the telephones 「埼玉三連戦&大阪三連戦 〜Revenge of KOSHIGAYA, Promise of UMEDA〜」 @越谷EASY GOINGS 8/14
- 2022/08/17
- 20:24
前日には関東地方にも台風が直撃するという予報の中で開催された、the telephonesの越谷EASY GOINGSでの3daysワンマン。もともとは昨年に開催された埼玉3連戦の会場の一つがここだったのだが、直前になってライブハウスのスタッフの体調不良によって会場が使えなくなり、結果的に3daysのうちの2daysが西川口Heartsになったという経緯がある。なのでtelephonesにとっても会場にとってもリベンジと言える越谷3daysの最終日である。
越谷駅から歩いてすぐのビルの地下にあるEASY GOINGSは壁の至るところに貼ってあるポスターからも短くない歴史を持っているライブハウスであることがわかるのだが、このキャパの会場にしてはステージは実に見やすいし、ドリンクの種類が非常に豊富である。最近ではなくなってきつつある、床に立ち位置指定のマークが貼られているのはこのキャパの会場ならではだろうか。
18時になるとおなじみの「Happiness,Happiness,Happiness」のSEが流れてメンバーがステージに登場。完全にいつもと変わらないtelephonesの姿であり、石毛輝(ボーカル&ギター)は
「越谷ー!ついにこの日がやってきたぜー!みんな、踊りまくってDISCOの向こう側に行こうぜー!」
と独特のハイトーンボイスでテンション高く挨拶すると、松本誠治(ドラム)の叩き出すビートに石毛のギターが重なり、我々のテンションも高くしてくれる「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」でスタート。長島涼平(ベース)の動きに合わせて観客も「D.A.N.C.E.」の文字を体で表現するのが実に楽しい。ノブ(シンセ)が演奏中にもかかわらずその涼平にちょっかいをかけるなど、ノブはこの日も何度見ても全く慣れることはない突飛な行動で我々を笑顔にしてくれるのである。
そんな楽しい空気を一気にtelephonesならではのディスコパンクによるものに変えるのは石毛のギターが一気にソリッドかつシャープになる「sick rocks」で、まさにCrazyになるかのように主にノブがはしゃぎまくり、観客もかつてのようにモッシュ、ダイブという楽しみ方はできないけれどカウント部分では手を叩くという姿が今できる楽しみ方で楽しもうとしているのがよくわかる。最もクレイジーなのはやはり最後のサビ前で叫びまくるノブであるが。
「今日はいっぱいいるな!」
と石毛が言ったのは曲タイトルの対象者が、という意味であろう「Beautiful Bitch」でも観客が指を上げてカウントし、コーラス部分では一緒に歌えなくても腕を上げる。そりゃあやっぱりtelephonesのライブは一緒に歌って叫んで踊ってというのが1番の楽しみ方なのは間違い無いけれど、それでも目の前でメンバーが演奏してくれているだけで本当に嬉しい。ただただtelephonesの曲が、音楽が好きなファンとして。ノブのカウベルを叩きながらステージのあらゆる場所に歩いて行くというアクションも健在であるが、さすがにこのご時世では客席内には入っていかないのはさすがである。
「越谷!あそこにあるな〜。ステージにもあるな〜!」
と石毛が客席の天井とステージ上にあるミラーボールを指差して
「ぶっ壊せ!」
と叫ぶのはもちろん「crashed mirror ball」なのであるが、やはりtelephonesはメンバーの演奏が実に上手い。この曲での涼平の独特のベースラインしかり、石毛のとても歌いながら弾いている人のものとは思えないギターしかり。それが我々を踊らせてくれる最大の要因になっているということがライブを見ると実によくわかる。
そんなtelephonesは9月にアルバムをリリースすることが決定しているのだが、そのアルバムに収録される新曲としていち早くライブで披露されたのが涼平のベースがうねりまくる「Crap Shit」。自分は最初はタイトルを「Clap」だと思っており、実際にノブが手拍子をすることによってそれが客席にも広がっていくという曲でもあるのだが、実は「Crap」だったということで、telephonesの曲には昔からよくあるスラング的な意味を持つ曲だと言えるが、それは怒りの感情を表現したものであるとも捉えられるだけに早くアルバムを手に取って歌詞カードや対訳を見ながら聴いてみたいところである。
