METROCK 2022 day1 @若洲公園 5/21
- 2022/05/23
- 20:54
2013年から新木場の若洲公園で開催されてきた春フェスのMETROCKも、やはりコロナの影響によってこの2年間は開催を目指しても結果的には断念せざるを得なかった。
そんなMETROCKが3年ぶりについに開催。毎年来ていたこの会場に来るのも3年ぶりということになるが、新木場駅からシャトルバス乗り場に向かう際に新木場STUDIO COASTが跡形もなくなくなってしまったことに寂しくなる。
そうして会場に着くと、完全に雨が降っている。この会場で雨を降らすのはこのフェスの前にここでフェスを開催していた鹿野淳(現VIVA LA ROCK主催)くらいかと思っていただけに、実に珍しいようにも感じるけれど、最も来場者が多くなる時間帯が1番雨が強いというライブ開始前からの試練。
開演前には雨も上がってきていて、ライブ前にはテレビ朝日のアナウンサーが前説を行うというのもこのフェスの恒例であり、その背後に聳えるこの会場の象徴と言えるような巨大風車を見るだけで「ああ、またここに帰ってこれたんだな…」と感慨深くなる。10年以上毎年来ていた場所であるだけに。
11:30〜 キュウソネコカミ [WINDMILL FIELD]
初出演は1番小さいNEW BEAT SQUARE。そこから「メインステージに立ちたい」という思いを持って駆け上がってきたキュウソネコカミだからこそ、こうして3年ぶりの開催になったこのフェスの開幕を任されたのだろう。
なぜか吉幾三の「Dream」(CMでおなじみの「住み慣れた〜」の曲)のSEでメンバーがステージに登場すると、朝早い時間とはいえ顔立ちが実にスッキリしているように見えるヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)が
「この時を待ち望んでいたー!」
と叫んで、フェスでのトップバッターとしてのキュウソのライブでの1曲目としておなじみの「MEGA SHAKE IT!!」でスタートし、曲中の「ハウスミュージック」のフレーズではサポートベースのシンディ(空きっ腹に酒)含めた全員で踊り、それが客席全体にも広がっていく。オカザワカズマ(ギター)もヨコタシンノスケ(キーボード)もガンガンステージ前まで出てきて観客を煽るように演奏したりするのだが、その姿もセイヤの表情も、このフェス、この会場に戻って来れたという喜びが炸裂しているかのようである。
このライブが始まるタイミングで雨が止んでくるというキュウソのメンバーたちのポジティブなオーラによるものと思うような状況でもヨコタは
「みんなの日頃の行いが良いからだよ!」
とあくまでも我々を称えるような言葉を口にしてくれるために「推しのいる生活」の
「わっしょい わっしょい」
のフレーズでキュウソというバンドを担ぎたくなるのだ。セイヤは最後のサビ前に
「推しは推せる時に推せー!」
とおなじみのセリフを口にするが、こうしてキュウソを推せる時に推したい、ライブを見れる時に見たいと思える。
するとこのコロナ禍という状況ゆえにコール&レスポンスができない中でも観客と一緒にライブを作っていくように、最近のフェスのセトリに入ってくるのは珍しくなった「ファントムバイブレーション」では
「スマホはもはや俺の臓器」
のフレーズのリズムに合わせて観客が手拍子をするというコール&手拍子に。油断するとズレてしまいそうなリズムだからこそ、こうしてみんなで揃えるのが実に楽しいし、音や景色が壮観である。セイヤもヨコタも朝イチからこの光景を見れたことが本当に嬉しそうだった。
朝が早いのはキツいけれど、こうして3年ぶりに開催されたこのフェスの開幕を任せてもらったことを嬉しく思っているというMCはそれはそうだろう。誰もが見たいであろうこのステージからの景色を1番最初に見れるのがキュウソになったのだから。それは1番小さいステージから毎年出演してこのメインステージに辿り着き、キュウソならではのやり方でこのフェスへの愛情を表明してきたからだろう。
そんな中でこちらも久しぶりにライブで聴いたのはヨコタによる
「自分の目で確かめろ!」
というメッセージが込められたら「NO MORE 劣化実写化」で、サビでのソゴウタイスケ(ドラム)の強烈なリズムでヨコタも観客も飛び跳ねまくると、またもメンバー全員で
「海賊盤はダメダメ」
ダンスを踊る打ち込みのサウンドが流れる部分ではステージに映画泥棒が登場してかき回して走り去っていく。このやりたい放題っぷりがこのフェスにおけるキュウソの戦い方である。
そんな中で演奏された新曲「優勝」はホーンの華やかなサウンドが印象的な、でも実にキュウソらしいメロディとサウンドの曲だ。ヨコタのキーボードによってそのホーンのサウンドを補っていたが、以前にバンドとしてコラボしたスカパラホーンズとライブで共演したらより優勝と思えるものになりそうだが、今はこうしてこのフェスが開催されて、キュウソのライブをまたここで観れているというだけで全員優勝なのである。
常連出演者であるだけにこのフェスのスポンサー、主催をよく知っており、だからこそかつてはミュージックステーションのSEを使ったこともあるのだが、
「またMステとかにも出たいしなー!」
とセイヤがテレ朝にアピールすると、「ビビった」ではそのセイヤがAbemaの配信を観ている人たちにも伝わるように、めちゃくちゃカメラ目線で歌っているのがスクリーンに映し出されるのが実に面白い。TVにはそんなに出演していないバンドであるはずなのに、なんだかやたらとテレビ慣れしているかのようなパフォーマンスだ。
その「ビビった」からさらにキュウソの最大の持ち味である熱さを燃え上がらせるのは「The band」であり、こうしてこのステージに立てているという喜びが
「ロックバンドでありたいだけ」
「やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね
音源じゃ伝わりきらない 細かい感動がそこにはあるからだ!!!」
などのフレーズたちに想いが乗っていく。この風車の下でキュウソのライブを観るという今まで何回も経験してきたことを、3年ぶりにようやくまた体験することができている。そこで湧き上がる感慨はやっぱりライブじゃないと伝わりきらない感動なのである。
そんなライブの締めはこの日もおなじみの「ハッピーポンコツ」なのだが、さすがそこはテレ朝というかAbema。珍しくソゴウがドラムを叩く姿を真横からカメラマンがカメラでスクリーンに映し出すと、ソゴウのカメラ目線ドラムという実にレアな場面が映し出され、さらには曲終盤のカウント部分ではヨコタもソゴウの後ろに回って2人でカメラ目線で映る。何というか実にキュウソらしい場面であるとともに、本当にこのライブを楽しんでいるのがよくわかる。ここ最近観てきた中では最も音にも演奏する姿にも喜びを感じられたものだった。
しかしそれで締めたはずなのにまだライブは終わらないというか、セイヤがいそいそと着替え始めると、かつてこのフェスで何回もやり、最終的には「リハでしかやらない」というものになった、ステージ背後に聳える巨大風車のコスプレ(という名の白タイツ姿)に。
セイヤはマイクすら持たずに「家」が演奏されると、メンバーが歌う中で踊り狂っていたセイヤにタイガーマスクが乱入して襲いかかり、なんとセイヤにジャイアントスイングをお見舞いするという爆笑のパフォーマンスに。案の定、セイヤは普段のライブ終わり以上にぐったりしていたが、これこそがやりたい放題のキュウソの極みというライブを3年ぶりのこのステージで見せてくれた。それは最高のフェスの始まりということだった。
NEW BEAT SQUAREに初出演した時に「DQNなりたい、40代で死にたい」を演奏し、満員の観客に「ヤンキー怖い」コールをさせた後、入り切らずにステージの外にいるであろう人たちに「ヤンキー怖い」コールをさせたものの、全くコールが返ってこなくて、
「これでキャパピッタリ!これ以上俺たちのライブを観たい人はここにはいない!(笑)」
と爆笑を巻き起こしてくれたが、それは悔しさも内包されていたはずだ。
その悔しさが翌年のSEASIDE PARKでのライブ時に
「来年は風車の下でやる!だから今年は俺が風車になる!」
と風車コスプレを生み出したのだ。このフェスでキュウソを観ると、そんな大きく、強く、熱くなってきたバンドの歴史を思い返すことができる。だからこそ来年からもこのフェスが開催されて、このステージに立つキュウソの姿を見ていたいのだ。
1.MEGA SHAKE IT!!
2.推しのいる生活
3.ファントムバイブレーション
4.NO MORE 劣化実写化
5.優勝 (新曲)
6.ビビった
7.The band
8.ハッピーポンコツ
9.家
12:20〜 yama [SEASIDE PARK]
初出演のアーティストは状況や規模感無視でとかくNEW BEAT SQUAREにされがちなのだが、このyamaは初出演にしてSEASIDE PARK。JAPAN JAMで初めてライブを観て感動してしまったために、裏に被りがあるこの日もライブを見ることに。
先にステージにサポートメンバーたちが登場すると、キーボードのメンバーだけがサングラスのみ。JAPAN JAMの時は口元も隠していた気がするだけに、違うメンバーだったりするのだろうか。ギター、ベース、ドラムはやはり仮面を着用する中でyamaがステージに現れると、仮面をつけているのは変わらないが、紫だったパーカーの色が白になっている。そのフードを深く被ったその佇まいは実に「カッコいい」と思えるくらいにスタイリッシュである。
そのyamaは早速イントロから観客の方をしっかりと向いて手拍子を煽る。それに続くようにギターのメンバーも手拍子を煽っていたのだが、客席に手拍子が広がっていくと、満足そうに親指を立てる仕草を見せてから「あるいは映画のような」を歌い出した。その姿は
「ずっと下を向いて歌っていた」
と語っていた過去とは全く違う人物であるかのようだ。そのキーが低めの凛とした芯の強さを感じさせる歌声は「MoonWalker」を聴いていてJAPAN JAMの時よりさらにパワーアップしているようにすら感じるのは、この間にはACIDMANとの2マンツアーがあり、そこでまた新たなライブに対する意識や経験を手に入れたのだろうと思うし、そう考えると今のyamaはかなりの数のライブをやって生きているアーティストになっている。
「雨、止みましたね。会場に着いた時は土砂降りだったんで、どうなるのかと思いましたけど、止ませましたよ。yamaだけに(笑)」
という冗談までも言えるようになるくらいにライブを楽しむ、人に語りかける余裕が生まれているということに驚いてしまうが、yamaの名を一躍シーンに知らしめた「春を告げる」もこの前半にサラッと演奏してしまえるというのも、今はもうこの曲以上のキラーチューンをたくさん持っているという自信の現れでもあるだろう。yamaのリズミカルなボーカルも実にスムースである。
再びyamaが手拍子を煽る「a.m.3:21」と、さすがにJAPAN JAMの時のセトリの短縮版という形の内容ではあるが、その中でもアッパーなタイプと言える曲が残っているというのはyamaなりのフェスの戦い方なんだろうかと思うし、そう感じるのは原曲を聴いた時には特段アッパーには感じないというか、むしろ歌い上げるようなタイプの曲だと思っていた「ブルーマンデー」に思いっきり情感を込めて歌っていたからだ。そのタイトルフレーズの一音一音で込める感情や歌の強弱を切り替えているのを聴いていると、早くもyamaはライブにおいてどういう歌い方をすれば聴いている人に響くのか?ということに答えを見出したようにも感じる。
そしてキーボードから発せられるホーンのサウンドが吹き荒れる「麻痺」ではイントロから観客の腕が一斉に上がり、
「このステージに立ってる意味を
今も忘れたくないよな」
という歌詞がそのままyamaの心境を映しているかのように響く。その歌詞を歌う際の歌唱は実にロックシンガーと言ってもいいようなものであったし、手拍子をする姿も、客席を見据えながら歌う姿も本当に堂々としている。
すると
「1年前まではライブをやるのも、やらなきゃいけないのはわかってるんだけど、どうしても前向きになれなくて。それくらい人前に立つのが怖かった。
でも人間の生きている時間には限りがあるもので、その生きている時間を私のライブに使ってくれている。その時間を同じ場所で共有している。それがライブの素晴らしさだっていうことか今はわかっている。
前はMCも一切しなかったんだけど、やっぱり観てくれてる人には自分が今思っていることをちゃんと伝えるべきだなと思ったから、こうやってMCをするようにしています」
という言葉は、やはりyamaが多くはないながらもライブを重ねてきて、ライブの景色を見てきて変わったということであり、元々がどんな人間だったのか、今はどういう人間になっているのかということがその言葉の端端から溢れ出ている。
正直、JAPAN JAMのMCが感動的だったのは昨年も出演しているあのフェスだからだろうなとも思っていたし、実際にそうした要素もあっただろうけれど、初出演のこのフェスではこのフェスでまた忘れられないであろうyamaの人間らしさを感じられる言葉を聞くことができたのである。
そんなMCの後に最後に演奏されたのは、先日まで対バンツアーをしていたACIDMANの大木伸夫が手掛けた「世界は美しいはずなんだ」。対バンをして目の前でその姿を見てきたからか、メロディの歌い方により強く大木節を感じられるようになっているし、だからこそ
「僕らは笑っていたいだけさ
僕は愛を知りたいだけさ」
というフレーズが大木が書いた歌詞であっても、今のyamaの心境そのものであるかのように響く。やはりこの日もyamaのライブで観ることができた景色は美しいものだったはずなんだ。
yamaはMC中でホールツアーを行うことを告知し、
「出来ることなら、また皆さんの時間を私に分けていただければと思っています」
と、歌っている時の堂々とした姿とは全く違う謙虚極まりない言葉を口にしていた。
自分がそのホールツアーに行きたいと思ったのは、きっとその時にはもっとシンガーとしても人間としても成長しているはずであるし、もしかしたら後にライブモンスターと言えるような可能性を秘めたyamaをその前の段階から観ていることができると思ったからだ。それぐらい、まだまだ凄まじいアーティストになれる無限の可能性を秘めている存在だと思うようになった。
1.あるいは映画のような
2.MoonWalker
3.春を告げる
4.a.m.3:21
5.ブルーマンデー
6.麻痺
7.世界は美しいはずなんだ
13:00〜 SHISHAMO [WINDMILL FIELD]
自分はコロナ禍になる前はSHISHAMOのライブを最低でも年に2回は観ることができる機会があって、その一つが夏のSWEET LOVE SHOWERであり、もう一つがこのMETROCKだった。昨年はVIVA LA ROCKでもライブを観たが、その「SHISHAMOを見れるフェス」の一つがようやく戻ってきた。それくらいにこのフェスの番人的な存在のバンドである。
おなじみの牧歌的なSEでメンバー1人1人が順番にステージに登場すると、宮崎朝子(ボーカル&ギター)のおなじみの
「METROCK東京!」
という言葉に観客は拍手で応え、そのまま1曲目から観客がタオルを振り回す「タオル」へ。メンバーのイラストなどの特別なアニメーションが流れる映像はそのままこのバンドがこのフェスに愛されてきた証でもあるのだが、イラスト内の3人のTシャツはしっかり「メトロック」というこの日仕様になっており、最後にそのメンバーのイラストとともにタオルが回りまくる客席の様子が映し出されるのは壮観である。
吉川美冴貴(ドラム)の手数がどこか増えているようにも、力強さを増しているようにも感じるのはこの状況の中でもライブを重ねてきたバンドだからこそであるが、松岡彩(ベース)が来ているTシャツが胸にデカデカと狼っぽいイラストがプリントされていて、絶妙にMAN WITH A MISSIONのグッズなのか全く関係ないものなのかわからない。
決して特別な言葉を使っているわけではないけれど、女性の抱く心情を描く宮崎の歌詞が見事な「狙うは君のど真ん中」を演奏すると、こうしてこのフェスがまた開催できるようになったことを喜びながらも、この日はAbemaでの中継もあるということで宮崎はカメラに向かって自身が盛れて映っているかを気にしたりと、メンバーの表情は実に明るくて穏やかだ。
そんな中での「きっとあの漫画のせい」ではイントロから宮崎のギターがこのバンドを完全にロックバンドたらしめるかのように冴え渡り、「真夜中、リビング、電気を消して。」もまた歌詞もメロディもムーディーでありながらもサビにかけて展開していく演奏がバンドのグルーヴの強さを感じさせてくれる。この辺りの曲は前週の大阪では演奏されなかったらしいので、こうして聴けるのは嬉しい限りである。
そうした曲も然り、近年のSHISHAMOは割とスリーピースバンドの枠に止まらないような曲も増えてきているのだが、こうしたフェスではむしろそのシンプルなスリーピースバンドとしてのダイナミズムを感じさせてくれる曲が続き、さらに「中毒」では歌詞の至る部分で宮崎の怨念を込めまくっているかのような歌唱方法が印象的だし、SHISHAMOの曲の歌詞は本当に宮崎の想いを込めたものになっているということがわかる。見た目もより大人っぽくなってきているが、そうした表現力も年齢を重ねるにつれてはるかに向上している。
こうして雨が止んだことによってこの後も最後まで楽しんでもらえるようにと観客に告げたが、本人たちも久しぶりにキュウソネコカミと同じフェスで会ったり、マキシマム ザ ホルモンと会ったりと、いろんな先輩たちとの再会を楽しんでいた様子がSNSにアップされていた。そうしたバンド同士の交流ができるようになったこともフェスが戻ってきていることを感じさせるが、そんな中で宮崎の背後から客席を向いて撮影されているリアルタイムの映像がスクリーンに映る「明日も」ではその映像に歌詞も映し出され、
「だけど金曜日が終われば大丈夫
週末は僕のヒーローに会いに行く」
