ROCK IN JAPAN FES.2018 day4 @国営ひたち海浜公園 8/12
- 2018/08/14
- 00:55
いよいよ最終日。この日も朝こそ天気が良くないが、そこはかつて「悪魔と契約した男」(by ストレイテナー・ホリエアツシ)こと渋谷陽一が主催するこのフェス。開演が近づくにつれてどんどん暑さが増していく。
LAKE STAGEの山崎洋一郎による前説では、このフェスが来年20周年を迎え、なんと5日間開催になるという発表。2週目が山の日の振り替えで月曜日も祝日になるからこそだが、20周年目にそうした偶然が重なるというあたり、このフェスはやはり何か凄まじいものを引き寄せる力を持っている。
10:30~ GLIM SPANKY [LAKE STAGE]
昨年のBUZZ STAGEから一気にジャンプアップ。様々なフェスに呼ばれるようになったGLIM SPANKY。2年目で早くもLAKE STAGEに到達し、トップバッターを務める。
サイケデリックな衣装の松尾レミと金色の鮮やかなジャケットを着た亀本寛貴とサポートメンバー3人がステージに登場すると、松尾のハスキーな声が骨太なロックンロールに乗る「愚か者たち」からスタート。初っ端から一切踊れず盛り上がるわけでもないというこのバンドのスタイルは独特である。
民族音楽的なパーカッションの打ち込みなども使った「END ROLL」、大型タイアップ効果もあってかたくさんの腕が上がる「怒りをくれよ」、熱く燃え上がるというよりはジリジリと熱を増していく新曲「ハートが冷める前に」と、広いステージになってもあくまで飄々と、自分たちのペースは全く崩さない。だからこそ演奏が走ったりすることもなく、どっしりとした安定感を感じさせる。
「ロックってどう楽しんでもいいから。お酒飲みながらとか座りながらとか寝ながらでもいいし。よく「ここに全部置いていけ!」っていう人もいるけど、今日は長いから全然ここに全部置いていかなくていいから(笑)」
と亀本のMCも実に飄々としているが、「褒めろよ」では亀本の弾きまくるギターがバンドの演奏と松尾のボーカルにドライブ感を与え、青春群像的な歌詞がこのLAKE STAGEの解放感によく似合う「The Flowers」と続くと、松尾のおなじみの曲の前振り的なMCから大名曲ブルース「大人になったら」へ。最後のサビでの一気にドラムが手数が増えるライブアレンジはいつ聴いても本当にカッコいい。
そしてラストはそうしたこのバンドの独自の立ち位置をそのまま曲にしたかのような「アイスタンドアローン」。このスタイルを貫いたままで日本武道館ワンマンやこのステージにたどり着いたのは本当にすごいし、こうしたロックフェスだけならず、LUNA FESなどの完全にアウェーな空気を持つフェスでも全くブレないあたり、これからも自分たちのやり方で突き進んでいくはず。
このLAKE STAGEをほぼ満員にしていたのもすごい。次に出るグループを待っていた人が多かったのもあったかもしれないが…。
1.愚か者たち
2.END ROLL
3.怒りをくれよ
4.ハートが冷める前に
5.褒めろよ
6.The Flowers
7.大人になったら
8.アイスタンドアローン
ハートが冷める前に
https://youtu.be/LunDRnXwwec
11:05~ Czecho No Republic [SOUND OF FOREST]
昨年はLAKE STAGEでSKY-HIとのコラボも見せた、Czecho No Republic。今年はかつてトリも務めたSOUND OF FORESTに帰還。八木類脱退後初の出演である。
GLIM SPANKYが終わってからいくとすでにライブが始まっていたのだが、やはり4人が横一列に並んだ立ち位置は違和感を感じざるを得ない。
当然ながら八木がいなくなったことによってギターあるいはキーボードが一本足りなくなっているのだが、その穴をカバーするかのようにタカハシマイがアコギよりもエレキを弾く頻度が高くなっている。
その編成を前提に作られたのであろう新曲「Baby Baby Baby Baby」はチェコらしい実にポップな曲ではあるのだが、そこからは「この4人でこんなバンドを続けていく」という確固たる強い意志を感じさせる。
「テレパシー」ではタカハシマイ主導による振り付けが森の中いっぱいに広がってさらに祝祭感を増していく。
髪をかなり短くした武井優心によるメンバー紹介からの「MUSIC」では砂川がメガネをふっ飛ばしながらギターを弾くという熱演を見せ、最後はこのメンバーでこのフェスのステージに立てている感謝の気持ちを表明するように演奏された「好奇心」。
メンバーが減って形が変わるのは不安な要素が実に大きい。音が減ることによって感じるものがまるっきり変わってしまう可能性も強いから。しかしチェコのライブにある楽しさやハッピーな空気は全く変わっていなかったし、新曲を聴くとこれからもこのバンドに期待できる。そこを最も引っ張っているのは、本来は根暗な武井の作る音楽をこのバンドのカラーに染め上げていくことができるメンバーたち、とりわけ加入した時から「このバンドで生きていく」という決意を持っていたというタカハシマイであるような気がしている。
1.Festival
2.Amazing Parade
3.Baby Baby Baby Baby
4.テレパシー
5.MUSIC
6.No Way
7.好奇心
テレパシー
https://youtu.be/XPEXHpjPhxY
11:40~ 忘れらんねえよ [PARK STAGE]
忘れらんねえよが最初にこのフェスに出演した時に立ったのがこのPARK STAGEだった。しかし去年から巨大化したこのPARK STAGEに立つのは初めて。SOUND OF FORESTが最高キャパだった忘れらんねえよ、メンバーは柴田1人だけになってしまったが、ついに2番目のキャパのステージに進出。
サウンドチェックからRADWIMPS「前前前世」を演奏したりというやりたい放題っぷりだったが、ギター・カニユウヤ(突然少年)、ベース・イガラシ(ヒトリエ)、ドラム・タイチ(爆弾ジョニー)という実力派サポートメンバーたちを迎えた本番でも、同じ時間にGRASS STAGEに出演している、ゲスの極み乙女。の「キラーボール」を演奏したかと思いきや、菅田将暉に提供した「ピンクのアフロにカザールかけて」を超パンクバージョンで演奏。というか、タイチとイガラシのリズム隊が実にパンク。爆弾ジョニーはともかく、ヒトリエにパンクな要素はあまり感じないが、その二人が忘れらんねえよで揃うことによってこんな化学変化が起きている。
サポートギターがいることによって、ほとんどギターは弾かずに歌唱に専念し、もはや上手く歌おうなんていう気はさらさらなく、このステージに立てたこと、このメンバーでバンドをやれていることの衝動をぶつけるかのように叫びまくりの柴田はやはり同じ時間にLAKE STAGEに出演しているモーニング娘。の15年前のTシャツ(メルカリで5900円で買ったらしい)を着ており、
「ゲスの極み乙女。も聴いて、モーニング娘。も見たからもう他のステージ行かなくていいだろ!」
というめちゃくちゃな理由をつけていたが、もちろん忘れらんねえよを見に来た人たちが今さら他のステージに移動するわけはないのである。
「ばかばっか」では客席に突入しないというこのフェスのルールは守りながらもビール一気飲みのパフォーマンスを披露し、
「爆音でチャットモンチーを聴いた」
という柴田が忘れらんねえよを始めた原点が歌われた「Cから始まるABC」の後は、
「このフェスとかに出る以外に夏の予定が何もない俺だが、一つだけあった。チャットモンチーの武道館ライブを見に行ったんだ。360°客席になってて、俺はステージ真後ろの最前列でえっちゃんのことをガン見していた(笑)
ライブは素晴らしかった。でもえっちゃんが左手を高く上げるたびに見えるんだよ!薬指にした指輪が!俺への当てつけですか…」
と、チャットモンチーから感動をもらった話をするのかと思いきや、かなり歪んだ形でのチャットモンチーへの愛を語り、そのままチャットモンチートリビュートに参加した「ハナノユメ」の爆音カバーへ。
柴田がチャットモンチーのことをライブで語るとやっぱりそうした目線になってしまうが、こうして忘れらんねえよが歌い継いでいくことで、チャットモンチーの曲はチャットモンチーが活動していた時に出会えなかった人たちにも伝わっていく。本人はそうしたことを決して口にしないが、そのことを絶対わかった上でこの曲をライブでやるようにしているのだと思う。
そうして柴田の衝動がさらに炸裂していく中で演奏された「この高鳴りをなんと呼ぶ」は忘れらんねえよがただ面白いバンドではなく、感動を与えてくれる存在であることを証明していたし、大合唱が起きた「忘れらんねえよ」もそれは然りで大団円…かと思いきや、最後にはなんと新曲を演奏。
「踊れ引きこもり」というタイトル通りに歌詞の内容は忘れらんねえよでしかないのだが、サウンドはラテンテイストなダンサブルなもの。すると曲中でいきなりタイチがドラムセットからイガラシの横に置かれたキーボードに移動すると、架空のラジオ番組という設定の寸劇が始まるのだが、タイチのセンスが独特すぎて完全に意味不明。その間に柴田とイガラシはTシャツを脱ぎ捨て、ステージ上のメンバーが全員上半身裸というこれまた意味不明な展開になってから最後のサビを演奏。まだだいぶ色々と改良していく余地がある曲だが、果たしてどんな形で世に出るのだろうか。
