UNISON SQUARE GARDEN TOUR 2022 「kaleido proud fiesta」 @東京ガーデンシアター 9/27
- 2022/09/29
- 19:31
かくして、またストーリーは始まるとばかりにニューシングル「kaleido proud fiesta」をリリースした、UNISON SQUARE GARDEN。もちろんそのリリースツアーで全国を回ってきたのであるが、ツアーファイナルは東京ガーデンシアターでのワンマン。シングルのツアーということはアルバムツアーよりも選曲に自由度が高いだけに、どんなセトリで我々を驚かせてくれるのだろうか。
フルキャパのガーデンシアターはアリーナから最上階までぎっしりと観客で埋まっており、そりゃあこれじゃあもうなかなかチケット取れないよなぁとも思う中で平日にしては早めの18:30に主催者による注意事項のアナウンスがあると、そのまま場内が暗転しておなじみのSEであるイズミカワソラ「絵の具」が流れる。
しかしながらこの日はステージに紗幕が張られており、メンバーがステージに登場するシルエットが見えてもその紗幕が張ったままで「harmonized finale」のピアノの同期の音が流れる。ツアーは全国各地の様々な会場で行われているだけに、ことさらここに合わせたものではないだろうけれど、この曲は2年前のまだ全然ライブが行われていなかったこの時期に開催された着席限定ライブこと「Live on the seat」で我々とのライブでの再会を約束するように最後に演奏されていた曲である。その記憶が蘇ってくるからこそ、こうして2年経って満員の観客が全員立った状態のこの会場にユニゾンと一緒に戻ってくることができたのである。
とはいえ「harmonized finale」演奏中にも全く幕が上がったりせず、照明の当たり具合によってメンバーのシルエットが巨大に見えたり、はたまたサビでは照明を落とすことによって紗幕越しではあるがメンバーの姿がはっきり見えたりもするのであるが、斎藤宏介(ボーカル&ギター)の歌と同期のピアノの音だけになる
「harmonized finale 星座になる 沢山の願いを乗せて」
というフレーズでは紗幕越しであってもステージ背面にまさに星座を思わせるような電飾が光る。メンバーはいつものように演奏しているだけというのは変わらないが、そのメンバーの演奏と曲の魅力を、ユニゾンのライブの哲学を逸脱することのない演出でさらに引き出している。2年前のこの曲でずっと座っていたこと、久しぶりにこうした大きな会場でロックバンドのライブを見れたことが頭の中に蘇ってきてしまって、1曲目からすでに感動してしまった。この間にすでにこのガーデンシアターに数え切れないくらいに来ているし、ユニゾンのライブだっていろんな場所でたくさん観てきたけれど、それでもどこか「戻ってきた」という感覚が確かにあった。
そんなオープニングから斎藤がシャープなギターを鳴らし、鈴木貴雄(ドラム)が思いっきり手数を増やして叩く「箱庭ロック・ショー」は最初期の曲であるが、この「kaleido proud fiesta」のツアーで聴くことによって、また始まったストーリーは流線形なんだろうなと思わせてくれる。それは今までのユニゾンと変わることがないものだということである。
そんな演奏がいきなり全てのサウンドが詰め込まれまくるように性急になる「世界はファンシー」では田淵智也(ベース)がいよいよとばかりにステージを左右に、たまに本当に弾いているのか疑わしくなるくらいに忙しない挙動で動き回りながら演奏し、その田淵の動きに惑わされることのない斎藤は詰め込まれまくった歌詞を身振りも含めて抑揚をつけながら丁寧に歌い、間奏ではやはり自身のファンタスティックギターが火を吹くように鳴らされるのであるが、まだ今より演奏技術が拙かった初期の曲でそうするのならわかるのだが、どちらかと言うと近年の曲と言えるこの曲ですらも鈴木が手数を増やしまくっているというのは、そんな近年の中でも鈴木がゲーマーとしてだけではなくてドラマーとしてさらに高いレベルに到達しているということである。その3人の演奏によるせめぎ合いのようなスリリングさはユニゾンのライブだからこそ見ることができるロックバンドのカッコ良さと楽しさである。
さらにはイントロから田淵が飛び跳ねまくり、ということは我々も飛び跳ねまくらざるを得ない「シャンデリア・ワルツ」といういきなりクライマックスがここで来たかと思うようなセトリの組み方。こういうのは周年ライブとか1本限りの特別なライブでやるものじゃないですかね、とも思うのであるが、我々がそうして驚いていることをセトリおじさんこと田淵がしてやったりと喜んでいるのが伝わってくるかのようだ。
