バズリズム LIVE 2022 day2 出演:go!go!vanillas / SUPER BEAVER / THE ORAL CIGARETTES / 東京スカパラダイスオーケストラ / UNISON SQUARE GARDEN @横浜アリーナ 11/6
- 2022/11/07
- 20:05
前日に続いての横浜アリーナでのバズリズムライブ。この日は
go!go!vanillas
SUPER BEAVER
THE ORAL CIGARETTES
東京スカパラダイスオーケストラ
UNISON SQUARE GARDEN
というロックバンドが居並ぶ日。
この日も開演前にはバカリズムと、この日は石川みなみという日本テレビアナウンサーの2人が登場すると、前日よりも前説自体はさっぱりとしながらもバカリズムのテンションが少し高めだったのは前日のテンションの低さをスタッフに何か言われたりしたんだろうか。
・UNISON SQUARE GARDEN
そんな2人の前説から、ステージにセッティングされた機材が明らかにスリーピース用のものなのでトップバッターがUNISON SQUARE GARDENなのがわかるのだが、前日のsumika同様に意表を突くトップバッターなのでこのイベントが最初から油断できないものであることを2日連続で感じる。
おなじみの「絵の具」のSEが流れてメンバー3人が登場すると、斎藤宏介(ボーカル&ギター)と田淵智也(ベース)が鈴木貴雄(ドラム)のドラムセットに向かい合うようにして複雑極まりないキメを刻みまくると、そのまま鈴木の手数の多さと一打の強さを示すようなドラムソロという先制パンチが。立ち上がった鈴木の奇声のごとき叫び声のみがいきなりアリーナに響き渡るというのは実にシュールであるのだが、そのまま「世界はファンシー」の演奏に突入していく。
斎藤の早口ボーカルはもちろん、田淵のいきなりのはしゃぎまわりっぷりが見ているこちらのテンションを否が応でも上げてくれて「ハッピー」と思わせてくれるのであるが、
「Fancy is lonely.」
と、アルバム「Patric Vegee」では「弥生町ロンリープラネット」に続くのがこの日は赤い照明が目まぐるしく光り、田淵はステージ端の方までジャンプしながら移動して転びそうにすらなる「天国と地獄」と続くという詰め込みまくりな曲の連発に。それでも斎藤の歌声は全く揺らぐことはないのだが、鈴木がヘッドホンを装着すると、デジタルクワイア的なコーラスに観客が腕を挙げて応える最新シングル曲「カオスが極まる」へと続くのだが、田淵もインタビューで「「Phantom Joke」を凌ぐレベルのライブの難しさ」と言っていた曲がこんなに激しく難しいであろう曲の後に演奏されるという追い込みっぷりが実にユニゾンのライブである。つまりは、世界はファンシーかと思ったら天国と地獄であり、それによってカオスが極まるというこの前半を示すような曲の並びっぷりであるが、もうただただ圧倒されるしかないという凄まじさである。
そんなカオスが極まっただけに少しの暗転しての曲間では斎藤と田淵が肉声で何やら会話していたのだが、さすがに内容までは聞き取れない中、白と黄色の照明が前半とは全く異なりポップにメンバーを照らすのは三連の鈴木のリズムが心地良い「フライデイノベルス」という、今何故この曲を!?と思わざるを得ないような選曲。金曜日でもないだけに…とも思っていたのだが、もしかしたらバズリズムの番組が金曜日にオンエアされているからという理由での選曲だったりするのだろうか。鈴木のドラムは明らかに手数が増えまくっているのもただレア曲を演奏したというわけではないユニゾンならではのアレンジだ。
さらにはかつてタイトルになっている名前のバンドをメンバーが(田淵が)好きだったことから生まれた「スロウカーヴは打てない (that made me crazy)」ではまさにスロウカーヴに空振りさせられているかのように田淵と鈴木がリズムに合わせて首を後ろに逸らしてボールから避けるようなアクションを見せるのも面白い。演奏だけでなくそうしたパフォーマンスまでもが進化しているのである。
そして再び鈴木がヘッドホンを装着すると、イントロでたくさんの観客の腕が上がる「シュガーソングとビターステップ」へ。紫というかピンクというかの淡い色の照明が当たる中で田淵はステージから消えていこうとしてるんじゃないかという端の方までぴょんぴょんと飛び跳ねていきながら演奏しているのが実に面白い。それをカメラが必死に追うのも含めてであるが、この日に「フライデイノベルス」を演奏したように、「何本ライブを見ていてもセトリ予想が当たった試しがない」というくらいに毎回変幻自在なセトリを構築している(それくらいにどんな曲でもいつでも演奏できる状態にある)ユニゾンでも近年はこの曲はほぼ毎回演奏するようにしているのは、この曲で知ってくれた人がたくさんいて、この曲を聴きたい人がたくさんいるということをメンバーがわかった上でのサービス精神ゆえだろうか。
「ラスト!」
とツアー中と同様に一切のMCもないままに駆け抜けた最後の曲は
「かくしてまたストーリーは始まる」
という斎藤による歌い出しが、この日のイベントがこのユニゾンのライブによって始まったということを感じさせる「kaleido proud fiesta」で、音階を昇っていく斎藤のギターにカラフルな照明が美しく絡む。基本的にはライブハウスのバンドであるが、やはり同期のオーケストレーションも含めた曲のスケールはこうした広い会場で聴くべきものだよなと思わせるし、この曲をトップバッターの最後の曲として鳴らしたということは
「祝祭の鐘は鳴る」
という締めのフレーズ通りにユニゾンがこの日の祝祭の鐘を鳴らしたということだ。音楽だけで、曲だけで、演奏だけでこのアリーナを制圧してしまうバンドだからこそ、なんだかこのバンドのライブが終わるとある種の「今日は終わった」という感じにすらなってしまう。それくらいに余韻が凄まじいライブだということである。
1.世界はファンシー
2.天国と地獄
3.カオスが極まる
4.フライデイノベルス
5.スロウカーヴは打てない (that made me crazy)
6.シュガーソングとビターステップ
7.kaleido proud fiesta
・go!go!vanillas
前日には学祭ライブに出演していた、go!go!vanillas。すでにこの横浜アリーナでは昨年にワンマンを行っているが、このイベントには初出演となる。
おなじみの「RUN RUN RUN」のアイリッシュトラッド的なSEでメンバーが元気良くステージに現れると、元気が良すぎるジェットセイヤ(ドラム)はいきなりステージ下手に伸びる通路へと駆け出していく。ドラマーであるだけにライブ中はできないことを登場時にやっている。牧達弥(ボーカル&ギター)は高校の制服のようなジャケットにネクタイという出で立ちなのだが、これは学祭ライブに出演したからか、あるいは白シャツにネクタイというユニゾン斎藤の出で立ちに合わせたものだろうか。
その牧がハンドマイクで歌う「青いの。」でスタートすると、タイトル通りにステージは照明によって青く染まるのであるが、
「恋に破れ 儚く 君の手とこの手をすり抜ける青い春の香り
僕ら確かめ合って またひとつ大人に」
というフレーズでは桜の季節を思わせるようなピンク色に変化するというあたりはこの曲のことを熟知しているスタッフたちによる心憎い演出であるし、やはりもうバニラズはこうしたスケールが似合うバンドになったんだなと思う。それはこのメンツの中でもバニラズのTシャツやタオルを持った人がたくさんいたことからもよくわかる。
牧がギターを持つと、セイヤも叫びまくる「お子さまプレート」では髪色がオレンジになった長谷川プリティ敬祐(ベース)がリズムに合わせて手拍子をしてそれが客席にも広がると、牧は
「レッツダンス!」
と言って間奏ではプリティと柳沢進太郎(ギター)とともにステップを踏みながら演奏する。何度も見ている光景だけれど、何回見ても楽しい。この曲のサウンドとともにメンバーのそうした姿が我々をこの上なく楽しくさせてくれる。それはつまりロックンロールは楽しいということをバニラズが証明してくれているということだ。
プリティが腕で「E・M・A」の文字を作る「エマ」ではサビで両腕を交互に上げ下げする観客もいたあたり、普段からバニラズのワンマンなどを見に来ている人もたくさんいることがわかるが、そうでない人すらも巻き込んでいくかのようなパワーをこのバンドのロックンロールは発している。
そんな自分たちのサウンド、リズムを
「バカみたいなリズムで踊ろうぜー!」
