フレデリック 「FREDERHYTHM TOUR 2021-2022 〜朝日も嫉妬する程に〜」 @Zepp Haneda 2/4
- 2022/02/05
- 18:52
昨年には初の日本武道館ワンマンも、このバンドなりの音楽への愛に溢れる形で開催した、フレデリック。その前にもライブハウスをツアーで回っていたが、そうした「リリース関係なくとにかくツアーを回っている」というフレデリックらしさがこの世の中の状況でもようやく戻ってきたなと思うのがこの昨年から続くライブハウスツアーである。
ツアーファイナルとなる、Zepp Hanedaでの2daysの2日目となるこの日は現在の感染対策におけるキャパの規定は守りながらも、1階は立ち位置指定のスタンディング形式。Zeppはコロナ禍になってからはずっと椅子ありの指定席が続いていたので、Zepp特有のフロアの柵の多さを見るのも実に久しぶりである。
少し早めの開演時間である18時半、場内が暗転するとデジタルなSEのサウンドが流れ出すと同時に観客から拍手が起きてメンバーが1人ずつステージに登場。おそらくはすでに前日も含めてこのツアーに参加してきた人もいるのだろう、薄暗い中でもメンバーも観客もその表情、身構え方からもファイナルというここまで辿り着いたことへの感慨を強く感じさせるような空気だ。
三原健司(ボーカル&ギター)はステージ中央の自身の立ち位置の前に置かれた台の上にハンドマイクを持って立つと、そうした空気や思いの全てを受け止めるかのように腕を大きく広げて「飄々とエモーション」を歌い始める。
「エモーション 僕のさいはてに最後まで付き合って
伝わらない夜を越えて」
というフレーズはまさにツアーファイナルという最果ての公演の最後まで付き合うという意味でもこの日の1曲目にピッタリな曲であるが、何と言っても健司のボーカルの声の伸びと、ボーカリストとしてのカリスマ性やオーラを感じさせる歌唱はフレデリックを「踊らせるバンド」というざっくりとしたイメージしか持ってない人からしたら驚くことであろうし、それは
「なぁ最後の最後に生まれ変わって
また始まったとしても
この時間は忘れられそうにないな」
というこの瞬間を歌っているとしか思えないようなCメロ部分の最後のノビで早くも極まりを見せ、もうそこを歌い切った瞬間に心の中で健司に向かって盛大な拍手を送りたくなるくらいに素晴らしい。このコロナ禍の中でもツアーはもちろん記念碑的なワンマンも、フェスやイベントも重ねてきたことによる進化がこの時点でもうわかる。
その進化は「飄々とエモーション」ではやはり健司のボーカルに感じられるものだったが、健司がギターを持って、何か音の粒子のようなものが増殖していくかのような曲間の繋ぎの音の後に演奏された、初期の曲と言える「ディスコプール」での、リリース時はまだバンドに参加していなかった高橋武(ドラム)による明らかに手数の増えた、今のフレデリックとしてのこの曲であることを感じさせるドラム、音はもちろん物理的な動きも含めてうねりまくる三原康司のベース、リズム隊だけではなくてギターの音もロックバンドがダンスミュージックを奏でる上では大事な要素なんだなと思う赤頭隆児のカッティングギターも含めて、メンバーそれぞれが果たしてきた進化が4つ重なることによって、バンドとしてさらに計り知れない進化を果たしているように感じられる。それはやはり初期から存在するこの曲を演奏しているから感じられるものでもあるだろう。
さらには高橋が疾走するようなビートからイントロへと繋げると、健司、康司、赤頭の3人がドラムセットの前で向かい合って、音だけでなく心や呼吸そのものも合わせるかのように音を鳴らし合い、その際に赤頭が「年々運動能力が向上しているというか、身体が軽やかになってない?」と思うくらいにぴょんぴょん飛び跳ねてから演奏され、観客のリズムに合わせた手拍子も寸分の狂いもなく決まり、2コーラス目では赤頭と康司が演奏しながら位置を入れ替わる「KITAKU BEATS」はこうしてライブをすることが年々楽しくなってきている、それがこの状況でより一層強く感じられるようになったからこそ、そうして赤頭はより高く激しく飛び跳ねるようになっているのだろうと思うし、その躍動感は間違いなく曲にも音として現れ、それが我々をまだまだ帰りたくないと思うくらいに踊らせてくれる。もう完全にフレデリックのライブでしかない景色が広がり、空気が流れている。
するとやはり高橋による疾走感溢れる曲間の繋ぎとともに健司が
「メジャーデビュー曲やります!」
と言って早くもこの序盤で演奏されたのは、昨年1億回再生を果たした至上のダンスロックアンセム「オドループ」なのだが、そもそもは風営法に対するバンドとしての意思やスタンスを曲に込めたこの曲はフレデリックがただシュールかつ踊れるバンドというわけではなくて、ちゃんと曲に言いたいことや思いを込めて音楽を作っているということを知らしめる曲ともなった。
それは今のこのコロナ禍でも変わらずに有効というか、むしろ未だにライブを開催することを批判したり叩いてきたりするような人もいれば、実際に中止や延期になってしまうようなライブもまだまだ出てきてしまっている今の状況だからこそ、
「踊ってない夜を知らない
踊ってない夜が気に入らない」
