夜の本気ダンス 「All Might Gyro TOUR」 @LIQUIDROOM 11/18
- 2022/11/19
- 19:13
コロナ禍に入ってから、ギター、ベース、ドラム以外のサウンドを自分たちのダンスロックに取り入れて進化を果たしてきた、夜の本気ダンス。
ホールでのワンマンもやるようになったバンドは今再び自分たちの育ってきたライブハウスを巡るようにして、最新ミニアルバム「armadillo」のリリースツアーは全国を細かく回るものになった。そのツアーのセミファイナルとなるのがこの日の恵比寿LIQUIDROOMのワンマンである。
開演ギリギリに着くとすでに客席は超満員になっているあたりはさすがであるし、その誰もが踊りたくて仕方ないという感じで待ち構えている中、19時を過ぎたところで場内がスッと暗転して拍手が湧き上がる中、おなじみの「ロシアのビッグマフ」のSEでメンバーが順番にステージに。なかなか今は「ロシア」という単語を使いにくい(特に作品上では)ご時世であるが、このバンドが変えずにいるのは何も考えていないわけではなくて、むしろそうした世界の状況が早く落ち着いて欲しいという意思とともに自分たちの作った音楽への誇りを持っているからだと自分は思っている。そこには無下にその国に生きる人全てを否定しないということも。
4人が楽器を持っておなじみのライブ始まりの合図の音を鳴らして米田貴紀(ボーカル&ギター)が
「京都のバンド、夜の本気ダンスです」
と挨拶すると、SNS上などではすでに目にしていたものの、実際に初めて見ると違和感が凄まじい鈴鹿秋斗(ドラム)の短髪姿に驚く中で、その鈴鹿の刻むダンスビートに合わせて早くも手拍子が起こる「Sweet Revolution」でスタートすると、音源よりめちゃくちゃ速くなっているリズムにも驚かされる。それはこのツアーを経てきたことによってマイケル(ベース)とのグルーヴがさらに強くなっていることの証明でもあるが、その速さがのっけから我々をフルスロットルで踊らせてくれる。もはや機械的なリズムとしての四つ打ちとは全く違う、魂のダンスロックとしての四つ打ちである。個人的にはこの曲はこのバンドの中でも屈指の、至極のメロディーがダンスビートと融合した曲という、夜ダンの一つの到達点的な曲だと思っているだけにこうしてライブで聴けるのは実に嬉しい。フェスではあまりやらない曲だからこそ。
すると早くも「armadillo」の中から「STARLET」が演奏されるのであるが、タイトル通りに煌めくような照明も含めてこのダンスサウンドが光であるということを示すかのような、新作の中では夜ダンのストレートとも言えるような曲である。それだけにこの序盤に演奏されたのだろうし、ほとんどの人がライブで聴くのが初めてとは思えないくらいに腕を挙げている。それはツアーを経てきたことによって曲が完全にバンドの中に入っているからだろう。それくらいに違和感なく「Sweet Revolution」と繋がっている。
するとここで早くもバンド最大の飛び道具である鈴鹿のMCへ。自らツアー中に髪をバッサリ切ったことに触れながら、
「いつも東京はツアーファイナルやから、こうしてセミファイナルなのが変な感じやわ!みんなも完全にファイナル慣れしてる感じの人たちやもん!ちょっとセミファイナルっていうことを意識した拍手してみて!(まばらな拍手を聞いて)
セミファイナルをそんなもんやと思ってるんかー!(笑)
それなら俺たちがファイナルみたいなセミファイナルのライブをやればいいんやろ!」
とテンションも絶好調であることを示すと、米田が
「ラブラブしようぜ!」
と言って始まった「LOVE CONNECTION」ではイントロで西田一紀(ギター)が飛び跳ねまくるのであるが、あまり身体能力が高そうには見えない(むしろ1番文化系な感じすらする)西田がこんなに高く跳べるのか!と思うくらいにそのジャンプは高い。なんなら演奏だけではなくそうしたメンバーのフィジカルすらも進化しているかのように。そしてそれはギターだけではない西田の観客への愛情の示し方なんだろうと思う。
すでに演奏された「STARLET」を最初に聴いた時に浮かんだのが、「SMILE SMILE」を彷彿とさせる曲だなというもので、それは曲から発せられる光のようなオーラがそう思わせるところもあるのだが、先の見えないコロナ禍の中で笑顔になってもらえるようにという想いを持って作られたこの曲は音源では高らかにホーンの音が入っていたりするのだが、ライブハウスツアーだからこそか、昨年にホールで聴いた時よりもそうした同期のサウンドの要素は薄くなっている気がした。その代わりに米田が体をくねらせながらハンドマイクで歌うからこそ、ウワモノを1人で担う西田のギターがそのサウンドだけでこの曲が成立するくらいに豊かなものになっている。新作曲が馴染んでいくのはもちろんだが、そうでない曲たちもこのツアー内でブラッシュアップされている。その辺りが夜ダンのツアーバンド、ライブハウスバンドたる所以だ。
そうして序盤から独特の色気とサウンドを振り撒く西田がMCをするのもワンマンだからこそであるが、
「素敵な街に来ることができまして」
とやはり独特な、というか1人だけ違う時空の中で喋っているような語り口で話し始めると鈴鹿とマイケルの双方から
「それは東京で言うことちゃうやろ!地方の街で言うやつや!」
と突っ込まれながらも、
「僕は「東京ラブストーリー」が好きだったりするんで、待ち合わせの舞台になってる恵比寿でライブできるのは嬉しいですね。
後はZEEBRAさんがキスしてる写真撮られたのも恵比寿でしたね(笑)」
