a flood of circle Tour "FUCK FOREVER & I'M FREE @名古屋CLUB QUATTRO 9/10
- 2022/09/11
- 01:08
これまでにも過去にリリースしたアルバムの再現ライブを行ってきて、それが振り返るだけの後ろ向きなものではなくて、バンドが前に進んでいることを示してきた、a flood of circle。
それは過去には何かと変遷の多かったメンバーが固定されたからこそ感じられるものでもあるのだが、今回再現するのは「FUCK FOREVER」と「I'M FREE」という2作品。一応「FUCK FOREVER」はリリースから10年というタイミングである。
今回の再現ライブはツアーでの開催となり、この日の名古屋CLUB QUATTROはツアー初日。東京の渋谷QUATTROでの2daysが行けない日程であるために1番近い名古屋のチケットを取り、それが初日であったということである。
名古屋は栄から近いPARCOの7階にあるQUATTROの中に入ると、渋谷のQUATTROではネタになるくらいにおなじみのステージが見えなくなる客席の柱がない。内装などはQUATTROそのものであるが、それだけでここが東京ではないということを実感する。
19時を少し過ぎたあたりで場内が暗転すると、おなじみのSEでメンバー4人がステージに登場。HISAYO(ベース)が黒の衣装というのはいつも通りであるが、渡邊一丘(ドラム)は白シャツ、青木テツ(ギター)はジャケット着用で、最後にステージに現れた佐々木亮介(ボーカル&ギター)は髪色は最近おなじみの金が混じったやんちゃなものになっているが、革ジャンはスタンダードな黒というのは今回再現する2作品のリリース当時を鑑みてのものだろうか。
その4人がセッション的に音を重ねると、そのまま「Summertime Blues II」からスタートするという意外なオープニング。正直言って「I'M FREE」から始まるのが1番このライブっぽいだろうとも思ったのだが、そんなこちら側の予想を軽々と裏切ってくる。HISAYOは早くもステージ上で舞うように華麗にステップを踏みながらベースを鳴らし、亮介のボーカルもバンド全体の演奏としてもツアー初日とは思えないくらいに仕上がっている。というかフラッドに仕上がってない時なんかないくらいのライブバンドであるのだが、この1曲目からわかる完成度の高さを見ると、チケットが取れずに行けなかった先月の下北沢SHELTERでのライブなどもさぞ良かったのだろうと思う。サビで一気にバンドの演奏が高まっていくのであるが、亮介のまさにブルース的なサビ以外での歌唱がまだまだ季節は夏なんだなと感じさせてくれる。そう思うくらいにこの日の名古屋は暑かった。
渡邊のイントロのリズムに合わせて客席から手拍子が起こる「Dancing Zombiez」は今回の2作品の中でも最も今でもライブで演奏されている曲と言えるだろうし、実際に近年もこうして序盤に演奏される機会が多いだけに、この曲は再現というよりも今のフラッドそのものであると感じられる曲である。間奏での亮介とテツの果たし合いのようなギターも含めて。
しかしながらここからは再現ライブならではの曲が続いていく。渡邊のドラムの一打一打が当時よりもはるかに力強くなっていることによって、それが楽曲そのもののアップデートとフラッドのバンドとしてのアップデートに繋がっているように感じられる「Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)」、ほぼ歌詞なしのインストと言ってもいいくらいにとにかくそのロックンロールバンドとしてのサウンドを見せつけるかのような「All The Young Rock'N'Rollers」というあたりはこうした機会でもなければなかなか今となっては聴けない曲だと言っていいだろう。実際に今の4人になってからライブで聴いたことがあっただろうかというくらいの曲であるが、だからこそこうして聴けるのが嬉しいし、このツアーのために名古屋まで来て本当に良かったなと思わせてくれる。
「おはようございます、a flood of circleです」
と簡単に挨拶だけした亮介のボーカルが高らかに、しかしそのしゃがれた声質ゆえに攻撃的に響き渡る「KINZOKU Bat」へ。先日にお笑いコンビの金属バット(この曲からコンビ名を取ったわけではないだろうけど)との異色の対バンも行っており、その時もおそらく演奏された曲であろうと思われるが、これもまたそうした機会でもないと演奏されることのない曲であるし、そうした対バンもこの再現ツアーに繋がっているものであると思える。
それはやはり渡邊のドラムが(ずっと亮介とともにフラッドであり続けてきた渡邊のドラムが進化しているというのがフラッドが進化しているということだ)より激しく強いスネアの音を感じさせてくれるようになった「Good Speed You Baby」から、亮介はギターを置いてハンドマイクになると、かつては観客の上を歩いたりしていた「Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)」でタイトル通りにブルース的な歌唱を、ステージを歩き回りながら聴かせてくれるのであるが、
「俺たちが10年前より良い理由。ギター、青木テツ!」