というフレーズが前日まで働いた上でこの日を迎えることができた我々の心境に重なっていく。きっとSHISHAMOのライブが見れるからこそ、「もうダメだ 立ち上がれない」と思うような日常を生き抜けている人もたくさんいるはずだ。松岡も吉川もスクリーンに映ると歌詞に合わせて口が動いていて、声を出せない我々と同じようにこの曲を声を出さずに、でも歌っていることがわかる。そうした全ての要素が腕を振り上げる観客の力になっていく。
そんな「明日も」同様にスクリーンには歌詞が映し出されたのは「明日はない」というタイトルに合わせたコンボであり、「明日も」で抱いた希望や活力を
「どいつもこいつも腹立つな
言えない私も腹立つな」
とネガティブな事象をぶっ飛ばすようなエネルギーへと変換する。
「面白くもないのに笑ったりしない
悲しくもないのに泣いたりもしない
つまんない恋はしない
死にたくなるような恋がしたい」
という聴いたら頭から離れなくなるようなサビのメロディと歌詞はこのバンドの持つ中毒性を感じさせてくれるとともに、そう歌い切ることができるSHISHAMOのロックバンドっぷりを確かめさせてくれるものだった。最後にメンバーの姿が見えなくなるくらいにスモークが噴き出してきた演出はよくわからなかったが。
コロナ禍になってライブが出来なくなる前から何かと不運に見舞われることが多いように感じることもあるバンドだけれど、こうしてステージに立って輝いている姿を何にも阻害されずに見れますように。
1.タオル
2.狙うは君のど真ん中
3.きっとあの漫画のせい
4.真夜中、リビング、電気を消して。
5.中毒
6.明日も
7.明日はない
13:50〜 須田景凪 [SEASIDE PARK]
3年ぶりの開催ということで初出演組も多くなっている今回の出演者の中でも「野外フェス出るの!?」という驚きがあったのは須田景凪だろう。そもそもライブをやるようになってからの期間でほとんどフェスが開催できなくなってしまったということもあるが、これからはフェスにも出て行くという前哨戦になるだろうか。
SEもなしにサポートメンバーのモリシー(ギター、Awesome City Club)、雲丹亀卓人(ベース、Sawagi)、やおたくや(ドラム、ex.パスピエ)とともに須田景凪が登場すると、ギターを掻き鳴らすようにして性急なリズムによるダンスロック「veil」からスタートし、須田景凪の神秘的とも言えるようなボーカルがこの野外の会場に響く。雲丹亀とモリシーは手拍子を煽るように手を叩き、それが客席に広がっていくと満面の笑顔を見せる。ライブ、フェスの経験豊富なメンバーたちなだけにその姿が実に頼もしい。
さらには「レド」と、こうしてロックバンドが居並ぶフェスの流れで聴くとやはりバルーンとしてボカロPでの活動をしてきた須田景凪の作る音楽の特異性がよくわかる。そもそも家で1人だけで作っていた音楽であるだけに、こうしてライブで演奏することを想定していない音楽というか。それがこのバンドメンバーたちによる演奏によって、今目の前で鳴っている須田景凪の音楽に変換されているのだ。
「須田景凪です。フェスに出るのは2回目なので緊張しています」
というMCも実に初々しいのだが、歌声からは緊張感はほとんど感じない、以前にフレデリックの対バンとして見た時と変わらないように聴こえるのは彼の持つボーカリストとしての資質だとも言えるだろう。
ボカロ的な性急なギターロックからリズムもサウンドも変わるのはタイトルからしても情景が頭に浮かぶ「猫被り」であり、それは須田景凪がネットシーンだけではなくて広いポップシーンでたくさんの人に響く曲を作ることができるアーティストであるということを示すものでもあるのだが、それを象徴するのが
「もしかしたら次の曲は知ってくれてる人もいるかもしれない。もしいたら心の中で歌ってくれたらと思います」
と言って須田景凪が
「さよならはあなたから言った」
と歌い始めると、
「心の中で歌ってくれた?」
と問いかけてバルーンとしての立ち位置を確立させた大ヒット曲「シャルル」へ。その際に雲丹亀がモリシーのことを指差して「歌った?」みたいにしていたのが実に微笑ましいとともに、このメンバーが須田景凪の音楽を一緒に鳴らすのを心から楽しんでくれているのがよくわかる。このメンバーたちがそう思ってくれるというのは相当なことであるし、須田景凪はまだライブで観客が一緒に歌うというのを全く経験していないはず。でもこの日の「シャルル」は近い未来にこうしたフェスの大きなステージでこの曲をみんなで大合唱している光景が確かに目に浮かぶものだった。その場にいることができたらどんなことを思うのだろうか。
先日の対バンの際にはMVなどの映像も駆使して自身の世界観と曲を深く届けようとしていたが、さすがに野外フェスではそうした映像を使うことができないために剥き出しの4人のサウンドのみで挑む「パレイドリア」のボカロ由来のやおの複雑なリズムが「この4人で須田景凪というバンドである」という一体感の強さを感じさせてくれると、最後に演奏された「パメラ」の1人で音楽を作ってきた人間の孤独さを示すような歌詞が、今ではこんなにたくさんの人とその孤独を共有しているかのように響いた。それは須田景凪がこうしてフェスに出ることによって、これまでよりもさらにたくさんの人と繋がることを選んだかのように。
直前に出演したyamaもそうだが、ネットシーンから出てきた存在であるだけに、本人はもちろんそのファンの人たちもフェスに来たことがないという人だってたくさんいるはず。自身のライブ後に雨のパレードのライブを須田景凪が観て体を揺らしていたように、アーティスト本人がこうして出演することでフェスを楽しんでくれて、そのアーティストを観にきた人たちがフェスでいろんなアーティストのライブを観て、フェスやライブが好きになってくれたならそんなに幸せなことはないし、彼らがフェスに出るという選択をしたことにもさらに大きな意味が生まれると思うし、これから彼らがそうしたファンの人たちと一緒にどうやってフェスのステージを駆け上がっていくのかが実に楽しみになる。
1.veil
2.レド
3.猫被り
4.シャルル
5.パレイドリア
6.パメラ
14:30〜 打首獄門同好会 [WINDMILL FIELD]
去年も開催することができたフェスには軒並み参加していたが、今年は開催することができずに出演出来なかったたくさんのフェスの鬱憤を晴らすかのように昨年以上にあらゆるフェスに出演しまくり、しかもそのフェスのほとんどでメインステージに立つのが定着した、打首獄門同好会。このフェスでもメインステージに出演である。
VJも含めたメンバー3人がステージに現れると、このWINDMILL FIELDには巨大スクリーンが設置されているのだが、ステージにもバンドがスクリーンを持ち込んでおり、そこに曲の歌詞が映し出される「新型コロナウイルスが憎い」から始まるというおなじみのオープニングで、大澤会長(ボーカル&ギター)の歌唱にjunko(ベース)と河本あす香(ドラム)のコーラスが重なっていく。
「今年はちょっと違う予感 (個人の感想です)」
という歌詞に変えることによって確かな希望を感じさせると、終盤に演奏されることも多い、ファミコンなどのレトロゲームが恋しくなる映像の「きのこたけのこ戦争」が早くもここで演奏されると、
「きのこでもたけのこでも、お菓子を食べた後にはちゃんと歯を磨けよー!」
という実に上手い繋ぎから「歯痛くて」へ。Dr.COYASSは登場しなかっただけに大澤会長がラップ部分も歌唱するのだが、世の中に溢れる「会いたい」系ソングのフレーズを引用しまくって、全て「歯痛い」「歯医者に会いたい」という歌詞にしていくという会長の発想力は何回聴いても本当に素晴らしいと思う。
すると「このステージの出演者を雑にいじるコーナー」が急にスタートし、フォーリミ「monolith」のメロディで
「いつからだ令和」
とキュウソの「ギリ昭和」のフレーズをマッシュアップさせたかと思いきや、ホルモン「my girl」の「VA・GI・NA」を「WANIMA」に変えて歌うという本当に雑ないじり方をする。ちなみにSHISHAMOはさっき初めて挨拶したくらいに面識がないために迂闊にいじれないということで、この時はまだいじらなかった。
温泉街の写真がどうしても温泉に行きたくなるというのは曲の意図する通りで、サビではいらすとやの地味なイラストが映し出される新曲「地味な生活」もまたこうしたコロナ禍での我慢を強いられるような生活から早く戻れるようにという祈りを込めるようだった。個人的には
「近所のラーメン屋ローテーション」
というフレーズに共感しまくらざるを得ない。
しまじろうをはじめとしたキャラクターがたくさん登場する映像が何回見ても可愛い「カンガルーはどこへ行ったのか」での「考えることを」のフレーズの連呼で観客が腕を振り上げまくると、ここでシークレットゲストとして何とレキシがステージに登場。
「ガウガウ!ステージで転んじゃうな(笑)」
「レキシシャモです!(笑)」
など、フェスが久しぶりで楽しくて話が止まらないレキシをVJが時間がなくなってきているブザーを鳴らして警告すると、レキシが刀でVJを斬り殺すという寸劇までも行われる。
その刀はレキシが新撰組の格好をしているから持っていたものであり、レキシの最新アルバムで打首とコラボした(レキシネームは「ぼく、獄門くん」)「鬼の副長HIZIKATA」を演奏するのだが、やはりレキシが
「ジュンちゃ〜ん」
と話しかけたりしてまだ曲が始まらないというレキシっぷりを遺憾なく発揮しながらようやく演奏が始まると、肘と肩で土方というレキシの天才すぎる発想力による、打首の要素を含みまくった曲の内容で観客を笑わせまくるが、
「勇!勇!近藤勇!」
の三三七拍子は完全に「島国DNA」のオマージュであり、レキシからの打首愛が炸裂している曲とも言える。
あまり長居し過ぎると確実に時間が押すからか、曲が終わるとレキシはすぐにステージを去り、肩や肘に加えて膝も出てくる「鬼の副長HIZIKATA」の後に演奏されたのは、普段前半に演奏されがちなので、今日はもう演奏されないだろうと油断していたらここでスクワットをすることになる「筋肉マイフレンド」。もうやなきゃしょうがないなと思うのはメンバーはもちろん、袖にいるスタッフまでもがスクワットをしていたからで、さすがにこれで我々がやらないわけにはいかない。まだ朝イチやトリじゃなかったのを喜ぶべきだろうか。
そして「鬼の副長HIZIKATA」でもオマージュされていた「島国DNA」で三三七拍子を打ち鳴らすのだが、なんとここでSHISHAMOを連発するという恐るべき発想力。確かに魚であるが、いじらないと言っていたのはこの演出のためだったことがわかる。もうつくづく恐ろしいバンドである。
そうして驚かされまくりのライブの最後には、
「雨が降ってライブを観るコンディションとしては良くないかもしれませんが、田植えのコンディションとしては最高です!」
と雨を歓迎しながら、今年の大豊作を願って「日本の米は世界一」が演奏されたのだった。
もはやこのバンドは四星球と並ぶ天才の集団なんじゃないかとすら思う。その日ならではのアイデアを自分たちの音楽と表現に完璧に落とし込んで、それが我々観客に驚きと喜びを与えてくれる。もう生活密着型ラウドバンドどこの存在ではなくなってきている。
1.新型コロナウイルスが憎い
2.きのこたけのこ戦争
3.歯痛くて
4.地味な生活
5.カンガルーはどこに行ったのか
6.鬼の副長HIZIKATA w/ レキシ
7.筋肉マイフレンド
8.島国DNA
9.日本の米は世界一
15:20〜 雨のパレード [SEASIDE PARK]
前週の大阪にも出演していたが、コロナ禍になって以降はこうしてライブを観る機会がほとんどなくなったイメージがある、雨のパレード、大澤実音穂(ドラム)のバンド外での活動はよく目にしているけど、こうしてライブを見れる機会も貴重なものだ。
メンバー3人がステージに現れると、ステージ奥にはサポートベーシストの姿が。メンバー脱退後に3人になった直後はサポートを入れずに3人だけでライブを行っていたのを観たが、それも変わっているというか、バンドは確実に新しい方向へ向かっているのがわかる。
それはバンドの雰囲気からも感じることであり、上手側にセッティングされたセットを叩く大澤は今はスポーティーなカッコいい女性というような出で立ちになっており、何よりも福永浩平(ボーカル)が登場した瞬間から晴れやかな表情を見せるようになっており、バンド全体としての雰囲気やイメージがかなり変わったことがすぐにわかる。山崎康介(ギター&シンセ)の長い髪型は全く変わっていないけれど。
そのイメージの変化は楽曲にもモロに現れており、1曲目に演奏された、昨年リリースの配信シングル「Override」はEDM的な要素も取り入れたダンスサウンドで、歌い出しが
「真っ青な空に灼熱の太陽
汗が白いTシャツを濡らす」
という、歌詞だけを見たら雨のパレードのものとは思えないものである。しかしながらそれはこうした野外フェスの解放感に似合うバンドに変化してきているということでもある。福永が笑顔で踊るようにしながら歌っており、もはや雨よりも太陽が似合うバンドと言っていいかもしれない。
それは同じく昨年リリースの配信曲「ESSENCE」もそうであり、抜本的なバンドの変化を確かに感じる。サウンドからしても内省的なダンスミュージックから、観客を踊らせるような陽のダンスミュージックに変化しているというか。
福永の
「池ちゃん(レキシ)が出てきて、喋り過ぎて時間押したからみんながこっちに来るのが遅くなったって聞いた(笑)」
という笑わせるようなMCからもその変化を感じるが、レキシと打首は時間自体は押していないけれど、NEW BEAT SQUAREの羊文学が入場規制がかかって入れなかったことによってこのステージに行くことにしたであろう人もこの辺りからたくさん増えてきていた。
このメトロックは正式名称は「TOKYO METROPOLITAN ROCK FES」であり、そのタイトルのフェスにピッタリな「Tokyo」は今のスタイルになる前の雨のパレードの代表曲の一つと言っていい曲であり、その歌詞と内省的なダンスミュージックのサウンドがこうして我々が今いる「東京」という場所に精神的に向き合わせるかのようだ。やはりこの曲を聴くと「雨のパレードだな」と思う。
しかしそんな感覚を軽やかに裏切ってくれるのは、きっとテレビやラジオなどでこの曲を聴いたことがあるという人も多いであろう「Summer Time Magic」で、なんだかこのバンドはもはや夏もこうした野外フェスで、太陽の下で見るのが実に似合うんじゃないかとすら思えてくる。そんなことを思うなんてこのライブを観るまでは全く想像していなかったことである。
そして大澤がデジタルドラムを叩くのは最新曲の「first step」で、雨のパレードの中で最もこの春フェスという時期にふさわしいとすら思える曲になっており、山崎もシンセを操るのであるが、福永の穏やかな表情で体を揺らしながら歌う姿は今のバンドが自分たちのやりたいことを追求できているという自信を感じさせるものになっている。
だからこそ最後に演奏された「BORDERLESS」を聴いていて、変わったんじゃなくて、元から自分たちのやりたいことに線を引くことなくチャレンジしていくバンドだったということを思い出した。だから変わったというよりも、ただ自分たちが今やりたいことをやっている結果として我々がそう感じているだけであるというような。
「指差されたっていい 笑われたっていいぜ
今の自分の姿
見せつけろよ」
というこの歌詞の通りであるし、だから売れるために変えたとかいう感じも全くしないし、ライブ自体の良さもこの日のこのステージのトリであるMy Hair is Badらとライブハウスで凌ぎを削っていた頃と同様、いや、それ以上だ。まだこれからの予定も全然決まってない(ライブ予定もサカスプしかない)らしいけれど、雨のパレードはこの状況の中でも確実に前進している。
1.Override
2.ESSENCE
3.Tokyo
4.Summer Time Magic
5.first step
6.BORDERLESS
16:00〜 04 Limited Sazabys [WINDMILL FIELD]
YON FESが終わっても各地の春フェスに軒並み出演している、フォーリミ。初出演時は1番小さいNEW BEAT SQUAREだったのが、今は東京、大阪ともにメインステージを担う存在になっている。
おなじみのSEでこの日もメンバー4人が元気いっぱいに登場すると、
「3年ぶりのMETROCK!この曲からスタート!」
とGEN(ボーカル&ベース)が言っていきなりの「swim」でHIROKAZのギターのキャッチーなサウンドが響き、KOUHEI(ドラム)のツービートが疾走してRYU-TA(ギター)は「オイ!オイ!」と煽りまくり、観客はみんなこの会場の中を泳ぐように腕を動かすのだが、GENは最近の中ではこんなにキツそうな声の状態があっただろうかと思うくらいにハイトーンを出すのがキツそうで、最後のサビでは歌いきれない部分さえあった。どうやら喉にくるタイプの風邪気味だったということだが、それが不安に感じるというあたりに逆に近年のGENの声の安定感を実感する。
やはりRYU-TAがイントロから観客を煽りまくる「Kitchen」ではリズムに合わせた観客の手拍子もバッチリ決まり、こんなに大きな会場でパンク・メロコアサウンドを鳴らしているフォーリミこそがここにいる人たちにとってのヒーローであるということを示すようにKOUHEIのドラムが疾駆する「My HERO」、さらには他のどこでもなく、今ここを示してくれるかのような「Now here, No where」と、テンポ良く次々と曲を演奏するというのはパンクバンドとしてのフォーリミのスタイルだ。しかも他のフェスともまた演奏する曲を変えているのだから、どんなフェスでも見逃すことはできない。
こうした場所があってくれること、このフェスの10周年のうちの半分くらいをともにしてきたことを少し感慨深げにGENが口にすると、「monolith」のフォーリミらしさを今のバンドで再定義するような「fade」が演奏されるのだが、両A面シングルのうち、この曲と「Just」はフェスなどではどちらかしか演奏されない傾向が強いためにどうやってそこを決めているのかも気になるところである。
