明日に架ける橋 2022 GLIM SPANKY / Rei / ROY(THE BAWDIES) / 伊吹文裕(ds) / 鈴木正人(b) / 西田修大(g) / ハタヤテツヤ(p) MC:みのミュージック @豊洲PIT 2/23
- 2022/02/24
- 18:53
「明日に架ける橋 2022」という、タイトルだけ見たらなんのこっちゃなものであるが、その内容はGLIM SPANKY、Rei、THE BAWDIESのROYが「海外アーティストのカバー曲のみを演奏する」というもの。それぞれかつてはライブでもカバー曲を演奏していたこともあったが、持ち曲が増えてきた中ではなかなかそういう曲をセトリに入れるわけにはいかず…という意味で貴重な機会とも言えるし、この3組が揃うというあたりにどんな曲が演奏されるのかが始まる前からわかる。
豊洲PITの客席には椅子が並んでおり、1席空けた形であるが、この形だと広いというイメージのこの会場も少しコンパクトに感じる。この日は各チケットサイトなどから招待されて来たという人もたくさんいただろうけれど。
ステージには装飾も取り付けられている中、まずは派手な出立ち(COWCOWの多田を彷彿とさせる)のMCのみのミュージックがステージに登場して、このイベントが
「海外アーティストがなかなか来日できない中で、海外アーティストからの影響が強いアーティストたちに好きな曲をカバーしてもらう」
という企画によるものであることを告げて、バンマスであるベースの鈴木正人(LITTLE CREATURES)、ドラムの伊吹文裕(あいみょんなどのサポート)、キーボードのハタヤテツヤ(EGO-WRAPPIN'などのサポート)、ギターの西田修大(中村佳穂、君島大空など)、さらには女性コーラスというバンドメンバーを1人ずつ紹介しながらステージに招く。この日はこのメンバーの演奏で出演者が歌うという形式である。
・Rei
そんな中で最初に招かれたのは、水色のチャイナドレスという衣装が鮮やかなRei。普段の自身のライブでもブルース愛溢れるアレンジやカバーを見せているだけに、実にこのライブにふさわしい存在である。
登場時に自身で持ってきたギターを鳴らし始めて歌い出したのはまずはビートルズ「Get Back」という誰もが知っているであろう名曲であるが、これはドキュメンタリー映画の公開に合わせたタイムリーな選曲であるとも言える。この時点ですでに女性コーラスの声とReiのボーカルが相性抜群なのがわかるが、さらにビートルズ曲を畳み掛ける「Roll Over Beethoven」(元はチャック・ベリーだけど)も含めて、こうした箱バンドが演奏するライブだと普通はシンガーとして招かれて歌うという形になるのだが、Reiは誰よりも激しくギターを鳴らしまくっているし、それが改めてビートルズの持つロックンロールさ、カッコよさを感じさせてくれるとともに、Rei自身のギタリスト、ボーカリストとしてのカッコよさも存分に感じさせてくれるというか、そのReiの持つ演奏力と歌唱力があるからこそ、こんなにもカッコよく感じるのであろうことがわかる。
しかしそんなReiのギターやボーカルも、豊洲PITという会場は音響が悪く聞こえてしまう会場としてもおなじみであるのだが、自分の席がたまたまPAの真前だったからか、今までの豊洲PITのライブよりもハッキリと聞こえる。もちろんそれはこのライブを作っている方々の力あってこそだろうけれど、それはギターをいろんな角度で肩にかけながら歌うVelvet Underground「I'm Waiting For The Man」というボーカルを聴かせるメロディを持った曲になるとより強く感じるものである。
そんな中で伊吹のドラムがシンプルな、ミニマルと言っていいくらいにおなじリズムを繰り返すという、現代のR&Bやヒップホップを生バンドで演奏しているかのようなアプローチの演奏だけど、この曲は凄く聴き馴染みがあるような…と思った曲はまさかのビリー・アイリッシュ「bad guy」の超絶ブルースカバーであり、なんとReiはフライングVを思いっきり掻き鳴らすという、ハードロックの要素も加えた形でこの曲を再解釈してみせた。本人も演奏後にブルースと現在のR&Bが基本的にはスリーコードで進行していくという共通点を口にしていたが、この曲のこのカバーは今回だけにするにはあまりにもったいないというか、音源化すれば一気に飛躍するくらいに話題になるんじゃないだろうかとも思う。
そのReiの凄まじさをギタリストとして感じさせてくれるのは、まさにジミヘン本人が憑依しているかのごとくに前に出てギターを弾きまくる「Little Wing」であり、デビュー直後に渋谷の小さなライブハウスで見た時からすでに衝撃的なライブを見せていたReiが少女から大人になる過程でさらに進化し、こうして自身の好きな音楽を楽しみながら演奏することによる音楽への無邪気かつ根源的な愛情を感じさせてくれる。
そうして呆気に取られている間に早くも最後の曲としてイントロで手拍子をしながら演奏されたCreamの「Crossroads」はReiの友人でもあり、曲を提供したa flood of circleの「月面のプール」の歌い出しの歌詞のモチーフになっている曲でもあるが、この曲のエリック・クラプトンのギターを原曲通りに弾きまくるReiはもはや箱バンドに招かれているボーカリストというよりも、Reiがこのバンドを率いていると言ってもいいくらいの存在感。