柴田も
「1人になったのにこうしていろんな人が力を貸してくれて、1人になった俺をロッキンオンがこんな広いステージに出してくれた」
と感謝を告げていたが、今回のサポートの3人やワンマンでサポートをしたgo! go! vanillasのプリティ、この体制になるまでサポートギターを務めたLEGO BIG MORLのタナカヒロキ。みんな自分のバンドがある人たち。そんな人たちが柴田と忘れらんねえよのファンのために曲を覚えてライブで演奏してくれる。
それはひとえに柴田の人柄によるものだが、その姿を見ていると、ロックバンドは「人」なんだと改めて実感するし、だから自分はロックバンドが好きなんだとも思う。忘れらんねえよは柴田1人になってしまったけど、それでも続けていく姿からはそうした大事なことを教えてくれる。
1.キラーボール
2.ピンクのアフロにカザールかけて
3.ばかばっか
4.Cから始まるABC
5.ハナノユメ
6.この高鳴りをなんと呼ぶ
7.忘れらんねえよ
8.踊れ引きこもり (新曲)
ピンクのアフロにカザールかけて
https://youtu.be/da5SVvOhQm8
12:15~ BRADIO [SOUND OF FOREST]
去年はLAKE STAGEに出演したが、今年は2年ぶりにSOUND OF FORESTに戻ってきた、BRADIO。初出演でWING TENTのトリを務めてから、4年連続の出演である。
フェスでは基本的にはメンバー3人プラスサポートドラムとキーボードという形なのだが、この日はホーン隊とコーラス隊にパーカッションまで入った、ワンマンかのようなフルセット。これだけたくさんの人が立てるくらいの広さのステージにこのバンドが出れているということでもある。
そのフルバンドが分厚い音を鳴らす「きらめきDancin'」からスタートすると、西武ライオンズの外崎選手の応援歌としてもおなじみの定番曲「Flyers」も他のフェスで見るよりもさらにサウンドに迫力が増している。
そのサウンドの中でもホーン隊の存在が1番大きい曲は新作アルバム「YES」のリード曲である「Boom! Boom! ヘブン」だろう。ファンクという軸はぶれないままにラテンなどの肉体的なダンスミュージックの要素を取り入れたこの曲は分厚いサウンドが実によく生きる。
グルーヴマスターこと酒井のベースソロから、この日も見た目通りにパワフルなボーカルを響かせていた真行寺がダンスのやり方を指南しながら、Earth, Wind & Fire「September」を口ずさみ、いつもよりもはるかに長く何度もダンスを繰り返すと、サビでそのダンスをする「Back To The Funk」でファルセットボイスを響かせ、ラストは夏のためのパーティーチューン「スパイシーマドンナ」。
大山のギターソロに合わせて真行寺は卑猥な腰の動きを見せるという張り切りっぷりを見せていたが、そうなるのも仕方ないくらいの盛り上がりっぷりで、ステージにいた人数も多かったが、客席にいる人数も本当に多かった。これならば来年はLAKEに戻る可能性も高いし、そうした広いステージでたくさんの人が集まれば集まるほど真価を発揮できるバンドだと思う。
1.きらめきDancin'
2.Flyers
3.Boom! Boom! ヘブン
4.Back To The Funk
5.スパイシーマドンナ
Boom! Boom! ヘブン
https://youtu.be/Z_prrkQKX_Y
13:00~ ヤバイTシャツ屋さん [GRASS STAGE]
2年前にWING TENTに初出演。去年はRADWIMPSの裏でLAKE STAGEの大トリ、そして今年はGRASS STAGEに進出と、一気に、でも小さいステージから確実に駆け上がってきた、ヤバイTシャツ屋さん。先輩の岡崎体育と同じに初GRASS進出である。
「気が済むまでやりや!」
とこやまがもりもとにしっかりサウンドチェックすることを促して曲を演奏すると、おなじみの「はじまるよ~」という脱力気味のSEで登場するが、「Tank-top in your heart」の高速メロコア・ラウドサウンドからは全く脱力した感じなど見られず、早くも砂煙がステージ前に舞うくらいの盛り上がりを見せている。
この序盤で去年はアンコールの最後に演奏された「あつまれ!パーティーピーポー」を演奏するというところが、バンドが1年間かけてさらなるキラーチューンを生み出したことを実感させられるが、「メロコアバンド~」ではこれまでは全員その場に座らせてから一斉にジャンプ、という流れだったのが、全員膝に力を溜めてからジャンプという流れにすることにより、時間を無駄に使わずに実にスムーズに曲を連発できるようになっているなど、ライブの流れ自体もしっかり考えられるようになってきているのはすごい成長である。
だからこそ
「普段は3人組Youtuberとして活動してて…」
「現役女子中学生バンドとして活動してますが…」
という嘘丸出しの自己紹介以外はほとんど無駄なMCを挟まず、持ち時間にどれだけ曲を演奏できるかという方向にシフトしている。これは京都の先輩である10-FEETの先週のライブすらも彷彿とさせる。
タイトルがすべてみたいな「鬼POP激キャッチー~」からタオルをサビで一斉に振り回す(ヤバTのタオルもたくさんいた)「L・O・V・E タオル」とフェスだからこそ、広いステージだからこそ映える演出の曲を演奏しながら、「肩 have a good day」ではおなじみのこやまが感極まりそうになりながらもしばたともりもとに励まされながら歌い切るという寸劇を見せるのだが、こやまは本当に歌が上手くなった。唯一のバラードと言っていいようなこの曲をこれだけ広いステージにしっかり響くように歌えている。今年は春にポリープの手術をして、少しライブができない期間もあったが、それはこうして広い場所でライブをするために無駄なことでは全くなかったのだ。
するとこやまがこれまでに散々バンドがバカにされてきた悔しさを語りながら、
「バンドをやっていて良かった。サークルバンドが日本一大きなフェスの1番大きなステージに立ってるぞー!」
とこのステージにたどり着いた感慨を叫ぶと、そうした悔しさを曲にした、ヤバT史上最も真っ当な名曲「サークルバンドに光を」を演奏するのだが、普段のフェスではこの曲はまず演奏されることのない曲である。
それをここで演奏したということは、本当にこのバンドがこれまでにいろんな人から散々バカにされたりしてきたという、味わってきた様々な悔しさがこのバンドの原動力になってきたこと、普段はヘラヘラしているように見えて悔しさを感じるくらいに真剣に音楽とバンドに向き合ってきたということである。だからこそこの瞬間はヤバTのライブとは思えないくらいに感動的だった。
前から後ろまでウェーブ、後ろから前までウェーブというGRASS STAGEだからこそ圧巻の観客巻き込みパフォーマンスも「これだけたくさんの人が見にきてくれた」ということを改めて実感させてくれただろうし、
「時間ないから鬼速で!」
ともりもとに言うと、本当に元の曲よりもめちゃくちゃ速くアレンジされた「ヤバみ」でも3人は全然慌てることなくしっかり演奏し、のちにツイッターでこやまが言っていたが、アイコンタクトで2番を削るということまでしたらしい。
当初は決してライブをやりまくるバンドではなかったヤバTが、今では
「デカいとこで1日やるよりもZeppで5daysやりたい」
と言うくらいまでにライブハウスで生きるバンドになったからこそこういうことができるようになった。バンドは人気だけでなく技術も確実に向上している。
そしてラストは去年はまだなかった、ヤバTの新たなキラーチューン「ハッピーウエディング前ソング」。その光景はバカにされたりしてきたヤバTの曲が、日本のロックシーン、フェスシーンのアンセムになり得たということを証明していた。
初日にこのステージに初めて立ったキュウソネコカミもそうだったし、きっと岡崎体育もそうだっただろう。ここまで行けるわけがないと言われてきたアーティストたちがこのGRASS STAGEに立って、面白いパフォーマンスではなく、ひたすらにその音楽を中心にしたライブを見せている。それは紛れもなくこのフェスだからこそ見れた、感動的な光景だった。
リハ.Universal Serial Bus
リハ.とりあえず噛む
1.Tank-top in your heart
2.あつまれ!パーティーピーポー
3.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
4.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
5.L・O・V・E タオル
6.肩 have a good day
7.Tank-top of the world
8.サークルバンドに光を
9.無線LANばり便利
10.ヤバみ
11.ハッピーウエディング前ソング
ハッピーウエディング前ソング
https://youtu.be/lVIHyj9qVy0