おなじみの「fiction」でHIROKAZも観客を煽りまくり、ハードなサウンドとしてのフォーリミが顔を出したかと思いきや、RYU-TAのイントロが妖しげな雰囲気を醸し出す「mahoroba」と目まぐるしくサウンドが変化していき、それがそのままフォーリミのパンクバンドでありながらも様々なタイプの曲を作ってきた引き出しの広さを感じさせるのだが、ここで最も意外だったのはワンマンでしかやらない曲だと思っていた「Milestone」が演奏されたことである。そのメロディの美しさはこれからもこうしたフェスでも定期的に聴けたらなと思うものであるのだが、それはそのまままたいろんな会場でフォーリミのライブが見れるように、そしてこの曲が聴けたらという、夢が醒めないままだということだ。
この会場を好きな理由として
「蟻がデカい」
ということを挙げたGENは、かつてこのフェスでキュウソのライブを観ていた時に「ハッピーポンコツ」の最後のサビ前のキメのタクロウの見せ場でスクリーンに空を飛ぶ飛行機が映し出されていてタクロウが可哀想だったというエピソードを挙げると、
GEN「あの橋は何?」
KOUHEI「東京ゲートブリッジ」
GEN「橋の向こうは海?じゃあ水平線か」
RYU-TA「back numberだな(笑)」
GEN「地平線じゃないんなら曲の繋ぎが変わってくるな…」
と他のバンドをいじりながらも、本当は地平線に絡めたMCをしてから入りたかったのであろう「Horizon」を演奏し、GENのボーカルはこの曲では歌いきれないこともなく、まさにゲートブリッジの奥に伸びる水平線に向かっていくかのように伸びやかに響き、さらにはタイトル通りのフォーリミの甘いメロディとサウンドを堪能させてくれる「milk」…もはやフェスのセトリとは思えないくらいの振れ幅であるが、それはこのフェスで春フェスと言える時期ももう終わりを迎えるだけに現状の総決算的な意味合いもあったのかもしれない。ワンマンをやらなくてもこれだけの曲を演奏できる状態にあるというのがフォーリミがライブバンドたる所以である。
初出演時は自分たちが最若手だったという回想から、今はちょうど中堅くらいの位置になってきており、後輩も増えてきているという話をすると、
「Crossfaithのこいちゃん(Koie)とカラオケしてて、Saucy Dogの慎ちゃん呼んで「シンデレラボーイ」歌わせて、マイヘアの椎木呼んで「卒業」歌わせた(笑)
自分が先輩にカラオケ呼ばれて「swim」歌わされたら「は?」ってなるのに(笑)」
という自身が嫌な先輩になってきているというトークをするのだが、その後輩たちをみんなYON FESに呼んでいるのだから、やっぱりフォーリミは良い先輩であるし、
「俺は音楽に救われたと思ってるから、俺の音楽で誰かの救いになることができたら」
と言ってくれるのだから、我々にとっても救いでしかない。こうやって今年もYON FESを始めとしたいろんな場所でフォーリミのライブを観ることができることで、確かに救われているのだから。
そんな思いを音楽に込めるように、
「なりたい自分自身に生まれ変われ!」
と、KOUHEIの強靭なビートが牽引する「Squall」を演奏してクライマックスへと向かうと、
「METROCK、この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
と言ったGENが思いっきり振りかぶってイントロを鳴らし、RYU-TAが
「METROCK、かかってこいやー!」
と叫んだ「monolith」は何人どころじゃなくて、ここにいた何万人もの人はみんなこの曲を知っていたはずだ。またこの曲でこの会場で激しいサークルモッシュが見られたりするのだろうか、とも思うのだが、3年前にはサークルモッシュが禁止されたことによってフォーリミのライブでも色々あったことなんかを思い出したりしていた。
さすがにこれで終わりかと思いきや、
「METROCK、また来年!ちょっと先の未来からの、メッセージ!」
と言って最後にツービートが炸裂するメロコアショートチューン「message」までをも演奏するという、フェスとは思えない内容のセトリに。
それはYON FESを終えても他のいろんな場所のフェスで常に100%以上のものを見せるというフォーリミのライブバンドとしての姿勢そのものだ。初出演時にすでにYON FESを開催しているくらいの存在であり、「なんでこの1番小さいステージなんだよ…」と思いもしたが、あれがあったからこそ、今こうしてメインステージに立ち続けるようになったこの姿を本当に頼もしく、感慨深く感じられる。そんなフォーリミの背中を見ているバンドたちがきっと1番小さいステージからこのステージまで駆け上がってくるはず。ただ年数を重ねて中堅になったわけじゃない。やっぱりフォーリミはロックシーンのヒーローなのである。
1.swim
2.Kitchen
3.My HERO
4.Now here, No where
5.fade
6.fiction
7.mahoroba
8.Milestone
9.Horizon
10.milk
11.Squall
12.monolith
13.message
16:50〜 -真天地開闢集団- ジグザグ [NEW BEAT SQUARE]
それこそこの日出演した中だとフォーリミもWANIMAもマイヘアもキュウソも初出演はNEW BEAT SQUAREで、最初から満員だったとはいえ、回を重ねるごとにステージを大きくしていった。そんなNEW BEAT SQUAREに初出演するのは、若手と言っていいのかわからないような異質な存在のバンドである-真天地開闢集団- ジグザグである。
フォーリミが終わってからダッシュで向かうとすでにステージにはサポートギターとともに影丸(ドラム)、龍矢(ベース)、そして異界からやってきたかのような荘厳さを感じさせる、衣装も髪色も肌も真っ白も命(ボーカル&ギター)が立っており、その見た目通りの壮大なメロディを歌い上げるような「忘却の彼方」を演奏し、このフェスの空気を一気にV系と言えるかのようなものに変えてしまうのだが、歌い終わると命は
「想定外のことが起きている。「忘却の彼方」のサビで「ア〜、ウ〜」って他のステージのマイクチェックの音が入ってきて、歌詞を忘却してしまうところだった(笑)」
と笑わせつつ、
「完全にアウェーだと思ってたから、こんなにたくさん来てくれるなんて思ってなかった!そんなお前たちは可愛い!キツネみたいに可愛い!でも俺たちも可愛い!(笑)」
と言って打ち込みの音も使って、さながらカラオケみたいな歌唱によって始まる、音源を聴いた時に「何だこの曲!?」と笑ってしまった「きちゅねのよめいり」を演奏し、龍矢は踊るようにしながらベースを弾き、影丸は片手でスティックを振りながら片手でドラムを叩くという言葉通りの可愛さを発揮。命は事前に(割と適当に)振り付けをレクチャーしていたとはいえ、観客が完全に振り付けを踊れていることに
「何でこんなに完璧にできてんの!?(笑)」
と驚いていたが、この日はこのバンドのグッズ(デザインが異様にカッコいいので実に目立つ)を纏った人たちも朝からたくさん会場にいた。それはジグザグがすでに「このバンドが出るんなら見たいからフェスに行こう」と思うようなファンをたくさん抱えているということだ。その人たちがジグザグの出番の時間帯だけじゃなくて、朝早くから来て他のバンドのライブも観ているというあたりにこのバンドのファンの方々がフェスの楽しみ方を熟知しているということがわかる。
それは
「もうその辺にゴミが落ちまくってる!」
と言ってから演奏された「ゴミはゴミ箱へ」で、最後の「G・O・M・I」を体を使って文字で表現するのを観客も完全にできているのを見て、
「なんで出来るねん!(笑)」
と突っ込まざるを得ない状態になっていたことからもわかるが、この辺りでこのバンドが「サウンドはラウドだし見た目はとっつき難い感じもするけど、実はめちゃくちゃ面白い人たち」であるということがわかってくる。
それでも命がギターを弾きながら歌うバラード曲「Promise」はいかにもV系バンドのバラード曲というような壮大なものであり、ラウドな曲ではデスボイスを上手く使い分けているのだが、そもそもの歌唱力がズバ抜けていることがわかる。ただ面白いだけではなくて、ちゃんとバンドとしてのスキルを持っているのがわかるというのは「復讐は正義」におけるリズム隊のラウドな重さからも伝わってくることであるし、それに応える観客の髪を振り乱しまくるヘドバンはこのフェスにおいてこのバンドがいなかったら絶対に観ることが出来なかったノリの凄まじさである。
そして体感的に本当にあっという間のラストは命が
「色々振り付けあるんですけど、もうわからんかったらずっと腕あげたりしていてください」
と明らかに時間がなさそうにして始まった、美しいメロディに実はコミカルな歌詞が乗るというこのバンドらしさの極みとも言えるような「燦然世界」で、自分のように気になってはいたけれど初めてライブを見たというような人に強烈なインパクトを植え付けた。それは演奏後に「力を使い果たして動けない…」的なことを言ってメンバーに後ろから体を押されてなんとか歩き出すも、袖の近くまで行くといたって普通に歩いていたという退場時のパフォーマンスも含めて。
命は以前読んだインタビューでこうしたスタイルのバンドになったことを、
「普通にやってても全然ライブ見てくれる人が増えなくて。それならもう売れなくてもいいし、V系じゃないって言われてもいいから、最後にひたすら自分が好きなように、やりたいことをやろうとして面白い曲を作ったりしたら、売れなくてもいいやって思ったのに急に人気が出てきてしまった(笑)」
と言っていた。それは元からこうした音楽、こうしたバンドをやるべきタイプの人間だったのが、自身の資質や性質に相応しい表現をするようになったということだ。だからこそ一切のカッコつけや背伸びがなく、自分のやりたいことをやっている結果として聴き手を最大限に楽しませてくれるものになっているということが見ていてわかる。
何よりもラインナップ的に本人たちが口にするくらいに完全に異質、アウェーな感じがするのに全くそうはならなかったのは、この日は打首獄門同好会やマキシマム ザ ホルモンも出演しており、そのバンドたちのTシャツを着た観客もたくさんいたように、そうした「ラウドな音を鳴らす面白い人たち」という、確かに通じるものを持っているバンドだからだ。自分がハマってしまいそうな気がして怖くなっていた。
1.忘却の彼方
2.きちゅねのよめいり
3.ゴミはゴミ箱へ
4.Promise
5.復讐は正義
6.燦然世界
17:50〜 マキシマム ザ ホルモン [WINDMILL FIELD]
今年も去年に続いて「呼んでくれるならどこでも出る」というようにフェスが開催されていて、そこに出れる、ライブができる喜びを感じているであろう、マキシマム ザ ホルモン。軒並み春フェスに出演してきて、このフェスにも帰還。
おなじみの賑やかなSEでメンバーがステージに登場すると、ダイスケはん(ボーカル)がおなじみの津田製麺所の台の上に立ってタイトルコールをしたのはなんといきなりの「恋のメガラバ」で、超満員の観客が早くも踊りまくる中、スクリーンには「こんなに使って大丈夫?」と思うくらいの人気アニメの映像が流れまくる。もうこのスタート時点で完全に反則レベルである。
今年はそうしてあらゆるフェスやイベントなどに出演し、その中で演奏する曲を変えまくるという形で腹ペコたちの空腹を満たしてきたホルモンであるが、そんな中でも毎回演奏されているのはやはりスクリーンにアニメーションなどの映像が次々に映し出されるだけに視線が忙しくなる「maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜」であり、打ち込みパートではマキシマムザ亮君(ボーカル&ギター)と上ちゃん(ベース)が体を揺らす中でナヲ(ドラム)がステージ前に出てきて踊りながら歌い、ドラムセットに戻ると寄り目になりながら歌うというおなじみのパフォーマンスに。
そんなナヲはこのフェスおなじみみたいな顔をしているが、実は出演はまだ2回目であることを告げるのだが、前回出演時にはトリのPerfumeのライブに乱入して一緒に踊ったという、間違いなく10年の歴史の中でトップクラスの名場面だった前回出演時のエピソードを語る。合成かというくらいにPerfumeの3人と顔の大きさが違っていたということも。
そうした挨拶にしては強烈すぎるMCから、亮君と上ちゃんによる呪術的なボーカルによって始まるのは先ほどの「II」に比べるとライブで聴くのが実に久しぶりな感じがする「maximum the hormone」なのだが、サビでのギター、ベース、ドラムという他のバンドと同じ楽器を使っている、かつ最小限の楽器のみの演奏とは思えないくらいの破壊力の凄まじさたるや。このあまりにも急激な展開の激しさも含めて、ホルモンの凄さを改めて感じさせてくれる。
そんな中でダイスケはんはまだ観客が声を出して一緒に歌うことができない中だからこそ、一緒に歌ってくれる人を招いたと言うと、なんとステージに現れたのは先ほどライブを終えたばかりのフォーリミのGENであり、かつてフォーリミを始める前、学生時代からホルモンのツアーに観客として参加していたというGENはこのステージまで
「スキップ100歩でやってきた」
と曲の歌詞を引用すると、そのフレーズがある「ROLLING1000tOON」を、まさに我々の延髄を突き割るような破壊力のサウンドで演奏し、GENは音源ではナヲの歌うその「スキップを100歩〜」からのフレーズをむしろピッタリな自身のキーで歌い、サビでは亮君とのツインボーカルという形に。まさかここでこんなコラボが見れるとは思っていなかったが、それはやはりフォーリミのライブもホルモンのライブも見逃すことができないものだということだ。
さらには重いイントロのサウンドで観客がヘドバンしまくる「ロッキンポ殺し」、この「フェスでのホルモンのセトリらしいセトリ」の中で並ぶと異質さが際立つ「恐喝 〜kyokatsu〜」と、何がどうなったら今になってこんなセトリになるんだという凄まじいまでの連打っぷり。JAPAN JAMでは「糞盤」期の曲がたくさん聴けて嬉しさと懐かしさを感じたりしていたが、それとも全く違う内容になっている。それはホルモンが一本一本のフェスのライブを自分たちにとっても観客にとっても特別なものにしようという意思の現れである。
しかしMCでは
ダイスケはん「今日、会場に入ったら、このステージから我々の曲の音が聞こえてきました!」
ナヲ「すぐ回覧板回ってくるからね!」
ホルモン「打首が我々に許可なく勝手に演奏してました!」
と、自身の曲を演奏していた打首を愛あるいじりをすると、その打首がわずかにカバーした「my girl」の本家バージョンで再びスクリーンには曲に合わせた映像が流れるのだが、思えば2011年の大雨のこの会場でのROCKS TOKYOでずぶ濡れ、泥だらけになりながらみんなが「VA・GI・NA」のフレーズを大合唱していた。それはこの会場のフェスにずっと来続けてきたからこそ思い出せるものであり、今は声を出せないけれど、またあの頃みたいにみんなで最高に下品極まりないこの曲を大合唱したいなと思う。
さらにさらに「ぶっ生き返す!!」でメンバーの演奏と歌唱も完全に最高潮に達しているのがわかるのは、サビで観客が飛び跳ねまくっていたことによって、この会場だけ地震が起きているかのように地面が揺れていたからだ。これだけの状況を生み出し、感情が昂りまくりながらも、決してモッシュを起こしたりすることがない腹ペコたちは本当にさすがだ。ホルモンのメンバーたちが願っていた「ライブをする場所を取り戻したい」という意思を全員が共有しているからこそ、無法者的に楽しむんじゃなくて、しっかりルールを守った上でライブを楽しんでいる。またすぐにホルモンのライブを見れる場が訪れるように。
意外なくらいに曲数を連発したということは、それだけ時間も使っているということであり、実際にもう押しているということをナヲが口にするのだが、
ナヲ「東京と大阪合わせても持ち時間押したのは今年はジャニーズWESTだけらしいよ」
ダイスケはん「じゃあ俺たちジャニーズ枠だから時間押しても大丈夫やん!」
と、逆に開き直るかのように再び喋りまくりながら「恋のおまじない」を一発で決めてから最後に演奏されたのは「恋のスペルマ」で、サークルモッシュをすることができないからこそ、ダイスケはんをはじめとしたメンバーも含めての「その場で1人サークルモッシュ」という、ただそこで一人でグルグル回るだけというパフォーマンスも行われ、やはり映像が気になってスクリーンを見てしまう中、去年自分が見たホルモンのライブでは毎回こうしてこの曲を最後にやっていたことを思い出していた。
それはこの曲のMVの「この曲がフェスで演奏された時の盛り上がり方講座」というメンバー実演のバカバカしい、でもコロナ禍でモッシュなどが出来なくなり、声も出せなくなったことで再現出来なくなってしまったものを再び自分たちで取り戻すためにこの曲を最後に演奏していたんだろうなと思っていた。
で、それは去年この曲を聴いていた時よりも確実に近づきつつあるという感覚が確かにある。それはホルモンと腹ペコたちが自分たちの今までのライブの楽しみ方を変えてまで守ってきたものがあったからだ。今のホルモンのライブと腹ペコたちの姿からはそんなことを感じることができる。東京で時間を押した最初のアーティストはやはりホルモンだった、というくらいに時間押していたけれど、それもやはりフェスのホルモンが帰ってきたということなのだ。
1.恋のメガラバ
2.maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜
3.maximum the hormone
4.ROLLING1000tOON w/ GEN
5.ロッキンポ殺し
6.恐喝 〜kyokatsu〜
7.my girl
8.ぶっ生き返す!!
