今年リリースしたシングル「シュガーソングとビターステップ」が今年のロックバンドのシングルではトップクラスの売り上げを記録し、ここにきて一躍大ブレイクを果たした、UNISON SQUARE GARDEN。
今年7月に行った、初の日本武道館ワンマンの素晴らしさも未だに脳裏に焼き付いている中、全国ツアーを開催。すでに東京は来年初頭にNHKホール2daysが決定していたが、追加公演としてこの日、ツアーでのライブハウスとしては最後になる、新木場STUDIO COASTでワンマンを開催。
武道館も即完だったバンドなだけに、さすがに超満員の中、いつものようにイズミカワソラ「絵の具」のSEでメンバーが登場すると、悲鳴にも似た声が上がるくらいに一斉に観客がステージ前方へと詰めかける。
この日のスタートは10周年記念アルバム「DUGOUT ACCIDENT」の最後に収録された「さわれない歌」からスタート。斎藤(ボーカル&ギター)の歌声はいつも通りに澄み渡るが、久々にライブハウスで見ると、田淵のベースと、打ち込み対応でこの時はヘッドホンをしている鈴木のドラムの音が大きく聴こえる。田淵はコーラスが多いこの曲ではあまりステージ上を動くことはないが、続く「kid,I like quartet」では堰を切ったようにベースをぶん回したり、抱えながら走ったりと、やはり田淵である。
「天国と地獄だ!」
と斎藤が言っての文字通り「天国と地獄」ではこの日最初の狂騒的な空間へ。やはりライブハウスだと特別な演出などが一切ないだけに、バンドの演奏だけで持っていく。鈴木は時折立ち上がって片手は空中を叩いたりしているのに、音が聞こえているような感じがするのはなんなんだろうか。
このバンドはライブの時にステージから一切煽ったりすることをしないバンドだが、「きみのもとへ」では客席でリズムに合わせて全く乱れぬことのない手拍子が起こる。決してそれに対してメンバーがリアクションを取ることはないが、斎藤の歌っている顔はどこか嬉しそうなように見える。
ここまでシングル曲を全くやっていないとは思えないくらいに盛り上がりまくる中、この日最初に演奏されたシングル曲は「流星のスコール」。決して派手な曲でも盛り上がる曲でもないが、後にリリースされてきたシングル曲達を考えると、この曲はユニゾンの歴史の中でもかなり重要な位置を占めるシングル曲だと思う。
「結構流されてる人もいるから、助け合いながら、自由に楽しんでください!」
と斎藤が挨拶がてらに言うと、観客の「はーい!」という素直な返事が飛ぶ中、
「久しぶりの全国ツアーということで、新曲を作ってきました!」
と言うと、新曲を披露。まだタイトルは発していなかったが、斎藤の重厚なギターリフと、王道なメロディにして「シュガーソング~」を経てこその言葉数、言葉のメロディへの乗せ方が光る曲。
冬になっても変わらずに演奏されるキラーチューン「桜のあと (all quartet lead to the?)」から、武道館ではまさかの演奏されなかった、「シュガーソング~」以前のユニゾンの代表曲「オリオンをなぞる」と、シングル曲が続くと、斎藤が口を開き、
「今回のツアーは結構全国を細かく回ってるんだけど、やっぱり地方だと小さいライブハウスになることも多くて。そうするとステージも小さいから、こんな横で凶器を振り回してるやつを間接視野で意識してないといけないんだけど、今日はステージが広いから安心してます(笑)
で、ツアーに行くと、移動中とか寝てる時に体が固まっちゃうんですけど、声を出すのは体全体を使うから、マッサージをよくしてもらうんですよ。でも、ホテルの部屋に来てもらってマッサージをしてもらうってのが僕はすごい嫌で。自分が寝るベッドの上におばちゃんが乗って、そのぬくもりが残るわけじゃないですか(笑)それが絶対嫌なんで、店に行ってやってもらうんですけど。
地方あるあるで、地方のマッサージは店の名前を見ただけだと、ちゃんとしたマッサージ屋なのか、エロいマッサージ屋なのかがわからない、というのがあって(笑)
僕は一回もエロいのを引いたことがないんだけど、この前、ホテルの中にあるマッサージならちゃんとしたマッサージだろう、と思って、ホテルの中のマッサージ屋に行ったんですね。そしたら薄暗い部屋の中に通されて、まずはフットマッサージですって言われてマッサージしてもらうんだけど、50歳くらいのおばちゃんが、下は浴衣、上は田淵くらいに胸元が開いたTシャツを着てて(笑)だからめっちゃおっぱいが見えるのね(笑)
それで足が終わったから、普通のマッサージになったんだけど、変な場所を触られたらなんか言って断ろうと思って。いきなり拒否したらそのおばちゃんの女性としての尊厳を傷つけるかもしれないから(笑)
そんな感じで警戒してたんだけど、腰をマッサージしてもらったら、そのおばちゃんがめちゃくちゃマッサージ上手くて(笑)それで次の日めちゃ良いライブが出来ました。ありがとうございました(笑)」
と、この日まで温めていたという地方ネタで爆笑をかっさらうと、独特なギターフレーズが面白い「チャイルドフッド・スーパーノヴァ」が始まるのだが、MCとのギャップがすごくて最初はみんな少し戸惑っていた感すらある。
