REDLINE ALL THE REVENGE @ぴあアリーナMM 11/23
- 2022/11/25
- 00:02
JMSが主催するライブイベント、REDLINE。コロナ禍になってからもライブハウスでの対バンイベントとしても開催されてきたが、この日は久しぶりの大規模会場でのフェス形式を「ALL THE REVENGE」と題して開催。自分が参加するのは幕張メッセで開催された2019年の時以来となるが、その際にも出演していたバンドなど、ゆかりの深い出演者から初出演組まで総勢17組が勢揃い。
ステージはメインの上手側REDLINE STAGEと下手側のBEGINNING STAGE、さらにはアリーナ後方に作られた小さなBEAST STAGEの3つ。アリーナはスタンディングのブロック制、スタンドは指定席で、移動することなく全ステージの全アクトが被りなく見れるというのは幕張メッセの時とは違うものになっている。
雨が降っていたこともあってか、9時に開場して9時半にREDLINE STAGEのオープニングアクトのtotemぽぉるが出演してもまだ客席、特にスタンド席は人がまばら。いくら祝日とはいえさすがに朝が早すぎるのであるが、このtotemぽぉるのストレートなスリーピースのパンクサウンドはまだ眠たいこちらの脳を叩き起こしてくれるかのようだ。とはいえ自分も場内に入ったらすでに最後の1曲という遅刻っぷりだっただけに、またちゃんとライブを見る機会を作りたいバンドだと1曲見ただけで思う。
10:00〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [BEGINNING STAGE]
オープニングアクトを除いたトップバッターはFear, and Loathing in Las Vegasという、朝10時にこのバンドを出演させることを決めた責任者は誰なのか問い詰めたくなるくらいに朝イチからあまりにも重いタイムテーブルである。
しかしそんな早い時間帯も関係ないとばかりにメンバーはSEとともにめちゃくちゃテンション高く、この2つのメインステージは前に花道が伸びているのであるが、Minami(ボーカル&シンセ)は登場と同時に花道を駆け回り、この一瞬で今が朝10時であることを忘れさせてくれると、バンドは先月に最新アルバム「Cocoon for the Golden Future」をリリースしたばかりで現在絶賛ツアー中であるだけに1曲目はそのアルバムの1曲目に収録されている「Get Back The Hope」で、Minamiによるけたたましいシンセのサウンドが鳴り響き、Tomonori(ドラム)の重量級にして安定感抜群のドラムによるラウドロックが始まるというこのバンドらしさは新作においても変わらずに貫かれているのであるが、間奏ではなんとSo(ボーカル)がギターを持ってタッピングしまくるという驚きの心境地が。しかも普通に上手いというあたりからも一朝一夕で得た技術ではなくて、全くギターのイメージがないというか、エフェクトがかったハイトーンボーカルとパラパラなどのダンスのイメージが強すぎるSoがちゃんとギターが弾けるということがよくわかる。
おなじみのSoとMinamiによるイントロのポーズもバッチリ決まる代表曲の一つである「Rave-up Tonight」ではボーカル2人がやはり花道を進み、Minamiは側転を決めたりしながら歌い叫びまくる。オールスタンディングということもあるし、このバンドのテンションに応じるように朝イチから客席のノリもここ最近のどのフェスよりも激しい。それはこの日の流れはこのバンドがトップバッターだったことによって決まっていたんじゃないかと思うくらいに。
SoがこのREDLINEに出演するのは2010年、2011年以来、実に10年以上ぶりという間隔が空いたこと、こうしてまた戻ってこれたことの感慨を語ってからの「Let Me Hear」は今やバンド最大の代表曲だと言っていいだろう。Soのボーカルから始まり、すぐに狂騒のレイヴラウドロックへと展開していく。実は歌詞は切なさを孕んでもいるのだが、ライブで聴くとそれよりも快楽と狂騒が強く押し寄せてくる。それはあまりの音圧の強さによるものでもあるが、その音の強さはまだ眠気がある頭を完璧に目覚めさせるというか、眠くなるわけがない音楽とパフォーマンスであるだけに実はこのバンドがトップバッターなのは正解だったのかもしれない。
新作からはさらに「Ain't That So Awesome」が披露されるのだが、ドラムを鳴らすTomonori以外のメンバーは楽器を置き、なんとTaiki(ギター)とTetsuya(ベース)は動きの揃ったダンスを踊り始め、曲途中から演奏に加わるという衝撃的なパフォーマンス。あまりに自由すぎるというか、「じゃあこの2人踊ろうぜ」みたいに誰がどうやって決めているのだろうか。元から自由というものをパフォーマンスや時には出で立ちでも体現してきたバンドであるが、その自由っぷりが明らかに別次元に行き始めている。
ピアノの同期音も流れるけれどMinamiは手拍子をし、叫び暴れまくる「Just Awake」とアルバム曲と定番、代表曲を織り交ぜるというバランスを取ったセトリはこの曲などをタイアップで聴いて知ったというような人をも置いていかないものになっているし、凶暴でありながらもキャッチーであるというこのバンドがここまで支持される存在になったことを示すものでもある。
すると新作の中から演奏された、Taikiのギターサウンドが完全にこのバンドならではのゴリゴリのハードロックになっている「Repaint」はRAISE A SUILENに提供した曲のセルフカバー曲であるだけに、まさかフェスでこうして演奏されるとはという驚きが客席に広がっているのがよくわかるし、間奏で今度はなんとMinamiがギターソロを数秒だけ弾くというパフォーマンスにも驚かされる。それくらいに今のこのバンドには禁じ手的なものが何もない。ただ面白くて楽しくて自分たちができることならなんでもやろうという意志が見える。それはかつてのパラパラダンスよりもある意味では衝撃的かもしれないし、誰もが想像しなかった方向にさらにバンドは進化している。
その今回の進化の終着点になるであろう、3月の神戸ワールド記念ホールワンマンと主催フェスの開催を告知すると、ボーカル2人が両手を頭の上で合わせて左右に揺れるというダンスが客席に一面に広がり、Taikiも持ち前の野太い声を響かせる「Virtue and Vice」はさながら朝のラウドラジオ体操と言える趣だ。そんなバカバカしいような景色が我々の体も心もより熱くしてくれるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのは、やはり新作の最後を飾る「Luck Will Be There」という、結果的に最初と最後、セトリの半分が新作からという最新モードだったのだが、このバンドのアルバムの最後の曲は毎回壮大なものになりがちであり、例に漏れずこの曲も逆光の照明がメンバーのシルエットを映し出す演出も相まってそうした曲である。それだけにこのバンドが持つメロディの美しさとスケールの大きさ、何よりもまだ1日が始まったばかりなのにこれでもう終わりかのようなクライマックス感に襲われる。たった35分の尺でそこまでのストーリーを描くことができるこのバンドはやっぱり只者じゃない。
主催フェスのラインナップ的にも、バンドだけならずあらゆる形態のアーティストにこのバンドからの影響が波及しているが、この変わることなき超ハイテンションのままでバンドとして確実に進化を遂げているというあたり、まだまだこのバンドに追いつくような存在はいないと思う。それくらいに、どんなに悲しい別れを経験しても、ライブができない期間が訪れてもひたすらトップスピードで駆け抜け続けている。
1.Get Back The Hope
2.Rave-up Tonight
3.Let Me Hear
4.Ain't That So Awesome
5.Just Awake
6.Repaint
7.Virtue and Vice
8.Luck Will Be There
10:45〜 Tempalay [REDLINE STAGE]
タイムテーブルを見ただけでも明らかに異質な存在なのがわかるし、ましてやベガスの次という順番であるだけにその異質っぷりが際立つTempalay。最近はメンバー個々の活動もより活発化してきているが、このイベントにこのバンドで出演するなんて全く想像していなかった。
この会場が横浜だからという理由によってか「ブルーライト・ヨコハマ」のSEで出てくるという遊び心についつい笑ってしまうのであるが、そんな緩さを吹き飛ばすように小原綾斗(ボーカル&ギター)が絶叫してから轟音ギターを鳴らして「のめりこめ、震えろ。」が始まるというのはこの日のラウドな空気感に合わせたものだったりするのだろうか。白いヘッドホンを装着したAAAMYYY(シンセ&コーラス)のコーラスは変わることなく可憐かつ華麗である。
しかしながらそこはやはり今やこの国随一のサイケデリックバンドTempalayであり、「あびばのんのん」EPに収録の「とん」からはその聴き手自身の内面に深く潜り込んでいくかのようなサウンドによってこの時間だけは別のイベントに来ているかのように空気を塗り替えてしまう。おなじみのサポートベーシストの高木祥太(BREIMEN)の重低音の動きっぷりも実に心地良くも力強い。
歌詞からしても小原の脳内宇宙っぷりが炸裂しまくっている「へどりゅーむ」はその展開によって曲後半になるにつれてどこか光を感じられるようになっているのがなんだか不思議にすら思えてくるのであるが、藤本夏樹(ドラム)の複雑な変拍子のドラムがこのバンドの一筋縄ではいかなさを示している「どうしよう」と曲が進むにつれてさらにTempalayワールドへと引き込まれていく。映像などを使うことなくそれを成し遂げているのはやはり演奏によるバンドの力であるし、直前のベガスがあれだけ花道を往来しまくっていた動っぷりからすると全く花道へ進む素振りすらないこのバンドの静っぷりが際立つ。
小原も
「みなさん、朝も早よから首振りまくってましたね。まぁ少し落ち着いて」
と、ベガスのライブの狂乱っぷりを見ていた上で自分たちなりの音楽を鳴らすことを口にする。
だからこそ実に乗りづらいというか掴み所なく感じるような、それこそがTempalayらしく感じる「春山淡冶にして笑うが如く」が小原のファルセット的なボーカルも含めてどこか懐かしい和の要素を感じさせると、それが祭り的な祝祭の音として爆発してAAAMYYYも腕を上げて
「らっせーらーらっせーらー」
と歌う「大東京万博」では客席でもたくさんの腕が上がる。客層やラインナップ的に完全にアウェーかと思ったらそういうわけでもないというのはこうしたフェスに果敢にバンドが出演し続けてきたことの積み重ねだろう。実際に春のツタロックの時もラインナップ的にはアウェーな感じだったが、一度ライブが始まればそれを自分たちの音で塗り替えてしまうということを示してきたバンドであり、それはこの日もやはりそうだったのである。
そんなライブの最後に演奏されたのはどこか妖しげなメロディとサウンドによる「そなちね」であり、小原とAAAMYYYのボーカルの絡みっぷりも相まって我々を彼岸の彼方に連れていくと、アウトロでは小原のギターが一気に轟音になり、小原は冒頭同様に絶叫を響かせて早々にステージから去っていく。
時にはシティポップ的なバンドに分類されたりもするこのバンドは個人的にはロックバンドだと思っている。もちろん拳を振り上げるようなロックではないけれど、こうした小原の衝動を音と演奏に昇華するパフォーマンスといい、バンドのアティテュードといい。それを確かに感じることができた、REDLINEでのTempalayという信じられないシチュエーションだった。
1.のめりこめ、震えろ。
2.とん
3.へどりゅーむ
4.どうしよう
5.春山淡冶にして笑うが如く
6.大東京万博
7.そなちね
11:30〜 THE FOREVER YOUNG [BEAST STAGE]
アリーナ客席後方に設置された、ステージというよりも円形の台のような360°を客席に囲まれたBEAST STAGE。かつて幕張メッセで開催された時もこうした「これオブジェじゃなくてステージなの?」と思うような小さいステージがあったのだが、そのBEAST STAGEのトップバッターは福岡県久留米市の4人組パンクバンドのTHE FOREVER YOUNGである。
リハでチューリップ「心の旅」のパンクバージョン(どちらかというと有頂天によるカバーのカバーというイメージ)を披露していたことからもわかるように、実にストレートな、それこそ20年くらい前にブームになった青春パンクバンドを彷彿とさせるようなサウンドと歌詞のバンドである。
実際に「今君を迎えにゆくんだ」で始まると、客席からは拳が振り上がりまくる。オガワリョウタ(ドラム)が
「やるなら今しかねぇ!」
と叫びまくるのも、GOING STEADYやSTANCE PUNKSという先人たちからの影響を感じざるを得ないが、タカノジュンノスケとナカオタイスケという両サイドのギターが小さいステージの面積をものともせずにギターを抱えてジャンプしまくるのも、髪色が鮮やかな緑色のクニタケヒロキ(ボーカル&ベース)の声量の大きさと声の伸びやかさ、つまりは歌そのものの強さと上手さもハルカミライに通じるところがある。つまりは自分が大好きなバンドたちの要素を持っているバンドであるということである。
なので「WORLD END」「君を輝かせて」と、もうひたすらストレートだけを投げまくるというか、他の球種が必要ないとすら思うくらいの火の玉ストレートっぷり。藤川球児がフォークボール投げないみたいなくらいのストレート過ぎるパンクのライブであり、メンバーが360°あらゆる角度の観客の方を向きながら
「拳見せてくれー!」
と叫ぶとステージ近くの客席からスタンド席まで腕が振り上がりまくっている。
もうすでに若手というキャリアではないけれど諦めることなくパンクを鳴らすことを歌った「素晴らしき世界」がこのバンドの生き様を示すと、かつてこのREDLINEのツアーをハルカミライやbachoとともに回ったこと、それが再びこのイベントに繋がっていることを語ると、そんな仲間への思いを曲にした「FELLOWS」から、さらに速くさらに強く音が意思を持って鳴り響く「HELLO GOODBYE」を演奏すると、クニタケは
「今日このラインナップのこのイベントに出ることが決まってから、地元の友達からたくさんLINEが来た。そういう久留米の友達の誇りになれるように!」
と自分たちだけのバンドではなくて色々な思いを背負っていることを口にしてから最後に演奏されたのは「GO STRAIGHT」。
「がんばれ その夢に GO STRAIGHT
約束してた未来に
次は俺が待ってるから
夢の終わりはここじゃない キミの終わりは今じゃない」
というストレート過ぎて綺麗事に思えるくらいの歌詞でもこれだけ100%の熱量を込めて、俺たちは本当にこう思ってるんだぞということがわかるくらいに歌うことによってこの上ないくらいの説得力を感じさせる。それは腕を振り上げまくる観客には間違いなく伝わっている。だから見ていて感動してしまう。それは自分にもまだYOUNGな心が残っているからだろうし、このバンドのメンバーはバンド名通りに永遠にYOUNGなままでい続けるのだろう。ひたすらライブハウスで生きてきた、ブレることがないパンクバンドの意思が確かに鳴っていた。これだけのラインナップの中でもこの場を掻っ攫うことができるバンドであるだけに、次はライブハウスの距離感で拳を振り上げながら見てみたい。
1.今君を迎えにゆくんだ
2.WORLD END
3.君を輝かせて
4.素晴らしき世界
5.FELLOWS
6.HELLO GOODBYE
7.GO STRAIGHT
12:10〜 BLUE ENCOUNT [BEGINNING STAGE]
このイベントは声出し可能公演になっている。確かにTHE FOREVER YOUNGも「歌ってくれー!」と煽ってはいたが、ベガスは歌うようなフレーズもなければ爆音に声が掻き消されるし、Tempalayは一緒に歌うようなフレーズは一切ない。
それだけにBLUE ENCOUNTが登場すると、田邊駿一(ボーカル&ギター)が
「Say, Ho〜!」
とヒップホップ的なコール&レスポンスを始めたことによって、我々が声を出せるんだということに改めて気付く。田邊は
「なんかヒップホップの曲が始まりそうだけど(笑)」
と自身にツッコミを入れながら「DAY × DAY」でスタートし、辻村勇太(ベース)が「オイ!オイ!」と煽りまくることによって、どこか最近のフェスとは違うフィジカルなロックバンドとしてのブルエンのライブということを感じさせてくれるのであるが、「Never Ending Story」のサビでも観客が一緒に歌うことができる。そんな久しぶりの感覚を感じていると田邊は
「ちょっと俺から始めるわ。だからメンバーみんな俺についてきて。こんなこと言うのデビューする時以来かも(笑)」
