 a flood of circle [堺ステージ]
正直、この流れの中にa flood of circleがいるというのはファンからしてもめちゃくちゃアウェーなのがわかる。でもやはりTHE→CHINA WIFE MOTORSのTSUNEHIKO KAJITAが
「カッコいいロックンロールバンド」
と紹介してくれたように、このバンドが呼ばれた理由が確かにある。今年もいろんな場所や地方に行ってまで何回もライブを見てきたフラッドを今年最後に見れる機会がこのフェスになったのだ。
サウンドチェックで声を出す青木テツ(ギター)がいきなり絶叫して待っていた観客を驚かせるというかビビらせると言えるようなこともありつつ、おなじみのSEでメンバーが登場すると佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン姿で、パンクだった空気を切り裂くようにして爆音ロックンロール「ミッドナイト・クローラー」からスタートし、亮介もテツも前に出てきてギターを弾きまくり、HISAYOはステップを踏むようにして華麗にベースを鳴らし、渡邊一丘(ドラム)はコーラスもしながらリズムを刻む。いつものフラッドのライブではあるが、とにかく爆音であり、ここまでのパンクバンドたちの後でもフラッドが1番音が大きいんじゃないかと思うくらいの爆音っぷりである。
その爆音は楽器だけではなくて亮介の歌声だけでそうなっていると思わせてくれるのは亮介がハンドマイクで歌う「狂乱天国」で、やはりその独特の歌声と凄まじい声量はライブバンドしかいないこのフェスの中でも突出していると言えるレベルですらある。歌詞に合わせてダブルピースをする姿もじつにお茶目である。
「何しに来たの!ロックンロールでしょ!ロックンロールパーティーだぜ!」
と挨拶代わりに口にしてから演奏されたのは最新曲「Party Monster Bop」であり、一気にその鳴らしているサウンドでこのフェスをパンクのフェスからロックンロールに変えてしまうのであるが、それでもやはり客席はかなり寂しめというか、今でもいろんなフェスに出てはこのバンドのライブを観に行っているけれども、近年ではかつてないくらいのアウェーっぷりである。
それは亮介も察していたのか、
「ジャンルとかはどうでもいいと思ってるんだけど、スタイルの違いはあるよね。俺たちとSIX LOUNGEとTHE→CHINA WIFE MOTORSだけは一枚多く服を着ている、みたいな(笑)」
と、服装の違いかい、と突っ込まずにはいられないことを亮介が口にすると、一枚多く服を着ている仲間であり後輩であるSIX LOUNGEが「GIFT ROCKS」に提供した「LADY LUCK」ではユウモリが缶チューハイ片手にステージに登場してテツのマイクで歌うのであるが、途中では亮介と一本のマイクで2人で歌うという光景に。自分たちで作った曲であるだけにちゃんと歌詞を覚えているあたりはユウモリはさすがであるが、そうしたアウェーなライブを一瞬で特別なものにしてしまうというのがこうした地方のフェスの短い持ち時間でもフラッドのライブを見逃せない理由である。
そして曲の持つメロディーがパンクバンドが居並ぶこのフェスの中でこのバンドがロックンロールの北極星のように輝くかのようにきらめく「北極星のメロディー」から、早くもここでこのフェスと我々とバンド自身の明日に捧げるように「シーガル」が演奏される。人数は少なくてもイントロの「イェー!」という亮介の叫びで飛び上がる人がたくさんいたというのは、このフェスにフラッドを見に来た人が自分以外にも少なからずいたということである。それがあってもなくてもこのバンドがやることは変わらないけれど、わかるのが少し嬉しくなる。
そんなバンドの、このフェスのベストを更新するかのように鳴らされた「ベストライド」では客席で手拍子が鳴らされると、亮介とテツはそれぞれ前に出てきてギターを弾きまくる。その姿はホームとかアウェーとか関係なく、本当にこのバンドがライブをすることが生きている実感を得られることなんだろうなと思わせてくれる。
そして亮介は
「コロナ禍になって聴いたTHE→CHINA WIFE MOTORSと、何人になっても続けるバンドを見たから」
と口にしたが、それは主催者である両バンドへのこのバンドからの思いだ。ちゃんと普段からどちらのバンドのことを見ている。フラッドがこのフェスのこのステージに立っている意味や理由がやっぱり確かにあった。その思いを曲にしてこのフェスに捧げるように亮介はアコギに持ち替えて「花火を見に行こう」を最後に演奏した。それはフェスとは花火のようなものだからだ。打ち上っている時は最高にキレイだけれど、終わると寂しくなってしまうような。それを確かに感じさせてくれたフラッドのライブを見て、わざわざ大阪までこのバンドのライブを観に来て本当に良かったと思った。
それはホームだろうがアウェーだろうが、観客が多かろうが少なかろうが関係なく、最高にカッコいいロックンロールを鳴らしてくれるのがa flood of circleというバンドであるということをステージで証明し、それを実感させてくれたからである。また来年もこうやっていろんな場所でライブを観ることができますように。いや、できるはずだ。
リハ.Dancing Zombiez
1.ミッドナイト・クローラー
2.狂乱天国
3.Party Monster Bop
4.LADY LUCK w/ 山口ユウモリ(SIX LOUNGE)
5.北極星のメロディー
6.シーガル
7.ベストライド
8.花火を見に行こう
17:00〜 Hump Back [堺ステージ]
サウンドチェックの時間もあまりなかったからか急ぎ気味で曲を演奏してそのままステージにいるままで本番を迎えたHump Back。3年間開催されていなかった間に頭角を表したバンドであるだけにもちろんこのフェス初出演である。
なので林萌々子(ボーカル&ギター)も
「SAKAI MEETING初出演です。Hump Backです。よろしくお願いします」
と挨拶してからサビを弾き語りのようにギターを鳴らしながら歌い始める「拝啓、少年よ」でスタートする。するとサウンドチェック中も林が
「セキュリティの人が「このバンドはセキュリティいるバンドかどっちやろ?」みたいになってる(笑)」
と言っていたように、いきなりダイバーが現れるというHump Backのライブの中でもかなりパンクな展開に。
なのでロックンロールの神様に騙されたからバンドも我々もここにいるということを示すように演奏された「HIRO」、タイトル通りにオレンジの照明に照らされながらの美咲のドラムのアタック感も実に力強い「オレンジ」と、演奏しながら林もぴか(ベース)もステージ上を転がり廻りまくっているというのは客席同様にメンバー自身もパンクさを全開にしているということである。
「うちらのライブ見たことあるって人どれくらいいる?」
と林が問いかけると自身が驚くくらいにたくさんの人が手を挙げていたのはそれくらいにこのフェスに来るような人にもこのバンドの音楽とライブが浸透しているということであるが、
「堺出身でもなんでもないけど、堺のライブハウスにずっと通い詰めてて、自分たちがライブをやるようになってからは堺で悪い酒の飲み方も覚えた(笑)」
と大阪のバンドであるだけに堺への思い入れを口にしたのはやはりこのフェスに出演できているのが嬉しいのだろう。そうして演奏された「番狂わせ」はまさにおもろい大人である堺出身バンドへのリスペクトを込めながらも自分たちが主役であるということをその音が示すと、ここにいるすべての少年少女のために「ティーンエイジサンセット」を鳴らす。客席で寄り添いながらも時には泣き崩れるようになっているカップルに声をかける林は本当に客席をよく見ているが、その客席は想像以上のモッシュ・ダイブの応酬になっているのはこのバンドの音楽がそうした衝動を掻き立てるロックであるからだろう。なので
「みんなが大好きな速い曲」
と言って演奏された「僕らの時代」のパンク感はこのフェスに実によく似合っている。間奏ではそれぞれのソロ回しも展開されるのだが、その演奏の強さと速さもどこかパンクである。
そんなHump Backの音楽を林は
「うちらの音楽は少年少女にしか響かんようになってる。それはただ年齢のことを言っているだけじゃなくて、うちらの音楽が響いたらそういうことや」
という言葉はここにいる我々がまだまだ少年少女のままでいられている、だからこのバンドの音楽やこの日出演しているパンクバンドの音楽が響いているということを実感させてくれるのであるが、そんな感覚を曲にしたのが「がらくた讃歌」であり、だからこそ
「忘れないでいて 少年少女よ
命あるだけで 素晴らしいんだ 美しいんだ」
という歌詞が染み渡るのだ。それは今やこれだけの出演者の中でもトップクラスと言えるくらいになった林の歌唱力あってこそ。このホールすらも小さく感じるくらいの伸びやかさと響き渡りっぷりである。
そんな林のボーカルの力が最大限に発揮されるというか、そのボーカルの力があるからこそ成立する、最後にふさわしい曲になっているのがバラードと言っていい「新しい朝」。バラードと言えるようなテンポの中にもロックバンドとしての激情のようなものが確かに宿っている。そしてこの曲は3年ぶりに開催することができたこのフェスが今まさに新しい朝を迎えたことを祝していた。
リハ.生きて行く
リハ.宣誓
1.拝啓、少年よ
2.HIRO
3.オレンジ
4.番狂わせ
5.ティーンエイジサンセット
6.僕らの時代
7.がらくた讃歌
8.新しい朝
18:00〜 ハルカミライ [堺ステージ]
主催者バンドたちの前という位置が今のこのバンドの状況、このフェスにおいての立ち位置も示している。Hump Back同様に初出演でありながらもこの位置を任されているということも。ハルカミライ、SAKAI MEETINGの初のステージである。
先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)の3人がステージに登場すると、最後におなじみの巨大なフラッグを持った橋本学(ボーカル)がステージに現れ、関がイントロを鳴らして「君にしか」で始まってそのまま「カントリーロード」へというおなじみにして必勝の流れへ。須藤は例によって途中まではベースを弾かずにステージ上を歩き回り、口に手を当てて「アワワワワ!」という声を上げる。関は「そこ登るとこじゃないだろ!」と言いたくなるような、照明が設置されている鉄骨をよじ登るとその上でギターを弾く。落ちたら怪我するどころじゃすまないぞ、と思っていると橋本も逆サイドのその鉄骨によじ登って歌う。客席はすでにモッシュとダイブの応酬になっているが、まだバンド側がそれをやることはできないためにこうしてステージ上で衝動をぶち撒けまくっている。その鉄骨の上で橋本は
「SAKAI MEETING初出演!意外って言われる。めちゃくちゃ出てそうだって。俺たちもそう思う。このフェスに似合いそうなバンドだって。2020年に俺たち出演するはずだったんだけど、開催出来なくなって。それから2年経ってこのステージに立ててめちゃくちゃ嬉しい!」
とこのフェスに出演できている喜びを語ると鉄骨から降りた関がギターソロを弾く。関はすぐにアンプの上に立ったりと、やはり高い場所が好きなようである。
サウンドチェックでも演奏していた「ファイト!!」の4人バージョンがさらに客席を激しく熱く燃え上がらせると、そのままパンクに疾走する「俺達が呼んでいる」というパンクなフェスであるこのフェスにふさわしい曲が連発されていく。曲間全くなしでこうしたフェスで飲むビールの美味さを感じさせてくれる「フルアイビール」へと突入していくと、小松も橋本もすでにTシャツを脱いで上半身裸になっている。それくらいに12月であってもライブハウスの中は熱く暑いのである。