と、司会のバカリズムに絡める牧は実に上手いなと思うのだが、そんなリズムが炸裂するのはこの曲を手がけたプリティによるボーカルから始まって、メンバー全員のボーカルリレーになる「デッドマンズチェイス」なのだが、広いステージで演奏できるのが楽しくて仕方がないとばかりに、牧、柳沢、プリティの3人は自身が歌わないタイミングでステージ左右の通路へと走り出していき、観客のすぐ近くで演奏していたかと思いきや、柳沢がプリティのマイクに戻って行ったので逆に柳沢のマイクに向かってコーラスをするプリティはマイクの高さが高すぎて思いっきり背伸びをして歌っていたのが実に面白い。そんなプリティは最後にはステージ上でスライディングするかのようにして演奏するなど、ライブをやっている時が1番生きている実感を得られるんだろうなと思わせてくれる。
「今日は凄いバンドばかり出てる。さっきのユニゾンも人間の限界を超えるみたいなライブをやってたから、俺たちも超えるしかない。もっと全力でかかってこいやー!」
と、やはりユニゾンのあのライブを見せられたら燃えるしかない牧がさらなる気合いを漲らせると、さすがに先日の武道館ワンマンのように炎や爆発音などの特効はないが、その分牧がハンドマイクでステージ左右の通路を駆け巡る「one shot kill」という選曲が牧の言葉通りにさらにバンドの演奏を熱くしているし、やはり昨年リリースの「PANDORA」の収録曲たちがこうしたフェスなどの短い持ち時間のライブでもセトリの背骨的な曲になっている。リリース時から「これは間違いなく今までで1番良いアルバムだ」と思っていたが、その曲たちがライブで鳴らされてさらに鍛えあげられてこのスケールにふさわしいものになっている。プリティがカメラに目線を合わせて指で銃を打つような仕草がスクリーンにしっかり映っていたのも嬉しいところである。
そしてこちらもプリティに負けじとステージ上を動きまくっていた柳沢がコール&手拍子をして観客から見事なくらいに大きな手拍子を返してもらってから演奏されたのはおなじみの「カウンターアクション」。イントロではセイヤが「オイ!オイ!」と煽りまくって観客が声を出せずとも腕を振りまくり、音に合わせて飛び跳ねまくる。その客席の光景を見ていると、この出演者の中でもバニラズはそんな景色を作れるバンドになったんだな…と感慨深くなる。それはこの曲がずっと演奏され続けてきた曲だからということも間違いなくあるはずだ。
そして最後に演奏されたのはそうして我々を楽しく、笑顔にしてくれるバニラズのロックンロールそのもののことを歌った「マジック」。この曲はこうして最後に演奏されることが多いだけに、聴いているともうライブが終わってしまう…とも思ってしまうのだが、この日のライブが終わってしまってもこの魔法に、騙されたままがいいんだ、って思わせてくれる。それはこれからもバニラズのロックンロールは続いていくということだ。いつものようにセイヤがシンバルを投げてからぶっ叩く姿も含めて、今1番大きな規模でロックンロールの魔法を体現しているのはこのバンドだ。それは牧がアウトロでラモーンズの「電撃バップ」を口ずさんでいたことからも確かに伝わってきた。そう歌わずにはいられない衝動がこのバンドには溢れているから。
1.青いの。
2.お子さまプレート
3.エマ
4.デッドマンズチェイス
5.one shot kill
6.カウンターアクション
7.マジック
・THE ORAL CIGARETTES
このイベントではおなじみの存在と言える、THE ORAL CIGARETTES。あまり地上波を好きじゃなさそうなこのバンドがそうした存在になっているというあたりに、バズリズムのロックバンドからの愛されっぷりがわかるとも言える。
おなじみのド派手なSEでメンバーがステージに現れると、山中拓也(ボーカル&ギター)はウィンドブレーカーにサングラスというラフな出で立ちで、あきらかにあきら(ベース)は珍しくニット帽を被っているだけに髪型がわからなくなっている。鈴木重伸(ギター)と中西雅哉(ドラム)はいつもと変わらない。
「釣りが趣味で、釣った魚を周りに分け与えている」
という情報を石川アナが伝えた鈴木が裸足なのも本当に変わらない。
おなじみの山中による「一本打って!」の口上からこの日最初に演奏されたのは「GET BACK」という「エイミー」のカップリングに収録されている曲という意外なものであるのだが、山中もギターを弾くこの曲のストレートなギターロックは今のオーラルの多様なサウンドを考えるとむしろ希少なものだ。それでもやはり音が発する迫力は今のオーラルだからこそのものになっている。
そのまま山中がギターを弾きながら歌うのは、鈴木の性急なギターリフが唸りを上げるかのような「5150」と、前半はロックバンドのサウンドとしてのオーラルを存分に感じさせてくれる内容だ。観客が指で曲タイトルを作っている様子も、この曲を愛していてライブで聞きたがっている人がたくさんいるということを示している。
「…白シャツにネクタイじゃないんですけど大丈夫でしょうか?」
と、ユニゾン斎藤、バニラズ牧と白シャツにネクタイのボーカリストが続いたことによって
「今日ドレスコードあったっけ?って思った(笑)」
と自身のラフな出で立ちを自虐しがてら自己紹介すると、その山中がハンドマイクになってサングラスを外し、一転して同期のサウンドも取り入れたヒップホップな「ENEMY」で今のオーラルのサウンドの幅を見せながら観客を飛び跳ねさせまくる。Kamuiによるラップ部分もこの日はさすがに同期だったが、山中はハンドマイクになったことによってステージ左右の通路を奥まで歩きながら歌うというあたりはさすがこうしたアリーナクラスの規模をあらゆるサウンドでもって制圧してきたバンドのフロントマンである。
さらにはエレクトロパンクと呼んでいいようなサウンドの最新曲「BUG」では山中に合わせて客席一面に激しいモンキーダンスが広がる。その様子は壮観であるが、鈴木もあきらもそれぞれステージ左右に走り出して通路の先まで行って演奏するというフォーメーションも実に見事で美しい。山中は上手のスタンド席の観客に近づいて腕を上げたり下げたりする様を真似させたりと、まるで自分たちの主催ライブかと思うくらいにこのライブを楽しんでいるメンバーの姿がここには確かにある。この同期のエレクトロなサウンドに生バンドとしてのビートを融合させる中西はこの曲ではいつも大変そうに見えるけれど。
そんなこのライブを楽しみまくっている山中は
「このライブの主催者の人がいるねんけど、年に何百本もライブ観に行ってて。それで番組をやって、こういうイベントをやってる。俺たちはあんまりテレビとか出たくないバンドやけど、その人はロックバンドのことを大切にしてくれてるから、俺たちバンドもこうやってライブで返したいと思う。やっぱりそこには愛があるから。俺たちも愛で返したいと思う」
という山中の言葉にこそ愛があるのだが、さらに山中は
「こういうアリーナでもいいし、ライブハウスでもいい。音楽を楽しむことができるいろんな場所でこれからも会いましょう」
と言った。それはライブハウスだけではなく、先月のPARASITE DEJAVUなどをアリーナ規模で開催しているバンドだからこそ、どんな場所であろうと自分たちが音を鳴らせるのならばそこが自分たちの場所になるということを感じさせる。もちろんライブハウスから始まったバンドだし、ライブハウスへの愛は強いバンドだけれど、今のオーラルの規模だからこそ、そうした場所で生み出してきたものがあるからこそ説得力を感じさせる言葉だ。
そんな言葉の後だからこそ「カンタンナコト」では観客がより一層飛び跳ねまくり、山中に合わせて頭を振りまくる。それはオーラルの持っている愛や優しさが目の前にいる人にちゃんと伝わっているからであるが、そんな全てを飲み込むかのようなスケールで鳴らされた「BLACK MEMORY」はやはり圧巻で、こうしたアリーナ規模で当たり前にライブをやり、そこでたくさんの人に余韻を植え付けてきたバンドの強さを感じさせる。
そしてラストに演奏された、イントロが鳴らされただけで声が出せなくても観客が沸き上がっているのがわかる「狂乱Hey Kids!!」の文字通りの狂乱っぷり。でもそれは観客よりもむしろメンバーたちの方が狂乱していたかもしれない。それくらいに左右の通路に進みながら演奏していた鈴木のギターの切れ味は凄まじかったし、間奏で山中は誰よりも頭を振りまくっていた。一時期はロックシーンから距離を置こうとしているような感じもしていたオーラルはロックシーンのど真ん中を背負うロックバンドとしての覚悟を決めたように感じる。それは実に頼もしいことだと思っている。
1.GET BACK
2.5150
3.ENEMY
4.BUG
5.カンタンナコト
6.BLACK MEMORY
7.狂乱Hey Kids!!
