SATANIC CARNIVAL 2022 day2 @富士急ハイランドコニファーフォレスト 6/5
- 2022/06/06
- 18:46
昨年、関東圏(と言っていい位置か微妙だが)で開催された数少ない夏の野外フェスである、パンク・ラウドの祭典的なフェスである、PIZZA OF DEATH主催のSATANIC CARNIVAL。
コロナ禍になる前は幕張メッセで開催されていたので、てっきり今年は幕張メッセに戻るのかと思っていたのだが、今年も去年に続いての富士急ハイランドコニファーフォレストでの開催となり、この日は2日目である。
雨予報に反して、朝から実にくっきりと富士山が見えるという富士急ハイランドの絶好のロケーションを眺めながらコニファーフォレストへと向かうと(富士急ハイランドから10分くらい歩く)、昨年は狭い空き地で行われていた物販はコニファーフォレストの広大な駐車場へと移動しており、予約番号順での呼び出しという形で混み合わないような形にしていることがわかる。去年開催できたフェスだからこその改善である。
11:00〜 SABLE HILLS (Opening Act) [EVIL STAGE]
この日のオープニングアクトはSABLE HILLS。もうメンバーが登場した段階でわかるとおりに、ステージにいる5人中4人が長髪という、ラウドというよりはメタルと言えるようなバンドである。
なので朝の11時台の晴れた野外という爽やかなシチュエーションに似つかわしくないくらいの暗黒のメタルサウンドが鳴り響き、メンバーが率先してその音に合わせて長髪を振り乱してヘドバンしまくると、オープニングアクトとは思えないくらいに集まった観客たちも同じようにヘドバンしまくるという異様な光景に。
ギター2人はスピーカーの裏を通ってステージからはみ出しているような部分まで出てきて演奏するという、初出演とは思えないくらいのステージの使いこなしっぷりであり、それがこのフェスにおいても観客を扇動できるライブ巧者っぷりなのかもしれない。そのギターのサウンドはメタル特有の抒情的な泣きの成分が含まれたメロディアスなものであり、コアなリズムに合わさることによって、メタルコアと言えるような要素を強く感じさせる。
そんなバンドのセンターに立つ身としてのカリスマ性を感じさせるTakuya(ボーカル)は
「サタニック!今日出れたことで未来が見えました!」
と言っていたが、それは自分たちのバンドのこれからというよりもヘヴィメタルというアンダーグラウンドであり続けてきたシーンに光が射したということでもあるのだろうし、このフェスに出れたことによってそれを感じることができたのだろう。だからこそ最後には
「ありがとうサタニック!また来年!」
と、来年もまたこのフェスで会うための約束をしたのだ。
11:30〜 ハルカミライ [SATAN STAGE]
メインステージであるSATAN STAGEのこの日のトップバッターはハルカミライ。去年までは小さいステージへの出演だったのが、今年はついにメインステージに。すでに昨年の段階でメインに出るべき動員力を誇っていたけれど、そこはパンクの中でもメロコアがメインというこのフェス、レーベルならではの色ということだろうか。
すでにライブエリア開場時から関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)の3人はサウンドチェックで曲を連発していたが、本番でもステージ左右に設置された巨大スクリーンにバンド名が映し出される前に3人がステージに登場すると、アーティスト名がスクリーンに映し出された後に橋本学(ボーカル)も最近のライブではおなじみの巨大な旗を持ってステージに現れて「君にしか」でスタートして須藤はベースを弾かずにステージ上を飛び跳ねまくり、観客は腕を振り上げまくると、「カントリーロード」へというハルカミライのライブのオープニングとして定番の流れになるのだが、この日は朝は完全に晴れ渡っていたためにかなり暑く、橋本も小松もこの時点ですでに上半身裸になり、関はアンプの上に立ってギターソロを決めてから大きくジャンプする。
そのまま橋本がブルースハープを吹き始める「ヨーローホー」はやはりこうした野外の会場というシチュエーションに実によく似合う曲だ。そこに重なっていく関、須藤、小松のコーラスもどこか青春感を強く感じさせてくれるのも含めて。
続けざまにショートチューン「ファイト!!」から、疾走するツービートのパンクソング「俺達が呼んでいる」とフェスではおなじみの曲たちを畳み掛けると、
「こういう野外で晴れたり雨が降ったりするのは、花が咲くためなんだよ。みんなでおっきな花を咲かせよう」
と言って「春のテーマ」を橋本が歌い始めると、ステージ端にいるカメラマンを呼び寄せ、関と須藤もそのカメラに映り込もうとしながらも、橋本が映し出したかったのは客席の観客の姿。
「フェスの主役はお客さんか?俺たち出演者か?ここにいる全員が主役だぜー!」
と叫ぶと、観客がその言葉に応えるかのように一斉に腕を上げる。その姿がスクリーンに映し出される。それは本当に美しい、ハルカミライのライブだからこそ見ることができるものなんだよなと感じられるものだった。我々1人1人がこのアーティストを観たいと思ってここに来るという選択をしたことで、このフェスが成立しているのだ。
さらに「Tough to be a Hugh」とショートチューンを演奏することで曲数が増えていくだけに、ハルカミライのライブはフェスでもなんだか凄まじいお得感を感じることができるのだが、それに続くようにメンバーのアカペラから始まって一気に小松のツービートが突っ走る「PEAK'D YELLOW」を演奏すると、曲終わりでは小松もステージ前まで出てきてサビをメンバー全員で大合唱する。
そのまま4人で再びアカペラで歌い始めた「世界を終わらせて」のポップなサウンドで観客たちを飛び跳ねさせまくると、まだ昼間だけれどメンバーの背後の照明が暗いライブハウスでメンバーを照らしているかのように輝く「僕らは街を光らせた」で橋本は
「SATANIC CARNIVAL、今日来て良かったってここにいる全員が思えますように!」
と叫ぶのだが、自分にとっては歓声の果てを、音楽の果てを見せてくれるこのバンドがこうしてトップバッターとしてこのステージに立ってくれているからこそ、すでにこの時点で「今日来て良かったな」って心から思えているのだ。
すると須藤と橋本が何やら話し合い、
「セトリ変えました!」
と口にすると、橋本は「アストロビスタ」を歌い始める。ステージにはアコギもセッティングされていただけに、本来なら「つばさ」をやる予定だったのかもしれないが、持ち時間的に足りない(「つばさ」はハルカミライにしては長めの曲だ)とみて変えたのかもしれないけれど、
「眠れない夜を越えて SATANIC CARNIVALに来たんだ」
と歌詞を変えて歌いながら、前方エリアにいる自分たちよりはるかに年上の男性を見つけて、
「おっちゃん、きっと俺が大好きなバンドのライブを見てきたんだろ?うらやましいよ」
と言うあたり、その観客がこの曲の歌詞に出てくるブルーハーツのライブに行っていたことを感じ取ったのかもしれないが、橋本は曲中にも
「ルールやマナー、たくさんあるのはもうわかってるだろ?それよりも音楽の話をしよう。サタニックで見たこのバンド、最高だったって」
とも言っていた。それはとかく規模がデカいフェスだと告発のし合いみたいになってしまうことへの橋本なりの警鐘だったのかもしれない。監視したりするよりも、もっと楽しいことに目を向けようという。ハルカミライのライブが我々をそんな感覚にさせてくれるのは、メンバーの誰も傷つかないようにという優しさが音や言葉から伝わってくるからだ。そんなバンドのライブを見たくて、その感覚を感じ取りたくて、こうしてこんな場所まで足を運んでいる。曲が終わってステージから去る際にわざわざ巨大な旗を取りに戻りに来た橋本の笑顔を見て、やっぱり今日このフェスに来て本当に良かったなと思った。
ハルカミライはパンクでありながらも、いわゆるPIZZA OF DEATH的なメロコアのパンクとはかなり違う。それこそブルーハーツからの影響が強いように、AIR JAM世代の1世代下というような、青春パンクと言えるようなサウンドのパンクバンドであるだけに、今まではなかなかフェスのメインステージに据えることができなかったのだろう。
でもPIZZA OF DEATHの社長の横山健のHi-STANDARDもブルーハーツからの影響を公言している。そのブルーハーツ→ハイスタから連なり、この日出演するWANIMAやフォーリミの先に、後に日本のパンクの歴史をまとめる際に2020年代を代表する存在になるであろう位置にこのバンドはいる。サウンドは少し違えど、パンクの魂は確かに、脈々と受け継がれている。このフェスで見るハルカミライのライブはそんなことを感じさせてくれる。
リハ.PEAK'D YELLOW
リハ.predawn
リハ.ラブソング
リハ.エース
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ヨーローホー
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.春のテーマ
7.Tough to be a Hugh
8.PEAK'D YELLOW
9.世界を終わらせて
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12:35〜 SHANK [SATAN STAGE]
こちらは幕張メッセで開催していた時期、つまりはコロナ禍になる前からメインステージを任されてきた存在である、SHANK。PIZZA OF DEATHのバンドではないけれど、サウンド的にはそこに入っていたとしても違和感がないバンドである。
とはいえ多くのメロコアバンドたちにとっては憧れの存在であろうPIZZA OF DEATHの主催イベントであっても、このバンドは普段と全く変わらない表情と熱量でステージに登場し、庵原将平(ボーカル&ベース)がパンク・メロコアバンドとしての攻撃力の高さを感じさせる独特の声で歌い上げる「Surface」からスタートすると、ベース&ボーカルのスリーピースバンドならではの、松崎兵太(ギター)がスカのリズムを刻む「620」で観客を踊らせまくるというフェスおなじみのスタート。
というのも自分は先月にJAPAN JAMでもこのバンドのライブを見ているからであるが、その時は演奏していなかった、このフェスで鳴らされるのが実に相応しいように感じる、疾走するパンクサウンドの「HOPE」を入れてセトリに変化をもたらすというのはさすが年中ライブをやって生きているバンドである。
しかしながら最近はあまりライブがなく、松崎は家族としか会っておらず、庵原もNetflixばかり見ている生活をしていたので、いきなりこんなにたくさんの人の前でライブをやることになって驚いている、というバンドを始めたばかりの少年のようなことを口にするのも、このバンドが変わらずに地元の長崎を拠点にして生活しているからだろう。
そんなMCの後に突如として庵原がベースを弾いて歌い始めた「set the fire」はかつて幕張メッセで開催されていた時のこのフェスで配布されていたコンピレーションCDに収録されていたな、ということを思い出すことができるのも、いつも演奏する曲であってもその場が違えば感じることが違うということである。
すると「Take Me Back」では間奏部分で松崎がパンクバンドがあまり使うことのないような類いのディレイ系のエフェクターを駆使したサウンドを鳴らしたことによって、庵原が
「そんな技術どこで身につけてきたん?(笑)」
と驚くという一幕もあったが、それは家で家族と生活しながらも日々新しいサウンドを松崎が追求しているということの現れでもある。曲終わりで庵原が
「WANIMAです!」
と言うのはおなじみになりつつあるが、この日は本人たちもいるだけに、何か言われたりしなかったのだろうか。
池本雄季(ドラム)の疾走するようなビートが牽引し、このバンドの持つメロディックな部分を感じさせてくれる美メロの応酬による「Good Night Darling」から、
「みんな、これはゲームじゃないんだ」
と日本語訳にしたタイトルを口にした「It's not a game」と続くと、スティーヴィー・ワンダーの名曲を、パンクというよりはスリーピースのロックバンドのサウンドとして生まれ変わらせた「Isn't She Lovely」のカバー(このバンドが洋楽のカバーを多くアルバムに収録しているのはどうしたってハイスタを彷彿とさせる)がこの広い会場にいるたくさんの人を一つに包み込むように響いていく。そう感じられるのもこのバンドの表現力とカバーの上手さあってこそである。
「今のこの状況にピッタリの曲。みんな、光の当たる方向へ行こう」
と言って演奏された、今年リリースの最新アルバム「STEADY」収録の「Bright Side」で再び疾走したかと思いきや、まだ昼くらいというライブにしては早い時間だからこそ「Wake Up Call」の穏やかなメロディが1日の始まりを告げるように、さぁまたここから行くか、と気持ちを新たにさせてくれ、最後はこのバンドらしく「Honesty」で駆け抜けて終わり…と思いきや、庵原と松崎が近寄って何やら言葉を交わし始めると、
「セットリストで揉めてました(笑)まだ時間あるんで」
と言って急遽「Two sweet coffee a day」から「submarine」を追加するのだが、特に「Two sweet coffee a day」はなかなかこうしたフェスではやらない曲ということもあって、観客がより一層湧いていたのが実によくわかるリアクションだったのだが、最近ライブをやっていないと言いながらも、こうやって予定になかった曲をもすぐに演奏することができる。それはやはりこのバンドが常にライブをやって生きているバンドであるだけに、体に曲が染み付いているのだろうと思う。その生き様は本当にカッコいいと思うし、持ち時間35分のライブでこんなにたくさん曲を聴けるというのは実に満足に感じられる。そういう意味でもこれからもガンガンライブを観たいバンドだと思える。
リハ.Departure
リハ.Wall Ride
リハ.Karma
1.Surface
2.620
3.HOPE
4.Life is…
5.set the fire
6.Take Me Back
7.Good Night Darling
8.It's not a game
9.Isn't She Lovely
10.Bright Side
11.Wake Up Call
12.Honesty
13.Two sweet coffee a day
14.submarine
13:15〜 SHIMA [HELL STAGE]
兎にも角にもEGACCHO(ボーカル)のちょっとぽっちゃりした体型に長髪という見た目も、「ZMS」(ザイマス。ありがとうございますの意)を掲げる活動姿勢も、どこかパンクシーンのお笑い担当的な感じにも見える、北九州の4人組バンド、SHIMA。SiMが主催するDEAD POP FESTiVALに出演しているイメージも強いが、このフェスにも出演。
そのEGACCHOが元気いっぱいに歌い始める、ラーメン好きとしてはこんな曲反則だろうと思うくらいにラーメンが食べたい衝動に駆られる「すすれ -Re麺ber-」からスタートすると、そのポップなパンクサウンドが我々観客のことを楽しく、笑顔にしてくれる。それは飛び跳ねるようにして演奏しているYUSUKE HIKIDA(ギター)も、SHINYA SYODA(ベース)も、このバンドのパンクなビートを面白い人たちというイメージよりもはるかに力強くしっかりしたビートで支える明生(ドラム)の表情がそうだからということもあるだろう。メンバーの楽しくて仕方がないというような表情が観客に確かに伝わっているのであるが、「PARISLOTTE」では早くもEGACCHOがバンドの代名詞でもある「Z!M!S!」を体で表現し、それが観客にも広がっていくという光景は見ていて実に面白い。