というフレーズが現代における闘争のダンスアンセムとして鳴り響き、観客もやはり踊りまくり、赤頭はギターソロで健司の前に被さるように先ほど健司が立って歌唱していた台の上に立って体を捩らせながらギターを弾きまくる。昨年、武道館の時も、春や冬のフェスでこの曲を聴いた時も思ったけれど、こうしてルールを守ってライブを、音楽を最大限に楽しむことこそが、この日健司が何度も口にしていた音楽が大好きな我々にとっての戦い方であったり争い方であるんじゃないかとこの曲をこの状況で聴くたびに思う。
ノンストップでこのいきなりのキラーチューンの連打となった序盤を駆け抜けると、一息つく間に観客の長く大きな拍手が起こる。それはただ演奏に向けたものというよりは、このツアーを誰も感染したりすることなくファイナルへたどり着くことができたことへの祝福のようにも響く中で健司は、
「今日はツアーファイナル。良い演奏をして、良い歌を歌って、良いセトリを組んできました。あとはそれを受け取るあなた次第です」
と、観客が楽しむことによってライブが完成するというような意の言葉を投げかけると、
「思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ」
という2021年屈指の名フレーズを健司が歌唱して「名悪役」を演奏するのだが、そのフレーズも含めて徹底的に「今そのもの」を歌ってきながらも、その「今」がいつ聴いても「今」でしかないバンドであるフレデリックが「FUTURE」というタイトルを掲げながらも、
「FUTURE 現代 そんな 冗談じゃない 冗談じゃない
変わってくんだよ この未来は
つまりここにいる「それぞれ」がさ」
というサビのフレーズが未来も今の連なりによるものであるという、やはり「今」を強く感じさせる「FUTURE ICE CREAM」は実に久しぶりにライブで聴く曲であると同時に、フレデリックのギターロックバンドとしての一面も強く見せてくれる曲だ。ラストの
「FUTURE ICE CREAM 哀愁 I will scream」
というフレーズでの健司の声の伸びも、康司のコーラスも久しぶりの演奏でありながらもやはりバンドの進化を改めて感じさせてくれるものになっている。
そんな中で健司が再びハンドマイクになると、台の上に立ってそのボーカルを轟かせる、昨年配信リリースされた「サイカ」へ。こちらは一転してここまでも見せてきた健司のボーカルの力と、フレデリックのメロディの強さをストレートに示すような楽曲であり、演奏だ。クセになるようなフレーズを数々世に送り出してきたフレデリックの中毒性の最大の要素はやはり康司が生み出してきたメロディにあるという、フレデリックがアリーナにまで達した理由がこの曲のメロディの強さに集約されていると言っていいし、こうしてほとんど曲間なしで様々なタイプの曲が演奏されることによって、そのメロディの強さがどの曲にも通底しているということもよくわかるのだ。こんなにも自分たちのパブリックイメージや最大の武器以外でも名曲を作ることができるバンドであると。
同じ健司のハンドマイク歌唱でも台の上で歌っていた「サイカ」とは打って変わって、「踊って楽しむ」ということを口にしてから演奏された「Wake Me Up」では健司がステージ上を舞うようにして動き回りながら歌い、康司もベースを上下に振りながら弾くと、ここまでも曲を最低限の演出で最大限の効果をもたらしてきた照明が激しく明滅する。それは間奏で一気にバンドのサウンドがラウドになる部分でより顕著になるのだが、この日はここまではそうした照明と曲によってはレーザーが飛ぶくらいで、メンバーの背後にはバンドのロゴが飾られているという、ライブハウスだからこそのストイックなステージ作りになっており、それがバンドの鳴らす音や姿に集中できる要素になっている。改めてフレデリックのそのライブ自体の地力の強さを確かめられるというか。
そんなことを思っているといつの間にか(ここもほぼ曲間なし)康司はベースを持たずにシンセベースがその前に用意されている。その編成で演奏されるのは「正偽」であるのだが、その康司のボーカルによる
「甘い蜜ばかり吸って何を学んだの
こちとら守るべきものがあるんです
見えますか 見えますか」
というフレーズはこの状況下で聴くと、このフレーズがそのままフレデリックがこうして今この状況でもライブをやり続けている理由として響く。
フレデリックは自分たちだけ好きにライブをやっていられればいいというバンドではない。音楽が大好きな他のアーティスト、観客などのファン、ライブを作ってくれているスタッフやフェスやイベントの主催者。そうした人たちと自分たちの音楽を通して真摯に向き合ってきたことによって、その人たちの存在や生き方を肯定してきてくれたバンドだ。そんなバンドが今鳴らす「正偽」はこのバンドにとっての正義の音がそのまま鳴っていた。
