Panorama Panama Town × BASEMENTBAR 共同企画「Basement Junction」 @下北沢BASEMENT BAR 10/6
- 2022/10/07
- 20:19
8月に自身の主催による、メンバーのソロとバンドでのライブによる「パノパナ」の日を行い、「ホームと思っている場所」と言っていたくらいにPanorama Panama Townにとって特別な場所と言える、下北沢のライブハウス、BASEMENT BAR。そのバンドとライブハウスの共同企画ライブがこの「Basement Junction」であり、バンドが若手バンドを迎えた対バン企画。それはシリーズ化していて3ヶ月連続で開催されていくのであるが、今月は個人的にお久しぶりのpeanut buttersと初めましてのpavilionを迎えての開催となる。
・peanut butters
平日とはいえ遅めの開演時間の19時30分を少し過ぎたところでステージにはPanorama Panama Townのギタリストの浪越康平を含めたバンドメンバーが先に登場。その後に首謀者のニシハラ(ボーカル&ギター)とボーカルのほのかがステージに登場。以前the telephonesとPOLYSICSが横浜の1000 CLUBで対バンした時にオープニングアクトとしてライブをしたのを見たことがあるのだが、その時はほぼ打ち込み+ギターとボーカルというスタイルだったのが完全にバンドスタイルに変化しているのがこの時点でわかる。
ニシハラも最初はギターに専念するのであるが、そもそもが脇を固める浪越をはじめとするバンドメンバーたちの演奏がめちゃくちゃ上手いだけに、ヘッドホンを装着して歌うほのかの声量がまだちょっとバンドの音に比して小さく感じてしまうのはウィスパーボイスというかボーカルスタイルなだけに致し方ないところであるが、それは「グッドモーニングおにぎり」からあまりにリズムが強力だからでもあるし、それによってバンド感、ライブ感は以前に見た時よりも遥かに増している。
言葉遊び的な歌詞とメロディの「メロンD」、浪越がステージ前に出てきてタイトル通りにサーフロックなギターを弾く「波乗りnammy」と次々に曲を演奏していくのだが、やはりこのバンドの曲は実にキャッチーだ。前に見た時はニシハラがずっと好きだったというPOLYSICSのカバーも演奏していたが、そのキャッチーなメロディとノイジーなギターは現在ではWurtsと共振するところもあるが、なんと言っても初期のSUPERCARを思い出させるし、ほのかはその見た目が驚くくらいに当時のフルカワミキにそっくり。明らかにSUPERCARが好きであろうニシハラはもしかしたらそうしたボーカリストを探していたのかもしれないと思うほど。
「ギターはPanorama Panama Townの浪越さんです。僕はずっと1人でネットで作った音楽を発表していたんですが、UK PROJECTっていう憧れだった事務所からライブをやってみないかと言われてTwitterでメンバーを募ったところ、なんと浪越さんが名乗り出てくださって。メジャーのバンドのメンバーだし怖い人だろうなって思ってたんですけど、実際はめちゃくちゃ良い人で。ギターのことも曲作りのこともいろんなことを教えてもらってます」
と、浪越が良き兄貴分になっていることを口にすると、その浪越が制作から関わったという、8月にリリースされたばかりの新作EP「E-Peanut」から言葉遊びの極みというか、もはや空耳アワー的な歌詞による、ニシハラもほのかの声にボーカルを重ねる「ジャスコ、上野」でそのサウンドはより蒼さを感じるようなギターロックさを増していく。
それはどこかダウナーなサウンドとメロディなのにタイトルだけ見ると元気に見える「愛を!!!!!」と、どこかシュールなタイトルはニシハラが人生を生きてきた中で得てきてしまったであろう独特のニヒリズムを感じさせるのだが、ベーシストがイントロから笑顔で手拍子をしながら、ほのかのボーカルが曲を経るごとに確かな力強さを帯びていく「スーパーハイパー忍者手裏剣」という意味不明過ぎるし歌詞に全然忍者らしさが出てこない曲のタイトルにもそれは現れている。果たしてどんな思考のもとにこうしたタイトルをつけているのかを問うてみたいところである。
そんなニシハラは2年前に初めてパノパナのライブを見た時にヒップホップ的な歌唱や韻の踏み方をする曲を聴いて衝撃を受けたらしいのだが、その話を語る際にいちいち
「そうですよね?浪越さん?」
と当事者である浪越に確認を取るのも、浪越が
「そうですね」
としか言えない絶妙にニシハラが浪越を操っているかのようにも見えるやり取りが実に面白いのであるが、そんなパノパナの韻の踏み方に影響を受けて作ったという「ツナマヨネーズ」は言われないとその要素に気付かないくらいに、確かにそう言われると「ダーリン」と「モーニング」で踏んでるな、ということがわかるのであるが、それでもサウンドはやはりパノパナのグルーヴィーさとは全く違うというのはニシハラから出てくるもの、やりたいことがこうしたキャッチーかつポップなギターロックだということだろう。
そのメロディとサウンドの心地良さによって客席の観客もライブ開始時よりもはるかに体が揺れているのがよくわかるのだが、その現状の最高峰と言えるのが最新作に収録されている、このバンドが鳴らすというだけで普通のロックにはならないということを逆手に取ったというか皮肉が効きまくっている「普通のロック」ではやはりイントロでベーシストが笑顔で手拍子を煽る中、