・東京スカパラダイスオーケストラ
この日だけではなくて2日間通しても別格のキャリアを誇る、東京スカパラダイスオーケストラ。もちろん今年のこのイベントの最年長出演者であるが、番組には何回も出演しているけれどこのライブイベントの方には初出演。
おなじみの黄色いスーツを着たメンバーたちがステージに現れると、谷中敦(バリトンサックス)、大森はじめ(パーカッション)、GAMO(テナーサックス)というメンバーたちがハンドマイクで踊りまくりながら歌う「DOWN BEAT STOMP」でスタートし、正直客層的にはほとんど被ることのないこの日の観客たちをそのハッピーでしかないスカサウンドで踊らせまくるというのはさすがのキャリアと説得力である。そもそも世界中のあらゆる国でアウェーをホームに変えてきたバンドであるだけに、バンド名を知ってくれている人がいるというだけでもホームと言える感覚なのかもしれない。谷中がピースを高く掲げると、北原雅彦(トロンボーン)もカメラ目線でピースを決め、加藤隆志(ギター)のギターソロも冴え渡り、締めでは大森が台の上から思いっきりジャンプする。そうした全ての姿が全く年齢を感じさせないというか、楽しいことや好きなことをやっていれば老け込むことはないと教えてくれているかのようだ。
「戦うように楽しんでくれよ!」
という谷中のおなじみの煽りから、ラテンのテイストも取り入れた「Glorious」ではその谷中が歌いながら振り回すタオルを見て、どんどん客席にもタオルを回すのが広まっていく。こんなに温かく迎えてくれたことに谷中は感謝していたが、観客全員が目の前で鳴っている音を楽しみつくそうとしていて、その観客の姿や思いが音を鳴らしているバンドにちゃんと届いている。その光景を見ていると改めて素敵なイベントに参加できているんだなと思う。
セッション的な演奏をしてから、ユニゾンファンがハッとしそうなタイトルの「君の瞳に恋してる」はタイトルだけを聞くと何の曲かわからない人も演奏を聴けばCMなどでおなじみの曲だとわかる、つまりは誰しもが楽しめる曲。リフをホーン隊が鳴らすのであるが、番組出演時にけん玉が特技であることに密着されていたNARGOはここぞとばかりに中央の台の上に寝そべるようにしてそのリフを吹き、間奏では沖祐市による美しいピアノソロもあったりと、メンバーそれぞれの技量を最大限に生かしたカバーだ。個人的にはつい先日にKen Yokoyamaによるパンクバージョンのカバーを聴いたばかりなだけに、その対比も面白い。それぞれのジャンルの達人たちがカバーしているくらいの名曲ということである。
するとここでバンドの元気印とも言える、少年性を失わない男・茂木欣一(ドラム)による挨拶的なMCから、
「バカリズムさんが脚本を書いた映画の主題歌に我々の曲を使っていただきました。我々を選んでもらって凄く嬉しかった!」
とバカリズムとの番組以外での接点と感謝を告げて演奏されたのは映画「ウェディング・ハイ」の主題歌である「君にサチアレ」で、ホーン隊がウェディングソング的な華々しいサウンドを高らかに鳴らす中、茂木の少年的なボーカルが蒼さを失わないまま大人になったかのように響く。「幸せ」というテーマは実にスカパラにピッタリなものであるなと聴いていて思う。
さらにはリリース直前の、Saucy Dogの石原慎也をゲストボーカルに迎えた新曲「紋白蝶」をこの日はインストバージョンで披露。タイトルとは裏腹にカラフルな照明がステージに降り注ぐロックチューンであり、この曲に石原のあのハイトーンボイスが乗るとどうなるのかというのも実に楽しみな曲である。というかそのボーカルが乗らないとまだタイトルの意味などがわからない曲であるというか。
すると谷中が
「2017年にコラボした曲を久々に今日やりたいと思います!スペシャルゲスト、斎藤宏介!」
と紹介すると、同じ出演日なだけにまずやってくれるだろうと思っていた、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介を迎えてのコラボに。斎藤はギターを持って白のスーツで登場し、黄色のスーツのスカパラ先輩たちの中に入ると組の若頭感を凄まじく感じるが、ボーカルだけでなくそのギターソロまでを遺憾無く発揮する「白と黒のモントゥーノ」はリズムからサウンドに至るまでスカパラのゲストボーカルとしてしか見れないものであるためにこうしてコラボしてくれるのはやっぱり嬉しい。加藤と向き合うようにしてギターを弾き合い、川上つよし(ベース)も寄り添うように斎藤のいるステージ中央まで来るというあたりにスカパラからの斎藤への愛情を感じるが、ユニゾンのツアーをやっている中でもこうして我々に特別なものを見せてくれる斎藤にも、それを実現させてくれたスカパラにも最大限の感謝である。斎藤がステージから去ると、スカパラの熱気ムンムンのライブからはまず感じられない「爽やかさ」という要素を斎藤が振り撒いていたことにも気付く。
そして沖によるピアノのイントロで始まったのはもはやおなじみの「Paradise Has No Border」であるが、なんとここでもスペシャルゲストとしてバカリズムがアルトサックスを持って登場。そのバカリズムはイベントオフィシャルTシャツを着ている姿がユニゾン斎藤とは対称的にステージに紛れ込んできたライブパワーのバイトのスタッフのようにしか見えないが、スカパラが見せ場を作るようにこの曲のリフをバカリズムがアルトサックスで吹く。…のだが、お世辞にも上手いとは言えず(なんなら素人感丸出し)、本人もうまく出来なかったことをわかってかその場に座り込んでしまう。
しかしそのままGAMOによる専用映像までも使った「いつもの」こと、ステージ左右に向かってどっちが盛り上がっているかを確かめるくだりにもバカリズムは参加。加藤がギターを銃のように客席に向ける中、川上とホーン隊とともに下手に行ってリフを鳴らすと、
「向こうにも行きましょう!」
とバカリズムに言ってもらう、彼を引き立てるようにするというスカパラのエスコートっぷりは実に素晴らしい。これはやはりバカリズム脚本の映画に自分たちの曲を使ってくれたことによる恩返し的な意味合いもあるのだろうけれど、この日を誰にとっても特別なものにしようというスカパラの優しさや人情を感じざるを得ない。だからか、客席にはスカパラの物販で売っている、
「GAMOさんこっち!」
などの文字が書かれた、人生においてこの曲をライブで聴く時しか使えないタオルを持っていた人も結構いたのだし、これだけスカパラのライブを見る機会があるんならあのタオル買おうかなとすら思ってしまう。
それくらいにいつもこうしてライブを見るたびに我々を楽しませてくれるスカパラに対して何かを返したいと思うのであるが、バカリズムはこの後の石川アナとのトークコーナーで
「本当はもっとちゃんと吹けるんだけど、スカパラの皆さんの圧が凄すぎて!」
と弁解しながら、楽屋で吹いていた動画を再生していたが、確かに本番よりもちゃんと吹けていただけにこれは来年是非リベンジして欲しいと思う。
1.DOWN BEAT STOMP
2.Glorious
3.君の瞳に恋してる
4.君にサチアレ
5.紋白蝶
6.白と黒のモントゥーノ w/ 斎藤宏介 (UNISON SQUARE GARDEN)
7.Paradise Has No Border w/ バカリズム
・SUPER BEAVER
そんなスカパラによる「司会者とのコラボ」という大団円フィナーレ的なライブを経てからというハードルの高さで登場する今年の大トリがSUPER BEAVER。それくらいの位置を任されて然るべきバンドになったということである。
場内が暗転しておなじみのSEが鳴ると柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人が先にステージに登場。柳沢がすでに売り切れてしまっているというこのイベントのタオルを持って掲げるというあたりもイベントと番組への愛情と大トリとしての責任を感じさせる中で、この日もロックスターオーラが出まくっている渋谷龍太(ボーカル)がステージに登場すると、薄暗いステージに緑色のレーザーの光が映え、柳沢のギターのフレーズとともに渋谷が歌い始める「名前を呼ぶよ」からスタート。