「UNISON SQUARE GARDENです。最後までよろしく!」
とだけ斎藤が挨拶してこの日初めての曲間が訪れると、明らかにここまでとはモードチェンジしたのがよくわかるのは紫色などの妖しい照明に照らされながら田淵も妖艶さを感じさせるベースを弾く「CAPACITY超える」で、いやすでに冒頭4曲で感情のCAPACITY超えてるんですけど、と思う我々をジャズに思いっきり振り切れたアレンジによってさらにCAPACITYを超えさせてくる。この曲を聴いていると、ユニゾンで止まることなく活動してきたのはもちろん、それ以外でのそれぞれの活動も全てがユニゾンに還元されているんじゃないかと思う。やっぱりこの3人は根がミュージシャンやアーティストっていうよりはバンドマンであり、それはこのバンドでこうして音を鳴らしているからこそそう感じられるというような。
そんな新たなユニゾンのサウンドの一面を垣間見せたかと思いきや、真逆の爽やかかつストレートなギターロックの「Silent Libre Mirage」という、その後にリリースされてきたシングル曲やリード曲があまりに強すぎるが故に少し印象が薄くなってきていたこの曲を取り上げるという流れも実に見事なのは「CAPACITY超える」のアレンジとの対比によってその爽やかさとストレートさが際立つからだ。斎藤のボーカルも序盤は少しキツそうなところもあったが(というか最初から150kmのストレートを投げさせまくるようなセトリだからキツくなって当たり前なのだが)、この辺りではいつもの安定感をしっかり取り戻しているのもさすがである。
とはいえこうなるとこの後にどんな曲が来るのか全く想像できなくなるな、と思っていたらやはり「MODE MOOD MODE」の1曲目という位置に収録されていた「Own Civillization (nano-mile met)」がここに来て演奏される。ストレートなギターロックからグランジ的なサウンドになるだけに、斎藤の歪みまくったギターの爆音が音響も良いこのガーデンシアターの中に響き渡っていく。それはとてもスリーピースのものとは思えないようなレベルで。
そのロックサウンドは「ラディアルナイトチェイサー」でさらにスピードを増していく。斎藤の目まぐるしいギターも、田淵と鈴木の性急なリズムも夜の首都高をレースしているアニメの光景が浮かんでくるかのようだ。
その速さはそのまま「fake town baby」へと繋がっていくのであるが、ステージ左右から噴射されたスモークに自ら塗れに行くように田淵はステージ端の方まで行き、やはりスモークによって姿が見えなくなってしまう。演奏自体はマジであるのにその挙動だけでこんなに面白おかしく感じてしまうのはユニゾンのライブならではであるが、サビではコーラスのためにしっかりマイクスタンドの前に戻ってきて姿が見えた田淵であった。
そんな何の曲が演奏されるのかわからないという流れのセトリはともすればライブの流れを忘れてしまいがちなものになってしまいそうでもあるのだが、そこはやはり天才セトリおじさんを自称する田淵である。この中盤で「5分後のスターダスト」という聴かせる曲を演奏することによってライブの流れに緩急をつけている。鈴木もこうした曲ではいたずらに速さと手数を増さないというあたりのバランス感覚はやはりなによりも楽曲を第一優先にして活動してきたユニゾンならではであるし、
「幸せになる5分前 金木犀の香りがする」
というフレーズは最近外を歩いていても金木犀の匂いを感じることが多くなったな、という秋の季節の到来を曲でしっかり意識させてくれるというこの時期ならではの選曲もさすがである。
そんな聴かせる曲として続いたのは盛りに盛りまくるユニゾンのロックが極限まで削ぎ落としたらこうなるということを示すかのような「弥生町ロンリープラネット」なのであるが、アルバム「Patrick Vegee」では次に収録されている「春が来てぼくら」に繋がるように最後に
「そしてぼくらの春が来る」
というフレーズで締められてストリングスのサウンドが聴こえて春の到来を感じさせるのであるが、この日は曲終わりで曲間を挟んだことによって多くの人が「いや、春来ないんかい!」と心の中でツッコミを入れたことと思われる。
それは今が秋だからということもあるだろうけれど、斎藤が鈴木の方を向いてギターを刻むと、鈴木はそれに合わせてスティックを合わせたり、さらには自身のマイクスタンドを叩いて音を出したりする。これはワンマンではおなじみの鈴木のドラムソロが今回のツアーでは斎藤とのセッション的なものとして展開されることを示している。田淵が暗闇の中でずっとその様子を見ているのも面白いけれど。