「夕方僕はさ」
というサビであり歌い出しのフレーズに合わせるかのようにオレンジ色の照明がステージを照らす。ほのかもこの曲ではヘッドホンを外して歌うのだが、そうした演出もエモーショナルさを増幅しているのか、ニシハラも思いっきり深く体を沈めるようにしてギターを弾く。それはネットシーンというバーチャルな場所から出てきたニシハラが、このバンドが今はライブというリアルでしかない場所で生きていることを示していた。
そう感じるのは前に見た時と全く違うな、と思う中で最後に演奏されたのはタイトルからしてSUPERCARの「cream soda」を彷彿とさせるタイトルの、甘いメロディとノイジーなギターすらもキャッチーに響き、間奏では浪越が前に出てきてギターを弾きまくる「パワーポップソーダ」。ああ、かつてSUPERCARのデビューアルバム「スリーアウトチェンジ」ばかり聴いていた頃のように、このバンドの音楽がこれから今まで以上にクセになってしまう。ニシハラが何か喋ろうとして結局何も喋らないというライブならではのユーモアも含めて。きっとこれからもっと広い場所でこの曲たちを聴くことができる日が来て、もっとたくさんの人がクセになって離れられなくなるはずだ。
1.グッドモーニングおにぎり
2.メロンD
3.波乗りnammy
4.ジャスコ、上野
5.愛を!!!!!
6.スーパーハイパー忍者手裏剣
7.ツナマヨネーズ
8.普通のロック
9.パワーポップソーダ
・pavilion
peanut buttersとは対照的に初めてライブを見るのがこの4人組バンド、pavilion。2019年に大学で結成というプロフィールからもまだ若いということがわかるが、ステージでセッティングしてサウンドチェックしている姿からはそんな若さよりもどこか「やってやんぜ」という堂々とした印象を受ける。
音源を聴いた限りではシンプルかつソリッドでシャープなギターロックバンドかと思っていたのだが、その音が鳴らされた瞬間に「え?全然違うじゃん!」と思ってしまった。それくらいに轟音かつ爆音だったからだ。それはオルタナ・グランジの影響を色濃く感じさせるし、森(ボーカル&ギター)の長めの金髪という髪型はそのサウンドも相まって否が応でもNirvanaのカート・コバーンを連想してしまうのだが、Nirvanaがそうであったように、このバンドもまた生きている上で感じてしまう、手に入れてしまう焦燥や衝動を全てその音に込めているバンドだ。そんな音の中にあってサビやアウトロなどでは山本(ギター)と佐藤(ベース)が森と共に「ラララ」的なコーラスフレーズを歌うなど、キャッチーなフックも随所にある。
しかし何と言っても凄まじいなと思うのはその演奏力とライブの完成度の高さ。2019年に結成ということは結成翌年からはコロナになってしまっているだけにこうしてライブをやれるようになったのはつい最近のはずなのだが、そんな経験の浅さは皆無とばかりに、ずっとこうしたライブハウスで生きてきたバンドとしてのライブだ。小山(ドラム)が曲間でもビートを刻んですぐに次の曲に繋がるというライブでのアレンジも確かにそうしたライブ猛者っぷりを感じさせる。特に山本の全身で弾くようなギター(シンプルでありながらも様々なエフェクターを駆使してサウンドに幅をもたらしている)はロックバンドが好きな人なら「かっこいいな…」と思わざるを得ないものである。
しかしながら終盤へ向けて一息つくように森がこのBasement Barは自分たちにとってもホームと言える場所であり、たまたまここの楽屋にいた時に岩渕に声をかけられてこの日出演することになったという経緯を語るのだが、ライブ中は叫ぶようにと言ってもいいくらいに声を張り上げていたのが、MCではむしろ声が小さいと思うくらいというのはどこか少年らしさを感じさせるな、と思っていたら森はチューニングをしながら弦を切ってしまうという実に珍しい弦の切り方によって、会場のスタッフに弦を持ってきてもらってその場で急遽張り替えることに。
なので何らかで時間を繋がないといけなくなるのだが、どこか[Alexandros]の磯部を彷彿とさせる出で立ちと弾き方の佐藤も、ぶっ叩きまくるというスタイルによって汗が飛び散る小山も明らかに喋り慣れていないのがよくわかるのだが、山本に至っては普段のライブで喋ることすらないという。
それでも
「ボーカルのおばあちゃんが革職人で。そのおばあちゃんが作ってくれた革製のキーホルダーが物販で売ってます。500円で買えるんで」
「明日、新宿LOFTで初めてオールナイトのライブイベントに出ます。もし家に帰る終電を逃したりしたら下北沢から新宿はすぐなんで、遊びに来てください」
など、弦を張り替えるまでなんとかその場を繋ごうとするのだが、そうして話している時によく顔を見ると、演奏中に比べるとメンバーは実にあどけない顔をしていることがわかる。しかしそんな少年のような見た目であってもそれを感じさせないようにMCをほとんどしないのはきっと自分たちが鳴らしている音だけでその場を持っていけるバンドだということをわかっているんだろう。