「昨日携帯壊れた。だから移動中も何にもやることない。ライブ見て、ライブやって帰る。それだけ。だからみんながやってる「今年何を1番聴いたか」みたいなことも俺にはできない(笑)」
と携帯が使えなくなったことを橋本が明かすと、
「SAKAI MEETING!それでもここが世界の真ん中!」
と言って演奏された「春のテーマ」で響き渡るメンバーの合唱。そこに我々の声を乗せることができるのが実に嬉しいというか、これこそがハルカミライのライブだなとも思うのだが、続けざまに「世界を終わらせて」を歌い始めた橋本を
「学、「世界〜」の前にもうちょっと温めておかない?」
と言って須藤が制すると「Tough to be a Hugh」「エース」と急遽ショートチューンが連発されていくのもハルカミライのライブである。「エース」での歌詞に合わせてそれまで拳を振り上げていた観客たちが一本指を掲げるのも。
そうして温めるというよりもさらに熱くなった状態で演奏された「世界を終わらせて」を橋本が見事な歌唱力と声量で歌い上げて観客も飛び跳ねまくると、イントロで轟音が響き渡る「僕らは街を光らせた」の曲中で橋本は
「青春パンクブーム、メロコアブーム、過ぎ去った?街で「ロックンロール好き?」って聞いて「好き」って言うやつ、そんないないだろう。何が流行ってるのか俺には全然わからない。韓国の人の音楽が流行ってるのかもしれない。でもここでは何よりロックンロールが流行ってるぜ!」
と渾身の叫びを口にする。さらには
「俺もどんなことがあっても動じないバンドマンになりたいぜ!」
とも。それは間違いなく4人から2人になったGOOD4NOTHINGへと向けられていた言葉だろう。そんなバンドに
「街は色付き
故郷は遠退き
あの子は垢抜け
あいつは拳を解き
それでも それでも それでも
俺たち強く生きていかなきゃね」
という歌詞は送られているかのように感じたのだ。
そして残り時間を確認しながら、
「時間余ったらあれで。もうちょっと余ったらさらにあれで」
と追加する曲をタイトルを一切出さずに確認し合うという阿吽の呼吸を見せると、最後に演奏されたのはもちろん
「眠れない夜に私 GOOD4NOTHINGを、THE→CHINA WIFE MOTORSを聴くのさ」
と歌ってから演奏された「アストロビスタ」で
、橋本は曲中に客席に向かって
「バンドやってるやつ、この中にいる?」
と問いかけると手を挙げた人たちを見て、
「最前にいるな。裏ではESPっていうスタッフになる勉強してる子たちが働いてくれてる。いつかここで一緒にやろうぜ。俺たちだけじゃなくてここにいるバンドマンたちと一緒にやろうぜ」
と、バンドをやっているファンだけではなくてこのフェスを裏から支えている専門学校生にまでエールを送る。そうした言葉を聞いていると、ハルカミライにだけは10代の時に出会いたかったなと思う。自分がそうした状況にいたとしたら、橋本の言葉やハルカミライの音楽が何よりも夢への推進力になってくれるだろうから。それはメンバーより年上の自分にも響くからこそよりそう思うことができる。
そんな「アストロビスタ」で我々の胸を打って終わりかと思いきや、残り1分くらいのわずかな時間でショートチューン「To Bring BACK MEMORIES」を演奏して最後にモッシュやダイブを誘発しまくってステージを去っていった。それもまたさすがハルカミライとしか思えないものだった。
多分、ハルカミライのファンには少ない金銭を捻出して地方までライブを観に行っている人もいると思う。今やライブハウスではなかなかチケットが当たりづらいというのもあるが、それは毎回全く違うライブを見せてくれるバンドだとわかっているから、1本でも多くライブを見たくなる。それはワンマンやツアーだけではなく短い持ち時間のフェスでもそうだ。このライブは間違いなくこの日のSAKAI MEETINGでのハルカミライでしか見れないライブだった。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.フルアイビール
6.春のテーマ
7.Tough to be a Hugh
8.エース
9.世界を終わらせて
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12.To Bring BACK MEMORIES
18:00〜 GOOD4NOTHING [堺ステージ]
主催者バンドの2組のうち、初日はTHE→CHINA WIFE MOTORSがトリで、2日目はGOOD4NOTHINGがトリ。ということはこの日はトリ前でGOOD4NOTHINGが出てくるということである。
おなじみの「河内のおっさんの歌」のSEで登場すると、MAKKIN(ベース&ボーカル)の合図によって合唱が起こるのだが、こんな脱力SEを使っているパンクバンドもそうそういないだろうなとこの日たくさんのバンドを見てきて改めて思う。
自分は2人になってからライブを観るのが初めてなのだが、OVER ARM THROWの寺本英司がサポートするドラムはさすが同じメロディックパンクシーンで生きてきた男であり、「FOUND」から始まるとその高速ツービートは全く違和感がないというか、このバンドのドラマーをずっと務めてきたかのように強力で、かつ様々な曲でコーラスまで入れてくれるというのはこのバンドを心から愛してくれているからこそである。
その前に立つMAKKINとU-tan(ボーカル&ギター)であるが、そもそもギター&メインボーカルだったTANNYが脱退して3人になった時点で2人がやるべきことはさらに増えているし、足りないと感じるところも前半はあった。それはやはりギターが1本になったということであるが、それでもかつてのライブ時にTANNYが喉の不調で歌えなかった時に2人がメインボーカルをしてきたりした経験、そもそもこの2人もコーラスではなくてずっとボーカルであり演奏者であったというこのバンドの少し変わった編成が急増ボーカリストとは全く感じさせない。というか曲が演奏されるほどにその違和感はどんどんなくなっていくし、「NEW STORY」「IN THIS LIFE」という曲はこうして2人でもこのバンドを続ける選択をした意志がそのまま音になっている。
寺本をはじめとした様々な人の協力のおかげで今もバンドを続けられていて、このフェスを開催できていること、それは短い人生であるがゆえにやりたいことをやろうというようにより視点が定まったことを口にしてショートチューン「27」を演奏し、そのまま繋がるように「Never Too Late」を演奏するというアレンジもずっとこの形でライブを続けてきたかのような完成度の高さだ。それはやはりコロナ禍になって以降も、メンバーが減ってもライブハウスでライブをやって生きてきたバンドだからこその力が滲み出ている。
そんなバンドの折れない強さを曲に込めた形に結果的になったと言えるのが昨年リリースの「FLAG」であり、やはりモッシュもダイブも起こりまくるその光景はこの曲が変わることのないこのバンドのパンクとしての強さを持ち続けていることを示してくれる。
そしてU-tanがギターをかき鳴らすとMAKKINとともに飛び跳ね、観客もそれに合わせて飛び跳ねまくるのはライブの定番であり続けてきた「J.C.」であり、2人のボーカルの掛け合いの見事さも、キャッチー極まりないメロディーも、後半に一気に加速していく構成のパンクさもかつて4人で見ていた頃と全く変わっていなくて涙が出てきてしまう。いや、そこまで感動するということはこの今のグッフォが過去の自分たちを上回る音を鳴らすカッコよさを持っているからだ。その生き様が全て音に乗っている。最高に楽しくも本当にカッコよくて感動的ですらある。
そんな想いはずっと鳴らされてきた曲にこそ宿るというのが「One Day I Just」という決意を感じさせる曲からも響く。2012年リリースのバンド屈指の名盤「ALL THE AWESOME DUDES」収録曲であり、リリース以降はほぼ演奏されてきた曲であるためにこのSAKAI MEETINGでもきっと毎年のように演奏されてきた曲をまたこうして今演奏できているということが曲に、演奏にさらなる力を与えているかのような。
そしてそれよりもさらに前からグッフォのライブアンセムであり続けてきた「It's My Paradise」がまさにこのライブハウスと化した会場がパラダイスであることを示すかのように鳴らされると、なんと脱退したTANNYが黒のスーツにハットというフォーマルな姿で登場して一瞬だけコーラスを重ねる。これにはU-tanもMAKKINも驚いて演奏中に袖の方を見ていたくらいだったが、TANNYは今は自身の新しいバンドALIVESなどで活動しているけれど、今年のこのフェスには出演していない。でもそれは仲違いしたりしたわけではなくて、違う道を選んだけれども今もこのフェスを大事なものだと思っている仲間だということだ、
それもこうしてバンドを、このフェスを続けていたからこそ見れたものであるがU-tanは
「コロナ禍になって4人から2人になった時に辞めようかとも思った。でも俺の前に憎たらしいもう1人の俺が立っていて、そいつに負けたくなかった。そいつを乗り越えるために続けようと思った。いろんな人に助けられてこうして続けることができてる。このフェスもそう。来てくれて本当にありがとう」
というU-tanの言葉が涙なしには聞けやしないのは、a flood of circleの亮介やハルカミライの橋本学が口にしていたように、どんなことがあっても変わることなく面白くてカッコいい兄ちゃんであり続けているグッフォを続けることを選んだ2人がやはりその選択の裏には葛藤があり続けてきたということがわかってしまったからだ。当たり前のように続けることを選んだように見えて、実は悩んだりしまくってきた結果として今がある。このフェスがある。その選択をしてくれたから我々はこのフェスに来ることができているのである。
そんなU-tanの決意がそのまま曲になったと言えるのが歌い出しから合唱が起きる「Cause You're Alive」。続ける選択を選べたのも、そのバンドをこうして見ることができているのも、お互いに生きているから。これまでにも数々のライブのハイライトを担ってきたこの曲がこんなにも今の曲になっている。乗り越えまくってきたグッフォのテーマソングになっている。寺本も掛け声的なコーラスを力強く口にしてくれているのがより我々の心に染みながらも、あくまでもパンクバンドとしてさらに精神を燃え上がらせてくれている。
しかもそれで終わるんじゃなくて、最後にショートチューンの「Drive or Scrap?」を演奏して最後にさらなる熱狂を生み出してみせる。2人になったグッフォは2人だけじゃなくて、いろんな人の思いが曲に乗っている。このバンドを続けることを選んだのも、続ける先で鳴らす音楽がパンクであり続けているのも、それが人生を歌うための音楽だからだ。翌日はトリとしてさらに凄いライブになったであろうことを思うと、無理してでも2日通し参加にすれば良かったと思った。それくらいに今のグッフォはかつての自分たちを上回ることができている。それはやはり乗り越えてきた強さがパンクの音に宿っているからだ。それこそがこの場を我々のParadiseたらしめている。
リハ.Maximize
1.FOUND
2.NEW STORY
3.IN THIS LIFE
4.IN MY EYES
5.27
6.Never Too Late
7.FLAG
8.J.C.