そのアウトロと次の曲のイントロを涼平のうねりまくるベースが繋ぐのは実に意外な選曲と言える「Aconite」。2014年リリースの、その名の通りにテンションの高い曲が揃ったアルバム「SUPER HIGH TENSION!!!」収録曲の中ではじっくり踊らせるようなタイプの曲であるのだが、それが年齢や様々な経験を重ねてきた今のtelephonesに実によく似合うようになっているというか、そう捉えられるように我々もバンドと一緒に年齢を重ねて、いろんなことを見てきたんだなと思う。
そんな思いが曲として、音として集約されているのが昨年末に配信リリースされた「Yellow Panda」であり、?なタイトルとは裏腹にサビのタイトルフレーズの連呼による石毛の歌唱とメロディによって観客の腕が左右に振られ、それによってこうして生きていて、今に至るまでずっとライブを見ることができているという多幸感を味わうことができている。telephonesのアッパーなディスコパンクではない曲にはそうした思いを感じさせてくれる曲も多々あるが、この曲はその決定版と言っていいものだろう。
その流れで演奏されるのは真っ暗になったステージにミラーボールに反射した光が生命の輝きであるかのように感じられる「Re:Life」。周りの人たちがどうだったかはわからないが、かつて毎回ライブで演奏されていた時期から自分はこの曲が非常に好きだった。踊れるような曲ではないけれど、石毛の思いっきり感情を込めたサビのボーカルと、涼平とノブによる神聖さすら感じさせるコーラスはどこかいなくなってしまった人の記憶を呼び起こすように感じさせてくれるからだ。そういう意味でも激しく踊りまくるだけじゃないサイドのtelephonesの真髄とも言える曲だと思う。
そんなバンドは台風が直撃するという話もあった前日にこの辺りはほとんど雨が降らなかったということを口にすると、改めて今年この会場で埼玉3連戦を行うことになった経緯を説明し、
「去年のことがあって今年こうして3daysやってるから、EASY GOINGSに俺たちがめちゃくちゃ貸しを作ってると思ったんだけど、よくよく思い出したら昔、俺がインフルエンザになってキャンセルしちゃったことがあった(笑)」
と実は会場に借りがあったことを告白しながら、
石毛「でも今回3日間もやったからやっぱり俺たちの方が貸しを作ってるみたいな(笑)」
ノブ「だから次はEASY GOINGSの箱企画ライブに呼んで欲しいよね」
石毛「dustboxと一緒に!スタッフの皆さん、是非よろしくお願いします!」
とdustboxとの対バンを熱望するのだが、それがこの後にフリとなるということをわかっていたのはその会話を隣で聞いていた男だけであった。
2020年の活動休止からの復活を鮮やかに告げた名盤「NEW!」のリリース以降も驚くべき速さでバンドは曲をリリースし続けており、ここではライブ会場限定販売の「Get Stupid」が演奏される。まさにバカになって踊ろうというこの狂騒のダンスチューンが後半のスタートを告げると、涼平のイントロのベースが我々の体だけではなく心まで動かしてくれる「electric girl」では上半身裸になったノブによるサビでの煌めくシンセのサウンドによって観客を飛び跳ねさせまくる。個々の演奏技術はもちろん、それが重なることによってバンドとしてのグルーヴがさらに高まるのがtelephonesのライブであり、それが我々をこんなにも踊らせてくれるのだ。
そんなtelephonesの最新配信シングルが、ノブがタイトルコーラス部分でカンフー的なパンチを繰り出しまくる「Whoa cha」であり、過去の「Kung Fu Village」も彷彿とさせる曲であるのだが、そのノブのパンチも含めてカンフーの要素を最大限にキャッチーに昇華している。というよりも「NEW!」以降リリースの新曲たちのサウンドの幅広さに驚いてしまうが、それは世界中のありとあらゆる音楽を聴いて自分の引き出しにしている石毛のリスナーとしての音楽愛によるものでもあるはずだ。