実際に弦を張り替え終えて、このバンドの中で最もキャッチーなメロディだと言える「Yumeji Over Drive」からの終盤ではそれまで以上に体が揺れている観客もたくさんいた。それはこのバンドの鳴らす音に観客が確かに反応していたということだ。小山は叩くのが力強すぎるからか、シンバルが吹っ飛んではスタッフが直すというのが毎曲続いて途中からはもう苦笑いをしていたし、森も
「この後にみんなが待ってるパノパナが出てくるっていうのに俺たちの茶番に付き合わせてすいません(笑)」
と言っていた。確かに弦が切れたのはアクシデントだったけれど、このバンドのライブは全く茶番なんかじゃない。TVやTikTokで流れることはないかもしれないけれど、こうした地下のライブハウスのヒーローにはなれる。そんな可能性を持ったバンドのライブを観ることができたと自分は思っていたから。
・Panorama Panama Town
そんな全くタイプの違う2バンドの後にこの日の主催者であるPanorama Panama Town。転換中にはSUPERCAR「DRIVE」が流れたりしていたのはpeanut buttersに合わせてのものだろうけれど、浪越はそのpeanut buttersに続いての2ステージ目。常に飄々としている表情の男だが、かつてもライブ中に急に上半身裸になって演奏したりしていたように、バンドに、音楽に対する熱さを持っている男だからこそできるスケジュールである。
おなじみのSuede「Beautiful Ones」のSEが流れるとそれだけで大合唱したくなるくらいにテンションが上がるのはこの曲をかつてNANO-MUGEN FES.やサマソニでそうして合唱してきたからであるが、そんな曲に乗ってメンバーが登場すると、小さい規模のライブハウスだからこそ自分たちのライブの前には客席で対バン相手のライブを見ていた岩渕想太(ボーカル&ギター)は客席にいた時のオシャレかつクールなジャケット姿からシャツのみに変わっている。それは紛れもなく臨戦態勢ということである。それは田野明彦(ベース)もそうであるが、浪越は当然peanut buttersのライブ時と出で立ちは変わることはない。
そんなバンドが鳴らす1曲目は昨年リリースの最新アルバム「Faces」収録の「Strange Days」。
「頭が揺れる」
のフレーズのリフレインも含めて「クールなパノパナ」(それはプロデューサーのthe telephones石毛輝によってもたらされたものでもあると思う)を感じさせるようなニューウェイブと言っていいサウンドを取り入れたこの曲が、8月の「パノパナの日」のライブでもそう感じたように、こうした小さいライブハウスで鍛え上げられてきたからこその熱いロックサウンドに変化している。それは田野の体全体でグルーヴさせるようなベース、オオミハヤト(ドラム)の田野との阿吽の呼吸と言える相性の良さ、岩渕の目の前にいる観客への感謝を示すような激しいギターというメンバーのパフォーマンスからも感じられるものである。
それはやはり「100yen coffee」でも同じであるのだが、浪越が前に出てきてギターを弾くのも、タイトルフレーズで浪越と田野が岩渕のボーカルにコーラスを重ねるのも、完全にこの曲が熱いロックチューンとして生まれ変わっている証拠だ。なんなら「Faces」の中でも最もクールなイメージのある曲であるだけに1番ライブで化けた曲かもしれない。「Faces」リリース時の東京キネマ倶楽部のライブの時とはもはや別物と言っていいくらいだ。
8月の「パノパナの日」にも演奏されていた新曲「Bad Night」もここで披露されるのであるが、田野のうねりまくるようなベースと岩渕の刻が刻み、浪越の変幻自在のギターというメンバーそれぞれの演奏がニューレイヴという今となっては懐かしい言葉を思い出させるように狂騒のダンスチューンとして鳴らされる。それは「Faces」を経て、さらにその先を感じさせるものとも言える。こうしてちゃんとライブができるようになって見えているものが曲に落とし込まれているという意味でも。
そんな中で岩渕の声に少しリバーブがかかっているようなマイクエフェクトが施されているのは「Faces」の最後に収録されている「Melody Lane」。そのタイトル通りにこのバンドの持つメロディの強さが遺憾なく発揮された曲であるが、ただライブでひたすら爆裂するのではなくて、こうした曲ではしっかりそのメロディを引き立てるような演奏をしているというのも見事である。それは意識的にそうしているところもあるのだろうし、感覚的に体が意識せずともそうしている部分だってあると思う。
するとここで岩渕は
「peanut buttersは浪越がライブに参加するようになって、制作にも浪越が関わるようになって。そうして得てきたものがこのバンドにも還元されているというか。そういう浪越を見ていたり、今までとは違うギターや曲作りを見るとこっちもより刺激をもらえる。
pavilionはライブ見て直接声をかけさせてもらったんだけど、今の時代に4人だけの音でロックをやるのって難しいこともあると思うんだけど、そのカッコよさを追求してる。あんな曲書きたいなって思わせてくれるバンド」
と、文学を愛する作詞家として、こんなライブレポよりも圧倒的に簡潔かつ納得できる言葉でそれぞれの魅力を説明してみせるのはさすがだ。個人的にレビューの仕事とかももっとやってもらいたいと思うアーティストの1人である。