と恵比寿について語るとすぐさまマイケルから
「ようそんなゴシップがすぐに出てくるな!」
と突っ込まれる。そのボケとツッコミのバランスと間の完璧さは4人で漫才グループをやっているかのようであり、バンドの音の阿吽の呼吸はここにも生かされているのかもしれない。それらのエピソードをもってして、西田いわく恵比寿は「愛の街」だということである。
するとここからは早くもノンストップダンスアレンジによる「本気ダンスタイム」に突入。本家の「無限大ダンスタイム」のDOPING PANDAが復活した時にライブに花を送っていたバンドであるだけに誰しもがチケットを取れそうな会場での2マンが待たれるところであるが、その本気ダンスタイムの始まりを告げるのは同期によるイントロのサウンドが我々を新たな夜ダンの世界へと誘う「審美眼」。基本的にはライブハウスならではの派手な演出はほぼないストイックなライブではあるが、薄暗い中でメンバーをほのかに照らす緑色の照明がこの曲の少し不穏とも言える空気を作り出す中、米田は腕を左右に振りながらファルセットな歌唱も実に美しく響かせる。この800人くらいはいるであろう会場の中で最もこのダンスサウンドによって解放されているのは米田であろうし、その解放された姿が我々をもより解放させてくれる。だからこそタイトル的にもどこか俯瞰してステージを見たくなるこの曲でたくさんの人が飛び跳ねていたのだろう。
そんな曲のアウトロからイントロにかけては鈴鹿のドラムが繋ぐと、その鈴鹿によるラップもすっかり定番になった「Movin'」へ。髪が短くなったので音源でラップをしているCreepy NutsのR-指定らしさはなくなったが、それは名実ともにこの曲のラップが鈴鹿のものになったと言っていい…のかもしれない。この曲がこんなにライブ定番になったのは間違いなくキメを刻みながらラップをするという技術を習得した鈴鹿の力によるものであるが。
そんな「Movin'」のアウトロではマイケルのベースから西田のギターへと繋がるようにソロが展開されると、その西田のギターのカッティングが曲と曲を繋げるものになるというのは、ギターもまたリズム楽器であるということを教えてくれるかのようで、そのカッティングがキレのありすぎるリフへと変化する「B!tch」がアジカン「N.G.S」(トリビュートアルバムで夜ダンがカバーしている)を彷彿とさせるオリエンタルなダンスロックサウンドで踊らせまくる。夜ダンのライブハウスでのライブがこんなに熱いものだったのだということをその姿と音で思い出させてくれるように。
さらにはタイトル通りに青い照明がメンバーを照らす中で西田が米田とともに飛び跳ねまくる「NAVYBLUE GIRL」へ。その姿はまるで誰が1番高く跳べるかということを観客含めて競い合っているかのようであるが、この曲のサビでの視界が広がっていくようなメロディーのスケールは何度聴いても夜ダンをもっと先の、次の規模の場所で見たくなる。もちろんどこよりもライブハウスのバンドであるということはそういう場所に立っても変わらないはずである。
曲と曲の繋ぎをメンバーの演奏ではなくて同期の音が担うというあたりからしてもこの本気ダンスタイムもまた新たな次元に突入してきていることがわかるのは新作からの「VANDALIZE」であるが、昨年のホールでもお披露目的に演奏されていた時からどこかラテンやサルサのような要素を感じる曲だったのが、そうした音楽が持つ情熱はそのままに、そうした要素よりもストレートなロックバンドらしさを感じる。それもまたライブハウスだからこそだろうけれど、やはりライブハウスは普段とは違う景色を我々に見せてくれて、違う世界へ我々を連れて行ってくれる場所だなと思うし、それは夜ダンのダンスロックもそうしたものであるということである。
そんな「VANDALIZE」のアウトロからイントロへがこんなにキレイに繋がるものかと思うのは「Ain't no magic」で、米田は腕の動きによって観客を操っているかのようですらあるのだが、それでも観客は自発的に、自由に踊り飛び跳ねまくる。そこまで激しく盛り上がるような感じではなかったこの曲すらもこうしたノリになっているというあたりにこのツアーでの夜ダンの進化を感じざるを得ないし、実際にこの本気ダンスタイムももはやこれをツアー以外のライブでもやって欲しいと思うくらいに完成されていた感すらあった。
そんな本気ダンスタイムはここまでで、踊りまくった余韻を噛み締めるように演奏されたのは新作からの「Wall Flower」なのだが、この曲は今の夜ダンがダンスではなくて歌とそれが乗るメロディーに向き合った曲だと思っている。誤解を恐れずに言うとポップスを作ったと言っていいような。だからこそこの曲では体を揺らしながらも聴き入っている人がたくさんいたし、やはり夜ダンの何が踊れるかというとリズムの強さはもちろんメロディーがキャッチーだからだということがわかる。これまでにもこうしたタイプの曲はあったが、その最新系にして最も洗練された曲と言っていいだろう。
さらに新作からは「エトランゼ」という、深い泥濘の中から光の射す方へと手を伸ばしてそれを手繰り寄せるかのような曲も演奏される。でもやはりそのために必要なのはダンスであるということを示すような歌詞と構成でもあるために曲が進むにつれて観客の体が動いていく。ともすれば難解な曲になりそうなものであるが、それを全くそうは思わせないアウトプットの仕方はこのバンドには曲を届けたい人たちの顔や姿が明確に浮かんでいるからだろう。