それを示すかのようにReiはメンバーを紹介すると、そのメンバーたちがソロ回しを始めるという、ずっとこのメンバーたちと一緒にライブをやってきたかのような姿を見せてくれるし、それでもやっぱり最後にはRei本人のクラプトンが憑依しているというか、クラプトンのブルースさにハードロックすらも加わっているかのようなギターが全て持っていった。もうこの時点でこの日来て良かったなと思うとともに、まるでReiのカバー曲縛りワンマンに来たかのようですらあった。
前回ライブを見たのが去年の新木場STUDIO COASTでのフラッドのイベント。EX THEATERのような大きな会場でもワンマンをやっているとはいえ、こうしてライブを見るたびにReiはこうした規模の会場やなんならホールくらいの場所でもライブをやるべき存在のアーティストだなと思う。その自身の憧憬や趣向をそのまま音楽にするというスタイルはなかなか大衆的な方向とは言えないかもしれないけれど、だからこそ自分のやりたいことをひたすら貫いているということでもあるし、このギターとこのボーカルの凄まじさをもっといろんな場所で体感したいと思っている。
1.Get Back (The Beatles)
2.Roll Over Beethoven (The Beatles)
3.I'm Waiting For The Man (Velvet Underground)
4.bad guy (Billie Eilish)
5.Little Wing (Jimi Hendrix)
6.Crossroads (Cream)
・ROY (THE BAWDIES)
終わった後にはみのミュージックが登場してライブの振り返り的なトークが行われるのだが、完全にReiと対等に好きな音楽やその背景、構造までを話すことができるというあたりに彼の凄まじい音楽オタクっぷりを感じさせるのだが、そのReiと入れ替わりでステージに招かれたのが、この日は1人での出演となる、THE BAWDIESのROY。
バンド時とは全く違う赤いスーツ姿というのが当時のブルース・ソウルシンガーというような雰囲気を醸し出している中、ハンドマイクで歌い始めたのはRUFAS THOMASの「MENPHIS TRAIN」という、ROYの趣向性によるものでしかない選曲。この曲の「ウー、イー」というソウルフルなサビのコーラスはTHE BAWDIESの「LEAVE YOUR TROUBLES」の元ネタなんだろうか?と思ったというのは一つの発見であり、やはりTHE BAWDIESがこうしたルーツミュージックを自身のロックンロールとして昇華しているということの現れでもある。
ROYのそのベースを弾かないハンドマイク歌唱というのはレアなようにも感じるが、最近でもSEEZ RECORDSの新年会でのセッションや、TENDOUJIの曲へのゲストボーカルとしての参加など、ファンにとってはそれなりに見る機会はあるものなのだが、もっとレアなのはROYが歌っている時に観客が全員座っているということ。これはTHE BAWDIESのライブではまずあり得ないことであるのだが、かつてLittle Richardに「Pretty Boy」というニックネームをつけられて活動していたというDon Covayの、タイトル通りにリズミカルな「Bip Bop Bip」と、多少なりとも来てくれた人が知っているであろう曲を演奏したであろうReiとは対照的に、ROYはもう完全にひたすらに自分の好きな曲、歌いたい曲を歌うというスタンスであるということがわかる。
しかしただそうした曲を歌って終わりなのではなくて、曲終わりにはROYによる歴史的背景やその人にまつわる音楽や人物などがビックリするくらいにすらすらと出てくる楽曲紹介も行われる。ROYは自身が監修したルーツミュージックのディスクガイドも刊行しているのだが、そのディスクガイドが目の前で本人の声で読まれているかのようですらあり、ファンとしては実に嬉しい。
「ロックバンド界の綾小路きみまろと呼ばれております(笑)」
というくらいに軽妙な語り口は初めてROYのことを見るであろう人にも少なからずウケていた感もあるだけに、ROYの人間としての面白さや、
「R&Bがより踊れるようになったのがロックンロールだと思っておりますので、そうした曲を選びました」
という音楽愛が少しでも伝わってくれたらな、と思う。
そんな中で、あえてソウルミュージックのゴッドファーザーとも称されるJames Brownの曲から選んだというバラード「Try Me」はROYの持つソウル汁(かつてよく口にしていたワードだ)が飛び散りまくるくらいの熱唱っぷり。これ、全く知らない人が音だけ聴いたら普通にアメリカの黒人アーティストがカバーしているように聞こえるんじゃないかとすら思う。そうした濃い曲のカバーという機会だからこそ、そのROYのボーカルの凄さを普段のTHE BAWDIESのライブとはまた違った角度から実感することができる。
再びROYによる楽曲紹介では、
「声を出したりすることはできないけれど、もっと皆さんと一緒に手を叩いたり、踊ったりして楽しみたい!」
と言って観客を立ち上がらせてから演奏されたのは、The Isley Brothers(当然ながら「ビートルズの「Twist and Shout」はアイズレーのカバーで〜という紹介もあった)の「WHY WHEN LOVE IS GONE」であるが、これはTHE BAWDIESファンからしたらおなじみの曲であるというのは、この曲は最新アルバムの「BLAST OFF!」にカバーが収録された曲だからである。