さらにその編成のままで演奏されたのは3月30日に発売することが決定している待望のフルアルバム「フレデリズム3」に収録される、このツアーから演奏されている新曲「Wanderlust」なのだが、やはりいつの間にかステージ背面には金色に輝く幕が張られており、そこに照明が当たることによって光の粒があらゆる角度に乱反射していくのだが、高橋の跳ねるようなドラムも、康司のシンセベースと少しエフェクトがかったような(ヴォコーダーをシンセベースで通している?)ボーカルも、赤頭が刻むギターサウンドも、そして健司の圧倒されるようなボーカルも、全てがこの曲のテーマである「旅」というものを最大限に表すように壮大に鳴っている。すでに前日のライブなどで聴いている人もいたかもしれないとはいえ、新曲とは思えないくらいに観客の腕が上がっていた即効性も含めて、間違いなくバンドにとって新しい名曲が誕生したと言えるだろうし、バンドもそこに自信を持っているからこそ、こうしてリリース前からライブで演奏することを選んだのだろう。
すると赤頭がその「Wanderlust」で使った幕を
「今日がファイナルだから、ライブ終わったら持って帰ってカーテンにしたい(笑)もちろん光ってる方を外側にして、「あの家、なんか乱反射してるわ〜」ってなるのが俺の家やから探して(笑)」
と、ツアーが終わっても演出を自分の家に持って帰って使おうとすると、高橋もその幕を分けてもらおうとしながら、アルバムについて最初に告知したのはこの高橋のMCであり、内容が人柄を感じさせるように真っ直ぐな高橋のMCは聞いているとこの人は声優としても活躍できるんじゃないかというくらいに喋り声が実にハッキリとしている。健司という絶対的なボーカリストと康司という作曲者兼コーラスがいるだけになかなか機会はないが、高橋もそのしゃべり声を聞いていると歌が上手いんじゃないだろうかと思う。
その一方で康司は健司に耳打ちされたことで、今までやったことのない自身の口から重大発表をすることに。それは先程演奏した「Wanderlust」を翌週に配信でリリースすることの発表であり、健司は改めてこの曲をリリース前にライブで演奏することにした意思を口にしてから、ここからライブは再びノンストップの後半戦に入っていくことを告げるのであるが、高橋が
「今はサブスクとかもあるけれど、実際にCDを手に取って欲しい」
と言ったことに対しての赤頭の
「みんなで優勝しようぜって言ってチームで同じミサンガをつける感じやな(笑)」
という例えは観客はおろかメンバーすらもピンと来ていなかったが、前日に言っていたという
「修学旅行で沖縄に行ったらみんなでシーサーをお土産に買ったりするやん。みんな同じ物を持ってるみたいな。CDを手に取ってくれたら俺らとみんながそういう気持ちになれる」
というMCの方がしっくり来るし、自分も含めてフレデリックがCDにも紙ジャケットなどの形態やDVDなどの特典を含めてこだわってきたのを知っている、ここにいた人たちはきっとみんな実際にCDを手に取ってくれるはずだ。それはバンドへの情けではなく、本当に「フレデリズム3」を欲しいものとして。
そんな、いつになく緩めのMCもツアーファイナルだからこそのやり切ってきた感によるものなのかもしれないが、高橋が叩き出す強靭なビートに合わせて観客が手拍子をするのはもちろん「かなしいうれしい」であり、健司も歌いながらビートに合わせて手拍子をすることによって、その手拍子の音はさらに大きくなっていく。その光景を見ることができているこの瞬間は間違いなくうれしいだけのものだった。
そのままアウトロからイントロに一切の間がなく繋がるように「逃避行」へと至ると、こちらもリズムに合わせた一瞬の手拍子も観客が完璧に揃えながら、レーザーがあらゆる箇所から放たれては場内を照らしていき、その光によるハイパーな感覚がサウンドとともにより我々を踊らせてくれる。
その「逃避行」の
「君とばっくれたいのさ」
というフレーズに
「純情 感情 論争 あなたのそういうところが嫌いです
嫌いです でも嫌いになれない どうして」
というサビを持つ「スキライズム」が続くことによって、フレデリックが本当にこんなにも一度聴いたら頭から離れない曲を全く違う言葉を使って作り続けてきたんだなと思うし、この曲たちは前作「フレデリズム2」収録曲であるということは、3月に「フレデリズム3」がリリースされたらさらにそうした曲が増えていくということである。赤頭の普通のバンドならシンセなり同期なりで担うようなサウンドをギターで鳴らしているというのもやはり面白いし、それがどこまでもフレデリックのサウンドになっている。
そして健司は
「2022年のフレデリックを代表する曲になる」
と言って最後に「TOMOSHI BEAT」を演奏する。今のこの曲が収録された立ち位置的には「ANSWER」のカップリングの新曲というものであるが、そもそも「正偽」にしてもEPの1曲目ではないだけに、フレデリックには「タイトル曲とカップリング曲」という区分けもなく全てが等しく大事な曲であり、同じ熱量を注いで作られた曲だからこそ、このツアーのタイトルにこの曲の歌詞が使われているのだろうし、そういう意味でも配信で単曲聴きするよりもCDを手に取って全曲通して聴いてほしいと思っているのだろう。