14:00~ ACIDMAN [PARK STAGE]
かつてはGRASS STAGEで大トリも務めたこともある、ACIDMAN。久しぶりの出演で初めてGRASS STAGE以外のステージに出演。
おなじみのSEで手拍子が起きる中にメンバー3人が登場すると、大木がギターを手にして
「何を手に入れた? 何を手に入れた?」
とサビのフレーズを歌ってから「リピート」でじっくりとスタート。バンドのグルーヴの安定感はさすがのものがある。
直近のダンサブルなサウンドと大木らしい歌詞の「ミレニアム」、バンドの代表曲の一つである「赤橙」と新しい自分たちの形と観客が聴きたいであろう曲のバランスを取るあたりは見事だが、「ある証明」では佐藤のキャップが吹っ飛び、このフェスでも何度も描いてきたクライマックスを作り上げて行く。
「俺たちがメジャーデビューしてからずっとロッキンオンジャパンとこのフェスにはお世話になっていて。このフェスがなかったら今の俺たちはないです!」
とバンドにとってもこのフェスが特別な存在であることを語ると、アッパーな「MEMORIES」から、
「1秒でも、一瞬でもいい。俺たちの存在がみんなのこの夏の思い出の中にいてくれたら」
と大木が語ってから最後に演奏されたのは、大木が慈しむように、佐藤と一悟もそれに共鳴するかのように音を紡ぐ「愛を両手に」。
ファンの人気投票では「ALMA」が1位になっているし、ワンマンでも最後にはバラードで締める。そのACIDMANだからこそのスタイルと、スリーピースの極限を突き詰めるようなライブは久しぶりのこのフェスにおいても全く変わっていない。
近年は年末のCDJでは動員がかなり厳しい姿も見ているが、この日はまだこの規模のステージを任せられる存在であることをしっかりとアピールできていた。
そしてMCでも触れられていた通り、主催フェスなどで出店していた一悟のラーメン屋がこのフェスにもついに登場。見た目はさっぱりしてそうだけど背脂の入ったスープは濃厚、だけど飲み干せるくらいのさっぱり感は、見た目はいかつく見えるけど実際はあらゆる人にいじられまくっている一悟の人間性そのもののようだった。つまり美味しかったということ。
1.リピート
2.ミレニアム
3.赤橙
4.ある証明
5.MEMORIES
6.愛を両手に
ミレニアム
https://youtu.be/wIjNQGr4R1o
この後にGRASSに戻ると、ORANGE RANGEが通路にはみ出すくらいの凄まじい動員を見せていた。近年はLAKE STAGEに出ていたとはいえ、やはり誰もが知るヒット曲を持つバンドは強いし、これだけ若手バンドがGRASS STAGEに進出するようになってきても、ORANGE RANGEが作ってきた名曲たちは全く色褪せていない。
15:30~ 04 Limited Sazabys [GRASS STAGE]
ヤバT同様に3回目の出演でGRASS STAGEに到達。自身も主催フェスを毎年名古屋で開催し、自分たちの時代を作るバンドとして、パンク・メロコアシーンを代表する存在として、フォーリミが初のGRASS STAGEに立つ。
近年定着してきたオリジナルSEでメンバーが登場すると、1曲目の「fiction」で早くもステージには煙が吹き上がるという、まるでこのバンドの野外ワンマンに来たかのような演出。
続く「monolith」では
「きっと間違えられないな ロッキンのGRASS STAGEですよ!」
とGENが抑えきれない喜びを歌詞に変えて叫ぶ。
「みんなをもっといいところに連れていきます!」
という言葉からの「Warp」、自分たちが新たな時代のヒーローになる宣言とも取れる「My HERO」と、初のGRASSであっても緊張感はほとんど感じず、実に伸び伸びと自分たちの音楽を鳴らしている。それはすでにYON FESもそうだが、様々な大きいステージを経験した上でこのステージに立っているからだろう。KOUHEIのカメラ目線もいつもよりも多く、それも全て笑顔である。
RYU-TAによるコール&レスポンスをしてからの「Chicken race」ではメンバーも観客も元気いっぱいに飛び跳ね、真昼に降り注いだ「midnight cruising」は思わず空を見上げてしまうくらいの素晴らしい演奏だった。流星群こそ見えないが、晴れ渡った空(この日も昼からすごく晴れた)に実にもこの曲は実によく似合う。
「こうしてデカいステージに立つと、バイトしてた頃を思い出す。つい数年前までバイトしてたんですよ。その頃によくやっていた曲をやります、GRASS STAGEで、Grasshopper」
と言って演奏された「Grasshopper」はフェスでは滅多に演奏されない、「GRASS」という冠を戴いたこのステージだからこそ演奏された曲だが、曲のクライマックス部分では中央のスクリーンに
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズが映し出される。それはまるで武道館ワンマンの時と同じように、この日この場所で鳴らされるために作られたかのようだった。このステージを経験したフォーリミの明日も、それを見届けることができた我々の明日も、この日までとはまた違うものになるはずだ。
そしてこのステージへ宛てた手紙かのように鳴らされた「Letter」に思いを込めると、ラストは全ての迷える人たちの目の前に立ちふさがるものを切り裂くような「Squall」から
「日本のロックシーンに光が射しますように!」
と力強く、そして
「BACK LIFTやENTHとか、ずっと一緒にやってきたバンドたちが一緒にこのフェスに出れているのが本当に嬉しい」
と、今や日本のロックシーンを担う存在としての責任感や意志をも感じさせた。
フォーリミのライブを見ると、なんでこんなに夢を感じるのだろうか。それはこのバンドのサウンドがパンク・メロコアというスタイルであることも決して無関係ではないと思うが、この爽快感は他のバンドのライブでは感じることができないもの。それがあるからこそこのバンドはこうして唯一無二の存在になったとも言える。
他の同世代のバンドたちと比べると、初出演するまではかなり長かった。だからフォーリミはこれまでにLAKEとPARKと今回のGRASSという大きなステージにしか出たことがない。だから決してこのフェスで地道にステージを広くしてきたというストーリーを持つバンドではないのだが、これからそのストーリーを紡いでいくのを見たい。それはもちろん、流星群がこのステージの夜に降り注ぐような瞬間だ。
リハ.nem…
リハ.knife
リハ.days
1.fiction
2.monolith
3.Warp
4.My HERO
5.Remember
6.escape
7.Chicken race
8.midnight cruising
9.Grasshopper
10.Letter
11.Squall
12.swim
Squall
https://youtu.be/NRhmgBtRKBA
16:15~ 魔法少女になり隊 [HILLSIDE STAGE]
RO JACK枠で優勝して出演を勝ち取って以降は毎年おなじみとなっている、RPG型バンド、魔法少女になり隊。WING TENTやBUZZ STAGEに何度も出演してきたが、今年はHILLSIDE STAGEへの出演。
フォーリミが終わってから行くともう始まっていたのだが、機動性の高そうな衣装の火寺バジルとGARIがステージを動き回りながら歌う、和の要素を取り入れた「ヒメサマスピリッツ」の段階ですでに客席は満員。もはやステージが見えなそうな位置まで人がいる。
しかしこの日はこのステージだからか、このバンドのライブにおける重要アイテムであるモニターがなく、バンドの音と曲のみで勝負するというストイックな内容になっていたのだが、原曲のポップさを活かしながらも完全にこのバンドのスタイルであるデジタルなラウドロックに変貌した「おジャ魔女カーニバル!!」を始め、バンドはそのストイックな内容で見事に勝ちを収めるようなライブを見せた。
汗を飛び散らして煽りまくりながらギターソロを決めるスナイパーのウイ・ビトン、髪の先を緑色に染め、セクシーな衣装を着た剣士の明治によるギターコンビも短い時間の中で夏っぽい「シェキナゴン」からのメロディを聴かせる「願い星」でサウンドの押し引きを見せ、「完全無敵のぶっとバスターX」で再びアッパーかつラウドに突き抜けると、ラストはこのバンドの始まりの曲を、始まりの場所であるこのフェスで鳴らす「冒険の書1」で
「魔法少女になりたい!」
の大合唱を巻き起こし、他のメンバーが先にステージを去る中で最後に残ったバジルがスケッチブックに「またね」と書いて観客に再会を約束してステージを去っていった。
ワンマンではもはや渋谷O-EASTまで達しているし、楽曲のクオリティやライブのパフォーマンスなど、あらゆる面においてもはやこの1番小さいステージに出るようなバンドではない。まだLAKEやPARKには早いかもしれないが、もうSOUND OF FORESTまでは射程圏に捉えているところまで来ている。「アルプス一万尺」をサンプリングした新曲「START」が聞けなかったのは少し意外ではあったけれど。
1.ヒメサマスピリッツ
2.おジャ魔女カーニバル!!