そんな最新作の中に突如としてごく初期の歌モノの「Candy tune」が入ってくるのだから驚きであるのだが、どこか牧歌的とすら言えるようなこの曲が挟まれることによって徐々に光が近づいてきているような、そんな流れやストーリーを感じさせるのであるが、タイトルからして再び突き落とすように演奏されたのはやはり新作からの「Falling Down」。
再び西田が飛び跳ねまくると、マイケルも逆サイドで飛び跳ねまくるのであるが、「armadillo」の中でも最もシャープなギターサウンドで踊らせる曲に乗る歌詞が
「地獄の沙汰もリフ次第」
というキラーフレーズなのが全てを表していると言ってもいい。実際にこの曲を始めとして夜ダンの曲の最もフックになっている部分はクセになって仕方がないリフであると言えるからだ。特に近年はサウンドの幅も広がりながらも西田のリフ名人っぷりが発揮されている曲が実に増えてきている。つまりは地獄の沙汰も西田次第と言い換えてもいいのかもしれない。それくらいのギタリストがこのバンドには在籍している。
「満員御礼ありがとうございます」
と今度は米田が満員の客席を見渡して言うと、
「前回リキッドルームでやった時は配信ライブでした。観客0人。誰に向けてやってるのか全然わからなかった。もちろんカメラの向こうにはみんながいるって思ってはいたけど。でも今日はちゃんと皆さんが前にいる。やっぱりこうじゃないと」
と、満員のリキッドルームでライブができることの喜びを語り、
米田「僕らは京都に住んでますけど、東京っていろんなバンドがみんな上京してきますよね。○デリックとかジ・○○シガレッツとか(笑)」
鈴鹿「mihimaru GTもそうやんな!」
マイケル「お前、それ○に引っ張られてるだけやん!」
鈴鹿「本当は上京したかどうか知りませんでした!」
と脱線しながらも、
米田「このツアー14本回ってきて。東京、恵比寿みたいな交通の便が良い、電車がすぐに来るような場所にもライブしに来ますし、1時間に1本しか電車が来ないような場所にもライブしに行きますんで、またライブで会いましょう」
鈴鹿「でもみんなは宇治には来なくていいから!(笑)京都には来た方がいいけど!」
米田「宇治には来なくていいですけど、インディーズの時のレーベルも今のレコード会社も東京の会社で。今僕らがこうしてライブができているのは東京が見つけてくれたからです」
と、宇治には京都大作戦っていう行った方がいいイベントもあるんですけどとも思いながら東京への思いを口にする。自分が夜ダンのライブを初めて見たのも東京は下北沢の小さなライブハウスだった。東京に来れるバンドだからこうして何度もライブを見ることができたのだ。
そんなMCは終盤突入の合図ということで、米田がネクタイを外しての「fuckin' so tired」ではその米田が見た目のスタイリッシュさとは裏腹にステージ左右に移動しながら踊りまくる。マイケルはベースを立てるようにして膝をつくようにして演奏し、西田もガンガン前に出てきてギターを弾きまくると、ここで再び初期のダンスナンバーである「Afro」へ。初期ならではのシンプルな四つ打ちのダンスチューンであるが、
「手を叩け」
のフレーズに合わせて観客も米田と一緒になって手を叩くと、サビでは「1 2 3」のカウントに合わせて指でカウントする光景が広がる。新作にはこうしたタイプの曲がないからこそ、こうしたストレートなダンスチューンでより爆発力を感じて踊りまくることができる。
それが最大限に爆発するのはイントロの演奏の激しさがそのまま会場全体の熱気になっていく「WHERE?」で、米田がメガネを吹っ飛ばしてしまうくらいにその熱気をこれ以上ないくらいに感じられるのは満員のライブハウスだなと思える。西田が強烈なギターソロを弾きまくると、マイケルによる最後のサビ前の
「踊れ恵比寿!」
も場所が3文字であるだけに実に違和感なく決まる。そしてその一言によって最後のサビでは観客がさらに踊りまくる。
そんな終盤の終盤にけたたましい同期のサウンドが流れてから始まったのは不穏なサウンドの「GIVE & TAKE」であるのだが、そうしたここまでのダンスロックとは全く異なるタイプの曲でも観客がノリノリで飛び跳ねまくっている。リリース時はもっとクールな曲というイメージがあったが、それすらも飛び越えるくらいの熱量をこの曲とバンドは手に入れている。そしてそれはこれから先にさらに様々なタイプのダンスサウンドに挑戦していく上での大きな自信と確信になっていくはずだ。同期を使っても、高速四つ打ちでなくてもこれだけ観客を踊らせることができるという。
そんな新たな夜ダンのこの先への期待に胸が膨らむ中で最後に演奏されたのはこの日のライブ、さらにはこのツアーが本当に楽しいものであったことをバンドにも我々にも刻み込むようにして演奏されたのは「Fun Fun Fun」であり、
「駆け出す僕らを止めないで」
「旅立つ僕らを止めないで」
というとびきりキャッチーなメロディーに乗るサビのフレーズはそのままこれから先もシーンを駆け抜けていく意思を示すかのようでもあり、このツアーが終わってもまた新たな旅(=ツアー)に出て行くというバンドの生き様を示すかのようでもあった。つまりこのバンドにも我々にももっと「Fun」なことが待っているということだ。それくらいにこの凄まじい楽しさはこれまでのものを超えていた。だからこそこれから先もこの日を超えてくる楽しさが間違いなく待っているということだ。
アンコールで再び4人が登場すると、マイケルがツアーファイナルのアンコールのテンションで喋り始めたことによって