そして3連戦の最終日はやはりDISCOの向こう側へと行くべく、ここからはDISCOシリーズの曲が連発されていくのだが、その口火を切る「Monkey Discooooooo」では間奏でステージ前に出て観客を煽っていたノブがシンセの前に戻れずに、石毛が口でシンセのフレーズを口ずさむというとんでもない状況に。
さらには石毛のギターの弦まで切れたことによって石毛はステージ前まで出てきてハンドマイクで歌うというなりふり構わなさ。しかしそのライブだからこそ起こることによって生じる衝動こそがDISCOの向こう側なのだ。数え切れないくらいにライブで聴いてきた曲だけれど、今でもライブで聴いても飽きることがないのはこうした場面を見ることができるからだ。
そんなDISCOシリーズは立ち位置指定を厳守するのが実にキツいなと思いながらも、そんな思いも頭の中から吹っ飛ぶくらいにその場で暴れたくなる「I Hate DISCOOOOO!!!」へと続く。石毛はサブギターで演奏を続けるのであるが、先ほどの「Monkey Discooooooo」からのアクシデントも含めた流れによってバンド側も観客側もさらにテンションが高くなっているのが本当によくわかる。
そうなれば後はもうDISCOするしないというわけで「Do the DISCO」が演奏されるのであるが、発売が決まっているアルバム「Come on!!!」にはDISCOがつくタイトルの曲は収録されない。以前話を聞いた時に石毛は
「意図してDISCOっていうタイトルの曲を作っているわけではない」
と教えてくれたが、この曲が現状のDISCOシリーズの決定打ということだろうし、もしかしたらこの曲をまだ観客も含めた全員で歌うことができていないという時勢も少なからず影響があるのかもしれない。
そんなライブの最後に演奏されたのは
「こういうライブハウスのことを思って作った曲」
と言って演奏された、「Whoa cha」と同時にリリースされた新曲「Feel bad」。英語歌詞、しかもまだ対訳が見れない状況ではその歌詞の意味するところを全て知り得ることはできないのだけれど、もしかしたらbadと感じてしまうのはコロナ禍になってからライブハウスが悪者であるかのような報道をされていたたからかもしれないと思った。それはもともとライブハウスで働いていて、ライブハウスから始まったtelephonesだからこそより強い思いとして曲になるはず。だからこそやはり早く歌詞をじっくり見ながら聴きたい。かつて
「ディスコディスコばっか言ってるけど 俺は常にミュージックラバー」
と歌っていたように、telephonesはいろんな曲に自分たちの思いを込めて鳴らしてきたバンドだからだ。
本編終了後にはやたらと長いアンコール待ちの時間が続く。「なんかあったのかな?」と思ってしまうくらいだったが、まだステージが暗転したままの状態で見えた人影は明らかにtelephonesのメンバーのものではなく、下手に見えた人のもじゃもじゃした茶髪とメガネ。それに気付いた人が「え!?」と思わず声を上げてしまう。まさか?と思っていると
「みんなには内緒だから!」
と言って上手側でギターを持って口にしたのは、なんとdustboxのSUGA(ボーカル&ギター)。ステージに上がっていたのは本編でtelephonesのメンバーが「対バンしたい」と口にしていた、dustboxのメンバーたちだったのである。
telephonesの機材を手にしたメンバーたちはtelephonesのトリビュートアルバムに収録されていた「A.B.C.DISCO」のカバーを演奏し始める。「Hurdle Race」を彷彿とさせるようなメロディックなサウンドとツービートのリズムは紛れもなくdustboxによるカバーであり、そのdustboxらしさとコーラスでの観客が腕を振るtelephonesらしい多幸感が融合する名カバーの演奏中にステージに戻ってきたtelephonesのメンバーたちはみんな「え!?なんで!?」と呆気に取られている。どうやら完全なるシークレットでの登場だったようだ。まさかメンバーもこんな形で対バンを果たすことになるとは全く想像していなかっただろう。
dustboxによる演奏が終わるとtelephonesのメンバーが
「なんで!?」