9.One Day I Just
10.It's My Paradise
11.Cause You're Alive
12.Drive or Scrap?
20:00〜 THE→CHINA WIFE MOTORS [堺ステージ]
タイムテーブル的には20時からであるが、実際には19時50分に始まるという最後の最後での巻き進行。それはもしかしたら主催者として来てくれた人が少しでも早く帰れるようにという配慮があったのかもしれない。グッフォとともにこのフェスを主催するTHE→CHINA WIFE MOTORSがこの日のトリである。
佐々木亮介が口にしていたように、3人とも革ジャンなどの黒を基調とした衣装に身を包んだ姿からもわかるように、爆音でエイトビートを鳴らすロックンロールバンドであり、この日のこのステージに立ってきたバンドたちと比べるとその音楽は少し地味かもしれないが、20年以上このスタイルで続けてきたバンドとしての説得力が凄まじい。もうこれしかやれない男たちのロックンロールというか、時代に合わせたり何かに合わせたりすることが全くできない、それをしないという武骨すぎる音楽である。
なのだがそこに説得力を感じるのはやはりずっと続けてきたバンドだからこその技術があるからであり、MASAKI NODAのサングラス越しでも笑顔であることが伝わってくるベースも、リーゼント気味の髪型がギターウルフあたりをも彷彿とさせるTOYOAKI NAGAIの実に力強いドラムのビートも一聴してすぐに只者ではないことがよくわかる。低音の渋さを感じさせるKAJITAのボーカルと爆音ギターサウンドはまさにロックンロールをやるためのものである。
そんなKAJITAは
「昨日から会場で仕込みをやってたんだけど、44歳にもなって大人に
「そんなんじゃこの会場使わせねーぞ!」
ってめちゃ怒られて平謝りしまくった。俺は普段は謝らない男なんだけど、SAKAI MEETINGのためならいくらでも謝ってやるから!」
という心意気を感じさせる。確かに全員巨漢の強面であるだけに素直に謝りそうな感じは一切しないのだが、それを曲げてでもこのフェスを開催したいと思っていたということだ。それくらいにこのフェスが音楽が好きな人にどんな影響を与え、またその先でこのフェスがどんな影響を音楽シーンに与えることになるかをこのバンドはきっとわかっている。
それはコロナで開催できない期間があっても10年間続けてきたことで見えたものもあるのだろうし、ビックリするくらいにこの日ずっと会場内やライブを客席から見てきたからこそ見えたものでもあるのだろう。U-tanとMAKKINも含めて、主催者がこんなに普通に我々と同じ導線を歩いているフェスはそうそうない。このフェスで1番ビックリしたのはそこかもしれない。
そんなバンドは最後に
「野外だと音量制限があった。でもこの場所ではそれがない。それは爆音でギターを鳴らせるってことだ!」
とさらにギターの音量を増幅させるのであるが、あまりに爆音にし過ぎたのかアンプが壊れてしまい、ギターが鳴らなくなってしまったことでKAJITAはハンドマイクで観客を煽りながら歌い始める。そこにU-tanが現れて音が出ないギターを弾こうとすると、何故か再び音が鳴り始めるというミラクルが起きる。
それでも終演後の主催の2バンドでの締めの挨拶では
KAJITA「明日もライブあるのにアンプ壊れてどうすればええねん(笑)」
U-tan「今から買いに行こう(笑)」
という微笑ましいやり取りが交わされていた。そこには初日をやり切ることができたという安堵が少し滲んでいたように見えた。
ラインナップが発表された時にa flood of circleとSIX LOUNGEがいるのを見て嬉しかったけど、なんでこのフェスに?とも思った。もちろんグッフォと対バンしたこともあるし、というのはわかっていたけれど、このバンドのライブを見ていてちゃんと、THE→CHINA WIFE MOTORSが自分たちと同じロックンロールバンドである2組を呼んでくれたのだとわかった。その選択が自分をここに連れて来てくれた一因になっている。そうしてこの日に見ることができた特別な光景や様々なライブの感謝や恩を返す意味でも、またこのフェスに来てこのバンドのライブを見に来たいと思った。それは自分の足でこのフェスに来ないと絶対にわからなかったものだ。
モッシュやダイブを今楽しむという是非は置いておいて、そうした楽しみ方は時には暴力的になったり、フェスが荒れる原因になったりすることもあるということを日本のいろんなフェスで感じてきたし、体感してきた。
でもこのSAKAI MEETINGには全くそんなものはなかった。モッシュにもダイブにも音楽やバンドに対しての愛と敬意が確かに感じられた。その楽しみ方をずっと続けていきたいという思いも。
そしてそれはやはり主催者であるGOOD4NOTHINGとTHE→CHINA WIFE MOTORSの人間性によって醸成されているものだったんだと思う。決して大規模なフェスでもないし、ものすごく特別な場所で開催されているわけでもない。でもきっと続けてきた人や足を運び続けてきた人にとってはどこよりも大事で特別なフェスになっている。そんなフェスを作ってくれた2バンドに最大のリスペクトを抱いているし、また来年以降も来ることができたらなとも思っている。紛れもなくSAKAI MEETINGはライブを愛する人にとってのParadiseだった。
ステージは堺ステージと利休ステージ(2日目は仁徳ステージと鉄砲ステージと、どちらも堺の歴史を感じさせる名前になっているあたりはさすがである)の2つで、中に入るとマジでその辺の文化センターというか多目的ホールみたいな感じの会場であることに驚く。
この日のメインステージの堺ステージはその会場のホール部分であり、前半分はスタンディング、後ろ半分はホール備え付けの椅子になっているという特殊な構造になっている。セカンドステージの利休ステージはそのホールの裏側の通路に作られた小さなステージで、とにかくメロディックパンクバンドたち主催のフェスらしからぬ会場なのだが、ということはGOOD4NOTHINGとTHE→CHINA WIFE MOTORSがこれまでにこのフェスで築いてきたものがあるからこそこうした会場を使わせてもらうことができているということである。
10時50分くらいになると主催者2バンドが登場し、THE→CHINA WIFE MOTORSは
「7人が6人になり、6人が5人になり…」
とGOOD4NOTHINGの人数が減っていることを口にするのもこのフェスが3年ぶりの開催であり、その期間中にメンバー脱退という激動の活動をしてきたからである。最後にはお馴染みだというけれど関東の人間からしたら全くなじみのない「堺っ子体操」をみんなで踊るというラジオ体操的な準備運動から最初のバンドへ。
11:00〜 Hawaiian6 [堺ステージ]
トップバッターとして3年ぶりに開催のこのフェスの口火を切るのはHawaiian6。個人的にもかなり久しぶりにライブを見る存在である。
おなじみABBA「ダンシング・クイーン」のSEで手拍子が起きる中メンバー3人がステージに登場すると、安野勇太(ボーカル&ギター)は髪が緑色になっており、完全にベテランになっても変わっていないどころかより若々しくなっているようにすら見えるが、逆にかつて加入した当初は1人だけめちゃ若く見えていたGURE(ベース)がメガネをかけて少し体型が丸くなってきているあたりに年齢を重ねたことを感じてしまう。畑野行広(ドラム)は全く変わることがない威圧感を発している。
その畑野が
「SAKAI MEETING、いつも通りにやらせてもらいます!」
と宣誓すると、「THE LIGHTNING」から漆黒のメロディックパンクが鳴らされ、観客もいつも通りとばかりにモッシュとダイブでバンドのいつも通りの演奏に応える。安野のタッピングも含めてメロディックパンクバンドの中でもマイナーキーを軸にしたバンドであり、メタルなどの音楽の要素を自分たちの音楽に取り入れたバンドであること、それは高い演奏技術ができるからこそこれだけ飛び抜けた存在のバンドになっていることを示している。
そうしてダークに疾走してモッシュやダイブが繰り広げられる中で畑野は
「今日は久しぶりに朝5時に起きてライブしに来ました(笑)
でもいいんだよ、そういうことは。俺たちも楽しむし、お前たちも楽しむ。今日お前たちは楽しんだ後に居酒屋に行って酒を飲むだろ?もうアホほど飲むだろ?