そんなパノパナもさらなる新曲として「Knock」という曲が演奏される。パノパナの日にも浪越が新曲のデモを流しながらギターを弾いていたりしたけれども、この曲はその時の曲とはまた違った、浪越がシンセも弾きながら前半は抑制されたビートが後半で一気に爆発して開かれていくようなタイプの曲。それは「新しいドアをノックして開く」というテーマの歌詞だっただけに、この展開はドアが開く前と開いた後というのを表しているのかもしれない。この日の来場者にはこの曲のデモ音源もプレゼントされたが、完成形も実に気になるところだし、こうしてライブをやりながら新曲が次々に生まれているというあたりに今のパノパナの絶好調っぷりを感じざるを得ない。
peanut buttersのニシハラも口にしていた、パノパナのラップ的な歌唱の最新系とも言えるのが「Faceless」であり、驚くくらいの「Faces」の曲の連打っぷり。それはこのアルバムの曲をさらにライブで研ぎ澄ませていくことによってこれから先に見えてくるものがあるのだとも思うけれど、岩渕の歌唱もかつてのミクスチャーロック的なラップ歌唱ではなくて、現行のUSヒップホップ的なものであるが、長身の岩渕がマイクスタンドを握りしめて歌う姿は本当に絵になる。
さらには「King's Eyes」とやはり「Faces」の曲の連打であるが、イントロでのオオミのリズムに合わせた明滅する照明も、ギターってこんなに多彩な音が出るのかと改めて思わせてくれるような浪越のシンセで鳴らすホーンの音のようなギターも、浪越と田野がぴょんぴょんと演奏しながら飛び跳ねる姿も、もしかしたらこの曲が最もライブで化けた曲と言えるかもしれない。なんなら「Faces」を今のバンドの演奏でライブ盤にして再リリースして欲しいとすら思ってしまうくらいに。
とはいえやはりこの日はスリーマンでの対バンということで持ち時間は主催者でも長くはないためにあっという間に最後の曲になるのだが、ここでこのバンドがグルーヴの申し子たる所以と言えるような「MOMO」が演奏されることによってステージも客席もテンションはピークへ。
この曲を聴くといつもこのバンドのライブを初めて見た、SWEET LOVE SHOWERのオープニングアクトでのライブを思い出す。あの時に「とんでもない新人バンドが出てきたな…」と思った衝撃が、こうして何回ライブを見ても同じように感じられるのは、パノパナが常に自分たちを更新するようなライブをやってきたからこそ、毎回新しい衝撃としてこの曲のグルーヴを受け止めることができているからだ。
田野の体全体をうねらせてグルーヴの土台を作り出すベースも、間奏でステージ前に歩み出て弾きまくる浪越のギターも、エネルギッシュさを感じざるを得ない岩渕のボーカルとギターも、それを支えながら前進させるオオミのドラムも。やっぱりこのバンドは凄いバンドだよなとライブを観るといつも再確認させられる。今より多くの人にそれが伝わる機会があったら、と思うくらいに。
アンコールで再びメンバーが登場すると、岩渕はこの日がオオミの誕生日であり、29歳になったことを告げる。その言葉に両手を広げて応えるオオミはもう完全にこのバンドには必要不可欠な存在であるが、もうパノパナも30代が見えてきているのか…と時間の流れの速さも感じてしまう。
しかしさすがに時間がないのか、
「時間ないから1曲だけやっていい?」
と会場スタッフに確認しながら、
「こんな夜がもっと大きくなるようにっていう願いを込めて」
と言い、確かにそのメッセージが
「幾つもの夜を越えて
未だ見ぬ光へ Good Bye」
というフレーズに宿った「Sad Good Night」を鳴らす。もちろんライブハウスバンドとしての熱さ、ロックバンドとしての力強さはありつつも、そこにはこんな素敵な夜だからこそのロマンチックさがあった。これからこの曲はきっとこうした夜の最後に響く曲になっていく。そんな余韻を確かに感じさせると、岩渕は
「また来月!」
と来月に続くこのイベントでの再会を約束し、この日誕生日のオオミが観客の拍手に応えて腕を振っていた。こんな状況じゃなかったら「Happy Birthday」を歌って祝うことができていたんだろうか。それは来年の10月6日に叶うことになれたらと思う。
今ではもう2マンの対バンライブは普通に見れるようになってきた。最近は自分があまりそういうライブに行ってないだけだが、こうして小さなライブハウスで3マンのライブを見て、夜遅くに電車で帰る。そんなコロナ前は当たり前だったライブが自分の中にようやく戻ってきた。そんな感覚を確かに感じさせてくれながら、パノパナのこれからにもっと期待したくなるようなBasement Junctionだった。
1.Strange Days
2.100yen coffee
3.Bad Night
4.Melody Lane
5.Knock (新曲)
6.Faceless
7.King's Eyes
8.MOMO
encore
9.Sad Good Night
・peanut butters
平日とはいえ遅めの開演時間の19時30分を少し過ぎたところでステージにはPanorama Panama Townのギタリストの浪越康平を含めたバンドメンバーが先に登場。その後に首謀者のニシハラ(ボーカル&ギター)とボーカルのほのかがステージに登場。以前the telephonesとPOLYSICSが横浜の1000 CLUBで対バンした時にオープニングアクトとしてライブをしたのを見たことがあるのだが、その時はほぼ打ち込み+ギターとボーカルというスタイルだったのが完全にバンドスタイルに変化しているのがこの時点でわかる。