そのセッションで鳴らしていた斎藤のギターは「ワールドワイド・スーパーガール」のものであるだけにそのまま曲になだれ込んでいくのであるが、ステージには棒状の照明が立ち並んで輝くという装いに変化し、斎藤と田淵は向かい合ってリズムに合わせて体を上下させる。そんなワールドワイドのテンションになったことによってか、最後のサビでは明らかにリズムと歌唱が合っておらずに斎藤が鈴木の方を向いてリズムを合わせながら歌うという展開に。ユニゾンのライブにおいては実に珍しいことであるが、それはそれだけ昂っていた証明であるとも言える。
そんな中で演奏されたのは「kaleido proud fiesta」のカップリング曲である「ナノサイズスカイウォーク」というまず間違いなくこのツアーでなければそうそう聴けないであろう曲。田淵は両足を開くようにしてその場でステップを踏むのであるが、こんなシンプルに良い曲をカップリングに入れてくるというあたりが、カップリング集アルバムをリリースし、そのツアーも大好評だったユニゾンならではだ。これから先もこのバンドがカップリング曲を作ってシングルをリリースしていくという活動はずっと変わらないんじゃないかと思う。
近年のユニゾンのライブはよっぽどのことでもない限りはメンバーがMCをすることはないのであるが、それはツアーファイナルと言えども、こうしてガーデンシアターを満員にしても変わらないということがこの辺りでもうわかってくるのであるが、それでも斎藤が曲タイトルをコールしただけで拍手が湧き上がるのはメジャーデビュー時の曲である「サンポサキマイライフ」で、もうわざわざ書くことも躊躇われるくらいであるが田淵のアクションはさらに大きく激しくなっていく。それくらいに田淵がノリまくっているということであるが、声は出せなくても歌い出しの前の「ハイ!」の掛け声とともに観客が飛び上がるのは本当に楽しいし、そうできるのはこうした初期の曲までしっかりと聴き込んでいる人たちがこんなにたくさん周りにいるからであるというのもまた楽しく感じられる要素だ。
こちらもイントロで盛大な拍手が起こるのはこの曲でユニゾンと出会ったという人もたくさんいるであろう「オリオンをなぞる」で、鈴木のドラムセットの横にあるミラーボールも眩しい光を放って輝くのであるが、最後にはオープニングと同じように、しかし紗幕がないことではっきりとステージ背面に輝く電飾の美しさを目にすることができる。オープニングの星座がオリオン座だったということがわかるニクい演出の中でサビを丁寧に歌いながらも我々のテンションを上げてくれる斎藤の歌声の凛とした強さは何度聴いても素晴らしい。
そのオリオンの美しさが同期のサウンドの美しさに憑依するかのようであるのはツアータイトルにもなっている最新シングル「kaleido proud fiesta」で、ステージ上からはバンドロゴのオブジェも出てくることによって、これこそが今のUNISON SQUARE GARDENであることを示してくれるのであるが、
「かくしてまたストーリーは始まる」
というこの曲を象徴するような歌い出しのフレーズはまたここからユニゾンが新しく走り出していくということを感じさせる。もちろんユニゾンは止まっていたわけではないし、むしろコロナ禍でも自分たちなりのやり方を見つけて活動し続けてきたバンドであるが、過去の再現ツアーなどの、新しい活動をしてライブに来れない人が置いていかれたと思わないような振り返り的な企画をしてきたところからも、リリースツアーが去年になるまで開催できていなかった「Patrick Vegee」のモードからも解き放たれたように感じる。それくらいにこの曲からは過去1番というくらいの解放感を感じる。そのツアーのファイナルという、終わりであってまた新しい始まりの場所に居合わせることができていることを心から嬉しく思う。
そうした過去の振り返り企画では「CIDER ROAD」の再現ツアーも行われたが、そのツアーで演奏されてきたからこそ、そのアルバムを象徴する曲である「to the CIDER ROAD」がより一層瑞々しく聴こえてくるし、
「その手を離さないで」
というサビのフレーズでの斎藤の歌唱はただでさえ上手い、他の人では絶対に同じように歌えないような歌を歌うボーカリストが止まらずに歌い続けてきたことによってさらに進化したボーカリストになったんだなということが伝わってくるし、
「さあ 次はどこへ、どこへ行こう?」
というフレーズはツアーファイナルだからこその始まりを感じさせる。再現ツアーでも実感したことだけれど、やっぱりこの曲も「CIDER ROAD」というアルバムも決して色褪せることはない名曲であり名盤だ。
少しばかり曲間を置くと斎藤は、
「ありがとうございました。最後の曲です!」