このバンドの曲の中では音数が極端に少ない、斎藤の歌を際立たせる「夕凪、アンサンブル」ではまさに夕凪というようなオレンジの照明がステージを照らし、武道館では最初に演奏された「誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと」、否応なしにクライマックス突入を意識させる、アルバム曲とは思えないほどのキラーチューン「シャンデリア・ワルツ」と続くと、
「せっかくだからもう1曲新曲を」
と言って、さらなる新曲「パンデミクス・サドンデス」を披露。こちらはこの直後に演奏された「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」にも通じる、狂騒的なロックチューンだが、このタイプの曲だと、バンドの演奏力の高さを実感させられるとともに、田淵の暴れっぷりが実に面白い。
そしてやはりこの日最大の歓迎で迎えられたのは「シュガーソングとビターステップ」。イントロから観客は飛び跳ねまくるという、もはやこのバンドの代表曲、というだけでなく、イントロが流れるだけで会場、聴いている人の気持ちを一変させられるような曲になっているんだと実感させられる。
そして田淵が大ジャンプを決めた「場違いハミングバード」から、「DUGOUT ACCIDENT」収録の新曲「プログラムcontinued」というラスト。これまでのバンドの曲や歌詞を連想させるフレーズが出てくるのは、友人バンドであるa flood of circleの最新シングル「花」と同様だが、この曲は歌詞だけでなく、サウンドもこれまでの曲を彷彿とさせるフレーズが多いだけに、最初の一瞬だけは「フルカラープログラム」かと思ってしまうが、バンドの歴史を1曲でこれだけ実感させてくれる曲を作れるのは見事としか言いようがない。
アンコールでは斎藤がツアーTシャツに着替えて登場し、「黄昏インザスパイ」をアンコールというよりは新たなライブの始まりのように鳴らすと、
「やっぱりワンマンは最高だね!僕らのライブは音楽だけしかない。だから、他のバンドのライブに比べたら地味に感じるかもしれない。だけど、僕らはこれが1番楽しいって信じてるんで」
と斎藤が自身のブレないスタイルについて語る。どんなに音楽以外の部分が面白かったりしても、音楽の部分がしっかりしていないと、いずれは飽きられてしまう。でもユニゾンが10年にわたって、飽きられそうな気配は全くないどころか、じわじわと人気を拡大し、ついに大ブレイクを果たしたのは、徹底的にその音楽の部分、曲であり演奏でありをひたすらに研ぎ澄ましてきたから。
そして初期の頃からその音楽の部分を研ぎ澄ませ続けてきた「箱庭ロック・ショー」、さらには「ガリレオのショーケース」というラスト。しかし「ガリレオのショーケース」の時には田淵のベースのストラップが切れてしまい、スタッフが代わりのベースを用意するも、「今じゃない!」的なリアクションを取り、途中までは肩にかけることなく、両手のみでベースを支えて弾き、間奏でようやくベースを取り替える。
一方で鈴木は立ち上がってドラムを叩きながら、着ていたコートを脱ぐのかと思いきや、それを頭からかぶって、前が見えない状態でドラムを叩くという、「何やってんの!?」というパフォーマンスを見せる。最後には田淵が前方宙返りを決めると、
「バイバイ!」
と斎藤が言い、鈴木はコートを頭にかぶったままでステージを去って行った。
大ブレイクを果たし、武道館ワンマンを終えてもこれまでと変わることなく、自分たちがやりたいようにだけライブをやり、自分たちが作りたい曲を作り、それを観客に自由に楽しんでもらうというこのバンドの姿勢は1mmたりとも揺らがない。きっと、バンドが続く限りはずっとこうやっていくんだろう。
意外なほどに早く届けられた新曲2曲は、今後どういった形で世に送り出されるのだろうか。「徹頭徹尾~」の時もそうだったが、新曲をライブではやりまくってるのにCD化するのは忘れかけた頃、みたいなパターンも結構多いバンドなだけに、どうなるのかはまだ全然わからない。というか、ちゃんと形になるかどうかもわからないけど。
1.さわれない歌
2.kid,I like quartet
3.コーヒーカップシンドローム
4.天国と地獄
5.きみのもとへ
6.流星のスコール
7.新曲
8.シューゲイザースピーカー
9.桜のあと (all quartet lead to the?)
10.オリオンをなぞる
11.チャイルドフッド・スーパーノヴァ
12.夕凪、アンサンブル
13.誰かが忘れているかもしれない僕らに大事な001のこと
14.シャンデリア・ワルツ
15.パンデミクス・サドンデス (新曲)
16.徹頭徹尾夜な夜なドライブ
17.シュガーソングとビターステップ
18.場違いハミングバード
19.プログラムcontinued
encore
20.黄昏インザスパイ
21.箱庭ロック・ショー
22.ガリレオのショーケース
LIVE SPECIAL ”fun time 724” at Nippon Budokan 2015.7.24 Trailer
http://youtu.be/2kCcILOCmZo
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