と言うと、「もっと光を」を田邊のボーカルのみで始める。それはこの曲をこの日は実に3年振りに合唱することができるということであり、高村佳秀(ドラム)も立ち上がって田邊の歌唱を聴きながら「お前らもだぞ」と言うかのように煽る仕草を見せると、実際にサビでは合唱が起こる。田邊はマイクから離れてステージ左右に歩き回り、その歌声を発する観客の姿をしっかり自分の目で見ようとする。その久しぶりの合唱に、この曲が持っている力を改めて感じることができた。なぜこの曲がこんなにも特別な曲なのか。それはメンバーだけではなくて、我々一人一人が想いを乗せることができる曲だからだ。やっぱり声が出せる、一緒に歌えるというのは本当に大事な、大きなことだったんだということがよくわかる。
その光景を見た田邊も
「今日はずっと我慢してきた、頑張ってきたことの答え合わせのような日」
と久しぶりに聴く観客の歓声と歌声への感慨を口にしてから、江口雄也(ギター)のタッピングなどのテクニカルなギターサウンドが響き渡り、辻村のコール&レスポンスも遠慮なく展開される「ロストジンクス」と続くと田邊がハンドマイクになった「VS」では田邊に続いて江口も辻村も花道にまで出て行って演奏するのであるが、アリーナ規模でワンマンをやるようになっても有線で楽器をアンプに繋いでいるというあたりにこのバンドのメンバーのこだわりを感じる…と思っていると田邊は隣のREDLINE STAGEの方まで歩いて行って歌うという自由過ぎるパフォーマンスまで。それくらいに田邊が、バンドが解放されているということだ。
そんな嬉しそうな表情を見せながらも田邊は
「でも気を抜くなよ。はしゃぎ過ぎるなよ。って隣のステージまで行った俺に言われたくないだろうけど(笑)
でもまた感染者が増えてきてて、何かあったらまたイベントが中止になったりするかもしれない。俺たちにとってライブ会場、ライブハウスは必要な場所だから、もう2度とそれを奪われることがないように」
と、ブチ上がってはいても冷静さを失うことなく観客にメッセージを伝えて、自身が花道の前に出てきて舞うように踊りながらファルセットでサビを歌う「バッドパラドックス」で観客を飛び跳ねさせまくると、
「REDLINEはまだ千葉LOOKすら全然埋められなかった頃からずっと俺たちを呼んでくれていた。その頃によくやっていた曲を最後に」
と言って最後に演奏されたのはエモバンドとしてシーンに登場してきた頃のブルエンらしさを思い出させてくれる「HANDS」。
「いつだって君のその手は
いつても世界を変えれるよ」
というサビのフレーズは手だけではなくて声でもこのライブの世界、バンドの世界を変えることができるということを示しているかのようだった。何よりもブルエンがこんなにフィジカル的なバンドだったということを思い出させてくれたライブだった。
バンドは2月に日本武道館でワンマン(その前にはその武道館でONAKAMAも開催される)を行うことを告知していたが、果たしてそのライブではこの日のように声が響くのだろうか。できるならそうなって欲しいが、アメリカに活動拠点を移すことを発表している辻村に我々の声をまた聞かせることができて本当に良かったなと思えた。
リハ.HEART
1.DAY × DAY
2.Never Ending Story
3.もっと光を
4.ロストジンクス
5.VS
6.バッドパラドックス
7.HANDS
12:55〜 THE ORAL CIGARETTES [REDLINE STAGE]
ブルエンの次にこのオーラルというタイムテーブルはONAKAMAを形成するバンドを繋げるという主催者からの意思を感じさせるものであるのだが、おなじみの荘厳なSEでメンバーが登場すると、山中拓也(ボーカル&ギター)のおなじみの「1本打って!」の口上ではこのREDLINEは意外にも初出演であることが語られる。
だからなのか、あるいはこの日のライブのレギュレーションに合わせてのものか、デビュー盤の1曲目に収録されていた「mist…」からスタートし、鈴木重伸(ギター)のリフが炸裂し、あきらかにあきら(ベース)も踊るようなステップを踏むようにしながらリズムを刻むのであるが、最後のサビ前の
「そんな理性の感情も速すぎた僕の弾丸で
どこかに行ったの
そんな理性の感情もまるで白い霧のように
溶けていったの」
のフレーズではバンドの演奏が止まり、観客の合唱のみが響く。その歌声に山中も
「ヤバいやん!」
と久しぶりの合唱への喜びをあらわにしながらも、
「大声は禁止かもしれないけど、我々はあなたたちの本気の声を知っています!」
と言ってやはりタイトルフレーズの合唱を引き出す「5150」へ。この連発っぷりは間違いなく「観客が歌える」という状況を意識したものだろう。そうした楽しみ方も、それができる曲も解禁されつつあるし、鈴木が花道まで歩いて行ってギターを弾きまくる様も実に映えるのはこのバンドの華と言えるような部分あってこそだろう。
そんな観客の合唱の連発を目の当たりにした山中は実に久しぶりの光景と感覚であるからか、感極まるようにして普段自身が立つ台の上に寝そべってしまう。オーラルが観客の発する声などの力を自分たちのものにしてきたバンドであるということが改めてわかる。
そんな山中がハンドマイクになって歌うのは「ENEMY」であり、Kamuiこそ来なかったものの、山中はそのKamuiのラップパートまでをも高速で放ちまくる。花道はもちろんブルエンのように隣のステージにまで行きそうなくらいの勢いで左右に歩くのであるが、この日の出演者の中では初めてスクリーンにもMVの映像が映し出されるというのもアリーナをも主戦場にしてきたこのバンドならではである。
それは人間のドロドロした部分をロックシーンのダークヒーローとして包み隠すことなく歌詞にした「Naked」もそうであり、ライブでもおなじみの演出とはいえやはり見入ってしまうのはこのバンドの世界観を見事に視覚化しているからだろうし、ONAKAMAの盟友であるフォーリミの最新MVにこの曲の格闘ゲーム的なMVが転用された「BUG」ではデジタルな同期のビートに中西雅哉の生ドラムのリズムが重なって観客は山中とともに超高速モンキーダンスを繰り広げる。何というかその音の強さからは主催フェスとワンマンの2daysとなったPARADISE DEJAVUを経てバンドがさらに覚醒したかのような印象まで感じられる。
そんな山中は
「ブルエンから受け取ったバトンははたき落とします(笑)我々はこのバトンを奈良の大事な後輩のAge Factoryに繋げます」
と、同年代と後輩の扱いの違いっぷりで笑わせながらも両者への愛を感じさせると、やはりサビでは観客の歌声が響きながら飛び跳ねまくる「カンタンナコト」から、やはりタイトルフレーズ部分で合唱が起き、それだけではなくリフトやダイバーまでもが続出するという、こんな光景を見るオーラルのライブは本当に久しぶりな「BLACK MEMORY」がトドメとばかりに放たれる。
オーラルはいろんなサウンド、いろんな活動をしてきただけに、簡単に説明できるようなわかりやすいバンドではないし、それが少しバンドそのものを見えにくくしているところもあるけれど、この日のそうした客席の全てがただただオーラルをフィジカル的に楽しみ尽くせる強いロックバンドであるということを示していた。このイベントには初出演であっても、ラウドやパンクのフェスにも出演してきたのはそのバンドの強さがあるからだということを改めて感じさせられた。だからこそ、制限や規制がなくなった時のオーラルのライブがまた楽しみになるのだ。
1.mist…
2.5150
3.ENEMY
4.Naked
5.BUG
6.カンタンナコト
7.BLACK MEMORY
13:40〜 Age Factory [BEAST STAGE]
そんな奈良の先輩であるオーラル(オーラルももうそうした立ち位置のバンドなんだなとも思う)からバトンを受け取ったのはAge Factory。最近では新作アルバム「Pure Blue」に参加したラッパーのJUBEEと継続的なバンドAFJBも立ち上げたが、Age Factoryとしても変わらずに活動を続けている。
サポートギターも含めたおなじみの4人編成で登場すると清水エイスケ(ボーカル&ギター)は
「今日は歌ってもいいみたいだから。みんな一緒に歌おう」
と「Dance all night my friends」からスタートするのであるが、そもそもそんなにみんなで合唱するようなタイプのバンドではないし、轟音ギターサウンドによってその歌は掻き消されがちである。それでも西口直人(ベース)のコーラスがそうであるように、腕を振り上げる観客はきっと同じようにタイトルフレーズに声を重ねていたのではないだろうか。
どこか横浜というこの土地柄を想起させるような「HIGH WAY BEACH」と、情景に浸るようなライブでおなじみの曲が続くと清水は
「大事な奈良の先輩のオーラルが繋いでくれたこのステージ」
と口にするあたり、世代を超えた奈良のバンド同士の結束力の強さを感じさせるのであるが、その清水が自身の世代を叫ぶようにして歌う「1994」でさらにギターは轟音っぷりを増す。このひたすらに鋭いギターロックサウンドの中にはなかなか我々の歌声が入り込む余地がないなとも思うのであるが、
「今日はみんなで歌えるような曲でセトリを組んできたんだ」
と言うあたりはその声を出せるという要素がこのバンドにとっても大きな影響を与えていることが伝わってくる。
そんな言葉の後でも歌うというよりは、その演奏の迫力によって飛び跳ね、拳を振り上げ、中にはダイバーまでもが出現するというくらいに衝動を掻き立てる「TONBO」から、間奏で増子央人の正確無比かつ一打が実に強いドラムのリズムが一気に疾走していく「See you in my dream」と続くことによって、そうした激しいノリになっていくのも仕方がないというか、そうなって然るべきだなとも思う。これだけバンドも観客も熱くぶつかり合ったのならば、今夜だけは眠れそうさ、とも思う。
しかし声を出せる、歌えるという状況になったこの日を最も待っていたかのように最後に演奏されたのは、タイトルに合わせるようにメンバーの足元から黄金の照明が光る「GOLD」。変わらずに爆音サウンドではあるし、メンバーのコーラスの声自体も実に大きい。けれど確かにその勇壮なコーラスには観客の、我々の声が乗っているように聞こえていた。どこか孤高な雰囲気を持っているように見えるこのバンドもまた、そうした観客からの力を自分たちのものに変えることができるバンドだったのだ。
それを体感していたのがもう3年も前だったから忘れてしまいそうになっていた。でもこの日のライブで思い出した。その力があればAge Factoryはもっともっと先まで、大きな場所まで行くことができるバンドであるということを。今回は小さなステージだったけれど、次はこのぴあアリーナのメインステージで音を鳴らしている姿が見たい。きっとそれが似合うバンドであると思うし、その時にはもっと大きな合唱がこの会場に響いているはずだから。
リハ.Feel like shit today
リハ.Merry go round
1.Dance all night my friends
2.HIGH WAY BEACH
3.1994
4.TONBO
5.See you in my dream
6.GOLD
14:20〜 ハルカミライ [BEGINNING STAGE]
3年前の幕張メッセでの開催時にはその1週間後に初の幕張メッセワンマンを控えた状況であった、ハルカミライ。REDLINEではツアーなどでもおなじみの存在であり、この日は前日に渋谷でワンマンをやった直後という状況。チケットが取れなくて行けなかったけれど。
サウンドチェックの段階から花道に進んで演奏を繰り広げていた関大地(ギター)と須藤俊(ベース)は本番でも花道の最先端にマイクスタンドを置いてスタンバイしているという点がすでに他のバンドと全く違うのであるが、橋本学(ボーカル)は素肌に革ジャンを着用しておなじみの巨大フラッグを振り回して登場すると、「君にしか」から「カントリーロード」という必殺のコンボにてスタートし、橋本はもちろん関も須藤も定位置という概念を持たないかのように花道を駆け出し、転げ回り、関はマイクスタンドをステージから落下させるという暴れっぷり。それはあの無敵のハルカミライらしいライブがさらに戻ってきつつあるということでもあるのだが、それはこのアリーナの規模でも本当に歌が上手いと思える声量の大きさを発揮している橋本に合わせて我々が思いっきり歌うことができているからだ。かつてあれだけ声の限りに歌い、それが巨大な力の渦になっていたハルカミライのライブがまた見れるようになっている。橋本も曲中にREDLINEへの想いを口にしていたが、もうこの冒頭の時点ですでに感動してしまっていた。
サウンドチェックでもおなじみの「ファイト!!」でさらに激しく花道の上を暴れまくると、そのまま「俺達が呼んでいる」とさらにパンクに突っ走る。夏にアキレス腱を断裂して入院し、退院当初は立って演奏することもできなかった須藤もすっかり全快したのか飛び跳ねまくりながらベースを弾いている。さらに小松謙太(ドラム)が止まることなくビートを繋ぐショートチューン「フルアイビール」と実にフェスらしい駆け抜けっぷりである。
「いつだって俺たちがいる、ここが世界の真ん中!」
と橋本が高らかに宣言した「春のテーマ」はやはり観客が合唱できるからこそその力を最大限に発揮できる曲であると言える。なかなかみんなで肩を組んで大合唱というわけにはまだいかないけれど、またそんな光景が見えるようになる日も少しずつ近づいてきているかのような感覚になる。関は曲中で小松のドラムセットに向かってダイブし、2人ともそのまま演奏を続けるというのはさすがのハルカミライっぷりであるが。
再びパンクなビートで疾走する「PEAK'D YELLOW」ではメンバーはもちろんであるがアリーナ客席もさらに激しさを増す。それはもうかつてのハルカミライのライブでの光景そのものと言っていいくらいにダイバーが続出しているからこそ感じられるものでもあるが、それすらも良いか悪いかは一旦置いておいても本当に久しぶりだ。こうやって我々は、明るい場所を探し求めてきたのだから。
すると小松が一気に花道の先まで走って出てきてメンバー全員が並ぶようにして「世界を終わらせて」をアカペラで歌い始める。もちろんそこには我々の声も重なっている。紛れもない合唱。それを歌えた時、聴いた時に思わず感動してしまった。3年前までこうしてみんなで歌っていたこの曲をまた一緒に歌うことができている。やっぱりこれが好きだったんだ、同じ音楽を好きな人たちでこうして好きな歌を歌うというのが。なくても大丈夫だとも思っていたけれど、やっぱりそれは何よりも大事なものだとこうして歌うことによって改めて思った。我々の声がライブを作る要素の一つになっていたのだ。
そしてそれまでは花道の先にいたメンバーたちがステージに戻って向き合うようにして爆音を鳴らし、光を思わせるような逆光の照明がメンバーを照らす「僕らは街を光らせた」がそんな感動をさらに強く感じさせる。地獄の果てに、音楽の果てに、歓声の果てにこの日のような1日がある。泥水を啜るような毎日であろうとも、こういう日があるから、俺たち強く生きてかなきゃねと思うのである。
そして橋本は「アストロビスタ」を歌い始める際にも
「歌っていいよ」
と観客に告げてから歌い始め、曲中の歌詞を
「眠れない夜に私 Dragon Ashを聴くのさ」
と次に控えるDragon Ashへと変えてみせる。世代的に間違いなく影響を受けているだろうけれど、その系譜の先に今はハルカミライがいるのだ。こうして若者たちを熱狂させるロックバンド、ライブバンドとして。それを示すような曲に我々も思いっきり自分たちの声を乗せることができる。
「ALL THE REVENGEってタイトルだけど、音楽やライブだけじゃなくてもっと大きな意味だと思ってる。壁にぶつからないやつなんかいない。そんな人が今日だけは心から楽しんで前に進めるような」
と曲中に口にした橋本は最後には
「今日がゴールでありスタート。そのラインのテープの色は燃えるような赤。REDLINE」
とREDLINEへの想いを口にする。それはこのイベントにずっと出てきたバンドだからであり、橋本だから言える言葉でもあるな、とも思っていたら須藤が
「あと1分残ってるから…ファイト!!」
とやはり「ファイト!!」をトドメに追加する。それこそがやはりハルカミライだったし、本当に久しぶりのハルカミライの曲を歌えるライブはいろんな思いが去来していた。これからも少しでもたくさんのこうしたライブが、さらにはメンバー自身も客席に突入しまくるようなライブが見れるようになりますようにと思っていた。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.フルアイビール
6.春のテーマ
7.PEAK'D YELLOW
8.世界を終わらせて
9.僕らは街を光らせた
10.アストロビスタ
11.ファイト!!