と、普段の「ラスト!」よりは少し丁寧に挨拶をすると、最後の曲として演奏されたのは田淵がBメロなどで飛び跳ねながらベースを弾き、サビでは走り回るのも、間奏で斎藤がステージ前まで出てきてギターを弾くのも、アグレッシブにステージを動き回りながらも、ほんの少しでも演奏がズレたら全てが瓦解するようなスリリングさを味合わせてくれる「10% roll, 10% romance」。シングル曲の中では演奏頻度の高い曲であるが、それもメンバーがこの曲を演奏するのが楽しいからだろう。
「だってこんな君を近くで見れるのは 有史以来僕だけで十分だからさ」
というフレーズが高らかに響き渡ると、こんなに我々の人生を豊かにしてくれるライブを見せてくれるユニゾンというバンドを近くで見れて、それだけで今は充分だと思えた。
観客が手拍子をして待つアンコールでは斎藤と田淵が先に登場すると喋るでもなく鈴木を待つのであるが、その鈴木は遅れてしまったことをわかっているのか猛ダッシュでステージに戻ってきて、自身の着ていたジャケットを脱いでステージ袖に向かって放り投げるという完全臨戦態勢に入ると、その鈴木の手数と速さが笑ってしまうくらいの凄まじさ、それはもはやパンクと言えるくらいにまでなった「Cheep Cheep Endroll」であり、チープさとはかけ離れた派手なプレイが展開される中でしっかりその超速テンポで斎藤が歌う姿を見ていると、ユニゾンをもっと好きになっていく。映画のエンドロールを人力で倍速にしているかのようですらある。
そして鈴木がヘッドホンを装着すると、同期の音ともに「シュガーソングとビターステップ」のイントロが。いわゆる定番曲やヒット曲を毎回演奏するわけでもない天邪鬼バンドであるが、それでもきっと少しくらいはこの曲を聴きたいと思ってライブに来てくれた人がいるということをメンバーはわかっているはずだ。だからこそ観客もこの曲が聴けて本当に嬉しいのが伝わってくるし、それは何度となくライブで聴いても飽きることはない。いつだってこの曲を聴くことができれば、最高だって思えるし幸せだって思えるのだ。
しかしそんな最大の代表曲を演奏してもなお終わらず、鈴木が叫ぶようにカウントすると、そのまま奇声と言っていいような雄叫びを上げまくる「場違いハミングバード」で田淵もベースを持って飛び跳ね、走り回りまくる。シングル曲でもないし代表曲と言えるような曲でもないかもしれないけれど、ずっとファンから愛されて、ライブで育ってきた曲。だからこそこんなに満員になった会場で観客みんながサビのリズムに合わせてジャンプする光景が本当に愛おしく感じる。それは鈴木の立ち上がって連打しまくるドラムも含めて。その瞬間に埋まったものが確かにあった。
演奏が終わると客席の上の方までじっくり目を向けてから田淵はスタッフにベースを勢いよく手渡し、斎藤は最後まで爽やかに、そして鈴木は力強く胸に拳を当ててから去っていく。そんないつも通りの去り方をしていったユニゾンのこのツアーはいつも通りに凄まじかった。これからもこれがいつも通りのものであって欲しいといつも思う。
2年前にこの会場で着席スタイルのワンマンを行う前にユニゾンは「ロックバンドの生存報告」として盟友を集めて配信にしては実に珍しいフェス形式のライブもやっていた。
それくらいに自分たちはもちろん、ロックバンド、ライブシーンのためにという想いを持ってコロナ禍になってもいち早く様々な活動を展開してきたユニゾンだからこそ、ツアータイトルになっている「kaleido proud fiesta」の
「祝祭の鐘よ鳴れ
かくして快進撃は始まった」
というフレーズは自分たちだけではなくてロックバンドそのものに祝祭の鐘が鳴り、ライブシーンの快進撃がここから始まっていくと歌っているように自分には感じられる。田淵が前にインタビューで
「ライブでしか楽しめないやつだって絶対いるから。そういう奴のためにもライブをやり続けないと」
と言っていたように、そのシーンの中に、祝祭の鐘を聴くことができる存在の中には間違いなく我々もいる。かくして、そんなロックバンドの新たなストーリーが始まった。
1.harmonized finale
2.箱庭ロック・ショー
3.世界はファンシー
4.シャンデリア・ワルツ
5.CAPACITY超える
6.Silent Libra Mirage
7.Own Civillization (nano-mile met)
8.ラディアルナイトチェイサー
9.fake town baby
10.5分後のスターダスト
11.弥生町ロンリープラネット
斎藤×鈴木セッション
12.ワールドワイド・スーパーガール
13.ナノサイズスカイウォーク
14.サンポサキマイライフ
15.オリオンをなぞる
16.kaleido proud fiesta
17.to the CIDER ROAD