9.恋のスペルマ
18:50〜 My Hair is Bad [SEASIDE PARK]
前回出演時(2018年)同様にSEASIDE PARKのトリ。でもあの時と今では全く状況が変わった、My Hair is Bad。こちらも各地の春フェスに出演してきたが、この日が今年の春を惜しむ日になるということだろうか。
完全に夜になって真っ暗なこのステージに登場するというのはトリの特権であるが、おなじみのSEで3人が現れて気合いを入れるようにすると、
「新潟県上越市、My Hair is Badです。METROCK、ドキドキしようぜ!」
と椎木知仁(ボーカル&ギター)が言って「アフターアワー」からスタートし、間奏では笑顔を浮かべながら山本大樹がステージ前まで出てきてその重いベースの音を響かせるのだが、今のマイヘアのフェスの規模感からしたら小さめとすら言えるステージであるだけに、激しいシンバルの連打をする見せる山田淳(ドラム)含めて、3人の表情が実に穏やかなのがよくわかる。JAPAN JAMの時もそうだったが、バンドにとって新たな挑戦を果たしたのがストレスとなっているのではなくて憑き物が落ちたかのようにスッキリしたものになっているのかもしれない。
そのまま「ドラマみたいだ」へと続くのはおなじみの流れだが、椎木は軽やかに飛び跳ねながらギターを弾く姿もやはりどこか開放感に満ちているように感じるのはこの野外の夜というシチュエーションもあるのかもしれない。
「この時期の、こんな曇天の空の時にできた曲だった」
と言って演奏されたのはミュージックステーション出演時に披露された「真赤」で、すでに今年の春になってから何度もライブで聴いているが、その中でも最も夏の匂いがした。それはもちろんこの曲を聴くたびに夏が近づいてきているからだ。
さらに「熱狂を終え」で椎木のギターが一気に加速していくと、観客の腕が振り上がりまくる。熱狂を終えているどころではなくて、今まさに熱狂の真っ只中に我々がいるかのような。
するとJAPAN JAMの時は演奏されなかった「フロムナウオン」のギターを椎木が掻き鳴らすと、
「これから俺が歌うのは曲でもなければMCでもない、ラップでもない、全て俺の即興!今ここで出てきた言葉!」
と「フロムナウオン」がどういうものかを軽く説明したのは今初めてマイヘアのライブを観ている人がたくさんいるだろうということへの配慮であろう。
「サブスクでもMステでもない、目の前にいるのが最新の、本物のMy Hair is Badだ!
曇り空だけどみんなの心を晴らしに来ました!」
と叫ぶと、ここから次々に言葉を重ねていき、
「俺は弱いから、弱い奴の気持ちがわかる!」
とも口にする。男女のラブソング的な歌詞があまり好きではない自分が、そうした曲も数多いマイヘアの音楽に惹かれるのは椎木が自分のようなやつの気持ちがわかるからなのかとも思う。何回もライブを観ていても、今になってそうしたことに気づかせてくれる。それが椎木の言葉の、マイヘアの「フロムナウオン」の力である。
そうして「フロムナウオン」で秘める感情を爆発させると、山田のドラムを筆頭にそのまま3人が向き合うようにして爆音を鳴らし始める。それは「戦争を知らない大人たち」のイントロなのだが、JAPAN JAMでは演奏されていなかったこの曲を演奏したのはこのライブが曲のMVと同様に夜であるという要素が大きいとは思うけれども、もはや戦争を知らないとは言えない状況に世の中がなってきているということも間違いなくあるだろう。「フロムナウオン」でこの日も椎木は
「1番大切なのは、睡眠です!」
と言っていただけにこの曲のサビの
「Good night」
というフレーズがこのライブが終わったら、この日のフェスが終わったらしっかり睡眠を取るように、と言っているかのようですらある。
そして最後に演奏されたのは最新アルバム「angels」のリード曲である「歓声をさがして」で、それは実にマイヘアらしいメロディとサウンドを持ったこの曲が新しいマイヘアの代表曲になっていくということを示すようでもあり、
「大好きばっかり見つけに行きたい」
という歌詞の通りにこれからもこうやってマイヘアが立ついろんなライブを見に行きたいと思えるものにもなっていたのだ。そうしたところに行くたびにその日にしか見れないものを見せてくれるのがわかっているから。
もうなかなかこれから先は今までのようにライブハウスでもチケットが取れるというわけではなくなっていくのだろうけれど、新しい挑戦を果たしたという意味では忘れられない2022年のマイヘアの春は総じて穏やかだった。
1.アフターアワー
2.ドラマみたいだ
3.真赤
4.クリサンセマム
5.熱狂を終え
6.フロムナウオン
7.戦争を知らない大人たち
8.歓声をさがして
19:40〜 WANIMA [WINDMILL FIELD]
今年の前に最後にこのフェスが開催されたのは2019年。その2019年に大トリを務めたのがWANIMAであり、つまりは今年開催出来なかったまでの間、最後にこのフェスでライブをやったのはWANIMAだったということである。そんなWANIMAがこのフェスに戻ってきて、初日のトリを務める。
この開始時間の直前になって雨がまた降ってくる中で「JUICE UP!!のテーマ」のSEでメンバーがステージに登場すると、KENTA(ボーカル&ベース)が
「ええ?みんななんでこんなに残ってるの?」
とでも言うような顔をしながら歩いてきて、なぜかその後にFUJI(ドラム)を追いかけ回しはじめ、追いかけ回されたFUJIがドラムセットに座るとKENTAもマイクの前に立ち、サングラスをかけたKO-SHIN(ギター)がリズムを刻む中、
「雨は最悪仕方ないでしょう!でもあなたの心は晴れますように!」
といきなりの「雨上がり」で徐々に強くなってきている雨の影響を忘れさせるくらいに飛び跳ねまくらせてくれる。それくらいに最初からもうWANIMAの空気に、この3人のオーラに会場が塗り変わっている。FUJIの破壊力抜群のドラムも、KENTAの声の伸びも素晴らしいし、ステージ背面にはバンド名の巨大な電飾が光るというのはやはりトリを務めるバンドとしての特権だろうか。
「METROCK、どんな夜にしたい!?」
と問いかけると、もちろん観客がその飛び跳ねまくる姿で示すのは、この夜を「オドルヨル」にしたいということであり、WANIMAがこの日のトリをやってくれて本当に良かったなと思うのは、寒いなんて思う暇が全くないくらいに我々の体を熱くしてくれるからだ。
そんなWANIMAはコロナ禍にあっても新たな曲や作品を作り続けており、ここで披露されたのはリリースされたばかりのストレートなロックナンバーの「眩光」。歌詞はKENTAの、単なるハッピー野郎なわけでは全くない自分自身への問いかけと葛藤というものになっているのだが、
「真っ暗な夜の雨はもう止んだ」
というフレーズで曲が締められるように、結論から言うとこのライブが終わった後には雨は止んだ。それもまたポジティブでありながらも我々を引っ張り上げるようでいて、寄り添いながら隣を走ってくれるWANIMAらしさを感じさせる事象だった。
すると中盤ではこの3年ぶりの開催となったこのフェスのこのライブが、発表はされてはいたけれど開催出来なかった去年や2年前のリベンジであるかのように鳴らされた「リベンジ」、さらにはKENTAがイントロでギターを弾くKO-SHINに体当たりしてグイグイ体を押してから始まるという爆笑の、でもこの3人のずっと変わらない関係性を感じさせてくれる姿を見せてくれる「つづくもの」というキラーチューンが次々に演奏され、かつて初出演時からこのフェスでこの曲たちを大合唱してきたんだよな、と思い返すと少し切なくなってしまう。でも、一緒に歌うことはできなくても、こうしてまたこのフェスでWANIMAのライブが見れるようになったというのは間違いなく前に進めているという証拠だ。
「俺を育ててくれた、じいちゃんに向けて歌います!」
とKENTAが口にすると、近年のライブではおなじみの
「シワの数だけ良い男だと」
という導入部分的なフレーズが繰り返され、そこにどんどん熱量が増していく。雨に濡れながらもそのフレーズを歌うKENTAの姿は本当にカッコいいロックバンドのものだなと思うし、聴いている観客たちの集中力も雨で削がれるようなものではない。それくらいに切実な思いがステージ上で言葉となって我々に向かって放たれている。
その言葉の後に演奏されたのはまさにKENTAが祖父のことを思って作った、WANIMAのメロディの素晴らしさの初期の結晶とも言えるような「1106」で、祖父への思いを込めた
「昔ながらのお菓子が好きで
いつもの席 縁側へ 陽が差すタバコの煙さえも 鮮明に覚えてる」
というフレーズたちが曲前の言葉たちによってより深く刺さってくる。最後のコーラスフレーズではたくさんの観客の腕が左右に揺れていたが、雨が降っていたことで涙が隠せたという人もたくさんいたんじゃないかと思う。
そんな感動的な「1106」から、WANIMAくらいの規模のバンドが我々に
「お前がいないと意味がないんだからな!」
と言ってくれることで、
「あなたがいれば…」
というサビのフレーズがより説得力が増す「TRACE」へと続いていく。それは昔の曲が聴きたい人がたくさんいることを考えてというよりも、今この状況の中でのこの日のライブでどの曲を演奏するべきなんだろうかということに向き合った結果なんじゃないかと思う。
でもシリアスなだけがWANIMAじゃなくて、エロさも持ち合わせていて、そのエロさがライブにおけるキラーチューンへと昇華されていることがわかるのが「いいから」であり、この曲で空手のように両腕の拳を観客たちが交互に突き出す様を見るのも本当に久しぶりだ。それはみんながWANIMAのライブを、そこで演奏されるこの曲を楽しみにしてきたということだ。
そして
「神様から返事は来ないから
真実は揺れて歪むでしょう」
というKENTAの歌い出しのフレーズが、KENTAのあまりにも伸びやかなボーカルで歌われることによって、どこか祈りであるかのようにも聴こえる「ネガウコト」へ。
「自分にとって1番大切な人を思い浮かべて欲しい。もしそういう人がおらんって言うんやったら、WANIMAでもいいけん、今日出た他のアーティストでもいいけん、思い浮かべてくれ」
とKENTAは言っていたが、フェスという場所だからこそ、自分たち以外の出演者のファンもたくさんいることがわかっていて、それを受け止めることができる。本当になんて懐が広い、優しい人たちなんだろうと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、実に久しぶりの「ともに」。歓喜して飛び跳ねまくる観客たちは、雨も疲労も完全に忘れていただろう。そういう力がWANIMAの音楽には、ライブには確かにある。そしてどんな苦しいことやキツいことがあったとしても(それはもちろんメンバーにもあり過ぎたこの2年ほどだったと思う)、最後にはここにいる全員を笑顔にしてくれる。ここからまた走り出せる、明日からも生きていく力をくれる。そんなバンドだからこそ、これからもともに、心踊る方に向かっていきたいと思えるのだ。改めて、本当にとんでもない力を持った楽曲を生み出すことができる、とんでもないバンドだと思った。
すると明らかにもう時間をオーバーしているからか、メンバーは急いでステージに戻ってきて、すぐさま演奏を開始したのは「Hey Lady」だった。KENTAもKO-SHINも全てを振り絞るかのようなテンションでハイトーンなボーカルを歌っていたが、そこにはどこか我々の声も乗っているかのような感覚があった。
それは初出演のNEW BEAT SQUAREも、翌年のSEASIDE PARKも、3年前のこのステージの大トリも。最初からメインステージであってもおかしくない存在だったWANIMAが一歩ずつ確実に上に登ってきたのを見てきて、その各ステージでこの曲をみんなで大合唱してきたからだ。
つまり、この若洲公園はこの曲があらゆる場所で響いてきた会場であるということ。そんなWANIMAにとって大事な場所だから、どこかあの時と同じようにみんなで歌っていた感覚を感じることができたのかもしれない。2年間来ることが出来なかったけれど、確かにこのフェスの歴史は途絶えることなくずっと繋がり続けている。WANIMAを最後に止まっていたこのフェスの時計と物語は、WANIMAがトリを務めたこの日についにまた動き始めたのだった。
SE.JUICE UP!!のテーマ
1.雨上がり
2.オドルヨル
3.眩光
4.リベンジ
5.つづくもの
6.1106
7.TRACE
8.いいから
9.ネガウコト
10.ともに
encore
11.Hey Lady
そんなMETROCKが3年ぶりについに開催。毎年来ていたこの会場に来るのも3年ぶりということになるが、新木場駅からシャトルバス乗り場に向かう際に新木場STUDIO COASTが跡形もなくなくなってしまったことに寂しくなる。
そうして会場に着くと、完全に雨が降っている。この会場で雨を降らすのはこのフェスの前にここでフェスを開催していた鹿野淳(現VIVA LA ROCK主催)くらいかと思っていただけに、実に珍しいようにも感じるけれど、最も来場者が多くなる時間帯が1番雨が強いというライブ開始前からの試練。
開演前には雨も上がってきていて、ライブ前にはテレビ朝日のアナウンサーが前説を行うというのもこのフェスの恒例であり、その背後に聳えるこの会場の象徴と言えるような巨大風車を見るだけで「ああ、またここに帰ってこれたんだな…」と感慨深くなる。10年以上毎年来ていた場所であるだけに。
11:30〜 キュウソネコカミ [WINDMILL FIELD]
初出演は1番小さいNEW BEAT SQUARE。そこから「メインステージに立ちたい」という思いを持って駆け上がってきたキュウソネコカミだからこそ、こうして3年ぶりの開催になったこのフェスの開幕を任されたのだろう。
なぜか吉幾三の「Dream」(CMでおなじみの「住み慣れた〜」の曲)のSEでメンバーがステージに登場すると、朝早い時間とはいえ顔立ちが実にスッキリしているように見えるヤマサキセイヤ(ボーカル&ギター)が
「この時を待ち望んでいたー!」
と叫んで、フェスでのトップバッターとしてのキュウソのライブでの1曲目としておなじみの「MEGA SHAKE IT!!」でスタートし、曲中の「ハウスミュージック」のフレーズではサポートベースのシンディ(空きっ腹に酒)含めた全員で踊り、それが客席全体にも広がっていく。オカザワカズマ(ギター)もヨコタシンノスケ(キーボード)もガンガンステージ前まで出てきて観客を煽るように演奏したりするのだが、その姿もセイヤの表情も、このフェス、この会場に戻って来れたという喜びが炸裂しているかのようである。
このライブが始まるタイミングで雨が止んでくるというキュウソのメンバーたちのポジティブなオーラによるものと思うような状況でもヨコタは
「みんなの日頃の行いが良いからだよ!」
とあくまでも我々を称えるような言葉を口にしてくれるために「推しのいる生活」の
「わっしょい わっしょい」
のフレーズでキュウソというバンドを担ぎたくなるのだ。セイヤは最後のサビ前に
「推しは推せる時に推せー!」
とおなじみのセリフを口にするが、こうしてキュウソを推せる時に推したい、ライブを見れる時に見たいと思える。
するとこのコロナ禍という状況ゆえにコール&レスポンスができない中でも観客と一緒にライブを作っていくように、最近のフェスのセトリに入ってくるのは珍しくなった「ファントムバイブレーション」では
「スマホはもはや俺の臓器」
のフレーズのリズムに合わせて観客が手拍子をするというコール&手拍子に。油断するとズレてしまいそうなリズムだからこそ、こうしてみんなで揃えるのが実に楽しいし、音や景色が壮観である。セイヤもヨコタも朝イチからこの光景を見れたことが本当に嬉しそうだった。
朝が早いのはキツいけれど、こうして3年ぶりに開催されたこのフェスの開幕を任せてもらったことを嬉しく思っているというMCはそれはそうだろう。誰もが見たいであろうこのステージからの景色を1番最初に見れるのがキュウソになったのだから。それは1番小さいステージから毎年出演してこのメインステージに辿り着き、キュウソならではのやり方でこのフェスへの愛情を表明してきたからだろう。
そんな中でこちらも久しぶりにライブで聴いたのはヨコタによる
「自分の目で確かめろ!」
というメッセージが込められたら「NO MORE 劣化実写化」で、サビでのソゴウタイスケ(ドラム)の強烈なリズムでヨコタも観客も飛び跳ねまくると、またもメンバー全員で
「海賊盤はダメダメ」