米田「下手側からどんどんファイナルになっていくとかないから!」
と言いながら、そのマイケルが髪を少し切ったことによって
マイケル「マネージャーの吉田さんも「マイケルと同じ髪型にしようかなぁ」って言ってたで。だから俺になんかあった時は吉田さんが代わりにベース弾いてもらう(笑)」
鈴鹿「髪型以外全然違うわ!(笑)」
西田「実は僕も山崎賢人みたいにしよ思って前髪少し切ったんですよ。誰も気付いてないけど(笑)」
米田「えっ…誰か気付いてた?(笑)」
と、西田の髪型の変化は誰からも気付かれていないという悲しいことに。それによって西田は
「偏見やけど賢くない人は長袖を腕まくりしてるイメージあるわ」
と、ライブの1時間以上前から腕まくりしていたという、長袖を着ている意味を問われる鈴鹿にツッコミを入れ、本編のテンポの良さが信じられないくらいに喋りまくるのであるが、それでもこの日はまだマシなようで、ここまでの13本を全て合わせたら2時間以上喋っているかもしれないとのこと。
そんなバンドは来年結成15年を迎えるということで、マイケルが加入したのがシーズン2とするなら現在はシーズン14というアメリカのドラマばりの壮大なストーリーを生きるバンドになっているのだが、来年は15周年を祝うようなことをたくさん計画しており、
米田「みんな来年は有給を我々のために使いまくれるようにしておいてください(笑)」
鈴鹿「なんなら今のうちに土日とかに出勤しておき!クリスマスとか代わりに出勤しておいて来年代わりに休んどき!(笑)」
と、デカい記念ライブ1本をドカンとやるというだけのものではなさそうなあたりが期待を抱かせる。個人的には日本武道館や、あるいは関西のバンドであるだけに大阪城ホールでのワンマンもあるんじゃないかと思っているのだが、それが叶うのか、あるいはその予想は心地よく裏切られるのだろうか。
そうして喋りまくった後には
米田「「喋りが長い!」とか「早く曲やれ!」っていう声とかも来年あたりには出せるようになったらいいですね」
マイケル「もうそれはヤジみたいなもんやけどな(笑)」
と夜ダンなりに早く観客が声を出せることを願いながら、
「とっておきの2曲」
として、ライブ本編のスタートで鳴らされるイントロが再び始まったという感覚にさせるとともに、やはりライブハウスツアーを経てきたことによってかさらにテンポが加速していることによってまさにクレイジーに踊りまくる「Crazy Dancer」へ。ただ踊らせまくるのではなくて、この曲のシャープなギターと引き締まってスピードが増したリズムは夜ダンがカッコいいロックバンドであることを示してくれるような曲だ。だからこそ単純に踊るというよりも、その姿や鳴らしている音に反応して踊らざるを得ないと言う方が正しいと思っている。
そして米田がハンドマイクになり、そんなにも!?と思うくらいに精神を解放するように踊りまくりながら歌うのは「TAKE MY HAND」。ここに来てこのキラーチューンがまだ残ってるというあたりに夜ダンが15年間続いてきたこと、その活動歴の中で生み出してきた名曲の多さを改めて実感せざるを得ない。
そんなここまでの全てを振り絞るかのように米田は再びメガネを落とすくらいに踊りまくりながら歌い、西田は間奏でギターをマイクスタンドに擦り付けるようにして音を出す。鈴鹿のドラムは手数を増し、マイケルのベースは曲にスピードを与える。そんな4人の生き様がこの曲では確かに鳴っていた。それは音からこの4人の人間性が鳴っていたということ。そんな面白くて優しい4人が鳴らしているからこそ、このライブは、夜ダンのライブはやはり本当に楽しいのだ。それを示した、本当にツアーファイナルのようなセミファイナルだった。
しかし演奏が終わっても鈴鹿はフロント3人のマイクを使って
「社会人は有給を取って、学生の人は今のうちに単位取っておいて!」
「でも単位取れなかったら留年すればいいから!(笑)」
と無責任極まりないことを口にし、最後は終演BGMが流れて口ずさむかと思いきや、歌わずにステージを去って行った。去り際まで面白いというのはもはや反則なんじゃないだろうか。
夜ダンのライブを見終えた後にいつも思うことがある。それは「なぜ我々はこうして踊るのか」ということだ。普段生活していてこうしてライブのように踊っていたら間違いなく不審者扱いされてしまうくらいの激しさで。
それはやっぱりそうした踊ることのない生活をどうしようもないくらいに退屈に感じてしまうから。その退屈を「楽しい」に変えてくれるのが音楽であり、ダンスであり、夜ダンのライブであるということだ。
自分の好きな歴史上の偉人の辞世の句に「面白き こともなき世を 面白く」という言葉がある。自分が夜ダンのライブを見た後に抱く「なぜこうして我々は踊るのか」という問いに対する答えはその句である。普通に生きていても面白いことなんかほとんどない。だからこうやってライブに来る。そこで踊る。床が見えないくらいに満員のライブハウスでの夜の本気ダンスのワンマンはそれが人生を楽しいものにしてくれるということを教えてくれるのだ。
1.Sweet Revolution
2.STARLET
3.LOVE CONNECTION
4.SMILE SMILE
5.審美眼
6.Movin'
7.B!tch
8.NAVYBLUE GIRL
9.VANDALIZE
10.Ain't no magic
11.Wall Flower
12.エトランゼ
13.Candy tune
14.Falling Down
15.fuckin' so tired
16.Afro
17.WHERE?