するとYUSUKE HIKIDAが
「富士山の山頂まで届くようにー!」
といきなりオフマイクで叫び始め、EGACCHOに
「それ、そこそこのバンドかよくやりそうなやつや」
とツッコまれるのだが、そのEGACCHOは
「7年ぶりの出演でございます!2015年にオープニングアクトで出演して、そこそこ反響あったと思ったのに、そこから全く声がかからなくなったから、PIZZA OF DEATHに嫌われたのかと思った(笑)」
と笑わせると、さらに
「しかも前にKen Yokoyamaさんが北九州に来た時に対バンさせてもらって、その時に「EGACCHO、おもしろいな〜」って言ってくれて、俺のツイッターをフォローしてくれたのに、いつのまにかフォロー外されてた(笑)」
というPIZZA OF DEATHにまつわる悲しい事実を口にする。EGACCHOは自身がファンのツイートをリツイートしたりしまくるので、それがウザいと思ったんだろうと推測していた。
そんなバンドは先月にニューアルバム「FLAKES」をリリースしたばかりということで、その中から「M.a.D」「medicine」という曲を披露するのだが、やはりまだ他の曲に比べると浸透しきってはいないようだ。ポップパンクというスタイルは変わらないままでヒップホップ的な要素を感じさせるようにもなっているというあたりはEGACCHOがピンボーカルであるという編成面と、実は確かな演奏力を持った器用なバンドであるという技術面両方があるからだろう。
そんな技術を持つバンドだからこそ、
「人にはそれぞれペースがある。一気に走り抜ける人もいるし、ゆっくり歩くような人もいる。俺たち平均年齢40.5歳。結成14年目。こうしてSATANIC CARNIVALに7年ぶりに出ているのが早いのか遅いのかわからないけど、永遠に若手みたいな扱いになってるのはわかる(笑)」
と、自分たちの現状を認識しながらも、自分たちのやり方で、無理をせずにバンドを続けるという道を選ぶことができたのだろう。それが「Tomorrow Song」の
「明日には夢叶うと必ずいつまでも信じてる
夜明け前」
「厳しい険しい道のりの中
もっともっと素直になれたらいいのにな」
というあまりに素直すぎる歌詞に重なっていくことによって、楽しいだけではなくどこかしみじみとしてしまうのだ。
そして
「この最高な感じをライブハウスに持って帰ろう。コロナになってライブハウスが大変だから来て欲しいなんてことは俺は言わない。だってどんな時でもライブハウスは最高に楽しい場所だから」
とEGACCHOは口にして、最後にコロナ禍じゃなかったらシンプルなタイトルフレーズをみんなで口ずさまずにはいられないであろう「USUAL THINGS」を演奏した。そこにはこうして大きなフェスのステージに立つことはあっても、アリーナやホールではなくて暗くて小さくて汚いライブハウスを最高な場所に変え続けてきたこのバンドの意志が、生き様が鳴っていた。どうか、こういうバンドがずっと活動を続けていける世の中でありますように、と笑顔になりながらも祈るような思いでその姿を見ていた。
1.すすれ -Re麺ber-
2.PARISLOTTE
3.FUSUMA
4.M.a.D
5.BEER & DOG
6.medicine
7.Tomorrow Song
8.USUAL THINGS
13:55〜 10-FEET [SATAN STAGE]
ここからは他の大規模フェスでは間違いなくトリを務めるようなバンドが次々にSATAN STAGEに登場してくる。その口火を切るのは、自身も京都大作戦というこのフェスに出演しているバンドたちがたくさん出演するフェスを主催している、10-FEETである。
おなじみの「そして伝説へ…」の壮大なSEが流れると、タオルを掲げてメンバー3人が登場するのを待ち構えるたくさんの観客というのはいつも同様であるが、やはりこの時間から一気に観客の数が増えたように感じた。そこら辺はさすが10-FEETである。
そうしてメンバーがステージに登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)がタイトルコールをしていきなりの「goes on」で始まり、走り回ったり肩を組んだりという、かつてのこの曲でのおなじみの楽しみ方をすることはできないけれど、それでもこうしてNAOKI(ベース)とKOUICHI(ドラム)のリズムと、メンバーの煽るような声に合わせて飛び跳ねまくっているだけで心から楽しいと思える。曲の最後のサビ前ではやはりおなじみの、でもコロナ禍になって観客同士の距離を取るようになったことによって実にやりやすくなった、その場に座ってから一斉にジャンプという光景も1曲目にして見ることになる。
「今、10-FEET解散しました!………復活しました!3秒で復活しました!」
とTAKUMAが言ったり、「1,2,3,4!」とカウントしても曲が全く始まらないというか、そうやって始まる曲がない、
「リベル?ライバー?…リバーや!」
と何故か曲の読み方を忘れてしまうという小芝居じみたパフォーマンスもありながらも演奏された「RIVER」はやはりご当地の川に歌詞を変えて歌っていたのだが、いかんせんこのあたりの地理が全くわからないために、何川に変えていたのかわからず。それでもTAKUMAの歌唱も、バンドの演奏も実に力強さを感じさせるものになっているのは、少しでも抜いたところがあったりしたら、すぐに持っていかれてしまうようなメンツしかいないフェスであることをこのバンドは本能的にわかっているんじゃないかと思う。
さらに「VIBES BY VIBES」とライブでおなじみの代表曲で再び観客を飛び跳ねさせまくるのだが、それはまだまだ規制が多い状況であるだけに、そうした中でも楽しめるような曲をセトリに入れてるんじゃないかとすら思えてくる。それは同期のデジタルなサウンドを取り入れた「ハローフィクサー」はまた少し違った、近年の10-FEETの音楽性(といってももう3年前であるが)を感じさせるようなものである。
そのTAKUMAは
「楽しいっていう感情だけじゃなくて、悲しいっていう感情も分け合いたいと思ってる。ポジティブなことばかりじゃなくて、ネガティブなことも。ライブってそういうもんやろ?」
と、こうした楽しんでいる時だけじゃなくて、色んなことを抱えてしまっているような状況の時でも我々に寄り添ってくれるという思いを口にする。そうしたバンドだからこそたくさんの人がこのバンドのライブを、音楽を支えにして生きているのだろうけれど、それがそのまま「シエラのように」の歌唱と鳴らす音になって現れているからこそ、このバンドのライブと音楽を求めてしまうのだろう。
しかしながらそんなネガティブな思いを全てぶん投げてしまうかのように「その向こうへ」が放たれるのであるが、TAKUMAは曲の後半で再び観客たちをその場に座らせるも、結局飛び上がるようなフレーズがないために曲が終わってから観客をゆっくり立ち上がらせるというユーモアも発揮してくれる。曲はシリアスになっていくのに笑えるというのも10-FEETならではであるが、それは最後の曲のつもりで演奏された「ヒトリセカイ」でのNAOKIの体操オリンピック選手なのかと思うくらいの開脚しながらの演奏もまたそう感じさせてくれるものである。
最後の曲のつもりで、と言ったのはTAKUMAがここで
「時間3分くらい余ってるからもうちょっとやるわ」
と言って急遽「SHOES」を演奏し、しかも
「KOUICHI、もっと速くしないと終わらんで(笑)」
と曲のテンポをさらに上げたバージョンで演奏するのだからやっぱり10-FEETは凄い。こうした場数を踏んできた数が違うというか、残り時間に合わせてどの曲をやるべきなのかというのを瞬時に判断できるというのも、その曲のテンポを調整できるというのも。(ちなみにJAPAN JAMの時は残り1分くらいだったので「DO YOU LIKE…?」だった)
しかしながらなおも10-FEETが恐ろしいのは、さらに
「あと15秒くらいあるわ」
と言って、元々は四星球の持ちネタだった「RIVER」をサビの1フレーズだけ演奏する「時間がない時のRIVER」までをも演奏して、持ち時間を全く余すことなく終わらせることができるということだ。しかもそれがライブとしてのエンターテイメントになり、フェスではあまり演奏されない曲を聴くことができる機会にもなる。
フェスでは毎回変わらないようでいて、毎回見るたびに10-FEETの凄さを実感せざるを得ない。果たして来月に迫った京都大作戦はどうやって観客を楽しませて、驚かせてくれるのだろうか。今年こそは3人が笑顔で夏を越えることができることを心から祈っている。
1.goes on
2.RIVER
3.VIBES BY VIBES
4.ハローフィクサー
5.シエラのように
6.その向こうへ
7.ヒトリセカイ
8.SHOES
9.時間がない時のRIVER
15:00〜 WANIMA [SATAN STAGE]
昨年、この会場で初めて開催されたこのフェスの大トリを務めたのは、PIZZA OF DEATHから紅白などの舞台へと飛び立っていったWANIMAだった。そのWANIMAは今年はMETROCKでもトリを務めたが、このフェスでは今年はこの中盤に登場するというのは実に贅沢なことである。
時間になると「JUICE UP!!のテーマ」がSEとして流れて、KENTA(ボーカル&ベース)がこんなにたくさんの人がいることに驚きながらステージに出てくるという小芝居じみた登場の仕方はMETROCKの時と変わらないが、前に出てきて客席の方を見るKO-SHIN(ギター)もFUJI(ドラム)もユニフォームのような黒いジャケットで統一されているというのはやはりPIZZA OF DEATHのフェスでのWANIMAだなと思わせてくれるのであるが、KENTAが実際に
「PIZZA OF DEATHから、LEFLAHから、 WANIMAです!」
と挨拶するのもまたPIZZA OF DEATHの主催フェスであり、LEFLAHのブースが出店しているこのフェスだからこそのものであろう。
そんなフェスの1曲目として演奏されたのは、KENTAがゴリゴリのベースを響かせる「BIG UP」であり、PIZZA OF DEATHからリリースされたデビュー作「Can Not Behaved!!」の収録曲ということもあり、KO-SHINの弾くスカのリズムに合わせて観客たちは喜び勇んで踊りまくる。
さらには、この去年よりも緩和されたと言っていいような状況下で、PIZZA OF DEATHのフェスでこの曲がいきなり演奏されても誰も思いっきり叫ぶことがないという参加者の自制心の強さに驚かされてしまう「Hey Lady」では、歌えないけれど飛び跳ねたり腕を掲げたり、何より心の中で歌うことはできるとばかりに、この状況の中でできる最大限の楽しみ方で観客たちが楽しんでいたし、KENTAも
「ちゃんと俺たちに伝わってるけんね!」
と言っていたように、その観客たちの想いはバンド側にしっかり伝わっていたはずだ。伝わっていたということは、WANIMAは観客の思いをわかっているとも言える。決してルールやマナーを破ったりしないで楽しんでくれるということを信じていたからこそ、こうしてこの「Hey Lady」を演奏したんじゃないかとすら思う。
そんな中で演奏された、リリースされたばかりのシングル収録曲「眩光」は自問自答するようなシリアスな歌詞であり、それがWANIMAのメンバーたちの本質を表していながら、サウンドは「やっぱりWANIMAって本当にカッコいいパンクバンドだな」と思えるようなものになっている。それは原点回帰ともまた違うからこそ、これからもWANIMAをカッコいいパンクバンドとして好きでい続けることができるんだろうなと思う。
そんな中でKENTAが
「遠くに行ってしまった、漁師をしとった俺のじいちゃんに向けて歌います!今日くらいは、ゆっくりしていってくれ」
と、自身を育ててくれた祖父への想いを口にして、近年、それこそ昨年のこのフェスあたりからおなじみの、FUJIによる雄大かつたおやかなビートに乗せて
「皺の数だけ良い男だと」
と繰り返される歌唱が追加されることによってより壮大に、何よりもよりKENTAの祖父への愛情と、祖父もまた本当にKENTAのことを可愛がっていたんだろうなということがわかるアレンジが加わって演奏された「1106」。KENTAは右肘に擦りむいたような出血の痕が見えるのが少し心配になったけれども、こうして「Can Not Behaved!!」の曲がたくさん演奏されているのにこんなに相応しい場所はないなと思える。それはPIZZA OF DEATHの主催フェスで、PIZZA OF DEATHからリリースされた曲たちが今こんなにもたくさんの人に愛されているということを見せることができているからだ。
さらにはこれからもWANIMAと一緒に生きていてくれるようにという想いを込めた「ともに」で再び観客を飛び跳ねさせまくるのだが、その光景を見るとこの曲の持つ力を改めて実感せざるを得ない。この曲が生まれたことがWANIMAがこんなに巨大な存在になる決定打と言えるものだったと思っているのだが、今のこの状況は思い描いたその先と言えるものになっているのだろうか。少なくとも、KENTAの思いっきり感情を込めた歌唱はリリース当時よりも圧倒的に進化している。ただ上手くなっただけではなくて、自身の抱える想いを全て曲に込めて歌うことができるようになったというか。
そんなWANIMAが最もこのフェスだからこそ選んだ曲だと言えるのは最後に演奏された、WANIMAがPIZZA OF DEATHとタッグを組む前からライブハウスでずっと演奏されてきた「ONCE AGAIN」だろう。それはこのフェスに来ればまた、PIZZA OF DEATHとしての WANIMAをもう一回見ることができる。そしてそれがこれからも続いていく。最後のKENTAの挨拶もやはり、
「PIZZA OF DEATHから、LEFLAHから、 WANIMAでした!」
というものだったのだが、その後にKENTAは
「来年はモッシュとかダイブっていう楽しみ方が戻ってくるように。みんなで作っていきましょう!」
と言った。どんなにアリーナやスタジアムクラスの会場でライブをやるようになっても、WANIMAはライブハウスでのライブの楽しみ方を求め続けている。それこそがWANIMAがどんなに売れて巨大な存在になったとしても、パンクバンドであり続けている所以である。
それだけの存在になったのだ、WANIMAは。もうその存在を知らないという人を探す方が難しいし、ライブハウスに行ったことがなくても、テレビの音楽番組に出ているのを見たり、タイアップで流れてるのを聴いて知っているという人だってたくさんいるはずだ。でもそうした遠いなと感じてしまうような場所に行ったとしても、WANIMAが帰ってくる場所は確かにある。その大きな一つがこのフェスだ。やっぱり、PIZZA OF DEATHからWANIMAです!が1番しっくり来るっていうことを再確認させてくれる場所なのだ。
SE.JUICE UP!!のテーマ
1.BIG UP
2.Hey Lady
3.眩光
4.1106
5.ともに
6.ONCE AGAIN
15:40〜 dustbox [HELL STAGE]