と言いながらステージに合流。本番中はdustboxのメンバーはみんな楽屋におり、メンバーたちが本編を終えて楽屋に戻るのと入れ替わりでステージに出てきたそうである。するとtelephonesメンバーも、自分たちもdustboxカバーバージョンの「A.B.C.DISCO」を練習してきたと言って演奏を変わって「telephonesがdustboxバージョンの「A.B.C.DISCO」をdustboxと一緒に演奏する」という何ともややこしい状態に。JOJIとYU-KIは観客と一緒に腕を振る中、SUGAは自身のボーカルのキーもメロディックパンクシーン随一の高さであるというのに
「telephonesの曲はキーが高いんだよなぁ」
と言いながら石毛とボーカルを分け合う。かつてtelephonesがさいたまスーパーアリーナでの活動休止前ラストライブを行った時に出演したdustboxは
「まだちゃんと対バンしたことがないんだよね。いつかライブハウスで対バンできるように!」
と言っていたが、去年行われるはずだったこの会場での対バンが出来なくなってから1年経ってこうして両者が一緒にステージに立っている姿を見ることができているのはdustboxの地元であるこのライブハウスがあるからだ。だからこそ石毛は歌い終わった時に満面の笑みで
「ライブハウスは最高だぜー!」
と叫んだのだ。それくらいに自分たちでも想像していなかったことが起きるのがこのライブハウスという場所だから。
そうして共演を果たしたdustboxのメンバーがステージを去ると、当然ながらtelephonesのメンバーたちは今起きた事象を振り返るのであるが、実はこの仕掛け人は涼平であることが発覚し、
「MCでdustboxの話が出た時にここ(喉元)まで出かかってた(笑)」
と語るのだが、UKFCなどでは毎回ドッキリにハメられてきた涼平が仕掛け人側に回るというのはファンとしては実に新鮮なことである。スタッフに「変なノイズが出てるからちょっとアンコール出るの待って」と言われた石毛はノブに
「お前がギターアンプ蹴ったからだろ!」
と怒ってしまっていたということも明らかになるのであるが。
なので本当はこの「A.B.C.DISCO」で終わるはずだったのが、今日はこの曲をやらないと終われないと言ってこの3連戦で初めて演奏されたのはもちろんこの会場、ここにいる全ての人に愛とDISCOを送るための「Love&DISCO」。やはり何度となく聴いてきたこの曲も、今までとはまた違ったものとして聴こえる。その日の状況、曲順、場所、メンバーの演奏やテンション…それらが変わることによって曲の聴こえ方が変わるのもライブだからだ。この日のこの「Love&DISCO」は石毛が演奏後に
「バンドやってて本当に良かった!」
と叫んだ言葉に集約されていた。デビューから15年経って、活動休止や復活という様々なことを経てきたtelephonesでさえもそう思うようなことがライブハウスにはまだまだ起きる。だからバンドも、バンドを愛する我々もこれからもこうしてライブハウスで生きていくのだ。そんな思いを確かにしてくれた、telephonesの埼玉3連戦の最終日だった。
telephonesは活動休止期間を挟んでも、おそらく自分の人生の中でトップクラスの回数ライブを見てきたバンドである。もう何回見てきたかなんてとてもじゃないが数え切れない。でもそれだけ見てもやっぱり飽きることはない。それどころか、こうしてライブを観て音を浴びていると「やっぱりこれだよな」と思うくらいに自分の中でこのバンドのライブが真ん中にあるということがわかる。だから間違いなくこれからも一生ライブを観続けていくバンドになる。アルバムも、それに伴って開催されるであろうツアーも本当に楽しみだ。そう思えることがこれからも生きていくための力になっていく。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.sick rocks
3.Beautiful Bitch
4.crashed mirror ball
5.Crap Shit
6.Aconite
7.Yellow Panda
8.Re:Life
9.Get Stupid
10.electric girl
11.Whoa cha
12.Monkey Discooooooo
13.I Hate DISCOOOOO!!!