18.GIVE & TAKE
19.Fun Fun Fun
encore
20.Crazy Dancer
21.TAKE MY HAND
ホールでのワンマンもやるようになったバンドは今再び自分たちの育ってきたライブハウスを巡るようにして、最新ミニアルバム「armadillo」のリリースツアーは全国を細かく回るものになった。そのツアーのセミファイナルとなるのがこの日の恵比寿LIQUIDROOMのワンマンである。
開演ギリギリに着くとすでに客席は超満員になっているあたりはさすがであるし、その誰もが踊りたくて仕方ないという感じで待ち構えている中、19時を過ぎたところで場内がスッと暗転して拍手が湧き上がる中、おなじみの「ロシアのビッグマフ」のSEでメンバーが順番にステージに。なかなか今は「ロシア」という単語を使いにくい(特に作品上では)ご時世であるが、このバンドが変えずにいるのは何も考えていないわけではなくて、むしろそうした世界の状況が早く落ち着いて欲しいという意思とともに自分たちの作った音楽への誇りを持っているからだと自分は思っている。そこには無下にその国に生きる人全てを否定しないということも。
4人が楽器を持っておなじみのライブ始まりの合図の音を鳴らして米田貴紀(ボーカル&ギター)が
「京都のバンド、夜の本気ダンスです」
と挨拶すると、SNS上などではすでに目にしていたものの、実際に初めて見ると違和感が凄まじい鈴鹿秋斗(ドラム)の短髪姿に驚く中で、その鈴鹿の刻むダンスビートに合わせて早くも手拍子が起こる「Sweet Revolution」でスタートすると、音源よりめちゃくちゃ速くなっているリズムにも驚かされる。それはこのツアーを経てきたことによってマイケル(ベース)とのグルーヴがさらに強くなっていることの証明でもあるが、その速さがのっけから我々をフルスロットルで踊らせてくれる。もはや機械的なリズムとしての四つ打ちとは全く違う、魂のダンスロックとしての四つ打ちである。個人的にはこの曲はこのバンドの中でも屈指の、至極のメロディーがダンスビートと融合した曲という、夜ダンの一つの到達点的な曲だと思っているだけにこうしてライブで聴けるのは実に嬉しい。フェスではあまりやらない曲だからこそ。
すると早くも「armadillo」の中から「STARLET」が演奏されるのであるが、タイトル通りに煌めくような照明も含めてこのダンスサウンドが光であるということを示すかのような、新作の中では夜ダンのストレートとも言えるような曲である。それだけにこの序盤に演奏されたのだろうし、ほとんどの人がライブで聴くのが初めてとは思えないくらいに腕を挙げている。それはツアーを経てきたことによって曲が完全にバンドの中に入っているからだろう。それくらいに違和感なく「Sweet Revolution」と繋がっている。
するとここで早くもバンド最大の飛び道具である鈴鹿のMCへ。自らツアー中に髪をバッサリ切ったことに触れながら、
「いつも東京はツアーファイナルやから、こうしてセミファイナルなのが変な感じやわ!みんなも完全にファイナル慣れしてる感じの人たちやもん!ちょっとセミファイナルっていうことを意識した拍手してみて!(まばらな拍手を聞いて)
セミファイナルをそんなもんやと思ってるんかー!(笑)
それなら俺たちがファイナルみたいなセミファイナルのライブをやればいいんやろ!」
とテンションも絶好調であることを示すと、米田が
「ラブラブしようぜ!」
と言って始まった「LOVE CONNECTION」ではイントロで西田一紀(ギター)が飛び跳ねまくるのであるが、あまり身体能力が高そうには見えない(むしろ1番文化系な感じすらする)西田がこんなに高く跳べるのか!と思うくらいにそのジャンプは高い。なんなら演奏だけではなくそうしたメンバーのフィジカルすらも進化しているかのように。そしてそれはギターだけではない西田の観客への愛情の示し方なんだろうと思う。
すでに演奏された「STARLET」を最初に聴いた時に浮かんだのが、「SMILE SMILE」を彷彿とさせる曲だなというもので、それは曲から発せられる光のようなオーラがそう思わせるところもあるのだが、先の見えないコロナ禍の中で笑顔になってもらえるようにという想いを持って作られたこの曲は音源では高らかにホーンの音が入っていたりするのだが、ライブハウスツアーだからこそか、昨年にホールで聴いた時よりもそうした同期のサウンドの要素は薄くなっている気がした。その代わりに米田が体をくねらせながらハンドマイクで歌うからこそ、ウワモノを1人で担う西田のギターがそのサウンドだけでこの曲が成立するくらいに豊かなものになっている。新作曲が馴染んでいくのはもちろんだが、そうでない曲たちもこのツアー内でブラッシュアップされている。その辺りが夜ダンのツアーバンド、ライブハウスバンドたる所以だ。
そうして序盤から独特の色気とサウンドを振り撒く西田がMCをするのもワンマンだからこそであるが、
「素敵な街に来ることができまして」
とやはり独特な、というか1人だけ違う時空の中で喋っているような語り口で話し始めると鈴鹿とマイケルの双方から
「それは東京で言うことちゃうやろ!地方の街で言うやつや!」
と突っ込まれながらも、
「僕は「東京ラブストーリー」が好きだったりするんで、待ち合わせの舞台になってる恵比寿でライブできるのは嬉しいですね。
後はZEEBRAさんがキスしてる写真撮られたのも恵比寿でしたね(笑)」
と恵比寿について語るとすぐさまマイケルから
「ようそんなゴシップがすぐに出てくるな!」