3.シェキナゴン
4.願い星
5.完全無敵のぶっとバスターX
6.冒険の書1
完全無敵のぶっとバスターX
https://youtu.be/Tgn6xYv6114
その後、ステージを移動しながら、LAKEでTHE BACK HORNの「コバルトブルー」「刃」というラスト2曲で20周年を超えても全く衰えることのない衝動と野性味に改めてカッコよさを感じ、SOUND OF FORESTではワンマンでアリーナクラスでライブをやっているthe GazettEのデジタルなラウドロックと、高速ヘドバンの凄まじさに圧倒される。
それぞれが自分たちのやり方でこのフェスにおける自分たちの存在証明をしている。
17:30~ ストレイテナー [PARK STAGE]
いよいよ4日間の祝祭も終わりに近づいてきている。各ステージはついにトリのアーティストを残すのみ。このPARK STAGEで今年のトリを務めるのは、ストレイテナー。2008年のGRASS、2013年のLAKEに続き、3ステージ目のトリである。
おなじみのSEでメンバーがステージに現れると、この昼でも夜でもない時間の空によく似合う「彩雲」からスタートし、シンプルなロックンロールのアレンジになった「DSCGRPHY」、ひなっちのゴリゴリのベースが引っ張る「DAY TO DAY」とここまでは4人のロックなサウンドで引っ張る曲を連発。観客の声援に両手でピースを作ってひなっちが応えるなど、実に楽しそうだ。
「バラードやっていいですか?」
とホリエが言うと、秦基博とのコラボ曲である「灯り」をストレイテナーバージョンで響かせ、キーボードを弾きながら歌うホリエの凜とした声が今この年齢だからこそ歌えるという貫禄を感じさせる。
配信限定の最新曲「Braver」もホリエがキーボードを弾きながら歌う曲であるが、じっくりとはじまって徐々に高まっていくというタイプの曲。
「これでトリをやるのは3ステージ目。こうなったら全ステージでトリをやりたいですね(笑)あいつら、毎年ステージ小さくなってるなって言われながら(笑)
でも20年前はこんな未来が来るなんて想像していなかった」
とホリエが感慨を覚えながら、その言葉通りの曲である「The Future Is Now」を演奏すると、シンペイがウインドチャイムを鳴らし、「Melodic Storm」へ。
ストレイテナー「Melodic Storm」、THE BACK HORN「コバルトブルー」、ACIDMAN「ある証明」。20年を超えたバンドの、どれもライブではほぼ100%やる曲。自分がそれらを最も多く聴いてきたのは確実にこの会場。それが今でも聴けるのは本当に感慨深いし、これからもこの会場で聴き続けていたい。
そしてラストは、夕焼けが白いシャツを染める「シーグラス」。今年最後の海へ向かうように、この日が今年最後の夏フェスである人もたくさんいるはず。そういう人も、このフェスの後に他のフェスに行く人も同じように思いを重ねられる曲。これからこのバンドがこのフェスに出続ける限り、こうしてこの曲を聴き続けることができるはずだ。
アンコールを待つ人がたくさんいたが、時間の問題でアンコールはなかった。この続きはまた来年に。今となってはなかなか厳しいけれど、もうちょっと長い時間、多くの曲を聴きたい。
1.彩雲
2.DSCGRPHY
3.DAY TO DAY
4.灯り
5.Braver
6.The Future Is Now
7.Melodic Storm
8.シーグラス
Braver
https://youtu.be/pT5H9Yo3MEI
18:00~ サザンオールスターズ [GRASS STAGE]
そしてついに最後のアーティスト。今年の大トリは実に13年ぶりの出演となる、サザンオールスターズ。桑田佳祐は去年もソロで出ているが、やはりサザンで出演するとなるとある種の事件感すらある。
ストレイテナーを見終わってからGRASS STAGEに向かうとすでに中盤というタイミングだったのだが、端から端まで凄まじい人である。さすが国民的ヒット曲をたくさん持っているバンド。
歌詞がモニターに映し出されるというのは2005年に出演した時同様で、曲によってはダンサーも登場し、大人数編成で近年の曲と大ヒット曲、真面目なラブソングとエロさを感じさせる曲を交えて演奏していくのだが、「壮年JUMP」では歌詞を
「このイベントも来年で20周年」
とロッキン仕様に変えて大歓声を浴びる。
しかしながら何よりもすごいのは、曲間ほとんどなしで曲を連発していくという、若手パンクバンドかと思うくらいのテンポの良さ。桑田佳祐のTシャツに短パンという出で立ちも若手のようだが、結成40年、60歳を超えてこんなライブができるバンドが他にいるだろうか。もちろんメンバーの演奏も桑田佳祐の歌も素晴らしく、後半になるに連れてさらに良くなっていくという信じられないモンスターっぷり。
ほぼ唯一のMCも
「04 Limited Sazabys、凄かったですよね~。Superflyの後はやりたくない!(笑)」
という自身の前にこのステージに立ったアーティストを讃えるもので、言われた側はめちゃくちゃ嬉しかったと思う。(実際にフォーリミのメンバーはすごく喜んでいた)
変態仮面みたいなダンサーが多数登場し、桑田佳祐も変態みたいな被り物をつけた「マンピーのG☆SPOT」でダンサーに抱えられた桑田佳祐の股間に
「皆様ありがとう!素晴らしい夏を!」
というメッセージが書かれているというとんでもない終わり方で本編が終わると、アンコールの「みんなのうた」「勝手にシンドバッド」では桑田佳祐がホースで水を客席にかけまくるのだが、本編であれだけヒット曲をやったのに、アンコールでもこんな大ヒット曲をやるというのは本当に恐れ入ったし、国民的バンドが見せるエンターテイメントとは何かというものを見せてもらった気がする。それはサザンにしかできないものなのかもしれないが。
演奏が終わると、桑田佳祐の呼びかけでメンバーも花火が上がるのを見ていた。終わる時にはメンバーはステージからいなくなっていたが、
この花火を見ると、また来年もここでこうして花火を見ていたい、と心から思うのだ。
13年前、みんなで「サザンなんてもう一生見れないかもしれないぞ」って言っていた。でもこうしてまたサザンをこの場所で見て、あの時にLAKEでトリをやったELLEGARDENも10年の休止を経て戻ってきた。自分もみんなもずっと生きていたから、こうしてまた会える。 だから、生きてさえいれば、きっとまたこうして会えるはずだ。
1.希望の轍
2.いとしのエリー
3.涙のキッス
4.せつない胸に風が吹いてた
5.栄光の男
6.My Foreplay Music
7.愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~
8.闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
9.真夏の果実
10.LOVE AFFAIR ~秘密のデート~
11.壮年JUMP
12.東京VICTORY
13.ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
14.HOTEL PACIFIC
15.マンピーのG☆SPOT
encore
16.みんなのうた
17.勝手にシンドバッド
壮年JUMP
https://youtu.be/rmOPfwdJjZ4
野外フェスに毎年来たいと思うかどうかは、その場所にあると自分は思っている。そして自分はこの会場が1番好きだから、アーティストが誰も発表されていない段階で4日通し券を買って、あまりにもこの会場が好きだから、フェスが開催されていない時期にもたまにこの会場に遊びに来ている。そんなことをするような場所は他にない。それだけこの場所とこのフェスが好きなのだ。だから来年ももちろん5日間フル参加するし、その日のために毎日頑張って生きていける。
2004年、CDが出る前の銀杏BOYZがどうしても見たくて、いきなり3日間来た初参加。「毎年来たいな」ってその時に思って、気づいたら大人になって、ここに全部来るために仕事を変えて、気づいたら15年来続けていた。
このフェスが終わる時か、自分が死ぬ時まで。どちらが先からわからないけれど、ずっとそうやって生きていきたいくらいに、自分はこのフェスに来て人生が変わった。ならばその変わった人生はずっとこのフェスを中心にしたものであり続けていたい。ここに来る以上に楽しいことを知らないし、それはきっとこれからも見つからないから。今年もありがとう、ひたちなか。
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LAKE STAGEの山崎洋一郎による前説では、このフェスが来年20周年を迎え、なんと5日間開催になるという発表。2週目が山の日の振り替えで月曜日も祝日になるからこそだが、20周年目にそうした偶然が重なるというあたり、このフェスはやはり何か凄まじいものを引き寄せる力を持っている。