でもその向こうにいる人たちのことも忘れないでくれ。子供たちは今でも黙食してるって。遠足も修学旅行も行っちゃダメだって大人に言われてるって。俺たちも子供がいる年になったけど、子供にも自由でいて欲しいと思うし、自分たちで考えて自分たちでどうするか決めれるようになって欲しい。それをライブハウスから始めていこうぜ」
という畑野の言葉にはいつも強い説得力が宿っている。それはただ好き勝手にやるパンクバンドとしてではなくて、この国で我々と同じように生きている生活者の先輩としての言葉であるからだ。その言葉がどんな場所のどんなライブでもその日を特別なものにしてくれる。
そんな畑野が
「堺のデッカい輪っかを見せてくれー!」
と言って演奏されたのはもちろん「RAINBOW, RAINBOW」で、客席ど真ん中には巨大なサークルピットが出現するというのもこのバンドがずっと生み出してきたものであり、それがダークなサウンドが続いたからこそそこから光に向かっていくように感じられるのだ。
さらには「Promise」と、激しいだけでもダークに疾走するだけでもなく、メロディーがキャッチーだからこそパンクシーンの中で巨大な存在になり、主催フェスがいろんなところから注目されるようになった、それくらいの力を楽曲が持っていることを感じさせると、ラストの「Light and Shadow」までこのバンドのいつも通りに駆け抜けまくる。それは同時に観客も駆け抜けまくるように楽しんでいたということである。久しぶりに見たHawaiian6のライブはやっぱり生き様そのものが鳴っていたし、パンクバンドがこれだけ集まっている中で一聴するだけでこのバンドのものだとわかるくらいにパンクの中でも1つの大きな柱を打ち立てている。
12:00〜 locofrank [堺ステージ]
こちらもライブを見るのは実に久しぶりなlocofrank。コロナ禍になって以降に見るのは初めてかもしれない。かつてはフェスにもしょっちゅう出ていて見れる機会があったが、このフェス自体が3年ぶりだしそうしたフェスがなかったということでもある。
こちらもおなじみのSEで登場すると、木下正行(ベース&ボーカル)も森勇介(ギター&コーラス)もこちらは本当に変わらない。コロナ禍になってからライブを見るのが初めてということは横川慎太郎(ドラム。元PAN)が加入してから見るのが初めてということであり、どこか新鮮な感じがする。
その新鮮な感覚を切り裂くようにして木下がタイトルをコールしたのは、今まで何回ライブで、音源で聴いたかわからないバンドの大名曲「start」。もちろんこの曲でスタートということはいきなりモッシュやダイブの嵐になるということであるが、2サビで木下はマイクスタンドから離れると観客の合唱が響く。長くライブを見ていなかっただけにこの曲を観客が歌えないライブは見ていなかったわけだが、それでもやっぱりこうして今にしてこの曲を歌っていると(自分はいつも森のハイトーンな方で歌っている)、またこうしてこの曲で歌っているようにスタートすることができているんだなと思うことができる。それはバンドがずっと一緒にやってきたメンバーが脱退しても新たなスタートを切って走り続けているからだ。
さらにはハードなパンクの「Tabacco Smoke」、ストレートな「Mountain range」と初期の曲を連発することによって観客の熱狂はさらに増していく。それはずっと聴いていた曲をこうしてライブで聴けているという喜びも間違いなくあるだろうけれど、何よりも頭を振りながら演奏する木下と森の衝動がそうして我々を熱狂させてくれるのだ。
しかし客席からはヤジが飛び交いまくり、
「お前らHawaiian6の時にそんな感じちゃうかったやんけ!扱いが違いすぎるやろ!(笑)」
と言いながらもそこに愛があることをわかっている木下は実に嬉しそうである。
もう完全にベテランの域に達しているバンドであるだけに持ち曲もリリース枚数も増えた。その中から割と近年の曲と言っていい「Hate to lose」を織り交ぜながらも、「Grab Again」とかつての熱狂を観客の盛り上がりっぷりも含めて思い出さざるを得ない初期曲が鳴らされる。それこそCOUNTDOWN JAPANのGALAXY STAGEが深夜でも満員になってモッシュやダイブが繰り広げられていた2000年代中盤頃にもよく演奏されていた曲であるだけに。
そして森がイントロのギターを情感たっぷりに鳴らす「share」はそのギターのサウンドも木下のメロディも今も全く色褪せることがない大名曲。locofrankが「start」だけのバンドで終わらなかったのはその後にこの曲がリリースされたからだと思っているし、ただ衝動を炸裂させるメロディックパンクバンドなだけではなくてこのバンドがロマンチックな感性を持った歌詞を書くバンドであることが今でもよくわかる。このフェスが来年以降にまた野外に戻った時にはこの曲を月の下で聴くことができるだろうかと思うくらいに。
Hawaiian6と同様にこのバンドもまた
「自由でいようぜ」
というメッセージを観客に投げかけるのであるが、そのメッセージを投げる木下にもやはりヤジが飛び交いまくるというのはハワイアンとこのバンドのキャラの違いを示している。しかしそれも
「愛しかあるやん(笑)」
と受け止めるあたりがこのバンドの器量の大きさであるし、そんな観客たちとまたライブハウスで再会するために「See You」を演奏すると、イントロで森が掻き鳴らすエモーショナルなギターサウンドの時点で観客が「オイ!オイ!」と声を上げる珠玉の名曲「reason」。あの頃と変わらないような熱狂が、いや、あの頃よりもはるかに増したような熱狂がここにはあった。それはこのフェスでのlocofrankのライブを待っていた人がたくさんいて、その人たちの力がそこに確かに加わっていたということである。
そんなライブの最後に演奏されたのは今も変わることないバンドの衝動を思いっきりキャッチーかつパンクなサウンドに乗せた「Returning」。この曲を聴くとここからまたライブが始まっていくかのような感じすらあるのだか、それはこの後にまたすぐこのバンドのライブを観たくなるし、観る機会が必ずまたすぐに来るということだ。それくらいにこのバンドは今もライブハウスで日々生き続けている。
久しぶりに見たlocofrankのライブはかつて見ていた時よりもはるかに沁みた。それはバンドが乗り越えてきたものがあるからだろうし、我々もバンドと同じようにいろんなことを乗り越えてこの日に至った。それが音から伝わってくるし、かつての名曲たちを聴くとその当時のことを今でも思い出すことができる。そうして積み重なったものがより一層この音楽が今こそ響くものにしてくれている。それは期間は空いたかもしれないけれど、続けてくれている限りはこのバンドとこれからも一緒に生きていくということだ。
1.start
2.Tabacco Smoke
3.Mountain range
4.Hate to lose
5.Grab Again
6.share
7.See You
8.reason
9.Returning
13:00〜 dustbox [堺ステージ]
Hawaiian6、locofrank、dustboxというのはかつて「THE ANTHEMS」というスプリットアルバムをともに作った3組である。その3組がこうして並んでいるというのはこのフェスがそのバンドたちのストーリーをわかっているということである。そんなTHE ANTHEMSのトリとして登場するのがdustboxである。
おなじみの「New Cosmos」のSEでメンバー3人が登場すると、このバンドもlocofrank同様に全く変わらないような感じがするのは見た目が若々しいからか、あるいは前の2組よりも頻繁にコロナ禍になってからもライブを見ているからだろうか。
そんなバンドが1曲目に鳴らすのはSUGA(ボーカル&ギター)がギターを掻き鳴らしながらハイトーンボーカルを響かせる「Right Now」であるのだが、普段からそこまでフェスでセトリが変わるバンドではないとはいえ、この曲を1曲目に演奏するというのは同じタイトルの曲を持つ盟友GOOD4NOTHINGへ向けてのものでもあったのだろうか。前の2組と同じように観客は当然のようにモッシュ・ダイブでそのサウンドに応戦していくのであるが、JOJI(ベース)が観客を煽る姿はやはりそうした光景を早く見たかった、みんなの声が聞きたかったというような喜びに溢れているように見える。
そんなdustboxは今年最新アルバム「Intergalactic」をリリースしており、その中からリード曲であるハードなサウンドの「Emotions」が披露される。リリースペースが速いわけではないというか、むしろずっと自分たちのペースを貫き続けているバンドであるが、そのタイトルとサウンドからは今も失われることがないパンクバンドとしての衝動を確かに感じさせる。
近年は野外で開催されていたこのフェスがかつてもこの会場で開催されていたことを口にするあたりはさすがGOOD4NOTHINGの盟友と呼べるバンドであるが、locofrankと同様にヤジが飛びまくるというのはHawaiian6とはやはりメンバーとの距離感が全く違うことを感じさせるし、JOJIには「佐藤ー!」という本名のヤジすら飛ぶというのはこのバンドのライブを楽しみに来た人が多いということである。
なので「Try My Luck」以降のライブでおなじみのキラーチューンたちではイントロから観客が歓喜してモッシュ・ダイブが発生するという流れになっており、このバンドのメロディックパンクバンドの「メロディック」という部分を実感させてくれるくらいにキャッチーな「Spacewalk」から「Bitter Sweet」ではメンバーに合わせて観客が両腕を上げて左右に振るというおなじみのノリ方がこのフェスをさらに楽しいものにさせてくれる。
さらには「Riot」では曲最後のタイトルフレーズを我々が叫ぶことができるという喜びを噛み締められると思っていたら、袖からDizzy Sunfistのあやぺたが出てきてそのフレーズを叫ぶ。ずっと袖でライブを見てはYU-KI(ドラム)のキメに合わせて体を動かしたりしていただけに、あやぺたは本当にdustboxが大好きなんだろうなと思うし、自分たちが同じようなスタイル・ジャンルのバンドをやるようになったきっかけの一つでもあるんだろうと思う。
それもまた一つのミラクルであり、何よりも3年ぶりにこのフェスが開催されたことが最大のミラクルとばかりに「Here Comes A Miracle」が鳴らされてその展開同様に客席はさらに激しさを増すと、SUGAのギターのイントロでJOJIが指で合図するようにすると観客がサークルを作る。それはもちろん「Hurdle Race」のものであるが、夏前にライブを見た時はまだ立ち位置指定的なものがあったりしてこうした楽しみ方は出来なかった。でも今はそれができるようになっている。それはバンドが、我々が一つの高いハードルを超えて進むことができたということだ。それがどれだけ楽しいことであるかということを本当に久しぶりに思い知ったし、メンバーもその光景を見れていることが本当に嬉しそうだった。