と突っ込まれる。そのボケとツッコミのバランスと間の完璧さは4人で漫才グループをやっているかのようであり、バンドの音の阿吽の呼吸はここにも生かされているのかもしれない。それらのエピソードをもってして、西田いわく恵比寿は「愛の街」だということである。
するとここからは早くもノンストップダンスアレンジによる「本気ダンスタイム」に突入。本家の「無限大ダンスタイム」のDOPING PANDAが復活した時にライブに花を送っていたバンドであるだけに誰しもがチケットを取れそうな会場での2マンが待たれるところであるが、その本気ダンスタイムの始まりを告げるのは同期によるイントロのサウンドが我々を新たな夜ダンの世界へと誘う「審美眼」。基本的にはライブハウスならではの派手な演出はほぼないストイックなライブではあるが、薄暗い中でメンバーをほのかに照らす緑色の照明がこの曲の少し不穏とも言える空気を作り出す中、米田は腕を左右に振りながらファルセットな歌唱も実に美しく響かせる。この800人くらいはいるであろう会場の中で最もこのダンスサウンドによって解放されているのは米田であろうし、その解放された姿が我々をもより解放させてくれる。だからこそタイトル的にもどこか俯瞰してステージを見たくなるこの曲でたくさんの人が飛び跳ねていたのだろう。
そんな曲のアウトロからイントロにかけては鈴鹿のドラムが繋ぐと、その鈴鹿によるラップもすっかり定番になった「Movin'」へ。髪が短くなったので音源でラップをしているCreepy NutsのR-指定らしさはなくなったが、それは名実ともにこの曲のラップが鈴鹿のものになったと言っていい…のかもしれない。この曲がこんなにライブ定番になったのは間違いなくキメを刻みながらラップをするという技術を習得した鈴鹿の力によるものであるが。
そんな「Movin'」のアウトロではマイケルのベースから西田のギターへと繋がるようにソロが展開されると、その西田のギターのカッティングが曲と曲を繋げるものになるというのは、ギターもまたリズム楽器であるということを教えてくれるかのようで、そのカッティングがキレのありすぎるリフへと変化する「B!tch」がアジカン「N.G.S」(トリビュートアルバムで夜ダンがカバーしている)を彷彿とさせるオリエンタルなダンスロックサウンドで踊らせまくる。夜ダンのライブハウスでのライブがこんなに熱いものだったのだということをその姿と音で思い出させてくれるように。
さらにはタイトル通りに青い照明がメンバーを照らす中で西田が米田とともに飛び跳ねまくる「NAVYBLUE GIRL」へ。その姿はまるで誰が1番高く跳べるかということを観客含めて競い合っているかのようであるが、この曲のサビでの視界が広がっていくようなメロディーのスケールは何度聴いても夜ダンをもっと先の、次の規模の場所で見たくなる。もちろんどこよりもライブハウスのバンドであるということはそういう場所に立っても変わらないはずである。
曲と曲の繋ぎをメンバーの演奏ではなくて同期の音が担うというあたりからしてもこの本気ダンスタイムもまた新たな次元に突入してきていることがわかるのは新作からの「VANDALIZE」であるが、昨年のホールでもお披露目的に演奏されていた時からどこかラテンやサルサのような要素を感じる曲だったのが、そうした音楽が持つ情熱はそのままに、そうした要素よりもストレートなロックバンドらしさを感じる。それもまたライブハウスだからこそだろうけれど、やはりライブハウスは普段とは違う景色を我々に見せてくれて、違う世界へ我々を連れて行ってくれる場所だなと思うし、それは夜ダンのダンスロックもそうしたものであるということである。
そんな「VANDALIZE」のアウトロからイントロへがこんなにキレイに繋がるものかと思うのは「Ain't no magic」で、米田は腕の動きによって観客を操っているかのようですらあるのだが、それでも観客は自発的に、自由に踊り飛び跳ねまくる。そこまで激しく盛り上がるような感じではなかったこの曲すらもこうしたノリになっているというあたりにこのツアーでの夜ダンの進化を感じざるを得ないし、実際にこの本気ダンスタイムももはやこれをツアー以外のライブでもやって欲しいと思うくらいに完成されていた感すらあった。
そんな本気ダンスタイムはここまでで、踊りまくった余韻を噛み締めるように演奏されたのは新作からの「Wall Flower」なのだが、この曲は今の夜ダンがダンスではなくて歌とそれが乗るメロディーに向き合った曲だと思っている。誤解を恐れずに言うとポップスを作ったと言っていいような。だからこそこの曲では体を揺らしながらも聴き入っている人がたくさんいたし、やはり夜ダンの何が踊れるかというとリズムの強さはもちろんメロディーがキャッチーだからだということがわかる。これまでにもこうしたタイプの曲はあったが、その最新系にして最も洗練された曲と言っていいだろう。
さらに新作からは「エトランゼ」という、深い泥濘の中から光の射す方へと手を伸ばしてそれを手繰り寄せるかのような曲も演奏される。でもやはりそのために必要なのはダンスであるということを示すような歌詞と構成でもあるために曲が進むにつれて観客の体が動いていく。ともすれば難解な曲になりそうなものであるが、それを全くそうは思わせないアウトプットの仕方はこのバンドには曲を届けたい人たちの顔や姿が明確に浮かんでいるからだろう。
そんな最新作の中に突如としてごく初期の歌モノの「Candy tune」が入ってくるのだから驚きであるのだが、どこか牧歌的とすら言えるようなこの曲が挟まれることによって徐々に光が近づいてきているような、そんな流れやストーリーを感じさせるのであるが、タイトルからして再び突き落とすように演奏されたのはやはり新作からの「Falling Down」。