しかしながらやはりTHE BAWDIESとはまた違うというのは演奏しているメンバーが違うからであるが、ROYが歌うとどんな曲でもROYの曲であるかのように聴こえる(それは原曲を基本的にあんまり知らないからでもあるが)のはもちろんその声で歌うからであるが、この日は「ROYの曲のように聴こえる」であって「THE BAWDIESの曲のように聴こえる」ではなかったのも、やはりTHE BAWDIESのメンバーによる演奏ではなかったからだ。
逆に言うと、THE BAWDIESによるカバーがどう聴いても「THE BAWDIESの曲に聴こえる」というのはROYが歌って、あの3人が演奏するからそう聞こえていたということであり、そこにこそTHE BAWDIESのロックンロールの魔法があるということだ。だからこそこの日の「WHY WHEN LOVE IS GONE」は先月の「BLAST OFF!」のツアーファイナルで聴いた時のロックンロールさよりも、ソウル、ブルース感が強かった。それはバンドとして自分たちのアレンジをするのではなくて、原曲に忠実な演奏をこのメンバーが心掛けていたからだろう。ROYはこの日はTHE BAWDIESのメンバーに
「俺がやりたいことをやるから来るな!」
と言ったらしいけれど(笑)
そしてそのまま観客が立ち上がった状態だからこそ、観客の体を動かし、踊らせたのはTHE BAWDIESが2006年にリリースしたデビューアルバム「YESTERDAY AND TODAY」にも収録されていた、つまりはその時からROYが好きな音楽や信じているものが全く変わっていないということを示すかのようなレイ・チャールズの「Mess Around」のカバー。
ああ、やっぱりROYのボーカルは最高で最強だなと思えるのは、その強烈なロックンロールボイスにこれ以上ないくらいの自身の音楽への愛情が乗っているからだ。もうこの日歌っていた曲たちも、日頃から何かにつけて歌っているような曲たちなんだろうなと思うくらいに、THE BAWDIESの曲を歌う時以上にラフに歌っているかのようだった。こういうライブを見ると、またTHE BAWDIESでもこういうライブをやってみるのも面白いんじゃないかと思うし、それによってより深くロックンロールやソウルやブルースを探求できるようになる人もたくさんいるはずだし、それがROYがやりたいことの果ての形なんだろうとも思う。
1.MENPHIS TRAIN (RUFAS THOMAS)
2.Bip Bop Bip (Don Covay)
3.Try Me (James Brown)
4.WHY WHEN LOVE IS GONE (The Isley Brothers)
5.Mess Around (Ray Charles)
・GLIM SPANKY
自身のMCでも曲の解説をしていたROYがさらに畳み掛けるように、みのミュージックとのライブ後のトークでも自身の愛する音楽について熱く語りまくってから、それでもなかなか去ろうとしないROYを半ば強制的にステージから捌けさせて、あっという間にトリのGLIM SPANKYの2人が登場。
ここまでで最も薄暗いステージの上で2人が椅子に座るという形で、亀本寛貴がギターではなくまさかのトイピアノを弾いて松尾レミが歌いはじめたのは、彼女が大好きで仕方がないために自分が歌いからセトリにねじ込んだというニック・ドレイクの「Pink Moon」。松尾のハスキーなロックンロールを歌うために持って生まれた声が静寂の夜空に広がっていくかのように感じられるのはこのシンプル極まりない編成だからでもあるが、普段のライブではメンバー2人以外のギタリストがいないだけに、ギタリストがいるバンドでのライブだと亀本はこうした変則的な形での参加なのか?とも思ったのだけど、すぐさま曲終わりにはスタッフが椅子を片して2人は立ってギターを持つといういつものGLIM SPANKYのスタイルへ。
その松尾も亀本もギターを弾き、ROYの時はソウル・ブルースな音を鳴らしていたバンドメンバーたちが一気にロックンロールに振り切れるのは、かつてビートルズが来日50周年を迎えた際にリリースされたカバーアルバムに収録された「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band」で、この曲や同タイトルのアルバムが持つサイケデリックさを表すかのように照明も幽玄に揺れながらメンバーを照らすのだが、その音の重さがいつものバンドメンバーとは違う形でのライブであるとはいえ、GLIM SPANKYというバンドがどういうバンドであるかを示していると言えるだろう。ラウドなわけでもないし、むしろテンポは現代のロックバンドからしたら遅いと言えるくらいであるが、そうしたスタイルでこんなに重さを感じられる音を鳴らしているバンドが今他にいるだろうか。
その「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band 」もそうであるが、GLIM SPANKYはカバー曲を音源化し、しかもその曲がCMに起用されて話題になってきたという、ある意味ではカバーの申し子と言えるようなバンドでもあるのだが、やはり「愚か者たち」のカップリングに収録され、CMに起用されていたキャロル・キングの「I Feel The Earth Move」という、聴けば誰もが「あの曲だ!」とわかる曲を披露し、亀本は自分たちでカバーする意味を示すかのように、アウトロではRei同様に弾きまくりというくらいに思いっきりブルージーなギターを弾きまくる。