と紹介してテツにギターソロを任せる。ほとんどライブで弾いたことがないはずなのに、ずっとこの曲を弾いてきたかのようなその弾きまくりっぷりが10年前とは違う確かなフラッドの強さだ。それはなかなかメンバーが安定しなかった時期を超えて、今はもうこの不動のメンバーで何年も続けてきて築き上げてきたものがあるからである。
亮介がアコギに持ち替えると、そのアコギがカントリー的なサウンドを奏でることによって少しほっこりしてしまうような雰囲気すらある「The Cat is Hard-Boiled」へ。ある意味ではこの曲こそが今回の再現ツアーでも屈指のレア曲と言えるかもしれないが、「月に吠える」という名曲犬ソングがあるだけに、猫派としてはこちらの猫ソングもたまには演奏して欲しいと思う。
そんなアコギ曲は今でも時にはライブのアンコールなどでも演奏されるくらいの力を持った名曲「月面のプール」へと続く。アカペラで歌い始めてからギターを弾き、そこにバンドの音が重なっていく亮介のロマンチックさが全開になった曲と言えるけれど、この10年間でどれだけフラッドというバンドの形が変わったり、世の中の状況が変わったりしてもこの曲の名曲っぷりが変わることはなかったということが、今聴くことによって実によくわかる。かつての再現ライブでは声が出ていなかった時もあった亮介がここへ来て常に絶好調状態が続いていることも。
そんな今回の再現ライブであるが、「I'M FREE」のジャケットを今の亮介バージョンでイラストにしたTシャツや、「FUCK FOREVER」のジャケットがプリントされたTシャツなどのデザインにずっと知っている人が関わってくれていることへの感慨深さを口にするのであるが、ここにきてなんと
「この作品たちは今のテイチクに移籍して最初にリリースしたものなんだけど、最初にリリースしたのが「FUCK FOREVER」っていうタイトルってなかなか面白いことやってるなって思った(笑)
でも昨日、事務所に行って当時のディレクターとも話してたんだけど、あの「I'M FREE」のジャケットに使われているのはどうやら俺じゃないっていう話になってきていて(笑)
今になってわかることもある」
と亮介がまさかの告白をするのだが(じゃああのジャケットで落下している人物が誰なのかということが気になるが)、亮介が実際に何度も落下するのを見ていたという渡邊&HISAYOのリズム隊からは「亮介かそうじゃないかは五分五分」というコメントに。
亮介はさらに「月面のプール」の最後のギターの音のコードを教えてくれたのが当時この曲をプロデュースしてくれた弥吉淳二であり、そのコードを知ってからはその後に作った曲でそのコードを多用してきたということを語る。
そんな、かつて実際にフラッドのライブでゲストとして出演してギターを弾いたこともある弥吉を亮介は「旅に出た」と評した。それはいつかまた会うことができるんじゃないかという願いのようなものを込めたような口ぶりでもあったのだが、その弥吉と我々観客に捧げるように演奏された「オーロラソング」はまさにこのステージにオーロラを映し出すかのような青い照明に照らされての演奏となる。
「It's A Aurora Song 予報じゃ新宿に雪が降る」
のフレーズを「名古屋」に変えて歌う亮介は
「It's A Aurora Song 涙の出るようなオーロラを
It's A Aurora Song 死ぬまでに観てみたいって?
It's A Aurora Song 君は今を生きてんじゃんか
さあ いこうぜ」
と続くこの曲の締めのフレーズを、確かに今を生きている目の前にいる我々に向かって歌ってくれているかのようだった。いつかオーロラを見ることができたら、弥吉淳二のようにもう会えない人にも会うことができたりするのだろうか。いや、それはどちらの方が見るのが難しいことなんだろうか。
そんな少ししんみりしてしまうような曲もあるが、亮介がギターを刻み、そこにテツのギター、渡邊のバスドラ、そしてHISAYOのベースが加わっていくという形のイントロの「The Future Is Mine」へ。サビ前の
「もがくように生きる二人だった」
のフレーズで亮介が二本指を突き上げると、観客も同じように指を突き上げながら飛び跳ねまくり、間奏では亮介の
「ギター、俺!」
と紹介してのギターソロもあったが、時折ごくたまにライブでも演奏されてきた曲であるが、その時その時で「今の曲でしかない」と思えてきたのは、間違いなくフラッドが歴史を重ねるごとに最高を更新してきたバンドであり、そのフラッドの姿を我々が見続けてきたからだ。だからやっぱりこの日も過去最高に
「君の目に映る未来を見ている Future Is Mine, Baby」
というフレーズが説得力を持つのだし、きっとこの先の未来もフラッドと、フラッドを愛する我々のものになるはずだ。
さらには亮介とテツのギターのイントロから、HISAYOとともに観客が渡邊のドラムのリズムに合わせて手拍子するのは「見る前に跳べ」。かつてリリース時には今はなき渋谷AXでのワンマンで観客がこの曲に合わせてジャンプする=跳ぶ姿を集めた映像が作られたりもしていたが、この日もやはり観客はサビでの「OH YEAH」のフレーズに合わせて高くジャンプする。それはコロナ禍になって楽しみ方の制限ができてもこの曲での客席の光景も、フラッドのライブの素晴らしさも全く変わらなかったということだ。こんなにも熱狂していながらも、曲終わりで全く声をあげたりすることがないフラッドファンは本当に凄いと改めて思う。