ダンスを踊る打ち込みのサウンドが流れる部分ではステージに映画泥棒が登場してかき回して走り去っていく。このやりたい放題っぷりがこのフェスにおけるキュウソの戦い方である。
そんな中で演奏された新曲「優勝」はホーンの華やかなサウンドが印象的な、でも実にキュウソらしいメロディとサウンドの曲だ。ヨコタのキーボードによってそのホーンのサウンドを補っていたが、以前にバンドとしてコラボしたスカパラホーンズとライブで共演したらより優勝と思えるものになりそうだが、今はこうしてこのフェスが開催されて、キュウソのライブをまたここで観れているというだけで全員優勝なのである。
常連出演者であるだけにこのフェスのスポンサー、主催をよく知っており、だからこそかつてはミュージックステーションのSEを使ったこともあるのだが、
「またMステとかにも出たいしなー!」
とセイヤがテレ朝にアピールすると、「ビビった」ではそのセイヤがAbemaの配信を観ている人たちにも伝わるように、めちゃくちゃカメラ目線で歌っているのがスクリーンに映し出されるのが実に面白い。TVにはそんなに出演していないバンドであるはずなのに、なんだかやたらとテレビ慣れしているかのようなパフォーマンスだ。
その「ビビった」からさらにキュウソの最大の持ち味である熱さを燃え上がらせるのは「The band」であり、こうしてこのステージに立てているという喜びが
「ロックバンドでありたいだけ」
「やっぱりライブは最強だね すぐそこで生きてる最強だね
音源じゃ伝わりきらない 細かい感動がそこにはあるからだ!!!」
などのフレーズたちに想いが乗っていく。この風車の下でキュウソのライブを観るという今まで何回も経験してきたことを、3年ぶりにようやくまた体験することができている。そこで湧き上がる感慨はやっぱりライブじゃないと伝わりきらない感動なのである。
そんなライブの締めはこの日もおなじみの「ハッピーポンコツ」なのだが、さすがそこはテレ朝というかAbema。珍しくソゴウがドラムを叩く姿を真横からカメラマンがカメラでスクリーンに映し出すと、ソゴウのカメラ目線ドラムという実にレアな場面が映し出され、さらには曲終盤のカウント部分ではヨコタもソゴウの後ろに回って2人でカメラ目線で映る。何というか実にキュウソらしい場面であるとともに、本当にこのライブを楽しんでいるのがよくわかる。ここ最近観てきた中では最も音にも演奏する姿にも喜びを感じられたものだった。
しかしそれで締めたはずなのにまだライブは終わらないというか、セイヤがいそいそと着替え始めると、かつてこのフェスで何回もやり、最終的には「リハでしかやらない」というものになった、ステージ背後に聳える巨大風車のコスプレ(という名の白タイツ姿)に。
セイヤはマイクすら持たずに「家」が演奏されると、メンバーが歌う中で踊り狂っていたセイヤにタイガーマスクが乱入して襲いかかり、なんとセイヤにジャイアントスイングをお見舞いするという爆笑のパフォーマンスに。案の定、セイヤは普段のライブ終わり以上にぐったりしていたが、これこそがやりたい放題のキュウソの極みというライブを3年ぶりのこのステージで見せてくれた。それは最高のフェスの始まりということだった。
NEW BEAT SQUAREに初出演した時に「DQNなりたい、40代で死にたい」を演奏し、満員の観客に「ヤンキー怖い」コールをさせた後、入り切らずにステージの外にいるであろう人たちに「ヤンキー怖い」コールをさせたものの、全くコールが返ってこなくて、
「これでキャパピッタリ!これ以上俺たちのライブを観たい人はここにはいない!(笑)」
と爆笑を巻き起こしてくれたが、それは悔しさも内包されていたはずだ。
その悔しさが翌年のSEASIDE PARKでのライブ時に
「来年は風車の下でやる!だから今年は俺が風車になる!」
と風車コスプレを生み出したのだ。このフェスでキュウソを観ると、そんな大きく、強く、熱くなってきたバンドの歴史を思い返すことができる。だからこそ来年からもこのフェスが開催されて、このステージに立つキュウソの姿を見ていたいのだ。
1.MEGA SHAKE IT!!
2.推しのいる生活
3.ファントムバイブレーション
4.NO MORE 劣化実写化
5.優勝 (新曲)
6.ビビった
7.The band
8.ハッピーポンコツ
9.家
12:20〜 yama [SEASIDE PARK]
初出演のアーティストは状況や規模感無視でとかくNEW BEAT SQUAREにされがちなのだが、このyamaは初出演にしてSEASIDE PARK。JAPAN JAMで初めてライブを観て感動してしまったために、裏に被りがあるこの日もライブを見ることに。
先にステージにサポートメンバーたちが登場すると、キーボードのメンバーだけがサングラスのみ。JAPAN JAMの時は口元も隠していた気がするだけに、違うメンバーだったりするのだろうか。ギター、ベース、ドラムはやはり仮面を着用する中でyamaがステージに現れると、仮面をつけているのは変わらないが、紫だったパーカーの色が白になっている。そのフードを深く被ったその佇まいは実に「カッコいい」と思えるくらいにスタイリッシュである。
そのyamaは早速イントロから観客の方をしっかりと向いて手拍子を煽る。それに続くようにギターのメンバーも手拍子を煽っていたのだが、客席に手拍子が広がっていくと、満足そうに親指を立てる仕草を見せてから「あるいは映画のような」を歌い出した。その姿は
「ずっと下を向いて歌っていた」
と語っていた過去とは全く違う人物であるかのようだ。そのキーが低めの凛とした芯の強さを感じさせる歌声は「MoonWalker」を聴いていてJAPAN JAMの時よりさらにパワーアップしているようにすら感じるのは、この間にはACIDMANとの2マンツアーがあり、そこでまた新たなライブに対する意識や経験を手に入れたのだろうと思うし、そう考えると今のyamaはかなりの数のライブをやって生きているアーティストになっている。
「雨、止みましたね。会場に着いた時は土砂降りだったんで、どうなるのかと思いましたけど、止ませましたよ。yamaだけに(笑)」
という冗談までも言えるようになるくらいにライブを楽しむ、人に語りかける余裕が生まれているということに驚いてしまうが、yamaの名を一躍シーンに知らしめた「春を告げる」もこの前半にサラッと演奏してしまえるというのも、今はもうこの曲以上のキラーチューンをたくさん持っているという自信の現れでもあるだろう。yamaのリズミカルなボーカルも実にスムースである。
再びyamaが手拍子を煽る「a.m.3:21」と、さすがにJAPAN JAMの時のセトリの短縮版という形の内容ではあるが、その中でもアッパーなタイプと言える曲が残っているというのはyamaなりのフェスの戦い方なんだろうかと思うし、そう感じるのは原曲を聴いた時には特段アッパーには感じないというか、むしろ歌い上げるようなタイプの曲だと思っていた「ブルーマンデー」に思いっきり情感を込めて歌っていたからだ。そのタイトルフレーズの一音一音で込める感情や歌の強弱を切り替えているのを聴いていると、早くもyamaはライブにおいてどういう歌い方をすれば聴いている人に響くのか?ということに答えを見出したようにも感じる。
そしてキーボードから発せられるホーンのサウンドが吹き荒れる「麻痺」ではイントロから観客の腕が一斉に上がり、
「このステージに立ってる意味を
今も忘れたくないよな」
という歌詞がそのままyamaの心境を映しているかのように響く。その歌詞を歌う際の歌唱は実にロックシンガーと言ってもいいようなものであったし、手拍子をする姿も、客席を見据えながら歌う姿も本当に堂々としている。
すると
「1年前まではライブをやるのも、やらなきゃいけないのはわかってるんだけど、どうしても前向きになれなくて。それくらい人前に立つのが怖かった。
でも人間の生きている時間には限りがあるもので、その生きている時間を私のライブに使ってくれている。その時間を同じ場所で共有している。それがライブの素晴らしさだっていうことか今はわかっている。
前はMCも一切しなかったんだけど、やっぱり観てくれてる人には自分が今思っていることをちゃんと伝えるべきだなと思ったから、こうやってMCをするようにしています」
という言葉は、やはりyamaが多くはないながらもライブを重ねてきて、ライブの景色を見てきて変わったということであり、元々がどんな人間だったのか、今はどういう人間になっているのかということがその言葉の端端から溢れ出ている。
正直、JAPAN JAMのMCが感動的だったのは昨年も出演しているあのフェスだからだろうなとも思っていたし、実際にそうした要素もあっただろうけれど、初出演のこのフェスではこのフェスでまた忘れられないであろうyamaの人間らしさを感じられる言葉を聞くことができたのである。
そんなMCの後に最後に演奏されたのは、先日まで対バンツアーをしていたACIDMANの大木伸夫が手掛けた「世界は美しいはずなんだ」。対バンをして目の前でその姿を見てきたからか、メロディの歌い方により強く大木節を感じられるようになっているし、だからこそ
「僕らは笑っていたいだけさ
僕は愛を知りたいだけさ」
というフレーズが大木が書いた歌詞であっても、今のyamaの心境そのものであるかのように響く。やはりこの日もyamaのライブで観ることができた景色は美しいものだったはずなんだ。
yamaはMC中でホールツアーを行うことを告知し、
「出来ることなら、また皆さんの時間を私に分けていただければと思っています」
と、歌っている時の堂々とした姿とは全く違う謙虚極まりない言葉を口にしていた。
自分がそのホールツアーに行きたいと思ったのは、きっとその時にはもっとシンガーとしても人間としても成長しているはずであるし、もしかしたら後にライブモンスターと言えるような可能性を秘めたyamaをその前の段階から観ていることができると思ったからだ。それぐらい、まだまだ凄まじいアーティストになれる無限の可能性を秘めている存在だと思うようになった。
1.あるいは映画のような
2.MoonWalker
3.春を告げる
4.a.m.3:21
5.ブルーマンデー
6.麻痺
7.世界は美しいはずなんだ
13:00〜 SHISHAMO [WINDMILL FIELD]
自分はコロナ禍になる前はSHISHAMOのライブを最低でも年に2回は観ることができる機会があって、その一つが夏のSWEET LOVE SHOWERであり、もう一つがこのMETROCKだった。昨年はVIVA LA ROCKでもライブを観たが、その「SHISHAMOを見れるフェス」の一つがようやく戻ってきた。それくらいにこのフェスの番人的な存在のバンドである。
おなじみの牧歌的なSEでメンバー1人1人が順番にステージに登場すると、宮崎朝子(ボーカル&ギター)のおなじみの
「METROCK東京!」
という言葉に観客は拍手で応え、そのまま1曲目から観客がタオルを振り回す「タオル」へ。メンバーのイラストなどの特別なアニメーションが流れる映像はそのままこのバンドがこのフェスに愛されてきた証でもあるのだが、イラスト内の3人のTシャツはしっかり「メトロック」というこの日仕様になっており、最後にそのメンバーのイラストとともにタオルが回りまくる客席の様子が映し出されるのは壮観である。
吉川美冴貴(ドラム)の手数がどこか増えているようにも、力強さを増しているようにも感じるのはこの状況の中でもライブを重ねてきたバンドだからこそであるが、松岡彩(ベース)が来ているTシャツが胸にデカデカと狼っぽいイラストがプリントされていて、絶妙にMAN WITH A MISSIONのグッズなのか全く関係ないものなのかわからない。
決して特別な言葉を使っているわけではないけれど、女性の抱く心情を描く宮崎の歌詞が見事な「狙うは君のど真ん中」を演奏すると、こうしてこのフェスがまた開催できるようになったことを喜びながらも、この日はAbemaでの中継もあるということで宮崎はカメラに向かって自身が盛れて映っているかを気にしたりと、メンバーの表情は実に明るくて穏やかだ。
そんな中での「きっとあの漫画のせい」ではイントロから宮崎のギターがこのバンドを完全にロックバンドたらしめるかのように冴え渡り、「真夜中、リビング、電気を消して。」もまた歌詞もメロディもムーディーでありながらもサビにかけて展開していく演奏がバンドのグルーヴの強さを感じさせてくれる。この辺りの曲は前週の大阪では演奏されなかったらしいので、こうして聴けるのは嬉しい限りである。
そうした曲も然り、近年のSHISHAMOは割とスリーピースバンドの枠に止まらないような曲も増えてきているのだが、こうしたフェスではむしろそのシンプルなスリーピースバンドとしてのダイナミズムを感じさせてくれる曲が続き、さらに「中毒」では歌詞の至る部分で宮崎の怨念を込めまくっているかのような歌唱方法が印象的だし、SHISHAMOの曲の歌詞は本当に宮崎の想いを込めたものになっているということがわかる。見た目もより大人っぽくなってきているが、そうした表現力も年齢を重ねるにつれてはるかに向上している。
こうして雨が止んだことによってこの後も最後まで楽しんでもらえるようにと観客に告げたが、本人たちも久しぶりにキュウソネコカミと同じフェスで会ったり、マキシマム ザ ホルモンと会ったりと、いろんな先輩たちとの再会を楽しんでいた様子がSNSにアップされていた。そうしたバンド同士の交流ができるようになったこともフェスが戻ってきていることを感じさせるが、そんな中で宮崎の背後から客席を向いて撮影されているリアルタイムの映像がスクリーンに映る「明日も」ではその映像に歌詞も映し出され、
「だけど金曜日が終われば大丈夫
週末は僕のヒーローに会いに行く」
というフレーズが前日まで働いた上でこの日を迎えることができた我々の心境に重なっていく。きっとSHISHAMOのライブが見れるからこそ、「もうダメだ 立ち上がれない」と思うような日常を生き抜けている人もたくさんいるはずだ。松岡も吉川もスクリーンに映ると歌詞に合わせて口が動いていて、声を出せない我々と同じようにこの曲を声を出さずに、でも歌っていることがわかる。そうした全ての要素が腕を振り上げる観客の力になっていく。
そんな「明日も」同様にスクリーンには歌詞が映し出されたのは「明日はない」というタイトルに合わせたコンボであり、「明日も」で抱いた希望や活力を
「どいつもこいつも腹立つな
言えない私も腹立つな」
とネガティブな事象をぶっ飛ばすようなエネルギーへと変換する。
「面白くもないのに笑ったりしない
悲しくもないのに泣いたりもしない
つまんない恋はしない
死にたくなるような恋がしたい」
という聴いたら頭から離れなくなるようなサビのメロディと歌詞はこのバンドの持つ中毒性を感じさせてくれるとともに、そう歌い切ることができるSHISHAMOのロックバンドっぷりを確かめさせてくれるものだった。最後にメンバーの姿が見えなくなるくらいにスモークが噴き出してきた演出はよくわからなかったが。
コロナ禍になってライブが出来なくなる前から何かと不運に見舞われることが多いように感じることもあるバンドだけれど、こうしてステージに立って輝いている姿を何にも阻害されずに見れますように。
1.タオル
2.狙うは君のど真ん中
3.きっとあの漫画のせい
4.真夜中、リビング、電気を消して。
5.中毒
6.明日も
7.明日はない
13:50〜 須田景凪 [SEASIDE PARK]
3年ぶりの開催ということで初出演組も多くなっている今回の出演者の中でも「野外フェス出るの!?」という驚きがあったのは須田景凪だろう。そもそもライブをやるようになってからの期間でほとんどフェスが開催できなくなってしまったということもあるが、これからはフェスにも出て行くという前哨戦になるだろうか。
SEもなしにサポートメンバーのモリシー(ギター、Awesome City Club)、雲丹亀卓人(ベース、Sawagi)、やおたくや(ドラム、ex.パスピエ)とともに須田景凪が登場すると、ギターを掻き鳴らすようにして性急なリズムによるダンスロック「veil」からスタートし、須田景凪の神秘的とも言えるようなボーカルがこの野外の会場に響く。雲丹亀とモリシーは手拍子を煽るように手を叩き、それが客席に広がっていくと満面の笑顔を見せる。ライブ、フェスの経験豊富なメンバーたちなだけにその姿が実に頼もしい。
さらには「レド」と、こうしてロックバンドが居並ぶフェスの流れで聴くとやはりバルーンとしてボカロPでの活動をしてきた須田景凪の作る音楽の特異性がよくわかる。そもそも家で1人だけで作っていた音楽であるだけに、こうしてライブで演奏することを想定していない音楽というか。それがこのバンドメンバーたちによる演奏によって、今目の前で鳴っている須田景凪の音楽に変換されているのだ。