そんなやりたいことをやりまくっているライブであるだけに松尾も亀本もMCでは開口一番
「もうめちゃくちゃ楽しい!」
と話し、亀本は
「とかく数、再生数を稼ぐために、みたいな曲がたくさん作られてる世の中だけれど、自分たちの好きな曲、好きな音楽を演奏するっていうのってやっぱりそのアーティストの力が凄く伝わることだと思うし、聴いてる人にも音楽が広がっていくことに繋がっていくことだと思う」
と自分たちのこうしたスタイルへの誇りを口にすると、こちらも当時車のCM曲として話題を呼んだジャニス・ジョップリン「MOVE OVER」のカバーという、自分たちのやりたいことをやることが結果的に観客の聴きたいものになっているというかのような曲を連発。キメのフレーズの噛み合いっぷりとカッコよさは本当にこのメンバーでずっとライブをやってきたかのように感じられるが、このメンバーたちはこの3組とどれだけリハや練習をして来たんだろうかと思う。このライブはただ譜面を見ながら一朝一夕でできるようなものではないだけに。
すると松尾はこのライブのタイトルがサイモン&ガーファンクルの名曲であることに触れ、
「私の通っていた中学校の校長先生がすごく音楽が好きな人で。全校集会の校長先生の話を「私の話よりも教室で音楽を聴きましょう」って言って音楽流したりして(笑)その時にサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」も流してくれていて。そういうことが今につながってるんだなって思います」
と、自身の過去の経験を話したのだが、もしかしたらその中学生時代のことが今の松尾の、なんならGLIM SPANKYの音楽性を形成しているものなのかもしれない。そう考えると当時の校長先生に心から感謝である。
そして最後に演奏されたのはメジャーデビューミニアルバム「焦燥」に収録されていた、アデルの「Rolling In The Deep」のカバー。まさか今になってこの曲がライブで聴けるとはという驚きもあるが、それはこうした趣旨のイベントを開催してくれたからであると考えると、主催者に心から感謝である。正直、アデルは失恋ソングバラード的な曲が多くてあまり得意ではないのだが(もちろん歌は素晴らしいと思う)、GLIM SPANKYによるカバーはそんな感覚を吹き飛ばしてくれるくらいに土臭いブルースに生まれ変わらせている。やはりハスキーな声で歌う松尾とギターを弾きまくる亀本の姿を見て、もはやこれは完全にGLIM SPANKYの曲であるな、と改めて感じていた。
演奏が終わるとみのミュージックとのセトリの振り返りから、再びROYとReiを呼び込んで、「ロックンロール4兄弟」が揃ってのトーク。普段こうした場面では喋りまくる立場のROYがもう喋りたくてうずうずしているのがわかる一方で、Reiは黒のチャイナドレスに着替えている。
そうして勢揃いした全員で演奏したのは、GLIM SPANKYもMCで触れていた、このライブのタイトルになっているサイモン&ガーファンクルの「Bridge over Troubled Water」。ROYから歌い始め、そこから松尾レミ、さらにはReiへとボーカルが繋がれていくのであるが、Reiは後半ではメインギタリストとしてステージ真ん中まで出てきて弾きまくるというあたりは本当にどんな曲、どんな編成でも変わることはない。そんなコラボを見ながら、この曲が発売から50年以上経ってもこうして歌い継がれているのがわかるくらいに、ボーカリスト3人の魅力と名曲としてのメロディを存分に感じさせてくれた。MCでみのミュージックも話していたように、
「ただ古いから良いっていうだけじゃなくて、今聴いても良い曲だからこうして残っている、歌い継がれている」
という通りだなと思っていた。
最後にはまた海外アーティストのライブを早く見ることができるような世の中になってくれることを願いつつ、出演者たちをみのミュージックが再度紹介してイベントは締められた。なかなかライブのコンセプトを聞くと、海外の音楽を知らないと敷居が高いように感じられるかもしれないが、そんなことはないくらいにただただ素敵な夜だった。
1.Pink Moon (Nick Drake)
2.Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band (The Beatles)
3.I Feel The Earth Move (Carole King)
4.MOVE OVER (Janis Joplin)
5.Rolling In The Deep (Adele)
encore.Bridge over Troubled Water (Simon & Garfunkel)
ちょっと前に「普通の人は好きなアーティストの好きなものを掘ったりしないらしい」という言説を見た。確かにそうかもしれない。THE BAWDIESのライブに毎回来るようなコアなファンでも、ROYが紹介しているような音楽を全て聴いている人はまずいないだろう。
でも普通じゃないからこそ、こうして好きなアーティストのルーツを辿るのは楽しい。そうして知った音楽の中に、彼らの曲に連なる要素が発見できたりするし、今まで自分が触れてこなかった音楽に触れることで、もっともっといろんな音楽を聴きたいな、と音楽をより好きになる感覚を今になってもまだ感じることができる。