そんな楽しい雰囲気が一変するのは不穏なイントロでのテツのギターサウンドと真っ赤な照明、亮介のポエトリーリーディング的なボーカルという、リアルタイムで曲が公開された時にファンを驚愕させた「I'M FREE」。その曲が持つ攻撃力は今の最強のフラッドになったことによってより高くなっているし、それはテツと渡邊という2人がコーラスを重ねていることと無関係ではないはずだ。リード曲でありながらも近年は全く演奏されていなかったこの曲はこの瞬間に紛れもなく今のフラッドの曲になったのである。
その「I'M FREE」でもそうだったのだが、「FUCK FOREVER」とそれぞれの作品のタイトル曲が連発されたこの後半になって、テツのギターの音が明らかにさらに大きくなっている。その「FUCK FOREVER」ではサビで観客が歌詞に合わせて中指を突き立てるのであるが、間奏ではテツがステージ前まで出てきて右手中指を突き立てながら、左手でギターを残響させる。その姿は10年の時を経てテツがこの曲を今のフラッドのものに進化させた証であると言える。ああ、本当にこの男が入ってくれたからこそ、こうやって今に至るまでこのバンドが、もうメンバーが変わるという心配をすることなく続いてきたんだなと改めて思う。入ってくれて、ずっと続けてくれて本当にありがとう。
「I'M FREE」には亮介によるそれぞれのメンバーのことをイメージした曲が収録されているのだが、渡邊の激しいドラムの連打に次ぐ連打から始まる「Diamond Rocks」はまさにその渡邊をイメージしたと言われている曲である。リリースから10年近く経過しても未だに少年性を失わない無邪気さを感じさせてくれる渡邊だからこそ、今でもこの真っ直ぐなロックンロールが今のフラッドのものとして突き刺さるのであるし、
「Boys Don't Cry」
という締めの亮介の咆哮を自分のためのものだと思える、見た目や実年齢は全然違うけど精神だけはBoyである観客もたくさんいるはずである。もちろん自分もその1人だ。
そんな「Diamond Rocks」から続くのはHISAYOのベースがイントロとして鳴らされる「ロックンロールバンド」。改めてこの時期のフラッドはこれだけたくさんの名曲を生み出してきたんだなと思うけれど、それはいつの時期や時代でもずっとそうだった。だからいつも
「歌ってくれ ロックンロールバンド 今日が最後かも知れない
聴かせてくれ ロックンロールバンド だから今日を生きていく」
というフレーズがリアルに、ダイレクトに突き刺さってきたし、コロナ禍になってからは「Rollers Anthem」という大名曲も生まれたけれど、
「誰が何と言おうと これをロックンロールと呼ぼう」
と歌うその「Rollers Anthem」はこの曲があったからこそ生まれたものだと言えるかもしれない。
「暗闇の奥で光を見たのさ
とばしてくれ ロックンロールバンド だから今日も歌っている」
というフレーズはコロナ禍になって次々にライブがなくなってしまうような日々を経験してきたからこそ、フラッドのロックンロールが暗闇を照らす光であると思うことができる。
何よりも、こんなに客席で見ていて衝動に駆られるというか、モッシュやダイブというコロナ禍になる前は当たり前に起きていた楽しみ方が今まさに目の前で起こっていてもおかしくないくらいの(自分ですらそうしたくなるほどの)凄まじい演奏の熱狂っぷりを見ていても決してこのクアトロの床に貼られた立ち位置指定からはみ出したりすることなく、ルールをしっかり守って見ているフラッドファンの意識の凄さ。
今まさにフェスなどでロックバンドのライブの楽しみ方について議論が起こったりもしているし、どういう状況で何をしたら感染してしまうリスクがあるのかなんて誰にもわからないけれど、自分たちの愛する、心からカッコいいと思っているバンドがそうしたネガティブなことで話題になってたまるかという意思の強さを感じる。ずっとライブに来ているものとして、自分がそのフラッドのファンの中にいれていることを今こそ心から誇りに思えている。
そんな「ロックンロールバンド」がこの日の最高沸点を刻んだ後に演奏されたのは、亮介がギターを弾きながら高らかに歌い上げる「理由なき反抗 (The Rebel Age)」。
「ざけんじゃねぇ」
のフレーズで観客が腕や中指を突き立てると、テツも最後には両手で思いっきり中指を突き立てる。
「ダーリン 君からしたらこんなのってバカみたいかい
ダーリン 笑いながらも涙がこぼれるのはどうして」
というサビのフレーズが全てを表しているかのように、こんなにも楽しいのにこんなにも涙が溢れそうなくらいに感動してしまう。ロックンロールは、フラッドの音楽とライブはそれほどに我々の感情を豊かにしてくれるものなのである。
「えーっと………元気でね」