15:05〜 Dragon Ash [REDLINE STAGE]
キャリア的にも立ち位置的にもこのイベントに出演するのが少し意外な感じもする、Dragon Ash。ハルカミライからリスペクトを寄せられた直後のライブとなるが、フェスなどでは他のバンドのライブを観まくるメンバーたちであるだけにきっとそのハルカミライの思いも届いていたはずだ。
そんなライブは最初にBOTS(DJ)がステージに現れて音を鳴らし始めると、kj(ボーカル)が軽やかにステージに現れて花道の先まで駆け出して歌い始める「Entertain」からスタートすると、HIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井誠(ドラム)と1人ずつメンバーがステージに増えていくと、
「さあ逆襲の時だ」
というフレーズがこの日の「ALL THE REVENGE」というタイトルに重なる。
「退屈は嫌いだ 心を殺す
音楽は偉大だ 炎を灯す」
とも歌うこの曲はまるでこの日のテーマ曲とも言えるし、だからこそこうして今回Dragon Ashがラインナップに名を連ねたのかもしれない。
するとイントロが流れるだけで歓声と手拍子が湧き上がる。誰しもが知るそれは早くもここで「Fantasista」が演奏されたということであり、kjは隣のステージまで歩いて行って歌ったかと思えばステージから飛び降りて客席の前まで行って「ここまで来てみろ」と言うように煽るようにして歌う。その姿に応えるかのように観客はモッシュ、ダイブの応酬と大合唱で応える。明らかにそうしたこの日の客席の空気や雰囲気がここ最近のフェスでのDragon Ashのライブと全く違うものを作り出している。もうこの段階でそれがすぐにわかる。
なのでBOTSがパーカッションを打ち鳴らしながらkjが
「ハルカミライが言っていたように、ここが世界の真ん中だ!」
と言って演奏されたラテン・サンバ音楽をラウドロックに融合させた「For divers erea」もやはりコーラス部分での合唱があってこそ真価を発揮する曲であるし、タイトルの通りにこうしたスタンディングエリアのあるライブ会場に向けられた曲だ。やはりどちらかというと近年リリースしてきた曲を演奏していた最近のフェスとは全くセトリの意味合いが違うが、それはkjが
「それ、サークルピットじゃん!めちゃくちゃ久しぶりに見た!」
と目の前に広がる光景を見て目を輝かせていたからでもあるだろう。
それを最も感じさせるのはkjが思いっきりギターを掻き鳴らし、桜井がパンクなビートを叩き鳴らす初期の名曲「Iceman」だろう。T$UYO$HIだけではなくてクールなHIROKIまでもが花道の先まで出て行ってギターを弾きまくる。その姿に応えるかのような客席の激しさ。それは良し悪しはともかくとしてバンドとファンの生き様を示していたと言える。曲終わりに年明けの代々木体育館でのワンマンの告知をする桜井のMCも本当にテンション高く、生き生きとしていた。
すると曲間でBOTSがターンテーブルを操作し、日本の音楽シーンに衝撃を与えたあの曲のフレーズが少しずつ響き始め、気付いた観客たちはざわざわし始める。まさかあの曲が…と思っていると、やはりkjに紹介されて登場したのはラッパ我リヤの山田マンとMr.Q。つまりそれは日本を変えた真の音楽である「Deep Impact」が演奏されるということであるのだが、そのサウンドは当時のミクスチャーロックというものから、ラウドロックとヒップホップの融合と言えるものへとさらに(特に桜井のドラムが)重く速く進化を遂げている。ほとんどライブで演奏する機会がない曲であろうにこうしてさらに鋭さを研ぎ澄ませているというあたりにこのバンドのライブバンドっぷりを感じざるを得ないが、最後に花道の先でMr.Qが客席やメンバーをスマホで撮影していたのは「その強面の感じでそんなことするんかい!」と少し驚いてしまった。
そうしていよいよステージと客席との壁もなくなってきている中でkjは
「今日のそこみたいなライブハウスのモッシュピット。ただそこだけに向けて作った曲。川の流れは冷たくても、そこだけは変わらないで欲しい」
という願いを込めると、イントロで手拍子が広がっていく。それはこのバンドの静と動の最高峰である「百合の咲く場所で」。サークルもモッシュもダイブもある。そんなこの日だからこそこの曲はこうしてこの日鳴らされたのだろう。それは全てかつてのこの曲の演奏時には欠かせないものであり続けてきたから。もちろんサビに入った瞬間のバンドの音の大きさと強さはカッコ良すぎて体が震えるとはこういうことかということをこれ以上ないくらいに感じさせてくれる。kjの表情や姿や動きも本当に少年のようにすら見える。
時間を気にしながらもkjが
「この後も凄いバンドたくさん出てくるけど、今日はトリのThe BONEZが1番凄いライブやってくれるから」
と仲間へエールを送る優しさを見せる。そんなライブの最後に演奏されたのは「New Era」。ラウドとはまた違う、光を感じさせるような浮遊感のあるサウンドスケープに乗る
「取り留めの無い夢が
閉じ込めれない胸が
今日だって僕達を 奮い立たせるよ」
というフレーズはこの日のこのライブをそのまま示すかのようだった。それくらいに奮い立たされるようなロックバンドの強さがあったのだ。
例えばGREENROOMで急遽「Fantasista」を解禁したこと。それは行っていないファンからは批判もあったけれど、今この状況で自分たちがやりたい曲をやるというロックバンドの本能をむき出しにしたものであるし、そうやってDragon Ashは、kjは目の前に広がる光景やそこまでに自分たちが見てきたものによってテンションも選曲も大きく変わる。だからこの日のセトリやライブだって決めていた部分も、そうでなく直感で変えた部分もあるはず。
その反射神経と、こうした声を出したりできるライブにおけるバンドの強さは、かつてこのバンドが時代の革命児としてシーンの頂点に君臨していたのは音楽の革新性はもちろん、フェスキングとも称されていたように、初めて見るような人がたくさんいるような場所を掻っ攫うことができるライブの強さがあったからだということを改めて感じさせてくれた。つまりはいろんな規制や制限が取っ払われた時にはやはりこのバンドが最強なんじゃないかと思うしかないようなライブだった。
1.Entertain
2.Fantasista
3.For divers erea
4.Iceman
5.Deep Impact feat.ラッパ我リヤ
6.百合の咲く場所で
7.New Era
15:50〜 SHADOWS [BEAST STAGE]
客席内にあるステージであるだけに、BEAST STAGEはスタンバイしているメンバーの姿をステージに上がる前から見ることができる。そこではHiro(ボーカル)がThe BONEZのJESSEに「直前であんなライブやられたらどうすりゃいいんだよ〜」みたいに言って肩を叩かれているような姿すらも見ることができる。そんなDragon Ashの後のSHADOWSである。
Kazuki(ギター)がステージに上がると、
「俺たちの音デケェから声出しても聞こえないよ。外も寒いから温まっていって」
と見た目は厳つい髭面であるが口調も内容も優しい言葉をかけると、そのKazukiとTakahiroの爆音・轟音ギターによって本当に他の音が全く聞こえないハードコアサウンド。Hayato(ベース)とRyo(ドラム)というサポート2人を加えた5人編成はステージが実に小さく感じられる。
駆け抜けるようなその爆音ハードコアサウンドであるが、ただ単にデカくて激しい音を鳴らしているわけではなくて、そこに乗るHiroのメロディーとコーラスが実にキャッチーなものであるというのはかつてこのメンバーたちによって日本のラウドロックシーンの夜明けを告げたFACTの頃から全く変わることのない要素である。Hiroは曲中に360°のあらゆる方向の観客に向けて拳を掲げたりするあたりも巨大な会場でのライブ経験があるメンバーとしての余裕も感じさせる。
しかしながら客席の激しさはこの日の中でもトップクラスであり、まぁこのサウンドでそこで大人しく見てろというのも無理な話であるが、次々にダイバーがステージの方へ流れていくと、Hiroもその客席を眺めては
「お前たち最近もうサークル見てないだろ!なら見せてやろうぜ!」
と言ってスタンディングブロック内には激しい左回りのサークルがいくつも出現する。今もライブハウスではこうしたライブをやり続けているのだろうけれど、なかなかそれを見に行っていないために本当にここまで観客が走り回るサークルは久しぶりに見た。というか声を出したりするよりもはるかにこちらの方が久しぶりである。
そんなHiroは後半では自身もステージから飛び降りて客席の最前の柵に乗り出してダイバーによってもみくちゃにされながら歌い続ける。そこにはかつてFACTの解散直前にロッキンに出演した際に客席にダイブし、それを見た観客もダイブしまくるようになるという生き様が今も全く変わっていないことを感じさせる。
鳴らしたい音楽があって、見たい光景がある。だからバンドを、ライブをやっているというような。それをやって生きるにはなかなか難しいというか厳しい時代や状況になってしまったけれど、今でも自分はFACTがデビューした時のように、そうしたサウンドや光景に心が震える人間であり続けているということを今のSHADOWSの音楽とライブは実感させてくれる。
1.All I Want
2.Senses
3.Overcome
4.Into The Line
5.Fall
6.BEK
7.My Direction
8.Chain Reaction
9.The Lost Song
16:30〜 coldrain [BEGINNING STAGE]
バンドであれどステージにアンプ類がなく、ドラムセットだけというのはこのバンドならではのセッティングであり、それくらいに広くステージを使うバンドであるということだ。横浜アリーナでもワンマンを行い、名実ともにアリーナバンドになったcoldrainがこのぴあアリーナに登場。
唯一セッティングされているドラムのKatsumaを先頭にメンバーはそれぞれ楽器を持ってステージに現れると、Masato(ボーカル)がマイクを握り締めてR×Y×O(ベース)とSugi(ギター)のコーラスに観客の声までもが乗る「ENVY」からスタートすると、オーラルほどガッツリ派手にというわけではないがこのバンドも背面のスクリーンに歌詞が映し出されるという形で映像を駆使するのはさすがアリーナ規模に立つバンドであるが、いきなり観客はスタンド席が揺れるくらいに飛び跳ねまくっている。
バンドは夏に最新アルバム「Nonnegative」をリリースしたばかりであり、その1曲目に収録されている「Help Me, Help You」がこうしてすでにフェスのセトリに入ってきているのだが、Masatoのデスボイスの駆使っぷりはさらに幅広い表現となって現れている。デスボイスと一口にまとめてしまいそうになるが、その声もハイトーンから地を這うような低さまでも変幻自在。それでいてサビでも見事な歌唱力を響かせるのだから素晴らしいラウドボーカリストだと改めて思わされる。
するとここで早くも「THE REVERATION」が発動するのであるが、ダイブしまくっていた観客たちがリフトして待ち構える中でのタイトルフレーズの合唱もこの日ついに久しぶりに観客のものが響く。今まではMasatoも自身で歌っていたのだが、この日はそれを歌わなかったのは観客が歌うということをわかっていたのだろう。やはりこの曲はこの合唱まで含めてのものだよなと改めて実感する。
再び観客が飛び跳ねまくり、YKC(ギター)がMasatoとぶつかりそうになりながら代わる代わる花道へ出て行く「NO ESCAPE」と、この全員の機動力があるからこそ花道の存在が実に良く似合うのであるが、Masatoが
「雨降らせてすいません。お詫びに激しい曲しかやりませんので」
と、やはりこの日(1週間でこの日だけ雨)の雨がこのバンドが呼び込んだものであることを謝罪すると、新作からの「Rabbit Hole」ではダンスミュージック的な同期のサウンドに合わせてSugiが腕を動かしてダンスを踊っているのが実に面白い。曲タイトルに合わせたような映像も含めてバンドにとっての新境地と言えるし、周りのラウドバンドに比べたら他のジャンルの要素を加えるのではなくてひたすらラウドロックの芯を研ぎ澄ませてきたこのバンドもまた今までとは違う形で進化を果たしていると言える。
「同じ音楽が好きな人の声を聞くことができるのってやっぱり最高だよな。でもマスクだけしてくれ。それを守って声を出してくれ」
と、今や自分たちもフェスを主催するようになった立場としての責任を感じさせるような言葉を口にしてから、まさにこのバンドのラウドロックを愛するみんなで声を出すべく「REVOLUTION」が鳴らされると、最後に演奏されたのは新作のリード曲である「PARADISE (Kill The Silence)」。タイトル通りに我々の沈黙が殺されたこの日この場所はラウドバンドにとって、ライブバンドとそれを愛する者にとってのパラダイスそのものだった。コロナ禍になった直後はなかなか足を踏み出せないように見えたこのバンドはやはりこうした日や場所を取り戻そうとしていたのだし、それは来年また開催されるこのバンドの主催フェスへと繋がっていく。コロナ禍突入寸前に最後にモッシュやダイブが繰り広げられていたBLARE FEST.は今回もその光景を見ることができるのだろうか。
リハ.Cut Me
1.ENVY
2.Help Me, Help You
3.THE REVELATION
4.NO ESCAPE
5.Rabbit Hole
6.REVOLUTION
7.PARADISE (Kill The Silence)
17:15〜 Vaundy [REDLINE STAGE]
当然ながらこのイベント初出演。Tempalayに続く異質感を放つVaundy。今年はあらゆるフェスに出演しまくってきたが、まさかこのイベントにも出演するとは全く思っていなかった。
おなじみのサポートメンバー3人とともにオレンジ色っぽいパーカーを着たVaundyがステージに現れると、不穏なサウンドによる「不可幸力」からスタートするというのはおなじみのものであり、サビで一気にその歌声が本領を発揮するというのも変わらないのであるが、このフェスでも超満員の観客がみんな腕を上げているというくらいにラウド・パンクファンにもVaundyの存在と音楽が浸透しているのに驚いてしまう。
「みんな、踊れる?」
と口にすると華やかかつキャッチーなサウンドに乗って本人が踊るようにして歌う「踊り子」「恋風邪にのせて」というポップな曲が続いていく。もちろんバンドメンバーの演奏はこうしたイベントでも負けないくらいに力強いものであるのだが、やはりこの日の流れで見ると実にポップであり歌モノでもあるなと実感せざるを得ない。
そんなポップさ、歌モノっぷりを際立たせるのは真っ暗な中にサビで光が降り注ぐような「しわあわせ」におけるVaundyの奇跡の歌声であるのだが、最近Vaundyの大ファンである忘れらんねえよがライブでこの曲のモノマネをするようになっただけにそのイメージが残ってしまっている。それくらいにVaundyの同業者への影響度が強いということであるし、だからこそあらゆるアーティスト主催フェスにも招かれているのだろう。
「さすがにちょっと疲れてきたな。でも今日のみんなはまだまだ平気でしょ?」
とこの日の観客のノリを見てきたからこそであろうVaundyの言葉にこの日だからこそ観客が声を上げて応えての「裸の勇者」のヒロイックなメロディとサウンドはVaundyが再び力を取り戻して歌っていくようであり、それが「花占い」のキャッチーさで爆発する。この曲が演奏されている時に袖でスタッフたちが楽しそうに踊っているのはVaundyのライブにおける隠れた注目ポイントである。
そして最後に演奏された、手拍子が鳴り響く中で歌うVaundyが最後の力を振り絞るどころか、実はライブを重ねてきて結構体力ついてるんでしょ?と思うくらいに花道だけならず隣のステージまで駆け出して行く(しかもスピードが結構速い)「怪獣の花唄」がこの日もこの男の音楽とライブが我々を幸せにしてくれるということを感じさせてくれる。
正直、最近リリースしている曲がもう少しセトリに入ってくるものかとも思っていたけれど、初めて見る人が多いであろう状況に合わせたセトリだったのかもしれない。
そして声出し可能ライブというのももしかしたらVaundyにとっては初めてのものだったのかもしれないが、一緒に歌うことはできないなと思うのはやはりVaundyがあまりに歌がうますぎるからであり、そんな歌に合わせて観客が歌ったら邪魔でしかないからだ。そういう意味では状況や客層に影響されないくらいの歌の力を持っていることを証明したのがREDLINEでの Vaundyのライブだったのかもしれない。
リハ.東京フラッシュ
1.不可幸力
2.踊り子
3.恋風邪にのせて
4.しわあわせ
5.裸の勇者
6.花占い
7.怪獣の花唄
・18:00〜 我儘ラキア [BEAST STAGE]
ステージ名の通りに猛獣のようなバンドたちが出演してきたBEAST STAGEのトリは4人組グループの我儘ラキア。Twitterのタイムラインによく出てくるので名前は知ってはいたが、ライブを見るのも音楽を聴くのも完全に初めてである。
ギター×2、ベース、キーボード、ドラムというこのステージにこんなに載せていいのかと思うくらいのサポートバンドがスタンバイする中で、そこに星熊南巫、海羽凛、川崎怜奈、MIRIというメンバーたちが現れると、序盤はヒップホップやR&Bの要素を感じさせる曲が演奏され、メンバーもマイクリレーをしながらダンスするのだが、そのダンスも体のキレを感じさせるようなもので、何よりもこうしたグループになるとメンバーの顔と名前が全く一致しないというか覚えられないことの方が多いのであるが、メンバーの出で立ちと歌唱法が全く違うだけに一目で見分けがつく。それはもしかしたらこのメンバーはそれぞれ違う音楽性やバックグラウンドを持っている人の集まりなのかもしれないとも思う。
それは中盤以降は緑色の髪が目を惹く星熊が前に出て台の上に足をかけるようにして歌うロックサウンドの曲が連発されていくのであるが、その星熊の歌唱力と声量には驚かされてしまう。ロックサウンドと言ってもラウド(ベガスの影響もあるように思う)と言っていいものであるために、割とそのサウンドがあれば歌唱は二の次的な感じでも成立しそうであるが、むしろそのラウドな生バンドの演奏よりもはるかにその歌声が強い。もちろん能力の高さもあるだろうけれど、そこには本人がこうした音楽が好きで、それを歌いたいから努力してこうした歌唱を手に入れたという感じがする。
その星熊は先ほどこのステージに出演していたSHADOWSのHiroのようにステージを飛び降りて客席最前の柵に立つようにして歌うという振り切れっぷりを見せるのであるが、もちろんダイバーがガンガン降ってくる最前線で歌っているわけで、それを望んでいる、わかっている人のパフォーマンスであると言える。危ないからとかそうしたことよりもとにかく衝動をぶつけないことには自分が納得できないというような。
そうしてステージに戻った星熊は
「私は20歳で音楽を始めた。遅いって言われまくったけど、それまではみんなと同じようにただただライブキッズとしてライブに行きまくってた。自分でも音楽がやりたいと思って始めた音楽で、こんなに凄い人たちと一緒にこのイベントに出ることができている。
私がそうだったように、たとえば恋人が望む人間像があったとしても、あなたは自分自身がいたいあなたのままでいてください。何かに合わせて自分を変えたりしないで、そのままでいてください」
と思いを口にして、最後に「SURVIVE」を演奏した。自分がこの30分のライブを見て、今まで見てきたアイドルグループ(本人がそう自称しなければアイドルと言うことさえ憚られるような)の中で1番ライブを見ていて「かっけぇ…」と思った。それはもしかしたら彼女たちが自分のようなただひたすらライブに行きまくっている人間がステージに立っているという存在だからかもしれない。つまりは自分の自分自身への理想像が彼女たちであるかのような。
そう思うからこそ、今フェスにはいろんなタイプのアイドルグループが出るようになっているけれど、自分はこのグループにこそもっといろんなフェスに出てその場を掻き回して欲しいなとも思うし、この日この位置にこのグループが出ていた理由がライブを見てすぐにわかったし、きっとすぐにまたどこかでライブを見ることになるはず。
1.Girls
2.Bite Off!!!!