そんなライブはSUGAのサビのハイトーンボーカルがよりメロディを輝かせるような「Jupiter」でこれ以上ないくらいにキレイに終わりかと思いきや、JOJIが
「まだ4分も残ってる。何かやる?」
と言い慌てて曲を決めようとすると
「MAKKINいる?ベース弾いて!」
と言ってJOJIがGOOD4NOTHINGのMAKKINにベースを弾いてもらおうとするのだがMAKKINは袖におらず、代わりに袖にいたDizzy Sunfistのメイ子にベースを渡して演奏されたのはもちろんJOJIがハンドマイクでステージを闊歩しながら、愛車のバイクが盗まれた怒りを魂の咆哮に乗せる「Neo Chavez 400」。
「間違えても全然大丈夫だから」
とメンバーに声をかけられていたメイ子が普通にこの曲を弾きこなしていることにDizzyのdustboxに対する愛情とリスペクトを感じさせたし、そうした光景がもはやこれはdustboxのフェスだったんじゃないかと思うくらいの大団円感を醸し出していた。
Hawaiian6→locofrank→dustboxというTHE ANTHEMSの流れ。その3組がこの順番だったというのは闇の中からスタートして最終的には光にたどり着くということを感じさせるものだった。それはライブシーンがこの数年で味わった暗闇からこの日という光に向かっていったかのようだった。つまり、確かにこのフェスのラインナップと流れには意味と意志が存在している。3年開催できなくてもやめなかった主催者たちの意志が。
リハ.Tomorrow
リハ.Bird of Passage
1.Right Now
2.Emotions
3.Try My Luck
4.Spacewalk
5.Bitter Sweet
6.Riot
7.Here Comes A Miracle
8.Hurdle Race
9.Jupiter
10.Neo Chavez 400 w/ メイ子 (Dizzy Sunfist)
14:00〜 SIX LOUNGE [堺ステージ]
客席の観客の出で立ちもガラッと変わる。それはパンクからロックンロールへの転換を意味しているのであるが、実際にこのバンドにオファーした本人であろう主催者のTHE→CHINA WIFE MOTORSのTSUNEHIKO KAJITAがライブ前には
「SAKAI MEETINGにはカッコいいロックンロールバンドが必要だ!」
と紹介していたように、自身からの流れを汲むロックンロールバンドが出るフェスでもあるということだ。
なので基本的にTシャツに短パンみたいな出で立ちだったステージ上も客席もそれがガラッと変わり、ヤマグチユウモリ(ボーカル&ギター)はお馴染みの革ジャン姿である。金髪&メガネのイワオリク(ベース)、グラマラスな魅力を振りまくナガマツシンタロウ(ドラム)の3人の出で立ちからしてここまでのバンドたちとは異なる中、爆音でロックンロールサウンドが鳴らされて「僕を撃て」からスタート。ユウモリの歌唱も実に伸びやかであり、それはさらに増してきているだけに曲そのもののメロディの美しさをさらに際立たせるものになっている。
イワオリクとナガマツのリズムが一気に力強く熱くなっていく「ナイトタイマー」からそのタイトル通りに突っ走るロックンロール「スピード」と続く中で演奏されたリリースされたばかりの新作EP「ジュネス」収録の「New Age Blues」は四つ打ちのリズムがこのバンドのキャッチーさを全開にさせる新境地の曲だ。そこはメジャーからのリリースということで振り切ったところもあるとインタビューで言っていたが、まさかSIX LOUNGEからこうした曲が生まれるとはと思うくらいにロックンロールの枠をはみ出している。それはこのバンドのさらなる可能性を感じさせるものになっている。
そんなSIX LOUNGEはかつて野外で開催された時のこのフェスにも出演しており、その時には小さいステージの出演で、その時に次は大きいステージに出演したいと言ったことがこの日叶ったことの喜びを口にすると、「天使のスーツケース」でそのメロディの伸びやかさとロックンロールのカッコよさを両方感じさせるのだが、Cメロの
「来世もきっと一緒だよ」
のフレーズがさらに伸びやかに響き渡り、客席からもたくさんの腕が上がる。
さらには「トラッシュ」でユウモリは
「ロックンロールは大好きかい?」
と観客に語りかけるというか呼びかけるようにして歌う。もちろんここにいた人たちはロックンロールが大好きだからここにいるはずだ。
それを証明するようにショートチューンのロックンロール「ピアシング」が鳴らされるとさらに客席が盛り上がりを増していく。わかりやすくモッシュやダイブが起こるようなバンドではないけれど、それでも曲がこうして演奏されるにつれてどんどん客席がそれまでのパンクからロックンロールに染まってきているのがよくわかる。
そんなSIX LOUNGEのメロディの美しさ、キャッチーさによってこうして大きなステージに立つような存在になったことを感じさせてくれるのが「ふたりでこのまま」であるのだが、それに続けて「メリールー」を連発するというのが激しいだけのロックンロールではない、歌謡曲などの要素を自分たちのロックンロールに昇華し、それをライブのクライマックスに持ってくるバンドであることがわかるのであるが、
「ねぇ、わたし大人になりたくない」
のユウモリの歌唱は本当に震える。毎回そう感じられるということは毎回ライブでの「メリールー」は過去を更新しているということだ。そのライブの強さを持っているロックンロールバンドということである。
そんな「メリールー」で終わりかと思いきや、時間があと1分あるということで(1分で残ってると言えるのか)この日2回目の「ピアシング」をさらなるスピードをもって演奏した。その加速度的な生き様こそがロックンロールなのだと思えるし、それはこの日のライブをずっと袖で見ては歌詞を口ずさんでいるくらいにこのバンドのことを愛してくれている橋本学のハルカミライに通じるところがあると思った。それはつまり、このSIX LOUNGEはやっぱりこのSAKAI MEETINGに必要なバンドだということだ。
リハ.トゥ!トゥ!トゥ!
1.僕を撃て
2.ナイトタイマー
3.スピード
4.New Age Blues
5.天使のスーツケース
6.トラッシュ
7.ピアシング
8.ふたりでこのまま
9.メリールー
10.ピアシング
15:00〜 Dizzy Sunfist [堺ステージ]
リハであやぺた(ボーカル&ギター)はこの後出演する後輩バンドのHump Backの「星丘公園」を口ずさんでいたのだが、そのあまりの自然っぷりというか似合いっぷりに驚くDizzy Sunfist。あやぺたとメイ子は朝から他のバンドのステージに出演してきたが、自分のバンドでの出番である。
3人がステージに登場すると、テンション高く「Someday」からスタートし、やはり観客はこうしたメロディックパンクサウンドにダイレクトに反応してモッシュとダイブが繰り広げられるパンクな光景に再び変貌すると、あやぺたは曲中に
「堺に来てくれてありがとうー!」
と叫ぶ。このバンドも主催バンドの後輩としてこの堺出身なのである。そんな地元のフェスに出演している喜びを確かに感じさせる。
moAi(ドラム)の疾走するツービートによる「SHOOTING STAR」から「No Answer」と続くのであるが、曲中で明らかにmoAiのバスドラが鳴らなくなり、それによってメイ子のリズムと合わなくなるという瞬間もあったのだが、こうしてなくなることによってバスドラが我々の聴覚とノリにどれだけ大きな影響を与えているかということがよくわかる。
それはペダルが壊れたりしたのかもしれないが、曲中にすぐに復旧してあやぺたが
「バスドラ大丈夫!?」
と確認してmoAiがそれに返事をするとすぐにポップなサウンドの「Andy」へ。あやぺたの声量はこのライブハウスより広いホールにもしっかりと、でもうるさく感じないくらいに響き渡る。その自分たちの持つキャッチーなメロディーを遠くへ飛ばす力があるからこそ、こうしてメインステージに出れるバンドになったのだろうと思う。
「堺に来てくれてありがとう!先輩たちが作ってくれた、続けてくれたフェスが堺で開催されていて、みんなが堺に来てくれたことが本当に嬉しい!」
というあやぺたの言葉は地元の堺への愛情に満ちていたが、
「やばたにえん!」「ポゥポゥポゥー!」
というギャル語みたいなものを交えるあたりはさすがあやぺたである。
そんなDizzyはこの3人になってから初めて作った曲「Hey! Stay By My Side!」を演奏するのであるが、モータウン的なメイ子のベースのリズムは今の3人でのDizzyだからこそということを感じさせ、あやぺたの振り付け的な動きとそれに合わせる観客の動きもライブの楽しさを増幅させてくれる「Life Is A Suspense」、さらには両腕を上げて飛び跳ねまくる「Tonight, Tonight,Tonight」とライブ定番のキラーチューンが続いていくと、
「先輩たちが守ってくれてきたこのフェスをバンド人生をかけて守っていきます!」
と宣言して、その言葉もまた「夢は死なへん」というこのバンドのテーマであり、それを音楽として示すために「The Dream Is Not Dead」が演奏される。それはこの場で聴くとこのフェスに出演し続け、このフェスを守り続けていくことである。
そんなこのフェスとこのバンドにまつわる全てが美しいと思えるような「So Beautiful」でこのバンドのメロディそのものも美しいと思わせてくれると、トドメとばかりにショートチューン「Fist Bump」を演奏して最後の最後にこの日最大のダイブの嵐を生み出した。それはやはりこのバンドの生き様が堺発のパンクであることを示していたのだが、ステージから去っていく時の終演SEがパリピ的なEDMなのがやっぱりこのバンドらしさでもあった。
この日あやぺたは
「堺で生まれて、堺で育って本当に良かった!」
とも言っていた。それは堺で生まれ育ったからこそ今のようなバンド人生になったということだろうし、そこには間違いなく堺のパンクの先輩でもあるGOOD4NOTHINGの存在がある。もしかしたらグッフォがいなかったらこのフェスがなかったかもしれないし、Dizzyはいなかったかもしれない。このフェスでこのバンドのライブが見れたからこそ、堺とグッフォがどれだけ凄い場所やバンドなのかがよくわかった。
リハ.星丘公園 (歌い出しのみ)
リハ.The Magic Word
リハ.Wonderful Song
1.Someday
2.SHOOTING STAR
3.No Answer
4.Andy
5.Hey! Stay By My Side!