去年、新木場STUDIO COASTのフィナーレイベントに出演しており、そのライブで見れるはずだったのが、会場に着いた時にはすでに出番が終わってしまっていたことで観ることが出来なかったため、コロナ禍になってからライブを観るのは初めて、つまりめちゃくちゃ久しぶりに観ることができる機会が巡ってきた、dustboxである。
おなじみのSE「New Cosmos」でメンバー3人が出てくるというのが変わっていないというところに、かつて観てきたライブの記憶が蘇るのだが、JOJI(ベース)がかつての焼きそばヘアはもうやらないんだろうかというくらいに短髪がサマになっている。
そんな中でSUGA(ボーカル&ギター)とYU-KI(ドラム)も共にカウントダウンをして、カウントが0になるとSUGAがギターを思いっきり掻き鳴らす「Riot」からスタートし、メロディックパンクバンドとしての美しくキャッチーなメロディも、JOJIとYU-KIのリズムの速さも、SUGAの透き通ったハイトーンボイスも全く変わっていないということが一瞬でわかる。唯一変わったのは曲最後のタイトルフレーズを我々が一緒に叫ぶことができないという観客側の楽しみ方である。
しかしながら楽しみ方が変わってもこのバンドへの観客の熱量が全く変わっていないというのが、「こっちのステージってこんなに人入るのか」と思うくらいの超満員っぷりからもわかるし、このフェスのサウンドの軸を考えても、もう完全にベテランという立ち位置になったとはいえ、メインステージに出てもおかしくない存在でいれているんだなと思う。
その思いは「Try My Luck」でのSUGAとJOJIの美しいボーカルの重なり方や、掛け合い的なボーカルの「Farley」と続くのを観ることによって、コロナ禍にあってもこのバンドのライブの力は全く落ちることがないというか、むしろ観る機会が少なくなってしまった分だけよりこのライブ1つ1つを慈しめるようになったことで、よりライブの良さを感じられるようになったとすら思える。そんな思いが「Bittersweet」の持つメッセージに重なっていく。人生は甘いだけじゃないんだよなぁと、本当に今にして実感せざるを得ない。
「ライブなんだから、みんなの心を解放しなくちゃいけないでしょ!」
とSUGAがこのライブへの意気込みを口にすると、JOJIは
「今日、親戚の子が見に来てるんだよね。父親のお姉さんの孫の子。佐藤家(JOJIは本名:佐藤譲二である)は厳しい家系だから(笑)、あんまり親戚がライブを見に来てくれないんだけど、44歳のおじさんが親戚の子にカッコいい姿を見せないと!」
とSUGAとはまた違った理由で気合いを新たにすると、こうしてこの場所にみんなで集まってライブをすることができているという、今までは当たり前だったことが奇跡のように思えるようになったからこそ、最後にタメてタメてからSUGAが口にするタイトルフレーズに今まで以上に実感を強く感じられる「Here Comes A Miracle」から、イントロが流れ始めた時点でたくさんの観客が腕を上げる「Hurdle Race」とかつてのライブでも我々を熱狂させてきたキラーチューンが次々に放たれていくのであるが、かつてはみんなでまさにハードル走をするように走り回っていたこの曲を、今はそうして楽しむことができないと思うと、かつていろんな場所でそうして楽しんできた記憶が脳内に蘇ってきて、なんだか涙が出てきてしまった。
でもそれはもう2度とできない、観ることができないものではないということを「Jupiter」の
「Let me cry again」
というサビのフレーズが背中を押すように伝えてくれる。きっとまたあの光景を観ることができたらもう一回泣いてしまうだろうから。それをこんな極上のメロディの曲で伝えようとしてくるのだから、dustboxは本当に心憎いバンドである。
「Jupiter」がそうした曲であるだけに、もうこれでクライマックスとしていいような感すらあるのだが、JOJIが徐にベースを置くと、
「今日はやるしかないっしょ!井上先生、お願いします!」
と言って呼び込んだのは、本名:井上こと10-FEETのNAOKIであり、NAOKIがベース、JOJIがハンドマイクという編成でJOJIが叫びまくる「Neo Chavez 400」という、毎年dustboxが出演している京都大作戦ではおなじみのコラボが、出演日が同じということによってこのフェスでも披露される。JOJIは時にはNAOKIと肩を組むようにして歌ったりと、ステージにいるメンバーが全員本当に楽しそうだった。こういうコラボをするような機会も、去年まではフェスがことごとくなくなってしまったことによってほとんどなかったであろうだけに。
しかしそんな特別なコラボを終えてもまだライブは終わらずに、SUGAが
「プレゼント!」
と言って演奏されたのはコンピレーションアルバムに収録された、タイトル通りのショートチューン「Just One Minutes」で、まさかフェスでこんなレア曲が聴けるとは、とも思うのだけれども、それはdustboxがフェスだろうとイベントだろうと1本のライブとして同じ熱量と本気度で向き合ってきたことの証明だった。そういうところもやっぱり変わらなかったのである。
もうJOJIもSUGAも40代中盤という完全なるおっさんである。でも音を鳴らしている姿は全くそうは感じられないし、これからも全く変わらないようにすら感じる。
そう思うからこそ、どれだけ時間が経っても、またみんなで一緒に歌ったり、駆け回ったりするdustboxのライブがまた見れるようになるんじゃないかと思えるのだ。
でもそうした楽しみ方ができないからといってライブを観ないとか、行かないという選択にはならない。バンドがやっていることはかつてと全く変わっていないからであるし、こうした制限がたくさんあるライブを経験すればするほど、きっと前みたいなライブを見た時により一層楽しく感じられることができるはずだから。SUGAは去り際に
「これからもよろしく!」
と言っていたが、それを聞いて心から「こちらこそよろしく!」と思えた。
1.Riot
2.Try My Luck
3.Farley
4.Bittersweet
5.Here Comes A Miracle
6.Hurdle Race
7.Jupiter
8.Neo Chavez 400 w/ NAOKI
9.Just One Minutes
16:20〜 MAN WITH A MISSION [SATAN STAGE]
今、色んな意味で話題になってしまったバンドの一つである、MAN WITH A MISSION。(もう一つのバンドはもちろんサカナクションであり、バンドが大きくなることの功罪みたいなものを考えさせられる)
しかしながらライブを辞退したり、バンドとして活動休止するということにはならず、このフェスにも予定通りに出演。きっとこのフェスには好奇の目でこのバンドのことを見るような人はいないはずだ。
なのでメンバーがステージに現れると、色々あったカミカゼ・ボーイは不在で、カミカゼの等身大パネルをメンバーが持って登場。その等身大パネルには「お騒がせしております」という札が下げられており、ネガティブな出来事を観客の笑いに変えてくれるというのはさすがである。
なので下手ではいつも以上にE.D.ヴェダーが演奏するのが目立つ中(彼がベースを弾いていると思ったのだが、どうやら違うらしい)、「Get Off of My Way」でDJサンタモニカとともに観客が腕を上下させまくるというおなじみのパフォーマンスで、やはり1匹足りなくてもマンウィズのライブが最高に楽しいことを示してくれるのであるが、力強くも壮大な「Raise your flag」ではジャン・ケン・ジョニー(ボーカル&ギター)とトーキョー・タナカ(ボーカル)の両ボーカルの歌声がこんなに凄かったっけ!?って思ってしまうくらいに本当に伸びやかだ。時にはあまり声が出ていないな、と思うようなライブもあったりするのだが、過去最高クラスで声が本当によく出ているし、伸びている。特にジャン・ケンは何か人が変わったのかとすら思ってしまうくらいであるが、その彼の声からは
「カミカゼがいないから物足りない、なんて絶対に思わせないからな」
というバンドとしての強い意志が滲み出ている。
マンウィズは表情こそ変わらないけれど、そのライブをどういう思いでやっているのかというのが本当にわかりやすいバンドだ。歌や鳴らしている音からその思いを感じることができるから。だから昨年のフジロック出演時などでは「音楽は、ライブは決して不要なものなんかじゃない」ということを、「こうしてライブをやることで繋いでいく」ということをその音や姿から感じさせてくれた。そう考えるとこの狼たちはピンチや逆境の時の方がより強い力を発揮できるのかもしれない。そういう意味でもやはりマンウィズはヒーローと言えるバンドなのである。
するとイントロの段階で観客を「これは!」と思わせたのはデジタルなサウンドの「database」であり、もちろん10-FEETのTAKUMAもステージに登場して歌うのだが、ステージ前まで歩き回りながら歌うのはもちろん、カミカゼのパネルに肩を組むようにしたりして笑わせてくれるあたりはさすがTAKUMAである。
しかしながらdustboxにNAOKIが、マンウィズにこうしてTAKUMAが出てくるというのはもはや1ヶ月早い京都大作戦の関東圏バージョンみたいだ。それくらいに10-FEETのメンバーたちがこのフェスを楽しんでいるし、このフェスには京都大作戦でもおなじみの盟友たちがたくさん出演しているということでもある。
「色々ありますね」
というジャン・ケンの言葉は紛れもなく自分たちの現状に対しての言葉でもあったはずであるが、そんな状況の中から這い上がっていこうという姿勢を示すかのように、サンタモニカがデジタルパーカッションを叩き、ダークなデジタルサウンドからサビで一気に浮上していくような「INTO THE DEEP」から一転してそのサビの開放感に連なるように壮大なサウンドとメロディがこうした野外の大きな会場によく似合う「evergreen」と続くと、
「きっとライブで声を出したりできる日が近づいてきていると思います。その時には我々も元通りの形で皆様にお会いできると思います!」
とジャン・ケンはこの状況のライブの出口と自分たちの状況の出口を繋ぎ合わせたのだが、個人的には「カミカゼ戻ってくるのってそんなに先になるの?」とも思った。そこは人によって今回の騒動に感じ方は違うだろうけれど、音楽活動を自粛して何か変わることがあるのかと自分は思っているから。だからこそ、早くまたカミカゼも揃ったマンウィズのライブを観たいと思うのだ。
そして最後に演奏されたのはやはり「FLY AGAIN」なのだが、サンタモニカが腕を左右に振り上げるおなじみの振り付けを見せ、観客も同じように腕を振り上げる中、タナカはカミカゼのパネルを抱えて腕を左右に振り上げ、それによってカミカゼが左右に振り上げられ、しかも落下するという形になって、それを見ていた観客は爆笑していた。バンドに起きたネガティブな要素をライブでのエンタメに転換することができる。やはりマンウィズは凄かったし、スペア・リブの演奏後の「1,2,3,ガオー!」に周りから「可愛い〜」という声が上がっていたのもまたさすがだなと思った。
メンバーが1人参加できない場合に取る対応として1番ライブ感を失わないのはもちろんサポートメンバーを入れるということであるが、マンウィズは究極の生命体である以上、普通の人間がサポートとして参加することはまずできない。
ではどうするのか、これまで5匹+1名で100にしていたライブをどうやって1匹足りない状態で100にするのか。
それは1匹1匹が今までは1匹頭20だったのを25出せれば100にすることができる。それができるようになれば、カミカゼが戻ってきた時に今までの100以上を出せるようになる。この状況はそんなマンウィズの強さを示すものであり、さらなる進化を遂げるための試練の期間だった、と後々振り返られるようになるかもしれないとすら思った。
1.Get Off of My Way
2.Raise your flag
3.database w/ TAKUMA
4.INTO THE DEEP
5.evergreen
6.FLY AGAIN
17:00〜 山嵐 [HELL STAGE]
今のこのフェスのメインステージに出演しているようなバンドたちに多大な影響を与えたレジェンドバンドがこのフェスに初出演。山嵐がこのHELL STAGEの2日間のトリである。
先にKAI_SHiNE(Machine)とYOSHIAKI ISHII(ドラム)が登場してビートを鳴らすと、その後にKAZI(ギター)、YUYA OGAWA(ギター)、武史(ベース)、SATOSHI(ボーカル)、KOJIMA(ボーカル)という面々が登場したのだが、そのメンバーが揃った時の絵面のゴツさというか厳つさというか、もう目の前に立ったら背筋が伸びざるを得ない感じというのは見た目だけではなくバンド全体が発するオーラから感じるものでもあるだろう。
「やってきたぞ 山嵐だぞ」
という自己紹介的な「山嵐」で幕を開けると、KOJIMAとSATOSHIのボーカルのキレ味も、ゴリゴリのミクスチャーロックサウンドも全く錆びていないというか、むしろその鋭さはこのフェスに出演している、今シーンを席巻しているバンドたちのライブを見た直後であっても、耳と体をぶっ叩かれているかのような感覚になる強さを持っている。
1997年にデビューしているので、もうキャリアとしては25年にも及ぶバンドであるが、
「山嵐、サタニック初見参!」
と、大ベテランになっても未だにこうしたフェスに挑みに来ているというようなストイックさを感じさせ、それは新曲「PAIN KILLER」のサウンドにも確かに現れているのだが、ラウドロックの重さだけではなくて、ミクスチャーロックとしてのメッセージを反戦的なリリックに落とし込んだフレーズが多く感じたというのが印象的だ。その人間としての優しさ、精神的な意味での強さもまた、このバンドが数々の後輩バンドたちからリスペクトされる所以でもあると思う。
そのバンドサウンドは曲が進むにつれてさらに練り上げられていき、「Rock'n' Roll Monster」ではもう飛び跳ねざるを得ないくらいの迫力。このサウンドをメインステージの爆音で体感したかったな、とすら思ってしまうくらいに。
そして
「ここからすげー良い景色が見えてます。もっと良い景色を見せてくれ!」
と言って最後に演奏されたのはデビューアルバム収録の「BOXER'S ROAD」。それを聴いていて、学生時代にミクスチャーロックやヒップホップが好きだった同級生からCDを借りて聞いていた頃のことを思い出していた。まさかあれから20年くらい経って、今もまだ山嵐がこうしてカッコいいとしか思えないようなバンドでい続けていて、自分がそのライブを見ているなんて。あの頃、「すげーカッコいいな」「Dragon Ashも尊敬してるらしいぜ」なんて話をしながら聴いていたバンドは、今もなお、というかきっとあの頃よりもカッコいいバンドとして最前線で戦い続けている。その姿に感動すらしていた。
ミクスチャーロックというスタイルは今や希少というか、もはやそれすらもラウドロックに括られているような感覚がある。しかしやはり山嵐を聴くと「ミクスチャーロックだな」と思える。それはそうしたサウンドやスタイルを自分に教えてくれたのがこのバンドだったからだ。
10-FEET、SiM、マンウィズ…このフェスのメインステージに出演しているバンドたちだってこのバンドから多大な影響を受けて、その影響を自分たちの音として鳴らしている。もしこのバンドがいなかったら、このフェスのラインナップも全く違うものになっていたのかもしれない、と思うくらいにこのバンドが作ったものの大きさを改めて実感している。
1.山嵐
2.PAIN KILLER