3.Leaving
4.SWSW
5.JINX
6.GR4VITY G4ME
7.SURVIVE
18:40〜 クリープハイプ [BEGINNING STAGE]
3年前の幕張メッセでのこのイベント出演時には尾崎世界観(ボーカル&ギター)が髪を驚きの金髪にしており、その日出演していたMy Hair is Badに合わせて
「My Hair is Goldです」
と挨拶していた、クリープハイプ。今回もラウド・パンクバンドが居並ぶ中で変わることなく出演。
SEもなしにメンバーが暗いステージに登場すると最初に響くのは長谷川カオナシ(ベース)によるキーボードの音。ということはつまり「ナイトオンザプラネット」であり、尾崎はハンドマイクで歌うのであるが、曲のサウンドやリズムがゆったりと聴き入る、体を揺らすというものであるからか、ハンドマイクであっても全く花道へ進んでいこうとしないあたりは実に尾崎らしいと言えるかもしれない。
尾崎がギター、カオナシがベースという通常の編成に戻ると一転して小泉拓(ドラム)の性急なビートが走り、小川幸慈のギターがうなりまくる、ギターロックというよりもクリープハイプなりのパンクと言ってもいいような「しょうもな」で客席からたくさんの腕上がると、尾崎の歌詞の構成力や単語の選び方の極み的な曲と言ってもいいような「一生に一度愛してるよ」という曲が続き、ラウドでもなければ耳が痛くなるほどの爆音でもないけれど、そうしたバンドたちの後に聴いても全く物足りなさを感じることがないくらいにクリープハイプの鳴らしている音が力強いということを改めて感じられる。
すると不穏なサウンドが流れて一気にまた空気が変わる「キケンナアソビ」では尾崎の
「危険日でも遊んであげるから」
という音源では伏せられているフレーズがライブだからこそ響く。もちろんこの直前の2曲でロックな部分も示しているが、こんなに激しいバンドばかりの中でいつもの自分たちを貫いているというのはやはりこのバンドの唯一無二さを感じる。
それは尾崎も実感しているようで、
「インディーズの頃からずっとこのイベントには出させてもらってるんですけど、クリープハイプが出てくると急にお葬式みたいな空気になるでしょ?(笑)
(客席から拍手が起こり)拍手もおかしいだろ(笑)
でもこれからもこうやって途中で出てきては変な空気にさせるっていうポジションでずっと出演し続けたいと思います」
と、このイベントへの愛情を口にする。それは毎回断ることなく出演し続けてきたことからも明らかであるが、そんなクリープハイプだから作れる空気や景色をきっとメンバーも楽しんでいるはずだ。
そんなクリープハイプの最新曲がシンプルかつストレートに感じるギターロックサウンドに全くシンプルでもストレートでもない歌詞が乗る「愛のネタバレ」。もうその歌詞や言い回しには上手いことの宝庫と化している感じすらあるが、ネタ切れという単語の使い方も然りであるが、
「あの口コミで知りました あなたの奥の方
蜂蜜みたいな味とか 嘘ついたけど」
という歌詞はこのまま過去の名曲「蜂蜜と風呂場」を聴きたくなってしまう。
そしてカオナシによるうねるようなベースのイントロから始まる、ライブならではのアレンジが施された「イト」でのバンドのグルーヴの一枚岩感と、尾崎のその独特な声ながらも力強く伸びやかな歌唱というこのバンドのライブの地力の強さを実感させてくれると、
「今日はなんかありそうな気がする。セックスの歌をやります」
と言ってカオナシが颯爽と花道まで出てきてベースのイントロを弾いて始まったのはもちろん「HE IS MINE」であるが、この日は声出し可能公演であり、メンバーもそれをわかっている。ということはコロナ禍の中では無言を貫いてきた、それがこのバンドとしてのコロナ禍での戦い方になっていた「セックスしよう」の合唱が起きるということであり、まさに3年ぶりに客席からその合唱が響くという、こんなフレーズなのに感動的な空気に包まれる中で尾崎は腕をマイクスタンドの上に置いて目元を隠すようにしながら、
「これだ。忘れてた。思い出したよ」
と久しぶりの合唱に感極まってるのかと思いきや、
「でも今日はsagamiがスポンサーなので、アレがあればもう1回できます」
と、スポンサーであることによってこの日コンドームが無料配布されていたsagamiの効果によってまさかの2回戦「セックスしよう!」が響く。尾崎もその合唱を聞いてから最後のサビに突入すると、他のラウドバンドと全く変わらないくらいの凄まじい盛り上がりっぷりに。
「大変よくできました」
と言った尾崎も2回戦後だからか、どこかスッキリしたような顔をしていたのだが、それは当然久しぶりに観客によるこの曲の合唱を聞けたからだろう。
コロナ禍だから曲を封印するのでもなく、関係なしに声を出すのでもなく、無言で貫く光景をこの2年で何度も見てきた。それだけにこの「セックスしよう!」がこんなにもライブを一つにできるものだったということを尾崎が言っていた通りに思い出した。初めて自分がこのバンドのライブを見たインディーズ時代はこの曲でリフトやダイブが起こっていたということも。クリープハイプは他のバンドと同じように観客の声や盛り上がりを自分たちの音楽で生み出し、それを自分たちの力にしてきたバンドだったのだ。
リハ.君の部屋
リハ.おばけでいいからはやくきて
1.ナイトオンザプラネット
2.しょうもな
3.一生に一度愛してるよ
4.キケンナアソビ
5.愛のネタバレ
6.イト
7.HE IS MINE
19:25〜 BiSH [REDLINE STAGE]
ライブが始まる前にはメンバー(セントチヒロ・チッチだろうか?)による、
「私たちのライブでダイブやリフトは禁止されてます。もし1人でもそれをやったらライブはすぐに中止します」
というアナウンスが流れる。笑い声も含んでいただけにまさに今この場面で言っていることなのがわかるのだが、周りに流されることなく自分たちのルールを守り抜くということ、それはきっと今の自分たちが国民的人気を博しているポジションにいるということをわかった上でのものでこうした宣言をするのは実にカッコいいなと自分は思った。きっとライブを見にきた人に自分たちのライブでケガをする危険性があることなどをさせたくないという思いがあってのものだろうからだ。
そんなBiSHがこのイベント初出演。メンツ的にも出演してももはやなんら違和感はないが、今年で解散するために最初で最後のREDLINEである。
生バンドが演奏を開始すると、メンバーはこの日はそれぞれ色や形状が違う衣装を着て登場。それだけに遠くからでも誰なのかということが判別がつきやすいが、早くも客席ではサイリウムが登場するというのはBiSHを見るためにこのライブに来たという人がたくさんいる証拠である。
そんなライブは「GiANT KiLLERS」から始まり、総じてBiSHのライブを昔から支えてきた曲が並ぶというイメージのものだ。リンリンの絶唱とともに、今やメンバー随一の歌唱力と声量を持つメンバーとなったアユニ・Dのボーカルが響き、ハシヤスメ・アツコとモモコグミカンパニーはコンビで振り付けを踊り…とライブが進んでいく中で気付いたのは、元からハスキーな、一声聴けばこの人のものだとわかるような唯一無二の歌声を持ったアイナ・ジ・エンドの歌唱がここにきて飛躍的に向上しているのがすぐにわかる。声の良さだけではなくて、それをさらに遠くまで飛ばすことができる力を持つようになったということが見ていてすぐにわかる。それは彼女がミュージカルの主演を務めたという経験によるものかもしれない。
そんなアイナの歌声が「オーケストラ」で曲にさらに神聖な力を与え、「Primitive」というフェスでは意外な感じがする選曲をもこの広大なアリーナにスッと染み渡らせて行く。
そして「BiSH -星が瞬く夜に-」ではほぼ全員と言っていいくらいにたくさんの人が振り付けを踊っている。これだけラウドやパンクバンドばかりが集う中でこんな景色を作ることができたのは「楽器を持たないパンクバンド」と称されてもいた彼女たちの軌跡によるものだと言っていい。それくらいにこの日出演したほとんどのバンドとは対バン経験があるはずだし、そこで全身全霊のライブをやって認められてきたということだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは「beautifulさ」で、コール的なノリ方が起こったりはしなかったけれど、開演前のアナウンスで
「皆さんの声を聞けるのを楽しみにしています」
と言っていた通りに、ライブの随所では歓声が上がり、時には合唱も起きていた。振り付けも含めてそれくらいにBiSHの音楽があらゆるロックファンに浸透しているということであるが、チッチが最後に
「どうかあなたはあなたらしく、あなたのままでいてください!」
と言った言葉は我儘ラキアの星熊の言葉とも通じていると感じた。つまりはそうして生きてきたグループがこのイベントのラインナップに名を連ねているということだ。もう残りの活動期間は迫ってきているけれど、終わってしまうその前に観客が声を出して楽しんでいる光景を彼女たちが見ることができて、少しだけでもライブを見れた者として本当に良かったなと思っていた。
リハ.FiNAL SHiTS
1.GiANT KiLLERS
2.SMACK baby SMACK
3.ZENSiN ZENREi
4.オーケストラ
5.Primitive
6.BiSH -星が瞬く夜に-
7.beautifulさ
20:10〜 HEY-SMITH [BEGINNING STAGE]
ベガスの狂騒ラウドロックから始まったこのBEGINNING STAGEもいよいよ最後のバンド。このステージを締めるのはあらゆるフェスでおなじみのHEY-SMITHである。
スクリーンにはバンドの15周年を祝うオープニング映像が流れる中でSEとともにメンバーがステージに現れると、かなす(トロンボーン)の髪色は鮮やかな赤い色に変化している。これはやはりREDLINEだから赤くしたという気合いの現れなのだろうか。
そうしてメンバーが登場すると猪狩秀平(ボーカル&ギター)が
「俺たちのREDLINEやー!」
と叫んで、なんといきなりの「come back my dog」からスタート。それによってどんな光景が客席に広がっていたのかはもう察して知るべきという感じであるのだが、Dragon Ashと同様に他のフェスの時と気合いの入りっぷりが全く違う。それがこの冒頭からよくわかる。
なので普段は開幕に演奏される、かなす、イイカワケン(トランペット)、満(サックス)のホーンセクションのサウンドが高らかに鳴り響く「Endless Sorrow」も2曲目で演奏されると、やはり声出し可能ライブだからか(ヘイスミはすでにツアーではそうなっているだろうけれど)、観客によるコーラスの合唱も響く。何というか、本当に今までのライブハウスそのままみたいなライブである。
そのまま収録アルバム「Free Your Mind」の曲順通りにフェスでは珍しい感じもするスカというよりはパンクなサウンドとリズムの「Over」が演奏されたこともあるが、どこかこの日はYUJI(ベース&ボーカル)メインボーカル曲の比率も高かったイメージがある。
一転してホーンサウンドも含めたスカのリズムで踊りまくり、勇壮なコーラスが響くというコロナ禍で生まれた曲という要素を全く感じさせない「Fellowship Anthem」から、外は雨が降っている中での屋内会場ということを忘れさせるようにホーンのサウンドも猪狩のボーカルも突き抜けるような爽やかさの「California」、YUJIのセリフ的なボーカルが強いフックになりながら、そのYUJIの少年的な歌声を感じさせる「Be The One」と、この日はMCを挟むことなく短い持ち時間の中で次々に曲を演奏していた印象だ。だからMCではいつもリズムキープをしているTask-nはMCがある方がキツイのか、無い方がキツイのかというのは少し気になるところである。
猪狩が見本を見せるかのように
「跳べ跳べー!」
とジャンプしまくってから演奏された「Jump!!」では文字通りに観客が飛び跳ねまくり、最新曲「Inside Of Me」ではヘイスミTシャツを着ているようなファンの中にはMVでの振り付けを完璧にマスターして踊っているような人も見受けられるのであるが、自分にはそうしたセンスが全くないだけに全然覚えられないし踊れない。ヘイスミのMVでこうした振り付けが登場するというのも驚きではあったけれど。
そしてYUJIのボーカルが爽やかに響く「Summer Breeze」では今年の夏にいろんな場所でこの曲を聴いた状況に想いを馳せる。来年はまたいろんな野外フェスでこの曲を聴けたらなと思っていると猪狩は、
「これだけ楽しくやってても、今日終わってSNS見たらきっとREDLINE荒れてるで。楽しかったな〜って帰って、見たくなくてもお前たちはきっとそういうのを見てしまうやろう。「まだそういうことはやるべきじゃない」みたいな書き込みを。
でもそういう時にいつだって悪く言われるのはバンドや。だから何を言われても一切気にすんな。俺たちはお前たちの自由のためなら何ぼだって言われてもええ!だからお前たちは自由でいてくれ!」
と信念を口にする。きっと今年のハジマザでもいろんなことを言われまくってきたのだろうし、そこには徐々に世の中から規制がなくなっていく中でライブだけは未だに規制がたくさんあるという不条理さを感じているところもあるだろうと思う。
でも我々が一つ勘違いしてはいけないのは何でもかんでも「猪狩がいいって言ったから」と言ってやってしまってはいけないということだ。他のライブでその場をぶち壊すようなことをしてしまったら、猪狩のその言葉すらも「バンドがやりたい放題やりたいからファンのためって言ってるだけ」みたいにきっと言われるようになってしまう。いつだってカッコいい男としての姿を我々に見せてきてくれたボーカルでありバンドだからこそ、そこに我々が泥を塗るような真似だけはしてはいけないと思っている。
そんな言葉から繋がるように演奏されただけに、ホーン隊の高らかなサウンドも、YUJIのコーラスもバンド全てが我々のためにこの曲を鳴らしてくれているかのような気がしてくる「Don't Worry My Friend」から、イイカワケンが観客を煽りまくる一方で満がサックスを置いてステージ上を不審者のように歩き回るのが面白いハードコアパンクな「DRUG FREE JAPAN」へと続き、なんと最後はこの日2回目の「come back my dog」が演奏され、もちろん1回目を上回る暴れっぷりに。もうこの曲が2回演奏されたということがこの日のヘイスミのライブがどういうものだったのかということを最もわかりやすく示していた。
結果的にSNSが荒れていたのかはわからない。ほとんどTLを見れていないし、検索もしていないから。でもリスクは確かにあるかもしれないけれど、こうした楽しみ方をするのが感染率を高くするのかどうかも誰にもわからないことだと思う。
ただ猪狩の言葉や想いはせめてここにいた人だけには真っ直ぐに届いて欲しいと思うとともに、その猪狩とバンドの信念を汚すことがないように、自分は何としても感染しないまま今年を乗り切って、生き延びてやろうと思っている。
1.come back my dog
2.Endless Sorrow
3.Over
4.Fellowship Anthem
5.California
6.Be The One
7.Jump!!
8.Inside Of Me
9.Summer Breeze
10.Don't Worry My Friend
11.DRUG FREE JAPAN
12.come back my dog
20:55〜 The BONEZ [REDLINE STAGE]
これだけのバンドが居並ぶ中での今回のトリはThe BONEZ。それこそDragon Ashなんかもいる中でこのバンドがトリとは?と最初は思っていたけれど、それを覆すようなライブを我々は見ることになる。BiSHが終わったあたりで帰って行った(翌日が平日なだけに仕方ない部分もあるが)人もたくさんいただけに、スタンド席はかなり人が減ったような印象だ。
メンバー4人がステージに登場すると、ダブルヘッダーのT$UYO$HI(ベース)ももちろん衣装をこのバンド仕様に変えている中で、髪色が緑になったJESSE(ボーカル)がメンバーの名前を入れたリリックを歌うことによって改めてこのバンドで生きていくことを示し、タイトルフレーズではメンバーに合わせて思いっきり飛び跳ねながら観客が声を上げて歌う「We are The BONEZ」からスタートし、JESSEの花道を歩きながらの歌唱も、ZAX(ドラム)とT$UYO$HIのリズムも、KOKIの切り裂くようなギターもさらに荒く、さらに強く大きくなる「Louder」、さらには
「この4人で初めて作った曲!」
と紹介された、ラウドでありながらもメロディー自体は一回聴けば口ずさめるほどにキャッチーな「Numb」という比較的近年リリースの曲を主体にした前半を終えるとJESSEは
「やっぱり、みんなの声が聞こえるっていうのは凄く力をもらえる感じがする」
と声出し可能公演の感慨を口にする。
そんな自分たちの生き様を止まることがない車に喩えた「Rusted Car」ではJESSEが思いっきり助走をつけて花道を走り、そのまま柵すらも飛び越えて客席前までジャンプするという、見ていて「え!?」と思わざるを得ないようなパフォーマンスを見せる。下手したら骨折くらい平気でしてしまいそうな距離の跳躍であったが、JESSEはそのまま客席の柵に身を乗り出すようにして歌ってから平然とステージに戻っていった。やっぱりこうしたところを見ていても只者じゃないというのはよくわかる。
そんなJESSEがギターを持つと、
「今日はちょっと特別な思いがあって…。先に役目を終えて、そういう人しか行けない場所に行ってしまった、大切な友人の家族が今日見に来てます。その人たちに向けて」
と言い、海を真上から見下ろしたりという壮大な自然の景色が映像として映し出される中で演奏されたのは、Pay money To my PainのK、つまりはZAXとT$UYO$HIにとってのかつてのボーカリストへの思いを歌った「Sun forever」。ここまでひたすらに激しく盛り上がりまくっていた客席もこの曲ばかりは聴き入らざるを得なかった。それぞれPTPやKへの思い入れは違うだろうけれど、その存在に思いを馳せながら、今こうしてZAXとT$UYO$HIがまたバンドをやっていて、そのバンドのライブを見ることができている幸せを噛み締めているかのような。1番辛い思いをしたであろう2人が誰よりも力強く演奏していたのがより一層感じるものがあった。泣かせようなんて絶対に思ってやってないのはわかるけれど、その思いが伝わってくるから泣けてきてしまうのだ。