6.Life Is A Suspense
7.Tonight,Tonight,Tonight
8.The Dream Is Not Dead
9.So Beautiful
10.Fist Bump
16:00〜 a flood of circle [堺ステージ]
正直、この流れの中にa flood of circleがいるというのはファンからしてもめちゃくちゃアウェーなのがわかる。でもやはりTHE→CHINA WIFE MOTORSのTSUNEHIKO KAJITAが
「カッコいいロックンロールバンド」
と紹介してくれたように、このバンドが呼ばれた理由が確かにある。今年もいろんな場所や地方に行ってまで何回もライブを見てきたフラッドを今年最後に見れる機会がこのフェスになったのだ。
サウンドチェックで声を出す青木テツ(ギター)がいきなり絶叫して待っていた観客を驚かせるというかビビらせると言えるようなこともありつつ、おなじみのSEでメンバーが登場すると佐々木亮介(ボーカル&ギター)は黄色の革ジャン姿で、パンクだった空気を切り裂くようにして爆音ロックンロール「ミッドナイト・クローラー」からスタートし、亮介もテツも前に出てきてギターを弾きまくり、HISAYOはステップを踏むようにして華麗にベースを鳴らし、渡邊一丘(ドラム)はコーラスもしながらリズムを刻む。いつものフラッドのライブではあるが、とにかく爆音であり、ここまでのパンクバンドたちの後でもフラッドが1番音が大きいんじゃないかと思うくらいの爆音っぷりである。
その爆音は楽器だけではなくて亮介の歌声だけでそうなっていると思わせてくれるのは亮介がハンドマイクで歌う「狂乱天国」で、やはりその独特の歌声と凄まじい声量はライブバンドしかいないこのフェスの中でも突出していると言えるレベルですらある。歌詞に合わせてダブルピースをする姿もじつにお茶目である。
「何しに来たの!ロックンロールでしょ!ロックンロールパーティーだぜ!」
と挨拶代わりに口にしてから演奏されたのは最新曲「Party Monster Bop」であり、一気にその鳴らしているサウンドでこのフェスをパンクのフェスからロックンロールに変えてしまうのであるが、それでもやはり客席はかなり寂しめというか、今でもいろんなフェスに出てはこのバンドのライブを観に行っているけれども、近年ではかつてないくらいのアウェーっぷりである。
それは亮介も察していたのか、
「ジャンルとかはどうでもいいと思ってるんだけど、スタイルの違いはあるよね。俺たちとSIX LOUNGEとTHE→CHINA WIFE MOTORSだけは一枚多く服を着ている、みたいな(笑)」
と、服装の違いかい、と突っ込まずにはいられないことを亮介が口にすると、一枚多く服を着ている仲間であり後輩であるSIX LOUNGEが「GIFT ROCKS」に提供した「LADY LUCK」ではユウモリが缶チューハイ片手にステージに登場してテツのマイクで歌うのであるが、途中では亮介と一本のマイクで2人で歌うという光景に。自分たちで作った曲であるだけにちゃんと歌詞を覚えているあたりはユウモリはさすがであるが、そうしたアウェーなライブを一瞬で特別なものにしてしまうというのがこうした地方のフェスの短い持ち時間でもフラッドのライブを見逃せない理由である。
そして曲の持つメロディーがパンクバンドが居並ぶこのフェスの中でこのバンドがロックンロールの北極星のように輝くかのようにきらめく「北極星のメロディー」から、早くもここでこのフェスと我々とバンド自身の明日に捧げるように「シーガル」が演奏される。人数は少なくてもイントロの「イェー!」という亮介の叫びで飛び上がる人がたくさんいたというのは、このフェスにフラッドを見に来た人が自分以外にも少なからずいたということである。それがあってもなくてもこのバンドがやることは変わらないけれど、わかるのが少し嬉しくなる。
そんなバンドの、このフェスのベストを更新するかのように鳴らされた「ベストライド」では客席で手拍子が鳴らされると、亮介とテツはそれぞれ前に出てきてギターを弾きまくる。その姿はホームとかアウェーとか関係なく、本当にこのバンドがライブをすることが生きている実感を得られることなんだろうなと思わせてくれる。
そして亮介は
「コロナ禍になって聴いたTHE→CHINA WIFE MOTORSと、何人になっても続けるバンドを見たから」
と口にしたが、それは主催者である両バンドへのこのバンドからの思いだ。ちゃんと普段からどちらのバンドのことを見ている。フラッドがこのフェスのこのステージに立っている意味や理由がやっぱり確かにあった。その思いを曲にしてこのフェスに捧げるように亮介はアコギに持ち替えて「花火を見に行こう」を最後に演奏した。それはフェスとは花火のようなものだからだ。打ち上っている時は最高にキレイだけれど、終わると寂しくなってしまうような。それを確かに感じさせてくれたフラッドのライブを見て、わざわざ大阪までこのバンドのライブを観に来て本当に良かったと思った。
それはホームだろうがアウェーだろうが、観客が多かろうが少なかろうが関係なく、最高にカッコいいロックンロールを鳴らしてくれるのがa flood of circleというバンドであるということをステージで証明し、それを実感させてくれたからである。また来年もこうやっていろんな場所でライブを観ることができますように。いや、できるはずだ。
リハ.Dancing Zombiez
1.ミッドナイト・クローラー
2.狂乱天国
3.Party Monster Bop
4.LADY LUCK w/ 山口ユウモリ(SIX LOUNGE)
5.北極星のメロディー
6.シーガル
7.ベストライド
8.花火を見に行こう
17:00〜 Hump Back [堺ステージ]
サウンドチェックの時間もあまりなかったからか急ぎ気味で曲を演奏してそのままステージにいるままで本番を迎えたHump Back。3年間開催されていなかった間に頭角を表したバンドであるだけにもちろんこのフェス初出演である。
なので林萌々子(ボーカル&ギター)も
「SAKAI MEETING初出演です。Hump Backです。よろしくお願いします」
と挨拶してからサビを弾き語りのようにギターを鳴らしながら歌い始める「拝啓、少年よ」でスタートする。するとサウンドチェック中も林が
「セキュリティの人が「このバンドはセキュリティいるバンドかどっちやろ?」みたいになってる(笑)」
と言っていたように、いきなりダイバーが現れるというHump Backのライブの中でもかなりパンクな展開に。
なのでロックンロールの神様に騙されたからバンドも我々もここにいるということを示すように演奏された「HIRO」、タイトル通りにオレンジの照明に照らされながらの美咲のドラムのアタック感も実に力強い「オレンジ」と、演奏しながら林もぴか(ベース)もステージ上を転がり廻りまくっているというのは客席同様にメンバー自身もパンクさを全開にしているということである。
「うちらのライブ見たことあるって人どれくらいいる?」
と林が問いかけると自身が驚くくらいにたくさんの人が手を挙げていたのはそれくらいにこのフェスに来るような人にもこのバンドの音楽とライブが浸透しているということであるが、
「堺出身でもなんでもないけど、堺のライブハウスにずっと通い詰めてて、自分たちがライブをやるようになってからは堺で悪い酒の飲み方も覚えた(笑)」
と大阪のバンドであるだけに堺への思い入れを口にしたのはやはりこのフェスに出演できているのが嬉しいのだろう。そうして演奏された「番狂わせ」はまさにおもろい大人である堺出身バンドへのリスペクトを込めながらも自分たちが主役であるということをその音が示すと、ここにいるすべての少年少女のために「ティーンエイジサンセット」を鳴らす。客席で寄り添いながらも時には泣き崩れるようになっているカップルに声をかける林は本当に客席をよく見ているが、その客席は想像以上のモッシュ・ダイブの応酬になっているのはこのバンドの音楽がそうした衝動を掻き立てるロックであるからだろう。なので
「みんなが大好きな速い曲」
と言って演奏された「僕らの時代」のパンク感はこのフェスに実によく似合っている。間奏ではそれぞれのソロ回しも展開されるのだが、その演奏の強さと速さもどこかパンクである。
そんなHump Backの音楽を林は
「うちらの音楽は少年少女にしか響かんようになってる。それはただ年齢のことを言っているだけじゃなくて、うちらの音楽が響いたらそういうことや」
という言葉はここにいる我々がまだまだ少年少女のままでいられている、だからこのバンドの音楽やこの日出演しているパンクバンドの音楽が響いているということを実感させてくれるのであるが、そんな感覚を曲にしたのが「がらくた讃歌」であり、だからこそ
「忘れないでいて 少年少女よ
命あるだけで 素晴らしいんだ 美しいんだ」
という歌詞が染み渡るのだ。それは今やこれだけの出演者の中でもトップクラスと言えるくらいになった林の歌唱力あってこそ。このホールすらも小さく感じるくらいの伸びやかさと響き渡りっぷりである。
そんな林のボーカルの力が最大限に発揮されるというか、そのボーカルの力があるからこそ成立する、最後にふさわしい曲になっているのがバラードと言っていい「新しい朝」。バラードと言えるようなテンポの中にもロックバンドとしての激情のようなものが確かに宿っている。そしてこの曲は3年ぶりに開催することができたこのフェスが今まさに新しい朝を迎えたことを祝していた。
リハ.生きて行く
リハ.宣誓
1.拝啓、少年よ
2.HIRO
3.オレンジ
4.番狂わせ
5.ティーンエイジサンセット
6.僕らの時代
7.がらくた讃歌
8.新しい朝