3.HANDS UP
4.80
5.涅槃
6.Rock'n' Roll Monster
7.BOXER'S ROAD
17:40〜 04 Limited Sazabys [SATAN STAGE]
かつてこのフェスでトリを務めたこともある、フォーリミ。パンク・メロコアバンドとしてのこのフェスの正当後継者と言ってもいいバンドが今年も出演。YON FESが終わっても全く休むことなく、各地のフェスに出続けている。
おなじみのSEでこの日もメンバー4人が元気良くステージに登場すると、白いパーカーを着たGEN(ボーカル&ベース)が歌い始めたのは、なんとYON FESでついに封印が解かれた「Buster call」。まさかこの曲がこの状況下でYON FES以外の場所で聴けるとは全く思っていなかったが、この段階でこのフェスがフォーリミにとってどれだけ特別なものであるのかということがすぐにわかった。じゃないと演奏しない曲だから。曲後半のKOUHEI(ドラム)による一気に加速するリズムは否が応でもこちらのテンションをさらにぶち上げてくれる。
さらにはGENがイントロで思いっきり腕を振りかぶり、RYU-TA(ギター)が
「サタニック、かかってこいやー!」
と叫ぶのは「monolith」という、凄まじいまでのキラーチューン連発。もうこの段階でフォーリミのメンバーたちがこのフェスに向けてどれだけ気合いが入っているのかということが伝わってくる。
さらには暗くなってきた時間帯だからこそ、色とりどりの派手な照明がアリーナクラスで戦ってきたパンクバンドの演出として実にふさわしいものであるように輝く「fiction」ではHIROKAZ(ギター)の「オイ!オイ!」の煽りもやはりいつも以上に力強く聞こえる。その声からもこのフェスへの思いが溢れ出ているし、だからこそ観客も思いっきり腕を振り上げ、手拍子をしたりツーステをしたりしてその気合いに応えているのだ。
その「fiction」に連なるハードなサウンドの「Alien」と続く流れもどこか「今日の俺たちはこれしかないだろう!」というような気概を感じさせるのであるが、GENは昨年出演時にはアルコールが販売出来なかったのが、実は富士急ハイランドの遊園地内ではアルコールが売られていたという裏話をしたり、出演していない日にも会場に来て絶叫アトラクションに乗って楽しんでいたことを語るのだが、先日ツイッターにてスマホのデータが消し飛んだことをツイートしていたが、
「データ消えたくせに俺のスマホがこの会場のWi-Fiを記憶していた(笑)」
という話で笑わせてくれる。まさかあんなに落ち込んでいたツイートがこのフェスで笑いに変わるなんて全く思っていなかったけれど。
そんな笑い話の後だからこそ「Kitchen」でのリズムに合わせた観客の手拍子がより一層楽しく感じられるのであるが、続け様に演奏された、このフェスで演奏されるからこそ、そのKOUHEIのツービートがかつて自分たちが憧れたパンクヒーローたちから受け継いだものを今の自分たちがたくさんの人のヒーローとして鳴らしているということを示すような「My HERO」では先日のMETROCKの時と同様にGENがハイトーンな部分を歌い切れていなかったのが少し気にかかるところであった。(この後も何度かそういう場面があったから)
近年のGENにはほとんどそういう場面が見られなくなっていたからこそ、より少し不安になるし、この日はその歌唱力の向上によって歌うことができるようになったであろう「Just」や「fade」がセトリに入っていなかったのもその影響だったりするんだろうかと思ってしまう。
しかしながら曇り空の中でも(結局予報に反して雨が降らなかったのは本当に凄い。パンク、ラウドのパワーと言っていいんじゃないだろうか)演奏された「midnight cruising」では間奏でRYU-TAがカメラに向かって自身の着ているTシャツのロゴを見せつけ、
「俺はPIZZA OF DEATHが大好きです!」
と叫ぶ。それはRYU-TAがPIZZA OF DEATHのTシャツを着ていたからであるが、メンバーの中で最もパンク一直線的な存在であるRYU-TAだからこそそこからPIZZA OF DEATHへのリスペクトを感じさせてくれるのだ。
するとGENはこのフェスの第一回開催時に小さいステージのトップバッターで出演してから今回に至るまでのことを語り、その上で
「このフェスが自分たちの活動の基準になっている。自分たちの居場所はここだなって思えるようになった」
とまで口にする。そこまで想いを持っているフェスだからこそ「Buster call」を演奏することを選んだのだろうし、やはりハイスタをはじめとする存在がいたからこそ自分たちがこうしてバンドをやっているという思いや影響も強いのだろう。
そしてGENは自身のパンク観について、
「自分の考えを曲げないのもパンクだけど自分の大切な人や場所を守ろうとするのもパンク」
と語る。自分の大切な人や場所を守ろうとする。それをフォーリミはコロナ禍になってから自分たちの活動によって示してきた。2020年に地元の愛知でいち早く大きな会場でワンマンを開催したのも、今年のYON FESで見せてくれた景色も。少しずつだけれど、そうやって大切なものや場所を守りながら進んできたのがフォーリミのこの2年間だった。
その2年間から、さらに先へ進んでいくという意思を示すように「Feel」を演奏すると、やはりGENは少し声がキツそうに感じるような部分もあったのだが、だからこそそれでも前に進もうとする姿勢として感じることができるのだ。
さらには、ここで雨が降ってきたらもはや伝説というか、フォーリミが天気を決めてるんだなと思ってしまうように、GENが空を見ながら
「自分自身に生まれ変われ!」
と言って演奏された「Squall」は、この場所で、このフェスで演奏されるたびに、何度だってPIZZA OF DEATHに憧れていたパンク少年だった頃の自分に生まれ変われるかのように鳴らされる。きっとその度にメンバーも「まだやれる」と思えているのだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのは、少し先の未来で、このフェスの出演者たちのライブの楽しみ方にふさわしい楽しみ方ができるようにという願いをツービートのパンクサウンドに込めるかのような「message」だった。やっぱりフォーリミは誰になんと言われようとパンクバンドだ。パンクの精神を持ち続けてパンクサウンドを鳴らす。そんなバンドが今この時代にシーンを先導してくれていることを本当に幸せに思う。ハイスタみたいにはなれないかもしれないけれど、きっとこれから先に誰もフォーリミのようになることもできない。フォーリミは今そんな位置にいる。
リハ.knife
リハ.nem…
1.Buster call
2.monolith
3.fiction
4.Alien
5.Kitchen
6.My HERO
7.midnight cruising
8.Feel
9.Squall
10.message
18:45〜 Crossfaith [SATAN STAGE]
10-FEET、WANIMA、マンウィズ、フォーリミ。この前にSATAN STAGEに出演したバンドたちはどれもがフェスの大トリを担えるようなバンドたちばかりである。そんな日に今年のこのフェスの大トリに選ばれたのはなんとCrossfaithである。そこには確かにフェス側からの明らかな意思、それに応えるバンドの意思を感じる。
というのも、転換時間中に早くもスクリーンには映像が流れ始め、ライブへの期待を高めてくれるかのようにバキバキのエレクトロミュージックが流れ始めたからだ。それはCrossfaithのライブが始まるまでの時間に休んでいるんじゃなくて、ちゃんと体を動かして備えておけ、というようにも感じられるし、ということはどれだけ凄まじいライブが展開されるんだろうかと不安にすら駆られてしまう。
そんな映像とエレクトロミュージックが終わり、本番の時間になると再びスクリーンには映像が。そこには近未来的なアニメーションが映し出され、このライブの案内人というキャラクターの「Species」(イマイチなんの動物なのかわからない得体のわからなさがまたCrossfaithらしい)がこれから始まるライブのヤバさを煽りまくって最後まで残っていた観客の期待を昂らせまくると、爆音のSEが流れてステージにはまずはかなり肌寒さも感じるくらいに完全に夜になった中でも露出度の高い衣装のTatsuya(ドラム)とTeru(プログラム)が登場して音を鳴らす。壁のように並んだアンプの山も圧巻だが、ステージ左右には巨人のオブジェが、中央にはバンドのロゴが設置されているという特別仕様であり、Hiroki(ベース)、Kazuki(ギター)、サポートギターと最後にKoie(ボーカル)が登場して思いっきり叫んで「Deus Ex Machina」が鳴らされると、ステージには炎が噴き上がる。バンドがやりたかったこと、フェス側がこのバンドのライブで見せたかったものが全てこのライブで現出されているかのようだ。
ノンストップで「Xeno」、さらにはフォーリミにも同名タイトル曲があることによって「凶悪な方の」と評されることすらある「Monolith」と続くと、客席はヘドバンの嵐となり、パンクバンドの祭典だったこのフェスがそれを遥かに通り越して、この時間だけは北欧のメタルフェスのトリをこのバンドが務めているのを見ているかのような感覚になる。それくらいにこの音が全てを塗りつぶして塗り替えてしまっているのだが、Koieのデスボイスシャウトやボーカルはもちろんのこと、Tatsuyaのドラムの音の凄まじさがそれを可能にしているということ、このバンドの放つ音の凄まじい重さの土台がそれであるということがすぐにわかる。その音の重さあってこそ、このフェスのSATAN STAGEという名前の大トリにふさわしい存在になっているということも。
Koieは前日のcoldrainのライブにも出演したが、実は2日前からリハで会場に来ており、さらにこの日もオープニングアクトのSABLE HILLSのライブからずっと観ているという、スタッフ並みに滞在時間が長くなっていることによって、
「このフェスのことは何でも俺に聞け」
というくらいに詳しくなってしまったという。KoieはYON FESでも自分たちのライブ後にPAブースの位置、つまりは我々観客と同じ視点でいろんなバンドのライブを見ていた。そうしてライブを見ることによって、自分たちにも出来ることと出来ないこと、やりたいことを吟味しながら、自分たちの方が凄いライブをやりたいという思いに駆られているのだろう。実に音楽に、ライブに対してストイックなバンドである。
そんなどこか緊張感をほぐしてくれるかのようなMCの後の「Freedom」で観客を飛び跳ねさせまくると、特に何の紹介もなくステージにはやたらゴツい体格の男がおり、その男=Ralphが強烈なラップをかますのは「Gimme Danger」。このコラボがそのタイトルに実にふさわしいと思うし、ステージ上がほぼ真っ暗な中で演奏するメンバーと、歌うKoieとRalphのシルエットが実に美しく、カッコ良かった。
さらにはこちらはちゃんと紹介されてからステージに呼び込まれたのは前日にこのステージでKoieと共演しているcoldrainのMasatoであり、もちろんコラボ曲の「Faint」が演奏されるのだが、どうやって楽しむかはそれぞれその人次第とはいえ、こんなにもメタル的な重いバスドラの連打に、KoieとMasatoの、2人とも喉の構造と強度がどうなってるんだと思ってしまうようなシャウトの連発には頭を振らざるを得ない。もう体が勝手にそう反応してしまう。それくらいの音が目の前で鳴らされているから。そんな肉体の素直な反応という、ロックバンドのライブにおける初期衝動を今になって感じることができるのは、この瞬間に鳴っていた音が今までに体験したことがないレベルのものだったからだ。
しかしコラボはこれだけでは終わらず、さらにはこの日出演していたPaleduskのKaitoも登場しての「Countdown To Hell」ではKoieとKaitoが向き合ってのシャウト合戦を展開するのだが、この屈強なモンスターのようなKoieと真っ向から対峙できるKaitoの声だけではないメンタルの強さはさすがだ。そのサングラスをかけた出で立ちからも確かなカリスマ性を感じさせるし、両バンドともにメタル・ラウドをさらに次のレベルに引っ張り上げようとしているという意味で共鳴しているというような。
だからこそKoieはこの日のライブが新しい時代の始まりであると語る。自分たちをヘッドライナーに据えてくれるのは日本ではこのフェスでしかないと。
「でも新しい時代を作るのは俺たちだけじゃない、新しい時代を俺たちとお前たちで作っていくってこと」
と、あくまでオーディエンスと一緒に作っていくことを語るのだが、それは聴き手が選んだもの、カッコいいと思ったものが新しい時代の象徴になり、自分たちがそうした存在になるということに絶大な自信を持っているからだろう。
それを示すかのように最後に最大のジャンプとヘドバンを現出させ、TeruがKoieと向かい合ってシャウトしまくる姿が、これこそこのフェスの大トリの最後の一瞬に本当にふさわしいカッコよさだなと思えるものになった「Leviathan」ではアウトロで夜空に花火が上がる。演奏中でも演奏後でもないからこそ、観客と一緒にメンバーはその花火を見つめていた。それは観客と一緒に新しい時代を作っていこうとするこのバンドの姿勢そのものだった。その花火を見ながら、夏フェスが本当に戻ってきてるんだなと感じていた。今年はまたいろんな夏フェスの会場でこうやって花火を見ることができていますように。
きっと、Crossfaithを取り巻く状況はこれからさらに変わっていくと思う。あのPIZZA OF DEATHがここまでCrossfaithのために尽くしてステージや演出を作ってくれているのだ。そこにはこのバンドの鳴らしている音への信頼と、きっとこれから先にこのバンドが今まで見たことがないものを見せてくれるという期待を込めているはず。
かつて日本のラウドロック隆盛の先鋒となったFACTも解散する年のこのフェスでメインステージの大トリを飾った。それは終わってしまうバンドへのこのフェスからの最大のリスペクトであったのだが、今回はそれとはまた違う。これから先のためのCrossfaithの大トリだったからだ。もうこんな凄いライブは見れないだろうな、じゃなくて、これから何回でもこんなライブを見れるという始まりの日だった。
1.Deus Ex Machina
2.Xeno
3.Monolith
4.Freedom
5.Gimme Danger w/ Ralph
6.Faint w/ Masato
7.Countdown To Hell w/ Kaito
8.Leviathan
去年のこのフェスはGWのフェスが散々批判されまくった後、各地の夏フェスがまだ中止になる前というタイミングでの開催であり、どこか独特な緊張感が強くあった。これは絶対に今のライブのルールやマナーを逸脱した行動はできないなというような。
それから1年。少しずつ緩和されてきた中でのこのフェスは果たしてどうなるんだろうかとも少し思っていた。でも会場に着いて実際にライブを観る中で、やっぱり去年と同じように大丈夫だと思った。
それはこのフェスに来る人は普段から出演アーティストのライブを観にライブハウスへ行っていて、そこを、ライブができる場所や環境をそれぞれのやり方で守ろうとしてきた人たちだからだ。いろんなライブに行っているけれど、普段からライブハウスに行っているような人たちが集まるようなフェスが1番今のルールを守りながらライブシーンをさらに前に進めようとしているのが本当によくわかる。