そんな特別な時間を挟んでから、ライブは「Thread & Needle」のついに観客の声が帰ってきたコーラスの大合唱で大団円へと向かっていく。声が出せなかった中津川THE SOLAR BUDOKANの時ですら感動しまくっていたこの曲がこうして合唱が響いて感動しないわけがない。最初は
「聞こえねえぞ!」
と煽っていたJESSEも最後には
「受け取ったー!」
と言ってその観客の力をさらに自分たちのものへと昇華していく。本当に凄いバンドがこうしてこの日を締めようとしてくれているのがわかる。
そしてJESSEは
「今日、このライブを見てる何千人かのうち、小学生とか中学生くらいの少年少女が何年後かにバンドを組んで欲しいなって」
と言うと、スタンド席にいる少年を見つけ、その少年をステージにあげて自分の隣で花道の最先端で肩を組むようにして「SUNTOWN」を歌う。歌いながらもJESSEは少年にちゃんとこの景色を見ろ、とばかりに前を向かせる。その少年の目にはどんな景色が写っていたんだろうか。バンドマンみたいに慣れていない、初めて自分の視界に何千人もの人がいて、その人たちがみんな自分のことを見ている感覚。最初はガチガチだった少年も最後にはJESSEとグータッチをして、抱き合ってからステージを去る。その際にKOKIも少年を抱きしめていた。JESSEの思いはそのままメンバー全員の思いということだ。だからThe BONEZのライブはこんなにも凄い。
「日本代表のロックバンド、The BONEZでした!」
と最後に挨拶をした時に、本当に日本代表と言っていい、そしてこのメンツの中でもトリをやるべきなのはやっぱりこのバンドだったなと思えた。
JESSEもまぁ色々あった。日本はなかなかに厳しい国であるだけに、そうした過ちを犯した人が戻ってきづらいところもあるし、実際にかつて出演したりしていたフェスから声が掛からなくなったりもしたのかもしれない。
でもこうしてトリを任せたり、ステージからトリへのエールを送ってくれたりと、今でもJESSEのことを心から信頼してくれている人がたくさんいる。それは観客もそうだ。その思いに応えるにはカッコいいバンドであり続けるしかないことを本人もわかっていると思うが、この日のライブはこれからもJESSEを信頼するに足るような、というかロックバンドとしての、バンドマンとしての優しさしかないような(このライブを見ていたkjは号泣していたらしい)、信頼せざるを得ないような素晴らしさだった。いつかあの少年と対バンする時まで、ずっとこのままカッコいいバンドでい続けていて欲しい。
1.We are The BONEZ
2.Louder
3.Numb
4.Rusted Car
5.Sun forever
6.Thread & Needle
7.SUNTOWN
楽しかったけれど、田邊や猪狩が言っていたように、ただ楽しかっただけだったらそれはこの日限りのものになってしまうかもしれない。そうならないために、またこうしてこれが見たかったんだと思えるような楽しさを味わうためにはどうしていくべきか。それだけは忘れずにこれからもライブに行き続けたいけれど、一つ確かなのはどれだけ時代が変わっても自分はやっぱりこうしたライブの景色の方が好きだということだ。それを3年振りに思い出せたのはこのREDLINEがこの日開催されたからだ。この日が原因でもう開催できないということにならない限りは、また来年もどうかよろしく。
ステージはメインの上手側REDLINE STAGEと下手側のBEGINNING STAGE、さらにはアリーナ後方に作られた小さなBEAST STAGEの3つ。アリーナはスタンディングのブロック制、スタンドは指定席で、移動することなく全ステージの全アクトが被りなく見れるというのは幕張メッセの時とは違うものになっている。
雨が降っていたこともあってか、9時に開場して9時半にREDLINE STAGEのオープニングアクトのtotemぽぉるが出演してもまだ客席、特にスタンド席は人がまばら。いくら祝日とはいえさすがに朝が早すぎるのであるが、このtotemぽぉるのストレートなスリーピースのパンクサウンドはまだ眠たいこちらの脳を叩き起こしてくれるかのようだ。とはいえ自分も場内に入ったらすでに最後の1曲という遅刻っぷりだっただけに、またちゃんとライブを見る機会を作りたいバンドだと1曲見ただけで思う。
10:00〜 Fear, and Loathing in Las Vegas [BEGINNING STAGE]
オープニングアクトを除いたトップバッターはFear, and Loathing in Las Vegasという、朝10時にこのバンドを出演させることを決めた責任者は誰なのか問い詰めたくなるくらいに朝イチからあまりにも重いタイムテーブルである。
しかしそんな早い時間帯も関係ないとばかりにメンバーはSEとともにめちゃくちゃテンション高く、この2つのメインステージは前に花道が伸びているのであるが、Minami(ボーカル&シンセ)は登場と同時に花道を駆け回り、この一瞬で今が朝10時であることを忘れさせてくれると、バンドは先月に最新アルバム「Cocoon for the Golden Future」をリリースしたばかりで現在絶賛ツアー中であるだけに1曲目はそのアルバムの1曲目に収録されている「Get Back The Hope」で、Minamiによるけたたましいシンセのサウンドが鳴り響き、Tomonori(ドラム)の重量級にして安定感抜群のドラムによるラウドロックが始まるというこのバンドらしさは新作においても変わらずに貫かれているのであるが、間奏ではなんとSo(ボーカル)がギターを持ってタッピングしまくるという驚きの心境地が。しかも普通に上手いというあたりからも一朝一夕で得た技術ではなくて、全くギターのイメージがないというか、エフェクトがかったハイトーンボーカルとパラパラなどのダンスのイメージが強すぎるSoがちゃんとギターが弾けるということがよくわかる。
おなじみのSoとMinamiによるイントロのポーズもバッチリ決まる代表曲の一つである「Rave-up Tonight」ではボーカル2人がやはり花道を進み、Minamiは側転を決めたりしながら歌い叫びまくる。オールスタンディングということもあるし、このバンドのテンションに応じるように朝イチから客席のノリもここ最近のどのフェスよりも激しい。それはこの日の流れはこのバンドがトップバッターだったことによって決まっていたんじゃないかと思うくらいに。
SoがこのREDLINEに出演するのは2010年、2011年以来、実に10年以上ぶりという間隔が空いたこと、こうしてまた戻ってこれたことの感慨を語ってからの「Let Me Hear」は今やバンド最大の代表曲だと言っていいだろう。Soのボーカルから始まり、すぐに狂騒のレイヴラウドロックへと展開していく。実は歌詞は切なさを孕んでもいるのだが、ライブで聴くとそれよりも快楽と狂騒が強く押し寄せてくる。それはあまりの音圧の強さによるものでもあるが、その音の強さはまだ眠気がある頭を完璧に目覚めさせるというか、眠くなるわけがない音楽とパフォーマンスであるだけに実はこのバンドがトップバッターなのは正解だったのかもしれない。
新作からはさらに「Ain't That So Awesome」が披露されるのだが、ドラムを鳴らすTomonori以外のメンバーは楽器を置き、なんとTaiki(ギター)とTetsuya(ベース)は動きの揃ったダンスを踊り始め、曲途中から演奏に加わるという衝撃的なパフォーマンス。あまりに自由すぎるというか、「じゃあこの2人踊ろうぜ」みたいに誰がどうやって決めているのだろうか。元から自由というものをパフォーマンスや時には出で立ちでも体現してきたバンドであるが、その自由っぷりが明らかに別次元に行き始めている。
ピアノの同期音も流れるけれどMinamiは手拍子をし、叫び暴れまくる「Just Awake」とアルバム曲と定番、代表曲を織り交ぜるというバランスを取ったセトリはこの曲などをタイアップで聴いて知ったというような人をも置いていかないものになっているし、凶暴でありながらもキャッチーであるというこのバンドがここまで支持される存在になったことを示すものでもある。
すると新作の中から演奏された、Taikiのギターサウンドが完全にこのバンドならではのゴリゴリのハードロックになっている「Repaint」はRAISE A SUILENに提供した曲のセルフカバー曲であるだけに、まさかフェスでこうして演奏されるとはという驚きが客席に広がっているのがよくわかるし、間奏で今度はなんとMinamiがギターソロを数秒だけ弾くというパフォーマンスにも驚かされる。それくらいに今のこのバンドには禁じ手的なものが何もない。ただ面白くて楽しくて自分たちができることならなんでもやろうという意志が見える。それはかつてのパラパラダンスよりもある意味では衝撃的かもしれないし、誰もが想像しなかった方向にさらにバンドは進化している。
その今回の進化の終着点になるであろう、3月の神戸ワールド記念ホールワンマンと主催フェスの開催を告知すると、ボーカル2人が両手を頭の上で合わせて左右に揺れるというダンスが客席に一面に広がり、Taikiも持ち前の野太い声を響かせる「Virtue and Vice」はさながら朝のラウドラジオ体操と言える趣だ。そんなバカバカしいような景色が我々の体も心もより熱くしてくれるのである。
そんなライブの最後に演奏されたのは、やはり新作の最後を飾る「Luck Will Be There」という、結果的に最初と最後、セトリの半分が新作からという最新モードだったのだが、このバンドのアルバムの最後の曲は毎回壮大なものになりがちであり、例に漏れずこの曲も逆光の照明がメンバーのシルエットを映し出す演出も相まってそうした曲である。それだけにこのバンドが持つメロディの美しさとスケールの大きさ、何よりもまだ1日が始まったばかりなのにこれでもう終わりかのようなクライマックス感に襲われる。たった35分の尺でそこまでのストーリーを描くことができるこのバンドはやっぱり只者じゃない。
主催フェスのラインナップ的にも、バンドだけならずあらゆる形態のアーティストにこのバンドからの影響が波及しているが、この変わることなき超ハイテンションのままでバンドとして確実に進化を遂げているというあたり、まだまだこのバンドに追いつくような存在はいないと思う。それくらいに、どんなに悲しい別れを経験しても、ライブができない期間が訪れてもひたすらトップスピードで駆け抜け続けている。
1.Get Back The Hope
2.Rave-up Tonight
3.Let Me Hear
4.Ain't That So Awesome
5.Just Awake
6.Repaint
7.Virtue and Vice
8.Luck Will Be There
10:45〜 Tempalay [REDLINE STAGE]
タイムテーブルを見ただけでも明らかに異質な存在なのがわかるし、ましてやベガスの次という順番であるだけにその異質っぷりが際立つTempalay。最近はメンバー個々の活動もより活発化してきているが、このイベントにこのバンドで出演するなんて全く想像していなかった。
この会場が横浜だからという理由によってか「ブルーライト・ヨコハマ」のSEで出てくるという遊び心についつい笑ってしまうのであるが、そんな緩さを吹き飛ばすように小原綾斗(ボーカル&ギター)が絶叫してから轟音ギターを鳴らして「のめりこめ、震えろ。」が始まるというのはこの日のラウドな空気感に合わせたものだったりするのだろうか。白いヘッドホンを装着したAAAMYYY(シンセ&コーラス)のコーラスは変わることなく可憐かつ華麗である。
しかしながらそこはやはり今やこの国随一のサイケデリックバンドTempalayであり、「あびばのんのん」EPに収録の「とん」からはその聴き手自身の内面に深く潜り込んでいくかのようなサウンドによってこの時間だけは別のイベントに来ているかのように空気を塗り替えてしまう。おなじみのサポートベーシストの高木祥太(BREIMEN)の重低音の動きっぷりも実に心地良くも力強い。
歌詞からしても小原の脳内宇宙っぷりが炸裂しまくっている「へどりゅーむ」はその展開によって曲後半になるにつれてどこか光を感じられるようになっているのがなんだか不思議にすら思えてくるのであるが、藤本夏樹(ドラム)の複雑な変拍子のドラムがこのバンドの一筋縄ではいかなさを示している「どうしよう」と曲が進むにつれてさらにTempalayワールドへと引き込まれていく。映像などを使うことなくそれを成し遂げているのはやはり演奏によるバンドの力であるし、直前のベガスがあれだけ花道を往来しまくっていた動っぷりからすると全く花道へ進む素振りすらないこのバンドの静っぷりが際立つ。
小原も
「みなさん、朝も早よから首振りまくってましたね。まぁ少し落ち着いて」
と、ベガスのライブの狂乱っぷりを見ていた上で自分たちなりの音楽を鳴らすことを口にする。
だからこそ実に乗りづらいというか掴み所なく感じるような、それこそがTempalayらしく感じる「春山淡冶にして笑うが如く」が小原のファルセット的なボーカルも含めてどこか懐かしい和の要素を感じさせると、それが祭り的な祝祭の音として爆発してAAAMYYYも腕を上げて
「らっせーらーらっせーらー」
と歌う「大東京万博」では客席でもたくさんの腕が上がる。客層やラインナップ的に完全にアウェーかと思ったらそういうわけでもないというのはこうしたフェスに果敢にバンドが出演し続けてきたことの積み重ねだろう。実際に春のツタロックの時もラインナップ的にはアウェーな感じだったが、一度ライブが始まればそれを自分たちの音で塗り替えてしまうということを示してきたバンドであり、それはこの日もやはりそうだったのである。
そんなライブの最後に演奏されたのはどこか妖しげなメロディとサウンドによる「そなちね」であり、小原とAAAMYYYのボーカルの絡みっぷりも相まって我々を彼岸の彼方に連れていくと、アウトロでは小原のギターが一気に轟音になり、小原は冒頭同様に絶叫を響かせて早々にステージから去っていく。
時にはシティポップ的なバンドに分類されたりもするこのバンドは個人的にはロックバンドだと思っている。もちろん拳を振り上げるようなロックではないけれど、こうした小原の衝動を音と演奏に昇華するパフォーマンスといい、バンドのアティテュードといい。それを確かに感じることができた、REDLINEでのTempalayという信じられないシチュエーションだった。
1.のめりこめ、震えろ。
2.とん
3.へどりゅーむ
4.どうしよう
5.春山淡冶にして笑うが如く
6.大東京万博
7.そなちね
11:30〜 THE FOREVER YOUNG [BEAST STAGE]
アリーナ客席後方に設置された、ステージというよりも円形の台のような360°を客席に囲まれたBEAST STAGE。かつて幕張メッセで開催された時もこうした「これオブジェじゃなくてステージなの?」と思うような小さいステージがあったのだが、そのBEAST STAGEのトップバッターは福岡県久留米市の4人組パンクバンドのTHE FOREVER YOUNGである。
リハでチューリップ「心の旅」のパンクバージョン(どちらかというと有頂天によるカバーのカバーというイメージ)を披露していたことからもわかるように、実にストレートな、それこそ20年くらい前にブームになった青春パンクバンドを彷彿とさせるようなサウンドと歌詞のバンドである。
実際に「今君を迎えにゆくんだ」で始まると、客席からは拳が振り上がりまくる。オガワリョウタ(ドラム)が
「やるなら今しかねぇ!」
と叫びまくるのも、GOING STEADYやSTANCE PUNKSという先人たちからの影響を感じざるを得ないが、タカノジュンノスケとナカオタイスケという両サイドのギターが小さいステージの面積をものともせずにギターを抱えてジャンプしまくるのも、髪色が鮮やかな緑色のクニタケヒロキ(ボーカル&ベース)の声量の大きさと声の伸びやかさ、つまりは歌そのものの強さと上手さもハルカミライに通じるところがある。つまりは自分が大好きなバンドたちの要素を持っているバンドであるということである。
なので「WORLD END」「君を輝かせて」と、もうひたすらストレートだけを投げまくるというか、他の球種が必要ないとすら思うくらいの火の玉ストレートっぷり。藤川球児がフォークボール投げないみたいなくらいのストレート過ぎるパンクのライブであり、メンバーが360°あらゆる角度の観客の方を向きながら
「拳見せてくれー!」
と叫ぶとステージ近くの客席からスタンド席まで腕が振り上がりまくっている。
もうすでに若手というキャリアではないけれど諦めることなくパンクを鳴らすことを歌った「素晴らしき世界」がこのバンドの生き様を示すと、かつてこのREDLINEのツアーをハルカミライやbachoとともに回ったこと、それが再びこのイベントに繋がっていることを語ると、そんな仲間への思いを曲にした「FELLOWS」から、さらに速くさらに強く音が意思を持って鳴り響く「HELLO GOODBYE」を演奏すると、クニタケは
「今日このラインナップのこのイベントに出ることが決まってから、地元の友達からたくさんLINEが来た。そういう久留米の友達の誇りになれるように!」
と自分たちだけのバンドではなくて色々な思いを背負っていることを口にしてから最後に演奏されたのは「GO STRAIGHT」。
「がんばれ その夢に GO STRAIGHT
約束してた未来に
次は俺が待ってるから
夢の終わりはここじゃない キミの終わりは今じゃない」
というストレート過ぎて綺麗事に思えるくらいの歌詞でもこれだけ100%の熱量を込めて、俺たちは本当にこう思ってるんだぞということがわかるくらいに歌うことによってこの上ないくらいの説得力を感じさせる。それは腕を振り上げまくる観客には間違いなく伝わっている。だから見ていて感動してしまう。それは自分にもまだYOUNGな心が残っているからだろうし、このバンドのメンバーはバンド名通りに永遠にYOUNGなままでい続けるのだろう。ひたすらライブハウスで生きてきた、ブレることがないパンクバンドの意思が確かに鳴っていた。これだけのラインナップの中でもこの場を掻っ攫うことができるバンドであるだけに、次はライブハウスの距離感で拳を振り上げながら見てみたい。