そうしたバンドとしての熱い思いを炸裂させるかのように高橋は立ち上がってドラムを叩き、叩きながら叫んでいる声がマイクを通さずとも客席にまでしっかり聞こえてくる。ツービートっぽくなるようなリズムは高橋が得意とするところであろうし、タイトル通りにこの曲の核であるビートは間違いなくこの高橋が担っていると言っていいはず。その燃え盛るビートこそが2022年のフレデリックを象徴するものであり、アルバムを貫くテーマにもなっているんじゃないかとも思った。本編最後を「オドループ」ではなくこの曲に託したのもやはり、フレデリックがなによりも「今」のバンドである証明であった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、健司が
「俺たちミニアルバムたくさん出してるやん?ミニアルバムはその時に思っていることをそのまま音楽にして出していて。フルアルバムは写真をめくるみたいにその期間に思ったことのまとめっていうか。だから「フレデリズム」は2014年から2016年までのまとめだし、「フレデリズム2」は2017年から2019年までのまとめだし、「フレデリズム3」はそれから今までのまとめだし」
と、ミニアルバムやEPとフルアルバムをどういう意図でリリースしているのかということを語るが、他のバンドに比べたらフルアルバムのスパンは長いけれど、その間にミニアルバムやEPを複数リリースしているだけに全く間が空いている感じがしないというか、常にリリースしてツアーをやっている感すらあるフレデリックの活動ペースがそうした制作とリリースの方針の元に組まれていることがこの上ないくらいにわかりやすく伝えられると、
「よく、「今までで1番印象に残ってる時はいつですか?」とか「1番楽しかったのはいつですか?」って聞かれることがあるけど、俺にとってはいつだって今、この瞬間が1番楽しい。みんなもそうやって今が最高って思ってくれていたらいいな」
という言葉は、ここまでに何度も感じてきた、フレデリックが「今」のバンドであることを本人が本当にそう思っているということ、何故フレデリックが「今」のバンドであり続けているのかということを改めて証明するものであった。今が1番楽しいバンドが過去を振り返るようなことも、はるか先の未来を想像することもない。全ては今をどう生きるか、どう楽しむかでしかないし、そのためのダンスビートをフレデリックは鳴らしているということだ。
その最新系とでも言うべき、和田アキ子に提供してバズった「YONA YONA DANCE」の本人歌唱バージョンでは
「ミラーボール輝いて 心照らしあっていく
暴き出して頂戴表情を」
というフレーズでまさに心を照らして表情を暴くように客席頭上にあるミラーボールが輝く。健司のボーカルもサビの締め方には和田アキ子の歌唱にも通じる、歌謡曲的なコブシのある歌唱にも感じるのだが、そもそもいきものがかりなどのもっと有名なアーティストにも曲を提供してもらっている和田アキ子は何故今フレデリックにこの曲を提供してもらったのか?
それは和田アキ子がライブではMark Ronsonが制作してBruno Marsが歌った「Uptown Funk」をカバーしていたりと、常に最新のファンク、ソウル、ダンスミュージックのリスナーであり、それを取り入れて自分自身の音楽を進化させている、ワイドショーのご意見版というイメージが強いけれど、実は現在進行形のミュージシャンだからである。それは「今」でしかないバンドであるフレデリックの生き様と確かに通じる姿勢であり、音楽性や曲もそうだけれど、それ以上にそうした精神性によって共鳴している存在なんじゃないかと思う。いつかこの曲で両者のコラボを見ることができたら、それはこれ以上ないくらいに、踊らにゃ損でしかないくらいに踊り狂ってしまうものになるはずだ。
そして最後に演奏されたのは音源としては最新曲になる「ANSWER」のフレデリックバージョン。もちろんこの曲も「フレデリズム3」において重要な位置を担う曲であるが、このライブの2日後にはこの曲を共作、歌唱した須田景凪との対バンライブが控えている。そこでは間違いなくコラボとして演奏されるだろうし、そうすることによって、この日のフレデリックの曲でしかないという単独で演奏されたイメージも変わるはずだ。
「一体今は何時何分何秒?」
という、やはり「今」を自分たちのロックサウンド、ダンスサウンドで描き出す姿勢こそが、フレデリックがこの曲のタイトルを「ANSWER」とした理由だった。
演奏が終わると健司は
「今日楽しかったっていう人、両腕を上げてもらえますか!」
と言い、観客の両腕が上がると、
「音楽が大好きだっていう人はさらに両腕を上げてもらえますか!」
と、その腕はさらに高く上がった。その問いにこんなにも一切の疑念や後ろめたさなく、胸を張って両腕をあげて応えることができるのは、我々の目の前にいる、我々の愛するバンドが音楽が大好きで仕方がなくて、その音楽が大好きであるということをそのまま自分たちの曲に昇華していて、我々がその曲に自分たちが音楽が大好きであるという気持ちを預けたり、乗せることができるからだ。
健司が最後に深々と頭を下げたのはこの日会場に来てくれたということはもちろん、音楽を大好きでいてくれること、つまりは自分たちと同じことを思って生きてくれていることへの感謝を示しているかのようだった。
1.飄々とエモーション
2.ディスコプール
3.KITAKU BEATS
4.オドループ
5.名悪役
6.FUTURE ICE CREAM
7.サイカ
8.Wake Me Up
9.正偽
10.Wanderlust