18:00〜 ハルカミライ [堺ステージ]
主催者バンドたちの前という位置が今のこのバンドの状況、このフェスにおいての立ち位置も示している。Hump Back同様に初出演でありながらもこの位置を任されているということも。ハルカミライ、SAKAI MEETINGの初のステージである。
先に関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)の3人がステージに登場すると、最後におなじみの巨大なフラッグを持った橋本学(ボーカル)がステージに現れ、関がイントロを鳴らして「君にしか」で始まってそのまま「カントリーロード」へというおなじみにして必勝の流れへ。須藤は例によって途中まではベースを弾かずにステージ上を歩き回り、口に手を当てて「アワワワワ!」という声を上げる。関は「そこ登るとこじゃないだろ!」と言いたくなるような、照明が設置されている鉄骨をよじ登るとその上でギターを弾く。落ちたら怪我するどころじゃすまないぞ、と思っていると橋本も逆サイドのその鉄骨によじ登って歌う。客席はすでにモッシュとダイブの応酬になっているが、まだバンド側がそれをやることはできないためにこうしてステージ上で衝動をぶち撒けまくっている。その鉄骨の上で橋本は
「SAKAI MEETING初出演!意外って言われる。めちゃくちゃ出てそうだって。俺たちもそう思う。このフェスに似合いそうなバンドだって。2020年に俺たち出演するはずだったんだけど、開催出来なくなって。それから2年経ってこのステージに立ててめちゃくちゃ嬉しい!」
とこのフェスに出演できている喜びを語ると鉄骨から降りた関がギターソロを弾く。関はすぐにアンプの上に立ったりと、やはり高い場所が好きなようである。
サウンドチェックでも演奏していた「ファイト!!」の4人バージョンがさらに客席を激しく熱く燃え上がらせると、そのままパンクに疾走する「俺達が呼んでいる」というパンクなフェスであるこのフェスにふさわしい曲が連発されていく。曲間全くなしでこうしたフェスで飲むビールの美味さを感じさせてくれる「フルアイビール」へと突入していくと、小松も橋本もすでにTシャツを脱いで上半身裸になっている。それくらいに12月であってもライブハウスの中は熱く暑いのである。
「昨日携帯壊れた。だから移動中も何にもやることない。ライブ見て、ライブやって帰る。それだけ。だからみんながやってる「今年何を1番聴いたか」みたいなことも俺にはできない(笑)」
と携帯が使えなくなったことを橋本が明かすと、
「SAKAI MEETING!それでもここが世界の真ん中!」
と言って演奏された「春のテーマ」で響き渡るメンバーの合唱。そこに我々の声を乗せることができるのが実に嬉しいというか、これこそがハルカミライのライブだなとも思うのだが、続けざまに「世界を終わらせて」を歌い始めた橋本を
「学、「世界〜」の前にもうちょっと温めておかない?」
と言って須藤が制すると「Tough to be a Hugh」「エース」と急遽ショートチューンが連発されていくのもハルカミライのライブである。「エース」での歌詞に合わせてそれまで拳を振り上げていた観客たちが一本指を掲げるのも。
そうして温めるというよりもさらに熱くなった状態で演奏された「世界を終わらせて」を橋本が見事な歌唱力と声量で歌い上げて観客も飛び跳ねまくると、イントロで轟音が響き渡る「僕らは街を光らせた」の曲中で橋本は
「青春パンクブーム、メロコアブーム、過ぎ去った?街で「ロックンロール好き?」って聞いて「好き」って言うやつ、そんないないだろう。何が流行ってるのか俺には全然わからない。韓国の人の音楽が流行ってるのかもしれない。でもここでは何よりロックンロールが流行ってるぜ!」
と渾身の叫びを口にする。さらには
「俺もどんなことがあっても動じないバンドマンになりたいぜ!」
とも。それは間違いなく4人から2人になったGOOD4NOTHINGへと向けられていた言葉だろう。そんなバンドに
「街は色付き
故郷は遠退き
あの子は垢抜け
あいつは拳を解き
それでも それでも それでも
俺たち強く生きていかなきゃね」
という歌詞は送られているかのように感じたのだ。
そして残り時間を確認しながら、
「時間余ったらあれで。もうちょっと余ったらさらにあれで」
と追加する曲をタイトルを一切出さずに確認し合うという阿吽の呼吸を見せると、最後に演奏されたのはもちろん
「眠れない夜に私 GOOD4NOTHINGを、THE→CHINA WIFE MOTORSを聴くのさ」
と歌ってから演奏された「アストロビスタ」で
、橋本は曲中に客席に向かって
「バンドやってるやつ、この中にいる?」
と問いかけると手を挙げた人たちを見て、
「最前にいるな。裏ではESPっていうスタッフになる勉強してる子たちが働いてくれてる。いつかここで一緒にやろうぜ。俺たちだけじゃなくてここにいるバンドマンたちと一緒にやろうぜ」
と、バンドをやっているファンだけではなくてこのフェスを裏から支えている専門学校生にまでエールを送る。そうした言葉を聞いていると、ハルカミライにだけは10代の時に出会いたかったなと思う。自分がそうした状況にいたとしたら、橋本の言葉やハルカミライの音楽が何よりも夢への推進力になってくれるだろうから。それはメンバーより年上の自分にも響くからこそよりそう思うことができる。
そんな「アストロビスタ」で我々の胸を打って終わりかと思いきや、残り1分くらいのわずかな時間でショートチューン「To Bring BACK MEMORIES」を演奏して最後にモッシュやダイブを誘発しまくってステージを去っていった。それもまたさすがハルカミライとしか思えないものだった。
多分、ハルカミライのファンには少ない金銭を捻出して地方までライブを観に行っている人もいると思う。今やライブハウスではなかなかチケットが当たりづらいというのもあるが、それは毎回全く違うライブを見せてくれるバンドだとわかっているから、1本でも多くライブを見たくなる。それはワンマンやツアーだけではなく短い持ち時間のフェスでもそうだ。このライブは間違いなくこの日のSAKAI MEETINGでのハルカミライでしか見れないライブだった。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.フルアイビール
6.春のテーマ
7.Tough to be a Hugh
8.エース
9.世界を終わらせて
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12.To Bring BACK MEMORIES
18:00〜 GOOD4NOTHING [堺ステージ]
主催者バンドの2組のうち、初日はTHE→CHINA WIFE MOTORSがトリで、2日目はGOOD4NOTHINGがトリ。ということはこの日はトリ前でGOOD4NOTHINGが出てくるということである。
おなじみの「河内のおっさんの歌」のSEで登場すると、MAKKIN(ベース&ボーカル)の合図によって合唱が起こるのだが、こんな脱力SEを使っているパンクバンドもそうそういないだろうなとこの日たくさんのバンドを見てきて改めて思う。
自分は2人になってからライブを観るのが初めてなのだが、OVER ARM THROWの寺本英司がサポートするドラムはさすが同じメロディックパンクシーンで生きてきた男であり、「FOUND」から始まるとその高速ツービートは全く違和感がないというか、このバンドのドラマーをずっと務めてきたかのように強力で、かつ様々な曲でコーラスまで入れてくれるというのはこのバンドを心から愛してくれているからこそである。
その前に立つMAKKINとU-tan(ボーカル&ギター)であるが、そもそもギター&メインボーカルだったTANNYが脱退して3人になった時点で2人がやるべきことはさらに増えているし、足りないと感じるところも前半はあった。それはやはりギターが1本になったということであるが、それでもかつてのライブ時にTANNYが喉の不調で歌えなかった時に2人がメインボーカルをしてきたりした経験、そもそもこの2人もコーラスではなくてずっとボーカルであり演奏者であったというこのバンドの少し変わった編成が急増ボーカリストとは全く感じさせない。というか曲が演奏されるほどにその違和感はどんどんなくなっていくし、「NEW STORY」「IN THIS LIFE」という曲はこうして2人でもこのバンドを続ける選択をした意志がそのまま音になっている。
寺本をはじめとした様々な人の協力のおかげで今もバンドを続けられていて、このフェスを開催できていること、それは短い人生であるがゆえにやりたいことをやろうというようにより視点が定まったことを口にしてショートチューン「27」を演奏し、そのまま繋がるように「Never Too Late」を演奏するというアレンジもずっとこの形でライブを続けてきたかのような完成度の高さだ。それはやはりコロナ禍になって以降も、メンバーが減ってもライブハウスでライブをやって生きてきたバンドだからこその力が滲み出ている。
そんなバンドの折れない強さを曲に込めた形に結果的になったと言えるのが昨年リリースの「FLAG」であり、やはりモッシュもダイブも起こりまくるその光景はこの曲が変わることのないこのバンドのパンクとしての強さを持ち続けていることを示してくれる。
そしてU-tanがギターをかき鳴らすとMAKKINとともに飛び跳ね、観客もそれに合わせて飛び跳ねまくるのはライブの定番であり続けてきた「J.C.」であり、2人のボーカルの掛け合いの見事さも、キャッチー極まりないメロディーも、後半に一気に加速していく構成のパンクさもかつて4人で見ていた頃と全く変わっていなくて涙が出てきてしまう。いや、そこまで感動するということはこの今のグッフォが過去の自分たちを上回る音を鳴らすカッコよさを持っているからだ。その生き様が全て音に乗っている。最高に楽しくも本当にカッコよくて感動的ですらある。