18.10% roll, 10% romance
encore
19.Cheep Cheep Endroll
20.シュガーソングとビターステップ
21.場違いハミングバード
フルキャパのガーデンシアターはアリーナから最上階までぎっしりと観客で埋まっており、そりゃあこれじゃあもうなかなかチケット取れないよなぁとも思う中で平日にしては早めの18:30に主催者による注意事項のアナウンスがあると、そのまま場内が暗転しておなじみのSEであるイズミカワソラ「絵の具」が流れる。
しかしながらこの日はステージに紗幕が張られており、メンバーがステージに登場するシルエットが見えてもその紗幕が張ったままで「harmonized finale」のピアノの同期の音が流れる。ツアーは全国各地の様々な会場で行われているだけに、ことさらここに合わせたものではないだろうけれど、この曲は2年前のまだ全然ライブが行われていなかったこの時期に開催された着席限定ライブこと「Live on the seat」で我々とのライブでの再会を約束するように最後に演奏されていた曲である。その記憶が蘇ってくるからこそ、こうして2年経って満員の観客が全員立った状態のこの会場にユニゾンと一緒に戻ってくることができたのである。
とはいえ「harmonized finale」演奏中にも全く幕が上がったりせず、照明の当たり具合によってメンバーのシルエットが巨大に見えたり、はたまたサビでは照明を落とすことによって紗幕越しではあるがメンバーの姿がはっきり見えたりもするのであるが、斎藤宏介(ボーカル&ギター)の歌と同期のピアノの音だけになる
「harmonized finale 星座になる 沢山の願いを乗せて」
というフレーズでは紗幕越しであってもステージ背面にまさに星座を思わせるような電飾が光る。メンバーはいつものように演奏しているだけというのは変わらないが、そのメンバーの演奏と曲の魅力を、ユニゾンのライブの哲学を逸脱することのない演出でさらに引き出している。2年前のこの曲でずっと座っていたこと、久しぶりにこうした大きな会場でロックバンドのライブを見れたことが頭の中に蘇ってきてしまって、1曲目からすでに感動してしまった。この間にすでにこのガーデンシアターに数え切れないくらいに来ているし、ユニゾンのライブだっていろんな場所でたくさん観てきたけれど、それでもどこか「戻ってきた」という感覚が確かにあった。
そんなオープニングから斎藤がシャープなギターを鳴らし、鈴木貴雄(ドラム)が思いっきり手数を増やして叩く「箱庭ロック・ショー」は最初期の曲であるが、この「kaleido proud fiesta」のツアーで聴くことによって、また始まったストーリーは流線形なんだろうなと思わせてくれる。それは今までのユニゾンと変わることがないものだということである。
そんな演奏がいきなり全てのサウンドが詰め込まれまくるように性急になる「世界はファンシー」では田淵智也(ベース)がいよいよとばかりにステージを左右に、たまに本当に弾いているのか疑わしくなるくらいに忙しない挙動で動き回りながら演奏し、その田淵の動きに惑わされることのない斎藤は詰め込まれまくった歌詞を身振りも含めて抑揚をつけながら丁寧に歌い、間奏ではやはり自身のファンタスティックギターが火を吹くように鳴らされるのであるが、まだ今より演奏技術が拙かった初期の曲でそうするのならわかるのだが、どちらかと言うと近年の曲と言えるこの曲ですらも鈴木が手数を増やしまくっているというのは、そんな近年の中でも鈴木がゲーマーとしてだけではなくてドラマーとしてさらに高いレベルに到達しているということである。その3人の演奏によるせめぎ合いのようなスリリングさはユニゾンのライブだからこそ見ることができるロックバンドのカッコ良さと楽しさである。
さらにはイントロから田淵が飛び跳ねまくり、ということは我々も飛び跳ねまくらざるを得ない「シャンデリア・ワルツ」といういきなりクライマックスがここで来たかと思うようなセトリの組み方。こういうのは周年ライブとか1本限りの特別なライブでやるものじゃないですかね、とも思うのであるが、我々がそうして驚いていることをセトリおじさんこと田淵がしてやったりと喜んでいるのが伝わってくるかのようだ。
「UNISON SQUARE GARDENです。最後までよろしく!」