大人気アニメのタイアップ曲でもあるのだが、
「名前を呼んでよ 会いに行くよ
何度だって 何度だって 何度だって」
というフレーズはこうしてビーバーが我々に会いに来てくれた理由として、そこにメンバー全員の声が重なることによってそれがバンドの総意であるようにして響く。もうこの1曲だけで完全にアリーナを全て自分たちのものとして持って行ってしまう。それは音楽はもちろんのこと、発している人間力、カリスマ性も含めて。
「アリーナライブお疲れ様でした!ここからはライブハウスで!」
と言って始まった「青い春」ではたくさんの腕が上がり、曲中のワルツ的なリズムになる部分では手拍子も起こるのだが、渋谷が
「手は頭の上でお願いします!」
と自ら実践するように手を頭の上に挙げて手拍子をすると、驚くくらいにたくさんの手が頭の上に上がる。その光景はまるでこの日がSUPER BEAVERのワンマンの横浜アリーナ公演かのようだ。柳沢もサビ前にはその腕が上がった光景をさらに焼き付けたいとでもいうように
「横浜、手を挙げて見せてくれー!」
と叫ぶ。いつもと何かが決定的に違うわけではないけれど、この時点でビーバーがトリで良かったと思わざるを得ないパフォーマンスである。
すると渋谷は
「来てくださいなんて頭を下げられて行ったライブで良かった試しなんてない。俺たちがやらなければいけないことは、あなたをドキドキワクワクさせること。俺たちがあなたのことをドキドキワクワクさせることができれば、来てくださいなんて言わなくてもライブに来てくれるもんだと思っている」
と、現場至上主義(同名のライブハウスツアーも来年開催される)を掲げるバンドとしての矜持を感じさせる言葉を口にすると、再びメンバーが手を頭の上に高く挙げて手拍子を始めると、その光景が観客にも広がっていく「美しい日」が始まるのだが、柳沢のギターが出なくなり、ステージ左右の通路を歩きながら歌う渋谷のマイクもぶつ切りになってしまう機材トラブルが発生してしまう。ビーバーはメロディを柳沢のギターのみで担っているためにその音がなくなった時の違和感は凄まじいが、それでもこの日スクリーンに母とともに家庭菜園を営むロックバンドらしからぬ姿が映し出されていた上杉と藤原の2人は顔を見合わせながら演奏を続ける。
正直、曲をやり直すという選択肢もあったと思うけれど、それでも続けるというのは時間を押さないようにというイベント側と我々への配慮だろうし、きっとこうしたことは今までだって数え切れないくらいに経験してきているのだろう。(リリースされたばかりのドキュメンタリー作品には渋谷が思いっきり歌詞を飛ばしてメンバーに謝罪する場面まで収録されている)
曲中には復旧したものの、渋谷は間奏でステージ前の台に座り込み、
「なんだか機材トラブルで元気なくなってきちゃった。皆さんが俺たちに元気をくれますか?」
と、そんなトラブルすらもこのライブならではの逆境を跳ね返す力にしようとしているあたりは余裕というわけではないけれど、やはりビーバーのライブ経験があるからこその強さを感じさせる。
そうして観客からさらに元気をもらってから演奏されたのは新曲の「ひたむき」。「僕のヒーローアカデミア」の主題歌としてオンエアされている曲だが、ビーバーは正直華やかさ的にも主人公のデクのようなタイプではない。(むしろ幼なじみであり正反対のかっちゃんこと爆豪的なタイプか?)
でもこうして我々観客やイベントを作ってくれている人たちの力を自分たちのものにして鳴らす音に還元できるというのは紛れもなくヒーローそのものの在り方だ。ビーバーにはヒロアカのタイアップに使えそうな曲がこれまでにもたくさんあったが(「正攻法」や「突破口」など)、「ひたむき」という言葉はビーバーとヒロアカの2つのものをこれ以上ないくらいに最短距離で結びつけるようなワードだ。勇壮なコーラスパートを歌うメンバーの姿を見て、近い将来に我々の声がそのメンバーの声に乗ることができたらいいなと思っていた。
そして渋谷は
「聴かせてあげてるでも、聴いてあげてるでもない。聴いていただいてるでもない、聴かせていただいているでもない。一緒に音楽を作るということがどういうことかということ、楽しいってどういうことかを今日、あなたから教えてもらいました。本当にありがとうございます」
と、機材トラブルが起きてもそれを乗り越えた力を我々観客にもらい、それによって一緒に音楽を作れた、ライブを作れたということを口にする。
そんなビーバーの人間性をそのまま歌ったのが「人として」。ライブでやる率が今でも高いけれど、この曲を聴くといつも背筋を正される気持ちになる。
「馬鹿だねって言われたって
カッコ悪い人にはなりたくないじゃないか
人として 人として かっこよく生きていたいじゃないか」
という歌詞の通りに生きていたいと思う。ズルいことや悪いこと、人を傷つけるようなことをせずに。それはそうした生き方が1番カッコいいということをSUPER BEAVERは自分たちの姿で我々に示してくれているからだ。その結晶のような音楽がこの曲。もちろん渋谷の歌唱もメンバーの演奏もその生き様を思いっきり音に込めているから、この青臭いくらいにストレートな歌詞が真っ直ぐに心に響く。綺麗事だなんて鼻で笑ったりすることない、このカッコよさがわかる人間であれて本当に良かったと聴くたびに思う。
そして渋谷が
「愛してるー!」
という歌唱を思いっきり響かせるのは「アイラヴユー」。
「今僕らに 必要なのは 想う気持ち 想像力
今あなたに 必要なのは 想われてる その実感」
という今この時代に最も必要とされているものをそのまま歌詞にした思いを後押しするように客席からは手拍子が響く。柳沢も上杉もステージ左右に展開していくと、渋谷はカメラに近づきすぎてそのままカメラのレンズにキスをしてしまう。それもそうしたライブを作っているスタッフへの愛があるからできてしまえること。
ロックシーンのダークヒーロー的なオーラルの山中も愛について口にしていたが、その愛を歌ったこの曲がこの2日間の最後に響いたのは必然だったのかもしれない。それはこのバズリズムというイベントが音楽と、音楽を愛する人たちへの愛に満ちたイベントだったからだ。柳沢が最後にNOiDのタオルとともにこのイベントのタオルを掲げていたのはそれを象徴していた。やっぱりビーバーがトリを務めたこの日は、美しい日だったのだ。
1.名前を呼ぶよ
2.青い春
3.美しい日
4.ひたむき
5.人として
6.アイラヴユー
例えばフジテレビのLove Music Fesもそうであるが、TV番組のライブイベントというとどうにもロックファンとして最初は少し斜に構えてしまいがちになってしまう。でもこの2日間の出演者たちが番組への信頼を口にしていて、番組やイベントを作っている人が我々と同じように日々各地のライブハウスにライブを見に行っている。
そこで主催者の方々が知った音楽や、今まで聴いてきた音楽が目の前で鳴っている。あるいは会場のBGMとして転換中に流れている。この日もback numberのような超メジャーなバンドから秋山黄色、9mm Parabellum Bullet、THE BAWDIES、ヒトリエ…その音楽が好きじゃないと絶対選ばないような音楽がたくさん流れていた。
こうした音楽を好きな人が作っている番組が、スカパーの音楽専門チャンネルではなくて地上波でオンエアされている。自分が中学生くらいの時にこうした番組があってくれたら良かったのになぁと思うくらいにそれが嬉しく思えている。
go!go!vanillas
SUPER BEAVER
THE ORAL CIGARETTES
東京スカパラダイスオーケストラ
UNISON SQUARE GARDEN
というロックバンドが居並ぶ日。
この日も開演前にはバカリズムと、この日は石川みなみという日本テレビアナウンサーの2人が登場すると、前日よりも前説自体はさっぱりとしながらもバカリズムのテンションが少し高めだったのは前日のテンションの低さをスタッフに何か言われたりしたんだろうか。
・UNISON SQUARE GARDEN