再び西田が飛び跳ねまくると、マイケルも逆サイドで飛び跳ねまくるのであるが、「armadillo」の中でも最もシャープなギターサウンドで踊らせる曲に乗る歌詞が
「地獄の沙汰もリフ次第」
というキラーフレーズなのが全てを表していると言ってもいい。実際にこの曲を始めとして夜ダンの曲の最もフックになっている部分はクセになって仕方がないリフであると言えるからだ。特に近年はサウンドの幅も広がりながらも西田のリフ名人っぷりが発揮されている曲が実に増えてきている。つまりは地獄の沙汰も西田次第と言い換えてもいいのかもしれない。それくらいのギタリストがこのバンドには在籍している。
「満員御礼ありがとうございます」
と今度は米田が満員の客席を見渡して言うと、
「前回リキッドルームでやった時は配信ライブでした。観客0人。誰に向けてやってるのか全然わからなかった。もちろんカメラの向こうにはみんながいるって思ってはいたけど。でも今日はちゃんと皆さんが前にいる。やっぱりこうじゃないと」
と、満員のリキッドルームでライブができることの喜びを語り、
米田「僕らは京都に住んでますけど、東京っていろんなバンドがみんな上京してきますよね。○デリックとかジ・○○シガレッツとか(笑)」
鈴鹿「mihimaru GTもそうやんな!」
マイケル「お前、それ○に引っ張られてるだけやん!」
鈴鹿「本当は上京したかどうか知りませんでした!」
と脱線しながらも、
米田「このツアー14本回ってきて。東京、恵比寿みたいな交通の便が良い、電車がすぐに来るような場所にもライブしに来ますし、1時間に1本しか電車が来ないような場所にもライブしに行きますんで、またライブで会いましょう」
鈴鹿「でもみんなは宇治には来なくていいから!(笑)京都には来た方がいいけど!」
米田「宇治には来なくていいですけど、インディーズの時のレーベルも今のレコード会社も東京の会社で。今僕らがこうしてライブができているのは東京が見つけてくれたからです」
と、宇治には京都大作戦っていう行った方がいいイベントもあるんですけどとも思いながら東京への思いを口にする。自分が夜ダンのライブを初めて見たのも東京は下北沢の小さなライブハウスだった。東京に来れるバンドだからこうして何度もライブを見ることができたのだ。
そんなMCは終盤突入の合図ということで、米田がネクタイを外しての「fuckin' so tired」ではその米田が見た目のスタイリッシュさとは裏腹にステージ左右に移動しながら踊りまくる。マイケルはベースを立てるようにして膝をつくようにして演奏し、西田もガンガン前に出てきてギターを弾きまくると、ここで再び初期のダンスナンバーである「Afro」へ。初期ならではのシンプルな四つ打ちのダンスチューンであるが、
「手を叩け」
のフレーズに合わせて観客も米田と一緒になって手を叩くと、サビでは「1 2 3」のカウントに合わせて指でカウントする光景が広がる。新作にはこうしたタイプの曲がないからこそ、こうしたストレートなダンスチューンでより爆発力を感じて踊りまくることができる。
それが最大限に爆発するのはイントロの演奏の激しさがそのまま会場全体の熱気になっていく「WHERE?」で、米田がメガネを吹っ飛ばしてしまうくらいにその熱気をこれ以上ないくらいに感じられるのは満員のライブハウスだなと思える。西田が強烈なギターソロを弾きまくると、マイケルによる最後のサビ前の
「踊れ恵比寿!」
も場所が3文字であるだけに実に違和感なく決まる。そしてその一言によって最後のサビでは観客がさらに踊りまくる。
そんな終盤の終盤にけたたましい同期のサウンドが流れてから始まったのは不穏なサウンドの「GIVE & TAKE」であるのだが、そうしたここまでのダンスロックとは全く異なるタイプの曲でも観客がノリノリで飛び跳ねまくっている。リリース時はもっとクールな曲というイメージがあったが、それすらも飛び越えるくらいの熱量をこの曲とバンドは手に入れている。そしてそれはこれから先にさらに様々なタイプのダンスサウンドに挑戦していく上での大きな自信と確信になっていくはずだ。同期を使っても、高速四つ打ちでなくてもこれだけ観客を踊らせることができるという。
そんな新たな夜ダンのこの先への期待に胸が膨らむ中で最後に演奏されたのはこの日のライブ、さらにはこのツアーが本当に楽しいものであったことをバンドにも我々にも刻み込むようにして演奏されたのは「Fun Fun Fun」であり、
「駆け出す僕らを止めないで」
「旅立つ僕らを止めないで」
というとびきりキャッチーなメロディーに乗るサビのフレーズはそのままこれから先もシーンを駆け抜けていく意思を示すかのようでもあり、このツアーが終わってもまた新たな旅(=ツアー)に出て行くというバンドの生き様を示すかのようでもあった。つまりこのバンドにも我々にももっと「Fun」なことが待っているということだ。それくらいにこの凄まじい楽しさはこれまでのものを超えていた。だからこそこれから先もこの日を超えてくる楽しさが間違いなく待っているということだ。
アンコールで再び4人が登場すると、マイケルがツアーファイナルのアンコールのテンションで喋り始めたことによって
米田「下手側からどんどんファイナルになっていくとかないから!」
と言いながら、そのマイケルが髪を少し切ったことによって
マイケル「マネージャーの吉田さんも「マイケルと同じ髪型にしようかなぁ」って言ってたで。だから俺になんかあった時は吉田さんが代わりにベース弾いてもらう(笑)」
鈴鹿「髪型以外全然違うわ!(笑)」