14.Do the DISCO
15.Feel bad
encore
16.A.B.C.DISCO by dustbox
17.A.B.C.DISCO dustbox ver.
18.Love&DISCO
越谷駅から歩いてすぐのビルの地下にあるEASY GOINGSは壁の至るところに貼ってあるポスターからも短くない歴史を持っているライブハウスであることがわかるのだが、このキャパの会場にしてはステージは実に見やすいし、ドリンクの種類が非常に豊富である。最近ではなくなってきつつある、床に立ち位置指定のマークが貼られているのはこのキャパの会場ならではだろうか。
18時になるとおなじみの「Happiness,Happiness,Happiness」のSEが流れてメンバーがステージに登場。完全にいつもと変わらないtelephonesの姿であり、石毛輝(ボーカル&ギター)は
「越谷ー!ついにこの日がやってきたぜー!みんな、踊りまくってDISCOの向こう側に行こうぜー!」
と独特のハイトーンボイスでテンション高く挨拶すると、松本誠治(ドラム)の叩き出すビートに石毛のギターが重なり、我々のテンションも高くしてくれる「D.A.N.C.E. to the telephones!!!」でスタート。長島涼平(ベース)の動きに合わせて観客も「D.A.N.C.E.」の文字を体で表現するのが実に楽しい。ノブ(シンセ)が演奏中にもかかわらずその涼平にちょっかいをかけるなど、ノブはこの日も何度見ても全く慣れることはない突飛な行動で我々を笑顔にしてくれるのである。
そんな楽しい空気を一気にtelephonesならではのディスコパンクによるものに変えるのは石毛のギターが一気にソリッドかつシャープになる「sick rocks」で、まさにCrazyになるかのように主にノブがはしゃぎまくり、観客もかつてのようにモッシュ、ダイブという楽しみ方はできないけれどカウント部分では手を叩くという姿が今できる楽しみ方で楽しもうとしているのがよくわかる。最もクレイジーなのはやはり最後のサビ前で叫びまくるノブであるが。
「今日はいっぱいいるな!」
と石毛が言ったのは曲タイトルの対象者が、という意味であろう「Beautiful Bitch」でも観客が指を上げてカウントし、コーラス部分では一緒に歌えなくても腕を上げる。そりゃあやっぱりtelephonesのライブは一緒に歌って叫んで踊ってというのが1番の楽しみ方なのは間違い無いけれど、それでも目の前でメンバーが演奏してくれているだけで本当に嬉しい。ただただtelephonesの曲が、音楽が好きなファンとして。ノブのカウベルを叩きながらステージのあらゆる場所に歩いて行くというアクションも健在であるが、さすがにこのご時世では客席内には入っていかないのはさすがである。
「越谷!あそこにあるな〜。ステージにもあるな〜!」
と石毛が客席の天井とステージ上にあるミラーボールを指差して
「ぶっ壊せ!」
と叫ぶのはもちろん「crashed mirror ball」なのであるが、やはりtelephonesはメンバーの演奏が実に上手い。この曲での涼平の独特のベースラインしかり、石毛のとても歌いながら弾いている人のものとは思えないギターしかり。それが我々を踊らせてくれる最大の要因になっているということがライブを見ると実によくわかる。
そんなtelephonesは9月にアルバムをリリースすることが決定しているのだが、そのアルバムに収録される新曲としていち早くライブで披露されたのが涼平のベースがうねりまくる「Crap Shit」。自分は最初はタイトルを「Clap」だと思っており、実際にノブが手拍子をすることによってそれが客席にも広がっていくという曲でもあるのだが、実は「Crap」だったということで、telephonesの曲には昔からよくあるスラング的な意味を持つ曲だと言えるが、それは怒りの感情を表現したものであるとも捉えられるだけに早くアルバムを手に取って歌詞カードや対訳を見ながら聴いてみたいところである。