そんな2人の前説から、ステージにセッティングされた機材が明らかにスリーピース用のものなのでトップバッターがUNISON SQUARE GARDENなのがわかるのだが、前日のsumika同様に意表を突くトップバッターなのでこのイベントが最初から油断できないものであることを2日連続で感じる。
おなじみの「絵の具」のSEが流れてメンバー3人が登場すると、斎藤宏介(ボーカル&ギター)と田淵智也(ベース)が鈴木貴雄(ドラム)のドラムセットに向かい合うようにして複雑極まりないキメを刻みまくると、そのまま鈴木の手数の多さと一打の強さを示すようなドラムソロという先制パンチが。立ち上がった鈴木の奇声のごとき叫び声のみがいきなりアリーナに響き渡るというのは実にシュールであるのだが、そのまま「世界はファンシー」の演奏に突入していく。
斎藤の早口ボーカルはもちろん、田淵のいきなりのはしゃぎまわりっぷりが見ているこちらのテンションを否が応でも上げてくれて「ハッピー」と思わせてくれるのであるが、
「Fancy is lonely.」
と、アルバム「Patric Vegee」では「弥生町ロンリープラネット」に続くのがこの日は赤い照明が目まぐるしく光り、田淵はステージ端の方までジャンプしながら移動して転びそうにすらなる「天国と地獄」と続くという詰め込みまくりな曲の連発に。それでも斎藤の歌声は全く揺らぐことはないのだが、鈴木がヘッドホンを装着すると、デジタルクワイア的なコーラスに観客が腕を挙げて応える最新シングル曲「カオスが極まる」へと続くのだが、田淵もインタビューで「「Phantom Joke」を凌ぐレベルのライブの難しさ」と言っていた曲がこんなに激しく難しいであろう曲の後に演奏されるという追い込みっぷりが実にユニゾンのライブである。つまりは、世界はファンシーかと思ったら天国と地獄であり、それによってカオスが極まるというこの前半を示すような曲の並びっぷりであるが、もうただただ圧倒されるしかないという凄まじさである。
そんなカオスが極まっただけに少しの暗転しての曲間では斎藤と田淵が肉声で何やら会話していたのだが、さすがに内容までは聞き取れない中、白と黄色の照明が前半とは全く異なりポップにメンバーを照らすのは三連の鈴木のリズムが心地良い「フライデイノベルス」という、今何故この曲を!?と思わざるを得ないような選曲。金曜日でもないだけに…とも思っていたのだが、もしかしたらバズリズムの番組が金曜日にオンエアされているからという理由での選曲だったりするのだろうか。鈴木のドラムは明らかに手数が増えまくっているのもただレア曲を演奏したというわけではないユニゾンならではのアレンジだ。
さらにはかつてタイトルになっている名前のバンドをメンバーが(田淵が)好きだったことから生まれた「スロウカーヴは打てない (that made me crazy)」ではまさにスロウカーヴに空振りさせられているかのように田淵と鈴木がリズムに合わせて首を後ろに逸らしてボールから避けるようなアクションを見せるのも面白い。演奏だけでなくそうしたパフォーマンスまでもが進化しているのである。
そして再び鈴木がヘッドホンを装着すると、イントロでたくさんの観客の腕が上がる「シュガーソングとビターステップ」へ。紫というかピンクというかの淡い色の照明が当たる中で田淵はステージから消えていこうとしてるんじゃないかという端の方までぴょんぴょんと飛び跳ねていきながら演奏しているのが実に面白い。それをカメラが必死に追うのも含めてであるが、この日に「フライデイノベルス」を演奏したように、「何本ライブを見ていてもセトリ予想が当たった試しがない」というくらいに毎回変幻自在なセトリを構築している(それくらいにどんな曲でもいつでも演奏できる状態にある)ユニゾンでも近年はこの曲はほぼ毎回演奏するようにしているのは、この曲で知ってくれた人がたくさんいて、この曲を聴きたい人がたくさんいるということをメンバーがわかった上でのサービス精神ゆえだろうか。
「ラスト!」
とツアー中と同様に一切のMCもないままに駆け抜けた最後の曲は
「かくしてまたストーリーは始まる」
という斎藤による歌い出しが、この日のイベントがこのユニゾンのライブによって始まったということを感じさせる「kaleido proud fiesta」で、音階を昇っていく斎藤のギターにカラフルな照明が美しく絡む。基本的にはライブハウスのバンドであるが、やはり同期のオーケストレーションも含めた曲のスケールはこうした広い会場で聴くべきものだよなと思わせるし、この曲をトップバッターの最後の曲として鳴らしたということは
「祝祭の鐘は鳴る」
という締めのフレーズ通りにユニゾンがこの日の祝祭の鐘を鳴らしたということだ。音楽だけで、曲だけで、演奏だけでこのアリーナを制圧してしまうバンドだからこそ、なんだかこのバンドのライブが終わるとある種の「今日は終わった」という感じにすらなってしまう。それくらいに余韻が凄まじいライブだということである。
1.世界はファンシー
2.天国と地獄
3.カオスが極まる
4.フライデイノベルス
5.スロウカーヴは打てない (that made me crazy)
6.シュガーソングとビターステップ
7.kaleido proud fiesta
・go!go!vanillas
前日には学祭ライブに出演していた、go!go!vanillas。すでにこの横浜アリーナでは昨年にワンマンを行っているが、このイベントには初出演となる。
おなじみの「RUN RUN RUN」のアイリッシュトラッド的なSEでメンバーが元気良くステージに現れると、元気が良すぎるジェットセイヤ(ドラム)はいきなりステージ下手に伸びる通路へと駆け出していく。ドラマーであるだけにライブ中はできないことを登場時にやっている。牧達弥(ボーカル&ギター)は高校の制服のようなジャケットにネクタイという出で立ちなのだが、これは学祭ライブに出演したからか、あるいは白シャツにネクタイというユニゾン斎藤の出で立ちに合わせたものだろうか。
その牧がハンドマイクで歌う「青いの。」でスタートすると、タイトル通りにステージは照明によって青く染まるのであるが、
「恋に破れ 儚く 君の手とこの手をすり抜ける青い春の香り
僕ら確かめ合って またひとつ大人に」
というフレーズでは桜の季節を思わせるようなピンク色に変化するというあたりはこの曲のことを熟知しているスタッフたちによる心憎い演出であるし、やはりもうバニラズはこうしたスケールが似合うバンドになったんだなと思う。それはこのメンツの中でもバニラズのTシャツやタオルを持った人がたくさんいたことからもよくわかる。
牧がギターを持つと、セイヤも叫びまくる「お子さまプレート」では髪色がオレンジになった長谷川プリティ敬祐(ベース)がリズムに合わせて手拍子をしてそれが客席にも広がると、牧は
「レッツダンス!」
と言って間奏ではプリティと柳沢進太郎(ギター)とともにステップを踏みながら演奏する。何度も見ている光景だけれど、何回見ても楽しい。この曲のサウンドとともにメンバーのそうした姿が我々をこの上なく楽しくさせてくれる。それはつまりロックンロールは楽しいということをバニラズが証明してくれているということだ。
プリティが腕で「E・M・A」の文字を作る「エマ」ではサビで両腕を交互に上げ下げする観客もいたあたり、普段からバニラズのワンマンなどを見に来ている人もたくさんいることがわかるが、そうでない人すらも巻き込んでいくかのようなパワーをこのバンドのロックンロールは発している。
そんな自分たちのサウンド、リズムを
「バカみたいなリズムで踊ろうぜー!」
と、司会のバカリズムに絡める牧は実に上手いなと思うのだが、そんなリズムが炸裂するのはこの曲を手がけたプリティによるボーカルから始まって、メンバー全員のボーカルリレーになる「デッドマンズチェイス」なのだが、広いステージで演奏できるのが楽しくて仕方がないとばかりに、牧、柳沢、プリティの3人は自身が歌わないタイミングでステージ左右の通路へと走り出していき、観客のすぐ近くで演奏していたかと思いきや、柳沢がプリティのマイクに戻って行ったので逆に柳沢のマイクに向かってコーラスをするプリティはマイクの高さが高すぎて思いっきり背伸びをして歌っていたのが実に面白い。そんなプリティは最後にはステージ上でスライディングするかのようにして演奏するなど、ライブをやっている時が1番生きている実感を得られるんだろうなと思わせてくれる。