と他に言うことないんかいと思うような亮介の一言から最後に演奏されたのは、亮介が曲中にHISAYOを指差していたことからもわかる通りにビールを愛してやまないベーシストのHISAYOをイメージして作ったと言われている「Beer! Beer! Beer!」。それは酒こそ飲んでいないけれど、もはや打ち上げ的な空気ですらあるかのような、我々もライブ後にビールを飲まざるを得ないような。それはもちろんフラッドのこのライブが良過ぎたからこそビールを飲みたくなるのであるが、今やなかなかバンド側も打ち上げがしづらくなっている時世の中だし、翌日に大阪でライブということを踏まえるとこの日もバンドで打ち上げはできないだろうけど、それでもHISAYOが缶ビールを飲んでいるだろうなということだけはわかるのだった。
アンコールではアコギを持った亮介が1人でステージに登場すると、
「ちょっと先輩の曲をやるんだけど。イギリスの先輩のね(笑)だから音源に入れるにあたって許可を取った方がいいなと思ったから連絡したら、枚数限定ならいいっていう謎の判断になって(笑)
しかも今になって追加で売ってもいいっていうどういう仕組みなんだっていう(笑)
だから持ってない人は今買ってくれ。今回やった曲たちはこれからもライブでやっていくだろうけれど、この曲はそんなにやりたい曲じゃないから」
とマイクを通さずに観客に語り、そのままマイクを通さずに歌い始めたのはビリー・ジョエルの「Piano Man」に日本語歌詞を載せてカバーした「BLUES MAN」。この曲のまさにブルース的な歌唱を聴いていると、やはり亮介はロックンローラーでありながらブルースマンでもあるなと思えるし、そのマイクを通さなくてもハッキリと聴こえる声量は上手いとか下手を超越した、人に届けるために歌う人のボーカルだ。そんな曲がしっかりと
「2022年のブルース」
へとアップデートされている。死ぬまで生きるからこそ、そうそうライブではやらなくてもこうしてまたその年限りのブルースとしてこの曲はアップデートされていくはずだ。
そしてメンバーをステージに招くと、10月20日に代々木公園でフリーライブをやることを改めて告知し、テツはそのライブの告知写真と同じように手で金のマークを作るのは無料ライブだからということだろうか。あるいはクラウドファンディングを行ったことによるものだろうか。
「新幹線代とかあると思うけど…チケット代かからないから(笑)」
と名古屋の人にも来てもらうようにしっかりアピールすると、最後に演奏されたのはそのフリーライブでもこうして最後に鳴り響くであろう新曲「花火を見に行こう」。もう夏も終わろうとしている。花火を見る機会=夏フェスと言えるような時期も終わりを迎えつつある。でもまだまだフラッドにとっての大きな花火がこれから先に控えている。そんな花火をここにいる全員で観に行けたらと思うけれど、多分ほとんどの人は名古屋からでも来るだろうなとも思っている。LINE CUBEの時のような特別な映像や演出はないけれど、それでも確かに夏の夜にフラッドのライブを見ながら後ろで花火が上がる景色が想起できた。亮介は去り際にまた
「元気でね」
と言っていたが、フラッドのライブを見れる予定があると思うだけで、我々は確かに元気になれる。元気でいるための力を貰うことができる。10年前に世に放たれた2枚の作品は間違いなくあの頃よりも今の方が光り輝いているからこそ、そうした力を貰えるのだ。
それこそ亮介も「やらなかったことをやるようにしてきた」と言っていたが、10年近く前に「I'M FREE」が公開された時に、これはまた新しいフラッドが始まったなと思った。それくらいに画期的かつ斬新なロックンロールだったわけだが、この時期の作品や曲がとりわけ思い入れが強いのは、もちろん大好きな曲がたくさんあるというのもあるけれど、あの頃にこれ以上ないくらいに完璧だと思っていた、サポートギターの曽根巧を含めた4人編成がこのシーズンで最後だったからである。
その後のなかなかギターが定まらない紆余曲折っぷりを思い返すと、あの頃は本当に安定した楽しさだったと思うけれど、果たしてそれ以降の最終地点である今はどうなのかと言われたら、今がやっぱり1番最高だ。それをフラッドはいつもステージで示し続けてきた。どんなにバンドの形が変わっても鳴らし続けてきたロックンロールバンドとしての矜持。今の4人が鳴らす2つの作品はそれをこれ以上ないくらいの形で示していたし、
「これからこの曲たちがもっと可愛くなる」
と亮介は言っていたが、そんな曲たちの煌めきも素晴らしさも我々はみんなずっとわかっていた。2度とないかもしれないけれど、これから先の未来でまた何度だってやって欲しい。そんな風に思える再現ライブツアーの初日だった。
1.Summertime Blues II
2.Dancing Zombiez
3.Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)
4.All The Young Rock'N'Rollers
5.KINZOKU Bat
6.God Speed You Baby
7.Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)
8.The Cat I is Hard-Boiled
9.月面のプール
10.オーロラソング
11.The Future Is Mine
12.見る前に跳べ
13.I'M FREE
14.FUCK FOREVER
15.Diamond Rocks
16.ロックンロールバンド
17.理由なき反抗 (The Rebel Age)
18.Beer! Beer! Beer!