だからこそ、近い未来にこのフェスに来ている人たちとこのフェスでかつてのような楽しみ方ができる日が来ることを心から願っている。その時に今このフェスに来ている人たちはどんな顔をするのだろうか。今よりもっと笑顔になるのか、それとも泣いてしまうのか。来年、それを確かめることができたらそんなに嬉しいことはないと思っている。
コロナ禍になる前は幕張メッセで開催されていたので、てっきり今年は幕張メッセに戻るのかと思っていたのだが、今年も去年に続いての富士急ハイランドコニファーフォレストでの開催となり、この日は2日目である。
雨予報に反して、朝から実にくっきりと富士山が見えるという富士急ハイランドの絶好のロケーションを眺めながらコニファーフォレストへと向かうと(富士急ハイランドから10分くらい歩く)、昨年は狭い空き地で行われていた物販はコニファーフォレストの広大な駐車場へと移動しており、予約番号順での呼び出しという形で混み合わないような形にしていることがわかる。去年開催できたフェスだからこその改善である。
11:00〜 SABLE HILLS (Opening Act) [EVIL STAGE]
この日のオープニングアクトはSABLE HILLS。もうメンバーが登場した段階でわかるとおりに、ステージにいる5人中4人が長髪という、ラウドというよりはメタルと言えるようなバンドである。
なので朝の11時台の晴れた野外という爽やかなシチュエーションに似つかわしくないくらいの暗黒のメタルサウンドが鳴り響き、メンバーが率先してその音に合わせて長髪を振り乱してヘドバンしまくると、オープニングアクトとは思えないくらいに集まった観客たちも同じようにヘドバンしまくるという異様な光景に。
ギター2人はスピーカーの裏を通ってステージからはみ出しているような部分まで出てきて演奏するという、初出演とは思えないくらいのステージの使いこなしっぷりであり、それがこのフェスにおいても観客を扇動できるライブ巧者っぷりなのかもしれない。そのギターのサウンドはメタル特有の抒情的な泣きの成分が含まれたメロディアスなものであり、コアなリズムに合わさることによって、メタルコアと言えるような要素を強く感じさせる。
そんなバンドのセンターに立つ身としてのカリスマ性を感じさせるTakuya(ボーカル)は
「サタニック!今日出れたことで未来が見えました!」
と言っていたが、それは自分たちのバンドのこれからというよりもヘヴィメタルというアンダーグラウンドであり続けてきたシーンに光が射したということでもあるのだろうし、このフェスに出れたことによってそれを感じることができたのだろう。だからこそ最後には
「ありがとうサタニック!また来年!」
と、来年もまたこのフェスで会うための約束をしたのだ。
11:30〜 ハルカミライ [SATAN STAGE]
メインステージであるSATAN STAGEのこの日のトップバッターはハルカミライ。去年までは小さいステージへの出演だったのが、今年はついにメインステージに。すでに昨年の段階でメインに出るべき動員力を誇っていたけれど、そこはパンクの中でもメロコアがメインというこのフェス、レーベルならではの色ということだろうか。
すでにライブエリア開場時から関大地(ギター)、須藤俊(ベース)、小松謙太(ドラム)の3人はサウンドチェックで曲を連発していたが、本番でもステージ左右に設置された巨大スクリーンにバンド名が映し出される前に3人がステージに登場すると、アーティスト名がスクリーンに映し出された後に橋本学(ボーカル)も最近のライブではおなじみの巨大な旗を持ってステージに現れて「君にしか」でスタートして須藤はベースを弾かずにステージ上を飛び跳ねまくり、観客は腕を振り上げまくると、「カントリーロード」へというハルカミライのライブのオープニングとして定番の流れになるのだが、この日は朝は完全に晴れ渡っていたためにかなり暑く、橋本も小松もこの時点ですでに上半身裸になり、関はアンプの上に立ってギターソロを決めてから大きくジャンプする。
そのまま橋本がブルースハープを吹き始める「ヨーローホー」はやはりこうした野外の会場というシチュエーションに実によく似合う曲だ。そこに重なっていく関、須藤、小松のコーラスもどこか青春感を強く感じさせてくれるのも含めて。
続けざまにショートチューン「ファイト!!」から、疾走するツービートのパンクソング「俺達が呼んでいる」とフェスではおなじみの曲たちを畳み掛けると、
「こういう野外で晴れたり雨が降ったりするのは、花が咲くためなんだよ。みんなでおっきな花を咲かせよう」
と言って「春のテーマ」を橋本が歌い始めると、ステージ端にいるカメラマンを呼び寄せ、関と須藤もそのカメラに映り込もうとしながらも、橋本が映し出したかったのは客席の観客の姿。
「フェスの主役はお客さんか?俺たち出演者か?ここにいる全員が主役だぜー!」
と叫ぶと、観客がその言葉に応えるかのように一斉に腕を上げる。その姿がスクリーンに映し出される。それは本当に美しい、ハルカミライのライブだからこそ見ることができるものなんだよなと感じられるものだった。我々1人1人がこのアーティストを観たいと思ってここに来るという選択をしたことで、このフェスが成立しているのだ。
さらに「Tough to be a Hugh」とショートチューンを演奏することで曲数が増えていくだけに、ハルカミライのライブはフェスでもなんだか凄まじいお得感を感じることができるのだが、それに続くようにメンバーのアカペラから始まって一気に小松のツービートが突っ走る「PEAK'D YELLOW」を演奏すると、曲終わりでは小松もステージ前まで出てきてサビをメンバー全員で大合唱する。
そのまま4人で再びアカペラで歌い始めた「世界を終わらせて」のポップなサウンドで観客たちを飛び跳ねさせまくると、まだ昼間だけれどメンバーの背後の照明が暗いライブハウスでメンバーを照らしているかのように輝く「僕らは街を光らせた」で橋本は
「SATANIC CARNIVAL、今日来て良かったってここにいる全員が思えますように!」
と叫ぶのだが、自分にとっては歓声の果てを、音楽の果てを見せてくれるこのバンドがこうしてトップバッターとしてこのステージに立ってくれているからこそ、すでにこの時点で「今日来て良かったな」って心から思えているのだ。
すると須藤と橋本が何やら話し合い、
「セトリ変えました!」
と口にすると、橋本は「アストロビスタ」を歌い始める。ステージにはアコギもセッティングされていただけに、本来なら「つばさ」をやる予定だったのかもしれないが、持ち時間的に足りない(「つばさ」はハルカミライにしては長めの曲だ)とみて変えたのかもしれないけれど、
「眠れない夜を越えて SATANIC CARNIVALに来たんだ」
と歌詞を変えて歌いながら、前方エリアにいる自分たちよりはるかに年上の男性を見つけて、
「おっちゃん、きっと俺が大好きなバンドのライブを見てきたんだろ?うらやましいよ」
と言うあたり、その観客がこの曲の歌詞に出てくるブルーハーツのライブに行っていたことを感じ取ったのかもしれないが、橋本は曲中にも
「ルールやマナー、たくさんあるのはもうわかってるだろ?それよりも音楽の話をしよう。サタニックで見たこのバンド、最高だったって」
とも言っていた。それはとかく規模がデカいフェスだと告発のし合いみたいになってしまうことへの橋本なりの警鐘だったのかもしれない。監視したりするよりも、もっと楽しいことに目を向けようという。ハルカミライのライブが我々をそんな感覚にさせてくれるのは、メンバーの誰も傷つかないようにという優しさが音や言葉から伝わってくるからだ。そんなバンドのライブを見たくて、その感覚を感じ取りたくて、こうしてこんな場所まで足を運んでいる。曲が終わってステージから去る際にわざわざ巨大な旗を取りに戻りに来た橋本の笑顔を見て、やっぱり今日このフェスに来て本当に良かったなと思った。
ハルカミライはパンクでありながらも、いわゆるPIZZA OF DEATH的なメロコアのパンクとはかなり違う。それこそブルーハーツからの影響が強いように、AIR JAM世代の1世代下というような、青春パンクと言えるようなサウンドのパンクバンドであるだけに、今まではなかなかフェスのメインステージに据えることができなかったのだろう。
でもPIZZA OF DEATHの社長の横山健のHi-STANDARDもブルーハーツからの影響を公言している。そのブルーハーツ→ハイスタから連なり、この日出演するWANIMAやフォーリミの先に、後に日本のパンクの歴史をまとめる際に2020年代を代表する存在になるであろう位置にこのバンドはいる。サウンドは少し違えど、パンクの魂は確かに、脈々と受け継がれている。このフェスで見るハルカミライのライブはそんなことを感じさせてくれる。
リハ.PEAK'D YELLOW
リハ.predawn
リハ.ラブソング
リハ.エース
1.君にしか
2.カントリーロード
3.ヨーローホー
4.ファイト!!
5.俺達が呼んでいる
6.春のテーマ
7.Tough to be a Hugh
8.PEAK'D YELLOW
9.世界を終わらせて
10.僕らは街を光らせた
11.アストロビスタ
12:35〜 SHANK [SATAN STAGE]
こちらは幕張メッセで開催していた時期、つまりはコロナ禍になる前からメインステージを任されてきた存在である、SHANK。PIZZA OF DEATHのバンドではないけれど、サウンド的にはそこに入っていたとしても違和感がないバンドである。
とはいえ多くのメロコアバンドたちにとっては憧れの存在であろうPIZZA OF DEATHの主催イベントであっても、このバンドは普段と全く変わらない表情と熱量でステージに登場し、庵原将平(ボーカル&ベース)がパンク・メロコアバンドとしての攻撃力の高さを感じさせる独特の声で歌い上げる「Surface」からスタートすると、ベース&ボーカルのスリーピースバンドならではの、松崎兵太(ギター)がスカのリズムを刻む「620」で観客を踊らせまくるというフェスおなじみのスタート。
というのも自分は先月にJAPAN JAMでもこのバンドのライブを見ているからであるが、その時は演奏していなかった、このフェスで鳴らされるのが実に相応しいように感じる、疾走するパンクサウンドの「HOPE」を入れてセトリに変化をもたらすというのはさすが年中ライブをやって生きているバンドである。
しかしながら最近はあまりライブがなく、松崎は家族としか会っておらず、庵原もNetflixばかり見ている生活をしていたので、いきなりこんなにたくさんの人の前でライブをやることになって驚いている、というバンドを始めたばかりの少年のようなことを口にするのも、このバンドが変わらずに地元の長崎を拠点にして生活しているからだろう。
そんなMCの後に突如として庵原がベースを弾いて歌い始めた「set the fire」はかつて幕張メッセで開催されていた時のこのフェスで配布されていたコンピレーションCDに収録されていたな、ということを思い出すことができるのも、いつも演奏する曲であってもその場が違えば感じることが違うということである。
すると「Take Me Back」では間奏部分で松崎がパンクバンドがあまり使うことのないような類いのディレイ系のエフェクターを駆使したサウンドを鳴らしたことによって、庵原が
「そんな技術どこで身につけてきたん?(笑)」
と驚くという一幕もあったが、それは家で家族と生活しながらも日々新しいサウンドを松崎が追求しているということの現れでもある。曲終わりで庵原が
「WANIMAです!」
と言うのはおなじみになりつつあるが、この日は本人たちもいるだけに、何か言われたりしなかったのだろうか。
池本雄季(ドラム)の疾走するようなビートが牽引し、このバンドの持つメロディックな部分を感じさせてくれる美メロの応酬による「Good Night Darling」から、
「みんな、これはゲームじゃないんだ」
と日本語訳にしたタイトルを口にした「It's not a game」と続くと、スティーヴィー・ワンダーの名曲を、パンクというよりはスリーピースのロックバンドのサウンドとして生まれ変わらせた「Isn't She Lovely」のカバー(このバンドが洋楽のカバーを多くアルバムに収録しているのはどうしたってハイスタを彷彿とさせる)がこの広い会場にいるたくさんの人を一つに包み込むように響いていく。そう感じられるのもこのバンドの表現力とカバーの上手さあってこそである。
「今のこの状況にピッタリの曲。みんな、光の当たる方向へ行こう」
と言って演奏された、今年リリースの最新アルバム「STEADY」収録の「Bright Side」で再び疾走したかと思いきや、まだ昼くらいというライブにしては早い時間だからこそ「Wake Up Call」の穏やかなメロディが1日の始まりを告げるように、さぁまたここから行くか、と気持ちを新たにさせてくれ、最後はこのバンドらしく「Honesty」で駆け抜けて終わり…と思いきや、庵原と松崎が近寄って何やら言葉を交わし始めると、
「セットリストで揉めてました(笑)まだ時間あるんで」
と言って急遽「Two sweet coffee a day」から「submarine」を追加するのだが、特に「Two sweet coffee a day」はなかなかこうしたフェスではやらない曲ということもあって、観客がより一層湧いていたのが実によくわかるリアクションだったのだが、最近ライブをやっていないと言いながらも、こうやって予定になかった曲をもすぐに演奏することができる。それはやはりこのバンドが常にライブをやって生きているバンドであるだけに、体に曲が染み付いているのだろうと思う。その生き様は本当にカッコいいと思うし、持ち時間35分のライブでこんなにたくさん曲を聴けるというのは実に満足に感じられる。そういう意味でもこれからもガンガンライブを観たいバンドだと思える。
リハ.Departure
リハ.Wall Ride
リハ.Karma
1.Surface
2.620
3.HOPE
4.Life is…
5.set the fire
6.Take Me Back
7.Good Night Darling
8.It's not a game
9.Isn't She Lovely
10.Bright Side
11.Wake Up Call
12.Honesty
13.Two sweet coffee a day
14.submarine
13:15〜 SHIMA [HELL STAGE]
兎にも角にもEGACCHO(ボーカル)のちょっとぽっちゃりした体型に長髪という見た目も、「ZMS」(ザイマス。ありがとうございますの意)を掲げる活動姿勢も、どこかパンクシーンのお笑い担当的な感じにも見える、北九州の4人組バンド、SHIMA。SiMが主催するDEAD POP FESTiVALに出演しているイメージも強いが、このフェスにも出演。
そのEGACCHOが元気いっぱいに歌い始める、ラーメン好きとしてはこんな曲反則だろうと思うくらいにラーメンが食べたい衝動に駆られる「すすれ -Re麺ber-」からスタートすると、そのポップなパンクサウンドが我々観客のことを楽しく、笑顔にしてくれる。それは飛び跳ねるようにして演奏しているYUSUKE HIKIDA(ギター)も、SHINYA SYODA(ベース)も、このバンドのパンクなビートを面白い人たちというイメージよりもはるかに力強くしっかりしたビートで支える明生(ドラム)の表情がそうだからということもあるだろう。メンバーの楽しくて仕方がないというような表情が観客に確かに伝わっているのであるが、「PARISLOTTE」では早くもEGACCHOがバンドの代名詞でもある「Z!M!S!」を体で表現し、それが観客にも広がっていくという光景は見ていて実に面白い。