「今日は凄いバンドばかり出てる。さっきのユニゾンも人間の限界を超えるみたいなライブをやってたから、俺たちも超えるしかない。もっと全力でかかってこいやー!」
と、やはりユニゾンのあのライブを見せられたら燃えるしかない牧がさらなる気合いを漲らせると、さすがに先日の武道館ワンマンのように炎や爆発音などの特効はないが、その分牧がハンドマイクでステージ左右の通路を駆け巡る「one shot kill」という選曲が牧の言葉通りにさらにバンドの演奏を熱くしているし、やはり昨年リリースの「PANDORA」の収録曲たちがこうしたフェスなどの短い持ち時間のライブでもセトリの背骨的な曲になっている。リリース時から「これは間違いなく今までで1番良いアルバムだ」と思っていたが、その曲たちがライブで鳴らされてさらに鍛えあげられてこのスケールにふさわしいものになっている。プリティがカメラに目線を合わせて指で銃を打つような仕草がスクリーンにしっかり映っていたのも嬉しいところである。
そしてこちらもプリティに負けじとステージ上を動きまくっていた柳沢がコール&手拍子をして観客から見事なくらいに大きな手拍子を返してもらってから演奏されたのはおなじみの「カウンターアクション」。イントロではセイヤが「オイ!オイ!」と煽りまくって観客が声を出せずとも腕を振りまくり、音に合わせて飛び跳ねまくる。その客席の光景を見ていると、この出演者の中でもバニラズはそんな景色を作れるバンドになったんだな…と感慨深くなる。それはこの曲がずっと演奏され続けてきた曲だからということも間違いなくあるはずだ。
そして最後に演奏されたのはそうして我々を楽しく、笑顔にしてくれるバニラズのロックンロールそのもののことを歌った「マジック」。この曲はこうして最後に演奏されることが多いだけに、聴いているともうライブが終わってしまう…とも思ってしまうのだが、この日のライブが終わってしまってもこの魔法に、騙されたままがいいんだ、って思わせてくれる。それはこれからもバニラズのロックンロールは続いていくということだ。いつものようにセイヤがシンバルを投げてからぶっ叩く姿も含めて、今1番大きな規模でロックンロールの魔法を体現しているのはこのバンドだ。それは牧がアウトロでラモーンズの「電撃バップ」を口ずさんでいたことからも確かに伝わってきた。そう歌わずにはいられない衝動がこのバンドには溢れているから。
1.青いの。
2.お子さまプレート
3.エマ
4.デッドマンズチェイス
5.one shot kill
6.カウンターアクション
7.マジック
・THE ORAL CIGARETTES
このイベントではおなじみの存在と言える、THE ORAL CIGARETTES。あまり地上波を好きじゃなさそうなこのバンドがそうした存在になっているというあたりに、バズリズムのロックバンドからの愛されっぷりがわかるとも言える。
おなじみのド派手なSEでメンバーがステージに現れると、山中拓也(ボーカル&ギター)はウィンドブレーカーにサングラスというラフな出で立ちで、あきらかにあきら(ベース)は珍しくニット帽を被っているだけに髪型がわからなくなっている。鈴木重伸(ギター)と中西雅哉(ドラム)はいつもと変わらない。
「釣りが趣味で、釣った魚を周りに分け与えている」
という情報を石川アナが伝えた鈴木が裸足なのも本当に変わらない。
おなじみの山中による「一本打って!」の口上からこの日最初に演奏されたのは「GET BACK」という「エイミー」のカップリングに収録されている曲という意外なものであるのだが、山中もギターを弾くこの曲のストレートなギターロックは今のオーラルの多様なサウンドを考えるとむしろ希少なものだ。それでもやはり音が発する迫力は今のオーラルだからこそのものになっている。
そのまま山中がギターを弾きながら歌うのは、鈴木の性急なギターリフが唸りを上げるかのような「5150」と、前半はロックバンドのサウンドとしてのオーラルを存分に感じさせてくれる内容だ。観客が指で曲タイトルを作っている様子も、この曲を愛していてライブで聞きたがっている人がたくさんいるということを示している。
「…白シャツにネクタイじゃないんですけど大丈夫でしょうか?」
と、ユニゾン斎藤、バニラズ牧と白シャツにネクタイのボーカリストが続いたことによって
「今日ドレスコードあったっけ?って思った(笑)」
と自身のラフな出で立ちを自虐しがてら自己紹介すると、その山中がハンドマイクになってサングラスを外し、一転して同期のサウンドも取り入れたヒップホップな「ENEMY」で今のオーラルのサウンドの幅を見せながら観客を飛び跳ねさせまくる。Kamuiによるラップ部分もこの日はさすがに同期だったが、山中はハンドマイクになったことによってステージ左右の通路を奥まで歩きながら歌うというあたりはさすがこうしたアリーナクラスの規模をあらゆるサウンドでもって制圧してきたバンドのフロントマンである。
さらにはエレクトロパンクと呼んでいいようなサウンドの最新曲「BUG」では山中に合わせて客席一面に激しいモンキーダンスが広がる。その様子は壮観であるが、鈴木もあきらもそれぞれステージ左右に走り出して通路の先まで行って演奏するというフォーメーションも実に見事で美しい。山中は上手のスタンド席の観客に近づいて腕を上げたり下げたりする様を真似させたりと、まるで自分たちの主催ライブかと思うくらいにこのライブを楽しんでいるメンバーの姿がここには確かにある。この同期のエレクトロなサウンドに生バンドとしてのビートを融合させる中西はこの曲ではいつも大変そうに見えるけれど。
そんなこのライブを楽しみまくっている山中は
「このライブの主催者の人がいるねんけど、年に何百本もライブ観に行ってて。それで番組をやって、こういうイベントをやってる。俺たちはあんまりテレビとか出たくないバンドやけど、その人はロックバンドのことを大切にしてくれてるから、俺たちバンドもこうやってライブで返したいと思う。やっぱりそこには愛があるから。俺たちも愛で返したいと思う」
という山中の言葉にこそ愛があるのだが、さらに山中は
「こういうアリーナでもいいし、ライブハウスでもいい。音楽を楽しむことができるいろんな場所でこれからも会いましょう」
と言った。それはライブハウスだけではなく、先月のPARASITE DEJAVUなどをアリーナ規模で開催しているバンドだからこそ、どんな場所であろうと自分たちが音を鳴らせるのならばそこが自分たちの場所になるということを感じさせる。もちろんライブハウスから始まったバンドだし、ライブハウスへの愛は強いバンドだけれど、今のオーラルの規模だからこそ、そうした場所で生み出してきたものがあるからこそ説得力を感じさせる言葉だ。
そんな言葉の後だからこそ「カンタンナコト」では観客がより一層飛び跳ねまくり、山中に合わせて頭を振りまくる。それはオーラルの持っている愛や優しさが目の前にいる人にちゃんと伝わっているからであるが、そんな全てを飲み込むかのようなスケールで鳴らされた「BLACK MEMORY」はやはり圧巻で、こうしたアリーナ規模で当たり前にライブをやり、そこでたくさんの人に余韻を植え付けてきたバンドの強さを感じさせる。
そしてラストに演奏された、イントロが鳴らされただけで声が出せなくても観客が沸き上がっているのがわかる「狂乱Hey Kids!!」の文字通りの狂乱っぷり。でもそれは観客よりもむしろメンバーたちの方が狂乱していたかもしれない。それくらいに左右の通路に進みながら演奏していた鈴木のギターの切れ味は凄まじかったし、間奏で山中は誰よりも頭を振りまくっていた。一時期はロックシーンから距離を置こうとしているような感じもしていたオーラルはロックシーンのど真ん中を背負うロックバンドとしての覚悟を決めたように感じる。それは実に頼もしいことだと思っている。
1.GET BACK
2.5150
3.ENEMY
4.BUG
5.カンタンナコト
6.BLACK MEMORY
7.狂乱Hey Kids!!