encore
19.BLUES MAN
20.花火を見に行こう
それは過去には何かと変遷の多かったメンバーが固定されたからこそ感じられるものでもあるのだが、今回再現するのは「FUCK FOREVER」と「I'M FREE」という2作品。一応「FUCK FOREVER」はリリースから10年というタイミングである。
今回の再現ライブはツアーでの開催となり、この日の名古屋CLUB QUATTROはツアー初日。東京の渋谷QUATTROでの2daysが行けない日程であるために1番近い名古屋のチケットを取り、それが初日であったということである。
名古屋は栄から近いPARCOの7階にあるQUATTROの中に入ると、渋谷のQUATTROではネタになるくらいにおなじみのステージが見えなくなる客席の柱がない。内装などはQUATTROそのものであるが、それだけでここが東京ではないということを実感する。
19時を少し過ぎたあたりで場内が暗転すると、おなじみのSEでメンバー4人がステージに登場。HISAYO(ベース)が黒の衣装というのはいつも通りであるが、渡邊一丘(ドラム)は白シャツ、青木テツ(ギター)はジャケット着用で、最後にステージに現れた佐々木亮介(ボーカル&ギター)は髪色は最近おなじみの金が混じったやんちゃなものになっているが、革ジャンはスタンダードな黒というのは今回再現する2作品のリリース当時を鑑みてのものだろうか。
その4人がセッション的に音を重ねると、そのまま「Summertime Blues II」からスタートするという意外なオープニング。正直言って「I'M FREE」から始まるのが1番このライブっぽいだろうとも思ったのだが、そんなこちら側の予想を軽々と裏切ってくる。HISAYOは早くもステージ上で舞うように華麗にステップを踏みながらベースを鳴らし、亮介のボーカルもバンド全体の演奏としてもツアー初日とは思えないくらいに仕上がっている。というかフラッドに仕上がってない時なんかないくらいのライブバンドであるのだが、この1曲目からわかる完成度の高さを見ると、チケットが取れずに行けなかった先月の下北沢SHELTERでのライブなどもさぞ良かったのだろうと思う。サビで一気にバンドの演奏が高まっていくのであるが、亮介のまさにブルース的なサビ以外での歌唱がまだまだ季節は夏なんだなと感じさせてくれる。そう思うくらいにこの日の名古屋は暑かった。
渡邊のイントロのリズムに合わせて客席から手拍子が起こる「Dancing Zombiez」は今回の2作品の中でも最も今でもライブで演奏されている曲と言えるだろうし、実際に近年もこうして序盤に演奏される機会が多いだけに、この曲は再現というよりも今のフラッドそのものであると感じられる曲である。間奏での亮介とテツの果たし合いのようなギターも含めて。
しかしながらここからは再現ライブならではの曲が続いていく。渡邊のドラムの一打一打が当時よりもはるかに力強くなっていることによって、それが楽曲そのもののアップデートとフラッドのバンドとしてのアップデートに繋がっているように感じられる「Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)」、ほぼ歌詞なしのインストと言ってもいいくらいにとにかくそのロックンロールバンドとしてのサウンドを見せつけるかのような「All The Young Rock'N'Rollers」というあたりはこうした機会でもなければなかなか今となっては聴けない曲だと言っていいだろう。実際に今の4人になってからライブで聴いたことがあっただろうかというくらいの曲であるが、だからこそこうして聴けるのが嬉しいし、このツアーのために名古屋まで来て本当に良かったなと思わせてくれる。
「おはようございます、a flood of circleです」
と簡単に挨拶だけした亮介のボーカルが高らかに、しかしそのしゃがれた声質ゆえに攻撃的に響き渡る「KINZOKU Bat」へ。先日にお笑いコンビの金属バット(この曲からコンビ名を取ったわけではないだろうけど)との異色の対バンも行っており、その時もおそらく演奏された曲であろうと思われるが、これもまたそうした機会でもないと演奏されることのない曲であるし、そうした対バンもこの再現ツアーに繋がっているものであると思える。
それはやはり渡邊のドラムが(ずっと亮介とともにフラッドであり続けてきた渡邊のドラムが進化しているというのがフラッドが進化しているということだ)より激しく強いスネアの音を感じさせてくれるようになった「Good Speed You Baby」から、亮介はギターを置いてハンドマイクになると、かつては観客の上を歩いたりしていた「Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)」でタイトル通りにブルース的な歌唱を、ステージを歩き回りながら聴かせてくれるのであるが、
「俺たちが10年前より良い理由。ギター、青木テツ!」
と紹介してテツにギターソロを任せる。ほとんどライブで弾いたことがないはずなのに、ずっとこの曲を弾いてきたかのようなその弾きまくりっぷりが10年前とは違う確かなフラッドの強さだ。それはなかなかメンバーが安定しなかった時期を超えて、今はもうこの不動のメンバーで何年も続けてきて築き上げてきたものがあるからである。