ニシハラも最初はギターに専念するのであるが、そもそもが脇を固める浪越をはじめとするバンドメンバーたちの演奏がめちゃくちゃ上手いだけに、ヘッドホンを装着して歌うほのかの声量がまだちょっとバンドの音に比して小さく感じてしまうのはウィスパーボイスというかボーカルスタイルなだけに致し方ないところであるが、それは「グッドモーニングおにぎり」からあまりにリズムが強力だからでもあるし、それによってバンド感、ライブ感は以前に見た時よりも遥かに増している。
言葉遊び的な歌詞とメロディの「メロンD」、浪越がステージ前に出てきてタイトル通りにサーフロックなギターを弾く「波乗りnammy」と次々に曲を演奏していくのだが、やはりこのバンドの曲は実にキャッチーだ。前に見た時はニシハラがずっと好きだったというPOLYSICSのカバーも演奏していたが、そのキャッチーなメロディとノイジーなギターは現在ではWurtsと共振するところもあるが、なんと言っても初期のSUPERCARを思い出させるし、ほのかはその見た目が驚くくらいに当時のフルカワミキにそっくり。明らかにSUPERCARが好きであろうニシハラはもしかしたらそうしたボーカリストを探していたのかもしれないと思うほど。
「ギターはPanorama Panama Townの浪越さんです。僕はずっと1人でネットで作った音楽を発表していたんですが、UK PROJECTっていう憧れだった事務所からライブをやってみないかと言われてTwitterでメンバーを募ったところ、なんと浪越さんが名乗り出てくださって。メジャーのバンドのメンバーだし怖い人だろうなって思ってたんですけど、実際はめちゃくちゃ良い人で。ギターのことも曲作りのこともいろんなことを教えてもらってます」
と、浪越が良き兄貴分になっていることを口にすると、その浪越が制作から関わったという、8月にリリースされたばかりの新作EP「E-Peanut」から言葉遊びの極みというか、もはや空耳アワー的な歌詞による、ニシハラもほのかの声にボーカルを重ねる「ジャスコ、上野」でそのサウンドはより蒼さを感じるようなギターロックさを増していく。
それはどこかダウナーなサウンドとメロディなのにタイトルだけ見ると元気に見える「愛を!!!!!」と、どこかシュールなタイトルはニシハラが人生を生きてきた中で得てきてしまったであろう独特のニヒリズムを感じさせるのだが、ベーシストがイントロから笑顔で手拍子をしながら、ほのかのボーカルが曲を経るごとに確かな力強さを帯びていく「スーパーハイパー忍者手裏剣」という意味不明過ぎるし歌詞に全然忍者らしさが出てこない曲のタイトルにもそれは現れている。果たしてどんな思考のもとにこうしたタイトルをつけているのかを問うてみたいところである。
そんなニシハラは2年前に初めてパノパナのライブを見た時にヒップホップ的な歌唱や韻の踏み方をする曲を聴いて衝撃を受けたらしいのだが、その話を語る際にいちいち
「そうですよね?浪越さん?」
と当事者である浪越に確認を取るのも、浪越が
「そうですね」
としか言えない絶妙にニシハラが浪越を操っているかのようにも見えるやり取りが実に面白いのであるが、そんなパノパナの韻の踏み方に影響を受けて作ったという「ツナマヨネーズ」は言われないとその要素に気付かないくらいに、確かにそう言われると「ダーリン」と「モーニング」で踏んでるな、ということがわかるのであるが、それでもサウンドはやはりパノパナのグルーヴィーさとは全く違うというのはニシハラから出てくるもの、やりたいことがこうしたキャッチーかつポップなギターロックだということだろう。
そのメロディとサウンドの心地良さによって客席の観客もライブ開始時よりもはるかに体が揺れているのがよくわかるのだが、その現状の最高峰と言えるのが最新作に収録されている、このバンドが鳴らすというだけで普通のロックにはならないということを逆手に取ったというか皮肉が効きまくっている「普通のロック」ではやはりイントロでベーシストが笑顔で手拍子を煽る中、
「夕方僕はさ」
というサビであり歌い出しのフレーズに合わせるかのようにオレンジ色の照明がステージを照らす。ほのかもこの曲ではヘッドホンを外して歌うのだが、そうした演出もエモーショナルさを増幅しているのか、ニシハラも思いっきり深く体を沈めるようにしてギターを弾く。それはネットシーンというバーチャルな場所から出てきたニシハラが、このバンドが今はライブというリアルでしかない場所で生きていることを示していた。
そう感じるのは前に見た時と全く違うな、と思う中で最後に演奏されたのはタイトルからしてSUPERCARの「cream soda」を彷彿とさせるタイトルの、甘いメロディとノイジーなギターすらもキャッチーに響き、間奏では浪越が前に出てきてギターを弾きまくる「パワーポップソーダ」。ああ、かつてSUPERCARのデビューアルバム「スリーアウトチェンジ」ばかり聴いていた頃のように、このバンドの音楽がこれから今まで以上にクセになってしまう。ニシハラが何か喋ろうとして結局何も喋らないというライブならではのユーモアも含めて。きっとこれからもっと広い場所でこの曲たちを聴くことができる日が来て、もっとたくさんの人がクセになって離れられなくなるはずだ。
1.グッドモーニングおにぎり
2.メロンD
3.波乗りnammy
4.ジャスコ、上野
5.愛を!!!!!