・東京スカパラダイスオーケストラ
この日だけではなくて2日間通しても別格のキャリアを誇る、東京スカパラダイスオーケストラ。もちろん今年のこのイベントの最年長出演者であるが、番組には何回も出演しているけれどこのライブイベントの方には初出演。
おなじみの黄色いスーツを着たメンバーたちがステージに現れると、谷中敦(バリトンサックス)、大森はじめ(パーカッション)、GAMO(テナーサックス)というメンバーたちがハンドマイクで踊りまくりながら歌う「DOWN BEAT STOMP」でスタートし、正直客層的にはほとんど被ることのないこの日の観客たちをそのハッピーでしかないスカサウンドで踊らせまくるというのはさすがのキャリアと説得力である。そもそも世界中のあらゆる国でアウェーをホームに変えてきたバンドであるだけに、バンド名を知ってくれている人がいるというだけでもホームと言える感覚なのかもしれない。谷中がピースを高く掲げると、北原雅彦(トロンボーン)もカメラ目線でピースを決め、加藤隆志(ギター)のギターソロも冴え渡り、締めでは大森が台の上から思いっきりジャンプする。そうした全ての姿が全く年齢を感じさせないというか、楽しいことや好きなことをやっていれば老け込むことはないと教えてくれているかのようだ。
「戦うように楽しんでくれよ!」
という谷中のおなじみの煽りから、ラテンのテイストも取り入れた「Glorious」ではその谷中が歌いながら振り回すタオルを見て、どんどん客席にもタオルを回すのが広まっていく。こんなに温かく迎えてくれたことに谷中は感謝していたが、観客全員が目の前で鳴っている音を楽しみつくそうとしていて、その観客の姿や思いが音を鳴らしているバンドにちゃんと届いている。その光景を見ていると改めて素敵なイベントに参加できているんだなと思う。
セッション的な演奏をしてから、ユニゾンファンがハッとしそうなタイトルの「君の瞳に恋してる」はタイトルだけを聞くと何の曲かわからない人も演奏を聴けばCMなどでおなじみの曲だとわかる、つまりは誰しもが楽しめる曲。リフをホーン隊が鳴らすのであるが、番組出演時にけん玉が特技であることに密着されていたNARGOはここぞとばかりに中央の台の上に寝そべるようにしてそのリフを吹き、間奏では沖祐市による美しいピアノソロもあったりと、メンバーそれぞれの技量を最大限に生かしたカバーだ。個人的にはつい先日にKen Yokoyamaによるパンクバージョンのカバーを聴いたばかりなだけに、その対比も面白い。それぞれのジャンルの達人たちがカバーしているくらいの名曲ということである。
するとここでバンドの元気印とも言える、少年性を失わない男・茂木欣一(ドラム)による挨拶的なMCから、
「バカリズムさんが脚本を書いた映画の主題歌に我々の曲を使っていただきました。我々を選んでもらって凄く嬉しかった!」
とバカリズムとの番組以外での接点と感謝を告げて演奏されたのは映画「ウェディング・ハイ」の主題歌である「君にサチアレ」で、ホーン隊がウェディングソング的な華々しいサウンドを高らかに鳴らす中、茂木の少年的なボーカルが蒼さを失わないまま大人になったかのように響く。「幸せ」というテーマは実にスカパラにピッタリなものであるなと聴いていて思う。
さらにはリリース直前の、Saucy Dogの石原慎也をゲストボーカルに迎えた新曲「紋白蝶」をこの日はインストバージョンで披露。タイトルとは裏腹にカラフルな照明がステージに降り注ぐロックチューンであり、この曲に石原のあのハイトーンボイスが乗るとどうなるのかというのも実に楽しみな曲である。というかそのボーカルが乗らないとまだタイトルの意味などがわからない曲であるというか。
すると谷中が
「2017年にコラボした曲を久々に今日やりたいと思います!スペシャルゲスト、斎藤宏介!」
と紹介すると、同じ出演日なだけにまずやってくれるだろうと思っていた、UNISON SQUARE GARDENの斎藤宏介を迎えてのコラボに。斎藤はギターを持って白のスーツで登場し、黄色のスーツのスカパラ先輩たちの中に入ると組の若頭感を凄まじく感じるが、ボーカルだけでなくそのギターソロまでを遺憾無く発揮する「白と黒のモントゥーノ」はリズムからサウンドに至るまでスカパラのゲストボーカルとしてしか見れないものであるためにこうしてコラボしてくれるのはやっぱり嬉しい。加藤と向き合うようにしてギターを弾き合い、川上つよし(ベース)も寄り添うように斎藤のいるステージ中央まで来るというあたりにスカパラからの斎藤への愛情を感じるが、ユニゾンのツアーをやっている中でもこうして我々に特別なものを見せてくれる斎藤にも、それを実現させてくれたスカパラにも最大限の感謝である。斎藤がステージから去ると、スカパラの熱気ムンムンのライブからはまず感じられない「爽やかさ」という要素を斎藤が振り撒いていたことにも気付く。
そして沖によるピアノのイントロで始まったのはもはやおなじみの「Paradise Has No Border」であるが、なんとここでもスペシャルゲストとしてバカリズムがアルトサックスを持って登場。そのバカリズムはイベントオフィシャルTシャツを着ている姿がユニゾン斎藤とは対称的にステージに紛れ込んできたライブパワーのバイトのスタッフのようにしか見えないが、スカパラが見せ場を作るようにこの曲のリフをバカリズムがアルトサックスで吹く。…のだが、お世辞にも上手いとは言えず(なんなら素人感丸出し)、本人もうまく出来なかったことをわかってかその場に座り込んでしまう。
しかしそのままGAMOによる専用映像までも使った「いつもの」こと、ステージ左右に向かってどっちが盛り上がっているかを確かめるくだりにもバカリズムは参加。加藤がギターを銃のように客席に向ける中、川上とホーン隊とともに下手に行ってリフを鳴らすと、
「向こうにも行きましょう!」
とバカリズムに言ってもらう、彼を引き立てるようにするというスカパラのエスコートっぷりは実に素晴らしい。これはやはりバカリズム脚本の映画に自分たちの曲を使ってくれたことによる恩返し的な意味合いもあるのだろうけれど、この日を誰にとっても特別なものにしようというスカパラの優しさや人情を感じざるを得ない。だからか、客席にはスカパラの物販で売っている、
「GAMOさんこっち!」
などの文字が書かれた、人生においてこの曲をライブで聴く時しか使えないタオルを持っていた人も結構いたのだし、これだけスカパラのライブを見る機会があるんならあのタオル買おうかなとすら思ってしまう。
それくらいにいつもこうしてライブを見るたびに我々を楽しませてくれるスカパラに対して何かを返したいと思うのであるが、バカリズムはこの後の石川アナとのトークコーナーで
「本当はもっとちゃんと吹けるんだけど、スカパラの皆さんの圧が凄すぎて!」
と弁解しながら、楽屋で吹いていた動画を再生していたが、確かに本番よりもちゃんと吹けていただけにこれは来年是非リベンジして欲しいと思う。
1.DOWN BEAT STOMP
2.Glorious
3.君の瞳に恋してる
4.君にサチアレ
5.紋白蝶
6.白と黒のモントゥーノ w/ 斎藤宏介 (UNISON SQUARE GARDEN)
7.Paradise Has No Border w/ バカリズム
・SUPER BEAVER
そんなスカパラによる「司会者とのコラボ」という大団円フィナーレ的なライブを経てからというハードルの高さで登場する今年の大トリがSUPER BEAVER。それくらいの位置を任されて然るべきバンドになったということである。
場内が暗転しておなじみのSEが鳴ると柳沢亮太(ギター)、上杉研太(ベース)、藤原広明(ドラム)の3人が先にステージに登場。柳沢がすでに売り切れてしまっているというこのイベントのタオルを持って掲げるというあたりもイベントと番組への愛情と大トリとしての責任を感じさせる中で、この日もロックスターオーラが出まくっている渋谷龍太(ボーカル)がステージに登場すると、薄暗いステージに緑色のレーザーの光が映え、柳沢のギターのフレーズとともに渋谷が歌い始める「名前を呼ぶよ」からスタート。