11.かなしいうれしい
12.逃避行
13.スキライズム
14.TOGENKYO
15.TOMOSHI BEAT
encore
16.YONA YONA DANCE
17.ANSWER
ツアーファイナルとなる、Zepp Hanedaでの2daysの2日目となるこの日は現在の感染対策におけるキャパの規定は守りながらも、1階は立ち位置指定のスタンディング形式。Zeppはコロナ禍になってからはずっと椅子ありの指定席が続いていたので、Zepp特有のフロアの柵の多さを見るのも実に久しぶりである。
少し早めの開演時間である18時半、場内が暗転するとデジタルなSEのサウンドが流れ出すと同時に観客から拍手が起きてメンバーが1人ずつステージに登場。おそらくはすでに前日も含めてこのツアーに参加してきた人もいるのだろう、薄暗い中でもメンバーも観客もその表情、身構え方からもファイナルというここまで辿り着いたことへの感慨を強く感じさせるような空気だ。
三原健司(ボーカル&ギター)はステージ中央の自身の立ち位置の前に置かれた台の上にハンドマイクを持って立つと、そうした空気や思いの全てを受け止めるかのように腕を大きく広げて「飄々とエモーション」を歌い始める。
「エモーション 僕のさいはてに最後まで付き合って
伝わらない夜を越えて」
というフレーズはまさにツアーファイナルという最果ての公演の最後まで付き合うという意味でもこの日の1曲目にピッタリな曲であるが、何と言っても健司のボーカルの声の伸びと、ボーカリストとしてのカリスマ性やオーラを感じさせる歌唱はフレデリックを「踊らせるバンド」というざっくりとしたイメージしか持ってない人からしたら驚くことであろうし、それは
「なぁ最後の最後に生まれ変わって
また始まったとしても
この時間は忘れられそうにないな」
というこの瞬間を歌っているとしか思えないようなCメロ部分の最後のノビで早くも極まりを見せ、もうそこを歌い切った瞬間に心の中で健司に向かって盛大な拍手を送りたくなるくらいに素晴らしい。このコロナ禍の中でもツアーはもちろん記念碑的なワンマンも、フェスやイベントも重ねてきたことによる進化がこの時点でもうわかる。
その進化は「飄々とエモーション」ではやはり健司のボーカルに感じられるものだったが、健司がギターを持って、何か音の粒子のようなものが増殖していくかのような曲間の繋ぎの音の後に演奏された、初期の曲と言える「ディスコプール」での、リリース時はまだバンドに参加していなかった高橋武(ドラム)による明らかに手数の増えた、今のフレデリックとしてのこの曲であることを感じさせるドラム、音はもちろん物理的な動きも含めてうねりまくる三原康司のベース、リズム隊だけではなくてギターの音もロックバンドがダンスミュージックを奏でる上では大事な要素なんだなと思う赤頭隆児のカッティングギターも含めて、メンバーそれぞれが果たしてきた進化が4つ重なることによって、バンドとしてさらに計り知れない進化を果たしているように感じられる。それはやはり初期から存在するこの曲を演奏しているから感じられるものでもあるだろう。
さらには高橋が疾走するようなビートからイントロへと繋げると、健司、康司、赤頭の3人がドラムセットの前で向かい合って、音だけでなく心や呼吸そのものも合わせるかのように音を鳴らし合い、その際に赤頭が「年々運動能力が向上しているというか、身体が軽やかになってない?」と思うくらいにぴょんぴょん飛び跳ねてから演奏され、観客のリズムに合わせた手拍子も寸分の狂いもなく決まり、2コーラス目では赤頭と康司が演奏しながら位置を入れ替わる「KITAKU BEATS」はこうしてライブをすることが年々楽しくなってきている、それがこの状況でより一層強く感じられるようになったからこそ、そうして赤頭はより高く激しく飛び跳ねるようになっているのだろうと思うし、その躍動感は間違いなく曲にも音として現れ、それが我々をまだまだ帰りたくないと思うくらいに踊らせてくれる。もう完全にフレデリックのライブでしかない景色が広がり、空気が流れている。
するとやはり高橋による疾走感溢れる曲間の繋ぎとともに健司が
「メジャーデビュー曲やります!」
と言って早くもこの序盤で演奏されたのは、昨年1億回再生を果たした至上のダンスロックアンセム「オドループ」なのだが、そもそもは風営法に対するバンドとしての意思やスタンスを曲に込めたこの曲はフレデリックがただシュールかつ踊れるバンドというわけではなくて、ちゃんと曲に言いたいことや思いを込めて音楽を作っているということを知らしめる曲ともなった。
それは今のこのコロナ禍でも変わらずに有効というか、むしろ未だにライブを開催することを批判したり叩いてきたりするような人もいれば、実際に中止や延期になってしまうようなライブもまだまだ出てきてしまっている今の状況だからこそ、
「踊ってない夜を知らない
踊ってない夜が気に入らない」
というフレーズが現代における闘争のダンスアンセムとして鳴り響き、観客もやはり踊りまくり、赤頭はギターソロで健司の前に被さるように先ほど健司が立って歌唱していた台の上に立って体を捩らせながらギターを弾きまくる。昨年、武道館の時も、春や冬のフェスでこの曲を聴いた時も思ったけれど、こうしてルールを守ってライブを、音楽を最大限に楽しむことこそが、この日健司が何度も口にしていた音楽が大好きな我々にとっての戦い方であったり争い方であるんじゃないかとこの曲をこの状況で聴くたびに思う。