するとYUSUKE HIKIDAが
「富士山の山頂まで届くようにー!」
といきなりオフマイクで叫び始め、EGACCHOに
「それ、そこそこのバンドかよくやりそうなやつや」
とツッコまれるのだが、そのEGACCHOは
「7年ぶりの出演でございます!2015年にオープニングアクトで出演して、そこそこ反響あったと思ったのに、そこから全く声がかからなくなったから、PIZZA OF DEATHに嫌われたのかと思った(笑)」
と笑わせると、さらに
「しかも前にKen Yokoyamaさんが北九州に来た時に対バンさせてもらって、その時に「EGACCHO、おもしろいな〜」って言ってくれて、俺のツイッターをフォローしてくれたのに、いつのまにかフォロー外されてた(笑)」
というPIZZA OF DEATHにまつわる悲しい事実を口にする。EGACCHOは自身がファンのツイートをリツイートしたりしまくるので、それがウザいと思ったんだろうと推測していた。
そんなバンドは先月にニューアルバム「FLAKES」をリリースしたばかりということで、その中から「M.a.D」「medicine」という曲を披露するのだが、やはりまだ他の曲に比べると浸透しきってはいないようだ。ポップパンクというスタイルは変わらないままでヒップホップ的な要素を感じさせるようにもなっているというあたりはEGACCHOがピンボーカルであるという編成面と、実は確かな演奏力を持った器用なバンドであるという技術面両方があるからだろう。
そんな技術を持つバンドだからこそ、
「人にはそれぞれペースがある。一気に走り抜ける人もいるし、ゆっくり歩くような人もいる。俺たち平均年齢40.5歳。結成14年目。こうしてSATANIC CARNIVALに7年ぶりに出ているのが早いのか遅いのかわからないけど、永遠に若手みたいな扱いになってるのはわかる(笑)」
と、自分たちの現状を認識しながらも、自分たちのやり方で、無理をせずにバンドを続けるという道を選ぶことができたのだろう。それが「Tomorrow Song」の
「明日には夢叶うと必ずいつまでも信じてる
夜明け前」
「厳しい険しい道のりの中
もっともっと素直になれたらいいのにな」
というあまりに素直すぎる歌詞に重なっていくことによって、楽しいだけではなくどこかしみじみとしてしまうのだ。
そして
「この最高な感じをライブハウスに持って帰ろう。コロナになってライブハウスが大変だから来て欲しいなんてことは俺は言わない。だってどんな時でもライブハウスは最高に楽しい場所だから」
とEGACCHOは口にして、最後にコロナ禍じゃなかったらシンプルなタイトルフレーズをみんなで口ずさまずにはいられないであろう「USUAL THINGS」を演奏した。そこにはこうして大きなフェスのステージに立つことはあっても、アリーナやホールではなくて暗くて小さくて汚いライブハウスを最高な場所に変え続けてきたこのバンドの意志が、生き様が鳴っていた。どうか、こういうバンドがずっと活動を続けていける世の中でありますように、と笑顔になりながらも祈るような思いでその姿を見ていた。
1.すすれ -Re麺ber-
2.PARISLOTTE
3.FUSUMA
4.M.a.D
5.BEER & DOG
6.medicine
7.Tomorrow Song
8.USUAL THINGS
13:55〜 10-FEET [SATAN STAGE]
ここからは他の大規模フェスでは間違いなくトリを務めるようなバンドが次々にSATAN STAGEに登場してくる。その口火を切るのは、自身も京都大作戦というこのフェスに出演しているバンドたちがたくさん出演するフェスを主催している、10-FEETである。
おなじみの「そして伝説へ…」の壮大なSEが流れると、タオルを掲げてメンバー3人が登場するのを待ち構えるたくさんの観客というのはいつも同様であるが、やはりこの時間から一気に観客の数が増えたように感じた。そこら辺はさすが10-FEETである。
そうしてメンバーがステージに登場すると、TAKUMA(ボーカル&ギター)がタイトルコールをしていきなりの「goes on」で始まり、走り回ったり肩を組んだりという、かつてのこの曲でのおなじみの楽しみ方をすることはできないけれど、それでもこうしてNAOKI(ベース)とKOUICHI(ドラム)のリズムと、メンバーの煽るような声に合わせて飛び跳ねまくっているだけで心から楽しいと思える。曲の最後のサビ前ではやはりおなじみの、でもコロナ禍になって観客同士の距離を取るようになったことによって実にやりやすくなった、その場に座ってから一斉にジャンプという光景も1曲目にして見ることになる。
「今、10-FEET解散しました!………復活しました!3秒で復活しました!」
とTAKUMAが言ったり、「1,2,3,4!」とカウントしても曲が全く始まらないというか、そうやって始まる曲がない、
「リベル?ライバー?…リバーや!」
と何故か曲の読み方を忘れてしまうという小芝居じみたパフォーマンスもありながらも演奏された「RIVER」はやはりご当地の川に歌詞を変えて歌っていたのだが、いかんせんこのあたりの地理が全くわからないために、何川に変えていたのかわからず。それでもTAKUMAの歌唱も、バンドの演奏も実に力強さを感じさせるものになっているのは、少しでも抜いたところがあったりしたら、すぐに持っていかれてしまうようなメンツしかいないフェスであることをこのバンドは本能的にわかっているんじゃないかと思う。
さらに「VIBES BY VIBES」とライブでおなじみの代表曲で再び観客を飛び跳ねさせまくるのだが、それはまだまだ規制が多い状況であるだけに、そうした中でも楽しめるような曲をセトリに入れてるんじゃないかとすら思えてくる。それは同期のデジタルなサウンドを取り入れた「ハローフィクサー」はまた少し違った、近年の10-FEETの音楽性(といってももう3年前であるが)を感じさせるようなものである。
そのTAKUMAは
「楽しいっていう感情だけじゃなくて、悲しいっていう感情も分け合いたいと思ってる。ポジティブなことばかりじゃなくて、ネガティブなことも。ライブってそういうもんやろ?」
と、こうした楽しんでいる時だけじゃなくて、色んなことを抱えてしまっているような状況の時でも我々に寄り添ってくれるという思いを口にする。そうしたバンドだからこそたくさんの人がこのバンドのライブを、音楽を支えにして生きているのだろうけれど、それがそのまま「シエラのように」の歌唱と鳴らす音になって現れているからこそ、このバンドのライブと音楽を求めてしまうのだろう。
しかしながらそんなネガティブな思いを全てぶん投げてしまうかのように「その向こうへ」が放たれるのであるが、TAKUMAは曲の後半で再び観客たちをその場に座らせるも、結局飛び上がるようなフレーズがないために曲が終わってから観客をゆっくり立ち上がらせるというユーモアも発揮してくれる。曲はシリアスになっていくのに笑えるというのも10-FEETならではであるが、それは最後の曲のつもりで演奏された「ヒトリセカイ」でのNAOKIの体操オリンピック選手なのかと思うくらいの開脚しながらの演奏もまたそう感じさせてくれるものである。
最後の曲のつもりで、と言ったのはTAKUMAがここで
「時間3分くらい余ってるからもうちょっとやるわ」
と言って急遽「SHOES」を演奏し、しかも
「KOUICHI、もっと速くしないと終わらんで(笑)」
と曲のテンポをさらに上げたバージョンで演奏するのだからやっぱり10-FEETは凄い。こうした場数を踏んできた数が違うというか、残り時間に合わせてどの曲をやるべきなのかというのを瞬時に判断できるというのも、その曲のテンポを調整できるというのも。(ちなみにJAPAN JAMの時は残り1分くらいだったので「DO YOU LIKE…?」だった)
しかしながらなおも10-FEETが恐ろしいのは、さらに
「あと15秒くらいあるわ」
と言って、元々は四星球の持ちネタだった「RIVER」をサビの1フレーズだけ演奏する「時間がない時のRIVER」までをも演奏して、持ち時間を全く余すことなく終わらせることができるということだ。しかもそれがライブとしてのエンターテイメントになり、フェスではあまり演奏されない曲を聴くことができる機会にもなる。
フェスでは毎回変わらないようでいて、毎回見るたびに10-FEETの凄さを実感せざるを得ない。果たして来月に迫った京都大作戦はどうやって観客を楽しませて、驚かせてくれるのだろうか。今年こそは3人が笑顔で夏を越えることができることを心から祈っている。
1.goes on
2.RIVER
3.VIBES BY VIBES
4.ハローフィクサー
5.シエラのように
6.その向こうへ
7.ヒトリセカイ
8.SHOES
9.時間がない時のRIVER
15:00〜 WANIMA [SATAN STAGE]
昨年、この会場で初めて開催されたこのフェスの大トリを務めたのは、PIZZA OF DEATHから紅白などの舞台へと飛び立っていったWANIMAだった。そのWANIMAは今年はMETROCKでもトリを務めたが、このフェスでは今年はこの中盤に登場するというのは実に贅沢なことである。
時間になると「JUICE UP!!のテーマ」がSEとして流れて、KENTA(ボーカル&ベース)がこんなにたくさんの人がいることに驚きながらステージに出てくるという小芝居じみた登場の仕方はMETROCKの時と変わらないが、前に出てきて客席の方を見るKO-SHIN(ギター)もFUJI(ドラム)もユニフォームのような黒いジャケットで統一されているというのはやはりPIZZA OF DEATHのフェスでのWANIMAだなと思わせてくれるのであるが、KENTAが実際に
「PIZZA OF DEATHから、LEFLAHから、 WANIMAです!」
と挨拶するのもまたPIZZA OF DEATHの主催フェスであり、LEFLAHのブースが出店しているこのフェスだからこそのものであろう。
そんなフェスの1曲目として演奏されたのは、KENTAがゴリゴリのベースを響かせる「BIG UP」であり、PIZZA OF DEATHからリリースされたデビュー作「Can Not Behaved!!」の収録曲ということもあり、KO-SHINの弾くスカのリズムに合わせて観客たちは喜び勇んで踊りまくる。
さらには、この去年よりも緩和されたと言っていいような状況下で、PIZZA OF DEATHのフェスでこの曲がいきなり演奏されても誰も思いっきり叫ぶことがないという参加者の自制心の強さに驚かされてしまう「Hey Lady」では、歌えないけれど飛び跳ねたり腕を掲げたり、何より心の中で歌うことはできるとばかりに、この状況の中でできる最大限の楽しみ方で観客たちが楽しんでいたし、KENTAも
「ちゃんと俺たちに伝わってるけんね!」
と言っていたように、その観客たちの想いはバンド側にしっかり伝わっていたはずだ。伝わっていたということは、WANIMAは観客の思いをわかっているとも言える。決してルールやマナーを破ったりしないで楽しんでくれるということを信じていたからこそ、こうしてこの「Hey Lady」を演奏したんじゃないかとすら思う。
そんな中で演奏された、リリースされたばかりのシングル収録曲「眩光」は自問自答するようなシリアスな歌詞であり、それがWANIMAのメンバーたちの本質を表していながら、サウンドは「やっぱりWANIMAって本当にカッコいいパンクバンドだな」と思えるようなものになっている。それは原点回帰ともまた違うからこそ、これからもWANIMAをカッコいいパンクバンドとして好きでい続けることができるんだろうなと思う。
そんな中でKENTAが
「遠くに行ってしまった、漁師をしとった俺のじいちゃんに向けて歌います!今日くらいは、ゆっくりしていってくれ」
と、自身を育ててくれた祖父への想いを口にして、近年、それこそ昨年のこのフェスあたりからおなじみの、FUJIによる雄大かつたおやかなビートに乗せて
「皺の数だけ良い男だと」
と繰り返される歌唱が追加されることによってより壮大に、何よりもよりKENTAの祖父への愛情と、祖父もまた本当にKENTAのことを可愛がっていたんだろうなということがわかるアレンジが加わって演奏された「1106」。KENTAは右肘に擦りむいたような出血の痕が見えるのが少し心配になったけれども、こうして「Can Not Behaved!!」の曲がたくさん演奏されているのにこんなに相応しい場所はないなと思える。それはPIZZA OF DEATHの主催フェスで、PIZZA OF DEATHからリリースされた曲たちが今こんなにもたくさんの人に愛されているということを見せることができているからだ。
さらにはこれからもWANIMAと一緒に生きていてくれるようにという想いを込めた「ともに」で再び観客を飛び跳ねさせまくるのだが、その光景を見るとこの曲の持つ力を改めて実感せざるを得ない。この曲が生まれたことがWANIMAがこんなに巨大な存在になる決定打と言えるものだったと思っているのだが、今のこの状況は思い描いたその先と言えるものになっているのだろうか。少なくとも、KENTAの思いっきり感情を込めた歌唱はリリース当時よりも圧倒的に進化している。ただ上手くなっただけではなくて、自身の抱える想いを全て曲に込めて歌うことができるようになったというか。
そんなWANIMAが最もこのフェスだからこそ選んだ曲だと言えるのは最後に演奏された、WANIMAがPIZZA OF DEATHとタッグを組む前からライブハウスでずっと演奏されてきた「ONCE AGAIN」だろう。それはこのフェスに来ればまた、PIZZA OF DEATHとしての WANIMAをもう一回見ることができる。そしてそれがこれからも続いていく。最後のKENTAの挨拶もやはり、
「PIZZA OF DEATHから、LEFLAHから、 WANIMAでした!」
というものだったのだが、その後にKENTAは
「来年はモッシュとかダイブっていう楽しみ方が戻ってくるように。みんなで作っていきましょう!」
と言った。どんなにアリーナやスタジアムクラスの会場でライブをやるようになっても、WANIMAはライブハウスでのライブの楽しみ方を求め続けている。それこそがWANIMAがどんなに売れて巨大な存在になったとしても、パンクバンドであり続けている所以である。
それだけの存在になったのだ、WANIMAは。もうその存在を知らないという人を探す方が難しいし、ライブハウスに行ったことがなくても、テレビの音楽番組に出ているのを見たり、タイアップで流れてるのを聴いて知っているという人だってたくさんいるはずだ。でもそうした遠いなと感じてしまうような場所に行ったとしても、WANIMAが帰ってくる場所は確かにある。その大きな一つがこのフェスだ。やっぱり、PIZZA OF DEATHからWANIMAです!が1番しっくり来るっていうことを再確認させてくれる場所なのだ。
SE.JUICE UP!!のテーマ
1.BIG UP
2.Hey Lady
3.眩光
4.1106
5.ともに
6.ONCE AGAIN
15:40〜 dustbox [HELL STAGE]
去年、新木場STUDIO COASTのフィナーレイベントに出演しており、そのライブで見れるはずだったのが、会場に着いた時にはすでに出番が終わってしまっていたことで観ることが出来なかったため、コロナ禍になってからライブを観るのは初めて、つまりめちゃくちゃ久しぶりに観ることができる機会が巡ってきた、dustboxである。