6.スーパーハイパー忍者手裏剣
7.ツナマヨネーズ
8.普通のロック
9.パワーポップソーダ
・pavilion
peanut buttersとは対照的に初めてライブを見るのがこの4人組バンド、pavilion。2019年に大学で結成というプロフィールからもまだ若いということがわかるが、ステージでセッティングしてサウンドチェックしている姿からはそんな若さよりもどこか「やってやんぜ」という堂々とした印象を受ける。
音源を聴いた限りではシンプルかつソリッドでシャープなギターロックバンドかと思っていたのだが、その音が鳴らされた瞬間に「え?全然違うじゃん!」と思ってしまった。それくらいに轟音かつ爆音だったからだ。それはオルタナ・グランジの影響を色濃く感じさせるし、森(ボーカル&ギター)の長めの金髪という髪型はそのサウンドも相まって否が応でもNirvanaのカート・コバーンを連想してしまうのだが、Nirvanaがそうであったように、このバンドもまた生きている上で感じてしまう、手に入れてしまう焦燥や衝動を全てその音に込めているバンドだ。そんな音の中にあってサビやアウトロなどでは山本(ギター)と佐藤(ベース)が森と共に「ラララ」的なコーラスフレーズを歌うなど、キャッチーなフックも随所にある。
しかし何と言っても凄まじいなと思うのはその演奏力とライブの完成度の高さ。2019年に結成ということは結成翌年からはコロナになってしまっているだけにこうしてライブをやれるようになったのはつい最近のはずなのだが、そんな経験の浅さは皆無とばかりに、ずっとこうしたライブハウスで生きてきたバンドとしてのライブだ。小山(ドラム)が曲間でもビートを刻んですぐに次の曲に繋がるというライブでのアレンジも確かにそうしたライブ猛者っぷりを感じさせる。特に山本の全身で弾くようなギター(シンプルでありながらも様々なエフェクターを駆使してサウンドに幅をもたらしている)はロックバンドが好きな人なら「かっこいいな…」と思わざるを得ないものである。
しかしながら終盤へ向けて一息つくように森がこのBasement Barは自分たちにとってもホームと言える場所であり、たまたまここの楽屋にいた時に岩渕に声をかけられてこの日出演することになったという経緯を語るのだが、ライブ中は叫ぶようにと言ってもいいくらいに声を張り上げていたのが、MCではむしろ声が小さいと思うくらいというのはどこか少年らしさを感じさせるな、と思っていたら森はチューニングをしながら弦を切ってしまうという実に珍しい弦の切り方によって、会場のスタッフに弦を持ってきてもらってその場で急遽張り替えることに。
なので何らかで時間を繋がないといけなくなるのだが、どこか[Alexandros]の磯部を彷彿とさせる出で立ちと弾き方の佐藤も、ぶっ叩きまくるというスタイルによって汗が飛び散る小山も明らかに喋り慣れていないのがよくわかるのだが、山本に至っては普段のライブで喋ることすらないという。
それでも
「ボーカルのおばあちゃんが革職人で。そのおばあちゃんが作ってくれた革製のキーホルダーが物販で売ってます。500円で買えるんで」
「明日、新宿LOFTで初めてオールナイトのライブイベントに出ます。もし家に帰る終電を逃したりしたら下北沢から新宿はすぐなんで、遊びに来てください」
など、弦を張り替えるまでなんとかその場を繋ごうとするのだが、そうして話している時によく顔を見ると、演奏中に比べるとメンバーは実にあどけない顔をしていることがわかる。しかしそんな少年のような見た目であってもそれを感じさせないようにMCをほとんどしないのはきっと自分たちが鳴らしている音だけでその場を持っていけるバンドだということをわかっているんだろう。
実際に弦を張り替え終えて、このバンドの中で最もキャッチーなメロディだと言える「Yumeji Over Drive」からの終盤ではそれまで以上に体が揺れている観客もたくさんいた。それはこのバンドの鳴らす音に観客が確かに反応していたということだ。小山は叩くのが力強すぎるからか、シンバルが吹っ飛んではスタッフが直すというのが毎曲続いて途中からはもう苦笑いをしていたし、森も
「この後にみんなが待ってるパノパナが出てくるっていうのに俺たちの茶番に付き合わせてすいません(笑)」
と言っていた。確かに弦が切れたのはアクシデントだったけれど、このバンドのライブは全く茶番なんかじゃない。TVやTikTokで流れることはないかもしれないけれど、こうした地下のライブハウスのヒーローにはなれる。そんな可能性を持ったバンドのライブを観ることができたと自分は思っていたから。
・Panorama Panama Town