大人気アニメのタイアップ曲でもあるのだが、
「名前を呼んでよ 会いに行くよ
何度だって 何度だって 何度だって」
というフレーズはこうしてビーバーが我々に会いに来てくれた理由として、そこにメンバー全員の声が重なることによってそれがバンドの総意であるようにして響く。もうこの1曲だけで完全にアリーナを全て自分たちのものとして持って行ってしまう。それは音楽はもちろんのこと、発している人間力、カリスマ性も含めて。
「アリーナライブお疲れ様でした!ここからはライブハウスで!」
と言って始まった「青い春」ではたくさんの腕が上がり、曲中のワルツ的なリズムになる部分では手拍子も起こるのだが、渋谷が
「手は頭の上でお願いします!」
と自ら実践するように手を頭の上に挙げて手拍子をすると、驚くくらいにたくさんの手が頭の上に上がる。その光景はまるでこの日がSUPER BEAVERのワンマンの横浜アリーナ公演かのようだ。柳沢もサビ前にはその腕が上がった光景をさらに焼き付けたいとでもいうように
「横浜、手を挙げて見せてくれー!」
と叫ぶ。いつもと何かが決定的に違うわけではないけれど、この時点でビーバーがトリで良かったと思わざるを得ないパフォーマンスである。
すると渋谷は
「来てくださいなんて頭を下げられて行ったライブで良かった試しなんてない。俺たちがやらなければいけないことは、あなたをドキドキワクワクさせること。俺たちがあなたのことをドキドキワクワクさせることができれば、来てくださいなんて言わなくてもライブに来てくれるもんだと思っている」
と、現場至上主義(同名のライブハウスツアーも来年開催される)を掲げるバンドとしての矜持を感じさせる言葉を口にすると、再びメンバーが手を頭の上に高く挙げて手拍子を始めると、その光景が観客にも広がっていく「美しい日」が始まるのだが、柳沢のギターが出なくなり、ステージ左右の通路を歩きながら歌う渋谷のマイクもぶつ切りになってしまう機材トラブルが発生してしまう。ビーバーはメロディを柳沢のギターのみで担っているためにその音がなくなった時の違和感は凄まじいが、それでもこの日スクリーンに母とともに家庭菜園を営むロックバンドらしからぬ姿が映し出されていた上杉と藤原の2人は顔を見合わせながら演奏を続ける。
正直、曲をやり直すという選択肢もあったと思うけれど、それでも続けるというのは時間を押さないようにというイベント側と我々への配慮だろうし、きっとこうしたことは今までだって数え切れないくらいに経験してきているのだろう。(リリースされたばかりのドキュメンタリー作品には渋谷が思いっきり歌詞を飛ばしてメンバーに謝罪する場面まで収録されている)
曲中には復旧したものの、渋谷は間奏でステージ前の台に座り込み、
「なんだか機材トラブルで元気なくなってきちゃった。皆さんが俺たちに元気をくれますか?」
と、そんなトラブルすらもこのライブならではの逆境を跳ね返す力にしようとしているあたりは余裕というわけではないけれど、やはりビーバーのライブ経験があるからこその強さを感じさせる。
そうして観客からさらに元気をもらってから演奏されたのは新曲の「ひたむき」。「僕のヒーローアカデミア」の主題歌としてオンエアされている曲だが、ビーバーは正直華やかさ的にも主人公のデクのようなタイプではない。(むしろ幼なじみであり正反対のかっちゃんこと爆豪的なタイプか?)
でもこうして我々観客やイベントを作ってくれている人たちの力を自分たちのものにして鳴らす音に還元できるというのは紛れもなくヒーローそのものの在り方だ。ビーバーにはヒロアカのタイアップに使えそうな曲がこれまでにもたくさんあったが(「正攻法」や「突破口」など)、「ひたむき」という言葉はビーバーとヒロアカの2つのものをこれ以上ないくらいに最短距離で結びつけるようなワードだ。勇壮なコーラスパートを歌うメンバーの姿を見て、近い将来に我々の声がそのメンバーの声に乗ることができたらいいなと思っていた。
そして渋谷は
「聴かせてあげてるでも、聴いてあげてるでもない。聴いていただいてるでもない、聴かせていただいているでもない。一緒に音楽を作るということがどういうことかということ、楽しいってどういうことかを今日、あなたから教えてもらいました。本当にありがとうございます」
と、機材トラブルが起きてもそれを乗り越えた力を我々観客にもらい、それによって一緒に音楽を作れた、ライブを作れたということを口にする。
そんなビーバーの人間性をそのまま歌ったのが「人として」。ライブでやる率が今でも高いけれど、この曲を聴くといつも背筋を正される気持ちになる。
「馬鹿だねって言われたって
カッコ悪い人にはなりたくないじゃないか
人として 人として かっこよく生きていたいじゃないか」
という歌詞の通りに生きていたいと思う。ズルいことや悪いこと、人を傷つけるようなことをせずに。それはそうした生き方が1番カッコいいということをSUPER BEAVERは自分たちの姿で我々に示してくれているからだ。その結晶のような音楽がこの曲。もちろん渋谷の歌唱もメンバーの演奏もその生き様を思いっきり音に込めているから、この青臭いくらいにストレートな歌詞が真っ直ぐに心に響く。綺麗事だなんて鼻で笑ったりすることない、このカッコよさがわかる人間であれて本当に良かったと聴くたびに思う。
そして渋谷が
「愛してるー!」
という歌唱を思いっきり響かせるのは「アイラヴユー」。
「今僕らに 必要なのは 想う気持ち 想像力
今あなたに 必要なのは 想われてる その実感」
という今この時代に最も必要とされているものをそのまま歌詞にした思いを後押しするように客席からは手拍子が響く。柳沢も上杉もステージ左右に展開していくと、渋谷はカメラに近づきすぎてそのままカメラのレンズにキスをしてしまう。それもそうしたライブを作っているスタッフへの愛があるからできてしまえること。
ロックシーンのダークヒーロー的なオーラルの山中も愛について口にしていたが、その愛を歌ったこの曲がこの2日間の最後に響いたのは必然だったのかもしれない。それはこのバズリズムというイベントが音楽と、音楽を愛する人たちへの愛に満ちたイベントだったからだ。柳沢が最後にNOiDのタオルとともにこのイベントのタオルを掲げていたのはそれを象徴していた。やっぱりビーバーがトリを務めたこの日は、美しい日だったのだ。
1.名前を呼ぶよ
2.青い春
3.美しい日
4.ひたむき
5.人として
6.アイラヴユー
例えばフジテレビのLove Music Fesもそうであるが、TV番組のライブイベントというとどうにもロックファンとして最初は少し斜に構えてしまいがちになってしまう。でもこの2日間の出演者たちが番組への信頼を口にしていて、番組やイベントを作っている人が我々と同じように日々各地のライブハウスにライブを見に行っている。
そこで主催者の方々が知った音楽や、今まで聴いてきた音楽が目の前で鳴っている。あるいは会場のBGMとして転換中に流れている。この日もback numberのような超メジャーなバンドから秋山黄色、9mm Parabellum Bullet、THE BAWDIES、ヒトリエ…その音楽が好きじゃないと絶対選ばないような音楽がたくさん流れていた。
こうした音楽を好きな人が作っている番組が、スカパーの音楽専門チャンネルではなくて地上波でオンエアされている。自分が中学生くらいの時にこうした番組があってくれたら良かったのになぁと思うくらいにそれが嬉しく思えている。
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