そのアウトロと次の曲のイントロを涼平のうねりまくるベースが繋ぐのは実に意外な選曲と言える「Aconite」。2014年リリースの、その名の通りにテンションの高い曲が揃ったアルバム「SUPER HIGH TENSION!!!」収録曲の中ではじっくり踊らせるようなタイプの曲であるのだが、それが年齢や様々な経験を重ねてきた今のtelephonesに実によく似合うようになっているというか、そう捉えられるように我々もバンドと一緒に年齢を重ねて、いろんなことを見てきたんだなと思う。
そんな思いが曲として、音として集約されているのが昨年末に配信リリースされた「Yellow Panda」であり、?なタイトルとは裏腹にサビのタイトルフレーズの連呼による石毛の歌唱とメロディによって観客の腕が左右に振られ、それによってこうして生きていて、今に至るまでずっとライブを見ることができているという多幸感を味わうことができている。telephonesのアッパーなディスコパンクではない曲にはそうした思いを感じさせてくれる曲も多々あるが、この曲はその決定版と言っていいものだろう。
その流れで演奏されるのは真っ暗になったステージにミラーボールに反射した光が生命の輝きであるかのように感じられる「Re:Life」。周りの人たちがどうだったかはわからないが、かつて毎回ライブで演奏されていた時期から自分はこの曲が非常に好きだった。踊れるような曲ではないけれど、石毛の思いっきり感情を込めたサビのボーカルと、涼平とノブによる神聖さすら感じさせるコーラスはどこかいなくなってしまった人の記憶を呼び起こすように感じさせてくれるからだ。そういう意味でも激しく踊りまくるだけじゃないサイドのtelephonesの真髄とも言える曲だと思う。
そんなバンドは台風が直撃するという話もあった前日にこの辺りはほとんど雨が降らなかったということを口にすると、改めて今年この会場で埼玉3連戦を行うことになった経緯を説明し、
「去年のことがあって今年こうして3daysやってるから、EASY GOINGSに俺たちがめちゃくちゃ貸しを作ってると思ったんだけど、よくよく思い出したら昔、俺がインフルエンザになってキャンセルしちゃったことがあった(笑)」
と実は会場に借りがあったことを告白しながら、
石毛「でも今回3日間もやったからやっぱり俺たちの方が貸しを作ってるみたいな(笑)」
ノブ「だから次はEASY GOINGSの箱企画ライブに呼んで欲しいよね」
石毛「dustboxと一緒に!スタッフの皆さん、是非よろしくお願いします!」
とdustboxとの対バンを熱望するのだが、それがこの後にフリとなるということをわかっていたのはその会話を隣で聞いていた男だけであった。
2020年の活動休止からの復活を鮮やかに告げた名盤「NEW!」のリリース以降も驚くべき速さでバンドは曲をリリースし続けており、ここではライブ会場限定販売の「Get Stupid」が演奏される。まさにバカになって踊ろうというこの狂騒のダンスチューンが後半のスタートを告げると、涼平のイントロのベースが我々の体だけではなく心まで動かしてくれる「electric girl」では上半身裸になったノブによるサビでの煌めくシンセのサウンドによって観客を飛び跳ねさせまくる。個々の演奏技術はもちろん、それが重なることによってバンドとしてのグルーヴがさらに高まるのがtelephonesのライブであり、それが我々をこんなにも踊らせてくれるのだ。
そんなtelephonesの最新配信シングルが、ノブがタイトルコーラス部分でカンフー的なパンチを繰り出しまくる「Whoa cha」であり、過去の「Kung Fu Village」も彷彿とさせる曲であるのだが、そのノブのパンチも含めてカンフーの要素を最大限にキャッチーに昇華している。というよりも「NEW!」以降リリースの新曲たちのサウンドの幅広さに驚いてしまうが、それは世界中のありとあらゆる音楽を聴いて自分の引き出しにしている石毛のリスナーとしての音楽愛によるものでもあるはずだ。
そして3連戦の最終日はやはりDISCOの向こう側へと行くべく、ここからはDISCOシリーズの曲が連発されていくのだが、その口火を切る「Monkey Discooooooo」では間奏でステージ前に出て観客を煽っていたノブがシンセの前に戻れずに、石毛が口でシンセのフレーズを口ずさむというとんでもない状況に。