亮介がアコギに持ち替えると、そのアコギがカントリー的なサウンドを奏でることによって少しほっこりしてしまうような雰囲気すらある「The Cat is Hard-Boiled」へ。ある意味ではこの曲こそが今回の再現ツアーでも屈指のレア曲と言えるかもしれないが、「月に吠える」という名曲犬ソングがあるだけに、猫派としてはこちらの猫ソングもたまには演奏して欲しいと思う。
そんなアコギ曲は今でも時にはライブのアンコールなどでも演奏されるくらいの力を持った名曲「月面のプール」へと続く。アカペラで歌い始めてからギターを弾き、そこにバンドの音が重なっていく亮介のロマンチックさが全開になった曲と言えるけれど、この10年間でどれだけフラッドというバンドの形が変わったり、世の中の状況が変わったりしてもこの曲の名曲っぷりが変わることはなかったということが、今聴くことによって実によくわかる。かつての再現ライブでは声が出ていなかった時もあった亮介がここへ来て常に絶好調状態が続いていることも。
そんな今回の再現ライブであるが、「I'M FREE」のジャケットを今の亮介バージョンでイラストにしたTシャツや、「FUCK FOREVER」のジャケットがプリントされたTシャツなどのデザインにずっと知っている人が関わってくれていることへの感慨深さを口にするのであるが、ここにきてなんと
「この作品たちは今のテイチクに移籍して最初にリリースしたものなんだけど、最初にリリースしたのが「FUCK FOREVER」っていうタイトルってなかなか面白いことやってるなって思った(笑)
でも昨日、事務所に行って当時のディレクターとも話してたんだけど、あの「I'M FREE」のジャケットに使われているのはどうやら俺じゃないっていう話になってきていて(笑)
今になってわかることもある」
と亮介がまさかの告白をするのだが(じゃああのジャケットで落下している人物が誰なのかということが気になるが)、亮介が実際に何度も落下するのを見ていたという渡邊&HISAYOのリズム隊からは「亮介かそうじゃないかは五分五分」というコメントに。
亮介はさらに「月面のプール」の最後のギターの音のコードを教えてくれたのが当時この曲をプロデュースしてくれた弥吉淳二であり、そのコードを知ってからはその後に作った曲でそのコードを多用してきたということを語る。
そんな、かつて実際にフラッドのライブでゲストとして出演してギターを弾いたこともある弥吉を亮介は「旅に出た」と評した。それはいつかまた会うことができるんじゃないかという願いのようなものを込めたような口ぶりでもあったのだが、その弥吉と我々観客に捧げるように演奏された「オーロラソング」はまさにこのステージにオーロラを映し出すかのような青い照明に照らされての演奏となる。
「It's A Aurora Song 予報じゃ新宿に雪が降る」
のフレーズを「名古屋」に変えて歌う亮介は
「It's A Aurora Song 涙の出るようなオーロラを
It's A Aurora Song 死ぬまでに観てみたいって?
It's A Aurora Song 君は今を生きてんじゃんか
さあ いこうぜ」
と続くこの曲の締めのフレーズを、確かに今を生きている目の前にいる我々に向かって歌ってくれているかのようだった。いつかオーロラを見ることができたら、弥吉淳二のようにもう会えない人にも会うことができたりするのだろうか。いや、それはどちらの方が見るのが難しいことなんだろうか。
そんな少ししんみりしてしまうような曲もあるが、亮介がギターを刻み、そこにテツのギター、渡邊のバスドラ、そしてHISAYOのベースが加わっていくという形のイントロの「The Future Is Mine」へ。サビ前の
「もがくように生きる二人だった」
のフレーズで亮介が二本指を突き上げると、観客も同じように指を突き上げながら飛び跳ねまくり、間奏では亮介の
「ギター、俺!」
と紹介してのギターソロもあったが、時折ごくたまにライブでも演奏されてきた曲であるが、その時その時で「今の曲でしかない」と思えてきたのは、間違いなくフラッドが歴史を重ねるごとに最高を更新してきたバンドであり、そのフラッドの姿を我々が見続けてきたからだ。だからやっぱりこの日も過去最高に
「君の目に映る未来を見ている Future Is Mine, Baby」
というフレーズが説得力を持つのだし、きっとこの先の未来もフラッドと、フラッドを愛する我々のものになるはずだ。
さらには亮介とテツのギターのイントロから、HISAYOとともに観客が渡邊のドラムのリズムに合わせて手拍子するのは「見る前に跳べ」。かつてリリース時には今はなき渋谷AXでのワンマンで観客がこの曲に合わせてジャンプする=跳ぶ姿を集めた映像が作られたりもしていたが、この日もやはり観客はサビでの「OH YEAH」のフレーズに合わせて高くジャンプする。それはコロナ禍になって楽しみ方の制限ができてもこの曲での客席の光景も、フラッドのライブの素晴らしさも全く変わらなかったということだ。こんなにも熱狂していながらも、曲終わりで全く声をあげたりすることがないフラッドファンは本当に凄いと改めて思う。