とだけ斎藤が挨拶してこの日初めての曲間が訪れると、明らかにここまでとはモードチェンジしたのがよくわかるのは紫色などの妖しい照明に照らされながら田淵も妖艶さを感じさせるベースを弾く「CAPACITY超える」で、いやすでに冒頭4曲で感情のCAPACITY超えてるんですけど、と思う我々をジャズに思いっきり振り切れたアレンジによってさらにCAPACITYを超えさせてくる。この曲を聴いていると、ユニゾンで止まることなく活動してきたのはもちろん、それ以外でのそれぞれの活動も全てがユニゾンに還元されているんじゃないかと思う。やっぱりこの3人は根がミュージシャンやアーティストっていうよりはバンドマンであり、それはこのバンドでこうして音を鳴らしているからこそそう感じられるというような。
そんな新たなユニゾンのサウンドの一面を垣間見せたかと思いきや、真逆の爽やかかつストレートなギターロックの「Silent Libre Mirage」という、その後にリリースされてきたシングル曲やリード曲があまりに強すぎるが故に少し印象が薄くなってきていたこの曲を取り上げるという流れも実に見事なのは「CAPACITY超える」のアレンジとの対比によってその爽やかさとストレートさが際立つからだ。斎藤のボーカルも序盤は少しキツそうなところもあったが(というか最初から150kmのストレートを投げさせまくるようなセトリだからキツくなって当たり前なのだが)、この辺りではいつもの安定感をしっかり取り戻しているのもさすがである。
とはいえこうなるとこの後にどんな曲が来るのか全く想像できなくなるな、と思っていたらやはり「MODE MOOD MODE」の1曲目という位置に収録されていた「Own Civillization (nano-mile met)」がここに来て演奏される。ストレートなギターロックからグランジ的なサウンドになるだけに、斎藤の歪みまくったギターの爆音が音響も良いこのガーデンシアターの中に響き渡っていく。それはとてもスリーピースのものとは思えないようなレベルで。
そのロックサウンドは「ラディアルナイトチェイサー」でさらにスピードを増していく。斎藤の目まぐるしいギターも、田淵と鈴木の性急なリズムも夜の首都高をレースしているアニメの光景が浮かんでくるかのようだ。
その速さはそのまま「fake town baby」へと繋がっていくのであるが、ステージ左右から噴射されたスモークに自ら塗れに行くように田淵はステージ端の方まで行き、やはりスモークによって姿が見えなくなってしまう。演奏自体はマジであるのにその挙動だけでこんなに面白おかしく感じてしまうのはユニゾンのライブならではであるが、サビではコーラスのためにしっかりマイクスタンドの前に戻ってきて姿が見えた田淵であった。
そんな何の曲が演奏されるのかわからないという流れのセトリはともすればライブの流れを忘れてしまいがちなものになってしまいそうでもあるのだが、そこはやはり天才セトリおじさんを自称する田淵である。この中盤で「5分後のスターダスト」という聴かせる曲を演奏することによってライブの流れに緩急をつけている。鈴木もこうした曲ではいたずらに速さと手数を増さないというあたりのバランス感覚はやはりなによりも楽曲を第一優先にして活動してきたユニゾンならではであるし、
「幸せになる5分前 金木犀の香りがする」
というフレーズは最近外を歩いていても金木犀の匂いを感じることが多くなったな、という秋の季節の到来を曲でしっかり意識させてくれるというこの時期ならではの選曲もさすがである。
そんな聴かせる曲として続いたのは盛りに盛りまくるユニゾンのロックが極限まで削ぎ落としたらこうなるということを示すかのような「弥生町ロンリープラネット」なのであるが、アルバム「Patrick Vegee」では次に収録されている「春が来てぼくら」に繋がるように最後に
「そしてぼくらの春が来る」
というフレーズで締められてストリングスのサウンドが聴こえて春の到来を感じさせるのであるが、この日は曲終わりで曲間を挟んだことによって多くの人が「いや、春来ないんかい!」と心の中でツッコミを入れたことと思われる。
それは今が秋だからということもあるだろうけれど、斎藤が鈴木の方を向いてギターを刻むと、鈴木はそれに合わせてスティックを合わせたり、さらには自身のマイクスタンドを叩いて音を出したりする。これはワンマンではおなじみの鈴木のドラムソロが今回のツアーでは斎藤とのセッション的なものとして展開されることを示している。田淵が暗闇の中でずっとその様子を見ているのも面白いけれど。
そのセッションで鳴らしていた斎藤のギターは「ワールドワイド・スーパーガール」のものであるだけにそのまま曲になだれ込んでいくのであるが、ステージには棒状の照明が立ち並んで輝くという装いに変化し、斎藤と田淵は向かい合ってリズムに合わせて体を上下させる。そんなワールドワイドのテンションになったことによってか、最後のサビでは明らかにリズムと歌唱が合っておらずに斎藤が鈴木の方を向いてリズムを合わせながら歌うという展開に。ユニゾンのライブにおいては実に珍しいことであるが、それはそれだけ昂っていた証明であるとも言える。