さらには石毛のギターの弦まで切れたことによって石毛はステージ前まで出てきてハンドマイクで歌うというなりふり構わなさ。しかしそのライブだからこそ起こることによって生じる衝動こそがDISCOの向こう側なのだ。数え切れないくらいにライブで聴いてきた曲だけれど、今でもライブで聴いても飽きることがないのはこうした場面を見ることができるからだ。
そんなDISCOシリーズは立ち位置指定を厳守するのが実にキツいなと思いながらも、そんな思いも頭の中から吹っ飛ぶくらいにその場で暴れたくなる「I Hate DISCOOOOO!!!」へと続く。石毛はサブギターで演奏を続けるのであるが、先ほどの「Monkey Discooooooo」からのアクシデントも含めた流れによってバンド側も観客側もさらにテンションが高くなっているのが本当によくわかる。
そうなれば後はもうDISCOするしないというわけで「Do the DISCO」が演奏されるのであるが、発売が決まっているアルバム「Come on!!!」にはDISCOがつくタイトルの曲は収録されない。以前話を聞いた時に石毛は
「意図してDISCOっていうタイトルの曲を作っているわけではない」
と教えてくれたが、この曲が現状のDISCOシリーズの決定打ということだろうし、もしかしたらこの曲をまだ観客も含めた全員で歌うことができていないという時勢も少なからず影響があるのかもしれない。
そんなライブの最後に演奏されたのは
「こういうライブハウスのことを思って作った曲」
と言って演奏された、「Whoa cha」と同時にリリースされた新曲「Feel bad」。英語歌詞、しかもまだ対訳が見れない状況ではその歌詞の意味するところを全て知り得ることはできないのだけれど、もしかしたらbadと感じてしまうのはコロナ禍になってからライブハウスが悪者であるかのような報道をされていたたからかもしれないと思った。それはもともとライブハウスで働いていて、ライブハウスから始まったtelephonesだからこそより強い思いとして曲になるはず。だからこそやはり早く歌詞をじっくり見ながら聴きたい。かつて
「ディスコディスコばっか言ってるけど 俺は常にミュージックラバー」
と歌っていたように、telephonesはいろんな曲に自分たちの思いを込めて鳴らしてきたバンドだからだ。
本編終了後にはやたらと長いアンコール待ちの時間が続く。「なんかあったのかな?」と思ってしまうくらいだったが、まだステージが暗転したままの状態で見えた人影は明らかにtelephonesのメンバーのものではなく、下手に見えた人のもじゃもじゃした茶髪とメガネ。それに気付いた人が「え!?」と思わず声を上げてしまう。まさか?と思っていると
「みんなには内緒だから!」
と言って上手側でギターを持って口にしたのは、なんとdustboxのSUGA(ボーカル&ギター)。ステージに上がっていたのは本編でtelephonesのメンバーが「対バンしたい」と口にしていた、dustboxのメンバーたちだったのである。
telephonesの機材を手にしたメンバーたちはtelephonesのトリビュートアルバムに収録されていた「A.B.C.DISCO」のカバーを演奏し始める。「Hurdle Race」を彷彿とさせるようなメロディックなサウンドとツービートのリズムは紛れもなくdustboxによるカバーであり、そのdustboxらしさとコーラスでの観客が腕を振るtelephonesらしい多幸感が融合する名カバーの演奏中にステージに戻ってきたtelephonesのメンバーたちはみんな「え!?なんで!?」と呆気に取られている。どうやら完全なるシークレットでの登場だったようだ。まさかメンバーもこんな形で対バンを果たすことになるとは全く想像していなかっただろう。
dustboxによる演奏が終わるとtelephonesのメンバーが
「なんで!?」
と言いながらステージに合流。本番中はdustboxのメンバーはみんな楽屋におり、メンバーたちが本編を終えて楽屋に戻るのと入れ替わりでステージに出てきたそうである。するとtelephonesメンバーも、自分たちもdustboxカバーバージョンの「A.B.C.DISCO」を練習してきたと言って演奏を変わって「telephonesがdustboxバージョンの「A.B.C.DISCO」をdustboxと一緒に演奏する」という何ともややこしい状態に。JOJIとYU-KIは観客と一緒に腕を振る中、SUGAは自身のボーカルのキーもメロディックパンクシーン随一の高さであるというのに