ノンストップでこのいきなりのキラーチューンの連打となった序盤を駆け抜けると、一息つく間に観客の長く大きな拍手が起こる。それはただ演奏に向けたものというよりは、このツアーを誰も感染したりすることなくファイナルへたどり着くことができたことへの祝福のようにも響く中で健司は、
「今日はツアーファイナル。良い演奏をして、良い歌を歌って、良いセトリを組んできました。あとはそれを受け取るあなた次第です」
と、観客が楽しむことによってライブが完成するというような意の言葉を投げかけると、
「思い出にされるくらいなら 二度とあなたに歌わないよ」
という2021年屈指の名フレーズを健司が歌唱して「名悪役」を演奏するのだが、そのフレーズも含めて徹底的に「今そのもの」を歌ってきながらも、その「今」がいつ聴いても「今」でしかないバンドであるフレデリックが「FUTURE」というタイトルを掲げながらも、
「FUTURE 現代 そんな 冗談じゃない 冗談じゃない
変わってくんだよ この未来は
つまりここにいる「それぞれ」がさ」
というサビのフレーズが未来も今の連なりによるものであるという、やはり「今」を強く感じさせる「FUTURE ICE CREAM」は実に久しぶりにライブで聴く曲であると同時に、フレデリックのギターロックバンドとしての一面も強く見せてくれる曲だ。ラストの
「FUTURE ICE CREAM 哀愁 I will scream」
というフレーズでの健司の声の伸びも、康司のコーラスも久しぶりの演奏でありながらもやはりバンドの進化を改めて感じさせてくれるものになっている。
そんな中で健司が再びハンドマイクになると、台の上に立ってそのボーカルを轟かせる、昨年配信リリースされた「サイカ」へ。こちらは一転してここまでも見せてきた健司のボーカルの力と、フレデリックのメロディの強さをストレートに示すような楽曲であり、演奏だ。クセになるようなフレーズを数々世に送り出してきたフレデリックの中毒性の最大の要素はやはり康司が生み出してきたメロディにあるという、フレデリックがアリーナにまで達した理由がこの曲のメロディの強さに集約されていると言っていいし、こうしてほとんど曲間なしで様々なタイプの曲が演奏されることによって、そのメロディの強さがどの曲にも通底しているということもよくわかるのだ。こんなにも自分たちのパブリックイメージや最大の武器以外でも名曲を作ることができるバンドであると。
同じ健司のハンドマイク歌唱でも台の上で歌っていた「サイカ」とは打って変わって、「踊って楽しむ」ということを口にしてから演奏された「Wake Me Up」では健司がステージ上を舞うようにして動き回りながら歌い、康司もベースを上下に振りながら弾くと、ここまでも曲を最低限の演出で最大限の効果をもたらしてきた照明が激しく明滅する。それは間奏で一気にバンドのサウンドがラウドになる部分でより顕著になるのだが、この日はここまではそうした照明と曲によってはレーザーが飛ぶくらいで、メンバーの背後にはバンドのロゴが飾られているという、ライブハウスだからこそのストイックなステージ作りになっており、それがバンドの鳴らす音や姿に集中できる要素になっている。改めてフレデリックのそのライブ自体の地力の強さを確かめられるというか。
そんなことを思っているといつの間にか(ここもほぼ曲間なし)康司はベースを持たずにシンセベースがその前に用意されている。その編成で演奏されるのは「正偽」であるのだが、その康司のボーカルによる
「甘い蜜ばかり吸って何を学んだの
こちとら守るべきものがあるんです
見えますか 見えますか」
というフレーズはこの状況下で聴くと、このフレーズがそのままフレデリックがこうして今この状況でもライブをやり続けている理由として響く。
フレデリックは自分たちだけ好きにライブをやっていられればいいというバンドではない。音楽が大好きな他のアーティスト、観客などのファン、ライブを作ってくれているスタッフやフェスやイベントの主催者。そうした人たちと自分たちの音楽を通して真摯に向き合ってきたことによって、その人たちの存在や生き方を肯定してきてくれたバンドだ。そんなバンドが今鳴らす「正偽」はこのバンドにとっての正義の音がそのまま鳴っていた。
さらにその編成のままで演奏されたのは3月30日に発売することが決定している待望のフルアルバム「フレデリズム3」に収録される、このツアーから演奏されている新曲「Wanderlust」なのだが、やはりいつの間にかステージ背面には金色に輝く幕が張られており、そこに照明が当たることによって光の粒があらゆる角度に乱反射していくのだが、高橋の跳ねるようなドラムも、康司のシンセベースと少しエフェクトがかったような(ヴォコーダーをシンセベースで通している?)ボーカルも、赤頭が刻むギターサウンドも、そして健司の圧倒されるようなボーカルも、全てがこの曲のテーマである「旅」というものを最大限に表すように壮大に鳴っている。すでに前日のライブなどで聴いている人もいたかもしれないとはいえ、新曲とは思えないくらいに観客の腕が上がっていた即効性も含めて、間違いなくバンドにとって新しい名曲が誕生したと言えるだろうし、バンドもそこに自信を持っているからこそ、こうしてリリース前からライブで演奏することを選んだのだろう。