そんなイベントなだけに、海外アーティストのライブが普通に見ることができる世の中になっても、またこうして開催してくれたら嬉しいなと思っているし、その時は是非また来たいと思っている。
豊洲PITの客席には椅子が並んでおり、1席空けた形であるが、この形だと広いというイメージのこの会場も少しコンパクトに感じる。この日は各チケットサイトなどから招待されて来たという人もたくさんいただろうけれど。
ステージには装飾も取り付けられている中、まずは派手な出立ち(COWCOWの多田を彷彿とさせる)のMCのみのミュージックがステージに登場して、このイベントが
「海外アーティストがなかなか来日できない中で、海外アーティストからの影響が強いアーティストたちに好きな曲をカバーしてもらう」
という企画によるものであることを告げて、バンマスであるベースの鈴木正人(LITTLE CREATURES)、ドラムの伊吹文裕(あいみょんなどのサポート)、キーボードのハタヤテツヤ(EGO-WRAPPIN'などのサポート)、ギターの西田修大(中村佳穂、君島大空など)、さらには女性コーラスというバンドメンバーを1人ずつ紹介しながらステージに招く。この日はこのメンバーの演奏で出演者が歌うという形式である。
・Rei
そんな中で最初に招かれたのは、水色のチャイナドレスという衣装が鮮やかなRei。普段の自身のライブでもブルース愛溢れるアレンジやカバーを見せているだけに、実にこのライブにふさわしい存在である。
登場時に自身で持ってきたギターを鳴らし始めて歌い出したのはまずはビートルズ「Get Back」という誰もが知っているであろう名曲であるが、これはドキュメンタリー映画の公開に合わせたタイムリーな選曲であるとも言える。この時点ですでに女性コーラスの声とReiのボーカルが相性抜群なのがわかるが、さらにビートルズ曲を畳み掛ける「Roll Over Beethoven」(元はチャック・ベリーだけど)も含めて、こうした箱バンドが演奏するライブだと普通はシンガーとして招かれて歌うという形になるのだが、Reiは誰よりも激しくギターを鳴らしまくっているし、それが改めてビートルズの持つロックンロールさ、カッコよさを感じさせてくれるとともに、Rei自身のギタリスト、ボーカリストとしてのカッコよさも存分に感じさせてくれるというか、そのReiの持つ演奏力と歌唱力があるからこそ、こんなにもカッコよく感じるのであろうことがわかる。
しかしそんなReiのギターやボーカルも、豊洲PITという会場は音響が悪く聞こえてしまう会場としてもおなじみであるのだが、自分の席がたまたまPAの真前だったからか、今までの豊洲PITのライブよりもハッキリと聞こえる。もちろんそれはこのライブを作っている方々の力あってこそだろうけれど、それはギターをいろんな角度で肩にかけながら歌うVelvet Underground「I'm Waiting For The Man」というボーカルを聴かせるメロディを持った曲になるとより強く感じるものである。
そんな中で伊吹のドラムがシンプルな、ミニマルと言っていいくらいにおなじリズムを繰り返すという、現代のR&Bやヒップホップを生バンドで演奏しているかのようなアプローチの演奏だけど、この曲は凄く聴き馴染みがあるような…と思った曲はまさかのビリー・アイリッシュ「bad guy」の超絶ブルースカバーであり、なんとReiはフライングVを思いっきり掻き鳴らすという、ハードロックの要素も加えた形でこの曲を再解釈してみせた。本人も演奏後にブルースと現在のR&Bが基本的にはスリーコードで進行していくという共通点を口にしていたが、この曲のこのカバーは今回だけにするにはあまりにもったいないというか、音源化すれば一気に飛躍するくらいに話題になるんじゃないだろうかとも思う。
そのReiの凄まじさをギタリストとして感じさせてくれるのは、まさにジミヘン本人が憑依しているかのごとくに前に出てギターを弾きまくる「Little Wing」であり、デビュー直後に渋谷の小さなライブハウスで見た時からすでに衝撃的なライブを見せていたReiが少女から大人になる過程でさらに進化し、こうして自身の好きな音楽を楽しみながら演奏することによる音楽への無邪気かつ根源的な愛情を感じさせてくれる。
そうして呆気に取られている間に早くも最後の曲としてイントロで手拍子をしながら演奏されたCreamの「Crossroads」はReiの友人でもあり、曲を提供したa flood of circleの「月面のプール」の歌い出しの歌詞のモチーフになっている曲でもあるが、この曲のエリック・クラプトンのギターを原曲通りに弾きまくるReiはもはや箱バンドに招かれているボーカリストというよりも、Reiがこのバンドを率いていると言ってもいいくらいの存在感。
それを示すかのようにReiはメンバーを紹介すると、そのメンバーたちがソロ回しを始めるという、ずっとこのメンバーたちと一緒にライブをやってきたかのような姿を見せてくれるし、それでもやっぱり最後にはRei本人のクラプトンが憑依しているというか、クラプトンのブルースさにハードロックすらも加わっているかのようなギターが全て持っていった。もうこの時点でこの日来て良かったなと思うとともに、まるでReiのカバー曲縛りワンマンに来たかのようですらあった。