そんな全くタイプの違う2バンドの後にこの日の主催者であるPanorama Panama Town。転換中にはSUPERCAR「DRIVE」が流れたりしていたのはpeanut buttersに合わせてのものだろうけれど、浪越はそのpeanut buttersに続いての2ステージ目。常に飄々としている表情の男だが、かつてもライブ中に急に上半身裸になって演奏したりしていたように、バンドに、音楽に対する熱さを持っている男だからこそできるスケジュールである。
おなじみのSuede「Beautiful Ones」のSEが流れるとそれだけで大合唱したくなるくらいにテンションが上がるのはこの曲をかつてNANO-MUGEN FES.やサマソニでそうして合唱してきたからであるが、そんな曲に乗ってメンバーが登場すると、小さい規模のライブハウスだからこそ自分たちのライブの前には客席で対バン相手のライブを見ていた岩渕想太(ボーカル&ギター)は客席にいた時のオシャレかつクールなジャケット姿からシャツのみに変わっている。それは紛れもなく臨戦態勢ということである。それは田野明彦(ベース)もそうであるが、浪越は当然peanut buttersのライブ時と出で立ちは変わることはない。
そんなバンドが鳴らす1曲目は昨年リリースの最新アルバム「Faces」収録の「Strange Days」。
「頭が揺れる」
のフレーズのリフレインも含めて「クールなパノパナ」(それはプロデューサーのthe telephones石毛輝によってもたらされたものでもあると思う)を感じさせるようなニューウェイブと言っていいサウンドを取り入れたこの曲が、8月の「パノパナの日」のライブでもそう感じたように、こうした小さいライブハウスで鍛え上げられてきたからこその熱いロックサウンドに変化している。それは田野の体全体でグルーヴさせるようなベース、オオミハヤト(ドラム)の田野との阿吽の呼吸と言える相性の良さ、岩渕の目の前にいる観客への感謝を示すような激しいギターというメンバーのパフォーマンスからも感じられるものである。
それはやはり「100yen coffee」でも同じであるのだが、浪越が前に出てきてギターを弾くのも、タイトルフレーズで浪越と田野が岩渕のボーカルにコーラスを重ねるのも、完全にこの曲が熱いロックチューンとして生まれ変わっている証拠だ。なんなら「Faces」の中でも最もクールなイメージのある曲であるだけに1番ライブで化けた曲かもしれない。「Faces」リリース時の東京キネマ倶楽部のライブの時とはもはや別物と言っていいくらいだ。
8月の「パノパナの日」にも演奏されていた新曲「Bad Night」もここで披露されるのであるが、田野のうねりまくるようなベースと岩渕の刻が刻み、浪越の変幻自在のギターというメンバーそれぞれの演奏がニューレイヴという今となっては懐かしい言葉を思い出させるように狂騒のダンスチューンとして鳴らされる。それは「Faces」を経て、さらにその先を感じさせるものとも言える。こうしてちゃんとライブができるようになって見えているものが曲に落とし込まれているという意味でも。
そんな中で岩渕の声に少しリバーブがかかっているようなマイクエフェクトが施されているのは「Faces」の最後に収録されている「Melody Lane」。そのタイトル通りにこのバンドの持つメロディの強さが遺憾なく発揮された曲であるが、ただライブでひたすら爆裂するのではなくて、こうした曲ではしっかりそのメロディを引き立てるような演奏をしているというのも見事である。それは意識的にそうしているところもあるのだろうし、感覚的に体が意識せずともそうしている部分だってあると思う。
するとここで岩渕は
「peanut buttersは浪越がライブに参加するようになって、制作にも浪越が関わるようになって。そうして得てきたものがこのバンドにも還元されているというか。そういう浪越を見ていたり、今までとは違うギターや曲作りを見るとこっちもより刺激をもらえる。
pavilionはライブ見て直接声をかけさせてもらったんだけど、今の時代に4人だけの音でロックをやるのって難しいこともあると思うんだけど、そのカッコよさを追求してる。あんな曲書きたいなって思わせてくれるバンド」
と、文学を愛する作詞家として、こんなライブレポよりも圧倒的に簡潔かつ納得できる言葉でそれぞれの魅力を説明してみせるのはさすがだ。個人的にレビューの仕事とかももっとやってもらいたいと思うアーティストの1人である。