そんな楽しい雰囲気が一変するのは不穏なイントロでのテツのギターサウンドと真っ赤な照明、亮介のポエトリーリーディング的なボーカルという、リアルタイムで曲が公開された時にファンを驚愕させた「I'M FREE」。その曲が持つ攻撃力は今の最強のフラッドになったことによってより高くなっているし、それはテツと渡邊という2人がコーラスを重ねていることと無関係ではないはずだ。リード曲でありながらも近年は全く演奏されていなかったこの曲はこの瞬間に紛れもなく今のフラッドの曲になったのである。
その「I'M FREE」でもそうだったのだが、「FUCK FOREVER」とそれぞれの作品のタイトル曲が連発されたこの後半になって、テツのギターの音が明らかにさらに大きくなっている。その「FUCK FOREVER」ではサビで観客が歌詞に合わせて中指を突き立てるのであるが、間奏ではテツがステージ前まで出てきて右手中指を突き立てながら、左手でギターを残響させる。その姿は10年の時を経てテツがこの曲を今のフラッドのものに進化させた証であると言える。ああ、本当にこの男が入ってくれたからこそ、こうやって今に至るまでこのバンドが、もうメンバーが変わるという心配をすることなく続いてきたんだなと改めて思う。入ってくれて、ずっと続けてくれて本当にありがとう。
「I'M FREE」には亮介によるそれぞれのメンバーのことをイメージした曲が収録されているのだが、渡邊の激しいドラムの連打に次ぐ連打から始まる「Diamond Rocks」はまさにその渡邊をイメージしたと言われている曲である。リリースから10年近く経過しても未だに少年性を失わない無邪気さを感じさせてくれる渡邊だからこそ、今でもこの真っ直ぐなロックンロールが今のフラッドのものとして突き刺さるのであるし、
「Boys Don't Cry」
という締めの亮介の咆哮を自分のためのものだと思える、見た目や実年齢は全然違うけど精神だけはBoyである観客もたくさんいるはずである。もちろん自分もその1人だ。
そんな「Diamond Rocks」から続くのはHISAYOのベースがイントロとして鳴らされる「ロックンロールバンド」。改めてこの時期のフラッドはこれだけたくさんの名曲を生み出してきたんだなと思うけれど、それはいつの時期や時代でもずっとそうだった。だからいつも
「歌ってくれ ロックンロールバンド 今日が最後かも知れない
聴かせてくれ ロックンロールバンド だから今日を生きていく」
というフレーズがリアルに、ダイレクトに突き刺さってきたし、コロナ禍になってからは「Rollers Anthem」という大名曲も生まれたけれど、
「誰が何と言おうと これをロックンロールと呼ぼう」
と歌うその「Rollers Anthem」はこの曲があったからこそ生まれたものだと言えるかもしれない。
「暗闇の奥で光を見たのさ
とばしてくれ ロックンロールバンド だから今日も歌っている」
というフレーズはコロナ禍になって次々にライブがなくなってしまうような日々を経験してきたからこそ、フラッドのロックンロールが暗闇を照らす光であると思うことができる。
何よりも、こんなに客席で見ていて衝動に駆られるというか、モッシュやダイブというコロナ禍になる前は当たり前に起きていた楽しみ方が今まさに目の前で起こっていてもおかしくないくらいの(自分ですらそうしたくなるほどの)凄まじい演奏の熱狂っぷりを見ていても決してこのクアトロの床に貼られた立ち位置指定からはみ出したりすることなく、ルールをしっかり守って見ているフラッドファンの意識の凄さ。
今まさにフェスなどでロックバンドのライブの楽しみ方について議論が起こったりもしているし、どういう状況で何をしたら感染してしまうリスクがあるのかなんて誰にもわからないけれど、自分たちの愛する、心からカッコいいと思っているバンドがそうしたネガティブなことで話題になってたまるかという意思の強さを感じる。ずっとライブに来ているものとして、自分がそのフラッドのファンの中にいれていることを今こそ心から誇りに思えている。
そんな「ロックンロールバンド」がこの日の最高沸点を刻んだ後に演奏されたのは、亮介がギターを弾きながら高らかに歌い上げる「理由なき反抗 (The Rebel Age)」。
「ざけんじゃねぇ」
のフレーズで観客が腕や中指を突き立てると、テツも最後には両手で思いっきり中指を突き立てる。
「ダーリン 君からしたらこんなのってバカみたいかい
ダーリン 笑いながらも涙がこぼれるのはどうして」
というサビのフレーズが全てを表しているかのように、こんなにも楽しいのにこんなにも涙が溢れそうなくらいに感動してしまう。ロックンロールは、フラッドの音楽とライブはそれほどに我々の感情を豊かにしてくれるものなのである。
「えーっと………元気でね」
と他に言うことないんかいと思うような亮介の一言から最後に演奏されたのは、亮介が曲中にHISAYOを指差していたことからもわかる通りにビールを愛してやまないベーシストのHISAYOをイメージして作ったと言われている「Beer! Beer! Beer!」。それは酒こそ飲んでいないけれど、もはや打ち上げ的な空気ですらあるかのような、我々もライブ後にビールを飲まざるを得ないような。それはもちろんフラッドのこのライブが良過ぎたからこそビールを飲みたくなるのであるが、今やなかなかバンド側も打ち上げがしづらくなっている時世の中だし、翌日に大阪でライブということを踏まえるとこの日もバンドで打ち上げはできないだろうけど、それでもHISAYOが缶ビールを飲んでいるだろうなということだけはわかるのだった。