前回ライブを見たのが去年の新木場STUDIO COASTでのフラッドのイベント。EX THEATERのような大きな会場でもワンマンをやっているとはいえ、こうしてライブを見るたびにReiはこうした規模の会場やなんならホールくらいの場所でもライブをやるべき存在のアーティストだなと思う。その自身の憧憬や趣向をそのまま音楽にするというスタイルはなかなか大衆的な方向とは言えないかもしれないけれど、だからこそ自分のやりたいことをひたすら貫いているということでもあるし、このギターとこのボーカルの凄まじさをもっといろんな場所で体感したいと思っている。
1.Get Back (The Beatles)
2.Roll Over Beethoven (The Beatles)
3.I'm Waiting For The Man (Velvet Underground)
4.bad guy (Billie Eilish)
5.Little Wing (Jimi Hendrix)
6.Crossroads (Cream)
・ROY (THE BAWDIES)
終わった後にはみのミュージックが登場してライブの振り返り的なトークが行われるのだが、完全にReiと対等に好きな音楽やその背景、構造までを話すことができるというあたりに彼の凄まじい音楽オタクっぷりを感じさせるのだが、そのReiと入れ替わりでステージに招かれたのが、この日は1人での出演となる、THE BAWDIESのROY。
バンド時とは全く違う赤いスーツ姿というのが当時のブルース・ソウルシンガーというような雰囲気を醸し出している中、ハンドマイクで歌い始めたのはRUFAS THOMASの「MENPHIS TRAIN」という、ROYの趣向性によるものでしかない選曲。この曲の「ウー、イー」というソウルフルなサビのコーラスはTHE BAWDIESの「LEAVE YOUR TROUBLES」の元ネタなんだろうか?と思ったというのは一つの発見であり、やはりTHE BAWDIESがこうしたルーツミュージックを自身のロックンロールとして昇華しているということの現れでもある。
ROYのそのベースを弾かないハンドマイク歌唱というのはレアなようにも感じるが、最近でもSEEZ RECORDSの新年会でのセッションや、TENDOUJIの曲へのゲストボーカルとしての参加など、ファンにとってはそれなりに見る機会はあるものなのだが、もっとレアなのはROYが歌っている時に観客が全員座っているということ。これはTHE BAWDIESのライブではまずあり得ないことであるのだが、かつてLittle Richardに「Pretty Boy」というニックネームをつけられて活動していたというDon Covayの、タイトル通りにリズミカルな「Bip Bop Bip」と、多少なりとも来てくれた人が知っているであろう曲を演奏したであろうReiとは対照的に、ROYはもう完全にひたすらに自分の好きな曲、歌いたい曲を歌うというスタンスであるということがわかる。
しかしただそうした曲を歌って終わりなのではなくて、曲終わりにはROYによる歴史的背景やその人にまつわる音楽や人物などがビックリするくらいにすらすらと出てくる楽曲紹介も行われる。ROYは自身が監修したルーツミュージックのディスクガイドも刊行しているのだが、そのディスクガイドが目の前で本人の声で読まれているかのようですらあり、ファンとしては実に嬉しい。
「ロックバンド界の綾小路きみまろと呼ばれております(笑)」
というくらいに軽妙な語り口は初めてROYのことを見るであろう人にも少なからずウケていた感もあるだけに、ROYの人間としての面白さや、
「R&Bがより踊れるようになったのがロックンロールだと思っておりますので、そうした曲を選びました」
という音楽愛が少しでも伝わってくれたらな、と思う。
そんな中で、あえてソウルミュージックのゴッドファーザーとも称されるJames Brownの曲から選んだというバラード「Try Me」はROYの持つソウル汁(かつてよく口にしていたワードだ)が飛び散りまくるくらいの熱唱っぷり。これ、全く知らない人が音だけ聴いたら普通にアメリカの黒人アーティストがカバーしているように聞こえるんじゃないかとすら思う。そうした濃い曲のカバーという機会だからこそ、そのROYのボーカルの凄さを普段のTHE BAWDIESのライブとはまた違った角度から実感することができる。
再びROYによる楽曲紹介では、
「声を出したりすることはできないけれど、もっと皆さんと一緒に手を叩いたり、踊ったりして楽しみたい!」
と言って観客を立ち上がらせてから演奏されたのは、The Isley Brothers(当然ながら「ビートルズの「Twist and Shout」はアイズレーのカバーで〜という紹介もあった)の「WHY WHEN LOVE IS GONE」であるが、これはTHE BAWDIESファンからしたらおなじみの曲であるというのは、この曲は最新アルバムの「BLAST OFF!」にカバーが収録された曲だからである。
しかしながらやはりTHE BAWDIESとはまた違うというのは演奏しているメンバーが違うからであるが、ROYが歌うとどんな曲でもROYの曲であるかのように聴こえる(それは原曲を基本的にあんまり知らないからでもあるが)のはもちろんその声で歌うからであるが、この日は「ROYの曲のように聴こえる」であって「THE BAWDIESの曲のように聴こえる」ではなかったのも、やはりTHE BAWDIESのメンバーによる演奏ではなかったからだ。