おなじみのSE「New Cosmos」でメンバー3人が出てくるというのが変わっていないというところに、かつて観てきたライブの記憶が蘇るのだが、JOJI(ベース)がかつての焼きそばヘアはもうやらないんだろうかというくらいに短髪がサマになっている。
そんな中でSUGA(ボーカル&ギター)とYU-KI(ドラム)も共にカウントダウンをして、カウントが0になるとSUGAがギターを思いっきり掻き鳴らす「Riot」からスタートし、メロディックパンクバンドとしての美しくキャッチーなメロディも、JOJIとYU-KIのリズムの速さも、SUGAの透き通ったハイトーンボイスも全く変わっていないということが一瞬でわかる。唯一変わったのは曲最後のタイトルフレーズを我々が一緒に叫ぶことができないという観客側の楽しみ方である。
しかしながら楽しみ方が変わってもこのバンドへの観客の熱量が全く変わっていないというのが、「こっちのステージってこんなに人入るのか」と思うくらいの超満員っぷりからもわかるし、このフェスのサウンドの軸を考えても、もう完全にベテランという立ち位置になったとはいえ、メインステージに出てもおかしくない存在でいれているんだなと思う。
その思いは「Try My Luck」でのSUGAとJOJIの美しいボーカルの重なり方や、掛け合い的なボーカルの「Farley」と続くのを観ることによって、コロナ禍にあってもこのバンドのライブの力は全く落ちることがないというか、むしろ観る機会が少なくなってしまった分だけよりこのライブ1つ1つを慈しめるようになったことで、よりライブの良さを感じられるようになったとすら思える。そんな思いが「Bittersweet」の持つメッセージに重なっていく。人生は甘いだけじゃないんだよなぁと、本当に今にして実感せざるを得ない。
「ライブなんだから、みんなの心を解放しなくちゃいけないでしょ!」
とSUGAがこのライブへの意気込みを口にすると、JOJIは
「今日、親戚の子が見に来てるんだよね。父親のお姉さんの孫の子。佐藤家(JOJIは本名:佐藤譲二である)は厳しい家系だから(笑)、あんまり親戚がライブを見に来てくれないんだけど、44歳のおじさんが親戚の子にカッコいい姿を見せないと!」
とSUGAとはまた違った理由で気合いを新たにすると、こうしてこの場所にみんなで集まってライブをすることができているという、今までは当たり前だったことが奇跡のように思えるようになったからこそ、最後にタメてタメてからSUGAが口にするタイトルフレーズに今まで以上に実感を強く感じられる「Here Comes A Miracle」から、イントロが流れ始めた時点でたくさんの観客が腕を上げる「Hurdle Race」とかつてのライブでも我々を熱狂させてきたキラーチューンが次々に放たれていくのであるが、かつてはみんなでまさにハードル走をするように走り回っていたこの曲を、今はそうして楽しむことができないと思うと、かつていろんな場所でそうして楽しんできた記憶が脳内に蘇ってきて、なんだか涙が出てきてしまった。
でもそれはもう2度とできない、観ることができないものではないということを「Jupiter」の
「Let me cry again」
というサビのフレーズが背中を押すように伝えてくれる。きっとまたあの光景を観ることができたらもう一回泣いてしまうだろうから。それをこんな極上のメロディの曲で伝えようとしてくるのだから、dustboxは本当に心憎いバンドである。
「Jupiter」がそうした曲であるだけに、もうこれでクライマックスとしていいような感すらあるのだが、JOJIが徐にベースを置くと、
「今日はやるしかないっしょ!井上先生、お願いします!」
と言って呼び込んだのは、本名:井上こと10-FEETのNAOKIであり、NAOKIがベース、JOJIがハンドマイクという編成でJOJIが叫びまくる「Neo Chavez 400」という、毎年dustboxが出演している京都大作戦ではおなじみのコラボが、出演日が同じということによってこのフェスでも披露される。JOJIは時にはNAOKIと肩を組むようにして歌ったりと、ステージにいるメンバーが全員本当に楽しそうだった。こういうコラボをするような機会も、去年まではフェスがことごとくなくなってしまったことによってほとんどなかったであろうだけに。
しかしそんな特別なコラボを終えてもまだライブは終わらずに、SUGAが
「プレゼント!」
と言って演奏されたのはコンピレーションアルバムに収録された、タイトル通りのショートチューン「Just One Minutes」で、まさかフェスでこんなレア曲が聴けるとは、とも思うのだけれども、それはdustboxがフェスだろうとイベントだろうと1本のライブとして同じ熱量と本気度で向き合ってきたことの証明だった。そういうところもやっぱり変わらなかったのである。
もうJOJIもSUGAも40代中盤という完全なるおっさんである。でも音を鳴らしている姿は全くそうは感じられないし、これからも全く変わらないようにすら感じる。
そう思うからこそ、どれだけ時間が経っても、またみんなで一緒に歌ったり、駆け回ったりするdustboxのライブがまた見れるようになるんじゃないかと思えるのだ。
でもそうした楽しみ方ができないからといってライブを観ないとか、行かないという選択にはならない。バンドがやっていることはかつてと全く変わっていないからであるし、こうした制限がたくさんあるライブを経験すればするほど、きっと前みたいなライブを見た時により一層楽しく感じられることができるはずだから。SUGAは去り際に
「これからもよろしく!」
と言っていたが、それを聞いて心から「こちらこそよろしく!」と思えた。
1.Riot
2.Try My Luck
3.Farley
4.Bittersweet
5.Here Comes A Miracle
6.Hurdle Race
7.Jupiter
8.Neo Chavez 400 w/ NAOKI
9.Just One Minutes
16:20〜 MAN WITH A MISSION [SATAN STAGE]
今、色んな意味で話題になってしまったバンドの一つである、MAN WITH A MISSION。(もう一つのバンドはもちろんサカナクションであり、バンドが大きくなることの功罪みたいなものを考えさせられる)
しかしながらライブを辞退したり、バンドとして活動休止するということにはならず、このフェスにも予定通りに出演。きっとこのフェスには好奇の目でこのバンドのことを見るような人はいないはずだ。
なのでメンバーがステージに現れると、色々あったカミカゼ・ボーイは不在で、カミカゼの等身大パネルをメンバーが持って登場。その等身大パネルには「お騒がせしております」という札が下げられており、ネガティブな出来事を観客の笑いに変えてくれるというのはさすがである。
なので下手ではいつも以上にE.D.ヴェダーが演奏するのが目立つ中(彼がベースを弾いていると思ったのだが、どうやら違うらしい)、「Get Off of My Way」でDJサンタモニカとともに観客が腕を上下させまくるというおなじみのパフォーマンスで、やはり1匹足りなくてもマンウィズのライブが最高に楽しいことを示してくれるのであるが、力強くも壮大な「Raise your flag」ではジャン・ケン・ジョニー(ボーカル&ギター)とトーキョー・タナカ(ボーカル)の両ボーカルの歌声がこんなに凄かったっけ!?って思ってしまうくらいに本当に伸びやかだ。時にはあまり声が出ていないな、と思うようなライブもあったりするのだが、過去最高クラスで声が本当によく出ているし、伸びている。特にジャン・ケンは何か人が変わったのかとすら思ってしまうくらいであるが、その彼の声からは
「カミカゼがいないから物足りない、なんて絶対に思わせないからな」
というバンドとしての強い意志が滲み出ている。
マンウィズは表情こそ変わらないけれど、そのライブをどういう思いでやっているのかというのが本当にわかりやすいバンドだ。歌や鳴らしている音からその思いを感じることができるから。だから昨年のフジロック出演時などでは「音楽は、ライブは決して不要なものなんかじゃない」ということを、「こうしてライブをやることで繋いでいく」ということをその音や姿から感じさせてくれた。そう考えるとこの狼たちはピンチや逆境の時の方がより強い力を発揮できるのかもしれない。そういう意味でもやはりマンウィズはヒーローと言えるバンドなのである。
するとイントロの段階で観客を「これは!」と思わせたのはデジタルなサウンドの「database」であり、もちろん10-FEETのTAKUMAもステージに登場して歌うのだが、ステージ前まで歩き回りながら歌うのはもちろん、カミカゼのパネルに肩を組むようにしたりして笑わせてくれるあたりはさすがTAKUMAである。
しかしながらdustboxにNAOKIが、マンウィズにこうしてTAKUMAが出てくるというのはもはや1ヶ月早い京都大作戦の関東圏バージョンみたいだ。それくらいに10-FEETのメンバーたちがこのフェスを楽しんでいるし、このフェスには京都大作戦でもおなじみの盟友たちがたくさん出演しているということでもある。
「色々ありますね」
というジャン・ケンの言葉は紛れもなく自分たちの現状に対しての言葉でもあったはずであるが、そんな状況の中から這い上がっていこうという姿勢を示すかのように、サンタモニカがデジタルパーカッションを叩き、ダークなデジタルサウンドからサビで一気に浮上していくような「INTO THE DEEP」から一転してそのサビの開放感に連なるように壮大なサウンドとメロディがこうした野外の大きな会場によく似合う「evergreen」と続くと、
「きっとライブで声を出したりできる日が近づいてきていると思います。その時には我々も元通りの形で皆様にお会いできると思います!」
とジャン・ケンはこの状況のライブの出口と自分たちの状況の出口を繋ぎ合わせたのだが、個人的には「カミカゼ戻ってくるのってそんなに先になるの?」とも思った。そこは人によって今回の騒動に感じ方は違うだろうけれど、音楽活動を自粛して何か変わることがあるのかと自分は思っているから。だからこそ、早くまたカミカゼも揃ったマンウィズのライブを観たいと思うのだ。
そして最後に演奏されたのはやはり「FLY AGAIN」なのだが、サンタモニカが腕を左右に振り上げるおなじみの振り付けを見せ、観客も同じように腕を振り上げる中、タナカはカミカゼのパネルを抱えて腕を左右に振り上げ、それによってカミカゼが左右に振り上げられ、しかも落下するという形になって、それを見ていた観客は爆笑していた。バンドに起きたネガティブな要素をライブでのエンタメに転換することができる。やはりマンウィズは凄かったし、スペア・リブの演奏後の「1,2,3,ガオー!」に周りから「可愛い〜」という声が上がっていたのもまたさすがだなと思った。
メンバーが1人参加できない場合に取る対応として1番ライブ感を失わないのはもちろんサポートメンバーを入れるということであるが、マンウィズは究極の生命体である以上、普通の人間がサポートとして参加することはまずできない。
ではどうするのか、これまで5匹+1名で100にしていたライブをどうやって1匹足りない状態で100にするのか。
それは1匹1匹が今までは1匹頭20だったのを25出せれば100にすることができる。それができるようになれば、カミカゼが戻ってきた時に今までの100以上を出せるようになる。この状況はそんなマンウィズの強さを示すものであり、さらなる進化を遂げるための試練の期間だった、と後々振り返られるようになるかもしれないとすら思った。
1.Get Off of My Way
2.Raise your flag
3.database w/ TAKUMA
4.INTO THE DEEP
5.evergreen
6.FLY AGAIN
17:00〜 山嵐 [HELL STAGE]
今のこのフェスのメインステージに出演しているようなバンドたちに多大な影響を与えたレジェンドバンドがこのフェスに初出演。山嵐がこのHELL STAGEの2日間のトリである。
先にKAI_SHiNE(Machine)とYOSHIAKI ISHII(ドラム)が登場してビートを鳴らすと、その後にKAZI(ギター)、YUYA OGAWA(ギター)、武史(ベース)、SATOSHI(ボーカル)、KOJIMA(ボーカル)という面々が登場したのだが、そのメンバーが揃った時の絵面のゴツさというか厳つさというか、もう目の前に立ったら背筋が伸びざるを得ない感じというのは見た目だけではなくバンド全体が発するオーラから感じるものでもあるだろう。
「やってきたぞ 山嵐だぞ」
という自己紹介的な「山嵐」で幕を開けると、KOJIMAとSATOSHIのボーカルのキレ味も、ゴリゴリのミクスチャーロックサウンドも全く錆びていないというか、むしろその鋭さはこのフェスに出演している、今シーンを席巻しているバンドたちのライブを見た直後であっても、耳と体をぶっ叩かれているかのような感覚になる強さを持っている。
1997年にデビューしているので、もうキャリアとしては25年にも及ぶバンドであるが、
「山嵐、サタニック初見参!」
と、大ベテランになっても未だにこうしたフェスに挑みに来ているというようなストイックさを感じさせ、それは新曲「PAIN KILLER」のサウンドにも確かに現れているのだが、ラウドロックの重さだけではなくて、ミクスチャーロックとしてのメッセージを反戦的なリリックに落とし込んだフレーズが多く感じたというのが印象的だ。その人間としての優しさ、精神的な意味での強さもまた、このバンドが数々の後輩バンドたちからリスペクトされる所以でもあると思う。
そのバンドサウンドは曲が進むにつれてさらに練り上げられていき、「Rock'n' Roll Monster」ではもう飛び跳ねざるを得ないくらいの迫力。このサウンドをメインステージの爆音で体感したかったな、とすら思ってしまうくらいに。
そして
「ここからすげー良い景色が見えてます。もっと良い景色を見せてくれ!」
と言って最後に演奏されたのはデビューアルバム収録の「BOXER'S ROAD」。それを聴いていて、学生時代にミクスチャーロックやヒップホップが好きだった同級生からCDを借りて聞いていた頃のことを思い出していた。まさかあれから20年くらい経って、今もまだ山嵐がこうしてカッコいいとしか思えないようなバンドでい続けていて、自分がそのライブを見ているなんて。あの頃、「すげーカッコいいな」「Dragon Ashも尊敬してるらしいぜ」なんて話をしながら聴いていたバンドは、今もなお、というかきっとあの頃よりもカッコいいバンドとして最前線で戦い続けている。その姿に感動すらしていた。
ミクスチャーロックというスタイルは今や希少というか、もはやそれすらもラウドロックに括られているような感覚がある。しかしやはり山嵐を聴くと「ミクスチャーロックだな」と思える。それはそうしたサウンドやスタイルを自分に教えてくれたのがこのバンドだったからだ。
10-FEET、SiM、マンウィズ…このフェスのメインステージに出演しているバンドたちだってこのバンドから多大な影響を受けて、その影響を自分たちの音として鳴らしている。もしこのバンドがいなかったら、このフェスのラインナップも全く違うものになっていたのかもしれない、と思うくらいにこのバンドが作ったものの大きさを改めて実感している。
1.山嵐
2.PAIN KILLER
3.HANDS UP
4.80
5.涅槃
6.Rock'n' Roll Monster
7.BOXER'S ROAD
17:40〜 04 Limited Sazabys [SATAN STAGE]