そんな中で演奏されたのは「kaleido proud fiesta」のカップリング曲である「ナノサイズスカイウォーク」というまず間違いなくこのツアーでなければそうそう聴けないであろう曲。田淵は両足を開くようにしてその場でステップを踏むのであるが、こんなシンプルに良い曲をカップリングに入れてくるというあたりが、カップリング集アルバムをリリースし、そのツアーも大好評だったユニゾンならではだ。これから先もこのバンドがカップリング曲を作ってシングルをリリースしていくという活動はずっと変わらないんじゃないかと思う。
近年のユニゾンのライブはよっぽどのことでもない限りはメンバーがMCをすることはないのであるが、それはツアーファイナルと言えども、こうしてガーデンシアターを満員にしても変わらないということがこの辺りでもうわかってくるのであるが、それでも斎藤が曲タイトルをコールしただけで拍手が湧き上がるのはメジャーデビュー時の曲である「サンポサキマイライフ」で、もうわざわざ書くことも躊躇われるくらいであるが田淵のアクションはさらに大きく激しくなっていく。それくらいに田淵がノリまくっているということであるが、声は出せなくても歌い出しの前の「ハイ!」の掛け声とともに観客が飛び上がるのは本当に楽しいし、そうできるのはこうした初期の曲までしっかりと聴き込んでいる人たちがこんなにたくさん周りにいるからであるというのもまた楽しく感じられる要素だ。
こちらもイントロで盛大な拍手が起こるのはこの曲でユニゾンと出会ったという人もたくさんいるであろう「オリオンをなぞる」で、鈴木のドラムセットの横にあるミラーボールも眩しい光を放って輝くのであるが、最後にはオープニングと同じように、しかし紗幕がないことではっきりとステージ背面に輝く電飾の美しさを目にすることができる。オープニングの星座がオリオン座だったということがわかるニクい演出の中でサビを丁寧に歌いながらも我々のテンションを上げてくれる斎藤の歌声の凛とした強さは何度聴いても素晴らしい。
そのオリオンの美しさが同期のサウンドの美しさに憑依するかのようであるのはツアータイトルにもなっている最新シングル「kaleido proud fiesta」で、ステージ上からはバンドロゴのオブジェも出てくることによって、これこそが今のUNISON SQUARE GARDENであることを示してくれるのであるが、
「かくしてまたストーリーは始まる」
というこの曲を象徴するような歌い出しのフレーズはまたここからユニゾンが新しく走り出していくということを感じさせる。もちろんユニゾンは止まっていたわけではないし、むしろコロナ禍でも自分たちなりのやり方を見つけて活動し続けてきたバンドであるが、過去の再現ツアーなどの、新しい活動をしてライブに来れない人が置いていかれたと思わないような振り返り的な企画をしてきたところからも、リリースツアーが去年になるまで開催できていなかった「Patrick Vegee」のモードからも解き放たれたように感じる。それくらいにこの曲からは過去1番というくらいの解放感を感じる。そのツアーのファイナルという、終わりであってまた新しい始まりの場所に居合わせることができていることを心から嬉しく思う。
そうした過去の振り返り企画では「CIDER ROAD」の再現ツアーも行われたが、そのツアーで演奏されてきたからこそ、そのアルバムを象徴する曲である「to the CIDER ROAD」がより一層瑞々しく聴こえてくるし、
「その手を離さないで」
というサビのフレーズでの斎藤の歌唱はただでさえ上手い、他の人では絶対に同じように歌えないような歌を歌うボーカリストが止まらずに歌い続けてきたことによってさらに進化したボーカリストになったんだなということが伝わってくるし、
「さあ 次はどこへ、どこへ行こう?」
というフレーズはツアーファイナルだからこその始まりを感じさせる。再現ツアーでも実感したことだけれど、やっぱりこの曲も「CIDER ROAD」というアルバムも決して色褪せることはない名曲であり名盤だ。
少しばかり曲間を置くと斎藤は、
「ありがとうございました。最後の曲です!」
と、普段の「ラスト!」よりは少し丁寧に挨拶をすると、最後の曲として演奏されたのは田淵がBメロなどで飛び跳ねながらベースを弾き、サビでは走り回るのも、間奏で斎藤がステージ前まで出てきてギターを弾くのも、アグレッシブにステージを動き回りながらも、ほんの少しでも演奏がズレたら全てが瓦解するようなスリリングさを味合わせてくれる「10% roll, 10% romance」。シングル曲の中では演奏頻度の高い曲であるが、それもメンバーがこの曲を演奏するのが楽しいからだろう。