1.今君を迎えにゆくんだ
2.WORLD END
3.君を輝かせて
4.素晴らしき世界
5.FELLOWS
6.HELLO GOODBYE
7.GO STRAIGHT
12:10〜 BLUE ENCOUNT [BEGINNING STAGE]
このイベントは声出し可能公演になっている。確かにTHE FOREVER YOUNGも「歌ってくれー!」と煽ってはいたが、ベガスは歌うようなフレーズもなければ爆音に声が掻き消されるし、Tempalayは一緒に歌うようなフレーズは一切ない。
それだけにBLUE ENCOUNTが登場すると、田邊駿一(ボーカル&ギター)が
「Say, Ho〜!」
とヒップホップ的なコール&レスポンスを始めたことによって、我々が声を出せるんだということに改めて気付く。田邊は
「なんかヒップホップの曲が始まりそうだけど(笑)」
と自身にツッコミを入れながら「DAY × DAY」でスタートし、辻村勇太(ベース)が「オイ!オイ!」と煽りまくることによって、どこか最近のフェスとは違うフィジカルなロックバンドとしてのブルエンのライブということを感じさせてくれるのであるが、「Never Ending Story」のサビでも観客が一緒に歌うことができる。そんな久しぶりの感覚を感じていると田邊は
「ちょっと俺から始めるわ。だからメンバーみんな俺についてきて。こんなこと言うのデビューする時以来かも(笑)」
と言うと、「もっと光を」を田邊のボーカルのみで始める。それはこの曲をこの日は実に3年振りに合唱することができるということであり、高村佳秀(ドラム)も立ち上がって田邊の歌唱を聴きながら「お前らもだぞ」と言うかのように煽る仕草を見せると、実際にサビでは合唱が起こる。田邊はマイクから離れてステージ左右に歩き回り、その歌声を発する観客の姿をしっかり自分の目で見ようとする。その久しぶりの合唱に、この曲が持っている力を改めて感じることができた。なぜこの曲がこんなにも特別な曲なのか。それはメンバーだけではなくて、我々一人一人が想いを乗せることができる曲だからだ。やっぱり声が出せる、一緒に歌えるというのは本当に大事な、大きなことだったんだということがよくわかる。
その光景を見た田邊も
「今日はずっと我慢してきた、頑張ってきたことの答え合わせのような日」
と久しぶりに聴く観客の歓声と歌声への感慨を口にしてから、江口雄也(ギター)のタッピングなどのテクニカルなギターサウンドが響き渡り、辻村のコール&レスポンスも遠慮なく展開される「ロストジンクス」と続くと田邊がハンドマイクになった「VS」では田邊に続いて江口も辻村も花道にまで出て行って演奏するのであるが、アリーナ規模でワンマンをやるようになっても有線で楽器をアンプに繋いでいるというあたりにこのバンドのメンバーのこだわりを感じる…と思っていると田邊は隣のREDLINE STAGEの方まで歩いて行って歌うという自由過ぎるパフォーマンスまで。それくらいに田邊が、バンドが解放されているということだ。
そんな嬉しそうな表情を見せながらも田邊は
「でも気を抜くなよ。はしゃぎ過ぎるなよ。って隣のステージまで行った俺に言われたくないだろうけど(笑)
でもまた感染者が増えてきてて、何かあったらまたイベントが中止になったりするかもしれない。俺たちにとってライブ会場、ライブハウスは必要な場所だから、もう2度とそれを奪われることがないように」
と、ブチ上がってはいても冷静さを失うことなく観客にメッセージを伝えて、自身が花道の前に出てきて舞うように踊りながらファルセットでサビを歌う「バッドパラドックス」で観客を飛び跳ねさせまくると、
「REDLINEはまだ千葉LOOKすら全然埋められなかった頃からずっと俺たちを呼んでくれていた。その頃によくやっていた曲を最後に」
と言って最後に演奏されたのはエモバンドとしてシーンに登場してきた頃のブルエンらしさを思い出させてくれる「HANDS」。
「いつだって君のその手は
いつても世界を変えれるよ」
というサビのフレーズは手だけではなくて声でもこのライブの世界、バンドの世界を変えることができるということを示しているかのようだった。何よりもブルエンがこんなにフィジカル的なバンドだったということを思い出させてくれたライブだった。
バンドは2月に日本武道館でワンマン(その前にはその武道館でONAKAMAも開催される)を行うことを告知していたが、果たしてそのライブではこの日のように声が響くのだろうか。できるならそうなって欲しいが、アメリカに活動拠点を移すことを発表している辻村に我々の声をまた聞かせることができて本当に良かったなと思えた。
リハ.HEART
1.DAY × DAY
2.Never Ending Story
3.もっと光を
4.ロストジンクス
5.VS
6.バッドパラドックス
7.HANDS
12:55〜 THE ORAL CIGARETTES [REDLINE STAGE]
ブルエンの次にこのオーラルというタイムテーブルはONAKAMAを形成するバンドを繋げるという主催者からの意思を感じさせるものであるのだが、おなじみの荘厳なSEでメンバーが登場すると、山中拓也(ボーカル&ギター)のおなじみの「1本打って!」の口上ではこのREDLINEは意外にも初出演であることが語られる。
だからなのか、あるいはこの日のライブのレギュレーションに合わせてのものか、デビュー盤の1曲目に収録されていた「mist…」からスタートし、鈴木重伸(ギター)のリフが炸裂し、あきらかにあきら(ベース)も踊るようなステップを踏むようにしながらリズムを刻むのであるが、最後のサビ前の
「そんな理性の感情も速すぎた僕の弾丸で
どこかに行ったの
そんな理性の感情もまるで白い霧のように
溶けていったの」
のフレーズではバンドの演奏が止まり、観客の合唱のみが響く。その歌声に山中も
「ヤバいやん!」
と久しぶりの合唱への喜びをあらわにしながらも、
「大声は禁止かもしれないけど、我々はあなたたちの本気の声を知っています!」
と言ってやはりタイトルフレーズの合唱を引き出す「5150」へ。この連発っぷりは間違いなく「観客が歌える」という状況を意識したものだろう。そうした楽しみ方も、それができる曲も解禁されつつあるし、鈴木が花道まで歩いて行ってギターを弾きまくる様も実に映えるのはこのバンドの華と言えるような部分あってこそだろう。
そんな観客の合唱の連発を目の当たりにした山中は実に久しぶりの光景と感覚であるからか、感極まるようにして普段自身が立つ台の上に寝そべってしまう。オーラルが観客の発する声などの力を自分たちのものにしてきたバンドであるということが改めてわかる。
そんな山中がハンドマイクになって歌うのは「ENEMY」であり、Kamuiこそ来なかったものの、山中はそのKamuiのラップパートまでをも高速で放ちまくる。花道はもちろんブルエンのように隣のステージにまで行きそうなくらいの勢いで左右に歩くのであるが、この日の出演者の中では初めてスクリーンにもMVの映像が映し出されるというのもアリーナをも主戦場にしてきたこのバンドならではである。
それは人間のドロドロした部分をロックシーンのダークヒーローとして包み隠すことなく歌詞にした「Naked」もそうであり、ライブでもおなじみの演出とはいえやはり見入ってしまうのはこのバンドの世界観を見事に視覚化しているからだろうし、ONAKAMAの盟友であるフォーリミの最新MVにこの曲の格闘ゲーム的なMVが転用された「BUG」ではデジタルな同期のビートに中西雅哉の生ドラムのリズムが重なって観客は山中とともに超高速モンキーダンスを繰り広げる。何というかその音の強さからは主催フェスとワンマンの2daysとなったPARADISE DEJAVUを経てバンドがさらに覚醒したかのような印象まで感じられる。
そんな山中は
「ブルエンから受け取ったバトンははたき落とします(笑)我々はこのバトンを奈良の大事な後輩のAge Factoryに繋げます」
と、同年代と後輩の扱いの違いっぷりで笑わせながらも両者への愛を感じさせると、やはりサビでは観客の歌声が響きながら飛び跳ねまくる「カンタンナコト」から、やはりタイトルフレーズ部分で合唱が起き、それだけではなくリフトやダイバーまでもが続出するという、こんな光景を見るオーラルのライブは本当に久しぶりな「BLACK MEMORY」がトドメとばかりに放たれる。
オーラルはいろんなサウンド、いろんな活動をしてきただけに、簡単に説明できるようなわかりやすいバンドではないし、それが少しバンドそのものを見えにくくしているところもあるけれど、この日のそうした客席の全てがただただオーラルをフィジカル的に楽しみ尽くせる強いロックバンドであるということを示していた。このイベントには初出演であっても、ラウドやパンクのフェスにも出演してきたのはそのバンドの強さがあるからだということを改めて感じさせられた。だからこそ、制限や規制がなくなった時のオーラルのライブがまた楽しみになるのだ。
1.mist…
2.5150
3.ENEMY
4.Naked
5.BUG
6.カンタンナコト
7.BLACK MEMORY
13:40〜 Age Factory [BEAST STAGE]
そんな奈良の先輩であるオーラル(オーラルももうそうした立ち位置のバンドなんだなとも思う)からバトンを受け取ったのはAge Factory。最近では新作アルバム「Pure Blue」に参加したラッパーのJUBEEと継続的なバンドAFJBも立ち上げたが、Age Factoryとしても変わらずに活動を続けている。
サポートギターも含めたおなじみの4人編成で登場すると清水エイスケ(ボーカル&ギター)は
「今日は歌ってもいいみたいだから。みんな一緒に歌おう」
と「Dance all night my friends」からスタートするのであるが、そもそもそんなにみんなで合唱するようなタイプのバンドではないし、轟音ギターサウンドによってその歌は掻き消されがちである。それでも西口直人(ベース)のコーラスがそうであるように、腕を振り上げる観客はきっと同じようにタイトルフレーズに声を重ねていたのではないだろうか。
どこか横浜というこの土地柄を想起させるような「HIGH WAY BEACH」と、情景に浸るようなライブでおなじみの曲が続くと清水は
「大事な奈良の先輩のオーラルが繋いでくれたこのステージ」
と口にするあたり、世代を超えた奈良のバンド同士の結束力の強さを感じさせるのであるが、その清水が自身の世代を叫ぶようにして歌う「1994」でさらにギターは轟音っぷりを増す。このひたすらに鋭いギターロックサウンドの中にはなかなか我々の歌声が入り込む余地がないなとも思うのであるが、
「今日はみんなで歌えるような曲でセトリを組んできたんだ」
と言うあたりはその声を出せるという要素がこのバンドにとっても大きな影響を与えていることが伝わってくる。
そんな言葉の後でも歌うというよりは、その演奏の迫力によって飛び跳ね、拳を振り上げ、中にはダイバーまでもが出現するというくらいに衝動を掻き立てる「TONBO」から、間奏で増子央人の正確無比かつ一打が実に強いドラムのリズムが一気に疾走していく「See you in my dream」と続くことによって、そうした激しいノリになっていくのも仕方がないというか、そうなって然るべきだなとも思う。これだけバンドも観客も熱くぶつかり合ったのならば、今夜だけは眠れそうさ、とも思う。
しかし声を出せる、歌えるという状況になったこの日を最も待っていたかのように最後に演奏されたのは、タイトルに合わせるようにメンバーの足元から黄金の照明が光る「GOLD」。変わらずに爆音サウンドではあるし、メンバーのコーラスの声自体も実に大きい。けれど確かにその勇壮なコーラスには観客の、我々の声が乗っているように聞こえていた。どこか孤高な雰囲気を持っているように見えるこのバンドもまた、そうした観客からの力を自分たちのものに変えることができるバンドだったのだ。
それを体感していたのがもう3年も前だったから忘れてしまいそうになっていた。でもこの日のライブで思い出した。その力があればAge Factoryはもっともっと先まで、大きな場所まで行くことができるバンドであるということを。今回は小さなステージだったけれど、次はこのぴあアリーナのメインステージで音を鳴らしている姿が見たい。きっとそれが似合うバンドであると思うし、その時にはもっと大きな合唱がこの会場に響いているはずだから。
リハ.Feel like shit today
リハ.Merry go round
1.Dance all night my friends
2.HIGH WAY BEACH
3.1994
4.TONBO
5.See you in my dream
6.GOLD
14:20〜 ハルカミライ [BEGINNING STAGE]
3年前の幕張メッセでの開催時にはその1週間後に初の幕張メッセワンマンを控えた状況であった、ハルカミライ。REDLINEではツアーなどでもおなじみの存在であり、この日は前日に渋谷でワンマンをやった直後という状況。チケットが取れなくて行けなかったけれど。
サウンドチェックの段階から花道に進んで演奏を繰り広げていた関大地(ギター)と須藤俊(ベース)は本番でも花道の最先端にマイクスタンドを置いてスタンバイしているという点がすでに他のバンドと全く違うのであるが、橋本学(ボーカル)は素肌に革ジャンを着用しておなじみの巨大フラッグを振り回して登場すると、「君にしか」から「カントリーロード」という必殺のコンボにてスタートし、橋本はもちろん関も須藤も定位置という概念を持たないかのように花道を駆け出し、転げ回り、関はマイクスタンドをステージから落下させるという暴れっぷり。それはあの無敵のハルカミライらしいライブがさらに戻ってきつつあるということでもあるのだが、それはこのアリーナの規模でも本当に歌が上手いと思える声量の大きさを発揮している橋本に合わせて我々が思いっきり歌うことができているからだ。かつてあれだけ声の限りに歌い、それが巨大な力の渦になっていたハルカミライのライブがまた見れるようになっている。橋本も曲中にREDLINEへの想いを口にしていたが、もうこの冒頭の時点ですでに感動してしまっていた。
サウンドチェックでもおなじみの「ファイト!!」でさらに激しく花道の上を暴れまくると、そのまま「俺達が呼んでいる」とさらにパンクに突っ走る。夏にアキレス腱を断裂して入院し、退院当初は立って演奏することもできなかった須藤もすっかり全快したのか飛び跳ねまくりながらベースを弾いている。さらに小松謙太(ドラム)が止まることなくビートを繋ぐショートチューン「フルアイビール」と実にフェスらしい駆け抜けっぷりである。
「いつだって俺たちがいる、ここが世界の真ん中!」
と橋本が高らかに宣言した「春のテーマ」はやはり観客が合唱できるからこそその力を最大限に発揮できる曲であると言える。なかなかみんなで肩を組んで大合唱というわけにはまだいかないけれど、またそんな光景が見えるようになる日も少しずつ近づいてきているかのような感覚になる。関は曲中で小松のドラムセットに向かってダイブし、2人ともそのまま演奏を続けるというのはさすがのハルカミライっぷりであるが。
再びパンクなビートで疾走する「PEAK'D YELLOW」ではメンバーはもちろんであるがアリーナ客席もさらに激しさを増す。それはもうかつてのハルカミライのライブでの光景そのものと言っていいくらいにダイバーが続出しているからこそ感じられるものでもあるが、それすらも良いか悪いかは一旦置いておいても本当に久しぶりだ。こうやって我々は、明るい場所を探し求めてきたのだから。
すると小松が一気に花道の先まで走って出てきてメンバー全員が並ぶようにして「世界を終わらせて」をアカペラで歌い始める。もちろんそこには我々の声も重なっている。紛れもない合唱。それを歌えた時、聴いた時に思わず感動してしまった。3年前までこうしてみんなで歌っていたこの曲をまた一緒に歌うことができている。やっぱりこれが好きだったんだ、同じ音楽を好きな人たちでこうして好きな歌を歌うというのが。なくても大丈夫だとも思っていたけれど、やっぱりそれは何よりも大事なものだとこうして歌うことによって改めて思った。我々の声がライブを作る要素の一つになっていたのだ。
そしてそれまでは花道の先にいたメンバーたちがステージに戻って向き合うようにして爆音を鳴らし、光を思わせるような逆光の照明がメンバーを照らす「僕らは街を光らせた」がそんな感動をさらに強く感じさせる。地獄の果てに、音楽の果てに、歓声の果てにこの日のような1日がある。泥水を啜るような毎日であろうとも、こういう日があるから、俺たち強く生きてかなきゃねと思うのである。
そして橋本は「アストロビスタ」を歌い始める際にも
「歌っていいよ」
と観客に告げてから歌い始め、曲中の歌詞を
「眠れない夜に私 Dragon Ashを聴くのさ」
と次に控えるDragon Ashへと変えてみせる。世代的に間違いなく影響を受けているだろうけれど、その系譜の先に今はハルカミライがいるのだ。こうして若者たちを熱狂させるロックバンド、ライブバンドとして。それを示すような曲に我々も思いっきり自分たちの声を乗せることができる。
「ALL THE REVENGEってタイトルだけど、音楽やライブだけじゃなくてもっと大きな意味だと思ってる。壁にぶつからないやつなんかいない。そんな人が今日だけは心から楽しんで前に進めるような」
と曲中に口にした橋本は最後には
「今日がゴールでありスタート。そのラインのテープの色は燃えるような赤。REDLINE」
とREDLINEへの想いを口にする。それはこのイベントにずっと出てきたバンドだからであり、橋本だから言える言葉でもあるな、とも思っていたら須藤が
「あと1分残ってるから…ファイト!!」
とやはり「ファイト!!」をトドメに追加する。それこそがやはりハルカミライだったし、本当に久しぶりのハルカミライの曲を歌えるライブはいろんな思いが去来していた。これからも少しでもたくさんのこうしたライブが、さらにはメンバー自身も客席に突入しまくるようなライブが見れるようになりますようにと思っていた。
リハ.ファイト!!
リハ.フュージョン
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ファイト!!
4.俺達が呼んでいる
5.フルアイビール
6.春のテーマ
7.PEAK'D YELLOW
8.世界を終わらせて
9.僕らは街を光らせた
10.アストロビスタ
11.ファイト!!