かつてこのフェスでトリを務めたこともある、フォーリミ。パンク・メロコアバンドとしてのこのフェスの正当後継者と言ってもいいバンドが今年も出演。YON FESが終わっても全く休むことなく、各地のフェスに出続けている。
おなじみのSEでこの日もメンバー4人が元気良くステージに登場すると、白いパーカーを着たGEN(ボーカル&ベース)が歌い始めたのは、なんとYON FESでついに封印が解かれた「Buster call」。まさかこの曲がこの状況下でYON FES以外の場所で聴けるとは全く思っていなかったが、この段階でこのフェスがフォーリミにとってどれだけ特別なものであるのかということがすぐにわかった。じゃないと演奏しない曲だから。曲後半のKOUHEI(ドラム)による一気に加速するリズムは否が応でもこちらのテンションをさらにぶち上げてくれる。
さらにはGENがイントロで思いっきり腕を振りかぶり、RYU-TA(ギター)が
「サタニック、かかってこいやー!」
と叫ぶのは「monolith」という、凄まじいまでのキラーチューン連発。もうこの段階でフォーリミのメンバーたちがこのフェスに向けてどれだけ気合いが入っているのかということが伝わってくる。
さらには暗くなってきた時間帯だからこそ、色とりどりの派手な照明がアリーナクラスで戦ってきたパンクバンドの演出として実にふさわしいものであるように輝く「fiction」ではHIROKAZ(ギター)の「オイ!オイ!」の煽りもやはりいつも以上に力強く聞こえる。その声からもこのフェスへの思いが溢れ出ているし、だからこそ観客も思いっきり腕を振り上げ、手拍子をしたりツーステをしたりしてその気合いに応えているのだ。
その「fiction」に連なるハードなサウンドの「Alien」と続く流れもどこか「今日の俺たちはこれしかないだろう!」というような気概を感じさせるのであるが、GENは昨年出演時にはアルコールが販売出来なかったのが、実は富士急ハイランドの遊園地内ではアルコールが売られていたという裏話をしたり、出演していない日にも会場に来て絶叫アトラクションに乗って楽しんでいたことを語るのだが、先日ツイッターにてスマホのデータが消し飛んだことをツイートしていたが、
「データ消えたくせに俺のスマホがこの会場のWi-Fiを記憶していた(笑)」
という話で笑わせてくれる。まさかあんなに落ち込んでいたツイートがこのフェスで笑いに変わるなんて全く思っていなかったけれど。
そんな笑い話の後だからこそ「Kitchen」でのリズムに合わせた観客の手拍子がより一層楽しく感じられるのであるが、続け様に演奏された、このフェスで演奏されるからこそ、そのKOUHEIのツービートがかつて自分たちが憧れたパンクヒーローたちから受け継いだものを今の自分たちがたくさんの人のヒーローとして鳴らしているということを示すような「My HERO」では先日のMETROCKの時と同様にGENがハイトーンな部分を歌い切れていなかったのが少し気にかかるところであった。(この後も何度かそういう場面があったから)
近年のGENにはほとんどそういう場面が見られなくなっていたからこそ、より少し不安になるし、この日はその歌唱力の向上によって歌うことができるようになったであろう「Just」や「fade」がセトリに入っていなかったのもその影響だったりするんだろうかと思ってしまう。
しかしながら曇り空の中でも(結局予報に反して雨が降らなかったのは本当に凄い。パンク、ラウドのパワーと言っていいんじゃないだろうか)演奏された「midnight cruising」では間奏でRYU-TAがカメラに向かって自身の着ているTシャツのロゴを見せつけ、
「俺はPIZZA OF DEATHが大好きです!」
と叫ぶ。それはRYU-TAがPIZZA OF DEATHのTシャツを着ていたからであるが、メンバーの中で最もパンク一直線的な存在であるRYU-TAだからこそそこからPIZZA OF DEATHへのリスペクトを感じさせてくれるのだ。
するとGENはこのフェスの第一回開催時に小さいステージのトップバッターで出演してから今回に至るまでのことを語り、その上で
「このフェスが自分たちの活動の基準になっている。自分たちの居場所はここだなって思えるようになった」
とまで口にする。そこまで想いを持っているフェスだからこそ「Buster call」を演奏することを選んだのだろうし、やはりハイスタをはじめとする存在がいたからこそ自分たちがこうしてバンドをやっているという思いや影響も強いのだろう。
そしてGENは自身のパンク観について、
「自分の考えを曲げないのもパンクだけど自分の大切な人や場所を守ろうとするのもパンク」
と語る。自分の大切な人や場所を守ろうとする。それをフォーリミはコロナ禍になってから自分たちの活動によって示してきた。2020年に地元の愛知でいち早く大きな会場でワンマンを開催したのも、今年のYON FESで見せてくれた景色も。少しずつだけれど、そうやって大切なものや場所を守りながら進んできたのがフォーリミのこの2年間だった。
その2年間から、さらに先へ進んでいくという意思を示すように「Feel」を演奏すると、やはりGENは少し声がキツそうに感じるような部分もあったのだが、だからこそそれでも前に進もうとする姿勢として感じることができるのだ。
さらには、ここで雨が降ってきたらもはや伝説というか、フォーリミが天気を決めてるんだなと思ってしまうように、GENが空を見ながら
「自分自身に生まれ変われ!」
と言って演奏された「Squall」は、この場所で、このフェスで演奏されるたびに、何度だってPIZZA OF DEATHに憧れていたパンク少年だった頃の自分に生まれ変われるかのように鳴らされる。きっとその度にメンバーも「まだやれる」と思えているのだろう。
そんなライブの最後に演奏されたのは、少し先の未来で、このフェスの出演者たちのライブの楽しみ方にふさわしい楽しみ方ができるようにという願いをツービートのパンクサウンドに込めるかのような「message」だった。やっぱりフォーリミは誰になんと言われようとパンクバンドだ。パンクの精神を持ち続けてパンクサウンドを鳴らす。そんなバンドが今この時代にシーンを先導してくれていることを本当に幸せに思う。ハイスタみたいにはなれないかもしれないけれど、きっとこれから先に誰もフォーリミのようになることもできない。フォーリミは今そんな位置にいる。
リハ.knife
リハ.nem…
1.Buster call
2.monolith
3.fiction
4.Alien
5.Kitchen
6.My HERO
7.midnight cruising
8.Feel
9.Squall
10.message
18:45〜 Crossfaith [SATAN STAGE]
10-FEET、WANIMA、マンウィズ、フォーリミ。この前にSATAN STAGEに出演したバンドたちはどれもがフェスの大トリを担えるようなバンドたちばかりである。そんな日に今年のこのフェスの大トリに選ばれたのはなんとCrossfaithである。そこには確かにフェス側からの明らかな意思、それに応えるバンドの意思を感じる。
というのも、転換時間中に早くもスクリーンには映像が流れ始め、ライブへの期待を高めてくれるかのようにバキバキのエレクトロミュージックが流れ始めたからだ。それはCrossfaithのライブが始まるまでの時間に休んでいるんじゃなくて、ちゃんと体を動かして備えておけ、というようにも感じられるし、ということはどれだけ凄まじいライブが展開されるんだろうかと不安にすら駆られてしまう。
そんな映像とエレクトロミュージックが終わり、本番の時間になると再びスクリーンには映像が。そこには近未来的なアニメーションが映し出され、このライブの案内人というキャラクターの「Species」(イマイチなんの動物なのかわからない得体のわからなさがまたCrossfaithらしい)がこれから始まるライブのヤバさを煽りまくって最後まで残っていた観客の期待を昂らせまくると、爆音のSEが流れてステージにはまずはかなり肌寒さも感じるくらいに完全に夜になった中でも露出度の高い衣装のTatsuya(ドラム)とTeru(プログラム)が登場して音を鳴らす。壁のように並んだアンプの山も圧巻だが、ステージ左右には巨人のオブジェが、中央にはバンドのロゴが設置されているという特別仕様であり、Hiroki(ベース)、Kazuki(ギター)、サポートギターと最後にKoie(ボーカル)が登場して思いっきり叫んで「Deus Ex Machina」が鳴らされると、ステージには炎が噴き上がる。バンドがやりたかったこと、フェス側がこのバンドのライブで見せたかったものが全てこのライブで現出されているかのようだ。
ノンストップで「Xeno」、さらにはフォーリミにも同名タイトル曲があることによって「凶悪な方の」と評されることすらある「Monolith」と続くと、客席はヘドバンの嵐となり、パンクバンドの祭典だったこのフェスがそれを遥かに通り越して、この時間だけは北欧のメタルフェスのトリをこのバンドが務めているのを見ているかのような感覚になる。それくらいにこの音が全てを塗りつぶして塗り替えてしまっているのだが、Koieのデスボイスシャウトやボーカルはもちろんのこと、Tatsuyaのドラムの音の凄まじさがそれを可能にしているということ、このバンドの放つ音の凄まじい重さの土台がそれであるということがすぐにわかる。その音の重さあってこそ、このフェスのSATAN STAGEという名前の大トリにふさわしい存在になっているということも。
Koieは前日のcoldrainのライブにも出演したが、実は2日前からリハで会場に来ており、さらにこの日もオープニングアクトのSABLE HILLSのライブからずっと観ているという、スタッフ並みに滞在時間が長くなっていることによって、
「このフェスのことは何でも俺に聞け」
というくらいに詳しくなってしまったという。KoieはYON FESでも自分たちのライブ後にPAブースの位置、つまりは我々観客と同じ視点でいろんなバンドのライブを見ていた。そうしてライブを見ることによって、自分たちにも出来ることと出来ないこと、やりたいことを吟味しながら、自分たちの方が凄いライブをやりたいという思いに駆られているのだろう。実に音楽に、ライブに対してストイックなバンドである。
そんなどこか緊張感をほぐしてくれるかのようなMCの後の「Freedom」で観客を飛び跳ねさせまくると、特に何の紹介もなくステージにはやたらゴツい体格の男がおり、その男=Ralphが強烈なラップをかますのは「Gimme Danger」。このコラボがそのタイトルに実にふさわしいと思うし、ステージ上がほぼ真っ暗な中で演奏するメンバーと、歌うKoieとRalphのシルエットが実に美しく、カッコ良かった。
さらにはこちらはちゃんと紹介されてからステージに呼び込まれたのは前日にこのステージでKoieと共演しているcoldrainのMasatoであり、もちろんコラボ曲の「Faint」が演奏されるのだが、どうやって楽しむかはそれぞれその人次第とはいえ、こんなにもメタル的な重いバスドラの連打に、KoieとMasatoの、2人とも喉の構造と強度がどうなってるんだと思ってしまうようなシャウトの連発には頭を振らざるを得ない。もう体が勝手にそう反応してしまう。それくらいの音が目の前で鳴らされているから。そんな肉体の素直な反応という、ロックバンドのライブにおける初期衝動を今になって感じることができるのは、この瞬間に鳴っていた音が今までに体験したことがないレベルのものだったからだ。
しかしコラボはこれだけでは終わらず、さらにはこの日出演していたPaleduskのKaitoも登場しての「Countdown To Hell」ではKoieとKaitoが向き合ってのシャウト合戦を展開するのだが、この屈強なモンスターのようなKoieと真っ向から対峙できるKaitoの声だけではないメンタルの強さはさすがだ。そのサングラスをかけた出で立ちからも確かなカリスマ性を感じさせるし、両バンドともにメタル・ラウドをさらに次のレベルに引っ張り上げようとしているという意味で共鳴しているというような。
だからこそKoieはこの日のライブが新しい時代の始まりであると語る。自分たちをヘッドライナーに据えてくれるのは日本ではこのフェスでしかないと。
「でも新しい時代を作るのは俺たちだけじゃない、新しい時代を俺たちとお前たちで作っていくってこと」
と、あくまでオーディエンスと一緒に作っていくことを語るのだが、それは聴き手が選んだもの、カッコいいと思ったものが新しい時代の象徴になり、自分たちがそうした存在になるということに絶大な自信を持っているからだろう。
それを示すかのように最後に最大のジャンプとヘドバンを現出させ、TeruがKoieと向かい合ってシャウトしまくる姿が、これこそこのフェスの大トリの最後の一瞬に本当にふさわしいカッコよさだなと思えるものになった「Leviathan」ではアウトロで夜空に花火が上がる。演奏中でも演奏後でもないからこそ、観客と一緒にメンバーはその花火を見つめていた。それは観客と一緒に新しい時代を作っていこうとするこのバンドの姿勢そのものだった。その花火を見ながら、夏フェスが本当に戻ってきてるんだなと感じていた。今年はまたいろんな夏フェスの会場でこうやって花火を見ることができていますように。
きっと、Crossfaithを取り巻く状況はこれからさらに変わっていくと思う。あのPIZZA OF DEATHがここまでCrossfaithのために尽くしてステージや演出を作ってくれているのだ。そこにはこのバンドの鳴らしている音への信頼と、きっとこれから先にこのバンドが今まで見たことがないものを見せてくれるという期待を込めているはず。
かつて日本のラウドロック隆盛の先鋒となったFACTも解散する年のこのフェスでメインステージの大トリを飾った。それは終わってしまうバンドへのこのフェスからの最大のリスペクトであったのだが、今回はそれとはまた違う。これから先のためのCrossfaithの大トリだったからだ。もうこんな凄いライブは見れないだろうな、じゃなくて、これから何回でもこんなライブを見れるという始まりの日だった。
1.Deus Ex Machina
2.Xeno
3.Monolith
4.Freedom
5.Gimme Danger w/ Ralph
6.Faint w/ Masato
7.Countdown To Hell w/ Kaito
8.Leviathan
去年のこのフェスはGWのフェスが散々批判されまくった後、各地の夏フェスがまだ中止になる前というタイミングでの開催であり、どこか独特な緊張感が強くあった。これは絶対に今のライブのルールやマナーを逸脱した行動はできないなというような。
それから1年。少しずつ緩和されてきた中でのこのフェスは果たしてどうなるんだろうかとも少し思っていた。でも会場に着いて実際にライブを観る中で、やっぱり去年と同じように大丈夫だと思った。
それはこのフェスに来る人は普段から出演アーティストのライブを観にライブハウスへ行っていて、そこを、ライブができる場所や環境をそれぞれのやり方で守ろうとしてきた人たちだからだ。いろんなライブに行っているけれど、普段からライブハウスに行っているような人たちが集まるようなフェスが1番今のルールを守りながらライブシーンをさらに前に進めようとしているのが本当によくわかる。
だからこそ、近い未来にこのフェスに来ている人たちとこのフェスでかつてのような楽しみ方ができる日が来ることを心から願っている。その時に今このフェスに来ている人たちはどんな顔をするのだろうか。今よりもっと笑顔になるのか、それとも泣いてしまうのか。来年、それを確かめることができたらそんなに嬉しいことはないと思っている。