アンコールではアコギを持った亮介が1人でステージに登場すると、
「ちょっと先輩の曲をやるんだけど。イギリスの先輩のね(笑)だから音源に入れるにあたって許可を取った方がいいなと思ったから連絡したら、枚数限定ならいいっていう謎の判断になって(笑)
しかも今になって追加で売ってもいいっていうどういう仕組みなんだっていう(笑)
だから持ってない人は今買ってくれ。今回やった曲たちはこれからもライブでやっていくだろうけれど、この曲はそんなにやりたい曲じゃないから」
とマイクを通さずに観客に語り、そのままマイクを通さずに歌い始めたのはビリー・ジョエルの「Piano Man」に日本語歌詞を載せてカバーした「BLUES MAN」。この曲のまさにブルース的な歌唱を聴いていると、やはり亮介はロックンローラーでありながらブルースマンでもあるなと思えるし、そのマイクを通さなくてもハッキリと聴こえる声量は上手いとか下手を超越した、人に届けるために歌う人のボーカルだ。そんな曲がしっかりと
「2022年のブルース」
へとアップデートされている。死ぬまで生きるからこそ、そうそうライブではやらなくてもこうしてまたその年限りのブルースとしてこの曲はアップデートされていくはずだ。
そしてメンバーをステージに招くと、10月20日に代々木公園でフリーライブをやることを改めて告知し、テツはそのライブの告知写真と同じように手で金のマークを作るのは無料ライブだからということだろうか。あるいはクラウドファンディングを行ったことによるものだろうか。
「新幹線代とかあると思うけど…チケット代かからないから(笑)」
と名古屋の人にも来てもらうようにしっかりアピールすると、最後に演奏されたのはそのフリーライブでもこうして最後に鳴り響くであろう新曲「花火を見に行こう」。もう夏も終わろうとしている。花火を見る機会=夏フェスと言えるような時期も終わりを迎えつつある。でもまだまだフラッドにとっての大きな花火がこれから先に控えている。そんな花火をここにいる全員で観に行けたらと思うけれど、多分ほとんどの人は名古屋からでも来るだろうなとも思っている。LINE CUBEの時のような特別な映像や演出はないけれど、それでも確かに夏の夜にフラッドのライブを見ながら後ろで花火が上がる景色が想起できた。亮介は去り際にまた
「元気でね」
と言っていたが、フラッドのライブを見れる予定があると思うだけで、我々は確かに元気になれる。元気でいるための力を貰うことができる。10年前に世に放たれた2枚の作品は間違いなくあの頃よりも今の方が光り輝いているからこそ、そうした力を貰えるのだ。
それこそ亮介も「やらなかったことをやるようにしてきた」と言っていたが、10年近く前に「I'M FREE」が公開された時に、これはまた新しいフラッドが始まったなと思った。それくらいに画期的かつ斬新なロックンロールだったわけだが、この時期の作品や曲がとりわけ思い入れが強いのは、もちろん大好きな曲がたくさんあるというのもあるけれど、あの頃にこれ以上ないくらいに完璧だと思っていた、サポートギターの曽根巧を含めた4人編成がこのシーズンで最後だったからである。
その後のなかなかギターが定まらない紆余曲折っぷりを思い返すと、あの頃は本当に安定した楽しさだったと思うけれど、果たしてそれ以降の最終地点である今はどうなのかと言われたら、今がやっぱり1番最高だ。それをフラッドはいつもステージで示し続けてきた。どんなにバンドの形が変わっても鳴らし続けてきたロックンロールバンドとしての矜持。今の4人が鳴らす2つの作品はそれをこれ以上ないくらいの形で示していたし、
「これからこの曲たちがもっと可愛くなる」
と亮介は言っていたが、そんな曲たちの煌めきも素晴らしさも我々はみんなずっとわかっていた。2度とないかもしれないけれど、これから先の未来でまた何度だってやって欲しい。そんな風に思える再現ライブツアーの初日だった。
1.Summertime Blues II
2.Dancing Zombiez
3.Diver's High (VAVAVAVAVAVAVA)
4.All The Young Rock'N'Rollers
5.KINZOKU Bat
6.God Speed You Baby
7.Blues Never Die (ブルースは二度死ぬ)
8.The Cat I is Hard-Boiled
9.月面のプール
10.オーロラソング
11.The Future Is Mine
12.見る前に跳べ
13.I'M FREE
14.FUCK FOREVER
15.Diamond Rocks
16.ロックンロールバンド
17.理由なき反抗 (The Rebel Age)
18.Beer! Beer! Beer!
encore
19.BLUES MAN
20.花火を見に行こう
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