そんな想いはずっと鳴らされてきた曲にこそ宿るというのが「One Day I Just」という決意を感じさせる曲からも響く。2012年リリースのバンド屈指の名盤「ALL THE AWESOME DUDES」収録曲であり、リリース以降はほぼ演奏されてきた曲であるためにこのSAKAI MEETINGでもきっと毎年のように演奏されてきた曲をまたこうして今演奏できているということが曲に、演奏にさらなる力を与えているかのような。
そしてそれよりもさらに前からグッフォのライブアンセムであり続けてきた「It's My Paradise」がまさにこのライブハウスと化した会場がパラダイスであることを示すかのように鳴らされると、なんと脱退したTANNYが黒のスーツにハットというフォーマルな姿で登場して一瞬だけコーラスを重ねる。これにはU-tanもMAKKINも驚いて演奏中に袖の方を見ていたくらいだったが、TANNYは今は自身の新しいバンドALIVESなどで活動しているけれど、今年のこのフェスには出演していない。でもそれは仲違いしたりしたわけではなくて、違う道を選んだけれども今もこのフェスを大事なものだと思っている仲間だということだ、
それもこうしてバンドを、このフェスを続けていたからこそ見れたものであるがU-tanは
「コロナ禍になって4人から2人になった時に辞めようかとも思った。でも俺の前に憎たらしいもう1人の俺が立っていて、そいつに負けたくなかった。そいつを乗り越えるために続けようと思った。いろんな人に助けられてこうして続けることができてる。このフェスもそう。来てくれて本当にありがとう」
というU-tanの言葉が涙なしには聞けやしないのは、a flood of circleの亮介やハルカミライの橋本学が口にしていたように、どんなことがあっても変わることなく面白くてカッコいい兄ちゃんであり続けているグッフォを続けることを選んだ2人がやはりその選択の裏には葛藤があり続けてきたということがわかってしまったからだ。当たり前のように続けることを選んだように見えて、実は悩んだりしまくってきた結果として今がある。このフェスがある。その選択をしてくれたから我々はこのフェスに来ることができているのである。
そんなU-tanの決意がそのまま曲になったと言えるのが歌い出しから合唱が起きる「Cause You're Alive」。続ける選択を選べたのも、そのバンドをこうして見ることができているのも、お互いに生きているから。これまでにも数々のライブのハイライトを担ってきたこの曲がこんなにも今の曲になっている。乗り越えまくってきたグッフォのテーマソングになっている。寺本も掛け声的なコーラスを力強く口にしてくれているのがより我々の心に染みながらも、あくまでもパンクバンドとしてさらに精神を燃え上がらせてくれている。
しかもそれで終わるんじゃなくて、最後にショートチューンの「Drive or Scrap?」を演奏して最後にさらなる熱狂を生み出してみせる。2人になったグッフォは2人だけじゃなくて、いろんな人の思いが曲に乗っている。このバンドを続けることを選んだのも、続ける先で鳴らす音楽がパンクであり続けているのも、それが人生を歌うための音楽だからだ。翌日はトリとしてさらに凄いライブになったであろうことを思うと、無理してでも2日通し参加にすれば良かったと思った。それくらいに今のグッフォはかつての自分たちを上回ることができている。それはやはり乗り越えてきた強さがパンクの音に宿っているからだ。それこそがこの場を我々のParadiseたらしめている。
リハ.Maximize
1.FOUND
2.NEW STORY
3.IN THIS LIFE
4.IN MY EYES
5.27
6.Never Too Late
7.FLAG
8.J.C.
9.One Day I Just
10.It's My Paradise
11.Cause You're Alive
12.Drive or Scrap?
20:00〜 THE→CHINA WIFE MOTORS [堺ステージ]
タイムテーブル的には20時からであるが、実際には19時50分に始まるという最後の最後での巻き進行。それはもしかしたら主催者として来てくれた人が少しでも早く帰れるようにという配慮があったのかもしれない。グッフォとともにこのフェスを主催するTHE→CHINA WIFE MOTORSがこの日のトリである。
佐々木亮介が口にしていたように、3人とも革ジャンなどの黒を基調とした衣装に身を包んだ姿からもわかるように、爆音でエイトビートを鳴らすロックンロールバンドであり、この日のこのステージに立ってきたバンドたちと比べるとその音楽は少し地味かもしれないが、20年以上このスタイルで続けてきたバンドとしての説得力が凄まじい。もうこれしかやれない男たちのロックンロールというか、時代に合わせたり何かに合わせたりすることが全くできない、それをしないという武骨すぎる音楽である。
なのだがそこに説得力を感じるのはやはりずっと続けてきたバンドだからこその技術があるからであり、MASAKI NODAのサングラス越しでも笑顔であることが伝わってくるベースも、リーゼント気味の髪型がギターウルフあたりをも彷彿とさせるTOYOAKI NAGAIの実に力強いドラムのビートも一聴してすぐに只者ではないことがよくわかる。低音の渋さを感じさせるKAJITAのボーカルと爆音ギターサウンドはまさにロックンロールをやるためのものである。
そんなKAJITAは
「昨日から会場で仕込みをやってたんだけど、44歳にもなって大人に
「そんなんじゃこの会場使わせねーぞ!」
ってめちゃ怒られて平謝りしまくった。俺は普段は謝らない男なんだけど、SAKAI MEETINGのためならいくらでも謝ってやるから!」
という心意気を感じさせる。確かに全員巨漢の強面であるだけに素直に謝りそうな感じは一切しないのだが、それを曲げてでもこのフェスを開催したいと思っていたということだ。それくらいにこのフェスが音楽が好きな人にどんな影響を与え、またその先でこのフェスがどんな影響を音楽シーンに与えることになるかをこのバンドはきっとわかっている。
それはコロナで開催できない期間があっても10年間続けてきたことで見えたものもあるのだろうし、ビックリするくらいにこの日ずっと会場内やライブを客席から見てきたからこそ見えたものでもあるのだろう。U-tanとMAKKINも含めて、主催者がこんなに普通に我々と同じ導線を歩いているフェスはそうそうない。このフェスで1番ビックリしたのはそこかもしれない。
そんなバンドは最後に
「野外だと音量制限があった。でもこの場所ではそれがない。それは爆音でギターを鳴らせるってことだ!」
とさらにギターの音量を増幅させるのであるが、あまりに爆音にし過ぎたのかアンプが壊れてしまい、ギターが鳴らなくなってしまったことでKAJITAはハンドマイクで観客を煽りながら歌い始める。そこにU-tanが現れて音が出ないギターを弾こうとすると、何故か再び音が鳴り始めるというミラクルが起きる。
それでも終演後の主催の2バンドでの締めの挨拶では
KAJITA「明日もライブあるのにアンプ壊れてどうすればええねん(笑)」
U-tan「今から買いに行こう(笑)」
という微笑ましいやり取りが交わされていた。そこには初日をやり切ることができたという安堵が少し滲んでいたように見えた。
ラインナップが発表された時にa flood of circleとSIX LOUNGEがいるのを見て嬉しかったけど、なんでこのフェスに?とも思った。もちろんグッフォと対バンしたこともあるし、というのはわかっていたけれど、このバンドのライブを見ていてちゃんと、THE→CHINA WIFE MOTORSが自分たちと同じロックンロールバンドである2組を呼んでくれたのだとわかった。その選択が自分をここに連れて来てくれた一因になっている。そうしてこの日に見ることができた特別な光景や様々なライブの感謝や恩を返す意味でも、またこのフェスに来てこのバンドのライブを見に来たいと思った。それは自分の足でこのフェスに来ないと絶対にわからなかったものだ。
モッシュやダイブを今楽しむという是非は置いておいて、そうした楽しみ方は時には暴力的になったり、フェスが荒れる原因になったりすることもあるということを日本のいろんなフェスで感じてきたし、体感してきた。
でもこのSAKAI MEETINGには全くそんなものはなかった。モッシュにもダイブにも音楽やバンドに対しての愛と敬意が確かに感じられた。その楽しみ方をずっと続けていきたいという思いも。
そしてそれはやはり主催者であるGOOD4NOTHINGとTHE→CHINA WIFE MOTORSの人間性によって醸成されているものだったんだと思う。決して大規模なフェスでもないし、ものすごく特別な場所で開催されているわけでもない。でもきっと続けてきた人や足を運び続けてきた人にとってはどこよりも大事で特別なフェスになっている。そんなフェスを作ってくれた2バンドに最大のリスペクトを抱いているし、また来年以降も来ることができたらなとも思っている。紛れもなくSAKAI MEETINGはライブを愛する人にとってのParadiseだった。
キュウソネコカミ 「ヒッサツマエバ 〜きあいだめ〜」 GUEST:ウルフルズ @Zepp Haneda 12/5 ホーム
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