15:05〜 Dragon Ash [REDLINE STAGE]
キャリア的にも立ち位置的にもこのイベントに出演するのが少し意外な感じもする、Dragon Ash。ハルカミライからリスペクトを寄せられた直後のライブとなるが、フェスなどでは他のバンドのライブを観まくるメンバーたちであるだけにきっとそのハルカミライの思いも届いていたはずだ。
そんなライブは最初にBOTS(DJ)がステージに現れて音を鳴らし始めると、kj(ボーカル)が軽やかにステージに現れて花道の先まで駆け出して歌い始める「Entertain」からスタートすると、HIROKI(ギター)、T$UYO$HI(ベース)、桜井誠(ドラム)と1人ずつメンバーがステージに増えていくと、
「さあ逆襲の時だ」
というフレーズがこの日の「ALL THE REVENGE」というタイトルに重なる。
「退屈は嫌いだ 心を殺す
音楽は偉大だ 炎を灯す」
とも歌うこの曲はまるでこの日のテーマ曲とも言えるし、だからこそこうして今回Dragon Ashがラインナップに名を連ねたのかもしれない。
するとイントロが流れるだけで歓声と手拍子が湧き上がる。誰しもが知るそれは早くもここで「Fantasista」が演奏されたということであり、kjは隣のステージまで歩いて行って歌ったかと思えばステージから飛び降りて客席の前まで行って「ここまで来てみろ」と言うように煽るようにして歌う。その姿に応えるかのように観客はモッシュ、ダイブの応酬と大合唱で応える。明らかにそうしたこの日の客席の空気や雰囲気がここ最近のフェスでのDragon Ashのライブと全く違うものを作り出している。もうこの段階でそれがすぐにわかる。
なのでBOTSがパーカッションを打ち鳴らしながらkjが
「ハルカミライが言っていたように、ここが世界の真ん中だ!」
と言って演奏されたラテン・サンバ音楽をラウドロックに融合させた「For divers erea」もやはりコーラス部分での合唱があってこそ真価を発揮する曲であるし、タイトルの通りにこうしたスタンディングエリアのあるライブ会場に向けられた曲だ。やはりどちらかというと近年リリースしてきた曲を演奏していた最近のフェスとは全くセトリの意味合いが違うが、それはkjが
「それ、サークルピットじゃん!めちゃくちゃ久しぶりに見た!」
と目の前に広がる光景を見て目を輝かせていたからでもあるだろう。
それを最も感じさせるのはkjが思いっきりギターを掻き鳴らし、桜井がパンクなビートを叩き鳴らす初期の名曲「Iceman」だろう。T$UYO$HIだけではなくてクールなHIROKIまでもが花道の先まで出て行ってギターを弾きまくる。その姿に応えるかのような客席の激しさ。それは良し悪しはともかくとしてバンドとファンの生き様を示していたと言える。曲終わりに年明けの代々木体育館でのワンマンの告知をする桜井のMCも本当にテンション高く、生き生きとしていた。
すると曲間でBOTSがターンテーブルを操作し、日本の音楽シーンに衝撃を与えたあの曲のフレーズが少しずつ響き始め、気付いた観客たちはざわざわし始める。まさかあの曲が…と思っていると、やはりkjに紹介されて登場したのはラッパ我リヤの山田マンとMr.Q。つまりそれは日本を変えた真の音楽である「Deep Impact」が演奏されるということであるのだが、そのサウンドは当時のミクスチャーロックというものから、ラウドロックとヒップホップの融合と言えるものへとさらに(特に桜井のドラムが)重く速く進化を遂げている。ほとんどライブで演奏する機会がない曲であろうにこうしてさらに鋭さを研ぎ澄ませているというあたりにこのバンドのライブバンドっぷりを感じざるを得ないが、最後に花道の先でMr.Qが客席やメンバーをスマホで撮影していたのは「その強面の感じでそんなことするんかい!」と少し驚いてしまった。
そうしていよいよステージと客席との壁もなくなってきている中でkjは
「今日のそこみたいなライブハウスのモッシュピット。ただそこだけに向けて作った曲。川の流れは冷たくても、そこだけは変わらないで欲しい」
という願いを込めると、イントロで手拍子が広がっていく。それはこのバンドの静と動の最高峰である「百合の咲く場所で」。サークルもモッシュもダイブもある。そんなこの日だからこそこの曲はこうしてこの日鳴らされたのだろう。それは全てかつてのこの曲の演奏時には欠かせないものであり続けてきたから。もちろんサビに入った瞬間のバンドの音の大きさと強さはカッコ良すぎて体が震えるとはこういうことかということをこれ以上ないくらいに感じさせてくれる。kjの表情や姿や動きも本当に少年のようにすら見える。
時間を気にしながらもkjが
「この後も凄いバンドたくさん出てくるけど、今日はトリのThe BONEZが1番凄いライブやってくれるから」
と仲間へエールを送る優しさを見せる。そんなライブの最後に演奏されたのは「New Era」。ラウドとはまた違う、光を感じさせるような浮遊感のあるサウンドスケープに乗る
「取り留めの無い夢が
閉じ込めれない胸が
今日だって僕達を 奮い立たせるよ」
というフレーズはこの日のこのライブをそのまま示すかのようだった。それくらいに奮い立たされるようなロックバンドの強さがあったのだ。
例えばGREENROOMで急遽「Fantasista」を解禁したこと。それは行っていないファンからは批判もあったけれど、今この状況で自分たちがやりたい曲をやるというロックバンドの本能をむき出しにしたものであるし、そうやってDragon Ashは、kjは目の前に広がる光景やそこまでに自分たちが見てきたものによってテンションも選曲も大きく変わる。だからこの日のセトリやライブだって決めていた部分も、そうでなく直感で変えた部分もあるはず。
その反射神経と、こうした声を出したりできるライブにおけるバンドの強さは、かつてこのバンドが時代の革命児としてシーンの頂点に君臨していたのは音楽の革新性はもちろん、フェスキングとも称されていたように、初めて見るような人がたくさんいるような場所を掻っ攫うことができるライブの強さがあったからだということを改めて感じさせてくれた。つまりはいろんな規制や制限が取っ払われた時にはやはりこのバンドが最強なんじゃないかと思うしかないようなライブだった。
1.Entertain
2.Fantasista
3.For divers erea
4.Iceman
5.Deep Impact feat.ラッパ我リヤ
6.百合の咲く場所で
7.New Era
15:50〜 SHADOWS [BEAST STAGE]
客席内にあるステージであるだけに、BEAST STAGEはスタンバイしているメンバーの姿をステージに上がる前から見ることができる。そこではHiro(ボーカル)がThe BONEZのJESSEに「直前であんなライブやられたらどうすりゃいいんだよ〜」みたいに言って肩を叩かれているような姿すらも見ることができる。そんなDragon Ashの後のSHADOWSである。
Kazuki(ギター)がステージに上がると、
「俺たちの音デケェから声出しても聞こえないよ。外も寒いから温まっていって」
と見た目は厳つい髭面であるが口調も内容も優しい言葉をかけると、そのKazukiとTakahiroの爆音・轟音ギターによって本当に他の音が全く聞こえないハードコアサウンド。Hayato(ベース)とRyo(ドラム)というサポート2人を加えた5人編成はステージが実に小さく感じられる。
駆け抜けるようなその爆音ハードコアサウンドであるが、ただ単にデカくて激しい音を鳴らしているわけではなくて、そこに乗るHiroのメロディーとコーラスが実にキャッチーなものであるというのはかつてこのメンバーたちによって日本のラウドロックシーンの夜明けを告げたFACTの頃から全く変わることのない要素である。Hiroは曲中に360°のあらゆる方向の観客に向けて拳を掲げたりするあたりも巨大な会場でのライブ経験があるメンバーとしての余裕も感じさせる。
しかしながら客席の激しさはこの日の中でもトップクラスであり、まぁこのサウンドでそこで大人しく見てろというのも無理な話であるが、次々にダイバーがステージの方へ流れていくと、Hiroもその客席を眺めては
「お前たち最近もうサークル見てないだろ!なら見せてやろうぜ!」
と言ってスタンディングブロック内には激しい左回りのサークルがいくつも出現する。今もライブハウスではこうしたライブをやり続けているのだろうけれど、なかなかそれを見に行っていないために本当にここまで観客が走り回るサークルは久しぶりに見た。というか声を出したりするよりもはるかにこちらの方が久しぶりである。
そんなHiroは後半では自身もステージから飛び降りて客席の最前の柵に乗り出してダイバーによってもみくちゃにされながら歌い続ける。そこにはかつてFACTの解散直前にロッキンに出演した際に客席にダイブし、それを見た観客もダイブしまくるようになるという生き様が今も全く変わっていないことを感じさせる。
鳴らしたい音楽があって、見たい光景がある。だからバンドを、ライブをやっているというような。それをやって生きるにはなかなか難しいというか厳しい時代や状況になってしまったけれど、今でも自分はFACTがデビューした時のように、そうしたサウンドや光景に心が震える人間であり続けているということを今のSHADOWSの音楽とライブは実感させてくれる。
1.All I Want
2.Senses
3.Overcome
4.Into The Line
5.Fall
6.BEK
7.My Direction
8.Chain Reaction
9.The Lost Song
16:30〜 coldrain [BEGINNING STAGE]
バンドであれどステージにアンプ類がなく、ドラムセットだけというのはこのバンドならではのセッティングであり、それくらいに広くステージを使うバンドであるということだ。横浜アリーナでもワンマンを行い、名実ともにアリーナバンドになったcoldrainがこのぴあアリーナに登場。
唯一セッティングされているドラムのKatsumaを先頭にメンバーはそれぞれ楽器を持ってステージに現れると、Masato(ボーカル)がマイクを握り締めてR×Y×O(ベース)とSugi(ギター)のコーラスに観客の声までもが乗る「ENVY」からスタートすると、オーラルほどガッツリ派手にというわけではないがこのバンドも背面のスクリーンに歌詞が映し出されるという形で映像を駆使するのはさすがアリーナ規模に立つバンドであるが、いきなり観客はスタンド席が揺れるくらいに飛び跳ねまくっている。
バンドは夏に最新アルバム「Nonnegative」をリリースしたばかりであり、その1曲目に収録されている「Help Me, Help You」がこうしてすでにフェスのセトリに入ってきているのだが、Masatoのデスボイスの駆使っぷりはさらに幅広い表現となって現れている。デスボイスと一口にまとめてしまいそうになるが、その声もハイトーンから地を這うような低さまでも変幻自在。それでいてサビでも見事な歌唱力を響かせるのだから素晴らしいラウドボーカリストだと改めて思わされる。
するとここで早くも「THE REVERATION」が発動するのであるが、ダイブしまくっていた観客たちがリフトして待ち構える中でのタイトルフレーズの合唱もこの日ついに久しぶりに観客のものが響く。今まではMasatoも自身で歌っていたのだが、この日はそれを歌わなかったのは観客が歌うということをわかっていたのだろう。やはりこの曲はこの合唱まで含めてのものだよなと改めて実感する。
再び観客が飛び跳ねまくり、YKC(ギター)がMasatoとぶつかりそうになりながら代わる代わる花道へ出て行く「NO ESCAPE」と、この全員の機動力があるからこそ花道の存在が実に良く似合うのであるが、Masatoが
「雨降らせてすいません。お詫びに激しい曲しかやりませんので」
と、やはりこの日(1週間でこの日だけ雨)の雨がこのバンドが呼び込んだものであることを謝罪すると、新作からの「Rabbit Hole」ではダンスミュージック的な同期のサウンドに合わせてSugiが腕を動かしてダンスを踊っているのが実に面白い。曲タイトルに合わせたような映像も含めてバンドにとっての新境地と言えるし、周りのラウドバンドに比べたら他のジャンルの要素を加えるのではなくてひたすらラウドロックの芯を研ぎ澄ませてきたこのバンドもまた今までとは違う形で進化を果たしていると言える。
「同じ音楽が好きな人の声を聞くことができるのってやっぱり最高だよな。でもマスクだけしてくれ。それを守って声を出してくれ」
と、今や自分たちもフェスを主催するようになった立場としての責任を感じさせるような言葉を口にしてから、まさにこのバンドのラウドロックを愛するみんなで声を出すべく「REVOLUTION」が鳴らされると、最後に演奏されたのは新作のリード曲である「PARADISE (Kill The Silence)」。タイトル通りに我々の沈黙が殺されたこの日この場所はラウドバンドにとって、ライブバンドとそれを愛する者にとってのパラダイスそのものだった。コロナ禍になった直後はなかなか足を踏み出せないように見えたこのバンドはやはりこうした日や場所を取り戻そうとしていたのだし、それは来年また開催されるこのバンドの主催フェスへと繋がっていく。コロナ禍突入寸前に最後にモッシュやダイブが繰り広げられていたBLARE FEST.は今回もその光景を見ることができるのだろうか。
リハ.Cut Me
1.ENVY
2.Help Me, Help You
3.THE REVELATION
4.NO ESCAPE
5.Rabbit Hole
6.REVOLUTION
7.PARADISE (Kill The Silence)
17:15〜 Vaundy [REDLINE STAGE]
当然ながらこのイベント初出演。Tempalayに続く異質感を放つVaundy。今年はあらゆるフェスに出演しまくってきたが、まさかこのイベントにも出演するとは全く思っていなかった。
おなじみのサポートメンバー3人とともにオレンジ色っぽいパーカーを着たVaundyがステージに現れると、不穏なサウンドによる「不可幸力」からスタートするというのはおなじみのものであり、サビで一気にその歌声が本領を発揮するというのも変わらないのであるが、このフェスでも超満員の観客がみんな腕を上げているというくらいにラウド・パンクファンにもVaundyの存在と音楽が浸透しているのに驚いてしまう。
「みんな、踊れる?」
と口にすると華やかかつキャッチーなサウンドに乗って本人が踊るようにして歌う「踊り子」「恋風邪にのせて」というポップな曲が続いていく。もちろんバンドメンバーの演奏はこうしたイベントでも負けないくらいに力強いものであるのだが、やはりこの日の流れで見ると実にポップであり歌モノでもあるなと実感せざるを得ない。
そんなポップさ、歌モノっぷりを際立たせるのは真っ暗な中にサビで光が降り注ぐような「しわあわせ」におけるVaundyの奇跡の歌声であるのだが、最近Vaundyの大ファンである忘れらんねえよがライブでこの曲のモノマネをするようになっただけにそのイメージが残ってしまっている。それくらいにVaundyの同業者への影響度が強いということであるし、だからこそあらゆるアーティスト主催フェスにも招かれているのだろう。
「さすがにちょっと疲れてきたな。でも今日のみんなはまだまだ平気でしょ?」
とこの日の観客のノリを見てきたからこそであろうVaundyの言葉にこの日だからこそ観客が声を上げて応えての「裸の勇者」のヒロイックなメロディとサウンドはVaundyが再び力を取り戻して歌っていくようであり、それが「花占い」のキャッチーさで爆発する。この曲が演奏されている時に袖でスタッフたちが楽しそうに踊っているのはVaundyのライブにおける隠れた注目ポイントである。
そして最後に演奏された、手拍子が鳴り響く中で歌うVaundyが最後の力を振り絞るどころか、実はライブを重ねてきて結構体力ついてるんでしょ?と思うくらいに花道だけならず隣のステージまで駆け出して行く(しかもスピードが結構速い)「怪獣の花唄」がこの日もこの男の音楽とライブが我々を幸せにしてくれるということを感じさせてくれる。
正直、最近リリースしている曲がもう少しセトリに入ってくるものかとも思っていたけれど、初めて見る人が多いであろう状況に合わせたセトリだったのかもしれない。
そして声出し可能ライブというのももしかしたらVaundyにとっては初めてのものだったのかもしれないが、一緒に歌うことはできないなと思うのはやはりVaundyがあまりに歌がうますぎるからであり、そんな歌に合わせて観客が歌ったら邪魔でしかないからだ。そういう意味では状況や客層に影響されないくらいの歌の力を持っていることを証明したのがREDLINEでの Vaundyのライブだったのかもしれない。
リハ.東京フラッシュ
1.不可幸力
2.踊り子
3.恋風邪にのせて
4.しわあわせ
5.裸の勇者
6.花占い
7.怪獣の花唄
・18:00〜 我儘ラキア [BEAST STAGE]
ステージ名の通りに猛獣のようなバンドたちが出演してきたBEAST STAGEのトリは4人組グループの我儘ラキア。Twitterのタイムラインによく出てくるので名前は知ってはいたが、ライブを見るのも音楽を聴くのも完全に初めてである。
ギター×2、ベース、キーボード、ドラムというこのステージにこんなに載せていいのかと思うくらいのサポートバンドがスタンバイする中で、そこに星熊南巫、海羽凛、川崎怜奈、MIRIというメンバーたちが現れると、序盤はヒップホップやR&Bの要素を感じさせる曲が演奏され、メンバーもマイクリレーをしながらダンスするのだが、そのダンスも体のキレを感じさせるようなもので、何よりもこうしたグループになるとメンバーの顔と名前が全く一致しないというか覚えられないことの方が多いのであるが、メンバーの出で立ちと歌唱法が全く違うだけに一目で見分けがつく。それはもしかしたらこのメンバーはそれぞれ違う音楽性やバックグラウンドを持っている人の集まりなのかもしれないとも思う。
それは中盤以降は緑色の髪が目を惹く星熊が前に出て台の上に足をかけるようにして歌うロックサウンドの曲が連発されていくのであるが、その星熊の歌唱力と声量には驚かされてしまう。ロックサウンドと言ってもラウド(ベガスの影響もあるように思う)と言っていいものであるために、割とそのサウンドがあれば歌唱は二の次的な感じでも成立しそうであるが、むしろそのラウドな生バンドの演奏よりもはるかにその歌声が強い。もちろん能力の高さもあるだろうけれど、そこには本人がこうした音楽が好きで、それを歌いたいから努力してこうした歌唱を手に入れたという感じがする。
その星熊は先ほどこのステージに出演していたSHADOWSのHiroのようにステージを飛び降りて客席最前の柵に立つようにして歌うという振り切れっぷりを見せるのであるが、もちろんダイバーがガンガン降ってくる最前線で歌っているわけで、それを望んでいる、わかっている人のパフォーマンスであると言える。危ないからとかそうしたことよりもとにかく衝動をぶつけないことには自分が納得できないというような。
そうしてステージに戻った星熊は
「私は20歳で音楽を始めた。遅いって言われまくったけど、それまではみんなと同じようにただただライブキッズとしてライブに行きまくってた。自分でも音楽がやりたいと思って始めた音楽で、こんなに凄い人たちと一緒にこのイベントに出ることができている。
私がそうだったように、たとえば恋人が望む人間像があったとしても、あなたは自分自身がいたいあなたのままでいてください。何かに合わせて自分を変えたりしないで、そのままでいてください」
と思いを口にして、最後に「SURVIVE」を演奏した。自分がこの30分のライブを見て、今まで見てきたアイドルグループ(本人がそう自称しなければアイドルと言うことさえ憚られるような)の中で1番ライブを見ていて「かっけぇ…」と思った。それはもしかしたら彼女たちが自分のようなただひたすらライブに行きまくっている人間がステージに立っているという存在だからかもしれない。つまりは自分の自分自身への理想像が彼女たちであるかのような。
そう思うからこそ、今フェスにはいろんなタイプのアイドルグループが出るようになっているけれど、自分はこのグループにこそもっといろんなフェスに出てその場を掻き回して欲しいなとも思うし、この日この位置にこのグループが出ていた理由がライブを見てすぐにわかったし、きっとすぐにまたどこかでライブを見ることになるはず。
1.Girls
2.Bite Off!!!!