10:30~ GLIM SPANKY [LAKE STAGE]
昨年のBUZZ STAGEから一気にジャンプアップ。様々なフェスに呼ばれるようになったGLIM SPANKY。2年目で早くもLAKE STAGEに到達し、トップバッターを務める。
サイケデリックな衣装の松尾レミと金色の鮮やかなジャケットを着た亀本寛貴とサポートメンバー3人がステージに登場すると、松尾のハスキーな声が骨太なロックンロールに乗る「愚か者たち」からスタート。初っ端から一切踊れず盛り上がるわけでもないというこのバンドのスタイルは独特である。
民族音楽的なパーカッションの打ち込みなども使った「END ROLL」、大型タイアップ効果もあってかたくさんの腕が上がる「怒りをくれよ」、熱く燃え上がるというよりはジリジリと熱を増していく新曲「ハートが冷める前に」と、広いステージになってもあくまで飄々と、自分たちのペースは全く崩さない。だからこそ演奏が走ったりすることもなく、どっしりとした安定感を感じさせる。
「ロックってどう楽しんでもいいから。お酒飲みながらとか座りながらとか寝ながらでもいいし。よく「ここに全部置いていけ!」っていう人もいるけど、今日は長いから全然ここに全部置いていかなくていいから(笑)」
と亀本のMCも実に飄々としているが、「褒めろよ」では亀本の弾きまくるギターがバンドの演奏と松尾のボーカルにドライブ感を与え、青春群像的な歌詞がこのLAKE STAGEの解放感によく似合う「The Flowers」と続くと、松尾のおなじみの曲の前振り的なMCから大名曲ブルース「大人になったら」へ。最後のサビでの一気にドラムが手数が増えるライブアレンジはいつ聴いても本当にカッコいい。
そしてラストはそうしたこのバンドの独自の立ち位置をそのまま曲にしたかのような「アイスタンドアローン」。このスタイルを貫いたままで日本武道館ワンマンやこのステージにたどり着いたのは本当にすごいし、こうしたロックフェスだけならず、LUNA FESなどの完全にアウェーな空気を持つフェスでも全くブレないあたり、これからも自分たちのやり方で突き進んでいくはず。
このLAKE STAGEをほぼ満員にしていたのもすごい。次に出るグループを待っていた人が多かったのもあったかもしれないが…。
1.愚か者たち
2.END ROLL
3.怒りをくれよ
4.ハートが冷める前に
5.褒めろよ
6.The Flowers
7.大人になったら
8.アイスタンドアローン
ハートが冷める前に
https://youtu.be/LunDRnXwwec
11:05~ Czecho No Republic [SOUND OF FOREST]
昨年はLAKE STAGEでSKY-HIとのコラボも見せた、Czecho No Republic。今年はかつてトリも務めたSOUND OF FORESTに帰還。八木類脱退後初の出演である。
GLIM SPANKYが終わってからいくとすでにライブが始まっていたのだが、やはり4人が横一列に並んだ立ち位置は違和感を感じざるを得ない。
当然ながら八木がいなくなったことによってギターあるいはキーボードが一本足りなくなっているのだが、その穴をカバーするかのようにタカハシマイがアコギよりもエレキを弾く頻度が高くなっている。
その編成を前提に作られたのであろう新曲「Baby Baby Baby Baby」はチェコらしい実にポップな曲ではあるのだが、そこからは「この4人でこんなバンドを続けていく」という確固たる強い意志を感じさせる。
「テレパシー」ではタカハシマイ主導による振り付けが森の中いっぱいに広がってさらに祝祭感を増していく。
髪をかなり短くした武井優心によるメンバー紹介からの「MUSIC」では砂川がメガネをふっ飛ばしながらギターを弾くという熱演を見せ、最後はこのメンバーでこのフェスのステージに立てている感謝の気持ちを表明するように演奏された「好奇心」。
メンバーが減って形が変わるのは不安な要素が実に大きい。音が減ることによって感じるものがまるっきり変わってしまう可能性も強いから。しかしチェコのライブにある楽しさやハッピーな空気は全く変わっていなかったし、新曲を聴くとこれからもこのバンドに期待できる。そこを最も引っ張っているのは、本来は根暗な武井の作る音楽をこのバンドのカラーに染め上げていくことができるメンバーたち、とりわけ加入した時から「このバンドで生きていく」という決意を持っていたというタカハシマイであるような気がしている。
1.Festival
2.Amazing Parade
3.Baby Baby Baby Baby
4.テレパシー
5.MUSIC
6.No Way
7.好奇心
テレパシー
https://youtu.be/XPEXHpjPhxY
11:40~ 忘れらんねえよ [PARK STAGE]
忘れらんねえよが最初にこのフェスに出演した時に立ったのがこのPARK STAGEだった。しかし去年から巨大化したこのPARK STAGEに立つのは初めて。SOUND OF FORESTが最高キャパだった忘れらんねえよ、メンバーは柴田1人だけになってしまったが、ついに2番目のキャパのステージに進出。
サウンドチェックからRADWIMPS「前前前世」を演奏したりというやりたい放題っぷりだったが、ギター・カニユウヤ(突然少年)、ベース・イガラシ(ヒトリエ)、ドラム・タイチ(爆弾ジョニー)という実力派サポートメンバーたちを迎えた本番でも、同じ時間にGRASS STAGEに出演している、ゲスの極み乙女。の「キラーボール」を演奏したかと思いきや、菅田将暉に提供した「ピンクのアフロにカザールかけて」を超パンクバージョンで演奏。というか、タイチとイガラシのリズム隊が実にパンク。爆弾ジョニーはともかく、ヒトリエにパンクな要素はあまり感じないが、その二人が忘れらんねえよで揃うことによってこんな化学変化が起きている。
サポートギターがいることによって、ほとんどギターは弾かずに歌唱に専念し、もはや上手く歌おうなんていう気はさらさらなく、このステージに立てたこと、このメンバーでバンドをやれていることの衝動をぶつけるかのように叫びまくりの柴田はやはり同じ時間にLAKE STAGEに出演しているモーニング娘。の15年前のTシャツ(メルカリで5900円で買ったらしい)を着ており、
「ゲスの極み乙女。も聴いて、モーニング娘。も見たからもう他のステージ行かなくていいだろ!」
というめちゃくちゃな理由をつけていたが、もちろん忘れらんねえよを見に来た人たちが今さら他のステージに移動するわけはないのである。
「ばかばっか」では客席に突入しないというこのフェスのルールは守りながらもビール一気飲みのパフォーマンスを披露し、
「爆音でチャットモンチーを聴いた」
という柴田が忘れらんねえよを始めた原点が歌われた「Cから始まるABC」の後は、
「このフェスとかに出る以外に夏の予定が何もない俺だが、一つだけあった。チャットモンチーの武道館ライブを見に行ったんだ。360°客席になってて、俺はステージ真後ろの最前列でえっちゃんのことをガン見していた(笑)
ライブは素晴らしかった。でもえっちゃんが左手を高く上げるたびに見えるんだよ!薬指にした指輪が!俺への当てつけですか…」
と、チャットモンチーから感動をもらった話をするのかと思いきや、かなり歪んだ形でのチャットモンチーへの愛を語り、そのままチャットモンチートリビュートに参加した「ハナノユメ」の爆音カバーへ。
柴田がチャットモンチーのことをライブで語るとやっぱりそうした目線になってしまうが、こうして忘れらんねえよが歌い継いでいくことで、チャットモンチーの曲はチャットモンチーが活動していた時に出会えなかった人たちにも伝わっていく。本人はそうしたことを決して口にしないが、そのことを絶対わかった上でこの曲をライブでやるようにしているのだと思う。
そうして柴田の衝動がさらに炸裂していく中で演奏された「この高鳴りをなんと呼ぶ」は忘れらんねえよがただ面白いバンドではなく、感動を与えてくれる存在であることを証明していたし、大合唱が起きた「忘れらんねえよ」もそれは然りで大団円…かと思いきや、最後にはなんと新曲を演奏。
「踊れ引きこもり」というタイトル通りに歌詞の内容は忘れらんねえよでしかないのだが、サウンドはラテンテイストなダンサブルなもの。すると曲中でいきなりタイチがドラムセットからイガラシの横に置かれたキーボードに移動すると、架空のラジオ番組という設定の寸劇が始まるのだが、タイチのセンスが独特すぎて完全に意味不明。その間に柴田とイガラシはTシャツを脱ぎ捨て、ステージ上のメンバーが全員上半身裸というこれまた意味不明な展開になってから最後のサビを演奏。まだだいぶ色々と改良していく余地がある曲だが、果たしてどんな形で世に出るのだろうか。
柴田も
「1人になったのにこうしていろんな人が力を貸してくれて、1人になった俺をロッキンオンがこんな広いステージに出してくれた」