すると赤頭がその「Wanderlust」で使った幕を
「今日がファイナルだから、ライブ終わったら持って帰ってカーテンにしたい(笑)もちろん光ってる方を外側にして、「あの家、なんか乱反射してるわ〜」ってなるのが俺の家やから探して(笑)」
と、ツアーが終わっても演出を自分の家に持って帰って使おうとすると、高橋もその幕を分けてもらおうとしながら、アルバムについて最初に告知したのはこの高橋のMCであり、内容が人柄を感じさせるように真っ直ぐな高橋のMCは聞いているとこの人は声優としても活躍できるんじゃないかというくらいに喋り声が実にハッキリとしている。健司という絶対的なボーカリストと康司という作曲者兼コーラスがいるだけになかなか機会はないが、高橋もそのしゃべり声を聞いていると歌が上手いんじゃないだろうかと思う。
その一方で康司は健司に耳打ちされたことで、今までやったことのない自身の口から重大発表をすることに。それは先程演奏した「Wanderlust」を翌週に配信でリリースすることの発表であり、健司は改めてこの曲をリリース前にライブで演奏することにした意思を口にしてから、ここからライブは再びノンストップの後半戦に入っていくことを告げるのであるが、高橋が
「今はサブスクとかもあるけれど、実際にCDを手に取って欲しい」
と言ったことに対しての赤頭の
「みんなで優勝しようぜって言ってチームで同じミサンガをつける感じやな(笑)」
という例えは観客はおろかメンバーすらもピンと来ていなかったが、前日に言っていたという
「修学旅行で沖縄に行ったらみんなでシーサーをお土産に買ったりするやん。みんな同じ物を持ってるみたいな。CDを手に取ってくれたら俺らとみんながそういう気持ちになれる」
というMCの方がしっくり来るし、自分も含めてフレデリックがCDにも紙ジャケットなどの形態やDVDなどの特典を含めてこだわってきたのを知っている、ここにいた人たちはきっとみんな実際にCDを手に取ってくれるはずだ。それはバンドへの情けではなく、本当に「フレデリズム3」を欲しいものとして。
そんな、いつになく緩めのMCもツアーファイナルだからこそのやり切ってきた感によるものなのかもしれないが、高橋が叩き出す強靭なビートに合わせて観客が手拍子をするのはもちろん「かなしいうれしい」であり、健司も歌いながらビートに合わせて手拍子をすることによって、その手拍子の音はさらに大きくなっていく。その光景を見ることができているこの瞬間は間違いなくうれしいだけのものだった。
そのままアウトロからイントロに一切の間がなく繋がるように「逃避行」へと至ると、こちらもリズムに合わせた一瞬の手拍子も観客が完璧に揃えながら、レーザーがあらゆる箇所から放たれては場内を照らしていき、その光によるハイパーな感覚がサウンドとともにより我々を踊らせてくれる。
その「逃避行」の
「君とばっくれたいのさ」
というフレーズに
「純情 感情 論争 あなたのそういうところが嫌いです
嫌いです でも嫌いになれない どうして」
というサビを持つ「スキライズム」が続くことによって、フレデリックが本当にこんなにも一度聴いたら頭から離れない曲を全く違う言葉を使って作り続けてきたんだなと思うし、この曲たちは前作「フレデリズム2」収録曲であるということは、3月に「フレデリズム3」がリリースされたらさらにそうした曲が増えていくということである。赤頭の普通のバンドならシンセなり同期なりで担うようなサウンドをギターで鳴らしているというのもやはり面白いし、それがどこまでもフレデリックのサウンドになっている。
そして健司は
「2022年のフレデリックを代表する曲になる」
と言って最後に「TOMOSHI BEAT」を演奏する。今のこの曲が収録された立ち位置的には「ANSWER」のカップリングの新曲というものであるが、そもそも「正偽」にしてもEPの1曲目ではないだけに、フレデリックには「タイトル曲とカップリング曲」という区分けもなく全てが等しく大事な曲であり、同じ熱量を注いで作られた曲だからこそ、このツアーのタイトルにこの曲の歌詞が使われているのだろうし、そういう意味でも配信で単曲聴きするよりもCDを手に取って全曲通して聴いてほしいと思っているのだろう。
そうしたバンドとしての熱い思いを炸裂させるかのように高橋は立ち上がってドラムを叩き、叩きながら叫んでいる声がマイクを通さずとも客席にまでしっかり聞こえてくる。ツービートっぽくなるようなリズムは高橋が得意とするところであろうし、タイトル通りにこの曲の核であるビートは間違いなくこの高橋が担っていると言っていいはず。その燃え盛るビートこそが2022年のフレデリックを象徴するものであり、アルバムを貫くテーマにもなっているんじゃないかとも思った。本編最後を「オドループ」ではなくこの曲に託したのもやはり、フレデリックがなによりも「今」のバンドである証明であった。
アンコールで再びメンバーが登場すると、健司が