そんなパノパナもさらなる新曲として「Knock」という曲が演奏される。パノパナの日にも浪越が新曲のデモを流しながらギターを弾いていたりしたけれども、この曲はその時の曲とはまた違った、浪越がシンセも弾きながら前半は抑制されたビートが後半で一気に爆発して開かれていくようなタイプの曲。それは「新しいドアをノックして開く」というテーマの歌詞だっただけに、この展開はドアが開く前と開いた後というのを表しているのかもしれない。この日の来場者にはこの曲のデモ音源もプレゼントされたが、完成形も実に気になるところだし、こうしてライブをやりながら新曲が次々に生まれているというあたりに今のパノパナの絶好調っぷりを感じざるを得ない。
peanut buttersのニシハラも口にしていた、パノパナのラップ的な歌唱の最新系とも言えるのが「Faceless」であり、驚くくらいの「Faces」の曲の連打っぷり。それはこのアルバムの曲をさらにライブで研ぎ澄ませていくことによってこれから先に見えてくるものがあるのだとも思うけれど、岩渕の歌唱もかつてのミクスチャーロック的なラップ歌唱ではなくて、現行のUSヒップホップ的なものであるが、長身の岩渕がマイクスタンドを握りしめて歌う姿は本当に絵になる。
さらには「King's Eyes」とやはり「Faces」の曲の連打であるが、イントロでのオオミのリズムに合わせた明滅する照明も、ギターってこんなに多彩な音が出るのかと改めて思わせてくれるような浪越のシンセで鳴らすホーンの音のようなギターも、浪越と田野がぴょんぴょんと演奏しながら飛び跳ねる姿も、もしかしたらこの曲が最もライブで化けた曲と言えるかもしれない。なんなら「Faces」を今のバンドの演奏でライブ盤にして再リリースして欲しいとすら思ってしまうくらいに。
とはいえやはりこの日はスリーマンでの対バンということで持ち時間は主催者でも長くはないためにあっという間に最後の曲になるのだが、ここでこのバンドがグルーヴの申し子たる所以と言えるような「MOMO」が演奏されることによってステージも客席もテンションはピークへ。
この曲を聴くといつもこのバンドのライブを初めて見た、SWEET LOVE SHOWERのオープニングアクトでのライブを思い出す。あの時に「とんでもない新人バンドが出てきたな…」と思った衝撃が、こうして何回ライブを見ても同じように感じられるのは、パノパナが常に自分たちを更新するようなライブをやってきたからこそ、毎回新しい衝撃としてこの曲のグルーヴを受け止めることができているからだ。
田野の体全体をうねらせてグルーヴの土台を作り出すベースも、間奏でステージ前に歩み出て弾きまくる浪越のギターも、エネルギッシュさを感じざるを得ない岩渕のボーカルとギターも、それを支えながら前進させるオオミのドラムも。やっぱりこのバンドは凄いバンドだよなとライブを観るといつも再確認させられる。今より多くの人にそれが伝わる機会があったら、と思うくらいに。
アンコールで再びメンバーが登場すると、岩渕はこの日がオオミの誕生日であり、29歳になったことを告げる。その言葉に両手を広げて応えるオオミはもう完全にこのバンドには必要不可欠な存在であるが、もうパノパナも30代が見えてきているのか…と時間の流れの速さも感じてしまう。
しかしさすがに時間がないのか、
「時間ないから1曲だけやっていい?」
と会場スタッフに確認しながら、
「こんな夜がもっと大きくなるようにっていう願いを込めて」
と言い、確かにそのメッセージが
「幾つもの夜を越えて
未だ見ぬ光へ Good Bye」
というフレーズに宿った「Sad Good Night」を鳴らす。もちろんライブハウスバンドとしての熱さ、ロックバンドとしての力強さはありつつも、そこにはこんな素敵な夜だからこそのロマンチックさがあった。これからこの曲はきっとこうした夜の最後に響く曲になっていく。そんな余韻を確かに感じさせると、岩渕は
「また来月!」
と来月に続くこのイベントでの再会を約束し、この日誕生日のオオミが観客の拍手に応えて腕を振っていた。こんな状況じゃなかったら「Happy Birthday」を歌って祝うことができていたんだろうか。それは来年の10月6日に叶うことになれたらと思う。
今ではもう2マンの対バンライブは普通に見れるようになってきた。最近は自分があまりそういうライブに行ってないだけだが、こうして小さなライブハウスで3マンのライブを見て、夜遅くに電車で帰る。そんなコロナ前は当たり前だったライブが自分の中にようやく戻ってきた。そんな感覚を確かに感じさせてくれながら、パノパナのこれからにもっと期待したくなるようなBasement Junctionだった。
1.Strange Days
2.100yen coffee
3.Bad Night
4.Melody Lane
5.Knock (新曲)
6.Faceless
7.King's Eyes
8.MOMO
encore
9.Sad Good Night
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