「須田景凪です。フェスに出るのは2回目なので緊張しています」
というMCも実に初々しいのだが、歌声からは緊張感はほとんど感じない、以前にフレデリックの対バンとして見た時と変わらないように聴こえるのは彼の持つボーカリストとしての資質だとも言えるだろう。
ボカロ的な性急なギターロックからリズムもサウンドも変わるのはタイトルからしても情景が頭に浮かぶ「猫被り」であり、それは須田景凪がネットシーンだけではなくて広いポップシーンでたくさんの人に響く曲を作ることができるアーティストであるということを示すものでもあるのだが、それを象徴するのが
「もしかしたら次の曲は知ってくれてる人もいるかもしれない。もしいたら心の中で歌ってくれたらと思います」
と言って須田景凪が
「さよならはあなたから言った」
と歌い始めると、
「心の中で歌ってくれた?」
と問いかけてバルーンとしての立ち位置を確立させた大ヒット曲「シャルル」へ。その際に雲丹亀がモリシーのことを指差して「歌った?」みたいにしていたのが実に微笑ましいとともに、このメンバーが須田景凪の音楽を一緒に鳴らすのを心から楽しんでくれているのがよくわかる。このメンバーたちがそう思ってくれるというのは相当なことであるし、須田景凪はまだライブで観客が一緒に歌うというのを全く経験していないはず。でもこの日の「シャルル」は近い未来にこうしたフェスの大きなステージでこの曲をみんなで大合唱している光景が確かに目に浮かぶものだった。その場にいることができたらどんなことを思うのだろうか。
先日の対バンの際にはMVなどの映像も駆使して自身の世界観と曲を深く届けようとしていたが、さすがに野外フェスではそうした映像を使うことができないために剥き出しの4人のサウンドのみで挑む「パレイドリア」のボカロ由来のやおの複雑なリズムが「この4人で須田景凪というバンドである」という一体感の強さを感じさせてくれると、最後に演奏された「パメラ」の1人で音楽を作ってきた人間の孤独さを示すような歌詞が、今ではこんなにたくさんの人とその孤独を共有しているかのように響いた。それは須田景凪がこうしてフェスに出ることによって、これまでよりもさらにたくさんの人と繋がることを選んだかのように。
直前に出演したyamaもそうだが、ネットシーンから出てきた存在であるだけに、本人はもちろんそのファンの人たちもフェスに来たことがないという人だってたくさんいるはず。自身のライブ後に雨のパレードのライブを須田景凪が観て体を揺らしていたように、アーティスト本人がこうして出演することでフェスを楽しんでくれて、そのアーティストを観にきた人たちがフェスでいろんなアーティストのライブを観て、フェスやライブが好きになってくれたならそんなに幸せなことはないし、彼らがフェスに出るという選択をしたことにもさらに大きな意味が生まれると思うし、これから彼らがそうしたファンの人たちと一緒にどうやってフェスのステージを駆け上がっていくのかが実に楽しみになる。
1.veil
2.レド
3.猫被り
4.シャルル
5.パレイドリア
6.パメラ
14:30〜 打首獄門同好会 [WINDMILL FIELD]
去年も開催することができたフェスには軒並み参加していたが、今年は開催することができずに出演出来なかったたくさんのフェスの鬱憤を晴らすかのように昨年以上にあらゆるフェスに出演しまくり、しかもそのフェスのほとんどでメインステージに立つのが定着した、打首獄門同好会。このフェスでもメインステージに出演である。
VJも含めたメンバー3人がステージに現れると、このWINDMILL FIELDには巨大スクリーンが設置されているのだが、ステージにもバンドがスクリーンを持ち込んでおり、そこに曲の歌詞が映し出される「新型コロナウイルスが憎い」から始まるというおなじみのオープニングで、大澤会長(ボーカル&ギター)の歌唱にjunko(ベース)と河本あす香(ドラム)のコーラスが重なっていく。
「今年はちょっと違う予感 (個人の感想です)」
という歌詞に変えることによって確かな希望を感じさせると、終盤に演奏されることも多い、ファミコンなどのレトロゲームが恋しくなる映像の「きのこたけのこ戦争」が早くもここで演奏されると、
「きのこでもたけのこでも、お菓子を食べた後にはちゃんと歯を磨けよー!」
という実に上手い繋ぎから「歯痛くて」へ。Dr.COYASSは登場しなかっただけに大澤会長がラップ部分も歌唱するのだが、世の中に溢れる「会いたい」系ソングのフレーズを引用しまくって、全て「歯痛い」「歯医者に会いたい」という歌詞にしていくという会長の発想力は何回聴いても本当に素晴らしいと思う。
すると「このステージの出演者を雑にいじるコーナー」が急にスタートし、フォーリミ「monolith」のメロディで
「いつからだ令和」
とキュウソの「ギリ昭和」のフレーズをマッシュアップさせたかと思いきや、ホルモン「my girl」の「VA・GI・NA」を「WANIMA」に変えて歌うという本当に雑ないじり方をする。ちなみにSHISHAMOはさっき初めて挨拶したくらいに面識がないために迂闊にいじれないということで、この時はまだいじらなかった。
温泉街の写真がどうしても温泉に行きたくなるというのは曲の意図する通りで、サビではいらすとやの地味なイラストが映し出される新曲「地味な生活」もまたこうしたコロナ禍での我慢を強いられるような生活から早く戻れるようにという祈りを込めるようだった。個人的には
「近所のラーメン屋ローテーション」
というフレーズに共感しまくらざるを得ない。
しまじろうをはじめとしたキャラクターがたくさん登場する映像が何回見ても可愛い「カンガルーはどこへ行ったのか」での「考えることを」のフレーズの連呼で観客が腕を振り上げまくると、ここでシークレットゲストとして何とレキシがステージに登場。
「ガウガウ!ステージで転んじゃうな(笑)」
「レキシシャモです!(笑)」
など、フェスが久しぶりで楽しくて話が止まらないレキシをVJが時間がなくなってきているブザーを鳴らして警告すると、レキシが刀でVJを斬り殺すという寸劇までも行われる。
その刀はレキシが新撰組の格好をしているから持っていたものであり、レキシの最新アルバムで打首とコラボした(レキシネームは「ぼく、獄門くん」)「鬼の副長HIZIKATA」を演奏するのだが、やはりレキシが
「ジュンちゃ〜ん」
と話しかけたりしてまだ曲が始まらないというレキシっぷりを遺憾なく発揮しながらようやく演奏が始まると、肘と肩で土方というレキシの天才すぎる発想力による、打首の要素を含みまくった曲の内容で観客を笑わせまくるが、
「勇!勇!近藤勇!」
の三三七拍子は完全に「島国DNA」のオマージュであり、レキシからの打首愛が炸裂している曲とも言える。
あまり長居し過ぎると確実に時間が押すからか、曲が終わるとレキシはすぐにステージを去り、肩や肘に加えて膝も出てくる「鬼の副長HIZIKATA」の後に演奏されたのは、普段前半に演奏されがちなので、今日はもう演奏されないだろうと油断していたらここでスクワットをすることになる「筋肉マイフレンド」。もうやなきゃしょうがないなと思うのはメンバーはもちろん、袖にいるスタッフまでもがスクワットをしていたからで、さすがにこれで我々がやらないわけにはいかない。まだ朝イチやトリじゃなかったのを喜ぶべきだろうか。
そして「鬼の副長HIZIKATA」でもオマージュされていた「島国DNA」で三三七拍子を打ち鳴らすのだが、なんとここでSHISHAMOを連発するという恐るべき発想力。確かに魚であるが、いじらないと言っていたのはこの演出のためだったことがわかる。もうつくづく恐ろしいバンドである。
そうして驚かされまくりのライブの最後には、
「雨が降ってライブを観るコンディションとしては良くないかもしれませんが、田植えのコンディションとしては最高です!」
と雨を歓迎しながら、今年の大豊作を願って「日本の米は世界一」が演奏されたのだった。
もはやこのバンドは四星球と並ぶ天才の集団なんじゃないかとすら思う。その日ならではのアイデアを自分たちの音楽と表現に完璧に落とし込んで、それが我々観客に驚きと喜びを与えてくれる。もう生活密着型ラウドバンドどこの存在ではなくなってきている。
1.新型コロナウイルスが憎い
2.きのこたけのこ戦争
3.歯痛くて
4.地味な生活
5.カンガルーはどこに行ったのか
6.鬼の副長HIZIKATA w/ レキシ
7.筋肉マイフレンド
8.島国DNA
9.日本の米は世界一
15:20〜 雨のパレード [SEASIDE PARK]
前週の大阪にも出演していたが、コロナ禍になって以降はこうしてライブを観る機会がほとんどなくなったイメージがある、雨のパレード、大澤実音穂(ドラム)のバンド外での活動はよく目にしているけど、こうしてライブを見れる機会も貴重なものだ。
メンバー3人がステージに現れると、ステージ奥にはサポートベーシストの姿が。メンバー脱退後に3人になった直後はサポートを入れずに3人だけでライブを行っていたのを観たが、それも変わっているというか、バンドは確実に新しい方向へ向かっているのがわかる。
それはバンドの雰囲気からも感じることであり、上手側にセッティングされたセットを叩く大澤は今はスポーティーなカッコいい女性というような出で立ちになっており、何よりも福永浩平(ボーカル)が登場した瞬間から晴れやかな表情を見せるようになっており、バンド全体としての雰囲気やイメージがかなり変わったことがすぐにわかる。山崎康介(ギター&シンセ)の長い髪型は全く変わっていないけれど。
そのイメージの変化は楽曲にもモロに現れており、1曲目に演奏された、昨年リリースの配信シングル「Override」はEDM的な要素も取り入れたダンスサウンドで、歌い出しが
「真っ青な空に灼熱の太陽
汗が白いTシャツを濡らす」
という、歌詞だけを見たら雨のパレードのものとは思えないものである。しかしながらそれはこうした野外フェスの解放感に似合うバンドに変化してきているということでもある。福永が笑顔で踊るようにしながら歌っており、もはや雨よりも太陽が似合うバンドと言っていいかもしれない。
それは同じく昨年リリースの配信曲「ESSENCE」もそうであり、抜本的なバンドの変化を確かに感じる。サウンドからしても内省的なダンスミュージックから、観客を踊らせるような陽のダンスミュージックに変化しているというか。
福永の
「池ちゃん(レキシ)が出てきて、喋り過ぎて時間押したからみんながこっちに来るのが遅くなったって聞いた(笑)」
という笑わせるようなMCからもその変化を感じるが、レキシと打首は時間自体は押していないけれど、NEW BEAT SQUAREの羊文学が入場規制がかかって入れなかったことによってこのステージに行くことにしたであろう人もこの辺りからたくさん増えてきていた。
このメトロックは正式名称は「TOKYO METROPOLITAN ROCK FES」であり、そのタイトルのフェスにピッタリな「Tokyo」は今のスタイルになる前の雨のパレードの代表曲の一つと言っていい曲であり、その歌詞と内省的なダンスミュージックのサウンドがこうして我々が今いる「東京」という場所に精神的に向き合わせるかのようだ。やはりこの曲を聴くと「雨のパレードだな」と思う。
しかしそんな感覚を軽やかに裏切ってくれるのは、きっとテレビやラジオなどでこの曲を聴いたことがあるという人も多いであろう「Summer Time Magic」で、なんだかこのバンドはもはや夏もこうした野外フェスで、太陽の下で見るのが実に似合うんじゃないかとすら思えてくる。そんなことを思うなんてこのライブを観るまでは全く想像していなかったことである。
そして大澤がデジタルドラムを叩くのは最新曲の「first step」で、雨のパレードの中で最もこの春フェスという時期にふさわしいとすら思える曲になっており、山崎もシンセを操るのであるが、福永の穏やかな表情で体を揺らしながら歌う姿は今のバンドが自分たちのやりたいことを追求できているという自信を感じさせるものになっている。
だからこそ最後に演奏された「BORDERLESS」を聴いていて、変わったんじゃなくて、元から自分たちのやりたいことに線を引くことなくチャレンジしていくバンドだったということを思い出した。だから変わったというよりも、ただ自分たちが今やりたいことをやっている結果として我々がそう感じているだけであるというような。
「指差されたっていい 笑われたっていいぜ
今の自分の姿
見せつけろよ」
というこの歌詞の通りであるし、だから売れるために変えたとかいう感じも全くしないし、ライブ自体の良さもこの日のこのステージのトリであるMy Hair is Badらとライブハウスで凌ぎを削っていた頃と同様、いや、それ以上だ。まだこれからの予定も全然決まってない(ライブ予定もサカスプしかない)らしいけれど、雨のパレードはこの状況の中でも確実に前進している。
1.Override
2.ESSENCE
3.Tokyo
4.Summer Time Magic
5.first step
6.BORDERLESS
16:00〜 04 Limited Sazabys [WINDMILL FIELD]
YON FESが終わっても各地の春フェスに軒並み出演している、フォーリミ。初出演時は1番小さいNEW BEAT SQUAREだったのが、今は東京、大阪ともにメインステージを担う存在になっている。
おなじみのSEでこの日もメンバー4人が元気いっぱいに登場すると、
「3年ぶりのMETROCK!この曲からスタート!」
とGEN(ボーカル&ベース)が言っていきなりの「swim」でHIROKAZのギターのキャッチーなサウンドが響き、KOUHEI(ドラム)のツービートが疾走してRYU-TA(ギター)は「オイ!オイ!」と煽りまくり、観客はみんなこの会場の中を泳ぐように腕を動かすのだが、GENは最近の中ではこんなにキツそうな声の状態があっただろうかと思うくらいにハイトーンを出すのがキツそうで、最後のサビでは歌いきれない部分さえあった。どうやら喉にくるタイプの風邪気味だったということだが、それが不安に感じるというあたりに逆に近年のGENの声の安定感を実感する。
やはりRYU-TAがイントロから観客を煽りまくる「Kitchen」ではリズムに合わせた観客の手拍子もバッチリ決まり、こんなに大きな会場でパンク・メロコアサウンドを鳴らしているフォーリミこそがここにいる人たちにとってのヒーローであるということを示すようにKOUHEIのドラムが疾駆する「My HERO」、さらには他のどこでもなく、今ここを示してくれるかのような「Now here, No where」と、テンポ良く次々と曲を演奏するというのはパンクバンドとしてのフォーリミのスタイルだ。しかも他のフェスともまた演奏する曲を変えているのだから、どんなフェスでも見逃すことはできない。
こうした場所があってくれること、このフェスの10周年のうちの半分くらいをともにしてきたことを少し感慨深げにGENが口にすると、「monolith」のフォーリミらしさを今のバンドで再定義するような「fade」が演奏されるのだが、両A面シングルのうち、この曲と「Just」はフェスなどではどちらかしか演奏されない傾向が強いためにどうやってそこを決めているのかも気になるところである。
おなじみの「fiction」でHIROKAZも観客を煽りまくり、ハードなサウンドとしてのフォーリミが顔を出したかと思いきや、RYU-TAのイントロが妖しげな雰囲気を醸し出す「mahoroba」と目まぐるしくサウンドが変化していき、それがそのままフォーリミのパンクバンドでありながらも様々なタイプの曲を作ってきた引き出しの広さを感じさせるのだが、ここで最も意外だったのはワンマンでしかやらない曲だと思っていた「Milestone」が演奏されたことである。そのメロディの美しさはこれからもこうしたフェスでも定期的に聴けたらなと思うものであるのだが、それはそのまままたいろんな会場でフォーリミのライブが見れるように、そしてこの曲が聴けたらという、夢が醒めないままだということだ。
この会場を好きな理由として
「蟻がデカい」
ということを挙げたGENは、かつてこのフェスでキュウソのライブを観ていた時に「ハッピーポンコツ」の最後のサビ前のキメのタクロウの見せ場でスクリーンに空を飛ぶ飛行機が映し出されていてタクロウが可哀想だったというエピソードを挙げると、
GEN「あの橋は何?」
KOUHEI「東京ゲートブリッジ」