逆に言うと、THE BAWDIESによるカバーがどう聴いても「THE BAWDIESの曲に聴こえる」というのはROYが歌って、あの3人が演奏するからそう聞こえていたということであり、そこにこそTHE BAWDIESのロックンロールの魔法があるということだ。だからこそこの日の「WHY WHEN LOVE IS GONE」は先月の「BLAST OFF!」のツアーファイナルで聴いた時のロックンロールさよりも、ソウル、ブルース感が強かった。それはバンドとして自分たちのアレンジをするのではなくて、原曲に忠実な演奏をこのメンバーが心掛けていたからだろう。ROYはこの日はTHE BAWDIESのメンバーに
「俺がやりたいことをやるから来るな!」
と言ったらしいけれど(笑)
そしてそのまま観客が立ち上がった状態だからこそ、観客の体を動かし、踊らせたのはTHE BAWDIESが2006年にリリースしたデビューアルバム「YESTERDAY AND TODAY」にも収録されていた、つまりはその時からROYが好きな音楽や信じているものが全く変わっていないということを示すかのようなレイ・チャールズの「Mess Around」のカバー。
ああ、やっぱりROYのボーカルは最高で最強だなと思えるのは、その強烈なロックンロールボイスにこれ以上ないくらいの自身の音楽への愛情が乗っているからだ。もうこの日歌っていた曲たちも、日頃から何かにつけて歌っているような曲たちなんだろうなと思うくらいに、THE BAWDIESの曲を歌う時以上にラフに歌っているかのようだった。こういうライブを見ると、またTHE BAWDIESでもこういうライブをやってみるのも面白いんじゃないかと思うし、それによってより深くロックンロールやソウルやブルースを探求できるようになる人もたくさんいるはずだし、それがROYがやりたいことの果ての形なんだろうとも思う。
1.MENPHIS TRAIN (RUFAS THOMAS)
2.Bip Bop Bip (Don Covay)
3.Try Me (James Brown)
4.WHY WHEN LOVE IS GONE (The Isley Brothers)
5.Mess Around (Ray Charles)
・GLIM SPANKY
自身のMCでも曲の解説をしていたROYがさらに畳み掛けるように、みのミュージックとのライブ後のトークでも自身の愛する音楽について熱く語りまくってから、それでもなかなか去ろうとしないROYを半ば強制的にステージから捌けさせて、あっという間にトリのGLIM SPANKYの2人が登場。
ここまでで最も薄暗いステージの上で2人が椅子に座るという形で、亀本寛貴がギターではなくまさかのトイピアノを弾いて松尾レミが歌いはじめたのは、彼女が大好きで仕方がないために自分が歌いからセトリにねじ込んだというニック・ドレイクの「Pink Moon」。松尾のハスキーなロックンロールを歌うために持って生まれた声が静寂の夜空に広がっていくかのように感じられるのはこのシンプル極まりない編成だからでもあるが、普段のライブではメンバー2人以外のギタリストがいないだけに、ギタリストがいるバンドでのライブだと亀本はこうした変則的な形での参加なのか?とも思ったのだけど、すぐさま曲終わりにはスタッフが椅子を片して2人は立ってギターを持つといういつものGLIM SPANKYのスタイルへ。
その松尾も亀本もギターを弾き、ROYの時はソウル・ブルースな音を鳴らしていたバンドメンバーたちが一気にロックンロールに振り切れるのは、かつてビートルズが来日50周年を迎えた際にリリースされたカバーアルバムに収録された「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band」で、この曲や同タイトルのアルバムが持つサイケデリックさを表すかのように照明も幽玄に揺れながらメンバーを照らすのだが、その音の重さがいつものバンドメンバーとは違う形でのライブであるとはいえ、GLIM SPANKYというバンドがどういうバンドであるかを示していると言えるだろう。ラウドなわけでもないし、むしろテンポは現代のロックバンドからしたら遅いと言えるくらいであるが、そうしたスタイルでこんなに重さを感じられる音を鳴らしているバンドが今他にいるだろうか。
その「Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band 」もそうであるが、GLIM SPANKYはカバー曲を音源化し、しかもその曲がCMに起用されて話題になってきたという、ある意味ではカバーの申し子と言えるようなバンドでもあるのだが、やはり「愚か者たち」のカップリングに収録され、CMに起用されていたキャロル・キングの「I Feel The Earth Move」という、聴けば誰もが「あの曲だ!」とわかる曲を披露し、亀本は自分たちでカバーする意味を示すかのように、アウトロではRei同様に弾きまくりというくらいに思いっきりブルージーなギターを弾きまくる。
そんなやりたいことをやりまくっているライブであるだけに松尾も亀本もMCでは開口一番
「もうめちゃくちゃ楽しい!」
と話し、亀本は
「とかく数、再生数を稼ぐために、みたいな曲がたくさん作られてる世の中だけれど、自分たちの好きな曲、好きな音楽を演奏するっていうのってやっぱりそのアーティストの力が凄く伝わることだと思うし、聴いてる人にも音楽が広がっていくことに繋がっていくことだと思う」