「だってこんな君を近くで見れるのは 有史以来僕だけで十分だからさ」
というフレーズが高らかに響き渡ると、こんなに我々の人生を豊かにしてくれるライブを見せてくれるユニゾンというバンドを近くで見れて、それだけで今は充分だと思えた。
観客が手拍子をして待つアンコールでは斎藤と田淵が先に登場すると喋るでもなく鈴木を待つのであるが、その鈴木は遅れてしまったことをわかっているのか猛ダッシュでステージに戻ってきて、自身の着ていたジャケットを脱いでステージ袖に向かって放り投げるという完全臨戦態勢に入ると、その鈴木の手数と速さが笑ってしまうくらいの凄まじさ、それはもはやパンクと言えるくらいにまでなった「Cheep Cheep Endroll」であり、チープさとはかけ離れた派手なプレイが展開される中でしっかりその超速テンポで斎藤が歌う姿を見ていると、ユニゾンをもっと好きになっていく。映画のエンドロールを人力で倍速にしているかのようですらある。
そして鈴木がヘッドホンを装着すると、同期の音ともに「シュガーソングとビターステップ」のイントロが。いわゆる定番曲やヒット曲を毎回演奏するわけでもない天邪鬼バンドであるが、それでもきっと少しくらいはこの曲を聴きたいと思ってライブに来てくれた人がいるということをメンバーはわかっているはずだ。だからこそ観客もこの曲が聴けて本当に嬉しいのが伝わってくるし、それは何度となくライブで聴いても飽きることはない。いつだってこの曲を聴くことができれば、最高だって思えるし幸せだって思えるのだ。
しかしそんな最大の代表曲を演奏してもなお終わらず、鈴木が叫ぶようにカウントすると、そのまま奇声と言っていいような雄叫びを上げまくる「場違いハミングバード」で田淵もベースを持って飛び跳ね、走り回りまくる。シングル曲でもないし代表曲と言えるような曲でもないかもしれないけれど、ずっとファンから愛されて、ライブで育ってきた曲。だからこそこんなに満員になった会場で観客みんながサビのリズムに合わせてジャンプする光景が本当に愛おしく感じる。それは鈴木の立ち上がって連打しまくるドラムも含めて。その瞬間に埋まったものが確かにあった。
演奏が終わると客席の上の方までじっくり目を向けてから田淵はスタッフにベースを勢いよく手渡し、斎藤は最後まで爽やかに、そして鈴木は力強く胸に拳を当ててから去っていく。そんないつも通りの去り方をしていったユニゾンのこのツアーはいつも通りに凄まじかった。これからもこれがいつも通りのものであって欲しいといつも思う。
2年前にこの会場で着席スタイルのワンマンを行う前にユニゾンは「ロックバンドの生存報告」として盟友を集めて配信にしては実に珍しいフェス形式のライブもやっていた。
それくらいに自分たちはもちろん、ロックバンド、ライブシーンのためにという想いを持ってコロナ禍になってもいち早く様々な活動を展開してきたユニゾンだからこそ、ツアータイトルになっている「kaleido proud fiesta」の
「祝祭の鐘よ鳴れ
かくして快進撃は始まった」
というフレーズは自分たちだけではなくてロックバンドそのものに祝祭の鐘が鳴り、ライブシーンの快進撃がここから始まっていくと歌っているように自分には感じられる。田淵が前にインタビューで
「ライブでしか楽しめないやつだって絶対いるから。そういう奴のためにもライブをやり続けないと」
と言っていたように、そのシーンの中に、祝祭の鐘を聴くことができる存在の中には間違いなく我々もいる。かくして、そんなロックバンドの新たなストーリーが始まった。
1.harmonized finale
2.箱庭ロック・ショー
3.世界はファンシー
4.シャンデリア・ワルツ
5.CAPACITY超える
6.Silent Libra Mirage
7.Own Civillization (nano-mile met)
8.ラディアルナイトチェイサー
9.fake town baby
10.5分後のスターダスト
11.弥生町ロンリープラネット
斎藤×鈴木セッション
12.ワールドワイド・スーパーガール
13.ナノサイズスカイウォーク
14.サンポサキマイライフ
15.オリオンをなぞる
16.kaleido proud fiesta
17.to the CIDER ROAD
18.10% roll, 10% romance
encore
19.Cheep Cheep Endroll
20.シュガーソングとビターステップ
21.場違いハミングバード
go! go! vanillas 「My Favorite Things」 @日本武道館 9/30 ホーム
中津川 THE SOLAR BUDOKAN 2022 DAY3 @中津川公園特設会場 9/25