と感謝を告げていたが、今回のサポートの3人やワンマンでサポートをしたgo! go! vanillasのプリティ、この体制になるまでサポートギターを務めたLEGO BIG MORLのタナカヒロキ。みんな自分のバンドがある人たち。そんな人たちが柴田と忘れらんねえよのファンのために曲を覚えてライブで演奏してくれる。
それはひとえに柴田の人柄によるものだが、その姿を見ていると、ロックバンドは「人」なんだと改めて実感するし、だから自分はロックバンドが好きなんだとも思う。忘れらんねえよは柴田1人になってしまったけど、それでも続けていく姿からはそうした大事なことを教えてくれる。
1.キラーボール
2.ピンクのアフロにカザールかけて
3.ばかばっか
4.Cから始まるABC
5.ハナノユメ
6.この高鳴りをなんと呼ぶ
7.忘れらんねえよ
8.踊れ引きこもり (新曲)
ピンクのアフロにカザールかけて
https://youtu.be/da5SVvOhQm8
12:15~ BRADIO [SOUND OF FOREST]
去年はLAKE STAGEに出演したが、今年は2年ぶりにSOUND OF FORESTに戻ってきた、BRADIO。初出演でWING TENTのトリを務めてから、4年連続の出演である。
フェスでは基本的にはメンバー3人プラスサポートドラムとキーボードという形なのだが、この日はホーン隊とコーラス隊にパーカッションまで入った、ワンマンかのようなフルセット。これだけたくさんの人が立てるくらいの広さのステージにこのバンドが出れているということでもある。
そのフルバンドが分厚い音を鳴らす「きらめきDancin'」からスタートすると、西武ライオンズの外崎選手の応援歌としてもおなじみの定番曲「Flyers」も他のフェスで見るよりもさらにサウンドに迫力が増している。
そのサウンドの中でもホーン隊の存在が1番大きい曲は新作アルバム「YES」のリード曲である「Boom! Boom! ヘブン」だろう。ファンクという軸はぶれないままにラテンなどの肉体的なダンスミュージックの要素を取り入れたこの曲は分厚いサウンドが実によく生きる。
グルーヴマスターこと酒井のベースソロから、この日も見た目通りにパワフルなボーカルを響かせていた真行寺がダンスのやり方を指南しながら、Earth, Wind & Fire「September」を口ずさみ、いつもよりもはるかに長く何度もダンスを繰り返すと、サビでそのダンスをする「Back To The Funk」でファルセットボイスを響かせ、ラストは夏のためのパーティーチューン「スパイシーマドンナ」。
大山のギターソロに合わせて真行寺は卑猥な腰の動きを見せるという張り切りっぷりを見せていたが、そうなるのも仕方ないくらいの盛り上がりっぷりで、ステージにいた人数も多かったが、客席にいる人数も本当に多かった。これならば来年はLAKEに戻る可能性も高いし、そうした広いステージでたくさんの人が集まれば集まるほど真価を発揮できるバンドだと思う。
1.きらめきDancin'
2.Flyers
3.Boom! Boom! ヘブン
4.Back To The Funk
5.スパイシーマドンナ
Boom! Boom! ヘブン
https://youtu.be/Z_prrkQKX_Y
13:00~ ヤバイTシャツ屋さん [GRASS STAGE]
2年前にWING TENTに初出演。去年はRADWIMPSの裏でLAKE STAGEの大トリ、そして今年はGRASS STAGEに進出と、一気に、でも小さいステージから確実に駆け上がってきた、ヤバイTシャツ屋さん。先輩の岡崎体育と同じに初GRASS進出である。
「気が済むまでやりや!」
とこやまがもりもとにしっかりサウンドチェックすることを促して曲を演奏すると、おなじみの「はじまるよ~」という脱力気味のSEで登場するが、「Tank-top in your heart」の高速メロコア・ラウドサウンドからは全く脱力した感じなど見られず、早くも砂煙がステージ前に舞うくらいの盛り上がりを見せている。
この序盤で去年はアンコールの最後に演奏された「あつまれ!パーティーピーポー」を演奏するというところが、バンドが1年間かけてさらなるキラーチューンを生み出したことを実感させられるが、「メロコアバンド~」ではこれまでは全員その場に座らせてから一斉にジャンプ、という流れだったのが、全員膝に力を溜めてからジャンプという流れにすることにより、時間を無駄に使わずに実にスムーズに曲を連発できるようになっているなど、ライブの流れ自体もしっかり考えられるようになってきているのはすごい成長である。
だからこそ
「普段は3人組Youtuberとして活動してて…」
「現役女子中学生バンドとして活動してますが…」
という嘘丸出しの自己紹介以外はほとんど無駄なMCを挟まず、持ち時間にどれだけ曲を演奏できるかという方向にシフトしている。これは京都の先輩である10-FEETの先週のライブすらも彷彿とさせる。
タイトルがすべてみたいな「鬼POP激キャッチー~」からタオルをサビで一斉に振り回す(ヤバTのタオルもたくさんいた)「L・O・V・E タオル」とフェスだからこそ、広いステージだからこそ映える演出の曲を演奏しながら、「肩 have a good day」ではおなじみのこやまが感極まりそうになりながらもしばたともりもとに励まされながら歌い切るという寸劇を見せるのだが、こやまは本当に歌が上手くなった。唯一のバラードと言っていいようなこの曲をこれだけ広いステージにしっかり響くように歌えている。今年は春にポリープの手術をして、少しライブができない期間もあったが、それはこうして広い場所でライブをするために無駄なことでは全くなかったのだ。
するとこやまがこれまでに散々バンドがバカにされてきた悔しさを語りながら、
「バンドをやっていて良かった。サークルバンドが日本一大きなフェスの1番大きなステージに立ってるぞー!」
とこのステージにたどり着いた感慨を叫ぶと、そうした悔しさを曲にした、ヤバT史上最も真っ当な名曲「サークルバンドに光を」を演奏するのだが、普段のフェスではこの曲はまず演奏されることのない曲である。
それをここで演奏したということは、本当にこのバンドがこれまでにいろんな人から散々バカにされたりしてきたという、味わってきた様々な悔しさがこのバンドの原動力になってきたこと、普段はヘラヘラしているように見えて悔しさを感じるくらいに真剣に音楽とバンドに向き合ってきたということである。だからこそこの瞬間はヤバTのライブとは思えないくらいに感動的だった。
前から後ろまでウェーブ、後ろから前までウェーブというGRASS STAGEだからこそ圧巻の観客巻き込みパフォーマンスも「これだけたくさんの人が見にきてくれた」ということを改めて実感させてくれただろうし、
「時間ないから鬼速で!」
ともりもとに言うと、本当に元の曲よりもめちゃくちゃ速くアレンジされた「ヤバみ」でも3人は全然慌てることなくしっかり演奏し、のちにツイッターでこやまが言っていたが、アイコンタクトで2番を削るということまでしたらしい。
当初は決してライブをやりまくるバンドではなかったヤバTが、今では
「デカいとこで1日やるよりもZeppで5daysやりたい」
と言うくらいまでにライブハウスで生きるバンドになったからこそこういうことができるようになった。バンドは人気だけでなく技術も確実に向上している。
そしてラストは去年はまだなかった、ヤバTの新たなキラーチューン「ハッピーウエディング前ソング」。その光景はバカにされたりしてきたヤバTの曲が、日本のロックシーン、フェスシーンのアンセムになり得たということを証明していた。
初日にこのステージに初めて立ったキュウソネコカミもそうだったし、きっと岡崎体育もそうだっただろう。ここまで行けるわけがないと言われてきたアーティストたちがこのGRASS STAGEに立って、面白いパフォーマンスではなく、ひたすらにその音楽を中心にしたライブを見せている。それは紛れもなくこのフェスだからこそ見れた、感動的な光景だった。
リハ.Universal Serial Bus
リハ.とりあえず噛む
1.Tank-top in your heart
2.あつまれ!パーティーピーポー
3.メロコアバンドのアルバムの3曲目くらいによく収録されている感じの曲
4.鬼POP激キャッチー最強ハイパーウルトラミュージック
5.L・O・V・E タオル
6.肩 have a good day
7.Tank-top of the world
8.サークルバンドに光を
9.無線LANばり便利
10.ヤバみ
11.ハッピーウエディング前ソング
ハッピーウエディング前ソング
https://youtu.be/lVIHyj9qVy0
14:00~ ACIDMAN [PARK STAGE]
かつてはGRASS STAGEで大トリも務めたこともある、ACIDMAN。久しぶりの出演で初めてGRASS STAGE以外のステージに出演。