GEN「橋の向こうは海?じゃあ水平線か」
RYU-TA「back numberだな(笑)」
GEN「地平線じゃないんなら曲の繋ぎが変わってくるな…」
と他のバンドをいじりながらも、本当は地平線に絡めたMCをしてから入りたかったのであろう「Horizon」を演奏し、GENのボーカルはこの曲では歌いきれないこともなく、まさにゲートブリッジの奥に伸びる水平線に向かっていくかのように伸びやかに響き、さらにはタイトル通りのフォーリミの甘いメロディとサウンドを堪能させてくれる「milk」…もはやフェスのセトリとは思えないくらいの振れ幅であるが、それはこのフェスで春フェスと言える時期ももう終わりを迎えるだけに現状の総決算的な意味合いもあったのかもしれない。ワンマンをやらなくてもこれだけの曲を演奏できる状態にあるというのがフォーリミがライブバンドたる所以である。
初出演時は自分たちが最若手だったという回想から、今はちょうど中堅くらいの位置になってきており、後輩も増えてきているという話をすると、
「Crossfaithのこいちゃん(Koie)とカラオケしてて、Saucy Dogの慎ちゃん呼んで「シンデレラボーイ」歌わせて、マイヘアの椎木呼んで「卒業」歌わせた(笑)
自分が先輩にカラオケ呼ばれて「swim」歌わされたら「は?」ってなるのに(笑)」
という自身が嫌な先輩になってきているというトークをするのだが、その後輩たちをみんなYON FESに呼んでいるのだから、やっぱりフォーリミは良い先輩であるし、
「俺は音楽に救われたと思ってるから、俺の音楽で誰かの救いになることができたら」
と言ってくれるのだから、我々にとっても救いでしかない。こうやって今年もYON FESを始めとしたいろんな場所でフォーリミのライブを観ることができることで、確かに救われているのだから。
そんな思いを音楽に込めるように、
「なりたい自分自身に生まれ変われ!」
と、KOUHEIの強靭なビートが牽引する「Squall」を演奏してクライマックスへと向かうと、
「METROCK、この曲知ってるやつ何人いんだよ!」
と言ったGENが思いっきり振りかぶってイントロを鳴らし、RYU-TAが
「METROCK、かかってこいやー!」
と叫んだ「monolith」は何人どころじゃなくて、ここにいた何万人もの人はみんなこの曲を知っていたはずだ。またこの曲でこの会場で激しいサークルモッシュが見られたりするのだろうか、とも思うのだが、3年前にはサークルモッシュが禁止されたことによってフォーリミのライブでも色々あったことなんかを思い出したりしていた。
さすがにこれで終わりかと思いきや、
「METROCK、また来年!ちょっと先の未来からの、メッセージ!」
と言って最後にツービートが炸裂するメロコアショートチューン「message」までをも演奏するという、フェスとは思えない内容のセトリに。
それはYON FESを終えても他のいろんな場所のフェスで常に100%以上のものを見せるというフォーリミのライブバンドとしての姿勢そのものだ。初出演時にすでにYON FESを開催しているくらいの存在であり、「なんでこの1番小さいステージなんだよ…」と思いもしたが、あれがあったからこそ、今こうしてメインステージに立ち続けるようになったこの姿を本当に頼もしく、感慨深く感じられる。そんなフォーリミの背中を見ているバンドたちがきっと1番小さいステージからこのステージまで駆け上がってくるはず。ただ年数を重ねて中堅になったわけじゃない。やっぱりフォーリミはロックシーンのヒーローなのである。
1.swim
2.Kitchen
3.My HERO
4.Now here, No where
5.fade
6.fiction
7.mahoroba
8.Milestone
9.Horizon
10.milk
11.Squall
12.monolith
13.message
16:50〜 -真天地開闢集団- ジグザグ [NEW BEAT SQUARE]
それこそこの日出演した中だとフォーリミもWANIMAもマイヘアもキュウソも初出演はNEW BEAT SQUAREで、最初から満員だったとはいえ、回を重ねるごとにステージを大きくしていった。そんなNEW BEAT SQUAREに初出演するのは、若手と言っていいのかわからないような異質な存在のバンドである-真天地開闢集団- ジグザグである。
フォーリミが終わってからダッシュで向かうとすでにステージにはサポートギターとともに影丸(ドラム)、龍矢(ベース)、そして異界からやってきたかのような荘厳さを感じさせる、衣装も髪色も肌も真っ白も命(ボーカル&ギター)が立っており、その見た目通りの壮大なメロディを歌い上げるような「忘却の彼方」を演奏し、このフェスの空気を一気にV系と言えるかのようなものに変えてしまうのだが、歌い終わると命は
「想定外のことが起きている。「忘却の彼方」のサビで「ア〜、ウ〜」って他のステージのマイクチェックの音が入ってきて、歌詞を忘却してしまうところだった(笑)」
と笑わせつつ、
「完全にアウェーだと思ってたから、こんなにたくさん来てくれるなんて思ってなかった!そんなお前たちは可愛い!キツネみたいに可愛い!でも俺たちも可愛い!(笑)」
と言って打ち込みの音も使って、さながらカラオケみたいな歌唱によって始まる、音源を聴いた時に「何だこの曲!?」と笑ってしまった「きちゅねのよめいり」を演奏し、龍矢は踊るようにしながらベースを弾き、影丸は片手でスティックを振りながら片手でドラムを叩くという言葉通りの可愛さを発揮。命は事前に(割と適当に)振り付けをレクチャーしていたとはいえ、観客が完全に振り付けを踊れていることに
「何でこんなに完璧にできてんの!?(笑)」
と驚いていたが、この日はこのバンドのグッズ(デザインが異様にカッコいいので実に目立つ)を纏った人たちも朝からたくさん会場にいた。それはジグザグがすでに「このバンドが出るんなら見たいからフェスに行こう」と思うようなファンをたくさん抱えているということだ。その人たちがジグザグの出番の時間帯だけじゃなくて、朝早くから来て他のバンドのライブも観ているというあたりにこのバンドのファンの方々がフェスの楽しみ方を熟知しているということがわかる。
それは
「もうその辺にゴミが落ちまくってる!」
と言ってから演奏された「ゴミはゴミ箱へ」で、最後の「G・O・M・I」を体を使って文字で表現するのを観客も完全にできているのを見て、
「なんで出来るねん!(笑)」
と突っ込まざるを得ない状態になっていたことからもわかるが、この辺りでこのバンドが「サウンドはラウドだし見た目はとっつき難い感じもするけど、実はめちゃくちゃ面白い人たち」であるということがわかってくる。
それでも命がギターを弾きながら歌うバラード曲「Promise」はいかにもV系バンドのバラード曲というような壮大なものであり、ラウドな曲ではデスボイスを上手く使い分けているのだが、そもそもの歌唱力がズバ抜けていることがわかる。ただ面白いだけではなくて、ちゃんとバンドとしてのスキルを持っているのがわかるというのは「復讐は正義」におけるリズム隊のラウドな重さからも伝わってくることであるし、それに応える観客の髪を振り乱しまくるヘドバンはこのフェスにおいてこのバンドがいなかったら絶対に観ることが出来なかったノリの凄まじさである。
そして体感的に本当にあっという間のラストは命が
「色々振り付けあるんですけど、もうわからんかったらずっと腕あげたりしていてください」
と明らかに時間がなさそうにして始まった、美しいメロディに実はコミカルな歌詞が乗るというこのバンドらしさの極みとも言えるような「燦然世界」で、自分のように気になってはいたけれど初めてライブを見たというような人に強烈なインパクトを植え付けた。それは演奏後に「力を使い果たして動けない…」的なことを言ってメンバーに後ろから体を押されてなんとか歩き出すも、袖の近くまで行くといたって普通に歩いていたという退場時のパフォーマンスも含めて。
命は以前読んだインタビューでこうしたスタイルのバンドになったことを、
「普通にやってても全然ライブ見てくれる人が増えなくて。それならもう売れなくてもいいし、V系じゃないって言われてもいいから、最後にひたすら自分が好きなように、やりたいことをやろうとして面白い曲を作ったりしたら、売れなくてもいいやって思ったのに急に人気が出てきてしまった(笑)」
と言っていた。それは元からこうした音楽、こうしたバンドをやるべきタイプの人間だったのが、自身の資質や性質に相応しい表現をするようになったということだ。だからこそ一切のカッコつけや背伸びがなく、自分のやりたいことをやっている結果として聴き手を最大限に楽しませてくれるものになっているということが見ていてわかる。
何よりもラインナップ的に本人たちが口にするくらいに完全に異質、アウェーな感じがするのに全くそうはならなかったのは、この日は打首獄門同好会やマキシマム ザ ホルモンも出演しており、そのバンドたちのTシャツを着た観客もたくさんいたように、そうした「ラウドな音を鳴らす面白い人たち」という、確かに通じるものを持っているバンドだからだ。自分がハマってしまいそうな気がして怖くなっていた。
1.忘却の彼方
2.きちゅねのよめいり
3.ゴミはゴミ箱へ
4.Promise
5.復讐は正義
6.燦然世界
17:50〜 マキシマム ザ ホルモン [WINDMILL FIELD]
今年も去年に続いて「呼んでくれるならどこでも出る」というようにフェスが開催されていて、そこに出れる、ライブができる喜びを感じているであろう、マキシマム ザ ホルモン。軒並み春フェスに出演してきて、このフェスにも帰還。
おなじみの賑やかなSEでメンバーがステージに登場すると、ダイスケはん(ボーカル)がおなじみの津田製麺所の台の上に立ってタイトルコールをしたのはなんといきなりの「恋のメガラバ」で、超満員の観客が早くも踊りまくる中、スクリーンには「こんなに使って大丈夫?」と思うくらいの人気アニメの映像が流れまくる。もうこのスタート時点で完全に反則レベルである。
今年はそうしてあらゆるフェスやイベントなどに出演し、その中で演奏する曲を変えまくるという形で腹ペコたちの空腹を満たしてきたホルモンであるが、そんな中でも毎回演奏されているのはやはりスクリーンにアニメーションなどの映像が次々に映し出されるだけに視線が忙しくなる「maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜」であり、打ち込みパートではマキシマムザ亮君(ボーカル&ギター)と上ちゃん(ベース)が体を揺らす中でナヲ(ドラム)がステージ前に出てきて踊りながら歌い、ドラムセットに戻ると寄り目になりながら歌うというおなじみのパフォーマンスに。
そんなナヲはこのフェスおなじみみたいな顔をしているが、実は出演はまだ2回目であることを告げるのだが、前回出演時にはトリのPerfumeのライブに乱入して一緒に踊ったという、間違いなく10年の歴史の中でトップクラスの名場面だった前回出演時のエピソードを語る。合成かというくらいにPerfumeの3人と顔の大きさが違っていたということも。
そうした挨拶にしては強烈すぎるMCから、亮君と上ちゃんによる呪術的なボーカルによって始まるのは先ほどの「II」に比べるとライブで聴くのが実に久しぶりな感じがする「maximum the hormone」なのだが、サビでのギター、ベース、ドラムという他のバンドと同じ楽器を使っている、かつ最小限の楽器のみの演奏とは思えないくらいの破壊力の凄まじさたるや。このあまりにも急激な展開の激しさも含めて、ホルモンの凄さを改めて感じさせてくれる。
そんな中でダイスケはんはまだ観客が声を出して一緒に歌うことができない中だからこそ、一緒に歌ってくれる人を招いたと言うと、なんとステージに現れたのは先ほどライブを終えたばかりのフォーリミのGENであり、かつてフォーリミを始める前、学生時代からホルモンのツアーに観客として参加していたというGENはこのステージまで
「スキップ100歩でやってきた」
と曲の歌詞を引用すると、そのフレーズがある「ROLLING1000tOON」を、まさに我々の延髄を突き割るような破壊力のサウンドで演奏し、GENは音源ではナヲの歌うその「スキップを100歩〜」からのフレーズをむしろピッタリな自身のキーで歌い、サビでは亮君とのツインボーカルという形に。まさかここでこんなコラボが見れるとは思っていなかったが、それはやはりフォーリミのライブもホルモンのライブも見逃すことができないものだということだ。
さらには重いイントロのサウンドで観客がヘドバンしまくる「ロッキンポ殺し」、この「フェスでのホルモンのセトリらしいセトリ」の中で並ぶと異質さが際立つ「恐喝 〜kyokatsu〜」と、何がどうなったら今になってこんなセトリになるんだという凄まじいまでの連打っぷり。JAPAN JAMでは「糞盤」期の曲がたくさん聴けて嬉しさと懐かしさを感じたりしていたが、それとも全く違う内容になっている。それはホルモンが一本一本のフェスのライブを自分たちにとっても観客にとっても特別なものにしようという意思の現れである。
しかしMCでは
ダイスケはん「今日、会場に入ったら、このステージから我々の曲の音が聞こえてきました!」
ナヲ「すぐ回覧板回ってくるからね!」
ホルモン「打首が我々に許可なく勝手に演奏してました!」
と、自身の曲を演奏していた打首を愛あるいじりをすると、その打首がわずかにカバーした「my girl」の本家バージョンで再びスクリーンには曲に合わせた映像が流れるのだが、思えば2011年の大雨のこの会場でのROCKS TOKYOでずぶ濡れ、泥だらけになりながらみんなが「VA・GI・NA」のフレーズを大合唱していた。それはこの会場のフェスにずっと来続けてきたからこそ思い出せるものであり、今は声を出せないけれど、またあの頃みたいにみんなで最高に下品極まりないこの曲を大合唱したいなと思う。
さらにさらに「ぶっ生き返す!!」でメンバーの演奏と歌唱も完全に最高潮に達しているのがわかるのは、サビで観客が飛び跳ねまくっていたことによって、この会場だけ地震が起きているかのように地面が揺れていたからだ。これだけの状況を生み出し、感情が昂りまくりながらも、決してモッシュを起こしたりすることがない腹ペコたちは本当にさすがだ。ホルモンのメンバーたちが願っていた「ライブをする場所を取り戻したい」という意思を全員が共有しているからこそ、無法者的に楽しむんじゃなくて、しっかりルールを守った上でライブを楽しんでいる。またすぐにホルモンのライブを見れる場が訪れるように。
意外なくらいに曲数を連発したということは、それだけ時間も使っているということであり、実際にもう押しているということをナヲが口にするのだが、
ナヲ「東京と大阪合わせても持ち時間押したのは今年はジャニーズWESTだけらしいよ」
ダイスケはん「じゃあ俺たちジャニーズ枠だから時間押しても大丈夫やん!」
と、逆に開き直るかのように再び喋りまくりながら「恋のおまじない」を一発で決めてから最後に演奏されたのは「恋のスペルマ」で、サークルモッシュをすることができないからこそ、ダイスケはんをはじめとしたメンバーも含めての「その場で1人サークルモッシュ」という、ただそこで一人でグルグル回るだけというパフォーマンスも行われ、やはり映像が気になってスクリーンを見てしまう中、去年自分が見たホルモンのライブでは毎回こうしてこの曲を最後にやっていたことを思い出していた。
それはこの曲のMVの「この曲がフェスで演奏された時の盛り上がり方講座」というメンバー実演のバカバカしい、でもコロナ禍でモッシュなどが出来なくなり、声も出せなくなったことで再現出来なくなってしまったものを再び自分たちで取り戻すためにこの曲を最後に演奏していたんだろうなと思っていた。
で、それは去年この曲を聴いていた時よりも確実に近づきつつあるという感覚が確かにある。それはホルモンと腹ペコたちが自分たちの今までのライブの楽しみ方を変えてまで守ってきたものがあったからだ。今のホルモンのライブと腹ペコたちの姿からはそんなことを感じることができる。東京で時間を押した最初のアーティストはやはりホルモンだった、というくらいに時間押していたけれど、それもやはりフェスのホルモンが帰ってきたということなのだ。
1.恋のメガラバ
2.maximum the hormone II 〜これからの麺カタコッテリの話をしよう〜
3.maximum the hormone
4.ROLLING1000tOON w/ GEN
5.ロッキンポ殺し
6.恐喝 〜kyokatsu〜
7.my girl
8.ぶっ生き返す!!