西田「実は僕も山崎賢人みたいにしよ思って前髪少し切ったんですよ。誰も気付いてないけど(笑)」
米田「えっ…誰か気付いてた?(笑)」
と、西田の髪型の変化は誰からも気付かれていないという悲しいことに。それによって西田は
「偏見やけど賢くない人は長袖を腕まくりしてるイメージあるわ」
と、ライブの1時間以上前から腕まくりしていたという、長袖を着ている意味を問われる鈴鹿にツッコミを入れ、本編のテンポの良さが信じられないくらいに喋りまくるのであるが、それでもこの日はまだマシなようで、ここまでの13本を全て合わせたら2時間以上喋っているかもしれないとのこと。
そんなバンドは来年結成15年を迎えるということで、マイケルが加入したのがシーズン2とするなら現在はシーズン14というアメリカのドラマばりの壮大なストーリーを生きるバンドになっているのだが、来年は15周年を祝うようなことをたくさん計画しており、
米田「みんな来年は有給を我々のために使いまくれるようにしておいてください(笑)」
鈴鹿「なんなら今のうちに土日とかに出勤しておき!クリスマスとか代わりに出勤しておいて来年代わりに休んどき!(笑)」
と、デカい記念ライブ1本をドカンとやるというだけのものではなさそうなあたりが期待を抱かせる。個人的には日本武道館や、あるいは関西のバンドであるだけに大阪城ホールでのワンマンもあるんじゃないかと思っているのだが、それが叶うのか、あるいはその予想は心地よく裏切られるのだろうか。
そうして喋りまくった後には
米田「「喋りが長い!」とか「早く曲やれ!」っていう声とかも来年あたりには出せるようになったらいいですね」
マイケル「もうそれはヤジみたいなもんやけどな(笑)」
と夜ダンなりに早く観客が声を出せることを願いながら、
「とっておきの2曲」
として、ライブ本編のスタートで鳴らされるイントロが再び始まったという感覚にさせるとともに、やはりライブハウスツアーを経てきたことによってかさらにテンポが加速していることによってまさにクレイジーに踊りまくる「Crazy Dancer」へ。ただ踊らせまくるのではなくて、この曲のシャープなギターと引き締まってスピードが増したリズムは夜ダンがカッコいいロックバンドであることを示してくれるような曲だ。だからこそ単純に踊るというよりも、その姿や鳴らしている音に反応して踊らざるを得ないと言う方が正しいと思っている。
そして米田がハンドマイクになり、そんなにも!?と思うくらいに精神を解放するように踊りまくりながら歌うのは「TAKE MY HAND」。ここに来てこのキラーチューンがまだ残ってるというあたりに夜ダンが15年間続いてきたこと、その活動歴の中で生み出してきた名曲の多さを改めて実感せざるを得ない。
そんなここまでの全てを振り絞るかのように米田は再びメガネを落とすくらいに踊りまくりながら歌い、西田は間奏でギターをマイクスタンドに擦り付けるようにして音を出す。鈴鹿のドラムは手数を増し、マイケルのベースは曲にスピードを与える。そんな4人の生き様がこの曲では確かに鳴っていた。それは音からこの4人の人間性が鳴っていたということ。そんな面白くて優しい4人が鳴らしているからこそ、このライブは、夜ダンのライブはやはり本当に楽しいのだ。それを示した、本当にツアーファイナルのようなセミファイナルだった。
しかし演奏が終わっても鈴鹿はフロント3人のマイクを使って
「社会人は有給を取って、学生の人は今のうちに単位取っておいて!」
「でも単位取れなかったら留年すればいいから!(笑)」
と無責任極まりないことを口にし、最後は終演BGMが流れて口ずさむかと思いきや、歌わずにステージを去って行った。去り際まで面白いというのはもはや反則なんじゃないだろうか。
夜ダンのライブを見終えた後にいつも思うことがある。それは「なぜ我々はこうして踊るのか」ということだ。普段生活していてこうしてライブのように踊っていたら間違いなく不審者扱いされてしまうくらいの激しさで。
それはやっぱりそうした踊ることのない生活をどうしようもないくらいに退屈に感じてしまうから。その退屈を「楽しい」に変えてくれるのが音楽であり、ダンスであり、夜ダンのライブであるということだ。
自分の好きな歴史上の偉人の辞世の句に「面白き こともなき世を 面白く」という言葉がある。自分が夜ダンのライブを見た後に抱く「なぜこうして我々は踊るのか」という問いに対する答えはその句である。普通に生きていても面白いことなんかほとんどない。だからこうやってライブに来る。そこで踊る。床が見えないくらいに満員のライブハウスでの夜の本気ダンスのワンマンはそれが人生を楽しいものにしてくれるということを教えてくれるのだ。
1.Sweet Revolution
2.STARLET
3.LOVE CONNECTION
4.SMILE SMILE
5.審美眼
6.Movin'
7.B!tch
8.NAVYBLUE GIRL
9.VANDALIZE
10.Ain't no magic
11.Wall Flower
12.エトランゼ
13.Candy tune
14.Falling Down
15.fuckin' so tired
16.Afro
17.WHERE?
18.GIVE & TAKE
19.Fun Fun Fun
encore
20.Crazy Dancer
21.TAKE MY HAND
Hump Back pre. "HAVE LOVE TOUR 2022" @Zepp DiverCity 11/20 ホーム
リーガルリリー 「cell, core 2022」 @Zepp Haneda 11/17