おなじみのSEで手拍子が起きる中にメンバー3人が登場すると、大木がギターを手にして
「何を手に入れた? 何を手に入れた?」
とサビのフレーズを歌ってから「リピート」でじっくりとスタート。バンドのグルーヴの安定感はさすがのものがある。
直近のダンサブルなサウンドと大木らしい歌詞の「ミレニアム」、バンドの代表曲の一つである「赤橙」と新しい自分たちの形と観客が聴きたいであろう曲のバランスを取るあたりは見事だが、「ある証明」では佐藤のキャップが吹っ飛び、このフェスでも何度も描いてきたクライマックスを作り上げて行く。
「俺たちがメジャーデビューしてからずっとロッキンオンジャパンとこのフェスにはお世話になっていて。このフェスがなかったら今の俺たちはないです!」
とバンドにとってもこのフェスが特別な存在であることを語ると、アッパーな「MEMORIES」から、
「1秒でも、一瞬でもいい。俺たちの存在がみんなのこの夏の思い出の中にいてくれたら」
と大木が語ってから最後に演奏されたのは、大木が慈しむように、佐藤と一悟もそれに共鳴するかのように音を紡ぐ「愛を両手に」。
ファンの人気投票では「ALMA」が1位になっているし、ワンマンでも最後にはバラードで締める。そのACIDMANだからこそのスタイルと、スリーピースの極限を突き詰めるようなライブは久しぶりのこのフェスにおいても全く変わっていない。
近年は年末のCDJでは動員がかなり厳しい姿も見ているが、この日はまだこの規模のステージを任せられる存在であることをしっかりとアピールできていた。
そしてMCでも触れられていた通り、主催フェスなどで出店していた一悟のラーメン屋がこのフェスにもついに登場。見た目はさっぱりしてそうだけど背脂の入ったスープは濃厚、だけど飲み干せるくらいのさっぱり感は、見た目はいかつく見えるけど実際はあらゆる人にいじられまくっている一悟の人間性そのもののようだった。つまり美味しかったということ。
1.リピート
2.ミレニアム
3.赤橙
4.ある証明
5.MEMORIES
6.愛を両手に
ミレニアム
https://youtu.be/wIjNQGr4R1o
この後にGRASSに戻ると、ORANGE RANGEが通路にはみ出すくらいの凄まじい動員を見せていた。近年はLAKE STAGEに出ていたとはいえ、やはり誰もが知るヒット曲を持つバンドは強いし、これだけ若手バンドがGRASS STAGEに進出するようになってきても、ORANGE RANGEが作ってきた名曲たちは全く色褪せていない。
15:30~ 04 Limited Sazabys [GRASS STAGE]
ヤバT同様に3回目の出演でGRASS STAGEに到達。自身も主催フェスを毎年名古屋で開催し、自分たちの時代を作るバンドとして、パンク・メロコアシーンを代表する存在として、フォーリミが初のGRASS STAGEに立つ。
近年定着してきたオリジナルSEでメンバーが登場すると、1曲目の「fiction」で早くもステージには煙が吹き上がるという、まるでこのバンドの野外ワンマンに来たかのような演出。
続く「monolith」では
「きっと間違えられないな ロッキンのGRASS STAGEですよ!」
とGENが抑えきれない喜びを歌詞に変えて叫ぶ。
「みんなをもっといいところに連れていきます!」
という言葉からの「Warp」、自分たちが新たな時代のヒーローになる宣言とも取れる「My HERO」と、初のGRASSであっても緊張感はほとんど感じず、実に伸び伸びと自分たちの音楽を鳴らしている。それはすでにYON FESもそうだが、様々な大きいステージを経験した上でこのステージに立っているからだろう。KOUHEIのカメラ目線もいつもよりも多く、それも全て笑顔である。
RYU-TAによるコール&レスポンスをしてからの「Chicken race」ではメンバーも観客も元気いっぱいに飛び跳ね、真昼に降り注いだ「midnight cruising」は思わず空を見上げてしまうくらいの素晴らしい演奏だった。流星群こそ見えないが、晴れ渡った空(この日も昼からすごく晴れた)に実にもこの曲は実によく似合う。
「こうしてデカいステージに立つと、バイトしてた頃を思い出す。つい数年前までバイトしてたんですよ。その頃によくやっていた曲をやります、GRASS STAGEで、Grasshopper」
と言って演奏された「Grasshopper」はフェスでは滅多に演奏されない、「GRASS」という冠を戴いたこのステージだからこそ演奏された曲だが、曲のクライマックス部分では中央のスクリーンに
「明日の自分はどうだ?」
というフレーズが映し出される。それはまるで武道館ワンマンの時と同じように、この日この場所で鳴らされるために作られたかのようだった。このステージを経験したフォーリミの明日も、それを見届けることができた我々の明日も、この日までとはまた違うものになるはずだ。
そしてこのステージへ宛てた手紙かのように鳴らされた「Letter」に思いを込めると、ラストは全ての迷える人たちの目の前に立ちふさがるものを切り裂くような「Squall」から
「日本のロックシーンに光が射しますように!」
と力強く、そして
「BACK LIFTやENTHとか、ずっと一緒にやってきたバンドたちが一緒にこのフェスに出れているのが本当に嬉しい」
と、今や日本のロックシーンを担う存在としての責任感や意志をも感じさせた。
フォーリミのライブを見ると、なんでこんなに夢を感じるのだろうか。それはこのバンドのサウンドがパンク・メロコアというスタイルであることも決して無関係ではないと思うが、この爽快感は他のバンドのライブでは感じることができないもの。それがあるからこそこのバンドはこうして唯一無二の存在になったとも言える。
他の同世代のバンドたちと比べると、初出演するまではかなり長かった。だからフォーリミはこれまでにLAKEとPARKと今回のGRASSという大きなステージにしか出たことがない。だから決してこのフェスで地道にステージを広くしてきたというストーリーを持つバンドではないのだが、これからそのストーリーを紡いでいくのを見たい。それはもちろん、流星群がこのステージの夜に降り注ぐような瞬間だ。
リハ.nem…
リハ.knife
リハ.days
1.fiction
2.monolith
3.Warp
4.My HERO
5.Remember
6.escape
7.Chicken race
8.midnight cruising
9.Grasshopper
10.Letter
11.Squall
12.swim
Squall
https://youtu.be/NRhmgBtRKBA
16:15~ 魔法少女になり隊 [HILLSIDE STAGE]
RO JACK枠で優勝して出演を勝ち取って以降は毎年おなじみとなっている、RPG型バンド、魔法少女になり隊。WING TENTやBUZZ STAGEに何度も出演してきたが、今年はHILLSIDE STAGEへの出演。
フォーリミが終わってから行くともう始まっていたのだが、機動性の高そうな衣装の火寺バジルとGARIがステージを動き回りながら歌う、和の要素を取り入れた「ヒメサマスピリッツ」の段階ですでに客席は満員。もはやステージが見えなそうな位置まで人がいる。
しかしこの日はこのステージだからか、このバンドのライブにおける重要アイテムであるモニターがなく、バンドの音と曲のみで勝負するというストイックな内容になっていたのだが、原曲のポップさを活かしながらも完全にこのバンドのスタイルであるデジタルなラウドロックに変貌した「おジャ魔女カーニバル!!」を始め、バンドはそのストイックな内容で見事に勝ちを収めるようなライブを見せた。
汗を飛び散らして煽りまくりながらギターソロを決めるスナイパーのウイ・ビトン、髪の先を緑色に染め、セクシーな衣装を着た剣士の明治によるギターコンビも短い時間の中で夏っぽい「シェキナゴン」からのメロディを聴かせる「願い星」でサウンドの押し引きを見せ、「完全無敵のぶっとバスターX」で再びアッパーかつラウドに突き抜けると、ラストはこのバンドの始まりの曲を、始まりの場所であるこのフェスで鳴らす「冒険の書1」で
「魔法少女になりたい!」
の大合唱を巻き起こし、他のメンバーが先にステージを去る中で最後に残ったバジルがスケッチブックに「またね」と書いて観客に再会を約束してステージを去っていった。
ワンマンではもはや渋谷O-EASTまで達しているし、楽曲のクオリティやライブのパフォーマンスなど、あらゆる面においてもはやこの1番小さいステージに出るようなバンドではない。まだLAKEやPARKには早いかもしれないが、もうSOUND OF FORESTまでは射程圏に捉えているところまで来ている。「アルプス一万尺」をサンプリングした新曲「START」が聞けなかったのは少し意外ではあったけれど。
1.ヒメサマスピリッツ
2.おジャ魔女カーニバル!!