「俺たちミニアルバムたくさん出してるやん?ミニアルバムはその時に思っていることをそのまま音楽にして出していて。フルアルバムは写真をめくるみたいにその期間に思ったことのまとめっていうか。だから「フレデリズム」は2014年から2016年までのまとめだし、「フレデリズム2」は2017年から2019年までのまとめだし、「フレデリズム3」はそれから今までのまとめだし」
と、ミニアルバムやEPとフルアルバムをどういう意図でリリースしているのかということを語るが、他のバンドに比べたらフルアルバムのスパンは長いけれど、その間にミニアルバムやEPを複数リリースしているだけに全く間が空いている感じがしないというか、常にリリースしてツアーをやっている感すらあるフレデリックの活動ペースがそうした制作とリリースの方針の元に組まれていることがこの上ないくらいにわかりやすく伝えられると、
「よく、「今までで1番印象に残ってる時はいつですか?」とか「1番楽しかったのはいつですか?」って聞かれることがあるけど、俺にとってはいつだって今、この瞬間が1番楽しい。みんなもそうやって今が最高って思ってくれていたらいいな」
という言葉は、ここまでに何度も感じてきた、フレデリックが「今」のバンドであることを本人が本当にそう思っているということ、何故フレデリックが「今」のバンドであり続けているのかということを改めて証明するものであった。今が1番楽しいバンドが過去を振り返るようなことも、はるか先の未来を想像することもない。全ては今をどう生きるか、どう楽しむかでしかないし、そのためのダンスビートをフレデリックは鳴らしているということだ。
その最新系とでも言うべき、和田アキ子に提供してバズった「YONA YONA DANCE」の本人歌唱バージョンでは
「ミラーボール輝いて 心照らしあっていく
暴き出して頂戴表情を」
というフレーズでまさに心を照らして表情を暴くように客席頭上にあるミラーボールが輝く。健司のボーカルもサビの締め方には和田アキ子の歌唱にも通じる、歌謡曲的なコブシのある歌唱にも感じるのだが、そもそもいきものがかりなどのもっと有名なアーティストにも曲を提供してもらっている和田アキ子は何故今フレデリックにこの曲を提供してもらったのか?
それは和田アキ子がライブではMark Ronsonが制作してBruno Marsが歌った「Uptown Funk」をカバーしていたりと、常に最新のファンク、ソウル、ダンスミュージックのリスナーであり、それを取り入れて自分自身の音楽を進化させている、ワイドショーのご意見版というイメージが強いけれど、実は現在進行形のミュージシャンだからである。それは「今」でしかないバンドであるフレデリックの生き様と確かに通じる姿勢であり、音楽性や曲もそうだけれど、それ以上にそうした精神性によって共鳴している存在なんじゃないかと思う。いつかこの曲で両者のコラボを見ることができたら、それはこれ以上ないくらいに、踊らにゃ損でしかないくらいに踊り狂ってしまうものになるはずだ。
そして最後に演奏されたのは音源としては最新曲になる「ANSWER」のフレデリックバージョン。もちろんこの曲も「フレデリズム3」において重要な位置を担う曲であるが、このライブの2日後にはこの曲を共作、歌唱した須田景凪との対バンライブが控えている。そこでは間違いなくコラボとして演奏されるだろうし、そうすることによって、この日のフレデリックの曲でしかないという単独で演奏されたイメージも変わるはずだ。
「一体今は何時何分何秒?」
という、やはり「今」を自分たちのロックサウンド、ダンスサウンドで描き出す姿勢こそが、フレデリックがこの曲のタイトルを「ANSWER」とした理由だった。
演奏が終わると健司は
「今日楽しかったっていう人、両腕を上げてもらえますか!」
と言い、観客の両腕が上がると、
「音楽が大好きだっていう人はさらに両腕を上げてもらえますか!」
と、その腕はさらに高く上がった。その問いにこんなにも一切の疑念や後ろめたさなく、胸を張って両腕をあげて応えることができるのは、我々の目の前にいる、我々の愛するバンドが音楽が大好きで仕方がなくて、その音楽が大好きであるということをそのまま自分たちの曲に昇華していて、我々がその曲に自分たちが音楽が大好きであるという気持ちを預けたり、乗せることができるからだ。
健司が最後に深々と頭を下げたのはこの日会場に来てくれたということはもちろん、音楽を大好きでいてくれること、つまりは自分たちと同じことを思って生きてくれていることへの感謝を示しているかのようだった。
1.飄々とエモーション
2.ディスコプール
3.KITAKU BEATS
4.オドループ
5.名悪役
6.FUTURE ICE CREAM
7.サイカ
8.Wake Me Up
9.正偽
10.Wanderlust
11.かなしいうれしい
12.逃避行
13.スキライズム
14.TOGENKYO
15.TOMOSHI BEAT
encore
16.YONA YONA DANCE
17.ANSWER
フレデリック × 須田景凪 「ANSWER」 @Zepp DiverCity 2/6 ホーム
THE BAWDIES 「BLAST OFF! TOUR 2021-2022」 @Zepp DiverCity 1/30