「telephonesの曲はキーが高いんだよなぁ」
と言いながら石毛とボーカルを分け合う。かつてtelephonesがさいたまスーパーアリーナでの活動休止前ラストライブを行った時に出演したdustboxは
「まだちゃんと対バンしたことがないんだよね。いつかライブハウスで対バンできるように!」
と言っていたが、去年行われるはずだったこの会場での対バンが出来なくなってから1年経ってこうして両者が一緒にステージに立っている姿を見ることができているのはdustboxの地元であるこのライブハウスがあるからだ。だからこそ石毛は歌い終わった時に満面の笑みで
「ライブハウスは最高だぜー!」
と叫んだのだ。それくらいに自分たちでも想像していなかったことが起きるのがこのライブハウスという場所だから。
そうして共演を果たしたdustboxのメンバーがステージを去ると、当然ながらtelephonesのメンバーたちは今起きた事象を振り返るのであるが、実はこの仕掛け人は涼平であることが発覚し、
「MCでdustboxの話が出た時にここ(喉元)まで出かかってた(笑)」
と語るのだが、UKFCなどでは毎回ドッキリにハメられてきた涼平が仕掛け人側に回るというのはファンとしては実に新鮮なことである。スタッフに「変なノイズが出てるからちょっとアンコール出るの待って」と言われた石毛はノブに
「お前がギターアンプ蹴ったからだろ!」
と怒ってしまっていたということも明らかになるのであるが。
なので本当はこの「A.B.C.DISCO」で終わるはずだったのが、今日はこの曲をやらないと終われないと言ってこの3連戦で初めて演奏されたのはもちろんこの会場、ここにいる全ての人に愛とDISCOを送るための「Love&DISCO」。やはり何度となく聴いてきたこの曲も、今までとはまた違ったものとして聴こえる。その日の状況、曲順、場所、メンバーの演奏やテンション…それらが変わることによって曲の聴こえ方が変わるのもライブだからだ。この日のこの「Love&DISCO」は石毛が演奏後に
「バンドやってて本当に良かった!」
と叫んだ言葉に集約されていた。デビューから15年経って、活動休止や復活という様々なことを経てきたtelephonesでさえもそう思うようなことがライブハウスにはまだまだ起きる。だからバンドも、バンドを愛する我々もこれからもこうしてライブハウスで生きていくのだ。そんな思いを確かにしてくれた、telephonesの埼玉3連戦の最終日だった。
telephonesは活動休止期間を挟んでも、おそらく自分の人生の中でトップクラスの回数ライブを見てきたバンドである。もう何回見てきたかなんてとてもじゃないが数え切れない。でもそれだけ見てもやっぱり飽きることはない。それどころか、こうしてライブを観て音を浴びていると「やっぱりこれだよな」と思うくらいに自分の中でこのバンドのライブが真ん中にあるということがわかる。だから間違いなくこれからも一生ライブを観続けていくバンドになる。アルバムも、それに伴って開催されるであろうツアーも本当に楽しみだ。そう思えることがこれからも生きていくための力になっていく。
1.D.A.N.C.E. to the telephones!!!
2.sick rocks
3.Beautiful Bitch
4.crashed mirror ball
5.Crap Shit
6.Aconite
7.Yellow Panda
8.Re:Life
9.Get Stupid
10.electric girl
11.Whoa cha
12.Monkey Discooooooo
13.I Hate DISCOOOOO!!!
14.Do the DISCO
15.Feel bad
encore
16.A.B.C.DISCO by dustbox
17.A.B.C.DISCO dustbox ver.
18.Love&DISCO
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