3.シェキナゴン
4.願い星
5.完全無敵のぶっとバスターX
6.冒険の書1
完全無敵のぶっとバスターX
https://youtu.be/Tgn6xYv6114
その後、ステージを移動しながら、LAKEでTHE BACK HORNの「コバルトブルー」「刃」というラスト2曲で20周年を超えても全く衰えることのない衝動と野性味に改めてカッコよさを感じ、SOUND OF FORESTではワンマンでアリーナクラスでライブをやっているthe GazettEのデジタルなラウドロックと、高速ヘドバンの凄まじさに圧倒される。
それぞれが自分たちのやり方でこのフェスにおける自分たちの存在証明をしている。
17:30~ ストレイテナー [PARK STAGE]
いよいよ4日間の祝祭も終わりに近づいてきている。各ステージはついにトリのアーティストを残すのみ。このPARK STAGEで今年のトリを務めるのは、ストレイテナー。2008年のGRASS、2013年のLAKEに続き、3ステージ目のトリである。
おなじみのSEでメンバーがステージに現れると、この昼でも夜でもない時間の空によく似合う「彩雲」からスタートし、シンプルなロックンロールのアレンジになった「DSCGRPHY」、ひなっちのゴリゴリのベースが引っ張る「DAY TO DAY」とここまでは4人のロックなサウンドで引っ張る曲を連発。観客の声援に両手でピースを作ってひなっちが応えるなど、実に楽しそうだ。
「バラードやっていいですか?」
とホリエが言うと、秦基博とのコラボ曲である「灯り」をストレイテナーバージョンで響かせ、キーボードを弾きながら歌うホリエの凜とした声が今この年齢だからこそ歌えるという貫禄を感じさせる。
配信限定の最新曲「Braver」もホリエがキーボードを弾きながら歌う曲であるが、じっくりとはじまって徐々に高まっていくというタイプの曲。
「これでトリをやるのは3ステージ目。こうなったら全ステージでトリをやりたいですね(笑)あいつら、毎年ステージ小さくなってるなって言われながら(笑)
でも20年前はこんな未来が来るなんて想像していなかった」
とホリエが感慨を覚えながら、その言葉通りの曲である「The Future Is Now」を演奏すると、シンペイがウインドチャイムを鳴らし、「Melodic Storm」へ。
ストレイテナー「Melodic Storm」、THE BACK HORN「コバルトブルー」、ACIDMAN「ある証明」。20年を超えたバンドの、どれもライブではほぼ100%やる曲。自分がそれらを最も多く聴いてきたのは確実にこの会場。それが今でも聴けるのは本当に感慨深いし、これからもこの会場で聴き続けていたい。
そしてラストは、夕焼けが白いシャツを染める「シーグラス」。今年最後の海へ向かうように、この日が今年最後の夏フェスである人もたくさんいるはず。そういう人も、このフェスの後に他のフェスに行く人も同じように思いを重ねられる曲。これからこのバンドがこのフェスに出続ける限り、こうしてこの曲を聴き続けることができるはずだ。
アンコールを待つ人がたくさんいたが、時間の問題でアンコールはなかった。この続きはまた来年に。今となってはなかなか厳しいけれど、もうちょっと長い時間、多くの曲を聴きたい。
1.彩雲
2.DSCGRPHY
3.DAY TO DAY
4.灯り
5.Braver
6.The Future Is Now
7.Melodic Storm
8.シーグラス
Braver
https://youtu.be/pT5H9Yo3MEI
18:00~ サザンオールスターズ [GRASS STAGE]
そしてついに最後のアーティスト。今年の大トリは実に13年ぶりの出演となる、サザンオールスターズ。桑田佳祐は去年もソロで出ているが、やはりサザンで出演するとなるとある種の事件感すらある。
ストレイテナーを見終わってからGRASS STAGEに向かうとすでに中盤というタイミングだったのだが、端から端まで凄まじい人である。さすが国民的ヒット曲をたくさん持っているバンド。
歌詞がモニターに映し出されるというのは2005年に出演した時同様で、曲によってはダンサーも登場し、大人数編成で近年の曲と大ヒット曲、真面目なラブソングとエロさを感じさせる曲を交えて演奏していくのだが、「壮年JUMP」では歌詞を
「このイベントも来年で20周年」
とロッキン仕様に変えて大歓声を浴びる。
しかしながら何よりもすごいのは、曲間ほとんどなしで曲を連発していくという、若手パンクバンドかと思うくらいのテンポの良さ。桑田佳祐のTシャツに短パンという出で立ちも若手のようだが、結成40年、60歳を超えてこんなライブができるバンドが他にいるだろうか。もちろんメンバーの演奏も桑田佳祐の歌も素晴らしく、後半になるに連れてさらに良くなっていくという信じられないモンスターっぷり。
ほぼ唯一のMCも
「04 Limited Sazabys、凄かったですよね~。Superflyの後はやりたくない!(笑)」
という自身の前にこのステージに立ったアーティストを讃えるもので、言われた側はめちゃくちゃ嬉しかったと思う。(実際にフォーリミのメンバーはすごく喜んでいた)
変態仮面みたいなダンサーが多数登場し、桑田佳祐も変態みたいな被り物をつけた「マンピーのG☆SPOT」でダンサーに抱えられた桑田佳祐の股間に
「皆様ありがとう!素晴らしい夏を!」
というメッセージが書かれているというとんでもない終わり方で本編が終わると、アンコールの「みんなのうた」「勝手にシンドバッド」では桑田佳祐がホースで水を客席にかけまくるのだが、本編であれだけヒット曲をやったのに、アンコールでもこんな大ヒット曲をやるというのは本当に恐れ入ったし、国民的バンドが見せるエンターテイメントとは何かというものを見せてもらった気がする。それはサザンにしかできないものなのかもしれないが。
演奏が終わると、桑田佳祐の呼びかけでメンバーも花火が上がるのを見ていた。終わる時にはメンバーはステージからいなくなっていたが、
この花火を見ると、また来年もここでこうして花火を見ていたい、と心から思うのだ。
13年前、みんなで「サザンなんてもう一生見れないかもしれないぞ」って言っていた。でもこうしてまたサザンをこの場所で見て、あの時にLAKEでトリをやったELLEGARDENも10年の休止を経て戻ってきた。自分もみんなもずっと生きていたから、こうしてまた会える。 だから、生きてさえいれば、きっとまたこうして会えるはずだ。
1.希望の轍
2.いとしのエリー
3.涙のキッス
4.せつない胸に風が吹いてた
5.栄光の男
6.My Foreplay Music
7.愛の言霊(ことだま) ~Spiritual Message~
8.闘う戦士(もの)たちへ愛を込めて
9.真夏の果実
10.LOVE AFFAIR ~秘密のデート~
11.壮年JUMP
12.東京VICTORY
13.ミス・ブランニュー・デイ (MISS BRAND-NEW DAY)
14.HOTEL PACIFIC
15.マンピーのG☆SPOT
encore
16.みんなのうた
17.勝手にシンドバッド
壮年JUMP
https://youtu.be/rmOPfwdJjZ4
野外フェスに毎年来たいと思うかどうかは、その場所にあると自分は思っている。そして自分はこの会場が1番好きだから、アーティストが誰も発表されていない段階で4日通し券を買って、あまりにもこの会場が好きだから、フェスが開催されていない時期にもたまにこの会場に遊びに来ている。そんなことをするような場所は他にない。それだけこの場所とこのフェスが好きなのだ。だから来年ももちろん5日間フル参加するし、その日のために毎日頑張って生きていける。
2004年、CDが出る前の銀杏BOYZがどうしても見たくて、いきなり3日間来た初参加。「毎年来たいな」ってその時に思って、気づいたら大人になって、ここに全部来るために仕事を変えて、気づいたら15年来続けていた。
このフェスが終わる時か、自分が死ぬ時まで。どちらが先からわからないけれど、ずっとそうやって生きていきたいくらいに、自分はこのフェスに来て人生が変わった。ならばその変わった人生はずっとこのフェスを中心にしたものであり続けていたい。ここに来る以上に楽しいことを知らないし、それはきっとこれからも見つからないから。今年もありがとう、ひたちなか。
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