と自分たちのこうしたスタイルへの誇りを口にすると、こちらも当時車のCM曲として話題を呼んだジャニス・ジョップリン「MOVE OVER」のカバーという、自分たちのやりたいことをやることが結果的に観客の聴きたいものになっているというかのような曲を連発。キメのフレーズの噛み合いっぷりとカッコよさは本当にこのメンバーでずっとライブをやってきたかのように感じられるが、このメンバーたちはこの3組とどれだけリハや練習をして来たんだろうかと思う。このライブはただ譜面を見ながら一朝一夕でできるようなものではないだけに。
すると松尾はこのライブのタイトルがサイモン&ガーファンクルの名曲であることに触れ、
「私の通っていた中学校の校長先生がすごく音楽が好きな人で。全校集会の校長先生の話を「私の話よりも教室で音楽を聴きましょう」って言って音楽流したりして(笑)その時にサイモン&ガーファンクルの「明日に架ける橋」も流してくれていて。そういうことが今につながってるんだなって思います」
と、自身の過去の経験を話したのだが、もしかしたらその中学生時代のことが今の松尾の、なんならGLIM SPANKYの音楽性を形成しているものなのかもしれない。そう考えると当時の校長先生に心から感謝である。
そして最後に演奏されたのはメジャーデビューミニアルバム「焦燥」に収録されていた、アデルの「Rolling In The Deep」のカバー。まさか今になってこの曲がライブで聴けるとはという驚きもあるが、それはこうした趣旨のイベントを開催してくれたからであると考えると、主催者に心から感謝である。正直、アデルは失恋ソングバラード的な曲が多くてあまり得意ではないのだが(もちろん歌は素晴らしいと思う)、GLIM SPANKYによるカバーはそんな感覚を吹き飛ばしてくれるくらいに土臭いブルースに生まれ変わらせている。やはりハスキーな声で歌う松尾とギターを弾きまくる亀本の姿を見て、もはやこれは完全にGLIM SPANKYの曲であるな、と改めて感じていた。
演奏が終わるとみのミュージックとのセトリの振り返りから、再びROYとReiを呼び込んで、「ロックンロール4兄弟」が揃ってのトーク。普段こうした場面では喋りまくる立場のROYがもう喋りたくてうずうずしているのがわかる一方で、Reiは黒のチャイナドレスに着替えている。
そうして勢揃いした全員で演奏したのは、GLIM SPANKYもMCで触れていた、このライブのタイトルになっているサイモン&ガーファンクルの「Bridge over Troubled Water」。ROYから歌い始め、そこから松尾レミ、さらにはReiへとボーカルが繋がれていくのであるが、Reiは後半ではメインギタリストとしてステージ真ん中まで出てきて弾きまくるというあたりは本当にどんな曲、どんな編成でも変わることはない。そんなコラボを見ながら、この曲が発売から50年以上経ってもこうして歌い継がれているのがわかるくらいに、ボーカリスト3人の魅力と名曲としてのメロディを存分に感じさせてくれた。MCでみのミュージックも話していたように、
「ただ古いから良いっていうだけじゃなくて、今聴いても良い曲だからこうして残っている、歌い継がれている」
という通りだなと思っていた。
最後にはまた海外アーティストのライブを早く見ることができるような世の中になってくれることを願いつつ、出演者たちをみのミュージックが再度紹介してイベントは締められた。なかなかライブのコンセプトを聞くと、海外の音楽を知らないと敷居が高いように感じられるかもしれないが、そんなことはないくらいにただただ素敵な夜だった。
1.Pink Moon (Nick Drake)
2.Sgt. Peppers Lonely Hearts Club Band (The Beatles)
3.I Feel The Earth Move (Carole King)
4.MOVE OVER (Janis Joplin)
5.Rolling In The Deep (Adele)
encore.Bridge over Troubled Water (Simon & Garfunkel)
ちょっと前に「普通の人は好きなアーティストの好きなものを掘ったりしないらしい」という言説を見た。確かにそうかもしれない。THE BAWDIESのライブに毎回来るようなコアなファンでも、ROYが紹介しているような音楽を全て聴いている人はまずいないだろう。
でも普通じゃないからこそ、こうして好きなアーティストのルーツを辿るのは楽しい。そうして知った音楽の中に、彼らの曲に連なる要素が発見できたりするし、今まで自分が触れてこなかった音楽に触れることで、もっともっといろんな音楽を聴きたいな、と音楽をより好きになる感覚を今になってもまだ感じることができる。
そんなイベントなだけに、海外アーティストのライブが普通に見ることができる世の中になっても、またこうして開催してくれたら嬉しいなと思っているし、その時は是非また来たいと思っている。
Base Ball Bear TOUR 「LIVE IN LIVE 〜I HUB YOU (Take) 2〜」 対バン:UNISON SQUARE GARDEN @Zepp Haneda 2/24 ホーム
マカロニえんぴつ 「マカロックツアーvol.13 〜あっという間の10周年☆変わらずあなたと鳴らし廻り!篇〜」 @日本武道館 2/16