3.Leaving
4.SWSW
5.JINX
6.GR4VITY G4ME
7.SURVIVE
18:40〜 クリープハイプ [BEGINNING STAGE]
3年前の幕張メッセでのこのイベント出演時には尾崎世界観(ボーカル&ギター)が髪を驚きの金髪にしており、その日出演していたMy Hair is Badに合わせて
「My Hair is Goldです」
と挨拶していた、クリープハイプ。今回もラウド・パンクバンドが居並ぶ中で変わることなく出演。
SEもなしにメンバーが暗いステージに登場すると最初に響くのは長谷川カオナシ(ベース)によるキーボードの音。ということはつまり「ナイトオンザプラネット」であり、尾崎はハンドマイクで歌うのであるが、曲のサウンドやリズムがゆったりと聴き入る、体を揺らすというものであるからか、ハンドマイクであっても全く花道へ進んでいこうとしないあたりは実に尾崎らしいと言えるかもしれない。
尾崎がギター、カオナシがベースという通常の編成に戻ると一転して小泉拓(ドラム)の性急なビートが走り、小川幸慈のギターがうなりまくる、ギターロックというよりもクリープハイプなりのパンクと言ってもいいような「しょうもな」で客席からたくさんの腕上がると、尾崎の歌詞の構成力や単語の選び方の極み的な曲と言ってもいいような「一生に一度愛してるよ」という曲が続き、ラウドでもなければ耳が痛くなるほどの爆音でもないけれど、そうしたバンドたちの後に聴いても全く物足りなさを感じることがないくらいにクリープハイプの鳴らしている音が力強いということを改めて感じられる。
すると不穏なサウンドが流れて一気にまた空気が変わる「キケンナアソビ」では尾崎の
「危険日でも遊んであげるから」
という音源では伏せられているフレーズがライブだからこそ響く。もちろんこの直前の2曲でロックな部分も示しているが、こんなに激しいバンドばかりの中でいつもの自分たちを貫いているというのはやはりこのバンドの唯一無二さを感じる。
それは尾崎も実感しているようで、
「インディーズの頃からずっとこのイベントには出させてもらってるんですけど、クリープハイプが出てくると急にお葬式みたいな空気になるでしょ?(笑)
(客席から拍手が起こり)拍手もおかしいだろ(笑)
でもこれからもこうやって途中で出てきては変な空気にさせるっていうポジションでずっと出演し続けたいと思います」
と、このイベントへの愛情を口にする。それは毎回断ることなく出演し続けてきたことからも明らかであるが、そんなクリープハイプだから作れる空気や景色をきっとメンバーも楽しんでいるはずだ。
そんなクリープハイプの最新曲がシンプルかつストレートに感じるギターロックサウンドに全くシンプルでもストレートでもない歌詞が乗る「愛のネタバレ」。もうその歌詞や言い回しには上手いことの宝庫と化している感じすらあるが、ネタ切れという単語の使い方も然りであるが、
「あの口コミで知りました あなたの奥の方
蜂蜜みたいな味とか 嘘ついたけど」
という歌詞はこのまま過去の名曲「蜂蜜と風呂場」を聴きたくなってしまう。
そしてカオナシによるうねるようなベースのイントロから始まる、ライブならではのアレンジが施された「イト」でのバンドのグルーヴの一枚岩感と、尾崎のその独特な声ながらも力強く伸びやかな歌唱というこのバンドのライブの地力の強さを実感させてくれると、
「今日はなんかありそうな気がする。セックスの歌をやります」
と言ってカオナシが颯爽と花道まで出てきてベースのイントロを弾いて始まったのはもちろん「HE IS MINE」であるが、この日は声出し可能公演であり、メンバーもそれをわかっている。ということはコロナ禍の中では無言を貫いてきた、それがこのバンドとしてのコロナ禍での戦い方になっていた「セックスしよう」の合唱が起きるということであり、まさに3年ぶりに客席からその合唱が響くという、こんなフレーズなのに感動的な空気に包まれる中で尾崎は腕をマイクスタンドの上に置いて目元を隠すようにしながら、
「これだ。忘れてた。思い出したよ」
と久しぶりの合唱に感極まってるのかと思いきや、
「でも今日はsagamiがスポンサーなので、アレがあればもう1回できます」
と、スポンサーであることによってこの日コンドームが無料配布されていたsagamiの効果によってまさかの2回戦「セックスしよう!」が響く。尾崎もその合唱を聞いてから最後のサビに突入すると、他のラウドバンドと全く変わらないくらいの凄まじい盛り上がりっぷりに。
「大変よくできました」
と言った尾崎も2回戦後だからか、どこかスッキリしたような顔をしていたのだが、それは当然久しぶりに観客によるこの曲の合唱を聞けたからだろう。
コロナ禍だから曲を封印するのでもなく、関係なしに声を出すのでもなく、無言で貫く光景をこの2年で何度も見てきた。それだけにこの「セックスしよう!」がこんなにもライブを一つにできるものだったということを尾崎が言っていた通りに思い出した。初めて自分がこのバンドのライブを見たインディーズ時代はこの曲でリフトやダイブが起こっていたということも。クリープハイプは他のバンドと同じように観客の声や盛り上がりを自分たちの音楽で生み出し、それを自分たちの力にしてきたバンドだったのだ。
リハ.君の部屋
リハ.おばけでいいからはやくきて
1.ナイトオンザプラネット
2.しょうもな
3.一生に一度愛してるよ
4.キケンナアソビ
5.愛のネタバレ
6.イト
7.HE IS MINE
19:25〜 BiSH [REDLINE STAGE]
ライブが始まる前にはメンバー(セントチヒロ・チッチだろうか?)による、
「私たちのライブでダイブやリフトは禁止されてます。もし1人でもそれをやったらライブはすぐに中止します」
というアナウンスが流れる。笑い声も含んでいただけにまさに今この場面で言っていることなのがわかるのだが、周りに流されることなく自分たちのルールを守り抜くということ、それはきっと今の自分たちが国民的人気を博しているポジションにいるということをわかった上でのものでこうした宣言をするのは実にカッコいいなと自分は思った。きっとライブを見にきた人に自分たちのライブでケガをする危険性があることなどをさせたくないという思いがあってのものだろうからだ。
そんなBiSHがこのイベント初出演。メンツ的にも出演してももはやなんら違和感はないが、今年で解散するために最初で最後のREDLINEである。
生バンドが演奏を開始すると、メンバーはこの日はそれぞれ色や形状が違う衣装を着て登場。それだけに遠くからでも誰なのかということが判別がつきやすいが、早くも客席ではサイリウムが登場するというのはBiSHを見るためにこのライブに来たという人がたくさんいる証拠である。
そんなライブは「GiANT KiLLERS」から始まり、総じてBiSHのライブを昔から支えてきた曲が並ぶというイメージのものだ。リンリンの絶唱とともに、今やメンバー随一の歌唱力と声量を持つメンバーとなったアユニ・Dのボーカルが響き、ハシヤスメ・アツコとモモコグミカンパニーはコンビで振り付けを踊り…とライブが進んでいく中で気付いたのは、元からハスキーな、一声聴けばこの人のものだとわかるような唯一無二の歌声を持ったアイナ・ジ・エンドの歌唱がここにきて飛躍的に向上しているのがすぐにわかる。声の良さだけではなくて、それをさらに遠くまで飛ばすことができる力を持つようになったということが見ていてすぐにわかる。それは彼女がミュージカルの主演を務めたという経験によるものかもしれない。
そんなアイナの歌声が「オーケストラ」で曲にさらに神聖な力を与え、「Primitive」というフェスでは意外な感じがする選曲をもこの広大なアリーナにスッと染み渡らせて行く。
そして「BiSH -星が瞬く夜に-」ではほぼ全員と言っていいくらいにたくさんの人が振り付けを踊っている。これだけラウドやパンクバンドばかりが集う中でこんな景色を作ることができたのは「楽器を持たないパンクバンド」と称されてもいた彼女たちの軌跡によるものだと言っていい。それくらいにこの日出演したほとんどのバンドとは対バン経験があるはずだし、そこで全身全霊のライブをやって認められてきたということだ。
そんなライブの最後に演奏されたのは「beautifulさ」で、コール的なノリ方が起こったりはしなかったけれど、開演前のアナウンスで
「皆さんの声を聞けるのを楽しみにしています」
と言っていた通りに、ライブの随所では歓声が上がり、時には合唱も起きていた。振り付けも含めてそれくらいにBiSHの音楽があらゆるロックファンに浸透しているということであるが、チッチが最後に
「どうかあなたはあなたらしく、あなたのままでいてください!」
と言った言葉は我儘ラキアの星熊の言葉とも通じていると感じた。つまりはそうして生きてきたグループがこのイベントのラインナップに名を連ねているということだ。もう残りの活動期間は迫ってきているけれど、終わってしまうその前に観客が声を出して楽しんでいる光景を彼女たちが見ることができて、少しだけでもライブを見れた者として本当に良かったなと思っていた。
リハ.FiNAL SHiTS
1.GiANT KiLLERS
2.SMACK baby SMACK
3.ZENSiN ZENREi
4.オーケストラ
5.Primitive
6.BiSH -星が瞬く夜に-
7.beautifulさ
20:10〜 HEY-SMITH [BEGINNING STAGE]
ベガスの狂騒ラウドロックから始まったこのBEGINNING STAGEもいよいよ最後のバンド。このステージを締めるのはあらゆるフェスでおなじみのHEY-SMITHである。
スクリーンにはバンドの15周年を祝うオープニング映像が流れる中でSEとともにメンバーがステージに現れると、かなす(トロンボーン)の髪色は鮮やかな赤い色に変化している。これはやはりREDLINEだから赤くしたという気合いの現れなのだろうか。
そうしてメンバーが登場すると猪狩秀平(ボーカル&ギター)が
「俺たちのREDLINEやー!」
と叫んで、なんといきなりの「come back my dog」からスタート。それによってどんな光景が客席に広がっていたのかはもう察して知るべきという感じであるのだが、Dragon Ashと同様に他のフェスの時と気合いの入りっぷりが全く違う。それがこの冒頭からよくわかる。
なので普段は開幕に演奏される、かなす、イイカワケン(トランペット)、満(サックス)のホーンセクションのサウンドが高らかに鳴り響く「Endless Sorrow」も2曲目で演奏されると、やはり声出し可能ライブだからか(ヘイスミはすでにツアーではそうなっているだろうけれど)、観客によるコーラスの合唱も響く。何というか、本当に今までのライブハウスそのままみたいなライブである。
そのまま収録アルバム「Free Your Mind」の曲順通りにフェスでは珍しい感じもするスカというよりはパンクなサウンドとリズムの「Over」が演奏されたこともあるが、どこかこの日はYUJI(ベース&ボーカル)メインボーカル曲の比率も高かったイメージがある。
一転してホーンサウンドも含めたスカのリズムで踊りまくり、勇壮なコーラスが響くというコロナ禍で生まれた曲という要素を全く感じさせない「Fellowship Anthem」から、外は雨が降っている中での屋内会場ということを忘れさせるようにホーンのサウンドも猪狩のボーカルも突き抜けるような爽やかさの「California」、YUJIのセリフ的なボーカルが強いフックになりながら、そのYUJIの少年的な歌声を感じさせる「Be The One」と、この日はMCを挟むことなく短い持ち時間の中で次々に曲を演奏していた印象だ。だからMCではいつもリズムキープをしているTask-nはMCがある方がキツイのか、無い方がキツイのかというのは少し気になるところである。
猪狩が見本を見せるかのように
「跳べ跳べー!」
とジャンプしまくってから演奏された「Jump!!」では文字通りに観客が飛び跳ねまくり、最新曲「Inside Of Me」ではヘイスミTシャツを着ているようなファンの中にはMVでの振り付けを完璧にマスターして踊っているような人も見受けられるのであるが、自分にはそうしたセンスが全くないだけに全然覚えられないし踊れない。ヘイスミのMVでこうした振り付けが登場するというのも驚きではあったけれど。
そしてYUJIのボーカルが爽やかに響く「Summer Breeze」では今年の夏にいろんな場所でこの曲を聴いた状況に想いを馳せる。来年はまたいろんな野外フェスでこの曲を聴けたらなと思っていると猪狩は、
「これだけ楽しくやってても、今日終わってSNS見たらきっとREDLINE荒れてるで。楽しかったな〜って帰って、見たくなくてもお前たちはきっとそういうのを見てしまうやろう。「まだそういうことはやるべきじゃない」みたいな書き込みを。
でもそういう時にいつだって悪く言われるのはバンドや。だから何を言われても一切気にすんな。俺たちはお前たちの自由のためなら何ぼだって言われてもええ!だからお前たちは自由でいてくれ!」
と信念を口にする。きっと今年のハジマザでもいろんなことを言われまくってきたのだろうし、そこには徐々に世の中から規制がなくなっていく中でライブだけは未だに規制がたくさんあるという不条理さを感じているところもあるだろうと思う。
でも我々が一つ勘違いしてはいけないのは何でもかんでも「猪狩がいいって言ったから」と言ってやってしまってはいけないということだ。他のライブでその場をぶち壊すようなことをしてしまったら、猪狩のその言葉すらも「バンドがやりたい放題やりたいからファンのためって言ってるだけ」みたいにきっと言われるようになってしまう。いつだってカッコいい男としての姿を我々に見せてきてくれたボーカルでありバンドだからこそ、そこに我々が泥を塗るような真似だけはしてはいけないと思っている。
そんな言葉から繋がるように演奏されただけに、ホーン隊の高らかなサウンドも、YUJIのコーラスもバンド全てが我々のためにこの曲を鳴らしてくれているかのような気がしてくる「Don't Worry My Friend」から、イイカワケンが観客を煽りまくる一方で満がサックスを置いてステージ上を不審者のように歩き回るのが面白いハードコアパンクな「DRUG FREE JAPAN」へと続き、なんと最後はこの日2回目の「come back my dog」が演奏され、もちろん1回目を上回る暴れっぷりに。もうこの曲が2回演奏されたということがこの日のヘイスミのライブがどういうものだったのかということを最もわかりやすく示していた。
結果的にSNSが荒れていたのかはわからない。ほとんどTLを見れていないし、検索もしていないから。でもリスクは確かにあるかもしれないけれど、こうした楽しみ方をするのが感染率を高くするのかどうかも誰にもわからないことだと思う。
ただ猪狩の言葉や想いはせめてここにいた人だけには真っ直ぐに届いて欲しいと思うとともに、その猪狩とバンドの信念を汚すことがないように、自分は何としても感染しないまま今年を乗り切って、生き延びてやろうと思っている。
1.come back my dog
2.Endless Sorrow
3.Over
4.Fellowship Anthem
5.California
6.Be The One
7.Jump!!
8.Inside Of Me
9.Summer Breeze
10.Don't Worry My Friend
11.DRUG FREE JAPAN
12.come back my dog
20:55〜 The BONEZ [REDLINE STAGE]
これだけのバンドが居並ぶ中での今回のトリはThe BONEZ。それこそDragon Ashなんかもいる中でこのバンドがトリとは?と最初は思っていたけれど、それを覆すようなライブを我々は見ることになる。BiSHが終わったあたりで帰って行った(翌日が平日なだけに仕方ない部分もあるが)人もたくさんいただけに、スタンド席はかなり人が減ったような印象だ。
メンバー4人がステージに登場すると、ダブルヘッダーのT$UYO$HI(ベース)ももちろん衣装をこのバンド仕様に変えている中で、髪色が緑になったJESSE(ボーカル)がメンバーの名前を入れたリリックを歌うことによって改めてこのバンドで生きていくことを示し、タイトルフレーズではメンバーに合わせて思いっきり飛び跳ねながら観客が声を上げて歌う「We are The BONEZ」からスタートし、JESSEの花道を歩きながらの歌唱も、ZAX(ドラム)とT$UYO$HIのリズムも、KOKIの切り裂くようなギターもさらに荒く、さらに強く大きくなる「Louder」、さらには
「この4人で初めて作った曲!」
と紹介された、ラウドでありながらもメロディー自体は一回聴けば口ずさめるほどにキャッチーな「Numb」という比較的近年リリースの曲を主体にした前半を終えるとJESSEは
「やっぱり、みんなの声が聞こえるっていうのは凄く力をもらえる感じがする」
と声出し可能公演の感慨を口にする。
そんな自分たちの生き様を止まることがない車に喩えた「Rusted Car」ではJESSEが思いっきり助走をつけて花道を走り、そのまま柵すらも飛び越えて客席前までジャンプするという、見ていて「え!?」と思わざるを得ないようなパフォーマンスを見せる。下手したら骨折くらい平気でしてしまいそうな距離の跳躍であったが、JESSEはそのまま客席の柵に身を乗り出すようにして歌ってから平然とステージに戻っていった。やっぱりこうしたところを見ていても只者じゃないというのはよくわかる。
そんなJESSEがギターを持つと、
「今日はちょっと特別な思いがあって…。先に役目を終えて、そういう人しか行けない場所に行ってしまった、大切な友人の家族が今日見に来てます。その人たちに向けて」
と言い、海を真上から見下ろしたりという壮大な自然の景色が映像として映し出される中で演奏されたのは、Pay money To my PainのK、つまりはZAXとT$UYO$HIにとってのかつてのボーカリストへの思いを歌った「Sun forever」。ここまでひたすらに激しく盛り上がりまくっていた客席もこの曲ばかりは聴き入らざるを得なかった。それぞれPTPやKへの思い入れは違うだろうけれど、その存在に思いを馳せながら、今こうしてZAXとT$UYO$HIがまたバンドをやっていて、そのバンドのライブを見ることができている幸せを噛み締めているかのような。1番辛い思いをしたであろう2人が誰よりも力強く演奏していたのがより一層感じるものがあった。泣かせようなんて絶対に思ってやってないのはわかるけれど、その思いが伝わってくるから泣けてきてしまうのだ。
そんな特別な時間を挟んでから、ライブは「Thread & Needle」のついに観客の声が帰ってきたコーラスの大合唱で大団円へと向かっていく。声が出せなかった中津川THE SOLAR BUDOKANの時ですら感動しまくっていたこの曲がこうして合唱が響いて感動しないわけがない。最初は
「聞こえねえぞ!」
と煽っていたJESSEも最後には
「受け取ったー!」
と言ってその観客の力をさらに自分たちのものへと昇華していく。本当に凄いバンドがこうしてこの日を締めようとしてくれているのがわかる。
そしてJESSEは
「今日、このライブを見てる何千人かのうち、小学生とか中学生くらいの少年少女が何年後かにバンドを組んで欲しいなって」
と言うと、スタンド席にいる少年を見つけ、その少年をステージにあげて自分の隣で花道の最先端で肩を組むようにして「SUNTOWN」を歌う。歌いながらもJESSEは少年にちゃんとこの景色を見ろ、とばかりに前を向かせる。その少年の目にはどんな景色が写っていたんだろうか。バンドマンみたいに慣れていない、初めて自分の視界に何千人もの人がいて、その人たちがみんな自分のことを見ている感覚。最初はガチガチだった少年も最後にはJESSEとグータッチをして、抱き合ってからステージを去る。その際にKOKIも少年を抱きしめていた。JESSEの思いはそのままメンバー全員の思いということだ。だからThe BONEZのライブはこんなにも凄い。
「日本代表のロックバンド、The BONEZでした!」
と最後に挨拶をした時に、本当に日本代表と言っていい、そしてこのメンツの中でもトリをやるべきなのはやっぱりこのバンドだったなと思えた。
JESSEもまぁ色々あった。日本はなかなかに厳しい国であるだけに、そうした過ちを犯した人が戻ってきづらいところもあるし、実際にかつて出演したりしていたフェスから声が掛からなくなったりもしたのかもしれない。
でもこうしてトリを任せたり、ステージからトリへのエールを送ってくれたりと、今でもJESSEのことを心から信頼してくれている人がたくさんいる。それは観客もそうだ。その思いに応えるにはカッコいいバンドであり続けるしかないことを本人もわかっていると思うが、この日のライブはこれからもJESSEを信頼するに足るような、というかロックバンドとしての、バンドマンとしての優しさしかないような(このライブを見ていたkjは号泣していたらしい)、信頼せざるを得ないような素晴らしさだった。いつかあの少年と対バンする時まで、ずっとこのままカッコいいバンドでい続けていて欲しい。
1.We are The BONEZ
2.Louder
3.Numb
4.Rusted Car
5.Sun forever
6.Thread & Needle
7.SUNTOWN
楽しかったけれど、田邊や猪狩が言っていたように、ただ楽しかっただけだったらそれはこの日限りのものになってしまうかもしれない。そうならないために、またこうしてこれが見たかったんだと思えるような楽しさを味わうためにはどうしていくべきか。それだけは忘れずにこれからもライブに行き続けたいけれど、一つ確かなのはどれだけ時代が変わっても自分はやっぱりこうしたライブの景色の方が好きだということだ。それを3年振りに思い出せたのはこのREDLINEがこの日開催されたからだ。この日が原因でもう開催できないということにならない限りは、また来年もどうかよろしく。