9.恋のスペルマ
18:50〜 My Hair is Bad [SEASIDE PARK]
前回出演時(2018年)同様にSEASIDE PARKのトリ。でもあの時と今では全く状況が変わった、My Hair is Bad。こちらも各地の春フェスに出演してきたが、この日が今年の春を惜しむ日になるということだろうか。
完全に夜になって真っ暗なこのステージに登場するというのはトリの特権であるが、おなじみのSEで3人が現れて気合いを入れるようにすると、
「新潟県上越市、My Hair is Badです。METROCK、ドキドキしようぜ!」
と椎木知仁(ボーカル&ギター)が言って「アフターアワー」からスタートし、間奏では笑顔を浮かべながら山本大樹がステージ前まで出てきてその重いベースの音を響かせるのだが、今のマイヘアのフェスの規模感からしたら小さめとすら言えるステージであるだけに、激しいシンバルの連打をする見せる山田淳(ドラム)含めて、3人の表情が実に穏やかなのがよくわかる。JAPAN JAMの時もそうだったが、バンドにとって新たな挑戦を果たしたのがストレスとなっているのではなくて憑き物が落ちたかのようにスッキリしたものになっているのかもしれない。
そのまま「ドラマみたいだ」へと続くのはおなじみの流れだが、椎木は軽やかに飛び跳ねながらギターを弾く姿もやはりどこか開放感に満ちているように感じるのはこの野外の夜というシチュエーションもあるのかもしれない。
「この時期の、こんな曇天の空の時にできた曲だった」
と言って演奏されたのはミュージックステーション出演時に披露された「真赤」で、すでに今年の春になってから何度もライブで聴いているが、その中でも最も夏の匂いがした。それはもちろんこの曲を聴くたびに夏が近づいてきているからだ。
さらに「熱狂を終え」で椎木のギターが一気に加速していくと、観客の腕が振り上がりまくる。熱狂を終えているどころではなくて、今まさに熱狂の真っ只中に我々がいるかのような。
するとJAPAN JAMの時は演奏されなかった「フロムナウオン」のギターを椎木が掻き鳴らすと、
「これから俺が歌うのは曲でもなければMCでもない、ラップでもない、全て俺の即興!今ここで出てきた言葉!」
と「フロムナウオン」がどういうものかを軽く説明したのは今初めてマイヘアのライブを観ている人がたくさんいるだろうということへの配慮であろう。
「サブスクでもMステでもない、目の前にいるのが最新の、本物のMy Hair is Badだ!
曇り空だけどみんなの心を晴らしに来ました!」
と叫ぶと、ここから次々に言葉を重ねていき、
「俺は弱いから、弱い奴の気持ちがわかる!」
とも口にする。男女のラブソング的な歌詞があまり好きではない自分が、そうした曲も数多いマイヘアの音楽に惹かれるのは椎木が自分のようなやつの気持ちがわかるからなのかとも思う。何回もライブを観ていても、今になってそうしたことに気づかせてくれる。それが椎木の言葉の、マイヘアの「フロムナウオン」の力である。
そうして「フロムナウオン」で秘める感情を爆発させると、山田のドラムを筆頭にそのまま3人が向き合うようにして爆音を鳴らし始める。それは「戦争を知らない大人たち」のイントロなのだが、JAPAN JAMでは演奏されていなかったこの曲を演奏したのはこのライブが曲のMVと同様に夜であるという要素が大きいとは思うけれども、もはや戦争を知らないとは言えない状況に世の中がなってきているということも間違いなくあるだろう。「フロムナウオン」でこの日も椎木は
「1番大切なのは、睡眠です!」
と言っていただけにこの曲のサビの
「Good night」
というフレーズがこのライブが終わったら、この日のフェスが終わったらしっかり睡眠を取るように、と言っているかのようですらある。
そして最後に演奏されたのは最新アルバム「angels」のリード曲である「歓声をさがして」で、それは実にマイヘアらしいメロディとサウンドを持ったこの曲が新しいマイヘアの代表曲になっていくということを示すようでもあり、
「大好きばっかり見つけに行きたい」
という歌詞の通りにこれからもこうやってマイヘアが立ついろんなライブを見に行きたいと思えるものにもなっていたのだ。そうしたところに行くたびにその日にしか見れないものを見せてくれるのがわかっているから。
もうなかなかこれから先は今までのようにライブハウスでもチケットが取れるというわけではなくなっていくのだろうけれど、新しい挑戦を果たしたという意味では忘れられない2022年のマイヘアの春は総じて穏やかだった。
1.アフターアワー
2.ドラマみたいだ
3.真赤
4.クリサンセマム
5.熱狂を終え
6.フロムナウオン
7.戦争を知らない大人たち
8.歓声をさがして
19:40〜 WANIMA [WINDMILL FIELD]
今年の前に最後にこのフェスが開催されたのは2019年。その2019年に大トリを務めたのがWANIMAであり、つまりは今年開催出来なかったまでの間、最後にこのフェスでライブをやったのはWANIMAだったということである。そんなWANIMAがこのフェスに戻ってきて、初日のトリを務める。
この開始時間の直前になって雨がまた降ってくる中で「JUICE UP!!のテーマ」のSEでメンバーがステージに登場すると、KENTA(ボーカル&ベース)が
「ええ?みんななんでこんなに残ってるの?」
とでも言うような顔をしながら歩いてきて、なぜかその後にFUJI(ドラム)を追いかけ回しはじめ、追いかけ回されたFUJIがドラムセットに座るとKENTAもマイクの前に立ち、サングラスをかけたKO-SHIN(ギター)がリズムを刻む中、
「雨は最悪仕方ないでしょう!でもあなたの心は晴れますように!」
といきなりの「雨上がり」で徐々に強くなってきている雨の影響を忘れさせるくらいに飛び跳ねまくらせてくれる。それくらいに最初からもうWANIMAの空気に、この3人のオーラに会場が塗り変わっている。FUJIの破壊力抜群のドラムも、KENTAの声の伸びも素晴らしいし、ステージ背面にはバンド名の巨大な電飾が光るというのはやはりトリを務めるバンドとしての特権だろうか。
「METROCK、どんな夜にしたい!?」
と問いかけると、もちろん観客がその飛び跳ねまくる姿で示すのは、この夜を「オドルヨル」にしたいということであり、WANIMAがこの日のトリをやってくれて本当に良かったなと思うのは、寒いなんて思う暇が全くないくらいに我々の体を熱くしてくれるからだ。
そんなWANIMAはコロナ禍にあっても新たな曲や作品を作り続けており、ここで披露されたのはリリースされたばかりのストレートなロックナンバーの「眩光」。歌詞はKENTAの、単なるハッピー野郎なわけでは全くない自分自身への問いかけと葛藤というものになっているのだが、
「真っ暗な夜の雨はもう止んだ」
というフレーズで曲が締められるように、結論から言うとこのライブが終わった後には雨は止んだ。それもまたポジティブでありながらも我々を引っ張り上げるようでいて、寄り添いながら隣を走ってくれるWANIMAらしさを感じさせる事象だった。
すると中盤ではこの3年ぶりの開催となったこのフェスのこのライブが、発表はされてはいたけれど開催出来なかった去年や2年前のリベンジであるかのように鳴らされた「リベンジ」、さらにはKENTAがイントロでギターを弾くKO-SHINに体当たりしてグイグイ体を押してから始まるという爆笑の、でもこの3人のずっと変わらない関係性を感じさせてくれる姿を見せてくれる「つづくもの」というキラーチューンが次々に演奏され、かつて初出演時からこのフェスでこの曲たちを大合唱してきたんだよな、と思い返すと少し切なくなってしまう。でも、一緒に歌うことはできなくても、こうしてまたこのフェスでWANIMAのライブが見れるようになったというのは間違いなく前に進めているという証拠だ。
「俺を育ててくれた、じいちゃんに向けて歌います!」
とKENTAが口にすると、近年のライブではおなじみの
「シワの数だけ良い男だと」
という導入部分的なフレーズが繰り返され、そこにどんどん熱量が増していく。雨に濡れながらもそのフレーズを歌うKENTAの姿は本当にカッコいいロックバンドのものだなと思うし、聴いている観客たちの集中力も雨で削がれるようなものではない。それくらいに切実な思いがステージ上で言葉となって我々に向かって放たれている。
その言葉の後に演奏されたのはまさにKENTAが祖父のことを思って作った、WANIMAのメロディの素晴らしさの初期の結晶とも言えるような「1106」で、祖父への思いを込めた
「昔ながらのお菓子が好きで
いつもの席 縁側へ 陽が差すタバコの煙さえも 鮮明に覚えてる」
というフレーズたちが曲前の言葉たちによってより深く刺さってくる。最後のコーラスフレーズではたくさんの観客の腕が左右に揺れていたが、雨が降っていたことで涙が隠せたという人もたくさんいたんじゃないかと思う。
そんな感動的な「1106」から、WANIMAくらいの規模のバンドが我々に
「お前がいないと意味がないんだからな!」
と言ってくれることで、
「あなたがいれば…」
というサビのフレーズがより説得力が増す「TRACE」へと続いていく。それは昔の曲が聴きたい人がたくさんいることを考えてというよりも、今この状況の中でのこの日のライブでどの曲を演奏するべきなんだろうかということに向き合った結果なんじゃないかと思う。
でもシリアスなだけがWANIMAじゃなくて、エロさも持ち合わせていて、そのエロさがライブにおけるキラーチューンへと昇華されていることがわかるのが「いいから」であり、この曲で空手のように両腕の拳を観客たちが交互に突き出す様を見るのも本当に久しぶりだ。それはみんながWANIMAのライブを、そこで演奏されるこの曲を楽しみにしてきたということだ。
そして
「神様から返事は来ないから
真実は揺れて歪むでしょう」
というKENTAの歌い出しのフレーズが、KENTAのあまりにも伸びやかなボーカルで歌われることによって、どこか祈りであるかのようにも聴こえる「ネガウコト」へ。
「自分にとって1番大切な人を思い浮かべて欲しい。もしそういう人がおらんって言うんやったら、WANIMAでもいいけん、今日出た他のアーティストでもいいけん、思い浮かべてくれ」
とKENTAは言っていたが、フェスという場所だからこそ、自分たち以外の出演者のファンもたくさんいることがわかっていて、それを受け止めることができる。本当になんて懐が広い、優しい人たちなんだろうと思う。
そんなライブの最後に演奏されたのは、実に久しぶりの「ともに」。歓喜して飛び跳ねまくる観客たちは、雨も疲労も完全に忘れていただろう。そういう力がWANIMAの音楽には、ライブには確かにある。そしてどんな苦しいことやキツいことがあったとしても(それはもちろんメンバーにもあり過ぎたこの2年ほどだったと思う)、最後にはここにいる全員を笑顔にしてくれる。ここからまた走り出せる、明日からも生きていく力をくれる。そんなバンドだからこそ、これからもともに、心踊る方に向かっていきたいと思えるのだ。改めて、本当にとんでもない力を持った楽曲を生み出すことができる、とんでもないバンドだと思った。
すると明らかにもう時間をオーバーしているからか、メンバーは急いでステージに戻ってきて、すぐさま演奏を開始したのは「Hey Lady」だった。KENTAもKO-SHINも全てを振り絞るかのようなテンションでハイトーンなボーカルを歌っていたが、そこにはどこか我々の声も乗っているかのような感覚があった。
それは初出演のNEW BEAT SQUAREも、翌年のSEASIDE PARKも、3年前のこのステージの大トリも。最初からメインステージであってもおかしくない存在だったWANIMAが一歩ずつ確実に上に登ってきたのを見てきて、その各ステージでこの曲をみんなで大合唱してきたからだ。
つまり、この若洲公園はこの曲があらゆる場所で響いてきた会場であるということ。そんなWANIMAにとって大事な場所だから、どこかあの時と同じようにみんなで歌っていた感覚を感じることができたのかもしれない。2年間来ることが出来なかったけれど、確かにこのフェスの歴史は途絶えることなくずっと繋がり続けている。WANIMAを最後に止まっていたこのフェスの時計と物語は、WANIMAがトリを務めたこの日についにまた動き始めたのだった。
SE.JUICE UP!!のテーマ
1.雨上がり
2.オドルヨル
3.眩光
4.リベンジ
5.つづくもの
6.1106
7.TRACE
8.いいから
9.ネガウコト
10.ともに
encore
11.Hey Lady